真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「女ざかり 白く濡れた太股」(2020/制作:OKプロモーション/提供:オーピー映画/監督:小川欽也/脚本:水谷一二三/撮影監督:創優和/録音:小林徹哉/編集:有馬潜/助監督:加藤義一/撮影助手:赤羽一真/協力:小関裕次郎・鎌田一利/スチール:本田あきら/音楽:OK企画/整音:Bias Technologist/仕上げ:東映ラボ・テック/出演:可児正光・しじみ・平川直大・小野さち子・西森エリカ・初美りん)。いつそ倒立させた方がピンと来さうなビリングに関しては、出演順と明示される。脚本の水谷一二三は、小川欽也の変名。
 伊豆急行伊豆高原駅に降り立つた大学院生の武石和生(可児)が、母親の四十九日―父は先に没―も済ませた一段落ゆゑ冬休みを別荘で過ごす旨、大きく伸びでもしがてら説明台詞で全部語る。当然ロンモチ自動的に花宴の武石家別荘に到着した和生改め、劇中呼称で若旦那を別荘番の山田武(平川)と、お手伝ひの小川佳代(しじみ)が歓待。しじみのロイドが狂ほしくキュートで琴線を激しく掻き鳴らす一方、もしくはもしかすると、もーしーかーすると―しねえよ―さういふ造形なのか、平川直大はセットのおかしなツーブロックが、変に老けて映る。その夜、書名が見えさうで識別出来ない文庫本に厭いた和生は、戯れに庭を散策。離れなのか和生が佳代の居室を覗いてみると、山田相手の奔放が豪快の領域に跨いだ情事を目撃。翌日、東京に忘れて来たPCを取りに行かせる方便で、二三日分の小遣ひも渡し山田を人払ひした和生は、敷居の乾く間もなく佳代に朝風呂の背中を流させる。山田が出発した玄関の扉が閉まるや否や和生が佳代を呼ぶ、脊髄で折り返す速さはギャグの空気に片足突つ込みかけつつ、夢なり理想を形にする営みの、ひとつのメルクマールといへるのかも知れない。
 人外の強精を誇る和生が超速でリロードする、連戦が永久(とこしへ)に終らないかに思はせた佳代との濡れ場明け。配役残り、本篇キャプションまゝで“隣の後家”とかぞんざいなイントロで飛び込んで来る小野さち子が、花宴の隣に暮らすだから後家・鈴木枝里。予告に於いては“圧倒的ヒロイン”だなどと称される通り越して賞される、西森エリカが枝里の娘のリカで、初美りんは鈴木家のお手伝ひ・久保芳子。ちなみにポスターでの序列は、西森エリカが頭で以下初美りん・小野さち子・しじみと続く。それと定位置の座をナオヒーローに譲つた大旦那の姿良三(=小川欽也)は、官憲の出る幕があるでなく、今回はお休み。
 コロニャン禍の皺が寄つたか単なる公開待機なら別に構はないが、気づくと今年この期に沈黙してゐるのが地味に気懸りでもある小川欽也の、伊豆で始まり伊豆で終る2020伊豆映画は、五本柱の扱ひが大体均等な前作「5人の女 愛と金とセックスと…」(2019/実質主演:平川直大)からの、西森エリカ主演出世作、一応。今作とは全く関係ない純然たる世間話的な余談ではあれ、従来月の半分しか新作が来ないKMZこと小倉名画座が、新居に通信回線が繋がらないオフ島太郎から現し世に帰還したところ、先月がよもやまさかの五連撃、藪から棒にどうしたんだ。御蔭で前の週に来てゐた、石川欣の三十二年ぶり帰還作を知らなくて逃がす始末、落ち着いたら外王で拾つて来る。地元駅前ロマンでも新東宝が放り込んで来るど旧作とロマポが渋滞してゐる状況につき、降つて湧いた火事場が何時収束するのかは正直知らんけど。
 和生に対し明確に性的な食指を伸ばす枝里は、ジュエルリングみたいな素頓狂な指輪で佳代を籠絡。“将を討つには”―将はリカを指す―云々と和生をハチャメチャに言ひ包めた佳代が、枝里に対する夜這ひをけしかける一方、リカはリカで和生に向ける、仄かな想ひを芳子も酌む。アクティブに暗躍する両家の家政婦に背中を押され、可児正光が棹の萎える暇もなく只々ひらすらに、母娘丼に止(とど)まらず女優部を総嘗めし倒す最早抜けるほどの底すら存在しない、淀みなく絡みの連ねられる一作。開巻第一声の方法論が結局以降全篇を貫く、展開の逐一を随時俳優部にしかもなダイアローグで開陳させる懇切作劇が割りかけた徳俵を、的確な選曲で神憑り的に回避。首から上は全然さうでもないのに、体の肌が妙に汚いしじみのコンディションと、木に竹を接ぐ山田の帰伊―もしくは帰豆―を除けばツッコミ処らしいツッコミ処にさへ欠く、限りなく透明に近い物語がこれで眠りに誘はれるでもないのが我ながら不思議ではあれ、勝手気儘な外様を中心に、銘々が時代に即したピンク映画の在り様を摸索する中、プリミティブな原点に堂々と回帰してのける姿はある意味頼もしく、同等のポジションで映画を撮り続けられる人間が今や事実上小川欽也しかゐない以上、寧ろさうであつて貰はないと困る。ともいへるの、かな、あんま自信ない。とまれ、新奇な手法ないしアプローチばかりが、新しいとは必ずしも限らない。既に通り過ぎたつもりの道で、何某かを完成させたあるいは、これから凌駕してみせるといふのは大抵大概不遜な思ひ込みに過ぎず、万物はしばしば円環を成す。女の裸を、銀幕に載せる。観客の、観たいものを見せる。本義を見失つた―か最初から一瞥だに呉れない―量産型裸映画が、総数自体大した数でもない割に目か鼻につくきのふけふ。小川欽也が辿り着いた現代ピンクの案外到達点・伊豆映画のそれはそれとしてそれなりの清々しさが、穏やかに際立つ。さうは、いつてもだな。流石にこれだけお話が薄いと、七十分の尺は如何せん長からう。一本四千二百秒で撮らせないと家族が死ぬ呪ひをかけられてゐる訳でも別にあるまい、大蔵は今上御大―と希望する者―には従来通りの一時間を特例で認めては如何か。
 西森エリカは相変らず心許なく、ex.持田茜は体調不良。小野さち子は今時よくこの人連れて来たなとさへ思へなくもない、熟女枠の範疇でも更に灰汁の強いマニア専用機。実は作中最強の輝きと安定感を煌めかせるのは、二番手にして三戦目の初美りん。ハイライトは朝食を持つて来た佳代を捕まへ和生が致してゐたところ、佳代お手製の人参酒を持参し、芳子が勝手に上がり込んで来てゐる件。水を差され要は生殺しにされた格好の和生が、芳子の有責を方便に覆ひ被さるのを合図に一旦止まつてゐた、ズンドコ劇伴が再起動する何気に完璧なカットには声が出た。


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 「看護女子寮 凌された天使」(昭和62/製作:《株》フィルムキッズ/提供:にっかつ/監督:堀内靖博/脚本:加藤正人/企画:角田豊/プロデューサー:千葉好二/撮影:志賀葉一/照明:金沢正夫/編集:鈴木歓《J.K.S》/助監督:大工原正樹/色彩計測:三浦忠/監督助手:勝山茂雄・田山雅邦/撮影助手:林誠/照明助手:関野高弘/音楽:金刺勝治/スチール:田中欣一・長内昌利/現像:IMAGICA/録音:ニューメグロスタジオ/出演:瀬川智美・小林あい・小川真実・くまもと吉成・下元史朗・長谷川誉・西本健吾)。出演者中、小林あいにポスターではロマン子クラブ No.4特記。あとポスターにのみ、内藤忠司の名前も並ぶ。
 歩道橋越しの仰角で捉へた観覧車にクレジット起動、アスファルトに絵を描く幼女(クレジットなし)と、観覧車を背負ひフレームに入る主演女優。ほてほて歩くロングのタイトル・イン経て、新人看護婦のササノ由加里(瀬川)が辿り着いた先は、白百合総合病院寮「シオンの家」。自室に入り、念願叶つて戴帽した由加里が改めてナース帽を載せてみた鏡の中に、同室の君江(小林)が咥へ煙草のサングラスで映り込んで来る。そんなこんなな実務風景、飯田健治(西本)を健診した由加里のパンティを、ベッドの下に潜り込んで覗く相部屋のサイトー役で、飛び込んで来るのがまさかの内藤忠司。確認出来る資料が見当たらず、もしかすると今回が内藤忠司の俳優部初仕事となるのかも知れない、堀内靖博と何か繋がりでもあるのかな。閑話休題、病院から近いのか、白百合関係の客が無闇に多い下元史朗がマスターの店。君江らが由加里の歓迎会を開いてゐると、腹を開く手術をしてゐた割に、後の台詞では当該患者を指して複雑骨折だとか、脚本がやらかしたか内科なのか外科なのかよく判らないハンサム医師・村岡(くまもと)や、婦長的なポジションにあると思しき小川真実も来店する。君江が寮に男を連れ込み中につき、帰るに帰れず公園で黄昏てゐる由加里を、急患を手伝つた縁の村岡が拾ふ。配役残り、長谷川誉は君江の彼氏くらゐしか役らしい役も見当たらないが、何せ夜這ひを敢行するシークエンスゆゑ殊に男の面相如き闇に沈み、誰であらうと識別出来る形で首から上が抜かれはしない。
 五年後に「8マン すべての寂しい夜のために」(1992)でリム出版に引導を渡す格好となる堀内靖博の、昭和62年第一作にしてロマポ通算五作の第三作。この人日活入社でキャリアをスタートさせたサラブレッドの割に、今作と次作の二本、買取系を撮つてゐたりもする、退社した?その辺り元来専門外のよしなしはこの際さて措き、寧ろより重要なのが、小川真実デビュー作といふ何気でないトピック。
 村岡宅に直行で連れ込まれた由加里はサクサク喰はれた上、ケロッと関係を深めて行く。一方、退院したぽい健治が由加里にラブレターを渡してみたり、結局因縁の内実には欠片たりとて踏み込まないまゝ、村岡から捨てられた小川真実が、由加里に対する横槍を拗らせる。一応深夜の院内に於ける大立回り的一幕も設けられるとはいへ、看護婦と医者とex.入院患者が織り成す3.5角関係―0.5はオガマミ分―が基本娑婆で他愛なく繰り広げられる、白衣要素は案外薄い一作。アバンで幼女が描いた落書きを、特機感の清々しい土砂降りで洗ひ流す。ダサさも微笑ましいラストで一皮剝けた由加里の、いはゆる大人の階段的なプログレスを描く物語は手堅く纏まつてはゐる程度で、面子の中で西本健吾のところに開いた軟弱な穴も否み難く、特段喝采するほど面白くは別にない。反面、由加里と村岡の二戦目を、様々な趣向を尺も費やし入念に展開。ストロングスタイルの素晴らしい濡れ場は、裸映画的に確かなハイライト。たださうなると、徐々に性質の悪い加虐嗜好者の相を露呈する村岡に、若さを弾けさせる小川真実―の絡みは下元史朗が介錯する―がコッ酷く責められる。エクストリームな回想を設けておいて欲しかつた、画竜点睛レスに心を残す。

 とこ、ろで。この映画が小川真実の初陣で、ほんなら引退試合は何かといふと、愛染恭子の脱ぎ納めも兼ねた「奴隷船」(2010/監督:金田敬/福原彰=福俵満と共同脚本)。二十有余年と元号はおろか世紀をも超え、何れにも内藤忠司が紛れ込んでゐる単なる偶然にしてはな奇縁が、そこはかとなく琴線に触れる。


