真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「たわゝな気持ち 全部やつちやはう」(2019/制作:不写之射プロ/提供:オーピー映画/脚本・監督:古澤健/企画協力:佐々木浩久/撮影:山田達也/照明:玉川直人・柴田裕哉/録音:臼井勝/音響:川口陽一/音楽:宇波拓/編集:松竹利郎/助監督:島崎真人・菊嶌稔章/ヘアメイク:五十嵐良恵/スチール:平野敬子/合成:金魚事務所/合成・タイトル:古澤健/画面制作:東海林毅/撮影助手:高嶋正人・丸山圭/ヘアメイク助手:木田芙優美/撮影応援:高橋裕美/演出応援:高杉孝宏・綱木謙介/オフラインデスク:蟇田忠雄・土井直樹/仕上げ:東映ラボ・テック株式会社/美術協力:イースト・プレス、辰巳出版株式会社/協力:久保田修・菅原文・立石勝・ドルショック竹下・二村仁・馬場誠・原崇・原吟子・細野牧郎・村山えりか・森平晶・CLOP CLOP・松庵稲荷神社・TWO-WAY・トヤジ・長谷川時計眼鏡店・ユリイカ・株式会社アップサイト・クリッパーエンターテイメント・グンジ印刷株式会社・株式会社テックス・株式会社東宝映像美術・日本照明株式会社・株式会社マービィ/出演:松本菜奈実、あけみみう、川瀬陽太、加藤ツバキ、古澤健、佐藤文吾、春埼めい、佐藤考太郎、後藤ユウミ、加藤紗希、大野大輔、鏡ゆみこ、つかさ、深澤しほ、阿久沢麗加、飯田一広、柏木風子、田歌理恵、タケ、永井ちひろ、魔子、蜜蜂マーヤ、村井健太、もりへー、モリ・マサ、山下桃子、和ルイ子)。出演者中、阿久沢麗加以降は本篇クレジットのみ、このゾーン五十音順だな。
 開巻の開口一番口跡がカミッカミで早速屋号が聞き取れない、ファッションヘルス「出たとこゴニャゴニャ」。佐藤文吾が電話を取る店長の赤城で、左右からアタシアタシと出撃を買つて出る嬢の二人は不明。電話で注文を受ける、そのお店はファッションなのかデリなのか。兎も角その頃別室では風俗ライターの三留綾(松本)が、始終スマホを弄つてゐるノリカ嬢(春埼)にインタビュー。まるでヤル気のないエリカもといノリカが碌に答へても呉れなかつた紹介記事を、綾が自室にて適当に捏ち上げる画にクレジット起動。不毛な仕事に一段落と溜息ついたタイミングで出て来た、贈られたのも忘れてゐた手作りの鉛筆を抜いてタイトル・イン。結論を先走ると、タイトル画にまで使つた割に、後々ワンマンショーで用ゐるのが関の山。結局鉛筆が主モチーフにしては心許なくも機能しない、そこで雌雄が決せられてゐたのかよ。
 鉛筆の贈り主である、会社員の大塚肇(古澤)と綾の同棲生活は、大塚の粘着質な説教癖に綾も毅然とした対応を示せず、徒な長尺を捏ね繰り回すばかりでメタ的にも煮詰まる。出入りするアングラ出版社、芳賀ならぬ「破瓜出版」の編集長・田中一郎(川瀬)から雑誌の休刊を告げられる一方、中略して大塚のジーパンを洗はうとして風俗店のスタンプカードを見つけた綾は、業態が不明な―衣装があるみたいだからイメクラかなあ―「ノモレ」の嬢で大塚贔屓の篠原カレン(あけみ)に、取材を装ひ接触。棹姉妹とでもいつた塩梅からか、二人は何となく仲良くなる。そんな、こんな。藪から棒に映画を撮つてゐるといふカレンは、自作に出てみないかと綾を誘ふ。ところで破瓜出版の編集部には、竹洞哲也2018年第二作「青春のさゝくれ 不器用な舌使ひ」(脚本:深澤浩子/主演:川上奈々美)と、関根和美2015年第四作「特務課の罠 いたぶり牝囚人」(主演:きみと歩実)のポスターが貼つてあつたりする、凄くランダムな二本ではある。
 全部は詰めきれない配役残り、加藤ツバキは、田中と飲みに行き潰れた綾が意識を取り戻すと、田中と致してゐたセフレの篠原マリア。ロケも田中の部屋でなく篠原家、娘は店に出勤中か。後藤ユウミと加藤紗希は、相変らず田中と飲んでゐたところ緊急事態と呼び出した綾を、サプライズの誕生会で迎へる友達の皆川芹那と木下優香。綾が三十になるといふのは、公称を真に受けると結構な逆サバ。大野大輔は、ノモレの店長・星野大輔。蜜蜂マーヤと和ルイ子は綾がカレンも伴ひ取材に行く、SMクラブ―公式にはカミングアウト・サロン―「ユリイカ」の女王様セルフで、鏡ゆみこがママセルフ。その他辿り着けないのが、二人見切れる破瓜要員。通された控室にて、カレンを待ちくたびれた綾が寝落ちてゐるとペットボトルを取りに来るノモレの嬢と、ラバーマスクで吊られる―当然完全に面相は見えない、判る訳がない―ユリイカの奴隷氏。に、綾を多分主演に撮影するカレン組の、見た感じ助監督か制作部・ナベちやん、メガネがエモい。芹那が録音部、優香がレフ板を抱へ、カメラはカレンが8mmを回す。それでもなほ余る頭数ないし名前は、どうせピンクには映つてもゐまい。大事な点ゆゑ繰り返す、どうせピンクには映つてゐまい。
 佐々木浩久が本人の希望を大蔵に繋いだ、古澤健のピンク筆卸作。以降は八月頭に第二作が封切られたのに続き、タスフェスが先行する形で、今作の続篇も情報公開されてゐる。よもや、OPP+のみなどといはないだらうな。それだと何も足してゐないぞ、逆に今まで、何を足してゐたのかも知らんけど。
