真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「地下鉄連続レイプ 制服狩り」(昭和62/製作:獅子プロダクション/提供:にっかつ/監督・脚本:片岡修二/プロデューサー:奥村幸士/企画:角田豊・塩浦茂/撮影:志村敏雄/照明:斎藤正明/編集:酒井正次/助監督:佐藤寿保/監督助手:橋口卓明・小原忠美/撮影助手:下元哲・斎藤幸一・片山浩/照明助手:伊藤裕/スチール:石原宏一/車輌:マエダオート/録音:銀座サウンド/現像:IMAGICA/出演:速水舞・島崎梨乃・結城麻美・沢木貴和子・瀬川満里奈・ジミー土田・郷田和彦・渡剛敏・甲斐純一・かしば武司・星ジュン・劇団サブウェイ・下元史朗《友情出演》・橋本杏子《友情出演》・外波山文明・大杉漣)。出演者中ジミー土田から劇団サブウェイまでと、橋本杏子は本篇クレジットのみ。
 女子高生の江藤岬(島崎)が、服を着ながら朝食の支度。開巻から、軽やか且つスマートに裸を見せる技術が光る。支度が済み、起こした二人暮らしの姉で看護婦の倫子(速水)は、その日が妹の誕生日であるのを覚えてゐなかつた。とかいふ次第で姉妹がキャイキャイ喧嘩しつつ出勤・登校、地下鉄視点の画にタイトル・イン。職場恋愛する医師の、下の名前が渉となるとどうせ苗字は轟(かしば)にその日の逢瀬を求めるメモを渡された倫子は、岬も連れて行く。ここで橋本杏子が、轟の顔見せに際し倫子ともう一人の看護婦。倫子と轟の割り勘で岬のプレゼントも買ひ、楽しい一夜を過ごした姉妹は、轟と地下鉄駅入口で別れる。別れたところが、ブルータルな街だな!東京。大絶賛営業運行中地下鉄実車輌の車内、倫子と岬をPUNKな造形の仮称ヒャッハーズ(ジミー土田×郷田和彦×渡剛敏×甲斐純一に、もしかすると星ジュンも男の名前?)が壮絶な連続レイプ。全体どうやつたら、斯くもブルータルな撮影が許されたのか。否、当然許されない上でそれでも敢行出来たのか。ロマポの晩年買取系とはいへ、徒花が狂ひ咲くにもほどがある。兎も角、事件後著しく精神の平定を乱した岬は退行した末に―雑な人形フォールで―飛び降り自殺。胸、もとい腹を固めた倫子は看護婦を辞してタクシー運転手に転職、界隈を流す運転席から、憎き敵のヒャッハーズを捜す。とこ、ろで。探索目的でのタクシー運転手といふと、関根和美が遺したくどいやうだが当サイト選ピンク映画最高傑作「淫行タクシー ひわいな女たち」(2000/脚本:金泥駒=小松公典/主演:佐々木基子・町田政則)に於ける、主人公・土門誠二(町田)と対象が異なるだけで全く同じ行動原理となる訳だが、何某か元祖的な原典でもあるのかな。
 配役残り下元史朗は、最初は強姦事件の捜査で倫子に接触する刑事。外波山文明と沢木貴和子は倫子の車で豪快に致す、キャスティングの決定権を持つ何某かの“先生”と、喰はれる女優部。要は何れも絡み要員の本筋に掠りもしない一幕にしては、車外からもガンッガン抜く大掛かりか藪蛇な意欲を爆裂させる。堂々のトメに座る大杉漣は深手を負つた状態で倫子が拾ふ、対立組織組長の命“タマ”を一度目は取り損ねた旭誠会幹部・野沢俊介。特定不能の結城麻美と瀬川満里奈は、ジミー土田と甲斐純一、郷田和彦・渡剛敏ともう一人に、それぞれ拉致られる女子高生。その他院内要員を中心に、二十人前後の頭数が見切れる。かうして作業をしてゐて気づいたが、劇団サブウェイて。さういふ団体が実際に存在した訳では別になく、劇団レオの類の内外から掻き集めたエキストラ隊を、適当に総称したのであらう。あと大事な些末を忘れてた、タクシーの車中倫子がラジオに耳を傾ける、目的は遂げた野沢がブチ殺されたニュースを伝へる声は、多分ジミ土。ニュースに続けての、杉並区にお住まひの笠井雅裕さんからのリクエストが、「殺したいほどアイ・ラブ・ユー」。ローレンス・カスダン(1990)にせよMAGIC(1993)にせよ、実は何気に先行してゐる。