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 「発情カップル 《秘》盗撮現場」(1994/製作・配給:新東宝映画/監督:深町章/脚本:瀬々敬久/企画:中田新太郎/撮影:清水正二/照明:伊和手健/編集:酒井正次/助監督:田尻裕司/監督助手:徳永恵実子/撮影助手:清水一博/照明助手:広瀬寛巳/スチール:津田一郎/録音:銀座サウンド/現像:東映化学/出演:林由美香・井上あんり・橋本杏子・梶原恭子・扇まや・本間優作・平賀勘一・山本竜二)。さて、例によつての共倒れjmdbに引き摺られたのか、といふか“引き摺られる”の意味が判らないけれど、何れにせよnfaj共々、照明の伊和手健を井和手健に。百歩譲つて個人の手作業であるjmdbはまだしも、所蔵フィルムからの翻刻を謳ふ以上、nfajにはちやんとして欲しい。使ふなといふ訳では断じてないが、公費も使つてゐるんだぞ。
 青基調のキネコ、木々の間を巡る盗撮画像に中新からクレジット。女の背中に寄つて、スタッフ先行のクレジットが俳優部に。カメラの仕込まれたアタッシュケースを抜くところで、画面はフィルム撮影に復帰。それらしき青色にてつきり暗視でもしてゐるのかと思ひきや、思ひきり昼間で軽く拍子も抜かれる。林由美香と平賀勘一の青姦をカメラに収めてゐた山本竜二が、物音をたて二人に気づかれる。慌ててすたこら退散する様に「俺は富樫ジュン、歴史に残る名探偵と自負してゐる」と大風呂敷を広げてのける割に、中身は特にないモノローグ起動。頭に載せた中折れが外れた、山本竜二のストップモーションにタイトル・イン。公称を真に受けると封切り当時三十七歳になる平賀勘一の老け芝居が、俄かには覚えのない強度でサマになつてゐる。
 すかいらーくの看板から、ピントを手前に送つた先には井上あんり。適当なロケーションを用立てる一手間も端折つた、ビュービュー無造作に吹く風が女優部の髪を乱すのがあんまりな、そこら辺の屋上。実業家・高岡コータロー(平賀)の浮気調査を後妻(井上)から請け負つた富樫(山本)は、林中の情事をパーマネントな関係ではなく、高岡が宿なしのプータローに同情でもした、行きずりのものだらうと高を括る。富樫が恐らく兼住居の事務所でカップ焼きそばを啜つてゐると、女優部の二役アテレコではないゆゑ、もしかすると徳永恵実子が読むTVニュースがアイドル・カワイ美里(林)の失踪事件を伝へる。伝へた流れで当の美里が、逃げる際に落として行つた、名刺の住所を頼りに富樫を訪ねる。高岡と致してゐた女といふのは兎も角、富樫がその女がカワイ美里である点は器用に等閑視したまゝ、美里は「雇つて呉んない?」と助手として探偵事務所に転がり込む。
 岡持ちにCCDカメラを忍ばせ、出前持ちに扮した美里の初仕事。配役残り、井上あんりは美里が尾行するカップルの女の方。そして扇まやが男の方、といふ訳では無論なく、タチの方・ユキコ。問題がユキコが高岡の娘で、性質の悪い女に騙されてゐるぽい娘の調査を、アバンのターゲットであつた高岡が富樫に依頼してゐる相関が混濁する衝撃には、この映画序盤から爆散するのかと一旦頭を抱へかけた、ものの。高岡が後妻も富樫を雇つてゐたのを知つてゐる旨と、美里に対してはいゝ人に拾はれたとする台詞とで、辛うじて行方不明になりかけた軌道を修正する。置手紙を後妻に残し、高岡が姿を消す。富樫は高岡から届いた手紙の消印を唯一の手懸りに、高岡の生まれ故郷に。橋本杏子がそこで高岡と歩いてゐた、“モロッコのマタハリ”とか素頓狂な異名を誇るケンモチマリコ、と高岡の初恋相手・お春の二役。急な雨に降られた高岡少年とお春が、雨宿りがてら軽く手を握る程度の回想。幾ら何でも高校生なんだから、平勘に髭くらゐ剃らせろ。そして木に竹を接ぐ藪蛇キャストかに思はせて、実は案外さうでもない本間優作は、高岡とマリコを尾ける富樫と美里を、更に尾けるカシマミノル、美里ファンクラブ会員番号3445番。
 残弾数を数へるのがまだ面倒臭い程度には、ex.DMMの中に未見作が残つてゐる深町章の1994年第三作。高岡が自ら選んだ最期と、戯れに気紛れに、富樫の前を通り過ぎて行つた美里。一抹のほろ苦さも効かせたかつたか、効かせたつもりなのかも知れない物語本体は山竜にエッジと、深町章にソリッドを求むべくもなく、殊更ゼーゼー騒ぐほど面白くも別にない。後妻が大概へべれけな流れで富樫に身を任せる、梶原恭子の絡みを除けば一途に堅守する盗撮画像から、頃合を見計ひフィルムに帰還するタイミングの絶妙な濡れ場の数々が、時代の流れも酌まざるを得ないのか橋本杏子が三番手に座る無闇に豪華な五本柱にも当然彩られ、終始高いテンションを保ち続ける裸映画的な充実が寧ろ際立つ。側面から特筆すべきなのが、一昨日から現れて、明後日に蹴飛ばされて行くかに一見映るカシマミノル。最初の電話登場時にはその間に美里を寝落ちさせ、蒸発した人気アイドルが、しがない私立探偵の事務所に居座る。飛躍しかない無理気味の一幕を、どさくさ紛れに固定。津田スタ庭に於いては当て身で富樫を昏倒、上手いことその場の離脱を促す。如何にも余計な枝葉然としてゐながら、カシマミノルが何気に都合二度展開の肝要を担ふ、地味に強靭な論理性は出色。同じくカシマミノルが呼び水となる、鮮烈なハシキョンキックも素晴らしいが何より驚かされたのが、ノー弾着をものともせず、平賀勘一の名演技と切れ味鋭いカット割りのみで、見事形にしてのけたピンクでまさかのヘッドショット。無茶を承知で粗い理想論か雑な絵空事をいふと、要はこの脚本、瀬々が自分で撮つて富樫役がたとへば佐野―和宏―であつたなら、恐ろしくカッコいゝ映画になつてゐたのではあるまいか。


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 「発禁縛り夫人」(昭和53/製作・配給:新東宝映画?/監督:向井寛/脚本:宗豊/製作:伊能竜/企画:江戸川実/撮影:志村敏夫/照明:斉藤正明/音楽:芥川たかし/編集:中山修/助監督:さのひでお/演出助手:中山潔・滝田洋二郎/撮影助手:志賀一郎/照明助手:大久保公彦/製作主任:大井英雄/緊縛師:田中欽一/効果:秋山効果団/録音:東音スタジオ/現像:ハイラボセンター/協力:昭和風俗研究会/出演:志摩美雪 新人・国分二郎・桜マミ・北乃魔子・胡美麗・光岡早苗・山波洋子・浦野あすか・中条公子・高沢ひろ子・有沢真佐美・鶴岡八郎・三重街竜・滝沢秋弘・吉岡一郎・松田彦造・中村武・高岡静子・山崎みよ・サロメ角田 特別出演)。出演者中、志摩美雪の新人特記と、松田彦造から山崎みよまでは本篇クレジットのみ。脚本の宗豊は、獅子プロの共有ペンネーム。あと、製作と配給は新東宝興業かも。
 葉書状に切り取られた画の中で、国分二郎がサロメ角田に縄をかける。“極楽縛りの仙吉”の名を轟かせた縄師の仙吉(国分)が、情婦・おしの(サロメ)を責めるアバン。仙吉が自重を利しておしのの両足を裂き半身吊つたところで、「縄師つていふのは」と出し抜けに本質的な国分二郎のナレーション起動。「御存知ない方もおいででせうが」、「縄一本で女の体を縛り上げて、悦んで頂く商売なんですよ」。「因果な商売では御座いますが」と遜りつつも、「女といふもの元々男に甚振られたいと、いえ、どなただつてさうなんですよ」。「さう思つてゐるものなんですよ」とか慇懃な口調で大概なミソジニーを爆裂させた上で、吊られたサロメ角田にタイトル・イン。幾ら昭和の所業とはいへ、一言で事済ませるとあんまりだ。浜野佐知のレイジが、よく理解出来る。
 不景気気味の女郎屋「柏楼」に、何の因縁なのか知らんけどやくざが現れ一暴れ。縄師の足を洗ひ、今は“流れ者の風来坊で女郎屋の用心棒”―当人自嘲ママ―に納まつた仙吉が、オーバーキルな音効とともに男前の戦闘力で撃退する。「柏楼」隊は先陣を切る滝沢秋弘がポン引きの亀、桜マミから有沢真佐美までと思しき女郎部の中で、仙吉に惚れるおみよの桜マミと、処女で売られた北乃魔子くらゐしか見切れない己の浅学は素直に認める。確認し得るキャリア的に、遣手婆は光岡早苗?ある日浜辺を散策する仙吉は、波打ち際で寂し気に佇む女・市子(志摩)と邂逅。何故か市子に心奪はれる仙吉であつたが、市子は巷で“天皇”とさへ称される、ドメスティック有力者・石原(鶴岡)の妻だつた。
 正直いふと女郎部同様、殆ど手も足も出ない配役残り。「柏楼」主人の三重街竜と、石原を愉しませる正月の余興に招聘され、北乃魔子を縛る縄師の吉岡一郎が僅かに識別可能。石原の懐刀格で自ら組も構へる五十嵐が、港雄一のアテレコといふのに辿り着けはするものの。
 jmdbによると公開は一月で、それなり以上に豪勢な布陣を窺ふに、正月映画であつたのかも知れない向井寛昭和53年第一作。
 苛烈な責めの末に愛する女を死なせ、縄を捨てた縄師が出会つた人妻は、劣等感と猜疑心を拗らせる強欲の夫から日毎責められるうちに、縄の味を覚え込まされてゐた。話の枠組み自体は頑丈に出来上がつてゐる、壮絶にして甘美なるサドマゾ悲恋物語。と行きたかつたぽい、節ならば酌めるのだけれど。致命傷は心許ないお芝居以前に、流し目を送らせると目つきが怪しなるスリリングな主演女優で、アキレス腱は結局“極楽縛り”とは何ぞやをシークエンスとして提示しきらないまゝ、最後に主人公を殺しておけば何とかサマになるだらう、といはんばかりの粗雑か性急なラスト。僅か五分延ばしただけの尺で、おみよなり亀絡みの挿話も欲張り過ぎたか。つい、でに。画角に拘るのも映画の花とはいへ、濡れ場で狙ひすぎるのは却つて如何なものか。寧ろ乳尻は、肌の質感なり温もりが伝はるほど寄りに寄つて、質的にも量的にも入念に見せんかと思へなくもない。本筋からは半歩外れた側面的な佳境が、レンジが不明ながら五指に入ると賞される、イワガミかヤガミ(吉岡)が石原らの面前北乃魔子を責める一幕。一同に潜み始終を凝視する仙吉に気づいた何とかガミは、数段上の手練れを前に戦意を喪失、縄を置く。キッメキメに暗い画面の中、国分二郎と吉岡一郎が視線のみで静かに火花を散らす男達のドラマが、最も十全に完結してゐて見応へがあつた。