 幾ら蓼食ふ虫も何とやらとはいへ、迸るほど魅力に欠き、何でまた斯くもクソみたいな男と主演女優が一緒に暮らしてゐるのかが最初から破綻したSF設定ばりに解せない、モラハラ野郎との生活に塞ぐヒロインが新しい友人との出会ひを契機にするまではいいとして、行方不明になつてゐた自分ぽいサムシングを何時の間にか見つける物語。何はともあれ、川瀬陽太相手に、正常位で突かれる下から優位に立つ強靭にして素晴らしい見せ場に恵まれる、加藤ツバキに関しては何の問題もない。といふかこの人、大絶賛現在進行形で加速してゐる。グジャグジャ自堕落に決戦兵器のオッパイを持て余す、対大塚戦はこの際忘れてしまへば、松本菜奈実も、締めの濡れ場を川瀬陽太に介錯して貰ひそれなりの形にはなる。そこで完遂しないさせない、小癪ささへさて措くと。反面、まるで二次元から造形したフィギュアの如き浮世離れたスタイルを誇りながら、二番手のあけみみうが甚だ酷い、女優部は一ッ欠片も悪くない。綾と浸かる狭い風呂を除くと、その直後唯一の絡みとなる大塚との店長・店員プレイを一通りなぞる件が致命的。グッダグダ外堀で矢張り尺を執拗に浪費した挙句、いざとなると古澤健が腰のひとつ満足に触れない無様極まりない体たらく。言語道断、慷慨憤激。苟も小屋に木戸銭を落とした客に、見せて許される代物とは到底断じて皆目認め難い。出し抜けであれ藪蛇であれよしんば木に接いだ竹であれ、松本菜奈実と百合の花を咲かせてゐた方が百京倍マシ。役得監督となると池島ゆたかの以前に、古澤健は荒木太郎の爪の垢でも呑んで来ればいい。二人とも放逐されてゐるではないか、全体何処から連れて来るんだ。自らの倫理観にのみ従ひ、アグレッシブに性を謳歌するマリアに対し、綾がてんで掴み処のない経緯を通して啓かれる蒙が、セックス・ワーカー同様、セックス自体を自身には縁遠いものと特別視してゐたとかいふ、薄らフワーッとした覚束ない方便にも何をこの女と開いた口が塞がらなくなるほかない。荒木太郎の爪の垢を呑んだ次は、古澤健は浜野佐知に地獄突きを叩き込まれて血反吐を吐けばいい。結局、己の登場場面でさんざ無駄な回り道に明け暮れた挙句、綾が答へに辿り着く過程は二足も三足も飛ばす。七十分でまだ足らないやうであれば、素人考へでしかないが正直ピンクは難しい気がする。返す刀で大塚の左頬に気がつくと痣が出来てゐるのは、それは性懲りもなく、タス版を観るか見ないと話が繋がらないナメた寸法なのか?大蔵に改める気がないのは先刻承知の上で、こちらも厭かずに最後までいふ、本末転倒て言葉知らないよね。普段あれだけ淡白に見えた、竹洞哲也ですらあれで絡みの専門性に余程長けてゐたのかと再認識させられる程度の裸映画にせよ、川瀬陽太による最低保証と、ボヨヨンボヨヨン階段を下りるだけでダッダーン!する松本菜奈実が誇る絶対爆乳の威力とで、呆れたり匙を投げないくらゐには観てゐられる。半分どころか、全殺す気満々の得物を手に女達が朗らかに駆ける一応か力技な爽快感の一点突破で、劇映画的にも墜落するでなくラストまでどうにか漕ぎつける。そんな古澤健大蔵上陸作を評して、橋渡しした佐々木浩久いはく“僕のよりよほど真つ当なピンク映画になつてゐます”。

 こ、こんなら(゚Д゚)

 F4級倉庫でガッチンゴッチンに凍らせた豆腐の角で、急所を強打せれ、貫通せれ。どの面提げてもしくは、怒髪冠を衝くとは正しくこのことである。まだまだ、あるいは現代的な別の意味の在り方で、ピンク映画が今なほ熱い。


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 「ドキュメントポルノ 続 痴漢」(昭和48/製作:プリマ企画株式会社/監督:山本晋也/制作:藤村政治/企画:渡辺忠/構成:山田勉/撮影:伊東英男/照明:近藤兼太郎/録音:大久保グループ/編集:中島照雄/助監督:城英夫/音楽:多摩住人/効果:秋山サウンド・プロ/監督助手:安部峯昭/制作主任:大西良夫/制作進行:石井俊一/現像所:東洋現像所/録音所:大久保スタジオ/ナレーター:都健二)。企画の渡辺忠と構成の山田勉は、それぞれ代々木忠と山本晋也の変名。
 林中を逃げる制服の女学生と、追ふグラサン。双方目まぐるしく動く、総合―格闘技―ばりの攻防にまづ目を見張る。少女の上げた悲鳴に、「これからお話しようとする痴漢行為とは、このやうな暴行ではありません」と実も蓋もないミヤコレーション起動。「ではそもそも俗にいふところの痴漢とは?」と話を適当に進めると、スカートに続き男の手に剥かれた半ケツにタイトル・イン。クレジット明けて往来を往き来する御々足に、「皆さん、貴方達は痴漢に興味ありますか?」。「ある?いやあ結構結構」と長髪の背広二人連れが、歩きながらの身ぶり手ぶりの豊富な口論を装ひ交錯する女のスカートを捲るメソッドと、歩道橋の踊り場に小銭を撒いて拾はせる、スカート覗きとを紹介する。あからさまに不自然で、まるで装へてねえといふ以前に、“いやあ結構結構”ぢやねえだろ。「エロベータ、いや失礼」と火蓋を切る小ネタは可笑しいが、続く“サラリーマンの皆さんにお勧めしたい”エレベーター痴漢に於いても、「痴漢も出来ないやうな男性は出世の見込みは全くありません」。現在の偶さかで過去を一方的に裁断する弊の存在ないし可能性自体は留保しなくもないにせよ、流石に2020年に及んで斯様に自堕落な男尊女卑は、おいともそれとも到底呑み込める代物ではない。
 “続”を銘打つにしてはドキュメントポルノの無印痴漢がどうしても見当たらない、山本晋也昭和48年第八作。エレベーター痴漢以降は画太郎先生が描いたコミタマみたいな人が登場するバス痴漢、下町での生活臭色濃い覗き。話がまるで見えないが、連れ込みの鏡が隣室の箪笥から見えるマジックミラー。国鉄山手線でのスカート切り裂き魔(は三重街竜)に、数千枚の蒐集を誇る下着ドロ。蚯蚓や蛇を使ふ農学系みたいな工学部教授と来て、最後はオーソドックスな青姦覗き。最初に提示した痴漢を博覧するコンセプトは、それなり以上十全に果たしてみせる。加へて、兎にも角にも顕著なのが同じドキュポルとはいへ、「発情族を剥ぐ」(監督:代々木忠/構成:池田正一)と見比べると一目瞭然、月とスッポン。普通にカットも割る各々の画が、一般的な劇映画の水準に達してゐる。何処がドキュメントなのかといふのは、野暮以前のいはずもがな。所々で辟易させられなくもないものの、長髪スカート篇に際してはミニに映える足の綺麗な女を揃へ、女優部のレベルは総じて高い。不明にして三重街ドラゴンしか特定し得ないが、いはゆるイイ顔の男優部も商業作のフレームを支へ得る。全体的な構成には然程のメリハリもなく、小屋の暗がりでつらつら観る分には何時しかうつらうつら微睡むのも禁じ難いのかも知れないが、ひとまづ既に失はれて遥か遠く久しい、昭和の量産型娯楽映画の肌触りは十二分に堪能出来る。都健二の名調子にも加速された、「浜の真砂は尽きるとも、世に痴漢の種は尽きるまじ」は教科書の巻頭に載せたい至言、何の教則なんだ。クシャミしてしまつた一人が青姦氏に気づかれたところ、実は周囲を包囲してゐた出歯亀クラスタが蜘蛛の子を散らすオチが、掉尾を騒々しく飾る。被せられる「ドキュメンタリー、ナーウ!」とかいふ謎シャウトは、前年放送開始の、田原総一朗らが撮つたさういふタイトルのテレビ番組があつた模様、実に猛々しい。