 前年最終作と、昭和62年第一作。片岡修二的には年を跨いで地下鉄連続レイプが連なつた格好の、「地下鉄連続レイプ」(昭和60/主演:藤村真美)、同「OL狩り」(昭和61/主演:北条沙耶)に続くシリーズ第三作。弾の摘出まで手当てを施した倫子は、野沢に銃の使ひ方を教へて呉れるやう乞ふ。ヤクザがへべれけに暴れ倒す前二作の反省を踏まへてか、今回は復讐に燃える女タクシードライバーがいはゆる鉄砲玉から殺しの技術を教はり、妹を奪ひ自身も汚したケダモノどもを追ふ。如何にもマンダム臭いのは兎も角、ひとまづ物語はしつかりしてゐる。オーラスまで含め、信号が変るやうに女が犯される世界観は矢張りべろんべろんにへべれけで、野沢の得物がわざわざモーゼル銃であつたりする底の抜けた外連は、今となつては微笑ましい。野沢が倫子に説いて曰く、「人を殺すには絶対条件がひとつある」。そのこゝろでどんなソリッド台詞を吐くのだらうと思ひ固唾を呑んでゐると、「殺られる前に殺ることだ」。清々しいほどの意味のなさに「はあ!?」と腰も砕ける他愛なさも、この際硝煙で燻してしまへ。逆に、野沢が倫子を「お前も幸せな女には見えねえ」と評するのは、やさぐれた眼差しが沁みる名台詞。濡れ場の要込みで制服をすつかり狩り終つてスッキリしたヒャッハーズを、倫子が追ひ駆けて来て始末する。スッキリしたヒャッハーズを、倫子が追ひ駆けて来て始末する。シンプル極まりない展開が、綻び、かけるよりも先に尺は尽き、何はともあれ、何はなくとも速水舞のオッパイの決定力。日常生活にあつて色の白さが百難隠すとするならば、裸映画にとつてはオッパイの大きさが千難隠すにさうゐない。かどうかは知らないが、個々の要素を検討すると―地下鉄レイプのエクストリームさを除けば―何ひとつ目新しいものも見当たらないまゝに、案外カッチリ纏まつた一作。三本目まで観るなり見た上では、今のところ一番面白い。

 プレスから拾つた役名が、ヒャッハーズが順にババ・ゴン・キッキ・ブチ・ジュン。下元史朗が風間で、外波文と沢木貴和子は沼田と悦子。結城麻美と瀬川満里奈は、望と亜紀子。


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 「お色気セールス 人妻なまめく香り」(1995『セールスレディ バイブ訪問販売』の1998年旧作改題版/製作:小川企画プロダクション/配給:大蔵映画株式会社/監督:小川和久/撮影:伊東英男/照明:内田清/助監督:井戸田秀行/編集:《有》フィルム・クラフト/脚本:水谷一二三/監督助手:西海謙一郎/撮影助手:倉田昇/照明助手:佐野良介/スチール:津田一郎/音楽:OK企画/録音:ニューメグロスタジオ/効果:協立音響/現像:東映化学㈱/出演:早川優美・小川真実・林由美香・杉原みさお・葉月螢・杉本まこと・太田始・栗原一良・青木和彦)。何故か各種資料には池袋高介とあるものの、脚本の水谷一二三は小川和久(現:欽也)の変名。独特の位置は、何か知らんけどそこが落ち着くのであらう。もう、さういふことにでもしてしまへ。
 化粧品訪問販売の森津也子(小川)が得意の主婦・水上美保(早川)に、日頃の謝恩に半額でお分けすると取り出したのが、手首ごとオブジェ感覚の中指バイブ。贅沢にも暇を持て余す、美保から持ちかけたパートの件は決まつたらしく、津也子は辞す。カーテンを閉めた美保が、腰を下し手首を手に取つたところでタイトル・イン。そのまゝスタッフからクレジット起動、まづはお乳首に当てて俳優部、パンティ越しに中指を添へた観音様に、小川和久の名前が入る何気に磐石なタイトルバック。
 社名不明の何とか化粧品何処そこ営業所、所長(杉本)と、上司と部下に止(とど)まらず、所長とは男女関係にもある北村和枝(林)が見やる営業成績のグラフに並ぶ名前が、左から溝口・森・北村・黒沢・成瀬・今村・小津・大島・伊丹。シネフィル臭い、些末か小癪な映画好きアピールなんぞ要らん。さういふ真似がしたいのなら、当時大蔵レギュラーの小林(悟)・山崎(邦紀)・市村(譲)・川合(健二/a.k.a.関根和美)とかにすればいい。案外といふか何といふか、かうして見てみると寧ろ今よりも薄い。兎も、角。常に断トツの売上を誇る、津也子の営業手法に所長―と和枝―は一応程度の猜疑を懐く。
