真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「秘密桃さぐり」(1989/企画:サン企画/製作:Gプロダクション/配給:大蔵映画/監督:市村譲/脚本:夢野春雄/撮影:立花次郎/撮影助手:倉田昇/照明:沖茂/照明助手:中村登/助監督:浦谷純/編集:酒井正次/スチール撮影:最上義昌/音楽:東京スクリーンサービス/録音:銀座サウンド/効果:サウンドボックス/現像:《株》東映化学/協力:ホテル2001《小岩》/出演:山岸めぐみ・浅野美紀・上原絵美・今井かんな・京舞子・末永稔・黒田武士・手稲のぼる・吉岡圭一郎・松本嘉・高崎隆二)。
 ピンクチラシにタイトル開巻、クレジットを経て、手書き感が爆裂するかなめ探偵事務所の表札。さて室内、これが最初にして最大の衝撃。画面右手は襖、正面と左手はカーテンの一室を真正面中の真正面から抜く画角。家具類は何の拘りも感じさせずに配置され、中央奥に猫を撫で撫で椅子に座つた山岸めぐみを置き、その左前方―画面上は右手前―ではケミカルウォッシュにTシャツをタック・インした末永稔が、椅子に肘をつく格好でだらしなく地べたで雑誌を捲るのを、挙句に逆の意味で完璧に中途半端な距離で捉へる。全てが適当な圧倒的に無造作なショットに、グルッと一周どころかグルグル数周して度肝を抜かれた、バターになるかと思つた。猫のショパン(普通の三毛猫)は可愛がりつついきなり序盤から全速後進でマッタリする中、ベランダにて女探偵の眞美(山岸)と助手の三郎(末永)が致してゐると、かなめ探偵事務所を依頼客が訪れる。役名併記のクレジットに、やれやれ、見慣れぬ俳優部の配役を固定する最大の手間が省けたと胸を撫で下ろしたのも正しく束の間、クレジットでは速見とあるものの、黒田武士が眞美(苗字は要?)に渡した名刺には環境計画事務所の鈴木淳、そんなに情報を攪乱するのが楽しいのか。人を小馬鹿にした効果音とともに、脈略などといふ言葉は知らぬ長い長い回想パート。男女がああだかうだするホテル街での引いた画に、石川恵美のアテレコかと思ひきや何と前名義。鈴木は何もしないとホテルに連れ込んだ部下のまゆみ(上原絵美=石川恵美)を、ふん縛つて犯した末に「首吊つて死ね!」の捨て台詞を投げられ逃げられる。納まりのつかない鈴木は、部屋にあつた情報誌に目をつけホテトルを呼んでみることに。現れたリサ(浅野美紀/但しこの人こそ正真正銘石川恵美のアテレコ)を忘れられず捜して欲しいといふのが、何だかんだで序盤を完全に喰ひ潰す本題。本題といつて、本題といふほどの全うな展開をその後が追ふ訳でも全くないのだが。
 改めて配役残り、高崎隆二はてれんこてれんこリサ捜しを開始した眞美が、繁華街の雑居ビルにてリサの写真を見せ尋ねる、クレジット表記ママでマネジャー。その場でマネジャーにスカウトされた眞美が、探偵稼業も殆どそつちのけでホテトル嬢に華麗なる転身―もうヤケクソ―を果たすといふのがふざけ倒すにもほどがある。a.k.a.吉岡市郎の吉岡圭一郎は眞美の客・橋本、京舞子は橋本が過去に買つた、リサはリサでも天と地の地の方の風俗ギャル。首から下はさうでもないのに、顔だけいやに老けてゐる。松本嘉は―ホテトル嬢としての―眞美に興味を持つ、編集まで手掛けるカメラマンで、今井かんなは眞美について訊かれる同じ店のミキ。要は眞美とカメラマンを繋げば事済むポジションながら、普通に一戦こなす。となると全員脱ぐ女優部が総勢五名、盆暮れに掠らない―公開九月―にも関らず、闇雲だか藪蛇に豪華な布陣ではある。そして手稲のぼるが、リサが目下在籍する店の店長、兼情夫の藤木。
 DMMに残る弾も今作含め残り三本、正直ツッコミ処にすら欠く空虚なルーズさに果てしない徒労感を覚えなくもない、市村譲1989年第七作、因みにこの年全九作。寧ろ、あるいはこの際、平成の初めからこんなことをやつてゐて、この期にピンク映画が命脈を未だに保ててゐることが、実は途轍もないラックなのではあるまいか、とさへ感激しかねないまでに相変わらずグッダグダにグダグダな凡作。あるいは、堆く積もつた下手な鉄砲の大山の奥底、量産型娯楽映画が深い闇の中から繰り出す難解な逆説を玩味すべきなのか。中身のない映画の中身に無理から話を戻すと、本来潤沢な裸要員の頭数は、吉岡圭一郎以外―高崎隆二は濡れ場には与らない―ボロッボロの貧弱な男優部と、兎にも角にもメリハリを欠いた始終の中単なる羅列に堕する形で、まるで有難味を感じさせない。それと怒られるものでも映り込んだ―まさか市村組は前貼をも面倒臭がるのか!?―のか、始終絡みの最中にチョイチョイカットが飛ぶのが絶妙にして確実に居心地が悪い。結局リサには藤木がゐるゆゑ、鈴木の恋路?は叶はずじまひといふ結末自体も大概奮つてゐつつ、そもそも鈴木が中盤以降完全に退場したまゝ名前も出て来ない。何処かしら何かしら長所はないものか、どんな映画にも一箇所くらゐはチャーミングなところがある筈だ。所々で繋ぎを整へる―整へるも散らかるもない点は等閑視―ショパンのショット、御猫様もおとなしく、猫は普通に撮れてゐる。三毛猫好きには堪らない、のかも知れない一作、何だそのピンク映画(´・ω・`)


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )




 「官能エロ実話 ハメられた人妻」(2014/制作:セメントマッチ/提供:オーピー映画/監督:池島ゆたか/脚本:五代暁子/原題:『サスピシャス・マインド』/撮影監督:清水正二/撮影:海津真也/音楽:大場一魅/編集:酒井正次/助監督:菊島稔章/監督助手:松井理子/撮影助手:宮原かおり/照明応援:広瀬寛巳/編集助手:鷹野朋子/タイミング:安斎公一/現場応援:田中康文・小川隆史・小山悟・江尻大/出演:愛田奈々・月美弥生・川越ゆい・野村貴浩・なかみつせいじ・竹本泰志・池島ゆたか・松井理子・小松ミキック《写真出演》)。クレジット終盤に力尽きつつ、現場応援が異様に豪華な布陣だ。
 みさと(愛田)と夫・夏目一哉(野村)の夫婦生活、事後、一哉は別室で煙草を銜へ、みさとは膣内に放たれた精に複雑な表情を浮かべる。いはゆるデキ婚をしたものの、みさとは流産。以来二人の間の絶妙な溝を窺はせた上で、人妻がピンクから真紅に変るタイトル・イン。庭木にホースで水をやる一哉と、スマートなガッハッハ造形の池島ゆたか。みさとの父・木下(池島)は大手食品会社「明和食品」の二代目会長で、二人には広過ぎる夏目邸も、木下が金を出したものだつた。木下から明和に誘はれた一哉は、現職の雑誌編集を選択し辞退。一方、孫を熱望し屈託なく木下が提案した体外受精に、みさとはヒステリックに反応する。そんな最中、歩道橋の上で自己否定がてらぼんやりするみさとは、この期に及んで熟(こな)れぬカット割で工藤麻子(月美)と交錯、転んで怪我をした麻子宅まで同行する。国会議員のセンセイ(なかみつ)の愛人でシングルマザーとの麻子の部屋には、実家に預けてゐるといふ娘・まりな(小松ミキック/小松公典の愛娘)の写真が溢れてゐた。その場の勢ひでみさとが麻子と友達になつてみたところ、麻子の傍若無人な距離感にみさとは閉口させられるのみならず、嘘か誠か、麻子が遊びに来た後には金品が紛失さへしてゐた。元々抱へてゐた心の爆弾に加へ麻子にも振り回され、みさとは消耗する。
 配役残り竹本泰志は、みさとが通ふ風間精神科心療内科クリニックを開業する風間、一哉の大学の先輩。川越ゆいは、PCが壊れてメールが送れないだなどと、不自然な方便でUSBメモリを届けに来宅する、編集長である一哉の部下・湯川まりな。順番を半分前後して松井理子は、麻子と普通に世間話する夏目家お向かひの市村さんと、こちらは実在から疑はしいともいへる、クラッシュ寸前のみさとに、擦れ違ひ様旦那を大切にするやう説教する藪から―しかも竹を接いだ―棒な女・矢竹の二役、役名が矢竹といふのはレッドな嘘である。そしてなかみつせいじの正体は、一哉上司の局長・向井。因みにオフィスはオミットした出版社周りのロケは、辰巳ビル前。
 一般映画処女作「おやぢ男優Z」が遂に九州に上陸する一週間前に、露払ひとばかりに八幡は前田有楽にかゝつた池島ゆたか2014年第二作。絶好のタイミングとも思へ、実は着弾は黄金週間の小倉名画座が先行してもゐる。一件藪蛇な憎まれ口、もとい苦言を呈したい―呈し先はハコ―のが、結果的に予約で席が埋まつたらしいとはいへ、小倉上映のフライヤーが有楽に見当たらないのは如何なものかと首を傾げざるを得ない。池島ゆたか御当人の意向は勿論存じ上げぬにせよ、ODZがシネフィルやサブカルの愛玩物になるだけでなく、これまで池島ゆたかのピンクを一切の誇張でなく何十本と観て来た、小屋のオッサン連中の目に触れることも望むものである。映画の中身に話を戻すと、余程好きなモチーフなのか師匠・深町章でいふと戦中・戦後もの感覚で池島ゆたかが折に触れ手掛ける、サイコなサスペンスでは今回はない、サイコがヒロインのサスペンスといふ意味でのサイコ・サスペンス。次第に壊れて行くみさとの姿が、演出家なり演技者の勝利なのか、単に愛田奈々の口跡が相変らずへべれけなのか甚だ微妙なのはここはもう御愛嬌として、妊娠能力に弱点を抱へたみさとの疑心暗鬼が、夫の―健康な女との―不貞に直結する。さういふ方便でスムーズに畳み込まれる濡れ場の釣瓶打ちはストレートに見応へがあり、とりわけ特筆すべきは、三番手で飛び込んだ「盗撮ファミリー 母娘ナマ中継」(監督・脚本:田中康文/主演:佳苗るか)に於いて度外れたインパクトを叩き込んだ大器こと、二番手に昇格した月美弥生。揉みたい―出来れば荒々しく―オッパイ、ヤリたい体。与太にしても何を吹き散らかしてゐるのか自分でもよく判らないフリをするが、寧ろルックスの垢抜けなさまで含めて、他愛ない劣情を直撃する官能的なエロ肢体が堪らない。女王・愛田奈々と、破壊力とフットワークともに長けた飛び道具・月美弥生。三番手はおとなしく三番手ながら、よしんば素材の勝利に過ぎなくとも裸映画的には充実する反面、正直伝はり辛い子供物のクロックス―デザイン的にサイズが判りにくい―だの口元の黒子だの、下手に細部に拘泥し神を宿し損ねる割に、割れる真相の底が浅過ぎる劇映画としては拍子が抜けるか腰も砕ける出来。巴戦のエクストリームで駆け抜ける戦法も肯けるとはいへ、ハメられた主演女優が終に退場したまゝといふ無体な扱ひ、乃至は開き直つたかのやうな作劇にはある意味泣けて来た。後述する視点からは、止め処なく涙が流れる一作ではある。それと一点ツッコミ処、百歩譲つてオープンの自然光ならばまだしも、屋内で映り込んだ人口光の余光が序盤に散見されるのは考へもの。

 撮影順はさて措き、一週間といふ鼻差で「色道四十八手 たからぶね」(製作・配給:PGぴんくりんく/監督・脚本:井川耕一郎/企画・原案:渡辺護)の後に封切られた今作は、支離滅裂なツイートを残し活動を停止した愛田奈々にとつて最終戦といふ格好になる。その時点にあつてもよくて試行錯誤、あるいは右往左往に止(とど)まつたお芝居の方はひとまづ兎も角、黙つてフレームの中に佇むだけで風格を感じさせた、最後とはいひたくないが久し振りの女優さんであつただけに、大成前の戦線離脱は重ね重ね勿体ないところではある。尤も、愛田奈々自体が実は一旦引退後の再起動名義につき、頭の片隅に一縷留めておく程度のホープも、残らなくないのかも知れない。


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )




 「痴漢電車 乳房がゆれる」(1990/製作・配給:大蔵映画/監督:小林悟/脚本:松瀬直仁/撮影:柳田友貴/照明:小野寺透/編集:金子編集室/スチール:大崎正治/助監督:青柳一夫/監督助手:植田晃/音楽:サウンドボックス/録音:銀座サウンド/現像:東映化学/出演:井上華菜・中山みゆき・氷室真由美・板垣有美・坂入正三・朝田淳史・工藤正人・一の瀬まみ)。
 小粋な劇伴弾ける摩天楼店内、今作特筆すべきなのが、カメラはグイングイン動き、サカショー以下俳優部も活き活きと走る摩天楼パートの充実。尤も後述する、カオリは一体何しにヒット・アンド・アウェイしたのかと、特に見所がほかに見当たらないといふのは内緒。カウンターではマスターの梅さん(坂入)と、常連客の佐々木(平田)・田中(工藤)が痴漢談義に花を咲かせる。一分強回して、梅さんが得意気に武勇伝を語り始める。八時三十分新宿発、八王子行普通電車の八両目に変態女が出るとの噂を聞きつけた梅さんは、現に黒い革のコートにサングラスの仏頂面の女(井上)と遭遇。コートを剥くと中は全裸で、オッパイのアップにタイトル・イン。井上華菜のオッパイは綺麗な形をしてゐつつ、ブルンブルン揺れる類のものではない。
 配役残り、え?もう残り配役かよ。佐々木と田中は、変態女の一件を全く真に受けない。カウンターを挟んで喧嘩を始めた梅さんと佐々木の仲裁に入る板垣有美は、殆ど指定席の勢ひで摩天楼ママ。結局脱ぎもしない癖にビリングが妙に高い中山みゆきは、手洗ひが塞がつてゐて二人で外に連れションに出た佐々木と田中を、頬を赤らめながら注意する婦警。このシークエンスよくよく考へてみると、深夜に婦警が一人でパトロールしてゐるのかといふのはツッコミ処、相手を弁へず野暮をいふやうだが。氷室真由美は電話を入れた後(のち)佐々木を追ひ摩天楼に来店する、婚約者の近藤恵美。観客なり視聴者にはそれと知れる形で何事か過去に因縁あるらしき、田中と恵美が煙草を買ひに出たまゝ戻らない中、次第に焦れる佐々木に梅さんが再び痴漢の武勇伝。四十分前まで温存される一の瀬まみは、痴漢した梅さんを自宅にまで連れ込む人妻・カオリ。と、いふのは甚だ難解な二段階オチにて開陳される梅さんの妄想、要は法螺話。そこまで来たところで、藪から棒に泥酔したカオリ当人が摩天楼に乱入。無神経な佐々木に軽く絡まれたかと思ふと、風のやうに現れ風のやうに退店する謎展開。「何なの?」とは有美ママの弁、それは俺達の台詞だ。
 多分四本撮りを敢行した洋行含め、小林悟1990年全十八作中第五作。流石に十八本も撮り散らかs・・・もとい撮りまくつただけあり、安定してもゐるけれども信頼はしない貫禄の大御大仕事。鮮やかなほどに無体なラストを軽々とバレてのけると、氷室真由美と一の瀬まみで長尺を費やす内に、何時しか開巻の―例によつて梅さんの嘘である―八時半の女は完全に忘却の彼方に。大御大ならやりかねんとの明後日な期待は裏切り、三人で噂の女を捜して乗り込む痴漢電車。実は痴漢すら実際にはしたことのない梅さんが、果敢に特攻を仕掛けた中山婦警に現行犯逮捕エンド。しかも佐々木と田中には見捨てられるといふ結末には、腹を立てるなり呆れるといふよりも、寧ろこの際泣けて来た。直前に叩き込まれるのは、わざわざ何処かしら神々しい光まで当てた上での、痴漢の神にお力をお貸し下さいと祈るサカショーの健気なショット。小心者のダメ男が、最後に腹を決め一花咲かせる。よしんば限られた観客でしかないにせよ、惰弱な琴線を激弾きする必殺展開のフラグを立てておいてのこの非道な仕打ち。誘導しかけたエモーションに後ろ足で砂をかけ、臍を噛む馬鹿を嘲笑しすらせずにチャッチャと捌ける。これぞ小林悟の映画といふのは、別に自棄を起こしてゐる訳ではない、多分。

 もう一点思ひ返すだに涙を誘ふのは、結局、序盤以来出て来ずじまひの主演―の筈の―女優の処遇。


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )




 「絶倫69歳 和服新妻の初夜」(2004/製作:フィルム・ハウス/提供:Xces Film/監督:坂本太/脚本:岡輝男/企画:稲山悌二/プロデューサー:伍代俊介/撮影:鏡早智/照明:中田桜/録音:シネキャビン/編集:フィルムクラフト/助監督:小泉剛/監督助手:菅拓哉/撮影助手:橋本彩子/照明助手:池田直矢/スチール:阿部真也/衣裳:小川真実/スタジオ協力:カプリ/タイトル:高橋タイトル/現像:東映ラボテック/出演:北川絵美・南李乎・小川真実・安本健・石川雄也・坂入正三)。
 エンド・クレジット共々、何故か微妙に燻んだタイトル開巻。片側が赤いマンション外景、結婚式帰りらしき川村里佳(北川)が、着物姿で交際一ヶ月の彼氏・佐伯要(石川)宅を急に来訪する。女から膳を据ゑる気満々だといふのに、二言目には「僕は構はないよ、君がさうしたいなら」が口癖の、受動的な佐伯に里佳は手を焼く。といふのは、シルバー福祉ボランティア「白百合会」事務所での、里佳と同僚・森川早知江(南)の女子トーク。もう一人見切れる男のスタッフは、坂本太ではないゆゑ小泉剛?改めて回想する形で里佳V.S.佐伯戦、早く弱い佐伯とは結局別れた里佳に、勃起する男は射精すると終りと早知江は現場で知り合つた中丸時夫(真つ白に過剰な老けメイクの坂入正三)とのセフレ関係を告白する。舐められるのが好きな性癖を所与の情報として誇示する早知江に対し、知らんがな(´・ω・`)と内心ツッコミを入れる里佳のモノローグが瑞々しい。本来訪問される側なのに、中丸から迎へに来た早知江が何処ぞにしけこんでしまつたため、里佳が早知江が出撃予定の、大和田家に向かふ羽目に。謀られたと里佳が頭を抱へる大和田志郎(安本)は、横柄に清々しいまでの男尊女卑を振り回す厄介な御仁。大和田に苦戦を強ひられる里佳を、更には受け身体質の癖に粘着質な佐伯がストーキングしてゐた。
 ロシアに苦戦した次作となる、坂本太2004年第二作。北川絵美も兎も角予想外に飛び込んで来るポイント・ゲッターが、ピンクは最初で最後なのが惜しい南李乎。パキパキッとした結構以上の美人であることに加へ、脱いでみると北川絵美に勝るとも劣らない、しかも天然の大オッパイを誇る逸材、要は完全に勝つてんぢやねえか。実は中丸が机下に潜んだ白百合会事務所、一人で事務仕事する早知江が悶え始め、やがて我慢しきれずに自ら露にしたオッパイを揉みしだくシークエンスの破壊力は絶大。軽快なテンポでサクサク女の裸を愉しませつつ、次第に三番手投入の時機に危惧も覚えて来る四十分。地味に完璧なタイミングで、里佳を襲撃した佐伯を撃退後、昏倒した大和田が申し出たパートナー紹介制度を介して、両親の介護で婚期を逃した島崎志津子(小川)を投入するやそれまでのお気軽なエロ映画が一転。小川真実の絡みは小川真実の絡みでつゝがなく消化した上で、里佳の身勝手ともいへ複雑な心境を軸に、思ひのほか正攻法のラブ・ストーリーに華麗に移行する大胆な構成が素晴らしい。じつくり間を持たせるかに見せかけて、締めの濡れ場を手短に完遂後クレジットを迎へる幕引きも盤石。何でもないやうな裸映画かと思ひきや、何気に完成された一作。南李乎同様ピンクは初陣にして最終戦の安本健が、そつなく絡みをこなしてみせる点も通り過ぎるのは許されまい。