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 「暴行魔真珠責め」(昭和54/製作:蝸牛プロダクション/配給:新東宝興業/監督:井筒和生/脚本:西岡琢也/撮影:牧逸郎/同助手:上田敏彦/照明:佐々木政弘/同助手:北川義男/監督助手:澤田昌憲/メーキャップ:中原英子/セットデザイン:木村鉄/ネガ編集:酒井正次/音楽:吉野裕司/録音:ワタベ・スタジオ/現像:東映化学/協力:滋賀県 水口銀映劇場・レストラン シバタ《大阪》/出演:池内琢磨・中原ひばり・夢野ミキ・鈴木恵子・岡本まゆ子・高橋章代・友口博子・大隅琴理・千鳥文子・堰守・岡本麗・港雄一)。出演者中夢野ミキと友口博子と大隅琴理が、ポスターには中村ミキと反口博子と大隅琴里。玉部の有無は百万歩譲るにせよ、夢野と中村とで全ッ然違ふのも凄い上に、誤るに事欠いて反口とは、嫌共か。あと、ポスターにのみ西岡琢也の名前が並ぶ。
 最初に潔く白旗を揚げてしまふが、岡本麗以外の女優部に清々しく手も足もグウの音も出ない。ポスターと本クレで順番も全然違ふゆゑ、綱といふほどでもない頼りの糸のビリング推定すら機能せず。
 “蝸牛プロダクションフィルム”に続いて、“をK.N.に捧ぐ”とある意味斬新なクレジット。吃驚したのが、この“K.N.”がどちらさんかといふと、夭逝した映画仲間とかの類ではなく、前年山口組三代目組長の田岡一郎を狙撃して最期は拷問の末惨殺された、この“K.N.”があの鳴海清。弩級の先制パンチは、確かに鮮烈、先制パンチは。兎も角タイトル開巻、でろーんと横たはる尻に、スタッフからクレジット起動。チンピラの信三(池内)がブルーフィルムを撮影した、凡そさうは見えないが、壁にはセーラー服が吊るしてあつたりする女子高生!?の部屋に、兄貴から呼び出しの電話がかゝつて来る。信三が背負つた、鯉の下半身の彫物―兄貴に上半身―に監督クレ。信三がエレベーターに乗らうとすると、中には兄貴分の正次(西岡琢也)が。正次がまづ回転式を信三に手渡し、続いてオートマチックを渡すと信三が最初に渡されたリボルバーを返す。何がしたいのか正直サッパリ判らない遣り取りを経て、信三は幹部会で空き家同然の、自身らが草鞋を脱ぐ組の組長(堰)宅に。屋敷に情婦と二人きりの、組長を信三が射殺。誰からか知らんけど何時の間にか受け取つてゐた黒鞄と、売春宿で女から贈られた一粒の黒真珠を手に、信三は正次の情婦・フミ(岡本)のゐる水口銀映劇場を目指す。僅かに辿り着ける配役は、水口銀映の劇中台詞ママで顧問にして、フミ姉妹の叔父か伯父のシゲオ(港)のみ。筋者と付き合ふフミに手を焼き、ヤクザを限りなく憤怒に近い苛烈さで憎悪する港雄一が、劇中誰よりもヤクザに見える件。はさて措き、その他濡れ場のある頭数は、信三が小屋の近所まで乗せて貰ふダンプの運転手が買ふ、眉だけかと思つたら髪まで剃つてゐるパンクなパン女。フミの妹で、ほぼ白痴の智子。今は堅気の会社勤めの、信三元スケ。
 継続してゐるのを見るとそれなりに評判もいいのか、新東宝が“懐かしの新東宝「昭和のピンク映画」シリーズ!”で放り込んで来た井筒和生(現:和幸)第三作。今回新版ポスターの監督表記が、“井筒和生(和幸)”となつてゐるのが微笑ましい。買取つた、者の強さよ。
 例によつて当サイトが井筒和幸もへつたくれもない与太者につき、今回観た限りでつらッつら吹くと、真珠の力を得た信三が女々を手篭めにして回る大暴れを繰り広げる、時代の波に許されない痛快作では全くない。シャブ中の信三が度々囚はれる脈略のない幻覚が繰り返し繰り返し執拗にインサートされる、どちらかといはずともダウナー系の一作。信三が真珠で女をヒイヒイいはせるよりも、プリミティブな手法でナニに真珠を埋め込む際の、思はず愚息も萎む痛々しさの方が顕著に際立つ。殊にドンパチ周りの繋ぎがハッチャメチャで商業映画未満の自主臭さは否応なく、兎にも角にも厳しいのが、岡本麗を除けば一山でも幾らにもなりさうにない壮絶な女優部。乳も眉も華も何もない女の裸にもときめくほどの、若さなりピュアさは既に失つて久しい。当時的には最先端のその先を行つてもゐたのか、港雄一に「ファックユー」と徒に中指を立てさせてみせる、今でいふとヴィレヴァンみが琴線を生温かく撫でるのが精々。ホッカホカ通り越しアッチアチのアクチュアリティには反して、この期に特段騒ぐには別に当たらないといふのが、直截な感触である。

 ひとつ軽く仰天したのが、水口銀映の場内シークエンスで、上映されてゐるのが特定まではしかねるが宮井えりな主演のロマポ。仁義もクソもないといふか何といふか、流石に斯くもへべれけな真似をして怒られなかつたのか。


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 「ドキュメントポルノ 発情族を剥ぐ」(昭和48/製作:プリマ企画株式会社/監督:代々木忠/制作:藤村政治/企画:渡辺忠/構成:池田正一/撮影監督:久我剛/撮影班:佐藤清吉・石渡吾蔵/照明:近藤兼太郎/編集:中島照雄/音楽:多摩住人/効果:秋山サウンド・プロ/録音班:大久保スタジオ・グループ/制作主任:大西良夫/助監督:城英夫/録音所:大久保スタジオ/現像所:東洋現像所/インタビュアー:五十嵐のり子/ナレーター:都健二)。企画の渡辺忠は、代々木忠の変名。構成名目で池田正一の名前があるゆゑ脚本は兎も角、俳優部のクレジットがないのは本篇ママ。