 配役残り太田始は、結婚一年にして早くもレス気味の美保夫。水上に、美保が津也子からガバガバ化粧品を買ふ稼ぎがあるのかしらん、といふのも疑問といへば疑問。葉月螢が、双方熱愛のどうかした勢ひで入れ揚げる水上浮気相手。ここで改めて振り返ると、太田始の最新といふ意味で最後の新作ピンク出演が、大絶賛今をときめかない荒木太郎の2014年第二作「巨乳未亡人 お願ひ!許して…」(主演:愛田奈々)。多呂プロに復権の芽が全く見えない、どころですらない状況下、太田始は今上御大が伊豆映画で救済なりサルベージしてあげればなんて、相も変らず埒の明かない繰言。さて、措き。杉原みさおは、団地を攻める和枝・美保と別れた津也子が例によつてジョイトイでオトす、恐らく戸建住まひの主婦。美保は和枝の勧めで、大東銀行ことぶき―独身―寮(物件的には東映化学/現:東映ラボ・テック)を訪ねる。栗原一良がそこの鈴木で、最終盤に漸く登場する青木和彦が鈴木と同期の山本。適当につけましたといはんばかりの、苗字が清々しい。忘れてた、営業所内にもう一人見切れる男は井戸田秀行、ではなく。テレビ畑を主戦場にキャリアを積み重ね、昨年遂に長篇デビューを果たした西海謙一郎。別館調べだと、旦々舎に参加した形跡が最も多く窺へる。
 ex.DMMに記載された粗筋に目を通した際、如何にも焼き直しの元作臭いと身構へつつ、単に煌びやかなまでに類型的な物語―と、いふほどのものでもない―に過ぎなかつた、今上御大和久時代(昭和51らしい~1998)の1995年第六作。
 津也子―美保も―は何某か良からぬセールスをしてゐやしまいか、あるいは、何気にスリリングな水上夫妻の夫婦仲。展開の動因たり得る二点に関して、前者は本当に触れるだけ触れて綺麗に等閑視。後者も後者でことぶき寮にて自身も羽目を外す美保が当分様子見する方向に、華麗に棚上げする。さうなるとドラマが転がりも深まりもする訳がなく、あとは必ずしも男女の絡みに限らずとも淫具を駆使しての、ひたすらにひたすらにただひたすらに、濡れ場濡れ場を連ねるに終始するある意味ひたむきな、より直截には水のやうな裸映画。前半は残りの女優部に見せ場を譲り、後半ことぶき寮を大爆走して盛り返す主演女優。葉月螢と太田始のエモい対面座位等々見所はそれなりに見当たる中でも、最大のハイライトはパッと見何がどうなつてゐるのかまるで判らない、特殊な器具を陰部に装着した杉原みさおが、豪ッ快な大股開きで飛び込んで来る振り切れたカット。


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 「痴漢電車 中がいいは」(1989/製作:国映株式会社/配給:新東宝映画/監督:カサイ雅弘/脚本:五代響子/撮影:下元哲/照明:白石宏明/編集:酒井正次/助監督:小原忠美/監督助手:小泉玲/撮影助手:片山浩/照明助手:林信一/録音:銀座サウンド/現像:東映化学/出演:南崎ゆか・伊藤清美・芳村さおり・山本竜二・池島ゆたか)。惜しくも、VHSジャケには監督がサカイ雅弘、惜しいのか?
 ハプニングバー的な物件、女二人にチップをビキニに挟ませて、モッコリを触らせる筋肉質のストリッパー(三人ともクレジットレス、背中しか見せない女二人は南崎ゆかと芳村さおりかも)の画から入り、少し離れたカウンターでは、ヨーコ(伊藤)が一人カクテルを傾ける。会議が長引いちやつてと、ヨーコの夫・村上(池島)が何某か贈物を持参して到着。ヨーコが欲しがつてゐた物とする結婚記念日(三回目)のプレゼントが、意表を突くバイブレーター。促されその場で付属するピンクローターを使ひ始めたヨーコが、店員(も不明)にやんはり注意されるほど上半身裸で乱れるや、メスブタと罵倒した村上はカクテルをブッかけ退席。ヨーコが服を上手く着られず村上を追ひきれない繋ぎで、都心の夜景にタイトル・イン。ヨーコと村上が車内でもプレイに興じるのが、最初の痴漢電車。互ひに秘部を弄(まさぐ)る激しい攻防戦、伊藤清美の高速舌嘗めずりに、カサイ雅弘クレジット。jmdb準拠で、今作が初のカサ弘名義作となる。
 帰宅した村上夫妻の夫婦生活は、縛りこそ緩いものの洗濯バサミから熱ロウ、鞭まで繰り出す本格的なSM。翌朝、出勤がてらゴミを出す村上に、ホットパンツから美脚も露な隣家の橋本(南崎)が御挨拶。村上家がアシッドに円満な一方、一作年配偶者に他界された橋本は早速ゴミ袋を漁り『SMスピリッツ』誌(昭和59~不明)とロープを発見、嫉妬心で拗らせた欲求不満を滾らせる。
 配役残り、一流企業の課長である村上の職場要員、画面向かつて右側が笠井雅裕につき、左の軽く長髪は定石だと小原忠美か。推定小原忠美が村上への電話を取り次ぐ山本竜二は、村上の弟・トオル。芳村さおりが、トオルが兄貴に結婚を報告しようとするカオル。
 国映大戦第二十四戦、といつて、面子的にも獅子プロ作くらゐにしか見えないカサイ雅弘=笠井雅裕1989年第二作、通算商業第四作。配信された新東宝ビデオ版ではフラッシュでボカシを入れつつ、現に放尿してゐるやうにしか見えないのがピンクではどうなつてゐたのか激しく興味を掻きたてられる、洗面器排尿の末に村上は誤つてヨーコを死なせてしまふ。死なせてしまつた魔展開を、欲求不満伏線を大輪の百合の花で加速した橋本を飛び込ませ更なる超展開に繋ぐ構成が圧巻。橋本女王様が恣(ほしいまゝ)に村上兄弟とカオルを虐げる、終始ノッペリと明るい撮影は幾分趣を欠きながらも、後年に毒された目からは凡そ国映作らしからず映る、堂々とした裸映画を構築する。ヨーコのマゾ性に絡める小技も心憎い、三撃目のダイナマイト展開が爆裂するトリプルクロスで、ブラックでないあくまで陽性の娯楽映画にハードランディング。糞カレーの件でカオルがトオルに惚れ直すのは、山竜らしい見せ場込みで力技の大団円を補完する地味な妙手。ついでにアバンから全篇を通して、鄧麗君系の中華歌謡と、大胆不敵な伊福部サウンドの丸パクリを豪快に使用する劇伴も特色。強ひて難点を論ふならば―当然の如く実車輌撮影につき―周囲の目を引くほどの無茶を仕出かしつつ、電車痴漢があくまで繋ぎに過ぎない一抹の弱さ。とまれ一人も殺めない爽快なパンチラインを経て、見事な富士のショットに叩き込まれる“劇終”が、良質の娯楽作を清々しく締め括る。当時笠井雅裕が傾倒してゐたのか、鄧麗君系のトラック以外には香港映画のエッセンスは特にも何も見当たらないけれど。


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 「地下鉄連続レイプ OL狩り」(昭和61/製作:獅子プロダクション/配給:株式会社にっかつ/脚本・監督:片岡修二/撮影:佐々木原保志/照明:水野研一/編集:酒井正次/助監督:笠井雅裕/監督助手:小原忠美・瀬々敬久/撮影助手:山本朗・相馬健司/照明助手:白石宏明・井上英一/スチール:田中欣一/車輌:JET・RAG/録音:銀座サウンド/現像:東映化学/出演:北条沙耶・早乙女宏美・秋本ちえみ・夏樹かずみ・外波山文明・螢雪次朗・神原明彦・西川礼子・古野美恵・瀬原忠久・ジミー土田・鈴木幸嗣・下元史朗)。出演者中、神林明彦から瀬原忠久までと、鈴木幸嗣は本篇クレジットのみ。
 多分窓の外視点の、定速でパンするカメラ。カーテン越しの半裸でウダウダする女(西川礼子か古野美恵?)にクレジット起動、俳優部を消化したところでタイトル・イン。そのまゝ隣に跨いで二部屋通過する一見アクロバットは、実はタイトル時の暗転でどうにでもなる。警部補の風間(螢)と眠るOLの高井望(北条)が、蛇の悪夢にうなされる。いはゆるエマニエル的な椅子に緊縛された望に蛇を掴んだ男の腕が迫り、コートの上から掻くやうなイメージで観音様に挿入される。かつて望をシャブ漬けにした、超武闘派ヤクザの堂島(下元)が出所。慄く望と風間も緊張を隠せない一方、堂島が草鞋を脱ぐ組は、そもそも堂島が別荘に入つた所以たる抗争相手の大組織・旭誠会と手打ちと称して事実上傘下。娑婆に戻つたら戻つたで、堂島は何れにせよ厄介極まりないキナ臭い火種だつた。
 配役残り、苦み走らせた風情がキュートなジミー土田は堂島の舎弟・竜也。竜也と堂島を迎へに行く舎弟もう一人は、ビリング推定で鈴木幸嗣臭い。秋本ちえみは、旭誠会からの堂島の出所祝ひ・奈々。祝ひの品に女を贈るのか、贈るんだよ、さういふ世界なんだつてば。神原明彦がすつかり日和つた組長で、外波山文明は旭誠会の沼田。沼田の連れの普通に美人は、古野美恵か西川礼子?矢張り特定不能の瀬原忠久は、出番と台詞の多さ的に風間の部下かも。夏樹かずみは、堂島と竜也にもう一人の三人がかりで旦那の目前凌辱される、組長の嫁。そして決して小さくはない問題―後述する―の早乙女宏美は、竜也の情婦。その他望の職場部とそれ以上に官憲部で、そこそこの頭数が見切れる。地下鉄部が何処まで実際の乗客なのかが、この期には如何に解したものか考慮に苦しむ。忘れてた、登場順的には夏樹かずみと早乙女宏美の間に入る、ピンで抜かれれば台詞も一応与へられる割に、本職俳優部なのか否かは怪しい替玉役も不明。
 片岡修二昭和61年第三作は、地元駅前ロマンにて大杉漣の追悼番組で観たのも気がつくと去年のことであつた、年一全四作の「地下鉄連続レイプ」第二作。幾ら買取系とはいへ、上映時間は驚異のピンクばり六十分。今作以外の仕事の形跡が今となつては俄かには窺へない、主演の北条沙耶が華は秋本ちえみに劣り、グラマラスでも夏樹かずみに負ける。片や螢雪次朗も、ハードな作劇に如何せん柄でなく親和が難いのは、地味にでなく厳しい。外波文も呆気なく退場してしまふとなると、残る切札は下元史朗のみ。と行きたいところが、また堂島軍団が相手が警官であらうと親分であらうと脊髄で折り返して所構はず引鉄を引く、ヤクザどころか市街戦仕出かすゲリラのやうな連中。早乙女宏美に手筈を整へさせた高飛びを控へ、「何処へ連れてくつもり」と問ふ望に対して堂島が振り絞る答へが、「地獄」。その辺りはカッコよくなくもないものの、飛躍だらけの展開を箍の外れたデスペラードが気違ひみたいに弾けるか駆け抜けて、虫ケラの如く死んで行く。尺の短さから、大雑把な印象を兎にも角にも強く受けた。
 何より根本的に大問題なのが、完全に遅きに失した早乙女宏美投入のタイミング。幾ら綺麗に撮つてあるとはいへ、高々一時間の映画の四十五分も跨いだ正真正銘の終盤で、誰だか判らん女がグラサンもかけたまゝシャワーをのんびり浴びる、間抜けなお目見えには正直途方に暮れた。挙句最後の濡れ場も、望と堂島の絡みを中途で端折つた上でなほ、相変らず完遂にまでは至らない竜也と早乙女宏美のカーセックス。確かに看板の地下鉄連続レイプは凄いのを通り越したムチャクチャな迫力ながら、女の裸で裸映画が壊れてゐては、流石にお話にならない。


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 「風俗嬢 内諸で本番」(1994/製作:小川企画プロダクション/配給:大蔵映画株式会社/監督:小川和久/撮影:伊東英男/照明:内田清/助監督:井戸田秀行/編集:金子尚樹 ㈲フィルム・クラフト/脚本:水谷一二三/撮影助手:倉田昇/照明助手:佐野良介/スチール:津田一郎/音楽:OK企画/録音:ニューメグロスタジオ/効果:協立音響/現像:東映化学㈱/出演:青木こずえ・林田ちなみ・伊藤舞・杉本まこと・久須美欽一・栗原一良・山科薫・神戸顕一・太田始・姿良三・寺島京一・鴇泉宗正)。相変らず、他ではあり得ない位置に来る脚本の水谷一二三と出演者中姿良三は、小川和久(現:欽也)の変名。
 ウッキウキでパンティを脱ぐ尻にタイトル開巻、ブラを外したお胸を、健気に寄せてみたりもする。摩天楼の電車サイドで痴漢電車プレイに興じる林田ちなみと神戸顕一挿んで、裸の主は満面の笑みの主演女優。山科薫をビッシビシ責める伊藤舞、杉本まことに正常位で抱かれる青木こずえと画を繋いで、クレジット尻はパンティを穿く尻。案外、綺麗に纏まつてはゐる。
 女子大の先輩・ヨーコ(林田)から借りたチェット・ベイカーのCDを返すやう催促された、ヨシカワ秋子(青木)が又貸しした彼氏の山口渡(杉本)を訪ねてはみたものの、この一ヶ月行方不明な山口は矢張り不在。合鍵で室内に入つた秋子が、在りし日を想起してのワンマンショーをオッ始める強引なシークエンスは、次なる来訪者を告げる呼鈴に遮られる。秋子に続き山口を訪ね現れたのは、学生ローン「シルビアファイナンス」の小島(久須美)。山口が三百万を借りた挙句保証人は秋子だといひ、実際秋子に、書類にサインした覚えはあつた。忽ち窮しキャッチ(栗原)に声をかけられた一日二百万の本番ビデオ撮影に傾きかける秋子を、ヨーコは自身も働くイメージクラブに誘ふ。
 配役残り神戸顕一は、ヨーコの常連客。二度目の出番は三河屋に扮しての不倫間男プレイ、ヨーコ奥様の中元の注文が、三河屋さんのカルピス。この時、小川欽也は確かに岡輝男を超えてゐたにさうゐない。寺島京一はイメクラの店長、伊藤舞と山科薫が店長が秋子を見学に連れて行く、イメクラはだしの本格的な責めを敢行する女王様と豚。変態的な目の輝きが堪らない太田始は、緊急出撃させられる秋子の水揚げ客。一度目は手先しか映り込まない鴇泉宗正は、壁の什器を見るに、カウンターは動かせる構造の摩天楼バーテン。大体、これ何て読ませるんだ。そして満を持して大登場する姿良三は、秋子に山口とヨーコを加へた三人でギャラが四百万だなどと、矢鱈と景気のいい本番ビデオの監督。実に二十五年前にしては、結構どころでなく変らない。