 一点残るツッコミ処、大和田の台詞いはくに里佳との年の差実に四十七。タイトルを真に受け大和田が劇中シックスナイン歳だとすると、北川絵美が二十二てのはねえだろと一応ググッてみたところ、公称でも公開当時二十二だつた。それと同趣向といへば同趣向ともいへ、毛色は全く異なる五ヶ月後封切りの「桃尻姉妹 恥毛の香り」(監督:浜野佐知/脚本:山邦紀/主演:北川絵美・北川明花)に際しては、今度は従妹の明花がお爺ちやん(野上正義)と絡む。


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )




 「美人秘書 おしやぶり接待」(2001/製作:小林プロダクション/提供:オーピー映画/監督・脚本:小林悟/撮影:小山田勝治/照明:ICE&T/編集:井上和夫/スチール:佐藤初太郎/助監督:竹洞哲也/監督助手:加藤義一/撮影助手:邊母木伸治/タイトル:ハセガワタイトル/録音:シネキャビン/現像:東映科学/出演:風間今日子・佐々木麻由子・間宮結・本村慧介・茂木晃・坂入正三)。出演者中、本村慧介がポスターには元村尚春、全ッ然違ふぢやねえか。加へて十和田宏と沢田清彦なる正体不明の名前が、ポスターではサカショーの後に更に連なる。
 妙にアンニュイな劇伴流れる中、街の景色を適当にロングで抜いて早々にタイトル・イン。工業機械輸出入の貿易会社「コン・トレイディング」社長の近藤(坂入)が、ハイヤーの後部座席にて秘書・永田敬子(佐々木)に軽く手をつけつつクレジット。社長室で本戦を交へた事後、秘書室長の村上から近藤の先輩の娘に関して内線が入る。東京スクールオブビジネスを後にする古川理恵(風間)に、村上清(本村)が接触。秘書課に通ふ娘の就職の世話を、理恵の父親は後輩の近藤に―理恵には無断で―頼んでゐた。ところが全く登場しない古川は、今度は近藤の知らない内に二回目の脳梗塞で昏倒。退学し働く心積もりであつた理恵を、情に絆されたのか単なる下心か、近藤は至れり尽くせりで会社に招き入れる。他方、近藤と五年続いた関係を煮詰まらせる敬子は、そんな近藤の姿に臍を曲げる。
 配役残り、一体何処まで持ち越す気なのかと別の意味でスリリングな三番手の間宮結は、近藤が新秘書と偽り理恵を煙に巻く、社長室に連れ込んだ中野銀座のバーの女・留美。挙句に車内で軽く痴れるに止(とど)まり、満足にも何も一切脱ぎやしない。それと、見切れるやうには撮られてゐないが、敬子行きつけのバーのバーテンが加藤義一で、荒れる敬子に絡まれるカウンター客は竹洞哲也のやうな気がする。
 コン・トレイディング社屋に掲げられた看板の文言が、“CON TRADING CO.,”。COMPANYを略した旨を意味するピリオドは兎も角、その最後のカンマは何なのよ。と、小道具の端々までルーズな小林悟2001年第二作。ビリング頭の風間今日子は声も別人のアテレコ(主不明)で徹頭徹尾ヤラれるまゝに、物語の動因はボスが新しい小娘に心を移し、お払ひ箱とされた格好の敬子の憤怒が担ふ。ところが、わざわざ男衆二人(が十和田宏と沢田清彦なのか?)を召集し理恵をレイプさせる見せ場まで設けておいて、留美の登場に完全に匙を投げるに際しては、敬子の矛先は改めて近藤に向けられる。劇中唯一の軸らしい軸たる筈の敬子がその場の勢ひで行動する以上、およそ軸として満足に機能しない上に、敬子が村上にコピーを依頼してゐた切札たる書類の中身が、オモチャの部品、に偽装した地雷部品の輸出書類。来た来た来た!出し抜けな小林悟の反戦思想が起動したぞ。敬子の義憤―いふまでもなく、その少し前まで滾らせてゐたのは理恵に対する私憤である―の形を借り、今なほ世界中で後を絶たぬ地雷被害の概説に下手に尺を割いたかと思へば、結局顛末は放り投げ社長室での理恵と近藤の何もかも締まらない締めの濡れ場で適当に映画を終らせるのは、紛ふことなき大御大仕事・オブ・大御大仕事。ついでに、茂木晃は一体何処に出て来たんだ、本当に全然見てないぞ。隅々まで満ち満ちた破壊力の吹き荒れた後になほ残る、ブルンブルン揺れる様が素晴らしい、風間今日子のオッパイは矢張り偉大である。とでもしか、この際思ふほかない。


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )




 「やりたい人妻たち」(2003/製作:旦々舎/配給:新東宝映画/監督:的場ちせ/脚本:山邦紀/企画:福俵満/撮影:小山田勝治・杉村高之/照明:小川満・小川大介/編集:㈲フィルム・クラフト/音楽:中空龍/助監督:佐藤竜憲/制作:佐高美智代/協力:及川厚/録音:シネ・キャビン/現像:東映ラボ・テック/出演:ゆき・風間今日子・なかみつせいじ・柳東史・平川直大・兵頭未来洋・須藤敦士・鏡麗子)。
 東京駅の構内アナウンスに、ザックリとしたタイトル・イン。ファースト・カットも東京駅、左にパンすると、革手袋が渋い柳東史が「俺が一体何をしたつていふんだ」と途方に暮れる。数日前、「後悔してない?」といふ鏡麗子の問ひに対し、ゆき(ex.横浜ゆき)は持ち前の清々しさで「全然」。数日前、高梨亜矢(ゆき)は夫の厚(柳)に無理矢理抱かれたことをレイプだと激昂、貯金を全額下ろした上で、御近所の対馬ケイ(鏡)に連れられ男を漁る目的で上京する。携帯のメールで送りつけられた、出張ホスト・相沢祐樹(須藤)と亜矢のいはゆるニャンニャン写真に血相を変へた厚も、妻を追ひ東京に現れたものだつた。
 配役残り兵頭未来洋は、相沢の相方・栗村俊介。雑踏の中柳東史と交錯するショットが地味に超絶な風間今日子は、厚の亜矢捜しに同行する矢張り―ケイ同様フリーダムな―人妻・山村麻里。妙に瞳が円らななかみつせいじがケイが亜矢に紹介する、旧旦々舎に「カウンセリングルーム古賀」を構へるセックスカウンセラー・古賀純一。自信満々に自慢のモノとテクとを誇示し、やがてケロッと鼻を折られる鮮やかな落差がケッサクな平川直大は、古賀が抱へるセックスボランティア・君原武夫。要は、俳優部全員がダイナミックに挿しつ挿されつするといふ寸法である。
 一般映画で忙しかつた頃か、鏡麗子が連続登板してゐる以前に、男優部が殆ど変らないのが潔い三ヶ月後の第二作「やりたい人妻たち2 昇天テクニック」(主演:桜田由加里・鏡麗子・佐々木基子)と、浜野佐知この年は的場さち二本きりしかない2003年第一作。独善的な―といふか紙一重を易々と跨いで馬鹿の領域に突入した―夫に匙を投げた主婦が、色々捌けた主婦仲間とヤリマン三昧を満喫する。苛烈に火を噴く濡れ場のクロスカウンターで寝取り寝取られの熾烈な攻防戦が繰り広げられる、「昇天テクニック」と比べた場合展開が一本調子であるきらひは確かに否めない。反面、夫婦関係を維持するために互ひに外での不倫なり自由な性交を必要とする、ケイや麻里のスタンスは自堕落な方便の枠内を出でないものの、自分自身が気持ちのいいセックスをするんだといふ亜矢のエモーションは力強く撃ち抜き、返す刀で、性愛に於ける愛の否定にまで到達してみせてゐるのが凄い。アグレッシブな主演女優を擁した浜野佐知の映画は活き活きと弾み、何より、煽情性がバクチクする何れも実用的な―実用的とは如何なる了見なのか(´・ω・`)―絡みの数々をひたすらに積み重ね尽くす、裸映画としての比類ない充実感が圧巻。力の無印と技の昇天テクニックとも称へ得よう、「やりたい人妻たち」がそれぞれ二作とも面白いのが素晴らしい。


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )




 「欲望に狂つた愛獣たち」(2014/制作:加藤映像工房/制作協力:VOID FILMS/提供:オーピー映画/脚本・監督:山内大輔/プロデューサー:加藤義一/撮影監督:田宮健彦/助監督:江尻大/撮影助手:河部浩一郎/監督助手:奥村裕介/制作:和田光沙/編集:有馬潜/特殊メイク:土肥良成/音楽:山内大輔/協力:石谷ライティングサービス・三和出版『マニア倶楽部』編集部/出演:みづなれい・春日野結衣・里見瑤子・津田篤・世志男・サーモン鮭山・岡田智宏・鎌田一利・西谷雄一・小鷹裕)。ギリギリまで尺を本篇に注ぎ込まうとした節も酌めぬではないものの、一枚画クレジットは如何なものか。何が何だかサッパリ判らん、用を成してゐない。
 加藤映像工房とVOID FILMSと山内大輔のクレジットを順々に大書で叩き込んで、ソープランド「新世界」。十年選手の源氏名・瑠衣こと杏子(みづな)が、不愛想といふか生気を感じさせない中年客(鎌田)に性的サービスを施す。聞き手の存在を予想させる、杏子のモノローグが全篇を貫く。彼氏について、“小説とか、書いてる人でした”と紹介したタイミングで、何故ポスターと同じ字体でないのか理解出来ないダサくてヌルいタイトル・イン。“文学デ世界ヲ変革セヨ”、威勢がいいのか虚勢なのかはさて措き貼紙が躍る一室。杏子と、作家志望の要はヒモ・春樹(津田)の情事。激しく突かれ「ヘンになつちやふ!」と叫ぶ杏子に対し、春樹が「ヘンになれよ、世界が変る」と応へるのはピンク映画的な濡れ場ならではの遣り取り。事後、恐らく珍しく、春樹からすき焼きを食べたいとリクエストした翌日、買物を済ませた杏子がウキウキと帰宅すると、“ヒモ男ヒモニテ死ス”の名文句を残し春樹はスーサイドしてゐた。
 配役残り、堅実な娯楽映画はおとなしく回避か放棄するに如くはない、演者が満足に使ひこなせない関西弁といふ地雷をまんまと踏んでみせる世志男は、春樹死後の杏子に「ジュリア・ロバーツにならへんか?」、「わしやあリチャード・ギアや」と箆棒な文句で求婚する、三年越しの指名客・鵜飼。終始白石加代子ばりにキレッキレにキレ倒す里見瑤子は、タワーマンションに居を構へる鵜飼邸のメイド・ミサ。鵜飼との、傍目には人も羨むセレブ生活。家事は全てミサ任せといふ次第で暇を持て余した杏子は、春樹と暮らした、かつての旧居を見に行く。岡田智宏と春日野結衣は、その部屋の現住人・圭介と女子高生?の妹・エリカ。サーモン鮭山は、多分廃墟方面では有名と思しき物件にて、援助交際に見せかけたエリカに半殺しにされ金を奪はれる男・小金井。当初は見るから怪しげな建物に二の足を踏んだ小金井が、先を進むエリカのパンチラに誘はれる件、「待てー☆」といふ台詞を意識的なクリシェとして発声させればサーモン鮭山は界隈で随一。一方、一旦ボコられた小金井が、再起動後改めてエリカに止めを刺される件に際しては、傍で見てゐた杏子が特に何したやうにも見えないゆゑ、エリカが杏子に助けられたと恩義を感じるシークエンスが十全に成立してゐない。後にもう一人登場するカモは、初めから血塗れに加へ画も寄らず特定不能。二周して何とか拾へた西谷雄一と小鷹裕は、逆襲の小金井配下。
 第27回ピンク大賞に於ける最優秀作品賞と、里見瑤子の助演女優賞受賞以前に、映画を撮ること自体が大いなる衝撃とともに話題を呼んだ山内大輔電撃大蔵参戦作。代りなり報復といふ訳でもあるまいが、旦々舎とオーピーの関係が修復された今なほ、オーピーは山邦紀に任せた格好で、工藤雅典にせよ松岡邦彦にせよエクセス本隊がいまいちピリッとしない、デジエクで浜野佐知が一人気を吐く戦況も重ねて興味深い。今岡真治までもがオーピーに草鞋を脱ぐだなどと、一昔どころか一年前でも考へられなかつた無茶苦茶な群雄割拠の中、城定秀夫と友松直之は次は何時何処で動くのか、田中康文は指を咥へて茶を濁してゐるのか、そして森山茂雄はこのまゝ沈黙を守り通すつもりなのか。なかなかどうしてこの期に及んで、二十年今際の間際が続いてまだまだピンクが面白い。
 映画の中身に話を戻すと、凡そこれほど当てにならない代物もさうさうないとはいへ、ツイッター上での賑やかな評判に、俄然期待を膨らませ小屋の敷居を跨いだものである。それはそれとしてそれなりに、安定してゐた生活が恋人の自死を契機に一転を通り越し暗転。堕ちた地獄の底をも、突き抜かんとするソープ嬢の物語。蓋を開けてみると確かに、撲殺、眼球体外離脱、文字通りの爆死に限りなく虐殺に近い拷問と、安普請も考慮すれば寧ろ驚異的なレベルで本格的なスラッシャー描写。おまけに、木に竹を接ぎかねない正直藪蛇なサイバーパンクまで飛び出すとなると、単純な裸映画の枠内には到底納まりきらない問題作であることはひとまづさうゐない。クソみたいな世の中をブッ壊すなるエモーションに関しても、本来は万感の共鳴を以て激賞したいところではある。とはいひつつ、さうはいひつつ。女の裸と惨たらしい死体の山を淡々と積み重ねた末の、ラストに起こる“奇跡”とやらが如何せん心許ない。さんざ飛び道具を繰り出した挙句の肝心要で飛翔力を失するとあつては、カタルシスには甚だ難く、結局春樹やテロリストを自任する圭介・エリカの義ですらなく偽兄妹が振り回し、やがて杏子も感化されるに至る革命思想も、昨今の鬱屈と閉塞した世情から半ば自動的に惹起される、怠惰か無力な厭世観あるいは終末論に親和もしくは迎合した精々ニュアンス程度にしか思へない。よくいつても教科書通り、悪くいへば教条主義的ともいへ、国沢☆実の「特務課の女豹 からみつく陰謀」(主演:伊藤りな)方がこれで案外、革命映画的にはまだしも形になつてゐるやうに見えたものである。御門違ひの誹りをおとなしく被弾するほかないのか、それとも、ほかならぬみづなれいの前戦につき想起も許されるのか。「あぶない美乳 悩殺ヒッチハイク」(2011/監督:森山茂雄/脚本:佐野和宏)の、エンド・クレジットに跨る超絶にして空前のラスト・シーン。何一つ変らず、誰一人救はれない絶望的なロード・ムービーの果てに、本多菊次朗から授けられた魔法で、みづなれいの心が世界を包む奇跡。「あぶない美乳 悩殺ヒッチハイク」が起こしたエクストリームなロマンティックと比べれば、今作の偶さかな延命如き、そもそも奇跡の名に値するのか、単にミサが仕損じたに過ぎない。ガラケー随分と頑丈なんだなといふツッコミ処はあへて呑み込むとして、ザクッと一言で片付けると然程でもない一作。露店感覚で並べられた物騒な意匠に凄いヤバいと騒ぐだけならば、それは子供騙しといふ奴ではなからうか。

 ここだけの仕方のない話、春日野結衣を波多野結衣と名前を混同してて、顔が全然違ふな!?と激しく面喰らひながら観てゐたのは内緒だ。


コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )




 「露出狂妻 人前で汚されて」(1995『露出マニア 新妻を人前で』の1998年旧作改題版/企画:サン企画/配給:大蔵映画/監督:市村譲/脚本:夢野春雄/撮影:立花次郎/照明:堀川春峰/助監督:佐々木共輔/編集:酒井正次/録音:シネキャビン/音楽:東京スクリーンサービス/効果:サウンドBOX/現像:東映化学《株》/フィルム:日本アグファゲバルト《株》/タイトル:ハセガワ・プロ《有》/スチール撮影:尭春一朗/出演:風間晶・林由美香・羽田勝博・青木こずえ・かりん・久保新二・神戸顕一・丹羽健介・佐々木京介)。
 妙にズンドコな劇伴とともに、ブルーバックなタイトル・イン。高層マンション外景からハウススタジオ?を適当に舐めて、“現代ではSMも氾濫しちやつてSM風俗つていふやうに風俗化されちやつて”、“一般の人でもそれを一種の刺激剤としてプレイとして取り組んで楽しんぢやふといふか”とグジャグジャ語り口からへべれけな林由美香のナレーションが入る。何だか殆ど、演者が気の毒な気すらする。気を取り直して花島花子事務所、女流作家の花島花子(林)が、いはゆるマニアさん“再”夫婦の浩一(羽田)と広美(風間)にインタビュー。但し無闇に動くカメラどころか照明さへ安定しない、ここでは至つてどノーマルな夫婦生活に乗せてクレジット起動。きつかけは一切スッ飛ばした上で、緊縛だ強姦プレイだ、二人は花島花子いはく“派手なことやらかし始め”る、確かにやらかしてゐる。
 配役残り当然共輔と同一人物の佐々木京介は、横着にも私服で宅配に来るピザ屋、弾ける無頓着ぶりが別の意味で堪らない。玄関先で佐々共の度肝を抜く緊縛された広美の画が、何故かピントをボカしてある意味が一欠片たりとて判らない。登場順に、いはずもがなをいふやうだがリップシンク完無視の久保新二は、浩一と仕事上の付き合ひのあるAV監督、青木こずえがモデル嬢A。全員劇中ハーセルフ・ヒムセルフのかりんと神戸顕一と丹羽健介は、モデル嬢Bとカメラマンと男優。久保チン参戦前に戻つて、広美と浩一がリモコン式のバイブを持ち出し羞恥プレイを仕出かす件。喫茶店店内にてリモバを急起動された広美の様子に目を丸くする、魔法使ひみたいな風体のオッサンは不明、もしかしてこの御仁が市村譲なの?
 名作は勿論、迷作でもなく狂作「ビデオガール 夢中女人」(1991)のダウナーな興奮醒めやらぬまゝに、市村譲1995年第二作。jmdbによれば足かけ十六年、百本を優に超えるキャリアをそれはそれとして誇りはした市村譲にとつて、最終二作前に当たる。ビデオガールほど派手にブッ壊れてみせることもないものの、脈略を欠いた市村譲の演出以前に拭ひ難い違和感を発散させるのが、羽田勝博が鼻の下を伸ばした好色漢の芝居が全く似合はない。どうやら一本調子の強面で、コメディアンとしての抽斗はあまりないものと見える。展開の進行は漫然とした右往左往に終始する割に、これで案外テンポは悪くないのが不思議な始終が、久保カントク篇に際して突発的に跳ねる。広美と浩一は久保組の撮影に同行、久保チンと青木こずえが風呂から始まりベッドに移行する絡みの最中、暫し退場しぱなしで正しくお留守になる主人公夫婦不在に、流石市村譲だと呆れかけるのは些か早計。神戸顕一と丹羽健介も伴ひ三人がかりで青木こずえを責めるベッドに、「どうです旦那、もしよかつたら参加して下さい」と久保カントクが浩一を招き入れたかと思ふと、浩一が青木こずえに驚喜してゐる隙に、久保組が再ジェット・ストリーム・アタックで今度は広美との4Pに突入する一幕は、勢ひがありどさくさ紛れの乱交感が手放しで出色。ところが今度はさうなると、開巻以来すつかり忘れてゐた、花島花子事務所に最終盤律儀に帰還する下手に生真面目な構成が諸刃の剣。結局、花島花子にプレゼントしたリモコンバイブを用ゐ広美が藪から棒な百合を咲かせるのが、劇中現実なのか否かも判然とせずじまひに、締めのキレを度外視してでも林由美香の濡れ場を―正真正銘本当に―無理から捻じ込んだ、据わりの悪さばかりが残る始末。女の裸を銀幕に載せることを以て宗とするピンク映画とはいへ、女の裸を銀幕に載せるために映画が蹴躓いてゐては仕方あるまい。


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )




 「秘書のお姉さん ‐喰はへ込んだら、離さない!‐」(1992『ザ・本番 性感帯秘書』の1998年旧作改題版/製作:旦々舎/提供:Xces Film/監督:浜野佐知/脚本:胡蝶の夢/撮影:河中金美・田中譲二・植田中/照明:秋山和夫・宮田倫史/音楽:藪中博章/編集:《有》フィルム・クラフト/助監督:森山茂雄/制作:鈴木静夫/ヘアメイク:小川純子/スチール:岡崎一隆/録音:銀座サウンド/現像:東映化学工業/出演:小林愛美・倉田まどか・麻生絵美・栗原良・久須美欽一・芳田正浩・平賀勘一)。何者の変名なのか判らない脚本の胡蝶の夢が、ポスターには胡蝶之夢。
 机の下で尺八を吹く尻開巻、どんな開巻だ、例によつてそんなファースト・カットなのだが。男が洩らす呻き声を聞くに、吹かれてゐるのは栗原良?男を見上げる女の目元を抜き、カメラが引くと矢張り栗原良、俺は一体何処に喰ひついてゐるのか。秘書派遣会社「あけぼのキャリアサービス」社長(栗原)は電話で同社所属の神島か上島か神嶋k(以下略)瑞穂に、佐伯工業での勤務を指示。栗原社長が果てるとヌルい劇伴起動、実はこの人もあけぼのの在籍秘書・ミヨコ(ビリング推定で倉田まどか)が口の端から白濁を漏らすストップ・モーションにタイトル・イン。多分二番手に飛び込まれる奇襲に、正直後々混乱する。
 自称“二十四時間働くプロのセクレタリー”との瑞穂(小林)が改めて颯爽と出撃、向かつた先は、何時もの東映化学工業(a.k.a.東映ラボ・テック)の佐伯工業株式会社。下卑た視線で衣服の下の裸を透視する佐伯(久須美)に対し、瑞穂はこちらも手当てと早速尺八。その夜の歓迎会会場の料亭に模した旧旦々舎では、平然と本番ではないけれども本戦を交へる。佐伯から性感帯秘書の噂を聞きつけた木島産業社長(芳田)は、そんな旨い話があるのかと訝しみながらも栗良に電話、木島産業にはミヨコが派遣されることに。ところが業務もそこそこに木島の一物を触らされたミヨコは、脊髄反射の平手打ちとともに完拒否。帰社したミヨコは、あけぼのの誰かがよからぬ行為に及んでゐるのではないかと警戒心を募らせる。大体が、お前らも社内でヤることヤッてんぢやねえかといふ至極全うなツッコミ処に関しては、あへてスルーの方向で。
 出演者残り、パキパキッとした美貌は申し分ないものの、痩せ過ぎなのが逆に惜しい消去法で麻生絵美は、佐伯の細君。平賀勘一は、業界の全国会議に秘書を連れて行きたい要は見栄であけぼのから瑞穂を招く、大石商事社長。何気に、男優部が全員社長といふのは案外珍しい配役なのかも知れない。
 正体不明の脚本家が煙に巻かれた展開を紡ぐ、浜野佐知1992年第七作。瑞穂と大石の情事を盗撮したミヨコの告発により、あけぼのキャリアサービスは人材派遣の名を借りたホテトルと週刊誌も通り越しポリス沙汰。全てを失つた栗原社長の下から、手の平返しのミヨコも去る。そこから、チカコは不承不承の佐伯との夫婦生活に御満悦。ミヨコは、ミヨコに最初に頬を張られた際、奴隷属性に目覚めた木島に鞍替へし女王様に再就職。そのまゝだとミヨコ一人勝ちといふ一体誰がヒロインなのかよく判らないモヤモヤした様相を呈する中、そもそも元凶たる瑞穂が壊滅したあけぼのに飛び込むと、何と栗原社長はスーサイド寸前。慌てて制止しようとしたところ栗良の勃起を認めた瑞穂が、「社長こんなになつてるのに死んぢやいけません」と突入する、しかも一本調子の騎乗位で逃げる締めの濡れ場は幾ら何でも底が抜けるにもほどがある。女の性に対する主体性もへつたくれもあつたものではない、素頓狂な好色女が恣に喰ひ散らかすばかりのルーズな一篇。喜悦する小林愛美のストップ・モーションに、下方から競り上がる“FIN”マークが画面中央にておとなしく静止すればいいものを、何故かスルッと軽く左にスライドするのがある意味斬新。締まりのない物語に、据わりの悪いラスト・ショット。さう思へばそれはそれでそれとしてそれなりに、オネストな完成形ともいへるのであらうか。