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 「パラレル・セックス 痴女が潜む街」(2020/制作:加藤映像工房/提供:オーピー映画/監督:加藤義一/脚本:筆鬼一/撮影監督:創優和/録音:小林徹哉/編集:有馬潜/音楽:友愛学園音楽部/助監督:小関裕次郎/スチール:本田あきら/整音:Bias Technologist/仕上げ:東映ラボ・テック/監督助手:可児正光/撮影助手:赤羽一真・酒村多緒/応援:高木翔/お手伝ひ:鎌田一利/出演:二宮ひかり・並木塔子・長谷川千紗・安藤ヒロキオ・可児正光・赤羽一真《声》・小滝正大/ナレーション:竹本泰志)。出演者中、声のみの赤羽一真は本篇クレジットのみ。竹本泰志の正確な位置は赤羽一真と小滝正大の間に入るのと、脚本の筆鬼一は、鎌田一利の筆名。
 イラストの夕景に、最終的には意義はおろか意味から不明確―後述する―な、竹本泰志のナレーションが起動する。「これから御覧頂くのは、私が勤めるドラッグストアの店長の身に起きた、不思議な出来事です」。暗転して、何故かせゝこましく右隅に入れるタイトル・イン。結論を先走ると、全篇隈なく貫く不完全無欠の火蓋をある意味順調に、アバンで既に切つてゐた次第。
 作りものぽい笑顔で、康子(並木)がカレーの支度。居間では康子の夫で「ヤッホードラッグ」水木店?の店長・中岡雅夫(小滝)が、動画サイトで人気のロンリーイザキ行方不明事件を伝へる―声が赤羽一真―テレビ番組を見る。康子は元気に「いつたらつきまーす」、ところが中岡はといふとこの男何がそんなに不満なのか、のつけから1mmたりとて外堀が埋まらないまゝ、チョチョッと突いただけで御馳走様とスプーンを置く。こつちも、早々に匙を投げさうなんだけど。挙句、「もし突然僕がゐなくなつたらどうする?」だなどと途轍もない面倒臭さを拗らせる夫を、康子が一笑に付すカットを中途半端に切つた上で雪崩れ込む中岡家夫婦生活。初戦にして、映画が逆の意味で見事に詰む。全体小滝正大は、何時の間にそんな肥えたのか。強ひていへば童顔の範疇に納まりさうなルックスと元来の短躯とは親和性の比較的低い、だぶだぶに弛んだ醜悪極まりない腹周りに加へ、あるいは艶技指導の画期的敗北なのか、改めて見るに小滝正大が絡みすら下手糞すぎて、もうそもそも画としてもシークエンス的にも、おちおち女の裸も大人しく楽しんでゐられない。
 昼休みの往来にて、中岡が初恋相手のキリエ(二宮ひかりのゼロ役目)と交錯する、こゝは僅かに、後々夢幻が普通に回収される一幕を経て、康子は同窓会で帰省した週末。豪快にか臆面もなく夢でオトす―のが流石ではある―キリエとの騎乗位がてら、表(おんも)に出た中岡は再びキリエと邂逅。光の中に歩き去るキリエに誘ひ込まれた、ガード下で中岡も消失する。畳の上で意識を取り戻した中岡に、いきなり下着姿で迫つて来たキリエならぬキリコ(二宮)は、「貴方は私の処女を捧げる初夜権を与へられてゐるの」とか、抜いた話の底でジオセントリズムの天空を飾る史上空前の膳を据ゑる。
 配役残り、可児正光はキリコの下を逃げだした中岡が道を訊かうとする、エグゼイドな色合のニットキャップに、奇行に突入した挙動の著しく不自然な男。最終盤明かされるその正体が、蒸発したロンリーイザキ。長谷川千紗は、ロンリーイザキと中岡を争ふ、当初アグレッシブな痴女以外の何者にも見えない女。自室に連れ込んだ中岡を長谷川千紗が捕食しようとしたところ、「コラー!俺の女に何をするー」とクローゼットからの大登場を果たす、やぶれかぶれな勢ひと絶妙な間は確かに可笑しい安藤ヒロキオは、大阪万博の年に初夜権行使者に選ばれ、そのまゝ自らの意思で黄色い水を飲んだ男。そし、て。意表を突いて飛び込んで来る、枝葉の限りではあれ、見所は見所を担ふ飛び道具がかつてヒップホップ・シーンを人知れず駆け抜けた、孤高のラッパーその名もEJD。E J D、あのつべ探せばまだあんのかな。閑話休題、此彼の別に関しても後述する、彼岸では精々二三日の間、此岸では一ヶ月近く経過。“この人を探してゐます”と中岡雅夫を捜索する尋ね人の隣に貼られた、連続女性殺人犯―殺害犯でなく殺人犯と、赤羽一真は臨時ニュースを読む―手配写真が井尻鯛(a.k.a.江尻大)。如何なる瞬間に撮影されたスチールなのか、適度に憔悴した面相が何気に超絶。
 越した新居もとい珍居に通信回線が固定電話分さへ繋がらず、穏やかといへば穏やかな生活に暫し微睡む中、遠征に出張る気力も一時凍結し、外王でDVDを借りて来て済ませた加藤義一2020年第一作。上野では三月末に一旦封切つたものの、コロニャン禍の直撃を受け六月初頭に仕切り直しの再公開してゐる。先に触れた火の玉ストレートかノーガード戦法の夢オチを窺ふに、加藤義一の師匠筋は関根和美に求めるのが最適解であるやうな思ひも、この期に及んで過らなくもない。
 キリエとはあくまで別人のキリコが暮らす、中岡視点だと跨いだ先の彼岸が、二十一までに処女を喪失しない女は泡になつて消滅―昭和の特撮か―させられる、個々人のセクシャリティなり自己決定は結構ガン無視した、パラダイスなのかブルータルなのかよく判らない異世界。中岡―やロンリーイザキ―が元ゐた此岸を一方的にパラレルな認識で捉へ、劇中唯一開陳される基本法則的な説明原理が、誰でも手翳しで感知可能な類の“波動”とやら。長谷川千紗の素性も、社会的ないし強制的に水揚げさせられる女子をケアする、ヴァージン管理局職員。と、いふか。さういふ有無をいはさないシステムを採用してゐる以上、そこそこで納まらない一定数ヒトのメスが相当な若さで要は死ぬ、大概物騒な世界観に思へて仕方ないのは気の所為かしら。
 草臥れた中年男の前に、不意に現れた初恋の人―と同じ姿形の若い娘―が是が非でもバージンを貰つて呉れるやう乞ふ、空前絶後の麗しきファンタジー。の、筈なのに。説明無用、その道の絶対永年最強大家たるナベならば安普請にも映画初出演にして初主演、口を開くと正直覚束ないビリング頭のエクセスライクにも屈せず、精一杯ドリーミンなエモーションを撃ち抜いてみせたにさうゐない。新田栄でも、怠惰にせよ通俗にせよ主要客層の琴線を緩やかに撫でる、適度な湯加減の量産型裸映画に仕上げてのけた、かも知れない。尤も、今作の加藤義一はといふと、彼岸のキリコがのつけからグイッグイ半裸の無造作―初体験だろ、そこは恥らへよ―以前に、初期設定で中岡が抱へる寂寞の具体的な内実を一切描かない、一滴も血肉を通はせない箆棒な無頓着。そのため中岡が黄昏ミドルといふよりも、小滝正大の魅力に乏しいメソッドにも火に油を注がれ単なる自堕落な駄々オジ程度にしか見えず、越境といふ大飛翔に挑むどころか、日常描写の端から始終の首は一向据わらない。小滝正大の惰弱さ―と二宮ひかりの心許なさ―が右往左往ぶりを加速する、相当な尺を並行世界のエクスキューズに費やす割に、中岡が此岸から連れて来られた一種の選別が、純然たる波動マターなのか、それとも幾許かはキリコの任意も介在してゐるのか。話が進むにつれ、基本的な肝要に関し動揺を来す脇の甘さも看過し難い。長谷川千紗が遮る、中岡を見たロンリーイザキが呟きかけた「あんたもしかしてシン・・・・」と、安藤ヒロキオとの事後、キリコと中岡のファイルに目を通す長谷川千紗が洩らす「矢張り」。聞くから思はせぶりな台詞を投げるだけ投げておいて、その後全く顧みない豪放磊落な作劇には、この映画凄えな!とグルッと一周して吃驚した。万能薬的な錠剤で事済ます彼岸の食事に厭いた中岡―つかお前は食ふな―が、此岸から持ち込んだ手荷物なのか、ロンリーイザキのバックパックに入つてゐたパック飯とレトルトのカレーに舌鼓を打つ件。最初ブツを自ら発見したにも関らず、完食後の中岡がキリコに対し、「よく手に入つたね」と感嘆するプリミティブなちぐはぐさにも引つ繰り返つた、君等の脳は全員鳥か。つい、でに。中岡に浮世離れた若さを誇るヒロキオ(仮称)が、五十年といふ此岸時間を認識出来てゐる道理も地味に不明。異界描写が何が点いては消えしてゐるのかが実は結局謎な、無駄な点滅と適宜鳴らす波動音効の、二手で一点―にも満たぬ―突破といふのは兎も角、最重要な意匠である赤と黄二色の水がそれぞれ入れられた容器が、テイクアウト感覚のペラッペラな透明プラ容器といふのはどうにかならないものか。パッと見それなりに映る硝子のコップくらゐ、セリアでも売つとるぢやろ。際限がなくなるゆゑ、この辺りで等々。とかく、もしくはとまれ。地に足の着かない物語に、地に足着けて取り組む腹積もりの全く以て怪しい、ツッコミ処ばかり姦しい木端微塵も超え、最早死屍累々に近い始末。
 二宮ひかり二連戦と、止めに並木塔子。何処からでも締めを狙へる濡れ場を三撃連ねておいて、選りにも選つて後ろ二つを、呆然通り越して愕然とさせられる中途でブッた切る壮絶な体たらく。先に挙げた電撃のEJD除けば、正方向に見てゐられるのは長谷川千紗と安藤ヒロキオが、各々キリコと中岡のメンター的に機能するなかなかの構図と、中岡が想起する、キリエから恋文を手渡された美しく切ない思ひで。「ハイ」的に微笑んだ二宮ひかりが、両手でラブレターを差し出す画に傍から―多分KSUに―シャボン玉を吹かせる、懼れを知らないポップ感が火を噴くスーパー・ミラクル・エクストリーム・ショット。かれこれしてゐるうちに、来年で監督デビュー二十年。加藤義一は未だ、瑞々しい一撃必殺の切札を失つてはゐない。と最後は南風的にまとめかけて、余計な憤懣を思ひだした。三連撃一打目、キリコが自ら服を脱がうとするのを制止した中岡は、「服を脱がすのは男の役目だよ」。犬は当然見向きもせず、蛆も湧かないアナクロなマチズモは無論論外、また中岡がキリコを裸にする小滝正大の手際がぞんざいで、本来、猛然とアガッて行かねばならない流れで導入からグッダグダに失速する。兎にも角にも、監督と脚本家を抑へ致命傷の座に座る男主役が、一言で片付けると無様の限りで凡そ満足な体を成さない一作。かういふ時、誰しもが脊髄で折り返し脳裏に浮かべよう、なかみつせいじでは齢がオーバーランとする判断なのかな。

 気がつくと開巻の辞以来すつかり御無沙汰で、完ッ全に忘れてゐたタケレーションがラストでまさかの再起動。「お話はこれで終りです」、実際終るのだから、それはまあいゝ。ところが続けて「え、何で向かうの世界のことを知つてゐるのかつて?」、「それは私も同じやうに」・・・・言葉尻は、波動音が濁す。整理すると“これから御覧頂くのは―中略―不思議な出来事です”と、“お話はこれで終りです”しか語つてゐない主体が、何を知るも知らないも、何をいつてゐるのだか当サイトにはサッパリ理解出来ないのだが。当の鎌田一利と加藤義一を始め、大蔵の担当者も撮影前にゴーを出す出さないで、当然脚本には目を通してゐる筈。大の大人が何人も加はつてゐながら、どうすると斯様な雲も掴み損ねる頓珍漢が完パケで世に出てしまふのか甚だ理解に苦しむ。それとも、それもまたひとつの、映画の持つ魔性の形とでもいふのであらうか。


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 「人妻本番 昼下りの不倫」(1993/製作・配給:新東宝映画/監督:深町章/脚本:加付加/企画:中田新太郎/撮影:下元哲/照明:伊和手健/編集:酒井正次/助監督:田尻裕司/監督助手:榎本敏郎/撮影助手:小山田勝治/照明助手:広瀬寛巳/スチール:津田一郎/録音:銀座サウンド/現像:東映化学/出演:石原ゆり・林由美香・杉原みさお・扇まや・柳蜂逸男・平賀勘一・山本竜二・池島ゆたか)。脚本の加付加は、小水一男(a.k.a.ガイラ)の変名。仮に新版ポスターと同じ面子だとすると、出演者中、柳蜂逸男が本篇クレジットのみ。
 クレジットが起動する雑踏に、一三四番手が連れ立つて歩く。ヒロコ(石原)とほか二名(杉原みさおと扇まや/どちらかはマリ)のうち、専らほか二名が喋り続ける話題は配偶者に対する愚痴、性的な。外に男を作つたみさおとまや(絶対仮名)がヒロコに口止めした上で、ホテル街の画にビデオ題「昼下りの不倫妻」でのタイトル・イン。みさおと山本竜二の逢瀬で絡み初戦を手短に撃ち抜く一方、パジャマぽいヒロコが、屋上的なロケーションで黄昏る。結論を一部先走ると、こゝの繋ぎからぞんざい過ぎたんだ。兎も角ヒロコが想起するのは、銀行員の夫・譲(池島)との、譲がヒロコを待たず勝手に達する半ば片方向の夫婦生活。譲が本店帰還の皮算用を巡らせなくもない、ヒロコが重役貴婦人達のお供を四日間も務める、即ち家を空ける木に竹を接ぐイベントに関して投げるだけ投げておいて、車のボンネットを開け悪戦苦闘する譲に、伊豆のホテル「月野ハーバービュー」の社長令嬢・月野しずか(林)が接触。家出して来たといふしずかは、譲に狂言誘拐を持ちかける。
 配役残り平賀勘一と柳蜂逸男は、渋谷駅東急プラザ前の身代金受け渡し場所にて、譲を検挙する官憲部。これまで特定出来ずにゐた柳蜂逸男の正体が、榎本敏郎の変名であるのに初めて辿り着けた。依然、どう読ませたいのかは知らんけど。
 散発的に出くはす例(ためし)でもあれ所蔵プリントが飛んでゐるらしく、nfaj尺がjmdb=ex.DMMの配信尺より三分短い、深町章1993年第八作。そのためか、原則翻刻を謳ふnfajにはセカンド助監督から東化までの記載が漏れてゐる。
 羊頭を懸け狗肉を売る“本番”はさて措き、ビリング頭のヒロコが実は不倫をしないまゝに、譲が藪から棒な勢ひでしずかに溺れて行くのと並走して、寝間着ver.のヒロコは闇雲に塞ぎ込む。截然と斬り捨ててのけるが、ガイラだ林由美香だといつた名前に引き摺られるにせよ釣られるにしても、斯様にトッ散らかつた代物を無理して評価しようとするのは、全く以て宜しくない、為になるまい。再三挿み込まれる割に、結局パジャマが何時何をしてゐるのか、最後の最後まで大体程度にしか判然としない、量産型娯楽映画の古強者・深町章らしからぬ不親切設計。そんなタマにも見えないが、杉原みさおと扇まやが“重役貴婦人”なのかと思ひきや、さういふ訳でも全ッ然ない、限りなく意味を成さない“お供の四日間”。重ねて単なるワン・ノブ・間男かと思ひきやきや、山本竜二がコーエー・エクス・マキナな扇の要を成す粗雑な相関関係。そもそも譲も金貸しのプロだろ、といふツッコミ処は強ひて一旦呑み込んだとて、何が斯くも必要なのか不思議な金と、毒婦に師匠の名前をつける点は奮つてゐるものの、若松孝子が譲の素性を知つてゐた何気な謎。行間ばかりがガッバガバ、思はせぶりに含みを持たせ倒した末に、石原ゆりが結構エクストリームな目に遭ふ締めの濡れ場をも、薬師丸ひろ子を模して“よく締まるヒロコ”ぢやことの、どうしやうもないクソネタ込みで山竜が何時もの調子で水を差すのも通り越し完全に鎮火、終に取りつく島は消滅する。四年後の「官能未亡人 うごめく舌先」(老成螺帝名義/主演:田口あゆみ)はそこそこ見られた記憶も残しつつ、ギャーラギャーラ持て囃すどころか、割と劇的に面白くない。林由美香―本来ならば―必殺の「アッカンベー☆」も、それを活かすポップなりキュートなセンスを深町章に求めるのは、些かお門違ひではなからうか。


