「美人秘書 おしやぶり接待」(2001/製作:小林プロダクション/提供:オーピー映画/監督・脚本:小林悟/撮影:小山田勝治/照明:ICE&T/編集:井上和夫/スチール:佐藤初太郎/助監督:竹洞哲也/監督助手:加藤義一/撮影助手:邊母木伸治/タイトル:ハセガワタイトル/録音:シネキャビン/現像:東映科学/出演:風間今日子・佐々木麻由子・間宮結・本村慧介・茂木晃・坂入正三)。出演者中、本村慧介がポスターには元村尚春、全ッ然違ふぢやねえか。加へて十和田宏と沢田清彦なる正体不明の名前が、ポスターではサカショーの後に更に連なる。
妙にアンニュイな劇伴流れる中、街の景色を適当にロングで抜いて早々にタイトル・イン。工業機械輸出入の貿易会社「コン・トレイディング」社長の近藤(坂入)が、ハイヤーの後部座席にて秘書・永田敬子(佐々木)に軽く手をつけつつクレジット。社長室で本戦を交へた事後、秘書室長の村上から近藤の先輩の娘に関して内線が入る。東京スクールオブビジネスを後にする古川理恵(風間)に、村上清(本村)が接触。秘書課に通ふ娘の就職の世話を、理恵の父親は後輩の近藤に―理恵には無断で―頼んでゐた。ところが全く登場しない古川は、今度は近藤の知らない内に二回目の脳梗塞で昏倒。退学し働く心積もりであつた理恵を、情に絆されたのか単なる下心か、近藤は至れり尽くせりで会社に招き入れる。他方、近藤と五年続いた関係を煮詰まらせる敬子は、そんな近藤の姿に臍を曲げる。
配役残り、一体何処まで持ち越す気なのかと別の意味でスリリングな三番手の間宮結は、近藤が新秘書と偽り理恵を煙に巻く、社長室に連れ込んだ中野銀座のバーの女・留美。挙句に車内で軽く痴れるに止(とど)まり、満足にも何も一切脱ぎやしない。それと、見切れるやうには撮られてゐないが、敬子行きつけのバーのバーテンが加藤義一で、荒れる敬子に絡まれるカウンター客は竹洞哲也のやうな気がする。
コン・トレイディング社屋に掲げられた看板の文言が、“CON TRADING CO.,”。COMPANYを略した旨を意味するピリオドは兎も角、その最後のカンマは何なのよ。と、小道具の端々までルーズな小林悟2001年第二作。ビリング頭の風間今日子は声も別人のアテレコ(主不明)で徹頭徹尾ヤラれるまゝに、物語の動因はボスが新しい小娘に心を移し、お払ひ箱とされた格好の敬子の憤怒が担ふ。ところが、わざわざ男衆二人(が十和田宏と沢田清彦なのか?)を召集し理恵をレイプさせる見せ場まで設けておいて、留美の登場に完全に匙を投げるに際しては、敬子の矛先は改めて近藤に向けられる。劇中唯一の軸らしい軸たる筈の敬子がその場の勢ひで行動する以上、およそ軸として満足に機能しない上に、敬子が村上にコピーを依頼してゐた切札たる書類の中身が、オモチャの部品、に偽装した地雷部品の輸出書類。来た来た来た!出し抜けな小林悟の反戦思想が起動したぞ。敬子の義憤―いふまでもなく、その少し前まで滾らせてゐたのは理恵に対する私憤である―の形を借り、今なほ世界中で後を絶たぬ地雷被害の概説に下手に尺を割いたかと思へば、結局顛末は放り投げ社長室での理恵と近藤の何もかも締まらない締めの濡れ場で適当に映画を終らせるのは、紛ふことなき大御大仕事・オブ・大御大仕事。ついでに、茂木晃は一体何処に出て来たんだ、本当に全然見てないぞ。隅々まで満ち満ちた破壊力の吹き荒れた後になほ残る、ブルンブルン揺れる様が素晴らしい、風間今日子のオッパイは矢張り偉大である。とでもしか、この際思ふほかない。
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