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )




 「THEレイプ いきなり!ぶち込む」(2014/製作:多呂プロ/提供:オーピー映画/監督・出演:荒木太郎/脚本:荒木太郎/脚本協力:光永淳・小谷香織/撮影・照明:飯岡聖英/編集:酒井正次/撮影・照明助手:宇野寛之・金山翔郎・藤田朋則、もう一名/助監督:三上紗恵子・光永淳/制作:佐藤選人・小林徹哉/タイミング:安斎公一/出演:西園寺れお・河西あみ・杉原えり・冨田訓広・みつ・小林徹哉・佐藤選人・淡島小鞠・里見瑤子)。OPロゴに続きど初つ端に叩き込まれる、「L'ETS ACME」が原題なのか?ポスターによると宮川透が音楽担当の筈なのだが、クレジットレス。ビリング頭四人に、エンド・クレジットでは括弧新人特記。
 ジューズ・ハープがビヨンビヨン鳴る中、「L'ETS ACME」と大書されたスケッチブックを一枚一枚捲つて行くと、キャスト・スタッフの順にクレジットして最後にインしたタイトルに、何の意味があるのか土がかけられる。一枚一枚捲るスピードは別に問題ない反面、字が勢ひがあるといふよりは単に乱雑で直截に読みにくい。
 夫(みつ=光永淳)とのある意味積極的に気乗りしない夫婦生活明け、燐(西園寺)はパート先に出勤がてらその旨明言して家を出る。ロケーション的には天野商事、だけれども劇中では「日野オイル」。平然とガソリンスタンド内で煙草を吸ふ燐に、社長の中山(荒木)が下心を覗かせながらも手を焼く中、燐は仕事を終へ帰宅する研修生・浩(冨田)のライトバンに同乗。尺八を一吹きした事後、二人連れの男(まづ特定不能)に尾けられる女子大生(河西)を更に燐が浩とともに尾けてみると、ここは正直時間が飛んでしまつてゐるやうにしか見えないのだが、女子大生は犯された後だつた。助けるでもなく、燐は浩をけしかけ河西あみを更に陵辱。燐が私物を自宅に取りに戻る、濡れ場の途中にその件を差し挿む意図が見えない正体不明の繋ぎはさて措き、燐と浩はかつて体験したことのない苛烈な快感を覚える。
 配役残り杉原えりは、女子大生をレイプした際のアクメを再び求め、燐と浩が―荒木組が土地勘のある―富士五湖近辺で拉致する人妻国語教師。スタンドから拝借した何かで昏睡させた杉原えりを車に押し込むカット、遠目に見切れるのが小林節彦に見えたのは気の所為か?そこそこ攻め込まれこそすれ、ギリギリ脱ぎはしない里見瑤子は選挙ポスターには“東京にエクスタシーを”なる文言も踊る、藪から棒に荒木太郎は山邦紀共々近年俳優部として重用される浜野佐知に被れたのか、“女だつて男を犯したい”と底の抜けた女性上位スローガンを旗印に戦ふ民自党候補者・磯野和代。小林徹哉はチャリンコの磯野センセイに走つて追随する運動員、出演者クレジットは人が抜けてゐたやうな気がする茶髪の佐藤選人が、遊説中の磯野にテンションの上がるスタンド客。久し振りに、といふか戦線復帰以来初めて単騎の淡島小鞠は、姿を探した浩を捜し奔走する燐を、何故か狂騒的に笑ふ派手な格好の女。
 荒木太郎2014年第四作は、近年事ある毎に―映画用35mm―フィルム文化の終焉を声高に嘆き続けた荒木太郎にとつて、事態が革命級に派手に転びでもしない限りフィルム最終作。強姦の悦楽に目覚めた女と男が、強烈な体験を忘れられずに次々と新たな獲物を狩る。となると、最終的に殺しまではしないものの「暴行切り裂きジャック」(昭和51/監督:長谷部安春/脚本:桂千穂/主演:桂たまき・林ゆたか)と似たやうなお話なのかと思ひきや、やがて暴走を始めた男が、当初は連れられる格好であつた女を振り切り独走する、鮮やかなまでにまんまな展開に突入してみせるのにはグルッと一周して驚いた。要は映画史上空前に無体で、同時にフリーダムな結末を撃ち抜いた「暴行切り裂きジャック」に対し、「レッツ・アクメ!」の決まり文句で最低限の形を成したともいへ、中途半端にオチをつけ損なつた今作といふ仕方のない対比で元も子もないケリがついてしまふやうにも思へつつ、パンチの利いた主演女優と、いい感じに歪んだ劣情を刺激する何れも肉感的な二番手と三番手。女優部に恵まれたことと、余計な意匠は廃しハードなシークエンスを叩き込み続けることに徹した結果、ザクッとした裸映画としては普通に見応へがある。まんま切り裂きジャックに関しても、一見線の細い小僧つ子に見えた演劇畑から初参戦の冨田訓広が、案外浩が狂気を膨らませる風呂敷を十全に拡げてみせる地力に長けてゐたのはサプライズな見所。恐らくフィルムで撮る最後の機会に、荒木太郎が何でまたこのやうな負け戦臭が濃厚な企画を選んだなり挑んだのかと、一体淡島小鞠は何しに出て来たのかはよく―後者は全く―判らないが、下手なメロドラマを力なく燻るか萎ませるくらゐならば、頭あるいは腰の下ひとつ抜けた印象も確かに感じたものである。


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )