真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「実録エロ事師たち 巡業花電車」(昭和49/製作:日活株式会社/監督:林功/脚本:田中陽造/原作:吉村平吉『実録エロ事師たち』立風書房刊/プロデューサー:岡田裕/撮影:安藤庄平/美術:柳生一夫/録音:古山恒夫/照明:田島武司/編集:山田真司/音楽:月見里太一/助監督:山口友三/色彩計測:田中正博/現像:東洋現像所/製作担当者:古川石也/出演:星まり子・二條朱実・殿山泰司・武智豊子・牧れい子・榎木兵衛・三川裕之・雪丘恵介・浜口竜哉・五條博・森みどり・玉井謙介・影山英俊・北上忠行・桂小かん・水木京一・小見山玉樹・池田誉・しまさより・大谷木洋子・近江大介)。出演者中三川裕之から浜口竜哉、森みどりと玉井謙介、桂小かん以降は本篇クレジットのみ。クレジットはスッ飛ばす配給に関しては、事実上“提供:Xces Film”。
 東京地方検察庁、お勤めを終へるエロ事師の殿村銀次郎(殿山)が最後の段取りで、出納係の愛子(星)に売防法違反の追徴金三万円を支払ふ。いい女だと殿村が新聞紙越しに色目を呉れる愛子が、殿村の名を呼んだカットを止めてタイトル・イン。浅草の町を通過して殿村が向かつた先は、料亭「蔦の家」。三川裕之や玉井謙介ら、昭和の顔をしたオッサンが詰めかけた一室にて、五郎(北上)をマネージャーに和美(牧)と福夫(影山)の白黒ショーがオッ始まる。ところで、抜いた上での台詞まで与へられるにも関らず、清水国雄がまたしてもクレジットレスで客要員に加はる。福夫、あるいは影英がグダグダで無様なショーに、匙を投げた殿村は中座。一旦仔細は豪快にスッ飛ばすとして、興行会社の社長(雪丘)から男女の白黒ならぬ、要は百合を咲かせる白白ショーの一週間地方巡業を持ちかけられた殿村は、“花電車のマユミ”なるどストレートな異名を轟かせるマユミをまづ想起、相方は愛子に目星をつける。
 「蔦の家」をあとにした殿村が一人で水割りを舐める店に、五郎らも臆面もなく現れる。クレジットあり出演者残り、浜口竜哉と小見山玉樹に池田誉は、続けて来店するオカマ三連星。ここでコミタマの隣に、池田誉の代りにサブこと庄司三郎がゐればといふのは、矢張り欲張りか。後述する、兄弟感覚で酷似する榎木兵衛―ヒョーエが兄貴―も出るし。殿村のヤサは、アパートにしては中に入ると戸建にしか見えない「三浦荘」。武智豊子が、かつては吉原の遊郭「角海老楼」にてその名を馳せたレジェンド女郎であつた、戦後の荒稼ぎが脳にキテ以降は殿村が面倒を見る朝顔太夫、殿村の筆を卸したのもこの人。森みどり(a.k.a.小森道子)は住み込みの女中、多分ヨシエ。五條博は、福夫に業を煮やした殿村が訪ねる、女社長に囲はれ引退した名白黒ショー男役、人呼んで歌麿ボーイ。この辺りに雪丘恵介の出番挿んでしまさよりは、殿村が物量作戦で愛子を口説き落とす過程の美容師。そして二條朱実が、日本一と評される卓越した花電車芸を誇るマユミ、何故か各種資料にはジュン子とある。影山英俊ともどもハマリ役ぶりが清々しい榎木兵衛は、殿村率ゐるマユミと愛子の白白ショーに同行する、興行主・柿本。大谷木洋子は、四人での雑魚寝を成立させるべく、柿本に買収される仲居。水木京一と近江大介は、マユミがリンゴ切り―マン力でタコ糸を引き、林檎を切断する花電車芸―を失敗した際の客。桂小金治(二代目)弟子の桂小かんは、愛子がリンゴ切りに成功する際、殿村の背後の座席に座つてゐた男。時代も時代なこの頭数で珍しくロマポの俳優部を完全攻略出来たものの、しまさよりの少し前に登場する、普通に美人の喫茶店ウェイトレスに該当する名前が見当たらない。
 小屋に来れば観るが、殿山泰司を除くと皆勤する―少なくとも―星まり子・二條朱実・五條博・榎木兵衛の配役が全然違ふ点を見るに、二ヶ月半前に封切られた曾根中生昭和49年第一作「実録エロ事師たち」(脚本:下飯坂菊馬/主演:二條朱実)とは精々パラレルな、続篇でも何でもない別の物語と思しき林功昭和49年第二作。世界一周するにも厳しい、八十日間に満たないとなると流石に量産型娯楽映画が二匹目の泥鰌を狙ふにしても些か早過ぎる、全体元々どういふ企画であつたのか。
 映画は殿村が四人で温泉街をドサ回る、湯煙ロードムービーが尺の後ろ三分の一強を占める。頭三分の二弱は、折角シャバに戻つたばかりでホームタウンを離れるのを初め渋つてゐた殿村が、寂しさを紛らはせるべく旅に出る腹を固めるに至る顛末の二部構成。兎にも角にも、正しく狂ひ咲く超絶のロマンティックとラウドなエモーションとを、やさぐれた馬鹿馬鹿しさで慎ましく押し隠した前半のラストが果てしなく素晴らしすぎて、尻すぼむといふほどではないにせよ後半が脱力する、あるいは二條朱実と榎木兵衛は電車に乗り遅れた感は否めない。前半ラストに話を戻すと最初に気づくのが、あれで仁義は弁へた福夫、即ち影山英俊のプチ見せ場といふのも何気にグッと来る。二條朱実同様、中盤真のクライマックスに蚊帳の外とはいへ、憚りながら初見の星まり子―恐らく無印「実録エロ事師たち」がデビュー作―には、昭和は遠くおろか平成も終らうとするこの期に目を見張つた。エッジの効いたいはゆる男顔と文字通りの雌雄を争ふ、たをやかさを感じさせる正調美人かつ、当時「泣くなおつぱいちやん」(作詞:富永一郎/作曲:井上忠夫/a.k.a.井上大輔)なる、案外エクストリーム名曲をもリリースするに足るグラマラス。平凡な人生を諦めるかのやうにくすむ東京地方検察庁出納係と、殿村に口説き落とされ、一皮剝け華やかに開花する裸稼業の女。演技指導の成果か地力のなせる技か、対照的な二つの相を麗しく輝かせ、遂に成功したリンゴ切りに笑顔を弾けさせるラスト・ショットは、失速した終盤を幾分以上に救ふ。とこ、ろで。濡れ場ひとつ満足にこなすでない、殿山泰司を恭しく有難がるのはシネフィルに任せる、そんなに憎まれ口を叩くのが楽しいか。悪し様に罵り倒す、武智豊子との絡みは確かに絶品。反面、最期に投げる「ババア!」のシャウトの、脊髄で折り返したスピード感が泣かせる。


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 「課外授業 暴行」(1989/製作:国映株式会社/配給:新東宝映画/監督:瀬々敬久/脚本:佐々木宏・瀬々敬久/企画:朝倉大介/撮影:斉藤幸一/照明:加藤博美/編集:酒井正次/助監督:小原忠美/不明:山川明人・松本キヨシ・小泉玲・松岡邦彦/録音:銀座サウンド/現像:東映化学/出演:中島小夜子・松永久仁彦・清野歴史・小川真実・島田由香・伊藤清美・佐野和宏・加藤海彦・山本竜二・下元史朗/友情出演:瀧口裕美・隈井士門・伊藤猛・マブゼ・佐々木宏・丸沢直巳・五代響子)。正確なビリングは、山竜と下元史朗の間にカメオ部を挿む。山川明人以下四名の担当を不明としたのは、瀬々から東化まで“スタッフ”の一括りで一遍に打ちやがるため、ひどい。
 「卒業式まで、あと三日だつた」、空港脇、セーラー服でフーセンガムを気怠く膨らませる中島小夜子のモノローグ。カメラが引き、赤い車が中島小夜子を迎へに来る。左端を車が通過する、卒塔婆にしか見えないボラードが林立する船着場にタイトル・イン。三十年の間に失はれたてしまつたにさうゐない、荒涼さが爆裂するロケーションが比類ない。逆に、その間果たして何が生まれたんだらう。
 都立鳳工業高校三年の岡山桃か百、愛称・モモ(中島)が、数学教師の矢沢ヒデトシ(下元)とカーセックロス。ところがそれは性質の悪いハニートラップ―良質のハニトラが如何なるものか知らんけど―で、車の外からポラロイドを向けた引野か曳野?ことジョニー(松永)が、豪快に一千万を要求。清野歴史改めレキシ(ヒムセルフ)が待つ、亡父がジョニーに遺した漁船、その名も「ジョニー丸」で出港、矢沢を撒いた三人は、チャカ持ちの見るからキナ臭い佐野が溺れてゐたのを引き上げる。人民服の朝鮮人・リン(島田)、兄貴分(加藤)にマツ(山本)とジョニーが交錯する一方、意識を回復した台湾人でシャブ中のキム・キンギョ(佐野)は、女の不在に暴れるだけ暴れると嵐のやうに捌けて行く。そんな最中、将来に関するモラトリアムな不安を捏ね繰り回しつつ、カップヌードルを食さうとしてゐたジョニーとレキシは、入管の収容所から脱走して来たジャパゆき・ヤン(小川)と出会ふ。
 配役残り伊藤猛以外のカメオ部は、超絶の映画的虚構で矢沢がクロスする、サラ金強盗要員、瀧口裕美が矢沢と再会を果たすヨシムラマミか。ガチャガチャする中一人も特定能はないが、頭数は一応合ふ。無闇に飛び込んで来る伊藤猛は、モモを奪はれたまゝジョニー・レキシ、そしてキンギョが踏み入れた歓楽街、三人と藪蛇な悶着を起こす通りすがり。伊藤清美は、ヤンを伴つた台湾帰国の手引きを、キンギョが頼る国籍がやゝこしいブローカー、あるいは同業者。合はせられないピント越しの画面奥には、昭和天皇の新聞記事が霞んで見える。
 香ばしい原題が「羽田へ行つてみろ、そこには海賊になつたガキどもが今やと出発を待つてゐる」、国映大戦第十戦は瀬々敬久デビュー作。遠く今は亡き伝説のピンクス・極狂遊民カチカチ山さんの16mm上映会で観た思ひでも、この期に及んでは懐かしいのも通り過ぎた。
 四海幇まで持ち出したワールドワイドな大風呂敷は、太宰で木に竹を接ぐ瀬々自身の青さ以前に、発声がへべれけな若手俳優部の非力に足を引かれる。翌年、佐藤寿保の「半裸本番 女子大生暴行篇」(脚本:夢野史郎)でエターナルに開花する絶対美少女・中島小夜子も、今作時点では未だ甚だ粗削り。高が知れた六十分の尺に、最終的には台湾まで見据ゑ、争奪戦を繰り広げながら羽田と東京を往き来する展開を詰め込むとあつては、本来の主眼である筈の女の裸が、申し訳程度に済まされるのには論を俟つまい。さうはいへ、あるいはそんな中でも。轟くかの如く、佐野が煌めく。サクッとヤサを突き止められた、兄貴とマツに日本はアメ公のオカマだと痛罵するに続き、「も一回原爆でも落として貰つてな、目でも覚ませよ」。悪態つかせた佐野の、疾走感が圧倒的。ゴミ捨て場にて半壊したラジカセで「蘇州夜曲」を鳴らしつつ、拾つたグラサンを戯れにかけてみるショットも超絶カッコいい、トートかTシャツ商品化せんかいな。エンドレスな繰り返しに終始する教師人生を漫然と生きる矢沢に対し、情けなくなると説教を垂れるモモが撃ち抜く、「ちやんと生きてよね」は確かなサムシングを刻み込む。全般的にはある意味素直に纏まりを欠き、裸映画としては落第点にせよ、端々どころでなく方々突き抜けて光る、エッジの効き過ぎた一作。昭和どころかいよいよ平成も終らんとするこのタイミングで、改めて見てみるのも一興。喪失感なり空虚なんて時化たエモーションがテーマたり得ない、豊かな次代が来ればいいのにな、とは思ふものの。政のクソッタレぶりを見やるにつけ、さうなる雰囲気なんて一ッ欠片たりとて見当たらねえ。黙つてないで、また雑言叩いてお呉れよ佐野。