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観光バス 濡れ濡れ・ジャック」(昭和52/製作:ワタナベプロダクション/監督:久我剛/脚本:池田正一/製作:渡辺輝男/企画:渡辺忠/撮影:大山宏之/照明:秋山和男/編集:竹村編集室/音楽:多摩住人/記録:前田侑子/助監督:高橋松広/効果:中野忍/美術:平川健二/スチール:津田一郎/製作進行:大西良平/製作担当:一条英夫/衣裳:富士衣裳/小道具:高津映画/タイトル:ハセガワプロダクション/録音:ニューメグロスタジオ/現像:東洋現像所/出演:渚りな・浜崎摩耶・乱孝寿・ちなみらら・北沢万里子・はやしペペ・橋本恵・田代夕子・秋山洋子・池谷まさえ・田中淳子・野上正義・土羅吉良・今泉洋・堺勝朗・松浦康・九重京司・滝沢秋弘・竜谷誠・木南清・城英夫)。出演者中、池谷まさえがポスターには池谷昌子。同じく田中淳子と、九重京司以降は本篇クレジットのみ。製作と企画のダブル渡辺が、何れも代々木忠の変名。クレジットがスッ飛ばす配給に関しては、事実上“提供:Xces Film”。
 車体に“かもバス ガイド研修車”の横断幕を掲げた、ボンネットバスが山道のカーブを曲がる。カット跨いで、緩い上り坂をゆるゆる進むロングにタイトル・イン。ここで凄まじいのが、ポスターではタイトルが「セミドキュメント 観光バス・濡れ濡れジャック」、そこ揺らぐのかよ。所詮形式的ともいへ、セミドキュメントの体裁を放棄するとなると結構根本的に。と、いふか。うは、よくよく見るに何だこれ。バスの車体がポスターはリアエンジンバスで、バスガイドの制服も色から違ふ。間違ひ探しどころか、寧ろ正解の方が少ない。
 閑話休題、最初に抜かれる俳優部が、運転席の脇に立つ右頬に馬鹿デカい黒子をあしらつたオールドミスの研修主任・若林弘子(乱)と、普通に咥へ煙草の係長(滝沢)。自由すぎんだろ、昭和。研修終了の流れと称した弘子の選曲で、総勢十五名くらゐの研修生含め同年永年のヒットを飛ばした、ジュリーの「勝手にしやがれ」を大合唱。係長も運転手(不明)から帽子を拝借しノッリノリ、麗しい、時代ではある。ガイド研修生の一人・林理沙(渚)が尿意を訴へ、係長が車を停めさせようとする一方、ガミさんが持ち芸の「イックション!」。弟分の黒岩虎男(虎夫か虎雄かも/土羅吉良)が下手を打ち女に逃げられた、白黒ショーのエロ事師・野田五郎(野上)が二人で寒さと飢ゑに震へる。研修車は三十分休憩、用を足した理沙を係長が口説く、のも通り越し手篭めにはしない程度でサクサク事に及ぶ傍ら、野田と虎男は、何故か段ボールで大量に積まれた食料を目当てに、運転手は眠るバスに忍び込む。二人が暴飲暴食する件、虎男が蜜柑を皮ごとの丸ごと口に放り込むのがダイナミック。そんなノダトラはどうしたの?といふ無頓着な繋ぎで研修バスが再出発。虎男共々、実は段ボールに紛れ車内に留まつてゐた野田が、今度は「小さな日記」を皆で歌つてゐるのに釣られてガナりだし、すはバスジャックだと一同は騒然とする。一時停車した隙に車外に逃れたその他ガイド研修生(はやしペペ以下六名と更に若干名)が、蜂の巣を突いた勢ひで堺勝朗一人の駐在所に駆け込む。都健二が読む臨時ニュースで自身らがバスジャック扱ひされてゐるのを知つたノダトラは、娑婆でのヤリ納めと俄かに下心を起動する。
 配役残り、渚りなと二人でポスターを飾る浜崎摩耶と、ちなみらら・北沢万里子が、理沙らと車中に残る研修生、順に加奈子・千鶴・清子。今泉洋は、駐在(堺)が「かもバスがカモられました!」なる、最早素晴らしいとでも称へるほかない、爆発的に可笑しい名台詞で報告を入れる八幡野署署長。かもバスが逆算しての名称であるとしたら、池田正一は紛ふことなき超天才にさうゐない。水が低きに流れるが如く、他愛ない事態があれよあれまと大事件になる中、ビリング順に九重京司と竜谷誠に城英夫は、“この映画はあくまでフィクション、作り物の嘘です”といふ方便のつもりなのか、周囲からの敬称がまさかの“閣下”のしかも大統領と、ノンクレの自治大臣・官房長官と何昼夜か雀卓を囲み続ける法務大臣に、総理もとい大統領秘書官。秘書官が「如何致しませうか、閣下」と九重京司の意向を仰いだ際には、全体この映画は何処世界を描いた物語なのかと引つ繰り返つた。堺勝朗・今泉洋と並ばせると三人揃つた三連星ぶりがバクチクする松浦康が、現地対策本部に加はる八幡野村村長。現対本を賑やかす警官もう二人のうち、片方は津田一郎。確実に抜かれる画が、僅かながらなくもない。そして、如何にも内トラ臭い、謎のグラサンが泣き落とし目的で連れて来る木南清(a.k.a.君波清)は、御齢百二十とかいふ闇雲な設定が底を抜く野田の父親。五郎は幾つの時に出来た息子なのよ、オールド・パーか。
 劇中、“超法規的措置”といふ用語が使はれてゐる点からも明らかな、当時二ヶ月前に起きたばかりのダッカ日航機ハイジャック事件の、鉄を熱いうちに打ちのめしたjmdb準拠で久我剛第四作。久我剛といふ人は撮影部と演出部を往き来した、後年の西川卓、近年では下元哲スタイルの先輩格、先駆者といへるのか否かは知らん。jmdbにもnfajにも項目ないし記載の見当たらない、ついでにググッてみても何も出て来ない撮影の大山宏之が、もしかすると自監督作に於いてのみ使用してゐる、久我剛の変名かもと思ひたち調べかけた、けれど。ex.DMMに久我剛の配信作は今作一本きりしかなく、結局検証を試みるにも手も足も出なかつた。
 小悪党にも至らない有象無象が巻き起こす、といふか巻き起こした格好に祀り上げられて行く過程込みの大騒動。買取系相手にそもそも振れぬ袖を強請(ねだ)るやうだが、こゝで城英夫のところに小見山玉樹がゐたなら正真正銘マジのガチで完璧な、愉快な男優部主導の一応政治的なスラップスティックが面白楽しく観てゐられ、はするにせよ。安定しない公開題に劣るとも勝らず凄まじいのが、さうなるとノダトラ登場後は純然たる単なる残されたワン・ノブ・濡れ場要員に全く止(とど)まる、確かビリングは先頭の渚りな。理沙が以降の推移に何某か寄与するでなければ、絡み的にすら特段フィーチャーされるでなく。主演―の筈の―女優であるにも関らず、途方もない影の薄さが何気に衝撃的。どたばた喜劇に話を戻すと、カモられたかもバスがエンコ後も、ノダトラとガイド研修生メイン四人に、弘子と係長。八人が基本車の外に出ない、手詰まりと紙一重の展開を主に救ふのは内閣の長に大統領が座る画期的かへべれけなアクロバットと、現対本ですつたもんだし倒す三羽烏。抑圧的な今泉洋と、虐げられつつ不平を垂れる堺勝朗。松浦康は勝手気儘に殆ど遊んでゐる、トライアングルの強度はコメディの完成形なり、黄金律の趣さへ漂はせる。反面、北沢万里子のグラマラスが印象的に火を噴く、それなりにエクストリームな締めの乱交を見る限り、別にその気になれば久我剛が普通に攻め込めると思しきにしては、カモジャック悶着に割かれる尺以上だか以下に、裸映画としては些か疎かとも難じざるを得ない。逼迫したスケジュールに強ひられたのかも知れないが、加へて無闇に夜間のシークエンスが多いのは激しく如何なものか。見えるか見えないか、撮影部出身の久我剛に判つてゐなかつた訳があるまい。チャリンコでのんびり流してゐたところ、偶さか研修バスと交錯した駐在の、「あ!カモられたかもバスだ」が再び捧腹絶倒。要は女の乳尻云々いふよりも、一番美味しいハイライトは、堺勝朗が持つて行つてしまふやうな一作である。

 とこ、ろで。元来ノンポリの野田に、政府に訴へる何事かが別にあるでなし。その場の雰囲気で政治犯ぽく要求しかけたものの、忽ち言葉に窮した野田が釈放を求めたのは、摘発されたブルーフィルムの監督と、ストリップ小屋の支配人。さういふ場当たり的な野上正義の姿に、二年後の「ローリング・ストーンズを日本に呼べ!」の元ネタじみた匂ひを感じ取るのは、幾ら何でも大雑把な牽強付会を吹くにもほどがあるかしら。


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 「悶撫乱の女 ~ふしだらに濡れて~」(2020/制作:ラブパンク/提供:オーピー映画/監督・編集:髙原秀和/脚本:宍戸英紀・髙原秀和/原作:『モンブランを買ふ男』うかみ綾乃 Aube Books/音楽:野島健太郎/撮影:下山天/照明・撮影アシスト:田宮健彦/録音:田中仁志/助監督:森山茂雄・菊嶌稔章/メイク:三田めぐみ/スチール:本田あきら/編集:高原秀和/協力:末永賢・高橋祐太・木原伸夫/仕上げ:東映ラボ・テック/出演:奥田咲・那波隆史・涼南佳奈・加藤絵莉・小滝正大・細川佳央・稲田錠・柳沼宏孝・山岡竜生)。
 モンブランケーキ山頂の栗を、奥田咲が指で抓んで口に入れる。暗転式字幕で“愛しさの味”、そのまゝ巻きフィルムを手で持ちガブリと本体を丸齧りして、“後悔の味”。漠然としたロケーションの河原、背中側から主演女優を抜いた軽いロングにタイトル・イン。悶撫乱には、“もんぶらん”と読み仮名が振られる。
 コンビニエンスストアのレジに、店員の高梨玲子(奥田)が呆然と立ち尽くす、“ただこゝにゐる”。侘しい独り暮らし、“もう誰にも愛されない”とか序盤かららしいといへば髙原秀和らしさを拗らせた上で、当然一緒に暮らしてはゐない男児・タクミ(不明)のスナップを伏せた玲子は、“ただ眠るために”日課の自慰に耽る。玲子の同僚・望月明日香(涼南)の顔見せと、台詞ありの客でセカンド助監督が物理的にも大きく見切れる、近所と思しき倉庫の従業員で賑はふ店内。玲子は高い頻度でモンブランを買つて行く男(那波)に、モンブランさんと徒名をつける。俺も近所のスーパーで、森永永遠の大正義、チョイス野郎とか呼ばれてゐたらどうしよう。チャリンコで帰宅する玲子が、一応ヤサもあるのに何故そんな場所でコンビニ弁当を開けゐやがるのか、橋上に設けられたベンチのモンブランに挨拶してみたりもする中、ある日モンブランが馘になつた元同僚・猪飼利寿(稲田錠/G.D.FLICKERS)と松井和己(柳沼宏孝/ex.4-STiCKS)から、逆恨みで半殺しにされる場に玲子が介入。自宅で手当てしたモンブランと、何となくな流れで玲子は体を重ねる。とこ、ろで。猪飼と松井が1mmたりとてカッコよさの欠片もない、純然たる単なる輩造形。となると別に本業の足しになるでなく、髙原秀和が自身も棲むライブハウスもしくはハコ村から連れて来ようとする分には勝手だが、寧ろ出る方もこのキャスティングでよく出たなとすら、直截には思へた、最直截には呆れた。
 とまれ配役残り、若干前後して細川佳央も、モンブランの同僚・田辺洋太。“何とかしたい”けれど、“何ともならない”状況に燻りつつ、朗らかさも失はない気のいゝ兄(あん)ちやん。小滝正大は、個人経営のコンビニ店長・兼崎和也、屋号不詳。明日香とは勤務中にバックヤードで後ろから突いた挙句、中に出す仲。仮称モンブランこと本名ナカハラミチヤは三年前に業務上横領を犯し、目下はあと四年の公訴時効を逃げきるのをとりあへずな心の支へに生きてゐた。回想パートにのみ登場する加藤絵莉が、ナカハラ課長を誑かした部下兼の不倫相手・松本早紀。山岡竜生はナカハラを捜しコンビニの敷居を跨ぐ、刑事・坂井。その他コンビニ客と倉庫の休憩室要員を、協力と演出部とで賄ふ。散発的に他人の映画を手伝つてばかりゐないで、どうか森山茂雄には新作を撮つて欲しい。当サイトは未だ、否毅然と今なほ、ハッピーエンドに準ずる旧劇実写版「あぶない美乳 悩殺ヒッチハイク」(2011/脚本:佐野和宏/主演:みづなれい)の深く激越な衝撃から些かも醒めてはゐない。
 初端から逆張りを頑張りすぎた切通理作主幹の桃熊賞が、驚天動地の一位に放り込んだ前作「濡れた愛情 ふしだらに暖めて」(2019/脚本:宍戸英紀・髙原秀和/主演:小倉由菜)に続き、第二回も首位に輝いた髙原秀和大蔵第四作。公募した一般投票で選ばれるベストテンに於いても三位に食ひ込み、世評のそれなりな高さが窺へもする。
 女子トークピンクなる甘美を極めた超機軸を轟然と撃ち抜いた、吉行由実2015年第二作「お昼の猥談 若妻の異常な性体験」以来、五年を経てのピンク二戦目でたをやかさを増した、奥田咲の蕩けさうな肢体を気持ち淡めの美しい撮影で加速。生きよ堕ちよ、もとい―オッパイを―揉めよ吸へよといふ即物的かつ根源的な不満さへさて措けば、質的にも量的にも豊かな眼福を存分に愉しませ、裸映画的には楽々元の取れる及第点。こゝは手放しで賞賛に値する、遅きに失するでなければ木に竹を接ぐでなく、本筋に上手いこと合流させてのけた秀逸な起用法が煌めく三番手も、束の間に屈せず出演時間を概ね脱ぎ倒す。思慮の浅いバカ二人がマキシマムに危ない橋を渡つた直後、遅れてゐた“アレ”がのこのこ超絶のこの期ぶりでやつて来る、皮肉なパンチラインも映画的に奮つてゐる。何より、終盤初めてモンブランが戸籍名を明かした際の「今更!?」で苛烈に火蓋を切るや、奥田咲が耳を聞き張る見事な発声で叩き込み続ける力強いエモーションの籠つた台詞の乱打は、ついうつかり傑作を錯覚させかねなくもない。さうは、いつてもだな。類が友を呼んだのか、要は女から体よく唆されたナカハラがナカハラなら、玲子も玲子で抱へる過去が、夫の浮気を浪費の方便としたカード離婚。自堕落な男に自堕落な女が、正体不明の勢ひで入れ揚げる、何がなんだか感は否み難い。といふか改めてよくよく振り返るにぼんくらボニクラな明日香と田辺は論外、猪飼と松井はただのウェーイな不良中年で、大幅にオーバーランしてゐるともいへ、兼崎もひとまづ自業自得か因果応報の範疇、クリシェな毒婦の早紀を忘れてゐた。端役の官憲除きマトモな人間が実は一人も出て来ない、歪み抜いた世界観も地味にどうしたものか、どうもかうもないんだけど。重ねて、あるいは火に油を注いで。“もう誰にも愛されない”で既に致命傷の傷口を更に広げて塩を塗り、“行くとこなんてどこにもない”、“私にはなにもない”、“何も変らない”、“何もない”。如何にも髙原秀和的な粘度の高い非力さで捏ね繰り回し続ける、清水大敬と国沢実を足して二の二乗で割つたが如き、鬱屈字幕の釣瓶打ちがもう煮ても焼いても到底食へない。平成の三十年を丸ごとドブに捨てたにも関らず、ピクリとも潮目の全く変らない昨今。怪我の功名的にアクチュアルでなくもない視座未満の低体温と、瞬間最大風速の南風を吹かるならばもしも仮に万が一いへたとしても、グルッと一周する体力の所詮ない髙原秀和に塞ぎ込まれたところで、精々袋小路で行き詰まるのが関の山。ふしだらな女がふしだらな男に偶さか濡れる、そもそも映画そのものがふしだらな印象が強い。おゝ、公開題が中身の本質を突いてゐるではないか、珍しく。象徴的なのがヒロインがモンブランを食するのに、家でも満足な皿と匙を使ひもしない、あるいは使はせもしない一作。安普請といふほどでもない無頓着―あと真直ぐ走れない身の丈に合はぬチャリンコも―にしても、玲子のトッ散らかつた部屋を見るに、よしんばさういふキャラクター設定であつたにせよ、だらしない女とだらしない男の、だらしない映画といふ結論は動かない。ダラシネマ、たつた今思ひついた、それを脊髄で折り返すのはやめろ。