 何処ぞの海水浴場のカットを適当に連ねて、五十嵐のり子がそこかしこの誰かしらに矢張り漫然とマイクを向ける。テッテケテッテケ尻のアップにゴーゴー点火、黒いビキニの女が三人組の全員貧相な体格の男に輪姦されるスローモーションなんて挿み込んだりしながら、日光浴の画に“実に穏やかだ、人々は何の屈託もなく見える”とナレーション起動。ここで、直截にいふと唯一の収穫ないし注目すべき点が張りと渋みのある、都健二の声がこれまで謎であつたプロ鷹ナレーションの主と遂に合致。珠瑠美についてはよく判らないものの、都健二が木俣堯喬(a.k.a.木南兵介)とは少なくとも俳優部として共演する形で繋がりのあつた模様。既に臆面もなく若輩者を気取るのは些か憚られる齢にせよ、正直昭和48年ともなると、愚生にとつて出生間近。歴戦の諸兄に当たられては当然に既知の事柄であつたものやも知れないが、昭和どころか平成も終つたこの期に及んで漸く辿り着けた、極私的な感慨がとりあへず深い。辿り着いて、何がどうなるのかとかさういふのは、だからさういふこつちやねえんだよ。
 兎も角、海に泳ぎにではなく要はヤリに来た、“発情族”の生態に五十嵐のり子が迫るといふ体裁で、六十八分の尺が淡々と進行して行く。もしかすると、一人二人知つた顔―の凄く若い頃―に出くはせるかとも期待しかけたが、それも全く能はず。
 ex.DMMのピンク映画chに於いて基本出来るのに、ストリーミングさせて呉れないのが激しく面倒臭い、代々木忠昭和48年第五作。本隊作含め、この頃配給に関して何故か本クレはスルーしつつ、買取系ロマポである。
 ドキュメンタリーを体のいい方便に、一応覗き的な視点の殆ど動かないカメラで女の裸を延々と見せるのが、最大の売りといふか精々関の山。三人で海に来たデパート・ガールの奥沢圭子・三島初江・中井亜紀―但し亜紀が残りの何れかに対し、エリと呼称してゐたりする―に、五十嵐のり子が比較的長い時間を一緒に過ごす、藪蛇に精悍な監視員。五十嵐のり子含め、鍵を握つてゐておかしくはない配役が幾つかなくもない反面、その場限りの展開を超えた物語らしい物語はおろか、絡みといふほどでもない絡みをたらッたら羅列するのに専ら終始、大したディレクションの存在さへ凡そ感じさせない。一見如何にもそれらしくかありがちに思はせて、そもそも“発情族”といふ用語自体が、今作発の新ならぬ珍機軸。勝手に捏ち上げた風俗の実情である以上、最早火の気があらうがなからうが煙をたて放題。これで嘘でも与太でも面白ければまだしも、うんともすんとも、何ともかんとも。詰まらなくすらないんだな、これが。演出部と撮影部に俳優部、総崩れで何処に何に喰ひつけばよいのかそして僕は途方に暮れる画面よりも、イカした劇伴に身を委ねてゐる方が寧ろ楽しめる―やうな気がする―始末。また随分と手間のかゝつたか遠回りを強ひられる、軽くエッジも効き気味のイージー・リスニングではある。結局、誰も何も変らない以前に満足に語つてもゐないまゝに、“長く暑い夏が終らうとしてゐる”とミヤコレーションが最後の起動。中略して“人々は夏の思ひでを何時しか忘れ去るに違ひない”、“それは陽炎ほどの残影も残さず、幻よりも儚いことを知つてゐるからである”。だなどと一聴高尚か荘重ぶつて、その癖中身は霞よりも薄いのが何故かプロ鷹ナレと完全に一致するある意味ミラクルには軽い戦慄も禁じ得ない、清々しい空念仏に続いて闇雲な高さにまでカメラがドカーンと引く出し抜けにして盛大なロングが、締め括るだけの顛末も端から存在しない空疎な一作を、豪快な力技で捻じ伏せる。木戸銭を落とした小屋にて斯様な掴み処のない代物をロマポの併映で見せられた、当時の観客は果たしてどんな心持ちであつたらう。といふのが、それ以外にグウの音も出ない率直な感想である。


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 「痴漢電車 発射一分前」(昭和60『痴漢電車 発車一分前』のVHS題/製作:日本シネマ/配給:新東宝映画/監督:渡辺元嗣/脚本:平柳益実・片岡修二/製作:伊能竜/撮影:志村敏夫/照明:森久保雪一/編集:酒井正次/助監督:笠井雅裕/監督助手:高嶋静子/撮影助手:片山浩/照明助手:坂本太/録音:銀座サウンド/現像:ハイラボセンター/主題歌“星間鉄道の夜へどうぞ”作詩:高嶋静子 作曲:鈴木智子 編曲:中谷靖 唄:冬樹澪/出演:早坂明記・麻生うさぎ・藤冴子・彰佳響子・ジミー土田・池島ゆたか・ルパン鈴木)。製作の伊能竜は、もういいか。共同名義ともいへ、プロデューサーに関してはほぼほぼ向井寛だろ。
 「あれは小学校一年の時だつた」、ルパン鈴木のモノローグ起動。うたゝ寝から目覚めた子役(不明)は、満月を横切る機関車を目撃。慌てて母親(クレジットレスの冬樹澪)を呼んだものの、列車の影は既になく。狐につまゝれる優少年に、お母さんは“満月の夜結ばれた世界で一番素敵なカップルを、銀河の果てまで運んで行く”ハネムーン超特急であると語る。尤もママは、パパと銀河の果てに行つてはゐなかつた。十九の時に乗りかけつつ、そのボーイフレンドは、別の女と結婚してしまつてゐた。旨まで話した上で、パパには内緒と口止めしてビデオ版のタイトル・イン。絵柄は牧歌的なアニメ絵ながら、少女が大勢から中出し電車痴漢される大概ハードなシチュエーションがタイトルバック。クレジットに通り過ぎられては、絵師当然不明。
 そして電車、最早当たり前の勢ひで実車輌内。ボストンの範疇に入るのか、それとも巨大なロイドなのか最早判らなくなる、一言で片付けると壮絶なオロナミン眼鏡の早坂明記に、ルパン鈴木が電車痴漢。多分零細の旅行会社「銀河旅行社」に出社した主任の竹口優(ルパン)は、部下の山田(ジミー)から紹介された社長の遠い親戚とかいふ新入社員・杉本公子(早坂)と改めて対面し仰天する。あるとしたらこの辺りの法則性がよく判らないが、未来でも、松太郎でもないんだ。
 配役残り藤冴子も、銀河旅行社の社員・安井?みさ。麻生うさぎは竹口が秘かにでもなく想ひを寄せる、得意先の社長秘書・江梨。池島ゆたかがその得意先「大手商事」―王手かも―の社長・近松。彰佳響子は、電車痴漢を通して客を捕まへる、ソープランド「ジューシー」の泡姫・アキ。あと山田が江梨に仕出かす件の周囲に、笠井雅裕―か笠松夢路―は台詞つきで明確に抜かれ、少なくとも若き渡辺元嗣が見切れる。
 ナベも見られるだけ見ておくかとした、渡辺元嗣(勿論現:渡邊元嗣)昭和60年第二作、単独通算第四作。田舎から出て来た野暮つたい少女が、都会の伊達男の手によつてみるみる洗練されて行く、サルでも判る「マイ・フェア・レディ」―「プリティ・ウーマン」には五年早い―もの。に、渾身のファンタジーをブチ込んだナベシネマらしいナベシネマ。部屋ごとハネ超に連結してのけるプリミティブ特撮が案外満更でもなく、悲恋をクロスさせる力技で回収してみせたアバンが宇宙規模のロマンティックに見事結実する、一撃必殺滂沱の感涙作。と、手放しで激賞して済ませられたなら、どれだけ幸福であつたらう。
 たかが初代林家三平似のルパン鈴木が、確かに芋臭くはある上京直後ver.の公子を“連れて歩くだけでお得意さんに失礼になる女”とか外見を全否定。アキ篇の冒頭では女子社員の容姿が勤労意欲にも関ると公言―実際、双方向に関らなくはないんだが―し、あまつさへ山田が江梨に電車痴漢を働いた特大不祥事の詫びに、公子を近松に差し出すに至つては言語道断。息を吸つて吐く感覚の、無造作なミソジニーが今となつては到底素面で呑み込める代物ではない。保守を標榜する分際でらしからぬ綺麗事をいふやうだが、2020年に初めて触れて、流石に首を縦には振り難い一作。それでも俺は、今でもこの映画が大好きなんだよといふリアルタイマーの諸兄に於かれては、当然尊重するに吝かではない。誠実に、葛藤してをられるのであれば。美しい夢物語から意図的に女の裸を排したものなのかも知れないが、ハネ超での締めの濡れ場を堂々と撃ち抜けなかつたか撃ち抜かなかつた、匙加減ないしメガホン捌きには、裸映画的な疑問が時代の如何を問はず残る。あと少々ブッた切つたとて、電車で繋げば何とかなる、といはんばかりの雑な展開にも。


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 「性感治療 股ぐらの処方箋」(2019/制作:映像集団マムス/提供:オーピー映画/監督・脚本:佐々木浩久/原作:滝川杏奴《日刊スポーツ連載》/撮影:鏡早智/録音:小南鈴之助・臼井勝/編集:大永昌弘/スチール:阿部真也・宮沢豪/特殊メイク:土肥良成/VFX:大木円盤/音楽:ゲイリー芦屋/助監督:島崎真人/監督助手:中田円凛/仕上げ:東映ラボ・テック《株》/協力:上野オークラ劇場・若杉佳彦・鈴木隆人・菊沢天太・井坂雄哉・ボランティアエキストラの皆さま/出演:早川瑞希・西村ニーナ・しじみ・野田博史・加藤幹人・折笠慎也・飯島洋一・高橋洋・白石雅彦・加藤賢崇・吉行由実・さくらみゆき)。クレジットの掉尾に“ケーシーさんに捧ぐ”とあるのは、それはベンに対してなのか高峰なのか。
 公園を白衣で歩いて来る早川瑞希の、名乗るところから始まる清々しいイントロダクション。柳沢凛子(早川)の父・諭吉(高橋)は天賦の才を讃へられた開業医であつたが、内科の診察室に何故か分娩台を設置。死後の世界の実在を論じ被験者(多分演出部)に臨死体験の人体実験を施した挙句、医学界から追放される形で失踪する。凛子が内科と糖尿病科で医院を再開したものの、扱く、もとい至極当然に患者が来る訳もなく。窮した凛子が白衣の下を悩ましく包む黒下着はおろか、お乳首様や大股開きまで気前よく披露してのける、ネット・メディアの過激な取材を白石雅彦カメラマンに受けてタイトル・イン。パヤパヤ気の抜けて起動する、メイン・テーマは満更でもなかつた、のだけれど。
 これといつた物語もないゆゑチャッチャと登場順の配役残り、国沢実2015年第二作「スケベ研究室 絶倫強化計画」(脚本:高橋祐太/主演:竹内真琴)以来、四年ぶりピンク二戦目の西村ニーナは爆乳も通り越した、まるで山のやうに盛り上がつた偉大なオッパイを誇る看護士・松井絵里奈。動かざること、西村ニーナの乳の如し。飯島洋一はエロ取材にホイッホイ釣られた、日本酒とあんぱんがやめられない糖尿クラスタ・井川。役に立たなくなつた逸物を勝手に露出、触診を熱望する井川に手を焼いた凛子は、絵里奈に指示し処置室に軟禁。飯島洋一の最低でも三十六年ぶり―本人談―ともなる絡みを介錯するしじみ(ex.持田茜)は、処置室に現れるもう一人の看護士・お吉ちやんこと吉子。乳児時に両親含め乗員乗客が全員死亡したインドでの航空機事故を生き残り、狼に育てられたとかいふありがちな出自で、満月の写真を見せられると草彅剛みたいなメイクの狼女に変貌して発狂と紙一重の発情。藪蛇にアダマンチウム?まで生やした上、恐らく極度に肥大化した陰核で目の前にゐる人間を男女問はず犯すチャチい飛び道具。折笠慎也は主夫感覚の、凛子のヒモ・一馬、劇団員。腹から出てゐるにしては、口跡が妙に聞き辛い野田博史は凛子のクリニックに出入りする、「全自動製薬」の営業マン・近藤。親から嘱望された医学に挫折した過去を持ち、正体不明の人工授精器の開発に一昨日か明後日な執念を燃やす。加藤幹人は、三次元の女には勃たないナイーブな患者・純一。こちらは三本前の佐々木浩久大蔵上陸作「絶倫謝肉祭 奥まで突いて!」(2017)以来二年ぶりピンク二戦目のさくらみゆきは、二度目の来院で純一が伴ふ、彼女の夢野奈々子。吉行由実は十六歳なのに、呪ひで吉行由実の顔にさせられた少女老婆、あんまりだろ。正直無駄な仕事をした風に思へる加藤賢崇は、謎の切り株映画を上映してゐる上野オークラの支配人。男女込みホワイエの十一人―incl.原作者―に加へ、場内には更に多数の上野大隊を投入。とこ、ろで。何でまたこの期に加藤賢崇が湧いて来たのかとも思つたが、ゲイリー芦屋と同じ所属事務所といふコネクションの模様。亡霊に近い、感覚も覚える名前ではある。
 前作「好色男女 セックスの季節」(主演:栄川乃亜)の二週間後に封切られた、佐々木浩久ピンク映画第四作。聴診器よりも自然に女体が花咲く、診察室で桃色治療が繰り広げられる愉快で底の抜けた艶笑譚。これまでの、山内大輔の代替品じみてもゐる安いバッド・テイストなり憤懣やるかたないゴダールかぶれを排した、初の王道娯楽作。といふ、趣向自体を酌むには吝かでもないのだが。
 折角脱いでゐるのに、白目を剥いたしじみが「うがーぬがー」と間抜けに空騒ぐシジヴァリンのパートは、半裸の主演女優が上野オークラで大露出を敢行してゐながら、ピンク離れした大人数も巻き込んで茶も濁し損なふパピプペポーンの件と同罪、詰まらなくすらない虚仮威し未満。純一と近藤に関しては各々小団円を迎へつつ、最終的には寄る辺を否定しての、凛子と一馬の別れが不用意に後味を燻らせる。シジヴァリン初戦を除いて頑なに絡みを完遂に至らせないのは、それは潔しとせず描かないのか、それともそもそも描けないのか。殊にさくらみゆきの登場場面に際しては、美少女戦士を爆乳ナースがバイブ拷問する。空前絶後にドリーミンなシークエンスを構築したにも関らず、カメラは頑なにフラットか中途半端な距離を堅持。クライマックスの、近藤を華麗に強チンする凛子先生にアテられた絵里奈が、自らシジヴァリンを発動させる件も全く同様。絶好の見せ場を用意しておいて撮影部は満足に寄りもせず、演出部も踏み込まず。性懲りもなく持論を繰り返すが、女の裸を椅子や机と大して変わらないやうにしか撮らない撮れないの別は最早どつちでもいい濡れ場に、全体何の値打ちがあるといふのか甚だ理解に苦しむ。大蔵は我々を、乳尻が映れば涎を垂らして歓喜する、条件反射でピンクを観てゐるとでも考へてゐるのか。ついでに美人ではあれ主演女優の表情筋は動きに乏しく、展開の転換を逐一暗転で事済ます、一本調子の粗雑か稚拙な繋ぎは山本淳一の筆卸作と同レベル。持ちネタなのか何なのか知らない以前に興味もないのはさて措き、酔狂で片付けられる高橋洋―といぬちゃん―は兎も角、藪蛇に連れて来られた吉行由実の扱ひには、御当人が嬉々としてゐるだけに複雑なレイジも禁じ得ない。愉快で底の抜けた艶笑譚に話を戻すと、同じ布陣と脚本とで、新田栄の方が百億倍満足に観られるものを仕上げて来たにさうゐない、と思ひかけ、幾ら何でもそれは新田栄に非礼極まりないとマリアナ海溝よりも深く反省した。例によつて当サイトは、観るにせよ見るにせよ、これまで佐々木浩久に関して一本たりとて素通りしてゐる。毎度毎度この手の引き合ひに出して申し訳なくも別に思つてゐないが、髙原秀和ほどの負のベクトルの絶対値にさへ欠く、斯様な正しく箸にも棒にもかゝらない映画撮つてて佐々木浩久は大丈夫なんかいなと、グルッと一周して軽く心配した。心配するに及んで改めてググッてみたところ、驚くといふよりも呆れる勿れ、映画・Vシネ・テレビにウェブ媒体まで押並べて、佐々木浩久のフィルモグラフィーは絶倫謝肉祭以前で一旦停止してゐる。何をかいはんや、といふ話でしかない、榊英雄以下ではないか。


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 「若妻不法監禁」(1989/製作:国映/配給:新東宝映画/監督:片岡修二/脚本:片岡修二・瀬々敬久/企画:朝倉大介/撮影:下元哲/照明:佐久間優/編集:酒井正次/助監督:笠井雅裕/撮影助手:森下彰三/照明助手:清水康利/録音:銀座サウンド/現像:東映化学/出演:しのざきさとみ・正木直美・伊藤清美・池島ゆたか・山本竜二《友情出演》・下元史朗)。VHSのジャケットでは、正木直美が前面にフィーチャーされてゐる。
 仰角で捉へた民家にタイトル開巻、ベッドの上に猫が眠る一室にモノローグ起動「あたしは全て知つてるんです」、「あの真夜中の乱痴気騒ぎの真相を」。窓を照らす雷鳴とともに猫も起動、モノローグは淡々と続く「でもあたしはそれをどうやつて皆さんに伝へていいか判りません」。「兎に角最初から思ひだしてみたいと思ひます」、猫視点で階下に下りると、台所の食卓には画面左からしのざきさとみと池島ゆたかに正木直美。周知安(=片岡修二)でなければ笠松夢路(=笠井雅裕)でもなく、恐らく在りものの映像に多分下元史朗が声をアテたTVのアナウンサーが、狭山市の精神病院から男女の分裂病患者―劇中用語ママ、だから1989年の映画なんだつてば―が行方不明になつたのと、新宿区百人町で会社員野沢俊介(41)・妻明子(37)・長女倫子(15)の三人が惨殺された事件を伝へる。一見至つて普通の直美(仮名)に対し、池島とさとみ(重ねて仮名)は明らかにアレな初めからブッ壊れた団欒。取つ組み合ひを始めた池島とさとみに直美が仲良くするやう叫ぶと、二人の豆鉄砲を喰らつた顔からカット跨いで夫婦生活?に突入してみせるのは、幾らピンクの文法を以てしても流石に唐突。直美もワンマンショーで追走、見るから不安定な序盤が漸く落ち着きを取り戻すのは構はないが、またこの濡れ場が長いんだな、十五分費やすのには別の意味で軽く度肝を抜かれた。ただし長丁場を、走り抜いた訳ではない。直美の絶頂は、来訪者を告げるブザー音に遮られる。三人が恐々玄関口に出迎へてみると、喪服の伊藤清美と下元史朗が「バッ」とお化け屋敷感覚で現れ、たどころか「香典袋ないか」とか奇声を上げながら家内に上がり込んで来る。下元史朗の、意図的に素頓狂な口跡での「香典袋ないか」には、正直この映画大丈夫かと頭を抱へた。配役残りカメオの山竜は、全部で何人になるものやら判らない頭数要員。
 淡々と国映大戦第三十三戦は、昭和の終りに何があつたのか、一般映画なりVシネもない、片岡修二当年一本きり作。
 見るから危なかしい一家に、闖入する火に油を注いでキナ臭いストレンジャー。果たして、この中で最もデンジャラスなのは誰か。ありがちなネタ乃至オチを一発勝負のミスリーディングと、果てしなく長い絡みで乗り切る、ある意味清々しい一作。さうはいへ丁寧すぎて些か冗長のきらひもなくはない真相明かし、の以前に。どうしても躓かざるを得ない急所が、ふかふかのピヨピヨ辺りのどうしやうもない安さとダサさ。二階で直美が下元史朗に犯されてゐる間の、ダイニングキッチンにて伊藤清美主導でオッ始まる巴戦。一箇所吃驚するほど雑に飛ぶのは、裸映画的にはなほさら宜しくない。粗がそこかしこに目立ちつつも、猫が眠るやうに目を細める奇跡のショットで終りは静かに綺麗に畳んでみせるのは、師匠である深町章譲りの妙手。


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 「わいせつ秘書 肉体ご奉仕」(1996/企画:セメントマッチ/制作:オフィスバロウズ/提供:Xces Film/監督:池島ゆたか/脚本:五代暁子/撮影:千葉幸男/照明:渡波洋行/編集:酒井正次/メイク:古川まり/スチール:津田一郎/助監督:高田宝重/監督助手:瀧島弘義/撮影助手:藤美都夫/照明助手:渡部和成/録音:シネキャビン/現像:東映化学/出演:神無月蘭・林由美香・吉行由実・平賀勘一・池島ゆたか・山ノ手ぐり子・藤森きゃら・神戸顕一・三橋里絵・木沢雅博・津布久雅之進・真央元・山本清彦)。出演者中、三橋里絵・木沢雅博・津布久雅之進は本篇クレジットのみ。木沢雅博が、木澤でないのは本篇クレジットまゝ。
 ビル外景にタイトル開巻、劇伴は卒業式で御馴染ヴィヴァルディのヴァイオリン協奏曲集「四季」。ロングで抜く新日本商事のオフィス―部署不明―が、最初の山場。画面中央の上座に神戸顕一の課長と、並んで座る高田宝重は課長代理か。画面左手でワープロを触つてゐるのが三橋里絵、課長に鰻を奢つて貰ふミツコ(山ノ手ぐり子=五代暁子)と藤原(藤森)に、右手奥で立ち話する木沢雅博と津布久雅之進。津布久雅之進の、本名は津布久雅之。もう一人、ミツコと藤原の画面手前で、弁当を開けるのは瀧島弘義にしては明らかに年恰好が合はないなと首を捻つてゐたが、これ津田一郎だな。
 その頃社長室では社長(池島)と秘書の五十嵐真理子(神無月)が、真理子の事務仕事が全然進まないといふほどの頻繁な情事。そこは寧ろ精力を讃へるべきなのかも知れないが、社長暇なのか。その夜、真理子が残業してゐると、真理子に岡惚れする営業三課の中林(真央)が、真理子経由で社長にお目通しする企画書を持つて来る。社長は家族サービスで二週間ハワイに、真理子は出勤する休日。真理子の恋人で、定職に就かない藤沢ヨシヒコ(山本)もバイカールックで会社について来る。
 配役残り平賀勘一は、ゴルフバッグを取りに来る部長。林由美香は平勘部長が真理子に贅沢なか身から出た錆な悩みを吐露する、結婚を迫られ窮する不倫相手・桜田こずえ。自ら給湯室にて、上司との関係を吹聴する性質の悪い女。そして何時までも出て来ないのに、軽くハラハラさせられた吉行由実は、社長がハワイで肉体ご奉仕する妻のクミ。新日本商事の、出資金を半分以上出したのはクミの乳、もとい父。
 布袋寅泰と同じ顔の神無月蘭出演作を、見られるだけ見ておくかとした池島ゆたか1996年第三作。社長が社どころか日本ごと離れてしまふのもあり、池島ゆたかの社長秘書ものといふと脊髄で折り返して想起する、「悶絶社長室」と「悶絶大股開き」のノーパン秘書二部作(2003)とは全くの別物。
 休日の社内を舞台に、主演女優の濡れ場を連ねる構成は鉄板。二番手の絡みはそつなく消化し、度を越した温存ぶりに危惧を覚えるのも禁じ得なかつた三番手も、諸刃の剣スレッスレで本筋に捻じ込む。さうはいへ自堕落な藤沢とは別れるは、クミに逆らへない社長からは国際電話一本で馘にされるは。挙句中林に手酷く凌辱された末に、緊縛放置され翌日出社した一同の度肝を抜く真理子の去就には一欠片の救ひさへなく、後味は徒に悪い。そもそもGUITARHYTHMなヒロインよりもいつそ、若干長めのチンコカットにヤバいウェリントンを合はせたビジュアルだけで既に大概キナ臭い上に、独特のビブラートの備はつた口跡を、更に微動を意図的に増幅させる地味な至芸で加速。結果グルグル何周かして最早清々しいほどの、途方もない偏執性を爆裂させる中林役の真央元(a.k.a.真央はじめ)が出色。初登場の企画書を真理子に持参した際の第一声、「何時も綺麗ですね五十嵐さん」から既に悶絶ものなのだが、中林は洋菓子を手土産に、真理子の休日出勤を陣中見舞ひ。一旦押し倒しての、まだゐたのかと真理子も驚かせた藤沢改め、やまきよとの神戸軍団同門対決は当時的には全然鮮度も失つてゐない横道の見所。そこに社長から馘にする旨の電話がかゝつて来る流れを受けて、噂だと頑なに思ひ込んでゐた、真理子と社長の仲を終に認めるに至つた中林は「何てことなんだー」と底を抜いた大声で火蓋を切るや、矢継ぎ早に畳みかける「ボクの天使が社長とはデキてーの」、「会社に男は連れ込みーの」、「夢が、夢が粉々ぢやないかよー」の絶叫・ストリーム・アタックは全体誰が主人公なのか判らなくなる一大ハイライト。女の裸なり物語云々よりも、この際マオックスを尊ぶべき一作。もう一点特筆しておきたいのが、真理子と藤沢が完全に煮詰まつた収拾のつかない修羅場から、カット跨いで吉行由実の爆乳を飛び込ませる、力技のジャスティス。


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 「ギャル番外地 シメさせてもらひます」(2019/制作:ストラトス/提供:オーピーピクチャーズ/監督・脚本:山本淳一/プロデューサー:黄金旭/撮影:橋本篤志/照明:本間光平/録音・MA:大塚学/美術:佐々木勝己/助監督:鈴木農史/編集:皿井淳介/撮影・照明助手:塚平康公・伊東佳純/編集助手:玉置太郎/制作担当:岡山うさぎ/特殊造形:土肥良成《はきだめ工房》・李華曦《はきだめ工房》/VFX:夜西敏成/殺陣:米山勇樹/スチール:本田あきら・中江大助/衣装協力:マイティー/衣装提供:山本絹子/キャスティング:井川楊枝/仕上げ:東映ラボ・テック《株》/音楽:山崎裕右《Artlark》/主題歌:『Ooku~大奥~』by ☆MEMI☆/挿入歌:『suMMer wave』by MAiMEMi《マイカル/MEMI》作詞:MAiMEMi 作編曲:うさげ/脚本協力:光武蔵人・川松尚良・深沢真一/協力:株式会社MARCOT・桜台POOL・石井良和・鎌田尚純・国沢実・山崎玲/出演:霜月るな・神楽アイネ・CHIHIRO・三上あや香・新井舞衣・豊岡んみ・萬野崇博・ワニ完才・希純正宗・きうちさとし・西村太一・石井めぐみ・堀川チロル・小野修・園田シンジ・滝本より子)。出演者中、希純正宗から堀川チロルまでは本篇クレジットのみ。本クレ時に流れる主題歌は当然判るのだけれど、挿入歌といふのは何処で流れてたかいな。
 キービジュアル的には都市が荒野に囲まれた、20XX年の“ 文明の半分と電脳空間が完全に破壊された世界”。女が支配するファムシティに、自称処刑人のミソジニスト・後藤(園田)が流れて来る。サマになる地下道―もしくはトンネル―にて、後藤はポケット瓶のウイスキーを報酬に情報屋の田村セイジ(小野)に接触。田村が開陳する、娼婦上がりでファムシティを統べるグランドママー(滝本)と、リーダーのアリア(CHIHIRO)以下、特攻隊長のキャンディ(神楽)に怪力のコング(三上)、百合の花咲かせるナナ(新井)とサイコ(豊岡)。揃ひの赤いレインコートがトレードマークの、実働部隊「マッドフォクシーズ」のイントロダクション。ここで滝本より子は、公開当時あれだけ喧伝されてゐた割に、てんで沙汰は聞こえて来なかつた続篇が遂に動きだしたのかと思ひきや、コロナ禍最悪のタイミングに見舞はれてゐる模様の「絶倫探偵 巨乳を追へ!」(2018/監督:横山翔一/脚本:奥山雄太/主演:春原未来)以来。その場の先陣を切つたキャンディにあつさり圧倒された後藤は、アリアにシメられる。場面変つて、廃工場味のマッドフォクシーズ根城。一同を集めたグランドママーは勇退と、弟であるジュニア(萬野)が選んだ女に、跡目を継がせる旨言明する。
 配役残りワニ完才は、椅子にすらなるグランドママーの忠実な下僕・梅垣。西村太一は、コング・ナナ・サイコが乱痴気騒ぎに弾けるパーティー要員・松田。ビリング三番手のCHIHIROが終に脱がない反面、四五六番手が出し惜しまず乳を放り出す気前のよさには軽く驚いた。そして満を持す霜月るなが、新入りのナナは知らないマッドフォクシーズの前リーダーで、理由も告げずファムシティから姿を消したボウィ。凌辱され声を失つたキャンディと出会つたボウィは、発声器―と録画デバイス―のついたチョーカーを渡してゐた。希純正宗は、ボウィ行きずりの男・小園、主演女優の初絡みを介錯する。きうちさとしと、本来は全部平仮名の石井めぐみに堀川チロルは、梅垣がグランドママー用に強奪する男娼の新田と、新田と巴戦の商談がまとまりかけてゐた二人連れ・ビューティーとビーナス、ビューティーが牡牛座でA型の方。いしいめぐみが藪蛇に石井めぐみ名義を使用したため、国立市議会議員二期目を務める、地球戦隊のお母さんのウィキペディアが引き摺られてしまつてゐるのは御愛嬌。新田に話を戻すと、豪快な騎乗位を披露する滝本より子(ex.冨田じゅん)のガチ濡れ場といふのが、実に池島ゆたか2011年第二作「淫虐令嬢 吸ひつく舌」(脚本:五代暁子/主演:夏海碧)ぶり。花の命が、案外通り越して長い。
 前作にして筆卸作「マジカル・セックス 淫ら姫の冒険」(2018/脚本:大畑晃一・山本淳一/主演:阿部乃みく)が、あの―どのだ―髙原秀和のロックンロールに劣るとも勝らない惨憺たる出来であつたゆゑ、次があること自体に驚いた山本淳一ピンク第二作。
 田村の口からキャンディの死を知つたボウィは、ファムシティに舞ひ戻る。そこに田村がゐる時点で、ファムシティにボウィゐなくね?とかいふツッコミ処はさて措き、ダチ以上恋人未満の死を機に、伝説の女が去つた筈のホームタウンに帰つて来る。女番長略してスケ番ならぬ、ギャル番映画としてのフォーマットは鉄板。最初は何処の馬の骨とも知れぬ部外者視してゐたボウィが、マッドフォクシーズの先代と知るやナナが途端に先輩先輩と襟を正す辺りのディテールも、何気に神を宿してゐる。走らせるなり、アクションさせる分には山本淳一の演出力以前に正直身体能力が心許なくもあるものの、久々に見るレベルでもりもりと盛つた霜月るなは素の立ち姿も映え、萬野崇博を筆頭あるいは底にメロッメロの男優部に比して、マッドフォクシーズのメンバーが全員それなりにキャラクターも立つてゐる。アリアの、顔左半分の曲がり方は別の意味で怖いのだが。さて措き終盤の、真相に辿り着いたボウィが、マッドフォクシーズを一人一人撃破しながらグランドママーの謁見を目指す展開は、七十分でも足らず尺が寸詰まりつつ、梅垣のチンコに塗られた自白剤で全てが詳らかになるといふのは、ピンクで映画なピンク映画を掌中にした心憎い好手。何はともあれ、あるいは何はなくとも。作品世界の肝要を成すボウィ・ミーツ・キャンディのエモーションを、神楽アイネが上下左右の僅かな首移動だけで巧みにコミニュケートする、一撃必殺に美しいシークエンスで見事にモノにしてみせたのが最大の勝因。そもそも、ボウィは何故マッドフォクシーズと、ファムシティを捨てたのか。当人以外誰一人として知らなかつた秘密も、思ひのほか綺麗に回収される。手放しでワーキャー褒めそやすには別に当たらないにせよ、結構不毛な外様戦線に、一筋の光明差す一作。同じオッパイ丸出しで単車を駆る―フリをする―映画でも、国沢実のアレとは正しく雲泥の差、といふのは意図的に吹いたか滑らせた蛇の足。


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