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 「性鬼人間第二号 ~イキナサイ~」(2018/制作:フリーク・アウト/提供:オーピー映画/監督:国沢実/脚本:高橋祐太/撮影:藍河兼一/照明:岩崎智之/助監督:菊嶌稔章・金本慎吾・粟野智之/スチール:本田あきら/編集:酒井編集室/音楽:與語一平/録音・整音:Pink-Noise/特殊造形:はきだめ造形/タイトル:小関裕次郎/仕上げ:東映ラボ・テック/カラリスト:石井良太/協力:Abukawa corporation LLC./出演:南梨央奈・桜木優希音・朝桐光・永川聖一・折笠慎也・片桐俊次・細川佳央・あいだひな・松本格子戸・清水大敬ら計九名・たんぽぽおさむ)。出演者中、あいだひな以下九名は本篇クレジットのみ。それとタイトルの小関裕次郎が、ポスターでは杉田慎二。
 “眠れ 死の申し子たちよ 憎しみの海に”―スペースで改行―と、「エルム街の悪夢3」でも引かれたエドガー・アラン・ポーを恭しく引用する開巻。どうせフラグしか立たないのだから、この手の虚仮威しやめればいいのに。それとも、様式美でも感じない、底の浅い己の不徳を恥ぢ入るべきなのか。
 金髪ウィッグに黒尽くめの扮装で、軽くメーテル入つたゴスロリ・バービー(南梨央奈の二役目)に男が接触。サングラスをずらしバービーが美しい瞳を覗かせると、手始めに南梨央奈のみクレジット。したかと思へばカット跨いで、絡みにガンッガン突入する潔さ。バービーを、介護医療機器メーカー「インダストケア」社の介護企業部部長・増川久(片桐)が責める。バービーの首を絞め、締りに喜悦する増川の視界が歪み、浮かんでは消えるたんぽぽおさむの幻影に増川は戦慄する。片や朝方の場末、特殊捜査機関「奇怪事件捜査研究所」こと略称「奇捜研」の三番手ならぬ三枚目担当・尾澤一平(永川)が、痛飲した末に彼女のゐない身を嘆く埒の明かない千鳥足。そこに何者かに怯えるやうに、トランクス一丁で逃げて来た増川が一平と交錯、挙句どさくした腕の中で悶死する。今時意図的としか思へないプリミティブさで、画面右半分に配された西洋人形の眼が赤く発光、いい感じに古めかしいタイトル・イン。“キャップ”と呼ばれる奇捜研の長に、何時の間にか昇進してゐた森崎真紀(桜木)の走りショットを所々で止めて、残りの役名あり俳優部クレジットが追走。桜木優希音は走る姿が美しくない、といつた評に触れた覚えもあるのだが、切り取り方の勝利か、全然そんなことはないやうに映る。一平と、同じく奇捜研の一員で真紀とは公然と男女の仲にもある本郷達哉(折笠)が待つ増川急死現場に真紀も到着。真紀は増川の勤務先であるインダストケアの社名に、かつて介護ロボットの開発に参加してゐた木島竹次郎博士の名前を想起する。真紀が本郷と向かつたインダストケア社では、取締役の重原俊彦(細川)と企画開発部主任の秋本富士子(朝桐)が、退職者リストに木島が漏れてゐる点に関し社外の人間と白を切る一方、木島邸を訪ねてみた一平は、地に咲く花を平然と踏み潰す、表情を失したヘルパー兼メイドの清野日奈(南)と出会ふ。恐らく脳をいはした木島当人(たんぽぽ)は、自由の利かない体でその癖奇声をあげ暴れ回る、何でまた藪から棒にさういふ造形にしたのか厄介極まりない反面、到底外に出て他人に危害は加へ得ない状態だつた。そんな最中、バービー女王様と豚プレイに興じた重原が雑居ビルの屋上的なロケーションにて、増川同様の変死体となつて発見される。
 配役残り本篇クレジットのみエキストラは、インダストケア社内と富士子逃走時の通行人要員。社内の高橋祐太と往来の松本格子戸は見切つたものの、清水大敬をロストしたのが口惜しい。妙にピンで抜かれる、通行部のトリを飾る普通に可愛い女があいだひな?
 2016年第三作にして、奇捜研、あるいは性鬼人間シリーズ前作「性鬼人間第一号 ~発情回路~」(主演:桜木優希音)、五年ぶりの寺西徹。2017年第二作「ピンク・ゾーン 地球に落ちてきた裸女」(主演:阿部乃みく)、少なめに見て十年ぶりの町田政則。2017年第三作「スペルマーダー 嵐を呼ぶエクスタシー」(主演:佐倉絆)、七年ぶりのGAICHI(ex.幸野賀一)に引き続き、池島ゆたか2006年第五作「ホスト狂ひ 渇かない蜜汁」(脚本:五代暁子/主演:日高ゆりあ)以来、実に十二年ぶりともなるたんぽぽおさむをサルベージした国沢実2018年第二作。前作「SEXアドベンチャー ワンダー・エロス」(主演:並木杏梨)の山科薫については、然程のブランクも空けず他の組で普通に仕事をしてゐるゆゑ無視する。それと実はたんぽぽおさむだけでなく、十二年ぶりが驚く勿れもう一人。何気に岩崎智之も、関根和美2006年第一作「不倫関係 微熱の肌ざはり」(脚本:関根和美・宮崎剛・水上晃太/主演:朝丘まりん)以来のピンク参加。
 満を持すといふよりは、開始四十五分にして漸く無理から捻じ込んだ桜木優希音の濡れ場を方便に、監視下の富士子を外に逃がす。即ちドラマを大きく動かす、肉を斬らせて骨を断つが如き奇策が裸映画的にはなほさら光りつつ、矢張り前作「第一号 ~発情回路~」同様、性鬼人間が又しても在り来りな物語を生煮えさせるものかと思ひきや。良きにつけ悪しきにつけグルッと一周してのけるのが、「第二号 ~イキナサイ~」の妙。パルス銃を外付けパーツで強化したパルス133を真紀が構へるや、日奈が出し抜けにバービー化。本郷もプロップを抜くや、今度はバービーが出し抜けの火に油を注いで藪蛇に全裸。「砕け散れ!」と電・ジ・エンド感覚でバラバラになるプリミティブ特撮から、蝋燭一本倒れただけで忽ち屋敷が燃え落ちる―のを映像にはしないが―までザックザク一気呵成。バービーが増川達を死に至らしめた原理も、そもそも単なるマネキンに過ぎなかつた根本的な謎をも、見事に完放置。「あれは一体何だつたの・・・・!?」とか確信犯的な台詞を桜木優希音に吐かせ、畳みもしない大風呂敷をトッ散らかしたまゝ勢ひで駆け抜けるラストの清々しさは、さながら70年代粗製怪奇映画の趣。そしてタイトル画面と、所々どころでなく全篇隈ない粗雑さを見るに、それは恐らく非力な不作為の所以ではなくして、正方向に結実を果たせてゐるのか否かはさて措き、明確に志向した企図であつたのではなからうか。ただ、だとすると、あるいはだとしても。仮にさういふ嗜好であつたとしても、さうなるとデジタル時代ひとつのベーシックたり得よう、藍河兼一が作る現代的にシャープな画とのミスマッチは否み難く、根本的ないし戦略的な齟齬は際立つ。
 あと一点特筆しておきたい、もしくは通り過ぎること能はざるのは、永川聖一が日奈相手に、巧みな腹話術を披露する件。たとへ陳腐であつたとて惰弱であつたとて、あのよくいへば繊細な、直截には粒の小さなエモーションこそが、それを忘れては遂に終る国沢実の生命線と常々見るものである。

 劇中木島が研究してゐたのが、人工知能“artificial intelligence”ならぬ、人工感情“artificial feeling”。そこ“artificial emotion”でよくね?とも脊髄で折り返して思ひかけたが、もしかすると、いはゆる“AFOK”の“AF”との近似を狙つたのかも。それと発情回路なるガジェットが実は一部品も登場しない第一号に対し、今回は明確に―現物はさて措き―感応回路が登場する。ここで“感応回路”といふのは文脈上当サイトがさう解したといふだけで、「これも人工感情の研究のためだ!」と称し、木島が膳を据ゑた富士子のお乳首をレロレロ舐め始める愉快なシークエンスを窺ふに、感応ではなく、ある意味ダイレクトに“官能回路”であるのやも知れない。介護ロボットに、官能回路が必要であるところの所以は知らん。