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 「すけべ先生 淫らな授業」(1997/製作・配給:新東宝映画/脚本・監督:深町章/企画:福俵満/撮影:稲吉雅志/照明:伊和手健/編集:酒井正次/録音:シネキャビン/現像:東映化学/出演:しのざきさとみ・水乃麻亜子・悠木あずみ・扇まや・杉本まこと・熊谷孝文)。まあしかし、レス・ザン・情報量なクレジットではある。
 タイトル開巻、女子高生の冴子(水乃)がバスケットボールであんたがたどこさする体育館に、飯盒を提げた金井玉三郎こと、通称金八ならぬ金玉先生(杉本)が現れる。冴子から誘はれたと思しきにも関らず、「さて」と金玉が飯盒の雑炊を食ひだした時点で、気づくべきであつたのか。否、あつたのだ。一旦結論はさて措き二人がオッ始めた、のはいゝけれど。撮影部と演出部は健闘する、結構な大きさの地震が発生、杉本まことが下手なオーバーアクトで茶を濁す。坂本龍馬を心酔する金玉は「天が怒り狂つとる」とか、狂つてゐるのはこんならぢやとしか思へない頓珍漢な大仰さで事態を曲解。その頃冴子の友達・鶴子(悠木)も、優等生?の勝(熊谷)と薄野原で致さうかとしてゐたのを果たせずに終る。水上荘の自宅に逃げ帰つた勝は、夫(影も形も登場しない)とは随分御無沙汰な模様の母(扇)に泣きつく。極度のマザコンである勝と一緒に風呂に入つたまやママは、禁忌の障壁をさしてどころか微塵も感じさせずに息子の尺八を吹き、精も口で受ける。配役残りしのざきさとみが、金玉の下宿―も矢張り水上荘―に出入りする、恋人的ポジションの風俗嬢。形式的な序列上は主演―の筈の―女優にしては、何気に一番顧みられない不遇通り越して不思議な役。といふか、ビリング頭が濡れ場要員かよ、またエッジの効いたキャスティングだな。
 ex.DMMにある未見作を、下の方―配信開始の古い順―から無差別に見て行くかとしたところ、踏んでしまつた深町章1997年第二作。龍馬気取りの金玉が勝“まさる”を、もしくは勝も勝海舟の生れ変りと称する一方、冴子と鶴子まで二人して実は憧れる金玉にアテられたのか、自身らが龍馬ゆかりの女達の、転生であるのではなからうかと胸をときめかせる。どうかしたのか―明確にどうかしてゐるのだが―藪から棒なスピリチュアル方面に転んでみせる香ばしい展開に、またぞろ剽窃作の可能性を摸索しかけた下衆い勘繰りは、ほどなく霧消した。少なくとも、たとへばさういつた場合の大本命たるa.k.a.周知安の片岡修二が、斯様にスッ惚けた脚本を書く訳がない。ところがスピるならスピるで、徹しすらしやがらないんだな、これが。冴子と鶴子にしのざきさとみを前に、金玉が乱世を救ふ新しい教育方針とかいふ蕩けた方便で打ち出したのが海綿体、もとい快men隊スピリット。心配御無用、意味の名に値する意味なんてねえよ。プロのしのざきさとみから前立腺責めを学んだ冴子と鶴子が、勝に逆夜這ひを敢行する巴戦などは結構な完成度ながら、最終的には龍馬コスすら披露するに及ぶ金玉あるいは杉本まことが、端々でパチキン―武田鉄矢に対する蔑称―の物真似に戯れてゐてはどうもかうもあるか、映画が凡そ満足な体を成さない。何処まで壊れれば壊せば気が済むのか、仕出かす時の破壊力は珠瑠美をも実は凌駕する、盛大か壮絶な水上御大御乱心。随分な扱ひのしのざきさとみ以上だか以下に、エクストリームな悲運に見舞はれるのが何故かトメに座らされた熊谷孝文。どうやら完全に耄碌した深町章が山本竜二と勘違ひしてゐるらしく、山竜ならでは、といふか山竜でも往々にして大人の量産型娯楽映画を子供騙し未満に爆砕してのける、ある意味ダウナーなばか造形をアテられた熊谷孝文はものの見事に爆死。プリップリに弾ける水乃麻亜子の乳尻を、大人しく見せてさへゐれば幾らでも戦へたらうに。木に竹も接ぎ損なふドラスティックな悪手を異常な執拗さで繰り出し続けた結果、最早腹も立たぬ時間の無駄である。

 ただこれ、よくよく画像を探してみるに、ポスターでは水乃麻亜子と悠木あずみに続いて、しのざきさとみは三番手になつてゐる。となると今度は、そもそも本クレが腐つてゐたのかと別種か寧ろより性質の悪い、新たなるツッコミ処が発生するどうでもよからざる話でしかない。


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ピンク映画の感想のインデックスです。
当該タイトルを踏んで頂ければ、別ウインドウで表示されます。

(製作年/V)は、正確にはピンクではなくVシネ。

関根和美
痴漢やらせ電車」(昭和61)
SEXライフ 熱い夜に抱かれて」(1993/川井健二名義)
ヴァージン日記 指の戯れ」(1993/川井健二名義)
女優志願 レイプ調教」(1994/川井健二名義)
美巨乳・はさみこむ」(1994/川井健二名義)
隣のうづき若妻 ~スワッピング三昧~」(1995/川井健二名義/旧題:『ザ・夫婦交換 隣の若妻の味』)
女子研修寮 暴行の洗礼」(1995/川井健二名義/旧題:『女子寮潜入 覗きとレイプ』)
主婦売春 若妻性欲処理」(1995/川井健二名義)
発情夜這ひ未亡人」(1996)
尻軽浮気妻 バイブ地獄」(1996)
大江戸淫乱絵巻 復讐篇」(1996/リリース年/V)
大江戸淫乱絵巻 敵討篇」(1996/リリース年/V)
色欲乱れ舞」(1996/リリース年/V)
快楽セールスレディ ~カラダも買つて~」(1996)
隣の奥さん バイブでトロトロ」(1996)
痴漢電車 くひこむ生下着」(1997)
女医ワイセツ逆療法」(1997)
びしよ濡れ下宿 母娘のぞき」(1997)
痴漢 極楽指めぐり」(1997)
痴漢電車 即乗りOKスケベ妻」(1997)
生好きお姉さん おクチなら何度でも」(1997)
新妻 昼下りの男狂ひ」(1998)
憧れの白衣の天使 愛撫でびつしより」(1998)
OL調教 私、変態ですか」(1998/旧題:『OL奴隷監禁 もらす』)
痴漢電車 ムリ女を狙へ」(1999)
痴漢通勤快楽 みだらな車内」(2000/旧題:『痴漢電車 ゆれて絶頂5秒前』)
淫行タクシー ひわいな女たち」(2000)と、幾分リファインしたDMM戦版
エッチな天使 ねつちやり白衣」(2000)
痴漢トラック 淫女乗りつぱなし」(2000)
現役女性記者 淫らな体験レポート」(2001)
痴漢電車 ぐつしより下唇」(2001)
喪服妻のよろめき」(2001)
教師みさお 舐めてあげる」(2001)
うす濡れパンティー」(2001)
イヴの衝撃 不貞妻の疼き」(2002)
悩殺OL 舌先筋責め」(2002)
痴漢電車 喪服妻の誘惑」(2002)
浮気妻 裏ナマ覗き」(2002)
エアロビ性感 むつちりなお尻」(2003)
熟年の性 人妻に戯れて」(2003)
人妻 渇いた舌先」(2003)
馬を愛した牧場娘」(2003)
若奥様 羞恥プレイ」(2003)
激生ソープ 熟乳泡まみれ」(2004)
痴漢電車 指使ひ感じちやふ」(2004)
人妻援交サイト 欲望のまゝに」(2004)
女探偵 おねだり七変化」(2005)
義理の妹 いけない発情」(2005)
しつとり熟女 三十路の昼下がり」(2005)
どスケベ坊主 美姉妹いただきます」(2005)
未亡人女将 我慢できないの」(2005)
不倫関係 微熱の肌ざはり」(2006)
四十路の奥さん ~痴漢に濡れて~」(2006)
欲望の尼寺 煩悩みだれ観音」(2006)
巨乳看護師 白衣をもみもみ」(2006)
やりたいOL 純ナマで激しく」(2007)
妻の母 媚臭の甘い罠」(2007)
未亡人温泉 女湯でうなぎ昇り」(2007)
人妻の衝動 不倫のあとさき」(2007)
新妻の寝床 毎晩感じちやふ」(2007)
性犯罪捜査 暴姦の魔手」(2008)
兄嫁の谷間 敏感色つぽい」(2008)
OL家庭教師 いぢり突く」(2008)
痴漢の手さばき スケベ美女の喘ぎ顔」(2008)
性犯罪捜査II 淫欲のゑじき」(2009)
白衣快感 おつぴろげご奉仕」(2009)
喪服姉妹 熟女しびれ味」(2009)
派遣の性癖 美白びんかん巨乳」(2009)
丸見えやり抜き温泉」(2010)
コスプレ挑発 おしやぶりエッチ」(2010)
家政婦が見た痴態 お願ひ汚して」(2010)
後妻の情交 うづき泣く尻」(2010)
トリプル不倫 濡れざかり」(2011)
やさしい手」(2011/V)
性犯罪捜査Ⅲ 秘芯を濡らす牙」(2011)
援交強要 堕ちた人妻」(2011)
三十路妻 濃蜜な夜のご奉仕」(2012)
若未亡人 うるむ肉壺」(2012)
奴隷人妻 恥辱のあへぎ」(2012)
巨乳天国 ゆれ揉みソープ」(2013)
浮気調査 情欲裏ファイル」(2013)
和服女将の乱れ髪」(2013)
真夜中の不倫妻」(2013)
喪服未亡人 四十九日の情事」(2014)
どスケベ坊主の絶倫生活」(2014)
奥様は18歳 超どきどき保健室」(2014)
黒下着の女 欲情の赤い蜜」(2015)
不倫美姉妹 白衣のあへぎ」(2015)
桃尻娘のエッチな大冒険」(2015)
特務課の罠 いたぶり牝囚人」(2015)
演歌の女 乱れ慕情 艶景色」(2016)
美人妻覚醒 破られた貞操」(2016)
寸止めスナック めす酒場」(2017)
W不倫 寝取られ妻と小悪魔娘」(2017)
煩悩チン貸住宅 淫らな我が家」(2018)
福マン婦人 ねつとり寝取られ」(2018)
愛人生活 きみとなら…」(2018)
豊満OL 寝取られ人事」(2018)
激イキ奥様 仕組まれた快楽」(2019)
おせんち酒場 君も濡れる街角」(2019)


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 「やさしい手」(2010/企画・制作:ミューズ・プランニング/製作:ファインフィルムズ/監督:関根和美/脚本:保坂延彦・関根和美/製作:加藤義久/企画:新田博邦/エグゼクティブプロデューサー:赤井航/プロデューサー:高中義光/撮影監督:下元哲/助監督:山口雄也/録音:飴田秀彦/美術:黒須康雄/編集:新居あゆみ/スチール:小阪和則/制作担当:高橋誠喜/撮影助手:斎藤和弘・浅倉芙里子/照明助手:榎本靖/録音助手:清水オサム/制作進行:綿貫仁/演出助手:新居あゆみ・市村優/スタイリスト:本多徳生/ヘアメイク:相場広美/助手:矢澤睦美/制作デスク:清水由佳/脚本協力:仁瀬由深/メインテーマ:光士老/EED:丸山正浩《エムジェイ》・千葉康将《エムジェイ》/MA:スワラ・プロ/整音:星一郎/整音助手:森田祐一/効果:伊藤克己/選曲:鈴木潤一朗/撮影協力:ハーベスト・厚生水産・SENTO CORPORATION・club Calme Kisarazu・ホテル コスタルーナ・NPO パートナシップきさらづ/衣裳協力:秋本商事株式会社・Angela、他二社/協力プロダクション:株式会社オスカープロモーション・青年座映画放送株式会社・有限会社三輪事務所・株式会社太田プロダクション・株式会社ぱあとなあ・株式会社メロウリップス・株式会社パーティ企画・株式会社ダブルフォックス・原田オフィス・石田企画/制作協力:関根プロダクション・有限会社マジックアワー/出演:水沢アキ、風祭ゆき、大竹一重、白須慶子、志水季里子、原絵里、三上剛史、山口真里、花井美代子、今井和子、すぎ。《インスタントジョンソン》、ゆうぞう《インスタントジョンソン》、じゃい《インスタントジョンソン》、松本勝、SATOMI、日堂圭子、甲斐太郎、なかみつせいじ、弓田和彦、秋本昇一、秋岡妙子、池田知世子、石井淳一、市川美枝子、GYU、サファリ・マジー、芝崎薫、瀬戸晴江、立石武昭、永塚忠弘、畑中靖則、芥善人、前田めぐみ、山口佐智世、吉原英子、渡辺和文、天川真澄、吉田祐健、宮川一朗太)。衣裳協力の他二社が、ポータブル・プレイヤーのチンケな液晶ではロゴを判読出来ず。あとオーラスにはⓒで、「やさしい手」製作委員会がクレジットされる、製作委員会方式なんだ。
 夕日や橋の画に加藤義久と新田博邦をクレジットした上で、鴎の飛ぶ空にタイトル・イン。明けて特に不穏な雰囲気も感じさせない、ニュートラルな港の風景に赤井航と関根和美の名前が続く。パート主婦の岩崎葵(水沢)が、ママチャリで快活に出勤。顔見知りと挨拶を交す何気ないカットに、よもやまさかあの男が潜んでゐようとは、後述する。特段重きを置かれるでなく志水季里子含むパート仲間計六人と、葵の前に現れた工場長(天川)は出て来るなり深々と頭を下げ、不況の煽りを受けての水産加工場閉鎖を言明して即座に退場。ピンク映画に於ける女優部三番手も斯くやと思はせる、鮮やかな御役御免が清々しい。とりあへず帰宅、義母・豊子(今井)に失業を報告した葵が夫で漁師の潤一に電話してみると、携帯はハンガーにかゝつた作業着の中で鳴つてゐた。翌日、結局潤一は連絡も取れないまゝ戻らなかつた岩崎家を、かつて潤一の弟子筋で十五年前突然姿を消した島村圭太(宮川)が訪ねて来る。潤一不在につき一旦そゝくさ辞した圭太は、桟橋まで追つて来た葵に青天の霹靂を告げる。圭太が社長を務める(有)ハッピーローンから潤一が三百万を借り、岩崎家家屋も担保に入つてゐるといふのだ。
 配役残り、闇雲な頭数に関しては潔く白旗を揚げる。豊子も脳梗塞で倒れ、職探しの要に迫られた葵は電車で街に出る。風祭ゆきは、葵がいきなり門を叩く個室ビデオ「オアシス」の女主人・天地洋子。仕事内容に葵が一晩考へさせて貰つたオアシス二日目、大竹一重が手コキを指南する美香。手しか客には見せないといふのに、服もメイクもキッメキメの藪蛇か頓珍漢な造形が香ばしい。泣きだしてその場を飛び出した葵が、その後あちらこちらで求職に爆死する一連。SATOMI名義の里見瑤子が客を見送つたスナック「とらい」の表で、葵に一瞥呉れるホステス役で艶やかに投入されるのが、天川真澄(ex.綺羅一馬)に続くピンク隊第二の矢。では実はなかつたんだな、これが、だから後述する。更にその翌日、再々度葵がおめおめ出直したオアシス三日目。サファリ・マジーは、洋子が葵を連れ3番個室のブースに入る間、受付を任せられるマジセルフ。ナードなお眼鏡が狂ほしい白須慶子が、控室にもう一人登場するオアシス嬢・るみ。えゝと、僕はるみさんで・・・・黙れそして息するのをやめろ。僅かな時間差でまとめて投入されるインスタントジョンソンは、まづじゃいが仕事終りに洋子が葵を誘ふ、バー「HARVEST」のバーテンダー。すぎ。とゆうぞうは遅れて「HARVEST」に来店するサラリーマンと、レオナルド熊風の鉢巻男。頭に来たのを脊髄で折り返し何度でも繰り返すが、徒に句読点を名詞に入れるなアホンダラ、文が乱れるのが気持ち悪くて仕方ない。閑話休題、三人には鎌田・片山・掛川と銘々固有名詞も用意されてゐるやうではあれ、全く以て特定不能。豊子を見舞つた葵は同じ病院の敷地内で、矢張り老婆を見舞ふ圭太を目撃する。また狭い町だな、とついついツッコミたくもなるのは、いはぬが花といふ奴だ。圭太らに声をかける医師が、なかみつせいじぽく思へなくもない―にしては少し若いかなー?―が明らかに録音が遠く、抜かれるのも背中からゆゑ確信には至れず。その直後、葵から呼びとめられるや患者の情報をペラッペラ開陳する、エクスキューズ看護婦が山口真里。関根和美―もしくは保坂延彦―が何も考へずに書くのは勝手だが、山口真里は脚本を渡されて首を傾げるなり匙を投げなかつたのか。と、いふかだな。脚本協力でもう一名加はつてゐたりもする、どうしやうもない地獄の体たらく。船頭多くして山に上るはおろか、船沈めてどうするのか。気を取り直して劇中最強かつ、電撃のワイルド・カードが吉田祐健。手を差し込む穴の開いた、ビデオ個室の薄い壁越し。客の洩らす呻き声で男が顔見知り(吉田)であるのに気づいた、葵が愕然とする件。葵が想起する吉田祐健の笑顔に、何処に出てゐたのかと大慌てでタイトル直後、葵の出勤風景に戻つてみたところ、確かに祐健イタ━━━(゚∀゚)━━━!!ピントも合はせられず、明らかに背景に埋れ。単なる無作為の結果棚ごと牡丹餅が落ちた比類ないウォーリーぶりが、場外馬券売場に紛れ込むのも通り越し極々自然に溶け込む、超絶のステルス性能を誇る新田栄をも凌駕する。それでも探せば見つかるだけ、吉田祐健はまだマシ。あゝも濃い、特濃のオフェンシブな面相を見落とす方が難しい御仁であるにも関らず、何故か甲斐太郎がどうしてもノッファウンドなのが重ね重ね残念無念。といふより寧ろ、直截には心の底から不思議。よしんば音声情報のみでも、逃がしはしない自信ならある。
 旧物件デモリッションに伴ふ、必ずしも非といふ訳でもないが半自発的転居後、純然たる業者都合で呆れる勿れ三週間強、新居に通信回線が固定電話分すら繋がらない新ならぬ珍生活。折角なので随分前にレンタル落ちをポチッてはゐた関根和美のVシネで、まさかのフライングを仕出かした、五人目の感想百本に到達するフィフス・ハンドレッドを改めて仕切り直し。なほ、クレジットには2010年制作とあるが、さうすると2010年の何作目に入れたらよいのか判らなくなるため、当サイトのインデックスはピンクの封切り日同様、あくまでDVDの発売日(2011/7/8)に従つた。
 パケ裏面に仰々しく躍る惹句が、“女優水沢アキ主演”ד映画初ヌードを披露し”ד衝撃の濡れ場を熱演!!”。尤も、よくある“劇場公開作品”の文言が見当たらない点を見るに、箔づけ上映も端折つた、純粋無垢のVシネである模様。失職と配偶者の借金に、姻族一親等の昏倒。何れもヘビーな、悲運のジェット・ストリーム・アタックに見舞はれた五十路の人妻が、手で扱いて男をイカせる、風俗店の敷居を跨ぐ、初手から。とかいふ、ぞんざいなメロメロドラマ、メロが一個多かつた。そこ、で。水沢アキの“映画初ヌード”ないし“衝撃の濡れ場”を謳ひながら、まあ何はともあれ、何が衝撃といつて水沢アキ映画初ヌードとやらを衝撃的に出し惜しむ。何が何でも出し惜しむ、凄まじく出し惜しむ。驚天動地、空前絶後に出し惜しむ。尺の折返し間際、二度目のシャワーシーンでいはゆる半ケツを拝ませる。のと、宮川一朗太の背中で正常位を頑なに隠し抜く、確かに衝撃ではある締めの濡れ場をも、しかも中途でブッた切つての通算三度目となる事後の矢張りシャワーで、正直あまりでなく有難くもない、萎びた横乳を僅かに覗かせるのが正真正銘関の山。勿体つけるにもほどがあるのか、それともそもそも、満足に見せられる素材では最早ないとする賢慮の働いた、苦渋の落とし処であつたのか。何れにせよ裸要員が木に竹を接ぐのも厭はず狂ひ咲くでさへなく、裸映画的な満足度ないし誠実さは、驚異的もしくは絶望的に低い。それ、でも。然様な痒いところを鎧の上から掻くやうな代物で、代物でも胸が一杯になる水沢アキに捧げられた殆ど信仰にすら片足突つ込みかけた、深く激越な関心を当サイトは別に持ち合はせてはゐないし、その欠如に不明を恥ぢるつもりも無論毛頭ない。そんな中でのまづ撮影部的な見所は、加齢を否応なく感じさせる、葵の目元をレス・ザン・容赦で捉へる非情なカメラと、先に挙げた有難みのない、横乳に続くショット。半分開けた扉を間に挟んだ引きで女優を狙ふ、如何にも下元哲らしい画角。反面目も覆はんばかりなのが、件の、逆の意味で“衝撃の濡れ場”を彩らない、下元哲的に平素のソフトフォーカスから斜め上だか下に箍をトッ外した、紗をかけるどころか大概派手にくすんでゐるのがビデオも褪色するのかと目を疑ふ、兎に角正体不明の画期的な画像処理、氷の世界かよ。蒸し返すととそれは果たして見せたくなかつたのか、見せられなかつたのか。
 これまで映画について語られて来た幾多の言葉の中で、当サイトが最も好きなのはヨドチョーこと淀川長治大先生の、大意でどんな映画にも、何かしら一つくらゐチャーミングな箇所があるとする慈しみ深い眼差し。渾身か捨て身の、肉を斬らせて骨まで断たれる覚悟のポリアニズムで果敢に―蛮勇だろ―優しくない不毛の荒野から、“よかつた”の萌芽を探し出さんとするならば、見えない角度から飛んで来る戦慄のロシアン・フックの如く、見えなくて当然の角度から飛び込んで来る我等が吉田祐健。自らはバレてゐないともいへ、顔見知りがオアシスに来た―のとチンコに触つた―ショックを引き摺る葵が、何時ものやうに潤一の舟「清新丸」で黄昏てゐると、当の祐健が素知らぬ顔で現れる。そのスッ惚けた表情自体にも最高以外の讃辞が俄かには思ひ浮かばないのだが、顔見知り氏が出し抜けに切り出す“大事な話”といふのが、知人の目撃情報に基く、潤一がマグロ漁船に乗つてゐるとするシャーカな噂。地味に重大な外堀を埋めるだけ埋めると、高速のヒット・アンド・アウェイで話の火蓋を切る工場長に勝るとも劣らない、煌びやかなまでの慎ましやかさで顔見知り氏はチャッチャと捌けて行く。関根和美と、吉田祐健。各々、量産型娯楽映画の前貼りで疑似精液を拭ふ苛烈な煽情もとい戦場で長年培つて来た、地力と互ひに対する信頼とが結びついて初めて火を噴き得よう、一見他愛ないか便宜的に見せ、案外完璧な一撃離脱が今作のハイライト。それ、ヒロインの葵が単なる客体に過ぎないよね。あるいは、頂にしては随分低くね?的な至極全うな疑問を懐くのは黙つてて呉れないかな。流石に南風吹かすのも、これが限界なんだよ。
 タイトルにまで戴く割に、“やさしい手”なる主モチーフが口頭に上るのはオアシス最初の面接時、洋子が葵の手をさう評するのが最後の一度きりな、腰も砕ける無頓着。一種マクガフィンじみた潤一が遂に帰還―腕と脇付近を人影程度に見せはする―したかと思ひきや、ところてん式に葵は出奔してゐる無体なラスト。果てしなく長い回想と、出入りが雑で混濁する時制といつた主兵装は温存しつつ、端々に関根和美が関根和美たる所以も刻み込まれてゐなくはない、ものの。まあ水沢アキ目当ての堅気衆が触れるか踏む分には、途轍もなく詰まらないにさうゐない。限りなく苦難に近い八十分を空費したすゑ非感動的に呆気なく物語が終る、消極的に壮絶な一作。尼のユーザー評でも木端微塵にコキ下してあつたのが、ある意味微笑ましいがこつちには関係ない。兎も角漸く、元々最悲願であつた関根和美ハンドレッド。さうはいへ百本といふのは目的地でなく、あくまで通過点。既に泉の下につき、関根和美の新作を関門以西で首をキリンにして待ち望む酔狂は叶はない。けれども潤沢に弾を握る大蔵はもとより、片手で足りる程度なら持つてはゐる筈のエクセスと新東宝にも、小屋と配信に円盤の形を問はず、旧作を市場に放り込んで貰へると少なくとも当サイトは諸手を挙げ身銭を切る、喜び勇んで身銭を切る。世間一般的な、需要の如何は知らん。

 神を宿さない細部を忘れてゐた、それを些末といふ。電車のカットで画と音が合つてゐなかつたり、洋子はすぎ。を持ち帰つた、「HARVEST」退店後。葵が帰途に就かうとするのを放さないゆうぞうを、要は葵を事実上ストーキングしてゐた圭太が、手荒く撃退するプチ修羅場。半殺しどころか、全殺ししかねない勢ひのブルータルな殴打音を鳴らしてみたりと、ちぐはぐな音効が散見ならぬ散聞される辺りも、この際別の意味で完璧。


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 「変態折檻 ねぢり込め!」(1992『本番バイブ 折檻』の1997年旧作改題版/製作:獅子プロダクション/提供:Xces Film/監督:佐藤寿保/脚本:五代響子/撮影:稲吉雅志/照明:小川満/編集:酒井正次/助監督:梶野考/監督助手:田尻裕司/撮影助手:村川聡・藤井昌之/照明助手:添田龍二/スチール:佐藤初太郎/録音:銀座サウンド/現像:東映化学/出演:憂花かすみ・小泉あかね・中村京子・水鳥川彩・坂田雅彦・伊藤清美・岩渕リコ・征木愛造・本間優作・杉浦峰夫・小島邦彦・今泉浩一)。出演者中、坂田雅彦から本間優作までと、小島邦彦は本篇クレジットのみ。
 細胞分裂ぽい、万華鏡的なCG。サイバーパンクかおどろおどろしい雰囲気が猛然と火蓋を切ると、矢鱈とカッコいゝレタリングでのタイトル・イン。バイブを手に、バトルスーツみたいな扮装の怪人物が迫る主演女優の、ヤバいオッパイがジャスティス。どうでもよかないが、日本語で書け。絶妙な暗さ以前に、正直画質が低くて意匠がどうなつてゐるのかよく判らない、謎のゴーグルをつけられた女に監督クレ。画像処理を施したものか最初から描いたのか、アニメ調のバイブ責めイメージに「被験者・ミナミヒロミ二十五歳」、水鳥川彩のモノローグが起動する。ゴシップ誌『実話トピックス』の取材で訪れたフリーライターのミナミヒロミ(憂花)を、臨床研究医?のタチバナ(水鳥川)は開発中のブレイン・マッサージ・システム「アンドロメダ001号」―表記は適当―の実験に協力させる。ブレインwマッサージwシステムwww、ホントに五代響子(現:五代尭子)が書いたのかと耳目を疑ふほどの、如何にも佐藤寿保的な大どころか超風呂敷が清々しい。バイブ責めのイメージも、ブレイン・マッサージ・システム(以下BMS)で映像化した、ヒロミの心象風景とかいふ豪快の箍も粉砕した途方もない方便。
 配役残り坂田雅彦(ex.坂田祥一朗)は、男女の仲にもあるタチバナに研究費を援助しBMSで一山狙ふ、多分ヘルスケア系の社長。消去法で小島邦彦は、実トピの編集者・ミサキ。今泉浩一がヒロミとセフレ程度の関係にもある、駆け出しのカメラマン・ケンちやん。小泉あかねはケンちやんを伴ひヒロミが取材する、ホテトル「銀河」の嬢・カオル、本間優作が店長。杉浦峰夫(a.k.a.紀野真人)は教師であつたヒロミの実質的な退職事由を担ふ、兼元同僚の不倫相手・カワシマ。中村京子が―仮称坂田家同様―レスの筈であるにも関らず、気がつくと妊娠してゐたカワシマ夫人。尺の経過につれ、この辺りの用兵が全く読めなくなつて来た岩渕リコ(a.k.a.いわぶちりこ/a.k.a.五代響子)と征木愛造(a.k.a.梶野考)は、ヒロミと地下街にて交錯する高校生カップル。制服を着させてしまへばこつちのもんだ、なかなか堂々としたキャスティングではある。岩渕リコの、アテレコのみでクレジットしたのかとさへ思はせかけた伊藤清美は、最後に飛び込んで来る電車で雑誌を読むフェミニンな女。
 僅か一週間の間隙を突き、矢継ぎ早にエク動が未配信作を新着させて来た佐藤寿保1992年第一作。どうやらエク動がライオンファイアした模様、とかく碌な報せのない憂世の最中、大いに背中を押される吉兆ではないか。
 タチバナがBMSをヒロミに説明して曰く、「貴女に試して貰つた機械ね、サブリミナルに直接メッセージを与へるシステムなの」。“貴女に試して貰つた機械ね”なる画期的な切り口も奮つてゐるが、まあそれにつけても、さういふ胡散臭いかキナ臭いガジェットで坂田社長が自己啓発系のヒット商品を目論む一方、現に被験通り越してBMSを被弾したヒロミは、当て身を扱ふ正体不明の戦闘力をも身に付けた上、俄かに凶暴化する。別に、夢野史郎(a.k.a.大木寛/a.k.a.別所透)なり渡剛敏の脚本作といはれても真に受けてしまひさうな頓痴気機軸から、社長やタチバナの思惑を超えるといふか蹴散らして、ヒロミが文字通り暴走する形で案外判り易い展開に着地してみせるのは何気な離れ業。城島面―健司の方―は兎も角超絶のプロポーションを誇り、そんなタマにも見えない割に劣等感を闇雲に拗らせるヒロミが、二番手を皮切りに変態折檻を女々に捩り込むのと、苛烈なまでのバイブ自慰で裸映画的にも十分に充実。戯れに剃つてみるヒロミこと憂花かすみの豊かな横乳も素晴らしいが、BMSに拘束され痙攣するタチバナの、プルップル震へる水鳥川彩の美乳がエターナルにエクストリーム。最終的に目出度く二兎を仕留め得たのか否かには、評価の分れを留保しなくもないにせよ、自身の作家もしくは趣味性と商業的要請の両立を果敢に図つた、意欲作である点に関しては論を俟つまい。BMSで脳を揉まれた女がリミッターをトッ外して暴れ倒す一方、男は白痴化する対照ないし生物的性差はどうなのよ。といふ他愛ないツッコミ処も禁じ難いものの、逆に制限解除された男が女を犯した挙句虐殺して回る映画になつてしまふと、勃つ勃たない、より直截には勃たせる勃たせないを半ば等閑視した、渡剛敏と組んだ場合の平常運行にしかならないやうな気もする。


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 「はめ堕ち淫行 猥褻なきづな」(2020/制作:VOID FILMS/提供:オーピー映画/脚本・監督:山内大輔/撮影監督:田宮健彦/録音:大塚学・柳田耕佑/編集:山内大輔/音楽・効果:project T&K・AKASAKA音効/助監督:江尻大/制作進行:泉知良/撮影助手:末吉真/特殊メイク:李華曦/特殊造形監修:土肥良成/森羅万象スタイリスト:大石幸平/ポスター:本田あきら/エキストラ協力:長谷川千紗・河合夕菜・有志エキストラの皆さん/撮影協力:喫茶 マリエール・ステージドア/仕上げ:東映ラボ・テック《株》/出演:佐倉絆・桜木優希音・並木塔子・森羅万象・石川雄也・可児正光・安藤ヒロキオ・須藤未悠・泉正太郎・井尻鯛)。
 タイトル開巻、騎乗位で乱れる佐倉絆、ではなく。下になつた森羅万象の頭頂部を真上が真横になる画角から抜いた画に、エンドとは可児正光と安藤ヒロキオの順番が入れ替る俳優部と、山内大輔だけを抜粋したクレジット。ex.OLの泡姫・ミユキ(佐倉)が想起する、プロのヒモを自認する三沢(森羅)との出会ひ。目下専ら御馴染の喫茶「マリエール」(新宿区歌舞伎町二丁目)、ミユキは三年付き合つた五歳年下の彼氏・サトシ(可児)から、悠香(須藤)に心を移したゆゑの別れを告げられる。本職は写真部の須藤未悠が山内大輔2017年第三作、にして復活後の大蔵怪談映画第六作「女いうれい 美乳の怨み」(主演:佐倉絆)と、小関裕次郎デビュー作「ツンデレ娘 奥手な初体験」(2019/脚本:井上淳一/主演:あべみかこ)に続いて地道に三戦目。泉正太郎が一人で店を回すマスターで、背中につきバストならぬバックショットしか見せないその他客は有志か。半ば呆れ果てたミユキはサトシの他愛ない抗弁には耳を貸さず、カウンター席で元人妻のこちらも泡姫・灯里(並木)が何気に自ら秘裂に指を這はせ、そんな灯里の口内を三沢がスプーンで掻き回す、カップル喫茶ばりの豪快な痴態に目を奪はれる。脱ぎこそしないものの、何気にマリエールでの史上初絡み。サトシと悠香が辞したのち、一応泣いてはみるミユキに声をかけた三沢が金はおろか家もなく、そのまゝといふか何が何だかな勢ひで、ミユキの家に転がり込む。さういふファンタジーにせよ途方もない大飛躍をも、カット跨ぎの濡れ場で何が何でも兎に角遮二無二固定してのけるのは、ピンク映画ならでは、あるいはピンク映画にのみ許された横紙破りの力技。
 しがない勤め人の稼ぎでは三沢を食はせられず、ミユキは三沢の知人が店長を務める泡風呂に転職。配役残り、井尻鯛(a.k.a.EJD)が件の「新世界」店長。ミユキは新世界で先輩として灯里と再会し、ソープテクニックを伝授されがてら、話は灯里の来し方に。石川雄也が、無職かつDVのコンボを決める灯里元夫。元と夫の間に、クソが抜けてるぞ。河合夕菜は灯里が働いてゐたスナック「スミレ」のカウンターを任せられるホステスで、過剰に化粧の濃い長谷川千紗が矢張りママ。奥のボックス席に見切れるのも、マリエ同様有志か。三沢は左目が潰れるほどex.ダーリンを半殺しにし、灯里と離婚させる。安藤ヒロキオは、ミユキに文字通り感涙する新世界のピュア客・鈴木。そして、イズショーは店を空けるマリエールにて、店を任された三沢と出会ふ桜木優希音が、当時女子大生アルバイトの愛未、専攻は社会福祉学。愛未も愛未で、その後三沢の知人が店長を務めるデリヘルに。純然たる余談ではあれ我慢出来ずに噛みつくが、可愛らしい名前でも思ひついたつもりか“愛未”ぢやことの、全体親は何をトチ狂ふてをるのか。元来日本語に於いて愛だなどと頭に性をつけた性愛と限りなく同義の、どちらかといはずとも粘度の高い美しくも清らかでも全くない寧ろ正反対の言葉で、あまつさへ“愛”に重ねて“未”。情欲にすら至らないと来た日には、斯くも自堕落極まりない名を与へるから、娘が恐らく大志を懐いて学問をしてゐる筈であるにも関らず、禿て肥えた中年男にコロッとチョロ負かされた挙句、春を鬻ぐ破目になつてしまふのだ。なんて、時には保守じみた戯言も捏ねてみたり。
 三月初旬に封切られた山内大輔2020年第一作は、一年前より2020年三月末での引退を表明してゐた佐倉絆のラスト・ピンク。2021年第一作「淫靡な女たち イキたいとこでイク!」での、カメオぶりは果たして如何なるものなのか。
 公開題にまで佐倉絆の“きづな”を無理から気味に盛り込む割に、序盤から先行し中盤を任せられる三番手と、終盤まで結構温存する二番手にも十分に尺を割く。涼川絢音に対するやうに僅か一言の別れを述べるでなく、朝倉ことみ引退記念作品と初めから堂々と銘打つた、実は佐倉絆の初陣でもある「ぐしよ濡れ女神は今日もイク!」(2017)で花道映画を完成させた印象の今なほ強い山内大輔にしては、思ひのほかアッサリしてゐるどころか、最後を匂はせる何某かが案外皆無であつたりもする。一方、フィルムと比べての遜色を相当感じさせない、オープン撮影の綺麗さ―所々、不用意な屋内は相変らず暗い―は光りつつ、要は単なる体のいゝ女衒譚に過ぎない、物語自体は実のない屁の如き代物。かといつて、糞を放(ひ)れといつてゐる訳ではない、断じて。木に竹を接ぐ徒なバッド・テイストも、オーピーは山内大輔の持病を後生大事に放置してゐる場合でもなからう。下手な鉄砲を、滅多矢鱈に撃ち倒せる時代なんてとうの昔に終つてゐる、その認識がこの期に大蔵にはないのか。裸映画的には一見水準的に見せ、直截にいふと山内大輔が水準に納まつて貰つてゐては困る。何時以来か忘れるほど久々裸映画を振り抜いた、エクストリームにどエロい前々作「若妻トライアングル ぎゆつとしめる」(2019/主演:きみと歩実)を想起するに、山内大輔はまだ前に押し込めるギアを一つ二つ残してゐる。四の五のいふな役立たず、何でか知らんけどオッサンが三百花繚乱の女優部三本柱からモテまくり、ヤリ倒す。その、よしんば怠惰であつたとて甘美な夢に、何故貴様は大人しく微睡まぬ。さういふお怒りも飛んで来さうだが、その手の底を抜くか人肌なエモーションを志向するには、少なくとも今回の山内大輔は些か硬く、冷たい。絶妙に劇中虚実を濁す、ラストも悪癖の一言で片付るとそれなりに纏まつてゐるやうにも思へ、最終的に何を最もやりたかつたのかよく判らない、物足りないか漫然とした一作ではある。


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 「いんらん巨乳母娘」(1993/製作・配給:新東宝映画/監督:深町章/脚本:周知安/企画:田中岩男/撮影:稲吉雅志/照明:伊和手健/編集:酒井正次/助監督:原田兼一郎/監督助手:榎本敏郎/撮影助手:片山浩/スチール:津田一郎/録音:銀座サウンド/現像:東映化学/出演:しのざきさとみ・杉原みさお・凪?瑞?希・荒木太郎・山本竜二・池島ゆたか)。フォントが潰れ、三番手の頭二文字が判読不能。
 津田スタ外景にタイトル開巻、起床した杉原みさおの何気にウノローグ―宇能鴻一郎調モノローグ―が「私野沢悦子、短大に通ふ女子大生なんです」。短大に通つてゐるのを女子大生と呼んでいゝものか、早速疑問が脊髄で折り返しつつ、大手の就職内定も貰つた悦子(杉原)は“私のこの巨乳のやうに”、“夢もはち切れんばかりなんです”とこの世の春を謳歌する。ある意味、杉原みさおにして初めて形にし得る豪語ではある、臆面もなく。一方狭いダイニングキッチンでは悦子の母で、今にもエアロビでも踊りだしさうなラスタな色合ひの明子(しのざき)が、朝つぱらから競艇新聞に首つたけ。未婚で悦子を産んだ明子はかつては水商売、目下は博才で一人娘を育て上げ、てゐたものの。昨今は負けが込み、借金も重ねてゐる模様だつた。暗転した先は東京の繁華街、悦子と連れ立つ彼氏の轟渉(荒木)は、小説家を志望し大学を中退したフリーター。いや、あるいはだから、別に中退する必要ないから。それは兎も角、サイズからおかしな、丹前みたいに見えるへべれけなジャンパー―但し値段的には高さう、無駄に―の下に黒T。中途半端な太さの白い綿パンに挙句止めを刺すが如く、頭にはモルタルボードみの軽くあるベレーを載せた荒木太郎の壮絶なファッションの破壊力が凄まじすぎて、もう映画の中身なんててんで頭に入つて来ない。ピンクにつき衣装などといふ高邁な概念は―制服なりコスプレを除けば―基本的に存在せず、俳優部の私服である筈ならば、果たしてこの時、荒木太郎は何を血迷ふて斯くも素頓狂な扮装をしてみようと思つたのか。
 配役残り、ホテル代をケチッた悦子が轟を野沢家に連れ込んでゐたところ、明子が連れ込む山本竜二は、案の定負けた明子が競艇場にて五万を借り、た形に身を任せる男。「今日はツイてなかつた」と別に反省はしてゐない明子に対し、「穴狙ひすぎてんだよ」と観音様を指差した上で、自身のヤマリュー!を誇示し「俺みたいに硬く行かなきやよ」。山竜が、もしくは山竜の癖に手堅い文句を吐くと、何か余計鮮烈に聞こえる。池島ゆたかは遂に津田スタまで乗り込んで来る、明子に家を担保に金を貸してゐる本格的な借金取り・佐伯、と来ると下の名前は恭司にさうゐない。名義が判然としないではその他活動の形跡も追ひやうがない、謎の三番手に関しては後述する。
 自社物件なのに何をトチ狂つたか、新東宝ビデオのVHSジャケが星?瑞?希を伊藤舞とか大嘘表記してゐるのに、みすみすex.DMMの出演者タグも釣られる怠惰が情けない深町章1993年第二作。もう少し、ピンクに真面目に接して欲しい。因みに多分瑞希は瑞希で合つてゐるやうな気がする某瑞希と伊藤舞が、似てゐる訳でも全くない。見紛つた訳ですらない伊藤舞の名前は、全体何処から湧いて来たのか。
 ギャンブル狂の母親と、気が気でない娘の他愛なくさへない物語。手放しでスマートな劇中最大の妙手は、事実上野沢家をブン捕つた佐伯は母娘を―元々悦子の居室である―二階の一室に追ひやり、津田スタで囲はうと連れて来た愛人・ナツミが、後述するとしたナゾミズキ(推定)。尺の折返しも優に跨いだ、遅きに失する危機もぼちぼち覚えかねないタイミングでの、三番手を清々しいほどの円滑さで話の流れに取り込む、何気に練り込まれた論理性には深く感心させられた。反面、残念ながらその辺りが関の山。負ければ悦子ともども佐伯の愛人となる条件で、家を取り返すべく明子が挑んだ最期もとい“最後の博打”が、佐伯と明子の差し馬で行ふ麻雀の半荘勝負。母が卓を囲む姿を見て何時しか覚えた悦子は兎も角、ナツミは麻雀が出来ない中、劇画原作募集に応募しようと麻雀の勉強を始めてゐた、轟がのこのこ現れる、明子から出禁を喰らつてゐるのに。文字通り面子が揃つた瞬間の、王道展開ぶりは確かに煌めいてゐた、のだけれど。結局―のうのうとバレてのけるが―轟の起死回生、といふか要は紛れ中りの国士無双を佐伯がうつかり被弾。漁夫の利で明子が勝利を収める史上空前に自堕落なハッピー・エンドには、開いた口が塞がらないのも通り越し、欠伸はおろか溜息も出ない。随分昔から一貫して太つてゐる池島ゆたかは仕方ないにせよ、何故か杉原みさおと山本竜二までもが、常日頃より明らかにダッブダブ。乳が太ければ腹も少々太いとて構はない、とする倒錯した美意識に、当サイトは断じて与すものか。詰まるところはそんな二人が象徴的な、締まりを欠いた一作である。

 神の宿らない細部を思ひだした、純然たる些末ぢやねえか。元々賭け事は嫌ひな轟が、悦子に麻雀指南を乞はうとして「ホテル行つて教へて呉れないかなあ」。力任せに底を引つこ抜く没論理が、濡れ場の導入といふ一種宿命的な要請に粛々と奉仕する、寧ろ清らかな名ならぬ迷台詞には声が出た。


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 「ためいき」(昭和48/製作:日活株式会社/監督:曾根中生/脚本:田中陽造/原作:宇能鴻一郎《『週刊新潮』連載》/プロデューサー:結城良煕/撮影:森勝/美術:徳田博/録音:紅谷愃一/照明:土田守保/編集:辻井正則/音楽:森田公一/助監督:浅田真男/色彩計測:水野尾信正/現像:東洋現像所/製作担当者:天野勝正/出演:立野弓子《新スター》・山科ゆり・中島葵・桑山正一・沢田情児・佐藤輝昭・風間杜夫・浜口竜哉・衣笠真寿男・野村隆・玉井謙介・白井鋭・露木護・小見山玉樹・佐藤了一・池田誉・坂卷祥子・大谷木洋子)。出演者中、立野弓子の括弧新スター特記が、ポスターではシンプルに新人。同じく衣笠真寿男から玉井謙介までと、露木護以降は本篇クレジットのみ。クレジットがスッ飛ばす配給に関しては、事実上“提供:Xces Film”。
 仰角で抜く電車痴漢、「硬い体と硬い体に挟まれて、ちやうど私がクッションの役割を果たしてしまふ」。「その所為か、わざと体を押しつけて来る男性もゐるんです」と、何気に一人称から踏み込みの甘いウノローグ起動。桑山正一に痴漢された庶務課勤務のOL・立野弓子(ハーセルフ)が、表情を崩してタイトル・イン。タイトルバックは通勤の雑踏、課長(白井)から舐める、庶務課オフィスが結構広い。十二時になり、弓子はパイセンのヤス子(中島)と後輩の純子(山科)の三人で社食に。係長の鈴木(佐藤)がアメリカから持ち込んだ、洋モノのエロ写真に主にヤス子と、純子が喰ひつく。
 辿り着ける限りの、配役残り。登場、あるいは見切れ順だとガチャガチャ煩雑になるためビリング順に浜口竜哉・玉井謙介・佐藤了一に大谷木洋子は、庶務課要員。呼称もされないが、ハマタツには森下といふ固有名詞が与へられる。沢田情児は、弓子から誘はれても昼休みバレーボールの輪に加はらない、変り者扱ひの中村、所属部署は会計。そして弓子が社内で驚きの再会を果たす桑山正一が、東洋銀行から送り込まれた新常務の北川、露木護は北川のお付き。何か、待つてましたといはんばかりの前のめりな勢ひでフレーム・インする、全宇宙大好きロマポのスーパーアイドル・小見山玉樹は、弓子・純子・ヤス子が三人で昼食を摂るレストランのウェイター。惚れ惚れするほど完璧なコミタマの一撃離脱ぶりが、今作の頂点。それで、十分。落ち着いて坂卷祥子も、露木護と同じく常務室。役柄的には別にも何も全く必要ないゆゑ、恐らく私的な偶さかで左腕がギブスの風間杜夫は、パー券を持て余した純子に乞はれ足を運んだ弓子を、城南大学軽音楽部ダンスクラブ主催の、ダンパでナンパする近藤。
 宇能鴻一郎が『週刊新潮』での連載を始めたのが同年につき、約四年半先行する日映版「ためいき」(昭和44/監督:林新一郎/脚本:高橋洸一/主演:一星ケミ)は、純然たる同名異作となる曾根中生昭和48年第六作。“続”と銘打たれてはゐながら、続きといふよりは最早パラレルな物語ぽい、曾根中生二作後の昭和49年第二作「続ためいき」(脚本:田中陽造/原作:宇能鴻一郎/主演:梢ひとみ)も、ex.DMMに入つてゐるので忘れなければそのうち見てみる。ところでウノコー先生の『ためいき』が、“あたし”の境遇がOLから人妻、そしてバツイチとある意味ゴキゲンに変遷する、『わなゝき』・『すゝりなき』と連なる足かけ四年のき終り三部作。そのうち、西村昭五郎の昭和50年第四作で「わなゝき」(脚本:佐治乾/主演:谷口香織/未配信)までは映画化されてゐる。
 当時既に且つ大いに名を馳せてゐた宇能鴻一郎の官能小説の、初映画化に際して日活からスカウトされた立野弓子―それまでの稼業はデルモ―が、仰々しくオッ広げてのけた“新スター”の大風呂敷が伊達でなく、今なら、もとい。2021年の現在に於いても、何とか坂の真ん中辺りにゐて全然おかしくもなささうな、結構な大美人にして決してお胸の主張が姦しくはないものの、伸びやかな手足としなやかな柳腰・オブ・柳腰。まるでお人形さんのやうな、スタイルも抜群。加へてあるいは演技指導の成果にせよ、口跡、表情、物腰、所作の逐一が手堅く、幾分長め八十分の量産型娯楽映画を、堂々と支へ抜いてのける。ラストの和服、といふよりも、アップにした髪型がアップにした髪型も似合つてゐるとは、正直あまり思へなかつたけれど。超絶美麗の主演女優を愛でてゐるだけで、統一的な物語の稀薄な漫然とした展開も、ボトムスの上から扱くが如く、よくいへば上品か、お高くとまつた裸映画をも厭きもせず最後まで心豊かに見通させる。絶妙なアクセントで猛然と飛び込んで来ては、後も濁さず潔く駆け抜けて行く。小見山玉樹こゝにありを叩き込む、らしい至極の至芸も当然忘れてはならない。といふか、だからそこが一番の見所なんだつてば。反面、「人権なんてものは侵害されるためにあるんだ!」とか途方もない与太を堂々と広言してのける、セクハラ常務から弓子が花壷排尿や菊座で生卵を食ふやう強ひられる件は、幾ら何でもな昭和の酷さが流石に看過し難く、令和の世で呑気に鼻の下を伸ばすには些かならずハードルが高い、保守なのに。土台が外部から、何しに来たんだこの御仁。普通に考へれば尾を引かない訳がない大概重大なシークエンスをも、ザックザク次に繋いで水に流して行く、実は力技のドラマツルギーはさて措き。直截なところ、世間様がソネチューソネチュー持て囃すところの所以がこの期にまるで腑に落ちない節穴ではあれ、要は尺八を吹く口元をノー修正で見せる奇策としての卵尺から、北川に8mmを回され驚いた弓子が、思はず卵をガブリと齧るや桑山正一が苦痛に顔をしかめる、カットの鮮烈さにはハッとさせられた。最終的に残されるのは、所詮ロマポは専門外とはいへ、それにしても立野弓子が名前から初見なのは如何なものかと軽くググッてみたところ、翌年には折角抜擢した日活に盃返してテレビに軸足を移し、更にその三年後には目出度く寿引退してしまつた、清々しい未完の大器感。


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