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 「熟女のはらわた 真紅の裂け目」(1997/製作:国映株式会社/配給:新東宝映画/脚本・監督:佐野和宏/原題:『ふくろふの夏』/企画:朝倉大介/撮影照明:京王撮影兄弟会/音楽:安田光一/編集:酒井正次/特殊造形:松井裕一・山崎覚之/助監督:梶野考・森元修一/応援:広瀬寛巳/録音:シネ・キャビン/現像:東映化学/協力:中島宋松、福島清和、大迫さん、リスキー・バー、苗田忠彦、本多さおり、バンブー・ハウス/出演:麻生みゅう、佐野和宏、工藤翔子、白都翔一、吉行由実、神戸顕一《特別出演》、小林節彦、板橋元、チン・ピョー、楠本頼子、山岡樹《子役》)。撮影の京王撮影兄弟会は、斉藤幸一の変名。特殊造形チーフが祐一でなく松井裕一なのは、本篇ママ。
 寄るにしても寄り過ぎで何がどうなつてゐるのかよく判らない、手足から舐めた脱獄者の佐野が、眼光をギロリと呉れてタイトル・イン。八ヶ岳の山中を、タケオ(佐野)が囚人服のまゝワッセワッセ逃げる。それを見下ろす梟―の精密な模型―が、全篇を通して執拗も通り越し食傷するほど繰り返し繰り返し、殆どどうかした勢ひの頻度で登場する割に、その視点に如何なる含意があるのかは、節穴の見る限り佐野の口なり筆から確たる言葉で聞かぬことには瞭然としないにさうゐなく、あへて雑な物言ひを吹き散らかすならばいはゆる国映系が否定した、量産型裸映画といふ属性ないし本分に最も重きを置く当サイトの立ち位置としては、さういつた禅問答に何本か毛を生やした程度のモチーフに興味はない。山の中から一転、ネオンが安く光るRISKY BAR。服役中の刑務所から逃亡したタケオについて、弟分(白都)が店を訪ねて来た官憲の対応に追はれ、その声だけ聞こえる店内では、白都翔一の情婦・ユウコ(工藤)が呑気に悠然とグラスを傾ける。タケオを警察に売つたのは妻の頼子で、なほかつ白都翔一は頼子と関係を持ち、元来タケオの店であつたバーのマスターの座にも座つてゐた。タケオが草野球の男(多分チン・ピョー)を半殺しにして衣服を奪ふ一方、東京から援交男(小林)といづみ(麻生)が、あくまでデート限定の名目で八ヶ岳を訪れる。この期に改めて見てみると、デビュー年の麻生みゅう―封切りは「ザ・痴漢教師 制服狩り」(脚本・監督:北沢幸雄/主演:メイファ)の方が一ヶ月半早い―が最終的に首から上はウホッてゐるものの、手足はハッとするほど細い。時の流れは、残酷である。
 俳優部残り、京極夏彦『魍魎の匣』の登場人物に遮られ素性に辿り着けない楠本頼子が、タケオ配偶者の概ねハーセルフ。佐野の映画にカメオで参加する―挙句ただでさへ数少ない絡みをもこなす―縁が謎な神戸顕一は、いづみを連れタケオが侵入した山荘に、現れた正当な管理者。吉行由実が、物件を見に来た有閑マダム。山岡樹は、エピローグに出て来る頼子の息子。問題が、切つてしまつたのか、消去法で板橋元に該当する配役がどうにもかうにも見つからない。
  九戦目にして、国映大戦急展開。これまで素のDMMにも入つてゐなかつた国映作がex.DMMの、しかもバラ売りのみならず月額にもまさかの新規着弾。「バット・オンリー・ラヴ」(2015)で十八年ぶりの監督復帰を果たすまでの、佐野和宏商業第十五作に喜び勇んで喰ひついた。前回の「ペッティング・レズ 性感帯」(1993 秋/監督:サトウトシキ/脚本:小林宏一/主演:ゐろはに京子)に関しては、正味な話素のDMMでバラ買ひした直後に、ex.DMMのピンク映画chに新着してゐて正直微妙な心持ちでもありつつ、まあよしとしよう。キモオタたる者、好きなものに切る身銭惜しむべからず。
 復讐を期し脱獄した男が、偶さか知り合つた援交少女を伴ひ、自らを裏切つた妻の所在地を目指す。結局元ゐた場所に戻つて来たりするのもあり、詰まるところあまり動かないロードムービー。外堀すら満足に埋められない、女主役のいづみが特にも何も輝かず、幾ら佐野だけ見てゐればそれでいいともいへ、逆に佐野のカッコよさくらゐしか見所が見当たらない起伏を欠いた物語は、平板な展開に終始した果て遂に力尽き、失速する感は否めない。これで叙情的にでも纏め上げたつもりなのか、そもそも撃つたの誰ならないづみと母子のミーツに開いた口が塞がらないか腰も砕ける以前に、女の裸をさして満足に拝ませもしない癖に、クレジットを起動させてから優に五分!もちんたらちんたら他愛なく潰す尺が象徴的な、漫然とした冗長な一作。とりわけ、撮影部は孤軍奮闘するギッリギリにソリッドな画の中で、大御大映画に出演する際と全く同様、何時も通りペッラペラにヒャッハーする白都翔一の迸るミスキャストぶりは比類なく、神戸顕一以上だか以下に今作最大の謎。別に、そこ既に二年目の川瀬陽太でよかろ?

 唯一正方向―かどうかも甚だ疑はしいが―に特筆すべきは、無理ッから捻じ込まれる吉行由実の濡れ場。山荘内に通された有閑マダムは、暑いからとか神戸軍団総帥に脱ぐやう促し、自身も「許して下さるはね」だの上品ぶつた台詞を垂れながらザックザク脱ぐ。ぶ、ぶわはははは!よもや佐野が今上御大と寸部違はぬ底抜けシークエンスを撮るとはと、度肝を抜かれると同時に腹を抱へた。


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 「痴漢電車 隣りの太股」(1995『痴漢電車 痴漢のテクニック』の2001年旧作改題版/企画:セメントマッチ/制作:オフィスバロウズ/提供:Xces Film/監督:池島ゆたか/脚本:五代響子/撮影:下元哲/照明:田中二郎/編集:酒井正次/スチール:津田一郎/助監督:高田宝重/監督助手:森山茂雄/撮影助手:鍋島淳裕/撮影助手:市川修/録音:シネキャビン/現像:東映化学/出演:藤原史歩・林由美香・杉原みさお・吉行由美・山ノ手ぐり子・神戸顕一・佐々木共輔・池島ゆたか・平岡きみたけ・佐竹秀雄・寺島京一・柿木貴光・白木努・樹かず)。出演者中、佐竹秀雄から白木努までは本篇クレジットのみ。
 八十年代の残滓を引き摺るサイジングの、ダサいスーツが板につかない樹かずのモノローグで「俺の名前は藤沢和哉、二十三歳になつたばかりのサラリーマンだ」。“大きな声ぢやいへない”、藤沢に最近出来た趣味といふのがズバリ痴漢、清々しすぎて真綿色したシクラメンも枯れる。てな塩梅で、若く予想外にムッチムチの山ノ手ぐり子(=五代響子=五代暁子)に電車痴漢敢行。手マンとワンマンショーを並走、山ノ手ぐり子の尻―パンティ越し―に精を放つ。そこまで好き放題し倒しておいて、満ち足りるでなければ勝ち誇るでもなく、虚しく手を洗ふ化粧室。何故なら痴漢してゐないと不能の藤沢はその理由を、“俺から去つて行つた美保の所為なんだ”と滾らせるか拗らせた繋ぎで電車の画にタイトル・イン。日常的な痴漢行為の元凶を、フラれた元カノに求めると来た日には。釘バットをブン回しながら、雌叫びをあげ浜野佐知が小屋に突入する幻影が浮かぶ。
 何時ものやうにホケーッと電車に揺られる藤沢は、大股開くどころか、乳まで露に佐々木共輔の痴漢に悶え狂ふ藤原史歩(吉行由美のアテレコ)の痴態に目を丸くする。「今度会つたら絶対痴漢してやる」とか藤沢が明後日な決意を固める一方、降車後桃子(藤原)は佐々共から三万円を受け取る。それは会社員の副業の、イメクラのプレイだつた。
 配役残り神戸顕一は、桃子の上司・田中課長。課長風情に斯様な権限があるのか甚だ疑問だが、内定を餌に就活時の桃子を一度だけ抱き、以来入社後も粘着質に付き纏つてゐた。中盤に飛び込み、華麗なヒット・アンド・アウェイで風のやうに去りぬ林由美香が、件の美保。一濡れ場どストレートな絡みを入念に完遂した上で、玉の輿に乗り換へると藤沢にケロッと別れを告げる。恐らく杉原みさおが声をアテてゐる吉行由美は、桃子が見守る中、藤沢に痴漢される女。殆ど声は出さず、下着を絞り込んだ二次的Tバックまでしか見せない。遂に桃子が藤沢の電車痴漢に相対する現場に、池島ゆたかと変な帽子の平岡きみたけが垂涎、完ッ全に発情した杉原みさおが「オリャ!」と乱入する。本クレのみエキストラ部は乗客要員、下手に目立つうじきつよし似は誰なのか。高田宝重と森山茂雄は、もしも仮に万が一見切れてゐたとしても確認出来なかつた。佐々共は、ダブル痴漢時とラスト電車、桃子の客とは別人面でもう二回乗客の頭数―車内の撮影は全てセット―を増やす。正直紛らはしい、悪手に思へる。
 別にex.DMMで見られるものを、前の週に観た新作が滅法面白かつたゆゑ、小屋に出撃することにした池島ゆたか1995年第三作。セクハラ課長に幻滅し、イメクラ稼業でストレス解消と男への復讐を兼ねる女と、現金彼女に絶望し、電車痴漢でストレス解消と女への復讐を兼ねる男、しかも平時はインポ。似た者同士と意気投合した二人は男の回春を図るべく、再度再々度と痴漢電車に乗る。主に藤沢周りの、平成の次代では凡そ通用し得まい行動原理にさへ目を瞑れば、まゝある“起”だけでなく、起承転結の全てに電車痴漢が不可欠な展開は何気に素敵な出来。首から上は飛鳥裕子系の、美人不美人の徳俵間際で攻防戦を繰り広げる馬面とはいへ、ウエストの細さを筆頭に、主演女優も素晴らしく美しい体をしてゐる。樹かずに負けず劣らず、私服のセンスは酷いけれど。寧ろワーキャー持て囃すのは積極的に避くるべき、良質の量産型娯楽映画たる物語本体よりも今回枝葉で目についたのが、全く以て自己中心的かつ、卑小な好色漢をその限りに於いて、それはそれとして綺麗に演じ抜く神戸顕一。桃子がラブホで田中に喰はれる件、徹頭徹尾一方的なセックロスに終始するばかりか、いざ挿入するや三こすり半レベルの鮮やかな高速。にも関らず「私は上手いだらうハハハ」、と勝手か正体不明に自信満々で高笑ふ鬱陶しさ極まりない神顕の姿には、グルッと一周して心洗はれた。山宗・細川佳央・櫻井拓也らの参戦で、現代ピンク男優部の厚みが俄然増したものの、神戸顕一に代るタレントが案外見当たらない。清大だと如何せん些か―でなく―パワフルすぎて、滑稽よりも高圧が先に立つ。


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 「痴漢電車OL篇 車内恋愛」(1994/製作・配給:新東宝映画/監督:深町章/脚本:周知安/企画:中田新太郎/撮影:稲吉雅志/照明:伊和手健/編集:酒井正次/助監督:田尻裕司/監督助手:徳永恵実子/撮影助手:小山田勝治/照明助手:小田求/スチール:津田一郎/録音:銀座サウンド/現像:東映化学/出演:西野奈々美・神戸顕一・杉本まこと・ゐろはに京子・樹かず・川本佳奈・しのざきさとみ・池島ゆたか・本間優作・小松越雄/ナレーション:芳田正浩)。脚本の周知安は、片岡修二の変名。
 第一声が“世の中不況である”、娯楽映画の開巻なのにいきなりあんまりな芳田正浩のナレーション。雑踏の中にさりげなく西野奈々美がフレーム・イン、劇場で観てゐればこれで一目瞭然なのか、PCの液晶画面を通して見る分には軽い『ウォーリーをさがせ!』感覚。高井望(西野)は短大卒業後三菱ならぬ三角証券に就職、憧れの証券レディに。ところが入社と同時にバブル景気が弾け、“将来に不安さへ覚える今日この頃だ”―芳ナレ―とか適当に体裁を整へると電車の汽笛が起動、VHS題の「痴漢電車OL篇 Ⅲ」でタイトル・イン。課長(神戸)に電車痴漢された望は、一旦慰謝料で手を打ちつつ、転職も視野に入れる。そんな望に、AもBもない単数形のヘッドハンター(杉本)氏が接触する。とこ、ろで。神戸課長が部下とは知らず痴漢に及んだ所以が、芳ナレ曰く“不況になると痴漢が増える”、ドラキュラか。“勿論正式なデータがある訳ぢやないが”と言ひ訳した上で、“不況でサラリーマン達のストレスが増えたとすれば何となく肯ける話だ”と豪快に片付けてのける、底の抜け具合が臍で茶を沸かす。いふまでもなく、斯様にへべれけな方便、現代ピンクでは到底通らない。
 配役残り、少しでも厚目に塗るとおかめ顔が際立つゐろはに京子は、高卒の商社オーエル。樹かずは、電車痴漢を通してゐろ京に捕食される、同じ会社の営業部有望株・轟渉。池島ゆたかは、時短で日も高い内に帰宅するサラリーマン。劇中明示はされないが、定石からだと苗字は園山にさうゐなく、下の名前は多分髙志。しのざきさとみがそんな亭主に手を焼き、外で働き始める妻の明子で、何故しのざきさとみよりもビリングが高いのかが解せない川本佳奈は、明子が親密になる同僚・江藤、下の名前はどうせ倫子。残り二人、イメクラの客が本間優作で小松越雄が重役。
 深町章1994年第二作は、jmdbをex.DMMで補完したゐろはに京子第五戦。更なるjmdbの記載漏れがないとすると、ゐろはに京子の戦歴は全七作。残り未見は唯一のエクセス、佐藤寿保の「痴漢と覗き 婦人科病練」(1994/脚本:五代響子/主演:石原ゆり?/2002年に『痴漢と覗き 名器診断』と改題)と、あの―どのだ―関根和美の「《生》女子大生 姉妹交換」(同/脚本:川合健二=関根和美/主演:林由美香)の二本、血を吐くやうに観るなり見たい。
 深町章×ゐろ京の前回痴漢電車「エッチな下半身」―に於いてもゐろ京は樹かずと絡んでゐる―同様のオムニバス、といふか不景気で括るザックリした雰囲気を除けば、三篇が一切全く一欠片たりとてリンクさへしない、よりルーズな一作。尤も、乳に勝るとも劣らない尻のパンチ力も誇る西野奈々美と―首から下に関しては―随一の美しさを誇るゐろはに京子に、造作以上に色気が堪らないしのざきさとみ。オッパイ部を三枚並べた布陣は矢張り強く、裸映画的には下心豊かに見てゐられる。片岡修二らしいアスファルトの匂ひのするオチに着地する望篇と、特に捻りもなく轟が無体に転落するゐろ京篇とを経ての、津田スタを主な舞台に繰り広げられる園山家(推定)篇。いざ勤めに出るや自分よりも帰りの遅く、園山が次第に猜疑を募らせる明子は、エクストラな四番手と百合の花を咲かせてゐた。となると、当サイト的にはここは池島ゆたかではなく、女房をよもや女に寝取られ徒に重厚に苦悩する、栗原良(a.k.a.リョウ・ジョージ川崎・相原涼二)の出番を期待しかけたいところが、まさかの三人での新性活―倫子のセクシャリティはガン無視―に活路を見出す、予想外の無理から大団円には軽く度肝を抜かれた。そこかしこの無造作さが清々しい、良くも悪くも大らかなクラシカルである。

 それはそれ、あるいはそれもそれとして。jmdbの記載にある、岩田治樹が今作のプロデューサーだなんて全体何処から湧いて来た与太なのか。


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 「変態おやぢ ラブ・ミー!イッてんだぁ~」(2018/制作:セメントマッチ/提供:オーピー映画/監督:池島ゆたか/脚本:高橋祐太/撮影監督:海津真也/録音:小林徹哉/編集:山内大輔/音楽:大場一魅/効果・整音:AKASAKA音効/助監督:江尻大/撮影助手:宮原かおり・スリグルン/スチール:津田一郎・山口雅也/仕上げ:東映ラボ・テック《株》/出演:かなで自由・長谷川千紗・松井理子・竹本泰志・細川佳央・なかみつせいじ・牧村耕次・フランキー岡村・八ッ橋さい子/エキストラ協力:周磨要他若干名、高橋祐太)。撮影部サードのスリグルンは、正体不明の変名ではなくモンゴル国籍の実在する人物。
 白ブリーフ一丁のなかみつせいじが、「久し振りにこんな夢を見た」。“天使が舞ひ降りた”とまで惚(ほう)ける天使とは、ムッチムチの肉体を、ニッコニコ捧げて呉れるかなで自由。うん、確かに天使にさうゐない。なかみつせいじが実に三十年ぶり!?のセックロスを満喫する、まるで四十八手の教科書かの如き綺麗な綺麗な絡みが続く至福は、鬼の形相の長谷川千紗に妨げられる。市民講座「非モテ中高年のための 恋愛スパルタ教室」受講中に寝こけてゐた平野康彦(なかみつ)を、講師で恋愛カウンセラーの高沢美千子(長谷川)がヒステリックも通り越し殆どエキセントリックに叱責。素人童貞の自動車整備工場社長・北川吾朗(フランキー)や、真性童貞のまゝ老境に入り、最早“童帝”の風格すら漂はせる林又蔵(牧村)以下受講生一同(エキストラ協力隊)と、平野が「私はダメ人間です」と口を合はせて連呼させられるブルータルな教室に、アシスタントの三条あかね(かなで)が遅刻して現れる。事そこに至る、来し方に関する平野の回想。まづ平野がリストラされ、暗転タイトル・イン、これぞ正しくな暗転の使用法。
 呆然と分譲マンションに帰宅した、平野は三人暮らし。美容師の息子・雅志(細川)と、息子嫁の理恵(松井)、元介護職。一欠片たりとて登場しない妻とは、平野は雅志の出生直後離婚してゐる。失業した旨言ひ出せず、普通に出勤する体で日がな一日潰す日々を送る平野は、チラシを拾つたセミナーの門を戯れに叩く。美千子からクッソミソに全否定されるばかりの内容に、北川が憤慨する屋上喫煙場。矢鱈とペダンティックな清掃員の林と美千子に続き、初日から時間を間違へたあかねが漸く辿り着いて、役者が揃つたといふ次第。
 配役残り、一貫して悪い役の竹本泰志は、美千子の夫・務。一応バーの経営者とはいへ、目下飲んだくれる事実上ヒモ、しかも暴力を振るふ正真正銘のロクデナシ。八ッ橋さい子は、雅志が嫁と親爺のゐぬ間に自宅に連れ込む、浮気相手でモデルの八代真奈美。下着までしか脱がないが、怒涛の終盤を猛然と起動する修羅場の火蓋を切る、地味な大役を卒なく果たす。基本よく見る面子のエキストラ協力隊中、高橋祐太が赤いTシャツで結構目立つ。それにつけてもこの人中高年といふやうな齢かいなとググッてみたところ、俺の一個上、それは紛ふことなき中高年だ。
 一般―自主―映画第一作「おやぢ男優Z」(2014/脚本:五代暁子/助監督:田中康文/監督助手:小川隆史・菊島稔章/主演:なかみつせいじ・牧村耕次・竹本泰志・坂ノ上朝美/エキストラ:細山智明、他)の、続篇「おやぢ童貞Z」として当初企画されてゐたらしい池島ゆたか2018年第二作。愛するエルビス・プレスリーの、誰でも知つてゐる名曲のタイトルを捩つた公開題を拝命した、池島ゆたかが俄然上機嫌なのは至極当然としても、良きにつけ悪しきにつけデジタル時代の敷居を跨いだ以上、生つてゐる果実は頂戴してターミネーター2のT2ばりに、ODZ2を―公開題とは別に―ガシャーンッと鋼鉄製扉のCGで打つくらゐの外連も見たかつた、明々後日か先一昨日な心は残る。
 スパルタンな女恋愛カウンセラーに、非モテ中高年がケッチョンケチョンに虐殺もとい粉砕される。我が身を省みるのも忘れ愉快痛快に観てゐられる正調ダメ人間系コメディは、やがて各々の人生が大きく揺らぎ、揺らいでなほ、激しく揺らいだからこそなほその先に温かみなり光を求める超本格派の人間ドラマへと大転換。正直何処から褒めたものか窮しつつ、裸映画である以上一層、初陣で主演女優の向かうを張り濡れ場を同じ回数こなす二番手に飛び込んで来る、長谷川千紗が―PG【ピンク大賞】の―新人女優賞当確を確信するレベルで素晴らしい。演出ならぬ艶出部のサポートもあるにせよ、素面女優部にしては堂々としたどころでは片付かぬ豪ッ快な脱ぎつぷりで、素のお芝居で展開の進行役を務めるのはおろか、いざ脱ぐや再加速する大活躍。平野をゴリゴリ捕食する―但し例によつて夢オチ―のと対照的に、配偶者からは恣に虐げられる。度胸と地力で正反対の濡れ場を各々形にしてみせるのも凄いが、それだけに止(とど)まらずクライマックス三連戦の初戦は、エモくてエロいピンク映画の一つの到達点。「私は恋愛カウンセラー、生徒を卒業に導くのが役目です」、この台詞には痺れた。流麗なシークエンスの導入と、美しいファンタジーの両立。今更にもほどがあるが高橋祐太は、この人どうやら一撃必殺を持つてゐるみたい。童貞以外の全てを失つた平野に寄り添ふ、理恵役の松井理子も静かに輝く。矢張りエモくてエロい、棹を勃たせかつ胸にも沁み入る一幕に恵まれる今作は、ビリング上は三番手ながら、構築された緻密の限りを尽くした論理が狂気さへ窺はせる、今世紀最強の痴漢電車「痴漢電車 マン淫夢ごこち」(2016/監督・脚本:城定秀夫)をも超える代表作と、松井理子的にはいへるのでなからうか。反面、かなで自由はお飾りに終始するきらひもなくはないものの、オッパイ大きいだろ!可愛いだろ!だから天使だろ!野暮はいひない、錯乱してやがんのか。
 気を取り直して、男優部では半分オラついたドラ息子に徹するのかと思ひきや、最後に振り絞る重たい情で細川佳央が安定した仕事ぶりのセメント三兄弟―牧村耕次×なかみつせいじ×竹本泰志―を押さへ強く深い印象を刻み込む。細川佳央と山宗に、櫻井拓也。彼等が継戦する限り、一時期顕著であつた若手部のどうしやうもない脆弱性は、枕を高くして解消されよう。相も変らず未熟なポップ感が安くてくどくててんで芸になつてゐない、頭を抱へるフランキー岡村のメソッドや何故そこで劇伴がおチャラけるといつた、瑕疵なり巨大な疑問点もあれ、一見外様とR15+版が跋扈する中、本隊から池島ゆたかが貫禄で敢然と撃ち抜いた威風辺りを払ふマスターピース。オーピーに初めからその気がないとすればそれまでの話だが、濡れ場が質量とも素敵にエグくて、OPP+にしようがない潔さも清々しい。笑つて股間を膨らませ、やがてグッと来る。正味な話、ラストが釈然としない、あの作り方で釈然とする訳がない「ODZ」よりも余程面白いと思ふ。無駄に前に出なければ―ミスを犯すといふ意味で―後ろにも決して退かない、海津真也の堅実な画作りも何気に心地よい。この何気さが、量産型娯楽映画ひとつの肝要。これでまだ城定秀夫と滅法評判のいいナベを残してゐるとなると、もしかして2018年は豊作なのか?


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 「痴漢電車 エッチな下半身」(1993/製作・配給:新東宝映画/監督:深町章/脚本:瀬々敬久/企画:中田新太郎/撮影:稲吉雅志/照明:伊和手健/編集:酒井正次/助監督:田尻裕司/監督助手:榎本敏郎/撮影助手:村川聡/照明助手:広瀬寛巳/スチール:津田一郎/録音:銀座サウンド/現像:東映化学/出演:石川恵美・扇まや・山本竜二・ゐろはに京子・樹かず・西野奈々美・池島ゆたか・久保新二)。
 新東宝・ニュース・ネットワークの略なのか、朝のSNNニュース。キャスターの山又(池島)が女子アナ・真紀(西野)とのコンビで、コカイン所持で逮捕された片山書店前社長・片山夏樹被告人(は一切登場せず)の愛人・板元京子(扇)が、大量のコカインを所持したまゝ逃亡した事件を伝へる。とこ、ろで。ハルキックスがお縄を頂戴しREXが蔵にぶち込まれた、熱い内どころか鉄が未だアッチアチの三ヶ月弱後が今作の封切り、フットワークが軽いにもほどがある。閑話―で済まないが―休題、御馴染津田スタのダイニングキッチンにて、春雄(山本)と妻の石川恵美(役名不明)がそれを見ながら朝食。セックス下手でうだつの上がらない春雄が、徹底的に石川恵美から虚仮にされ倒して、都心を横断する電車のロングにタイトル・イン。決して美人ではないのかも知れないけれど、石川恵美が可愛くて可愛くて仕方がない。ひとつひとつの、何気ない素振りから狂ほしく堪らない、結婚したい。

 黙れ、あるいは消失しろ

 満員電車の車中、春雄は自らグリグリ体を預けて来る、扇まやとコンタクトする。春雄の画面左手、抜かれるやうに見切れてるのは若きひろぽんぢやねえか?
 山竜の目が点になる、豪快なオチから次の話題に入るSNNニュースの、ブラウン管挿んで津田スタDKから一人暮らしの部屋へと移行する、さりげなく超絶スマートな繋ぎで新章突入。配役残り樹かずは、青森から上京した浪人生・武良。ゐろはに京子が、さうとは知らず武良が電車痴漢を通して出会ふ、補導しようとした警官を刺した援交JK・圭。今度は街頭ビジョンを噛ませて、ザクッと最終章。久保新二は、視聴率獲得に形振り構はない、SNN局報道局長の椿。今度は封切り一ヶ月弱後に死去した逸見―政孝―さん改め劇中辺見さんにあやかり、山又に生放送で嘘の癌告白をさせようとする、だからフリーダムにもほどがあるだろ。
 深町章1993年第七作は、ex.DMMのタグづけがjmdbの記載を凌駕する、ゐろはに京子幻の第二作。当人達の記憶含め恐らく何処にも正確な記録の残らない、不毛の荒野を一歩一歩分け入る無為。キナ臭い三面記事なり有名人の生き死にパン食ひ競争感覚で喰ひついた、オムニバス仕立ての一篇。当方、もしくは今回の目的的にはゐろ京の裸が本来の目的であつた、中盤が突発的にエモーション弾ける。いい加減な津軽弁が抜けない朴訥とした武良に、やさぐれた圭が田舎暮らしを勧める件。下り列車は後ろ向きだと排する武良に対し、圭は「ぢやあ東京の人間はどの電車に乗ればいいの?」と飛び込んで来た上で、「ぢやあ私は山手線だな」。ただぐるぐる回つてゐるだけで、絶対真ん中には辿り着けない。すると今度は武良が「歩いて行けばいべさ!」、二人で東京の中心に歩いて行く旨約した流れでの、呆気ない別れが何となく沁みる。春雄が膨らませる皮算用的なイマジンで、石川恵美のエクストリームな痴態をタップリと見せる序盤に、久保チンのアクティビティで加速、滝田洋二郎ばりのスラップスティックに雪崩れ込む終盤。三幕各々の見所に富んだ、決して色物ないしツッコミ映画の範疇に収まらない良質な量産型娯楽映画。唯一難点を論ふならば、最終的にはボーイ・ミーツ・ガールの器としてしか機能してゐない、痴漢電車の一本調子。武良が圭と、電車を降りてしまふ選択に至るのが、その点象徴的ではある。


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 「人情フェロモン もち肌わしづかみ」(2018/制作:Blue Forest Film/提供:オーピー映画/監督:竹洞哲也/脚本:当方ボーカル/撮影監督:創優和/録音:山口勉/編集:三田たけし/音楽:與語一平/整音:吉方淳二/助監督:江尻大/監督助手:村田剛志/撮影助手:比留間遼・赤羽一真/スチール:阿部真也/仕上げ:東映ラボ・テック/協力:スナックRiz、スナック マ・ヤン、スナック マダムシルク/出演:友田彩也香・加藤ツバキ・工藤翔子・山本宗介・イワヤケンジ・安藤ヒロキオ・ダーリン石川・東中野リズ子・森羅万象)。
 アッサリしたフォントでスタイリッシュなタイトル開巻、日本語を解さない者に見せたなら、凡そ商業ポルノグラフィーとは思はないのではあるまいか。
 JR東中野駅東口を出た主観カメラが、徒歩すぐの飲食店街「東中野ムーンロード」(正式名称:東中野駅前飲食店会/ex.飲食店街住吉小路)入口近くのスナック「マ・ヤン」に。カウンターに東仙(友田)とママの丸高歌子(工藤)が入り、常連客の桜田(森羅)らで賑はふ店内、雑誌の取材が入つた体。加藤義一2017年第二作「愛憎の嵐 引き裂かれた白下着」(しなりお:筆鬼一/主演:佐倉絆)のナレーターを除けば、工藤翔子(歌舞伎町の居酒屋『寺子屋』女将)が案外空いてて同じく加藤義一2015年第二作「巨乳狩人 幻妖の微笑」(脚本:筆鬼一・加藤義一/主演:めぐり)以来。それと、我等が旗艦館前田有楽は画面が暗いのが弱点につき断定はしかねるが、ここで森羅万象の隣に座つてゐるのが竹洞哲也に見えたのは気の所為か。その日の「マ・ヤン」が閉店したのは、完全に日も上つた翌朝。お姉さん的な幼馴染で、亡夫の遺した店を守りつつ、早朝バイトに向かふ長田美鈴(加藤)を見送り、桜田と別れた辿は、同世代の幼馴染、なのに、今は町の地上げの片棒を担ぐ竹原馨(山本)と交錯する。端からオッカナイ剣幕の仙に、煙草のポイ捨てを咎められた薫は、「ゴミ箱だろ、こんな町」。櫛の歯を欠く再開発と桜並木の伐採が、界隈を揺らしてゐた。
 配役残り、イワヤケンジは辿の夫・秀、官能小説家か何か。小林悟未亡人の東中野リズ子は、ムーンロード外堀担当のほぼほぼハーセルフ、友田彩也香とは二度目の共演。安藤ヒロキオは、ナリはラフながら馨らよりも大手の地上げ屋尖兵・轟真澄。台詞の与へられるダーリン石川(新宿ゴールデン街町会長)のほか、「マ・ヤン」客要員がノンクレジットで十人前後投入される。
 秀が脱稿した画面越し、OPP+タイトル「ムーンロードセレナーデ」が本篇ラストの、竹洞哲也2018年第三作。東中野のアクチュアリティーを主軸に据ゑた正攻法の人情劇は、腹が立たない程度には観てゐられる。余計な御託の多さをさて措けば主演女優は濡れ場の手数を自然数最小に稼ぎ、二番手三番手はドラマの下駄を履く。徳俵一杯一杯で、裸映画に辛うじて踏み止まりもする。マダムシルク相手に、桜田がパラノーマルな飛び道具の火蓋を切るカットは、掛け値のない出来映えを撃ち抜く。さうは、いへ。友田彩也香の厚塗りに胸焼けするのはパーソナルな好みの範疇で片付けるとしても、三本柱各々に見せ場を振つたのが却つて禍してか、小さく纏まつた展開は特段面白くも何ともない。今回この期に初めて辿り着いた、竹洞哲也×当方ボーカル=小松公典コンビ最大の諸刃の剣が、名あり登場人物の全てが日常会話に於いて―しかも最終的には同種の―レトリックを駆使する世界に対する違和感。東中野はどんな―人間ばかりが住む―町なんだ、ブランキー・ジェット・シティか。無駄口で薄めるくらゐなら女の裸をもつとひたすらに撮らんかと、大御大には弟子の枕元に立つて欲しい。御当地映画といつたところで所詮買取である以上、映画の出来は最早さて措き、世間一般のやうに旨い汁だけ吸ひ逃げられる訳でもなからう。オーラスで混濁するものの、森羅万象が一旦は撃ち抜くファンタジーで最低限形になつてゐなくもないにせよ、加藤ツバキの前戦「弱腰OL 控へめな腰使ひ」(2016/主演:辰巳ゆい)同様ナッシングレフトな一作。いまおかしんじや城定秀夫のやうに、殆ど変らない―らしい―ストロングスタイルで挑むならばまだしも。全く別物とさへ伝へ聞く、下手にプラス戦線に色目を使つた結果、R18版はピンクス強硬派からそつぽを向かれ、反面R15+版もR15+版で城定秀夫はおろか、横山翔一が商業デビュー作で辿り着いた単騎公開にも手が届かない。要は、ものの見事に二兎を得られないでゐる現状を、全体当人達なりオーピーは如何に見るのか。


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 「ペッティング・レズ 性感帯」(1993 秋/製作:国映株式会社/配給:新東宝映画/監督:サトウトシキ/脚本:小林宏一/プロデューサー:岩田治樹《アウトキャストプロデュース》/企画:朝倉大介/撮影:小西泰正/照明:高田賢/編集:金子尚樹《フィルムクラフト》/音楽:E-tone/美術:タケ/助監督:女池充/監督助手:戸部美奈子/撮影助手:畠山徹/照明助手:藤岡英樹/スチール:おもてとしひこ/タイミング:大津寄宏一/現像:東映化学/録音:銀座サウンド/効果:㈲東京スクリーンサービス/タイトル:道川昭/協力:上野俊哉・西山秀明《スノビッシュプロダクツ》・勝山茂雄・北尾トロ・深谷奈美・上田耕司・タオコミュニケーションズ・中野貴雄・福島佳紀・轟夕起夫・赤間宏・山口真司・ラッシュ/製作協力:アウトキャストプロデュース/出演:ゐろはに京子・林由美香・吉行由美・秋山ひなこ・佐野和宏・紀野真人)。
 “1993 秋 国映株式会社 製作”大書開巻、滅茶苦茶に走り回る8mmモノクロ。芸のない導入で恐縮だが、実際同じやうなアバンを採用してゐるゆゑ仕方がない。全篇を貫きはするゐろはに京子のモノローグで、「子供の頃の夢はひとつだけ、直美と一緒にゐることだつた」。となると長馴染の村瀬友子(ゐろはに)と旧姓不明の直美(林)は、高校三年の時百合の花を咲かせる。蜜月は二年、直美に男が出来る。大学卒業後一年、直美は結婚。式にも出席しなかつた友美の、「以来私達の関係は途絶へた、直美は私の前から姿を消した」なる絶望的な独白に続いて、公開題ママのタイトル・イン。
 戸田物産営業課に勤務する木島郁夫(紀野)に、面識の一切ない友美からしかも職場に電話がかゝつて来る。雲を掴む遣り取りを通して喫茶店「シャルマン」でまんまと待ち合はせた郁夫を、友美はザクザク捕獲。事後シャワーを浴びる郁夫の手帳から、不倫相手の個人情報を抜く。郁夫が、直美の夫だつた。
 配役残り、登場順を時間差で前後して吉行由美が、郁夫の不倫相手・康子、元同僚。佐野和宏は、康子の夫で郁夫の友人でもある藤田武司。藤田家に電話をかけた友美が、康子不在と知るや切るカットから吉行由美と紀野真人の絡みに直結する、ジャンル上鮮やかかつ悪意に満ちた繋ぎと、郁夫が地雷を踏んだことに漸く気づいた、劇中三度目のシャルマン。二度の積み重ねが活きる、伝票クロスは素面で見させる。秋山ひなこは、脱獄後!直美を求め彷徨ふも遂に行き倒れた友美を、拾ふ女、この人もリリィ族。その他大学二年時の直美彼氏に加へ戸田物産×シャルマン要員が、若干名見切れる。
 改めて、あるいは今度こそサトウトシキ。国映大戦第八戦は、目下広く流布する「ナオミ 気持ちよくてとろけさう」―素のDMMにもこのタイトルで入つてゐる―といふのが、何題なのかよく判らないサトウトシキ1993年第二作。因みにオーラスを飾る原題は「ナオミ」で、1998年新題が「ペッティング・レズ 気持ち良くてとろけさう」、単館公開とかされたのかな。PG誌主催のピンク大賞(第六回)的にはベストテン一位と監督賞、林由美香の女優賞に小西泰正の技術賞までは兎も角、ゐろはに京子と吉行由美の新人女優賞には軽く驚いた。ゐろはに京子はさて措き吉行由美(現:由実)は―jmdb漏れの―何かありさうにも思へたが、別館を探してみた限りでは、今作以前の出演作は確かに見つからなかつた。
 あるいは容貌が惹起する、業の深さを睨んだキャスティングなのか、ルックスは前田日明似ながら、適度に肉感的で超絶美麗なプロポーションを誇るゐろはに京子に、公称二十八にしては何故か後年よりも年増に見えつつ、爆乳は矢張り大いに悩ましい吉行由美。豪華四番手も放り込み、数は潤沢に打つのだから、もう少し即物的に寄るなり攻め込むなりしろよといふ不満さへ強ひて押し殺せば、国映作にしては裸映画としてそれなり以上に安定する。所謂、締めの濡れ場といふ奴は存在しないけれど。
 尤も、お話の方はガッチャガチャ。友子が都合二度、正体不明の捜索力を発揮するのはそれをいつては始まらないにせよ、何故藤田が国家権力の管理下を離れてゐるのかを最大の謎に、超飛躍の連続で俳優部の三分の二が鬼籍に入る展開は正直大概大雑把。始終の縦糸を成す、内容が漠然としてゐる以前に、ゐろ京の口跡が挙句どうにもかうにも覚束ないモノローグに劇中世界を紡ぐ統合力は望むべくもなく、端的に捉へ処を欠いた印象は否み難い。そもそも、ポスターから偽つてもゐるものの、少なくとも蓋を開けた実際の本篇は直美といふよりもビリング通り友子の物語。友美は無理筋は無理筋なりに一本調子な一方、都度都度の行動原理から甚だ謎な、詰まるところ友美の動因としてしか機能してゐない直美役の林由美香が、実質的にはヒロインでないにも関らず―主演―女優賞に輝いたのは、由美香ならばほかの映画も幾らもあつただらうと呑み込むか言ひ包められなくもないとはいへ、ベストテン一位と監督賞は如何にもなこの頃の空気が如実に窺へると受け取る、もしくは臍を曲げざるを得ない。小屋で観てゐたら画の力にチョロ負かされてゐた可能性は大いに留保出来るが、この期に配信動画で見る分には、直截に名前で持ち上げられたとでもしか思へない一作である。


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 「レイプ・ショット 百恵の唇」(昭和54/製作:日活株式会社/監督:藤井克彦/脚本:播磨幸治/原作:響京介/プロデューサー:細越省吾/撮影:水野尾信正/照明:矢部一男/録音:福島信雅/美術:林隆/編集:山田真司/助監督:斉藤信幸/色彩計測:森島章雄/現像:東洋現像所/製作担当者:天野勝正/音楽:高田信/挿入曲:『甘いわな』 作詞・作曲・唄 佐藤三樹夫 ビクターレコード『不在証明』より/出演:水島美奈子・飛鳥裕子・山口美也子・宇南山宏・堀田真三・阿部徳昭・高橋明・島和廣・田辺治郎・久米観児・織田俊彦・麿のぼる・松風敏勝・溝口拳・小見山玉樹・佐藤了一・北川レミ・楠本達彦/技斗:大平忠行)。出演者中、織田俊彦から佐藤了一までと楠本達彦は本篇クレジットのみ。クレジットはスッ飛ばす配給に関しては、事実上“提供:Xces Film”。
 「一級品ね彼のお色気」といふ女に、男が「彼つて誰だい?」。返つて来た答へがまさか、でも当時的にはないのか。兎も角返つて来た答へはジュリーで、ドヤ顔で流し目を呉れる全盛期ジュリーが―スチールで―ドガーンと飛び込んで来る開巻に圧倒される。こんな自由で許されるんだ、映画。愛撫の接写を一頻り連ねた上で、今度は男が「あの目あの唇一級品だぜ」。「百恵のことでせう」といふ女に対し、男は「あれは禁断の木の実」。セクシーな唇に、“唇”のみ赤く発色するタイトル・イン。唇からカメラが引くと飛鳥裕子の馬面が現れ、些かならずズッコケる。
 何処そこテレビ局―のちに東京12チャンネル(現:テレビ東京)が実名登場―の第三スタジオから、売り出し中の歌手・三木洋子(水島)が所属する中小芸能事務所「星野プロダクション」社長の星野礼二郎(宇南山)と、マネージャーといふよりはボディガードの田所(堀田)とともに収録を終へ出て来る。三木洋子が小見山玉樹&麿のぼる以下の芸能記者に軽く囲まれる一方、トップ屋の三宅透(阿部)は三木洋子のシャブ中疑惑に関して星野に直撃取材を敢行、田所に殴られる。三宅のハチャメチャな手法を戒める、何気な見せ場の設けられるコミタマで、当サイト的には木戸銭の元は取れる。出入りする、こちらも大絶賛実名登場「ミリオン出版」(昭和51年七月設立)の編集長(織田)が寄こした原稿料が思ひのほか安く、いよいよ一山当てる腹を括つた三宅は、男女の仲にある編集者・早川牧子(飛鳥)に、三木洋子を狙ふ胸の裡を打ち明ける。
 配役残り、三木洋子はやんごとなきフィクサー(不明)に寵愛され、溝口拳と高橋明は配下の実働部隊。この二人がゐて、中平哲仟がゐないのは矢張り寂しい。ほかにこれといつた女の登場人物も見当たらない、北川レミは三木洋子特需で沸く星プロで電話を取る女?男の方は確か松風敏勝。そんな最中の深夜、マンションに帰宅した三木洋子が三人組に拉致される一大事が勃発。田辺治郎は、最初にサインを求める風を装ひ三木洋子に声をかける、今でいふオタ風の好青年・トンボ、ヨーヨーを適当に振るロングがイカす。島和廣と久米観児はその隙に二人で田所を襲撃する、リーダー格の信次と、大体グラサンを外したドラムウルフなゴロウ。追跡するもトンボの駆るジープにまんまと撒かれた三宅は、貼られてあつたステッカーを頼りに横須賀に。「あんたスカぢや見かけない顔ね」、今では成立し得まいハクい台詞をキメる山口美也子は、三宅が超絶の嗅覚で適当に敷居を跨いでみたBAR「PoPoRo」のママ・コロン。佐藤了一はロスト、終盤三宅のヤサを高橋明・溝口拳と急襲、最強の戦闘力を窺はせる岸田森系の男とフィクサーの何れかが、楠本達彦?
 原作の響京介がポスターには“(スポニチ出版刊)”とあるゆゑ、恐らくスポーツニッポン紙に連載されてゐた小説か何かを基にしたと思しき、藤井克彦昭和54年第二作。タイトルに“百恵の唇”とまで冠しておきながら、山内百恵も登場しない及び腰なり、結局は強大かつ無慈悲な力の前に、個人が成す術なく捻り潰される無体な物語はこの際さて措き、出し抜けに弾ける中盤が今作の白眉。凌辱の一夜明け、破かれた衣服を針仕事でいそいそ直すトンボの傍ら、洋子は目覚める。洋子本人が折角籠絡を試みてゐるにも関らず、時間になるや三木洋子が出演する歌番組に熱中する、即ち生身の当人もそつちのけでブラウン管―の中の虚像―に没頭するトンボの造形が超絶。要は“オタク”といふ括りの有無があるのみで、ひとつの偏好もとい偏向した人間像としてはとうの昔に確立されてゐたにさうゐない点に、改めて括目させられる。加へて、あるいは火にガソリンを注いで。「PoPoRo」地下に乗り込んで来ての、殆どレス・ザン・ヒューマニティーな田所のフランケン感炸裂する暴れぶりと、無闇矢鱈にデストロイの限りを尽くした末の、馬鹿みたいに呆気ない死に様が爆発的に面白い。鮮度を失したかに見えた展開が、突発的なり偶さかにせよ熱を帯びる。「お前なんかに洋子ちやんを渡すか!」、果敢に蟷螂の斧を振りかざし、まんまと返り討たれるアイドリアンの姿にも、止め処なく流れよ、ピンクスの涙。尤も田辺治郎と堀田真三に山口美也子が退場してしまふと、如何せん魅力に乏しい男主役を、ポスターの決定力は劇中終ぞ感じさせない水島美奈子もカバーしきれず。溝拳と高橋明に自宅をインベイドされた、飛鳥裕子が如何なる素敵に酷い目に遭ふのかといつた品性下劣な期待は見事にスルーして済ますまゝに、結局終盤は既定の尺も幾分以上だか以下に持て余す。兎にも角にも、昭和54年を現在の視点で無造作に裁断すると、直截に今作の致命傷はグルッと一周しすらしない程度にどうしやうもなくダサい佐藤三樹夫(ex.ルパンⅢ)。もしも仮に万が一そこでノレてゐたなら、全く違つた輝きが見えて来るのかも知れない。


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 「白衣の妹 無防備なお尻」(2018/制作:加藤映像工房/提供:オーピー映画/監督:加藤義一/しなりお:筆鬼一/撮影監督:創優和/編集:有馬潜/録音:小林徹哉/音楽:友愛学園音楽部/助監督:小関裕次郎/監督助手:植田浩行/撮影助手:高橋草太/照明助手:赤羽一真/題字・食事:広瀬寛己/スチール:本田あきら/整音:日活スタジオセンター/仕上げ:東映ラボ・テック/出演:桜木優希音・櫻井拓也・しじみ・松下美織・山本宗介・小林徹哉・小滝正大・広瀬寛巳・鯨屋当兵衛・なかみつせいじ《写真》)。出演者中、なかみつせいじは本篇クレジットのみ。キャスト・スタッフをそれぞれ一緒くた、しかも瞬間的な不親切仕様のクレジットは、サヴァンでもないと読めねえよ。
 川辺をチャリンコが、左から右に走るロング。内科と整形外科を診察する藤村医院、看護師生活をスタートする島崎絵里(桜木)が、イケメン院長の藤村光夫(山本)に御挨拶。今度は右から左に逆走して、多呂プロ感覚の、といふかそのものの子供じみたレタリングによるタイトル・イン。昔から謎だつたヘタクソ経絡図の主が、広瀬寛巳である事実がこの期に判明する。この期にもほどがあるのは兎も角、ところで今作の封切りは、昭和天皇に扮した新作ごと荒木太郎が封殺された事件の四ヶ月後。為にする勘繰りを憚りもなく吹くが、加藤義一なりの、出来る限りのエールであつたのであらうか。
 目下一人住まひの実家に帰宅した絵里が、新生活を報告する亡父の遺影でなかみつせいじが駆け抜け、患者が多くくたびれた藤村の肩を、絵里が揉んであげる一幕。「もつと下を」と乞はれた末にあれよあれよと尺八まで吹かされた挙句、人外に大量な顔射を浴びメガネを汚される。イマジンに絵里が囚はれる、加藤義一が関根和美の向かうを張る微笑ましいプチ見せ場を経て、大体藤村医院と自宅を往復する絵里が帰宅したところ、高校中退後家出、なかみつせいじが死去した際にも帰らなかつた姉の良絵(しじみ)が、不倫男に捨てられたと不意に戻つて来てゐた。
 配役残り松下美織は、藤村と二人分の弁当をチャリンコで買ひに出た絵里と、乗用車で交錯する中学時代の同級生・小笠原亜弓。お嬢様造形、といふか設定である亜弓の綽名はそのまんまお嬢で、夢見がちな絵里がファンタ。終盤桜木優希音の決定力で「悪い!?夢見ることが」なる出し抜けに熱の籠つた台詞も放つものの、妄想癖を夢想に捻じ込むならば別だが、劇中絵里が夢見がちである旨示す描写は特にない。それはさて措き、清々しく御都合、もといタイミングでその場に通りがかる櫻井拓也は、この人も中学の級友・正岡栄太郎。綽名はガリだが当然ガリガリのガリではなく、ガリ勉のガリ。今回井戸田秀行には見えない鯨屋当兵衛は、ギックリ腰の患者・小村。腰部に注射を打たれる小村の傍ら、絵里が「私も先生に注射されたい(*´Д`*)」と心中秘かに身悶えるのは、アッタマ悪いけどその分琴線にフルコンする名カット。量産型娯楽映画といふ奴は、そのくらゐでちやうどよいと当サイトは常々考へる。ダサさなり馬鹿さ加減の内側に、臆することなく飛び込んで来る瑞々しく弾けるポップ・センス。いよいよ以て、加藤義一がかつての輝きを取り戻しに来てゐるのは否み難いのでは。そして、ロマポの座敷童・コミタマこと小見山玉樹と並ぶピンク映画の妖精・広瀬寛巳が、右足を骨折した往診患者・横田、下の名前は彰司?絵を嗜み、モデルに応じる形で桜木優希音が色んなポーズの裸を大量に披露するサービス乃至ボーナスタイムに貢献。小滝正大は、この男もこの男で絵里が帰宅すると家に上がり込んでゐた、良絵の不倫相手で結局離婚した森潤一。何れにしても見切れる程度の役にせよ、名あり配役となるとピンク限定では何と“ジャスティス”四郎の「痴漢暴行バス しごく」(1998/脚本・出演・監督:荒木太郎/主演:河名麻衣)まで遡る―その後2002年に薔薇族の「天使が僕に恋をした」(脚本:後藤大輔/主演:今泉浩一)を挿む―小林徹哉は、栄太郎の旅館を営む父親・龍次。
 国沢組で精力的な大暴れを展開する桜木優希音が、初めて外征した加藤義一2018年第二作。至極当たり前の話でしかないのかも知れないが、監督が変れば印象もガラリと変るもので、ドヤァ!と威圧的な国沢実映画からは一転、フォクシーなおメガネもエクストリームに、晩熟で不器用なある意味恋愛映画の王道ヒロインに大変身。傍若無人な姉―と森―に業を煮やし、一晩転がり込んだ正岡旅館(大絶賛仮称)にて途方もない深酒を浴びてなほ、一升瓶を縫ひ包みのやうに抱へて離さない桜木優希音が、キュートでキュートであまりにキュートで死ぬかと思つた。良絵が最初に形作るひとつも恋が実らない姉と、恋ひとつしたことない妹の魅力的な物語は、公称Gカップのオッパイと―親の―財力とで藤村を籠絡する亜弓に地団太を踏む絵里に、栄太郎は気が気でない四角関係へと華麗にハッテンもとい発展。非現実的に底の抜けたシークエンスでさへ、妖精性を如何なく発揮したひろぽんが撃ち抜く確かなファンタジーで猛も通り越した爆加速。桜木優希音がメガネをかけてゐた方が数段可愛い、一旦平板か怠惰に嵌つたかに見せかけた最大の難点をも力技で挽回してみせる、かつ櫻井拓也でなければ形にし得まい、画期的にダサい告白からカット跨いで絡みに突入する繋ぎが兎にも角にも超絶完璧。麗しく大完遂したのちも尺を惜しまず、美しい劇伴の鳴る中チュッチュチュッチュ接吻を交し続ける二人。これよこれ、これが締めの濡れ場といふ奴だろ。濡れ場にエモーションの頂点を持つて来る、ピンクで映画なピンク映画の最も然るべき姿を、今回加藤義一は見事にものにしてのけた。2019年は九年ぶり三度目の新春痴漢電車も任された、加藤義一の復調傾向依然堅調。“しなりお”だとか肩書を穿つた脚本家がウザいか何か知らんが、冗談ぢやないぜ、全体何時まで名前で映画を観てゐたら気が済むんだ。


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 平成30年映画鑑賞実績:20本 一般映画:2 ピンク:18 再見作:0 杉本ナンバー:4 ミサトナンバー:0 花宴ナンバー:1 水上荘ナンバー:0

 平成29年映画鑑賞実績:138本 一般映画:9 ピンク:122 再見作:7 杉本ナンバー:23 ミサトナンバー:2 花宴ナンバー:5 水上荘ナンバー:8

 再見作に関しては一年毎にリセットしてゐる。そのため、たとへば三年前に観たピンクを旧作改題で新たに観た場合、再見作にはカウントしない。あくまでその一年間の中で、二度以上観た映画の本数、あるいは回数である。二度観た映画が八本で三度観た映画が一本ある場合、その年の再見作は10本となる。それと一々別立てするのも煩はしいので、ロマポも一緒くたにしてある。

 因みに“杉本ナンバー”とは。ピンクの内、杉本まこと(現:なかみつせいじ)出演作の本数である。改めてなかみつせいじの芸名の変遷に関しては。1987年に中満誠治名義でデビュー。1990年に杉本まことに改名。2000年に更に、現在のなかみつせいじに改名してゐる。改名後も、旧芸名をランダムに使用することもある。ピンクの畑にはかういふことを好む(?)傾向がまゝあるので、なかなか一筋縄には行かぬところでもある。
 加へて、戯れにカウントする“ミサトナンバー”とは。いふまでもなく、ピンク映画で御馴染みプールのある白亜の洋館、撮影をミサトスタジオで行つてゐる新旧問はずピンクの本数である。もしもミサトで撮影してゐる一般映画にお目にかゝれば、当然に加算する。
 同様に“花宴ナンバー”は、主に小川(欽也)組や深町(章)組の映画に頻出する、伊豆のペンション「花宴」が、“水上荘ナンバー”は御馴染み「水上荘」が、劇中に登場する映画の本数である。


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 「赤い欲情 はめ上手」(1997 秋/製作:国映株式会社/配給:新東宝映画/監督:上野俊哉/原案・脚本:小林政広/企画:朝倉大介/撮影:小西泰正/照明:渡波洋行/音楽:E tone/編集:金子尚樹《J.S.E.》/録音:シネ・キャビン/助監督:榎本敏郎/監督助手:森元修一・塚本敬・西島裕之/撮影助手:田宮健彦/照明助手:溝渕健二/製作デスク:女池充/応援:岩田治樹・勝山茂雄/タイミング:武原春光/タイトル:道川昭/現像:東映化学/製作協力:モンキータウンプロダクション・アウトキャストプロデュース/協力:佐々木正則、上野秀司、荒川栄二、田尻裕司、村井章人、サトウトシキ、スノビッシュ・プロダクツ/出演:田中要次・赤津真喜子・伊藤猛・福俵満・小林節彦・穂村柳明・河名麻衣)。
 “1997 秋 製作 国映株式会社”大書開巻、秋!?そもそもの画質から粗い以上断定しかねるが、8mm撮影ぽいモノクロで二両電車が田舎駅に到着。駅舎真正面も抜かれる割に、駅名も判読不能。町田康にしては田中要次にしか見えない男が、自販機でボスッたりしながら橋の上に。迎へに来たステーションワゴンから降りて来た男も隈本吉成にしては小林節彦にしか見えず、徐々に嫌な予感が鎌首もたげつつ、兎も角35のモノクロから、画面に色もつく。助手席で田中要次がアメリカ民謡の「峠の我が家」(中山知子訳詞)を口遊み始めた上で、「赤い欲情 はめ上手」そのまゝのタイトル・イン。やられた、素のDMMにも仕出かされた、改めて後述する。
 タイトル明け敢然と走るのは、若い頃の志村な髪型の伊藤猛と、そんな伊藤猛より髪の短い穂村柳明(a.k.a.穂村エリナ)の濡れ場。裸映画の本分は、案外か辛うじて忘れてゐない。到着するなりエッサカホイサカな二人に、河名麻衣が呆れた溜息をつく。小林節彦の運転する車が、そんな山間の別荘に到着。状況を整理すると七年のお勤めを終へ出所した木村(田中)を、映画学院の同級生であつた安斎か安斉か安西辺り(小林)がお出迎へ。安斎の妻・アキコ(河名)と、同じく同級生の清水(伊藤)とこの時点では未だ三度目の妻ではないヒロコ(穂村)が待つ別荘に招く。酒もやめ付き合ひの悪い一夜を過ごした木村は、翌朝安斎と清水に読ませたいものがあると、七年間に書き上げた脚本「夢の後始末」(脚本家名義は木村ノブ)を放つて寄こす。
 配役残り福俵満は、今は洋画配給会社に勤務する安斎が、飯を一緒に食いひに行く―だけの―同僚。ついでに、清水はテレビを主戦場とするシナリオライター。ネタバレしないと外堀を埋められない赤津真喜子は、木村をセイブする水中遊泳好きの女。
 国映大戦第七戦でVHS題?は「赤い欲情 夢の後始末」の、サトウトシキ1997年第一作「赤い犯行 夢の後始末」(脚色:小林政広/主演:町田康)を見ようかとしたところ、出演者で町田康と伊藤美紀のタグづけに監督もサトウトシキとしてあるにも関らず、蓋を開けてみれば出て来たのは十ヶ月後に封切られた上野俊哉による続篇であつたでござるの巻。別に上野俊哉を固め見する気もないんだがこの際、素頓狂な引きの強さでも言祝ぐかいな。
 伝へ聞く「赤い犯行 夢の後始末」の内容を、少なくとも忠実にトレースしてゐるらしき木村ノブ作「夢の後始末」を、頻りに清水がいいホンで海外の映画祭で賞も取れる―けれど売れない―と見てゐてムズ痒くなるほど再三称賛してのけるのは、生温かく見過ごすならばこの際微笑ましい御愛嬌。ありがちな因縁を抱へた三人の男によるドラマは、一旦一人が彼岸に強制退場。再び三人になる魔展開で驚愕のスイングを振りかけるものの、結局は赤津真喜子の登場で底が抜ける。男の愛なんて卒業よと、カッコよく安斎に人生ごと三下り半を叩きつけたアキコが、邪魔な男供を始末したカット跨いでヒロコと大輪の百合の花を咲かせる繋ぎは鮮やかな反面、少し戻つてキナ臭い過去を清算した安斎と清水が、各々のパートナーとオッ始める件。車中の安斎夫妻と無理から並べた、車のドアがあくまで閉まらないやう体を預けたヒロコと清水の立位後背位は、プロの仕事とは思へない不自然極まりない画に匙を投げた苦笑も禁じ得ない。“日本映画なんて全然詰まんないぢやない”、“下らなくて子供つぽくて”と悪し様かつ拙速に全否定して済ます赤津真喜子に対し、木村が“さうぢやない映画”と“昔のフランス映画やアメリカ映画それに日本映画”と無様に擁護―出来てない―する遣り取りも、小林政広は自らの底が浅いか脇の甘い限界を露呈するのがそんなに楽しいかと呆れるほかなく、見るに堪へないほど酷いが、一時間も跨いだタイミングでまさかの新東宝マークを飛び込ませての、劇中映画版「夢の後始末2」を、挙句大した中身でもないのに三分半チンタラ空費するに至つては、直截にナンジャコリャ案件。切つてのけた啖呵も、結果出来上がつた代物も惰弱な、始末に負へない一作。本質的にさういふ物言ひはするべきでないと思つてゐるゆゑ、幾ら筆を滑らせるにせよなッかなか憚るが、今回ばかりは小屋で観てゐなくてよかつた。

 因みに、あるいはおまけに。ex.DMMは山﨑邦紀のところに遠軽太朗第三作が入つてゐたりもするので一応探してみたが、結局、「赤い犯行 夢の後始末」は素のDMMにも入つてゐない。PGの「ピンク四天王 ピンク映画監督作品一覧」頁に貼られてあるリンクを踏んで見られるのは、だからサトウトシキの「赤い犯行 夢の後始末」ではなく、七福神上野俊哉の「赤い欲情 はめ上手」である。・・・・四天王とか七福神とか、何かもう、まあいいや。


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やくざ観音・情女仁義」(昭和48/製作:日活株式会社/監督:神代辰巳/脚本:田中陽造/企画:三浦朗/撮影:安藤庄平/美術:川原資三/録音:高橋三郎/照明:高島利隆/編集:岡安肇/音楽:あがた森魚/助監督:海野義幸/色彩計測:田中正博/現像:東洋現像所/製作担当者:古川石也/出演:岡崎二朗・安田のぞみ《新スター》・絵沢萠子・丘奈保美・坂本長利・松山照夫・高橋明・薊千露・永井鷹男・宝京子・五條博・中平哲仟・田畑善彦・橘田良江・水木京一・溝口拳・吉野あい・北上忠行・氷室政司・小見山玉樹・谷文太・吉田朗人・佐藤了一・庄司三郎・山岡正義・賀川修嗣/刺青:河野光揚/技斗:田畑善彦)。出演者中、宝京子以降は本篇クレジットのみ。クレジットはスッ飛ばす配給に関しては、事実上“提供:Xces Film”。
 見世物小屋の口上と、パーマ頭に鼻髭を蓄へた精悍な顔立ち、JAC(現:JAE)感溢れる旅の僧・雲水嵐雪(松山)が川に釣り糸を垂れる。仏の御心か、雲水が釣り上げたのは臨月の土座衛門(多分宝京子)。念仏を唱へかけ、胎児はまだ生きてゐるのに気づいた雲水は、男児を取り上げる。二十三年後、阿弥陀寺に預けられ成人した清玄(岡崎)の、滝行の画にタイトル・イン。明けて「おおい清玄、女を買ひに行かう」と捧腹絶倒の本篇開巻パンチをカマすのが、我等がコミタマことロマポの座敷童・小見山玉樹、ピンクの妖精が広瀬寛巳。庄司三郎も格子越しに見守る中、観音様と出生を茶化した生臭坊主(小見山)をシメる清玄を、窘める阿弥陀寺の庵主・阿闍梨(賀川)曰くに「クソだよ、仏とはクソだ」。禅問答が、パンクの領域に突入する。引き続き汲み取りに従事する清玄挿み、安田のぞみを乗せた車のハンドルを握る五條博が、「後ろ走つてるのは藤原興業の車ぢやないですか?」。土着の斉田組組長の一人娘・斉田美沙子(安田)が、五條博をお供に母親の三回忌で阿弥陀寺をお参り。そこを斉田組と対立する新興の藤原興業の、桃井か百井(溝口)・風間(不明)・ヒデ(中平)が襲撃。美沙子を拉致しようとする桃井らと、肥桶を担ぐ清玄が鉛と糞の銃撃戦。一旦撒いたところで、お礼にと美沙子が清玄に膳を据ゑる十三分半、遅れ馳せるにもほどがあるクレジットが漸く起動。事後美沙子の父親が、斉田組組長・斉田清明であると聞かされた清玄は絶望する。二十三年前、清明が手をつけた通ひの女中・チヨコ(が土座衛門)を、美沙子の母である本妻(遺影も見切れず)は川に突き落とす。チヨコは死にながらも雲水に取り上げられたのが、清玄即ち美沙子の異母兄であつたのだ。「お仕舞ひだ」、「私の中の仏が死んだ」と捨て鉢になつた清玄は、因縁をつけるべく再び現れた桃井らを手鎌で返り討ち。右手を手首から落とされたヒデが、まんまフック―船長―化して後半再登場するのには驚いた。
 辿り着ける限りの膨大な配役残り、永井鷹男は、斉田組若衆頭の中谷、美沙子とは男女の仲。田畑善彦は、美沙子を訪ねた門前、清玄と悶着になる斉田組の衆。そして坂本長利が、兄妹の父親・斉田清明。清明が美沙子に衝撃の事実をサクッと告げたのち、超絶唐突なものの弾みで右目を失明する件にも度肝を抜かれた。結論を先走ると、抜かれてばかりの映画ではある。気を取り直して絵沢萠子は、彷徨する清玄と懇ろになる、民謡酒場「満月」のホステス・多恵。そして張りのある発声が映える高橋明が、彫師(矢張り不明)の下で菩薩を背負つた清玄とミーツする、藤原興業組長・藤原銀三。丘奈保美は、藤原興業に草鞋を脱いだ格好の清玄が抱く芸者。満月にて、清玄が斉田清明を射殺する一幕。組長の傍らに控へる清水国雄は恐らくクレジットレス、変名臭い謎名義も見当たらない。a.k.a.恵千比絽の薊千露は、美沙子の幽閉先を教へたのに清玄にブチ殺される、斉田邸の現女中・友子。シャワー中に襲はれ一貫して全裸―with前貼り―での出演、これぞ裸一貫、黙れ。ヒデのフックを装ひ、藤原邸も襲撃した清玄に瞬殺されるのは佐藤了一。最後に吉野あいが、助けた瀕死の清玄に凌辱されるおさげ髪の少女。事後水面に散る花弁がありがちな破瓜のメタファーかと思ひきや、大量に数が増えるゆゑ死かもと面喰ふ。見れば判る筈の水木京一を、ロストしたのは重ね重ね残念無念。
 尺が八十四分もある、神代辰巳昭和48年第三作。ポスター全面を飾るのみならず、本来ならば裸映画のビリング頭に意表を突き飛び込んで来る岡崎二朗(東映から日活に移籍するも、ロマポ路線に厭き杯を返す)の、絡みは正直アップアップ。妹と乳繰るため破戒を通り越した破滅僧が最終的には二つの組を壊滅させるに至る破天荒な物語は、どちからかといはずとも裸映画どころかオーバーキル系のアクション映画。確かに所々では絵画的かつ叙情性の爆裂するショットも抜きつつ、絵具みたいに赤い血糊をジャブジャブ使用するインパクト勝負の、支離滅裂スレスレにガッチャガチャな展開でショッキングなシークエンスを連ね倒すに終始する一篇は、頭に三角マークをつければそのまゝ通るやうにしか映らない。寧ろ、コミタマとサブが辛うじて今作を、日活に繋ぐとさへいへるのかも。死体の山を築いてなほ飽き足らないラストも大概なのだが、清玄が美沙子をシャブ漬けにした藤原の首に、ゴロンと断頭するまで連射を撃ち込むのには流石に頭を抱へた。面白い詰まらないでいへば闇雲に面白くはある、本隊ロマポに毒々しく狂ひ咲いた徒花と目して宜しいか。名作と世評は高い昭和52年第一作「悶絶!!どんでん返し」(脚本:熊谷禄朗/主演:谷ナオミ・鶴岡修)と二本きりしか観てゐない上に、悶どんはサッパリ理解出来なかつた与太者につき、神代辰巳を如何に評したものか未だといふかこの期にといふか、兎も角完ッ全に手探り。


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