 小川和久1994年最終第十作、妥当な数字に見えてもしまふのは、箍の緩んだ気の迷ひ。とこ、ろで。山口が三百万をシルビアに借りた所以が、競馬でサークルの金を使ひ込んだ末に、騙された共同馬主、バカの見本か。兎も角三分の一くらゐは身から出た錆でヒップに火の点いた女子大生が、パイセンの気軽な勧誘に脊髄で折り返して応じ、風俗の敷居を跨ぐ。辺りまでは、お気楽な裸映画のありがちな展開として、まだしも体裁を保つてゐなくもなかつた。とこ、ろが。初日で六万稼いだ帰途、蛇の道は蛇だとか絶妙な方便で捕獲された小島に喰はれた翌日。大絶賛仮名で舞女王様の有体な説教を頂戴した秋子は、股の根も乾かぬ内にイメクラを辞める。結局、実は留学費用を稼ぐべく体を売つてゐたヨーコ―と棹要員の山口―共々、法外なギャラを弾む本番ビデオに出演して借金はサクッと完済万事解決。だ、などと。度を越した御都合が天衣無縫の領域をも遥か彼方に突き抜ける、底の抜けた穴から日が昇るが如き途方もないオプティミズムには、この際クラクラ眩惑を覚えるほかない。余人の追随も理解も遠く及ばない、小川欽也のトゥー・マッチ・フリーダム、これぞイズイズム。大体なほ余つた百万は、山口が都合して来た実家に返せ。


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 「若妻 しとやかな卑猥」(1990/製作:国映株式会社/配給:新東宝映画/脚本・監督:佐野和宏/企画:朝倉大介/撮影:斉藤幸一/照明:加藤博美/音楽:伊藤善之/編集:酒井正次/助監督:ついよし太/演出助手:山村淳史/撮影助手:片山浩/照明助手:野村敦/効果:協立音響/録音:ニューメグロスタジオ/現像:東映化学工業/出演:岸加奈子・佐野和宏・一ノ瀬まみ・伊藤清美《友情出演》・荒木太郎・小林節彦《友情出演》・吉沢健)。
 ミサトスタジオ二階の寝室、荒木太郎と眠る岸加奈子が目覚め、窓際まで歩く。小林節彦に捨てられた、伊藤清美が路上にへたり込んで泣くありがちな修羅場を目撃した杏子(劇中での読みはあくまでヨーコ/岸加奈子)は、自分達で呼んだにも関らず、手の平返して荒木太郎を追ひ出さうとする。到底納得行かない荒木太郎が何故か今泉浩一のやうな口跡で荒れ始めたエマージェンシーに、杏子の夫・早瀬(吉沢)が介入。金の力で言ひ包め、どうにか荒木太郎を送り帰す。「何時までこんな生活を続ければいいの?」、「自分が嫌で嫌で自分を殺したくなるまでだ」。脚本家のマユミ?―吉沢健の発声が不明瞭で上手く聞き取れない―進次(佐野)が寝てゐると、打算で進次に接近する女優部(一ノ瀬)が書きかけのシナリオを勝手に朗読する。未だ髪が残る佐野も、女も双方スッカラカンに軽い。進次は露悪的か手荒に一ノ瀬まみを抱きかけ、わざと怒らせるかの如く帰らせる。杏子とかつて男女の仲にあつた進次に、早瀬から連絡が入る。テレビ畑で活躍してゐた進次が“飼ひ慣らされた豚に飽きた”だとか称して足を洗ひ、目下は制作される予定もない映画のシナリオに尽力だか執心する一方、不能の早瀬は男ですら、杏子の求めるものは何でも与へてゐた。再会を果たすや脊髄で折り返して進次と寝た杏子は事後、「私の幸せがあの人の幸せなの」の一点張りで進次と一緒になると決める。
 ex.DMMことFANZAよりも幾分安いとはいへ、にしても今時あり得ないくらゐに画質の低い素のDMMで正調国映大戦。第二十三戦は佐野和宏1990年第二作、商業通算第三作。第三回ピンク大賞に於ける戦績はベストテン二位と、佐野の監督賞に岸加奈子の女優賞。ついでになほ一層信じ難いベストテン一位が、佐藤俊喜=サトウトシキの「ぐしよ濡れ全身愛撫 BODY TOUCH」(脚本:小林宏一=小林政広/主演:杉本笑)。直截に結論を急ぐと、どうかしてやがつたとしか思へない。山内大輔城定秀夫の―最低でも―今世紀最強の痴漢電車を抑へた、第三十回(2017年度)よりも酷いのではなからうか。
 いはゆる四天王と括られる四人の中で、少なくとも当時最も上手かつたのは普通の量産型裸映画もその気になれば撮れた佐藤寿保。但し佐藤寿保のキャリアは、残りの三人を四年先行してはゐる。瀬々敬久とサトウトシキはグダる際には何れ劣るとも勝らないほどグダりつつ、入る時の一撃の威力は断然瀬々が上。最もダサく不格好で、下ッ手糞な映画を撮るのが佐野和宏。といふ大雑把極まりない概観をこれまで、あるいは現時点に於いては持つてゐたものだが、いよいよその感を強くした壮絶な一作。
 杏子と進次の蜜月時代の、ヘボピーみたいな佐野のフラワーな髪型にもそれはないだろと頭ないし腹を抱へたが、一旦完膚なきまでに映画がブッ壊れるのは、早瀬の招きに進次が軽く途方に暮れてからの一頻り。後々モデルの杏子が出演したPVである旨語られる、ダンスカダン糞よりダサい打ち込みが爆音で鳴る中、コマを飛ばした粗いビデオ画像で杏子が延々延々延ッ延踊り倒す、よもやまさかの三分十八秒といふ途方もない長尺。幾らグルッと一周しかねないダサさがある意味持ち味あるいは最大の武器ともいへ、岸加奈子をこんなにダサく撮つてどうすんだと、佐野はバカかと本気で呆れた。
 スタイリッシュかつ情熱的でなくもないものの、頻繁に遮る早瀬のインサートは煩はしい杏子と進次の濡れ場は、中盤の確かな見せ場。更なる問題が、絡みといふ本義もしくは退路を事実上断つてしまつた後半。進次が劇中五年前に撮影した、杏子の8mmフィルムの上映を早瀬と進次の二人でホケーッと見る、超展開には唖然とするのも通り越して度肝を抜かれた。オッサン二人で、ブルーフィルムでさへない動くポートレートを淡々と観てるんだぜ、そんな画期的な構成のピンク見たことねえよ。荒木太郎は北沢幸雄よりも寧ろ、佐野の影響を強く受けてゐたのではあるまいかといふのと、映画に8mmを挿入するのは、死刑にしてしまへと改めてか重ねて本気で思つた。どうしやうもない木端微塵はどうしやうもない木端微塵のまゝで、臆しもせずに駆け抜けてみせる一種の鮮やかさといふ奴もあるにせよ、生半可な作家性とやらが、大御大や珠瑠美をも捻じ伏せる凶悪もとい強大な空疎に突つ込む問題作。ダンスカダンに止(とど)まらず、開巻即際立つ非力な本篇と合はせると尚更、無闇に饒舌な劇伴も耳に障る。キャイキャイ輝く岸加奈子を永遠に眺めてゐたい御仁にとつては陶酔なり珠玉たり得るのかも知れないが、女の裸に安然とうつゝを抜かしに小屋の敷居を跨いだ素面のオッサン客には、これはそつぽを向かれても仕方がない。


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 「母娘どんぶり 密壺くらべ」(1998/製作:IIZUMI Production/提供:Xces Film/脚本・監督:北沢幸雄/企画:稲山悌二《エクセスフィルム》・業沖球太/製作:北沢幸雄/撮影:図書紀芳/照明:渡波洋行/編集:北沢幸雄/音楽:TAOKA/助監督:堀偵一/監督助手:三輪隆/照明助手:小倉正彦/撮影助手:袴田竜太郎・市川修・大嶋良敦/ヘアーメイク:りえ/スチール:佐藤初太郎/ネガ編集:酒井正次/録音:シネキャビン/タイトル:道川昭/現像:東映化学/出演:本田礼美・麻生みゅう・田島謙一・石川雄也・板垣有美・佐々木共輔・佐々木基子)。
 ミサトの夜景に俳優部からクレジット起動、佐伯家の婿養子・敏弘(佐々共)が天体望遠鏡を覗く。傍らそれこそ本当に目と鼻の先の居間では、敏弘の妻・千冬(佐々基)と、千冬が連れ込んだCMディレクターの筒井岳哉(田島)が堂々とイッチャイチャ茶色い酒を酌み交はす。痺れを切らした千冬に、敏弘は絶対獲物を捕まへる猟犬と絶対捕まらない狐が争ふとかいふ大犬座の神話を呑気に開陳。呆れるか開き直つた千冬は、筒井を泊める旨言明する。妻と間男で敏弘を嘲笑するところに、千冬の娘で女子高生の亜美(本田)が帰宅してタイトル・イン。千冬と筒井が憚らぬ情事に燃える一方、敏弘の寝室を訪ねた亜美は、アメイジングに近い距離で焦れる。ここで主演の本田礼美が、早乙女ルイと河井紀子か麻丘珠里を足して二で割つた感じの相当な美少女、ではあるのだが。あるだけに、声から美女ではあれ美少女感は皆無な、吉行由実のアテレコが正直キツい。本人が使へなかつた何某かの理由が存したのかも知れないが、ここはアテレコに於ける、ミスキャストの例。佐々木基子と田島謙一の大熱戦に、亜美もワンマンショーで追随。序盤から質量とも圧倒的な充実感を備へて、濡れ場が走る。
 配役残り、jmdb準拠でも別館調べでも、初確認の大御大組からの外征となる板垣有美は、佐伯家のお手伝ひ・春江、安定のポジショニングではある。それとこの人、こんなオッパイ大きかつたかな?石川雄也(現:ダーリン石川)は亜美の彼氏・広野秀和、大学四年生。麻生みゅうは、千冬と筒井の逢瀬に供されるM嬢。筒井に救済させようとした節も窺へなくはないものの、木に接いだ三番手ぶりはギリッギリ拭ひ難い。
 気がつくと全七作をコンプ出来てゐた、北沢幸雄1998年第四作。ミステリアスで淫らな一家に翻弄される、堅気のセイガク。といふ判り易い趣向には落ち着くでなく、行間ばかりダダッ広い割に血縁関係以外は殆ど全く整理されない屈折した情念なり主題は、佐伯家の中で勝手に解決。広野の存在は、体のいい出汁程度に止(とど)まる。敏弘と千冬・筒井の千日手に似た状況に即してゐなくもなかつた大犬座はまだしも、ドラマ上のクライマックスに矢張り敏弘が勿体ぶつて披露する、大熊座―の神話―に関しては限りなく藪から棒。そもそもダブル佐々木の基子に合はせ含みを持たせた口跡に、共輔が対応しきれてゐないのもあり、意匠がちぐはぐな印象は兎にも角にも強い。「貴方アタシが狂ふの待つてるんでせう」、佐々木基子が屈指の決定力で振り絞る名台詞も、根を張るには至らず暴発気味。対照的に、「君はエロスの矢で胸を射られた」。然様な徒に詩的な台詞を、佐々共に与へるのは精々悪い冗談。反面何処からでもビリング頭を狙へる強力な三本柱と、穴なり粗忽のない男優部。そして北沢幸雄の端正ではある演出に呼応する硬質かつ良質の画作りにも支へられ、裸映画としての仕上りは申し分ない。全体何が描きたかつたのかはてんで釈然としないまゝに、乳を噴いて亜美が横たはる、極めて煽情的にして鮮烈なラスト・ショットまで一息に見せきる。


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 「人妻・愛人 連続暴行現場」(1996/製作:小川企画プロダクション/配給:大蔵映画株式会社/監督:小川和久/撮影:図書紀芳/照明:内田清/助監督:井戸田秀行/音楽:OK企画/編集:㈲フィルムクラフト/脚本:水谷一二三/監督助手:片山圭太/撮影助手:西村友宏・後藤友輝/照明助手:佐野良介/録音:ニューメグロスタジオ/効果:協立音響/現像:東映化学㈱/出演:中島かづき・田口あゆみ・西山かおり・杉本まこと・下川おさむ・鳥羽美子・神戸顕一・吉原忘八)。如何なる企図なり含意があるのかないのか、謎位置にクレジットされる脚本の水谷一二三は、小川和久(現:欽也)の変名。
 木洩れ日から、ガンとカメラが引いた木々にタイトル開巻。タイトルバックは何処ぞの渓流の画に、男女とも識別を排した犯される女のショットが挿み込まれる。見習カメラマンの山田貴志(下川)と、同棲かと思ひきやラストの台詞では奥さんとか自称してゐたりする、ヌードモデルの京子(西山)がベッドの上でビールを飲む。京子が見る、キャスターの小林功(杉本)とアシスタントの青田真弓(中島)が景勝地をプラップラする旅番組に、山田の顔色が一変。兎も角山田と京子が一戦カマして小林家、妻の玲子(田口)に見送られ小林が山梨での撮影に出発する一方、電話すると教へて呉れるテレビ局からロケの詳細を得た、山田も小林を追ひ山梨に入る。実は不倫の関係にある小林と真弓の情事を、山田がカメラに収めるのも知らず、小林は自宅で祝ふ自身の誕生日に、玲子に対するカウンター込みで真弓を招く。
 配役残り、今上御大映画に於ける板垣有美的なポジションにあると思しき鳥羽美子は、玲子と仲良しの御近所、無論不脱。杉本まこととのスナップ写真のみの形で見切れるか駆け抜ける青木こずえは、小林の姉・由紀、故人。杉本まこと・下川おさむと一緒に、四人で摩天楼に飛び込んで来る神戸顕一と井戸田秀行の変名臭い吉原忘八は、ディレクターの恐らく杉山とバーテンダー。
 さあて、素知らぬ顔で猫を被るのもここまで。掘れば掘るだけ出て来る、小川欽也の焼き直し作品群。既にお気づきの諸賢もをられるかも知れないが、小川和久1996年最終第七作は、伊豆映画プロトゼロ「人妻・愛人 けいれん恥辱」(2008/脚本:水谷一二三=小川欽也/主演:梅澤かほり)の元映画。
 既に一人立ちした山田が初めから仇敵の小林に狙ひを定め、京子の妊娠と、小林に捨てられた末に交通事故死した由紀が、山田の姉ではなく妹。そして何より、遂に開眼した伊豆映画にあつては最大の見所―最大なのかよ―たる、観光パートの有無。顕著な差異もなくはないものの、ヌードモデルと一緒に暮らす写真に覚えのある主人公が、二親等の敵(かたき)にイリーガルかつブルータルな復讐を果たす、物語の基本的な展開は全く同じ。中盤良質な濡れ場を大披露する小林と玲子の夫婦生活から、踏切越しの山田にカットを跨ぐ繋ぎまで踏襲してゐるのには流石に笑つた、リメイクも通り越したコピーだ。若干形は異なれど、手を汚した山田が報ひを受けるでも呵責に苛まれさへもせず、ぬけぬけとハッピー・エンドを迎へる人を喰つたラストもそのまんま。尤も絡みの完遂率の高さに加へ女優部にも穴はなく、裸映画的には文句なく安定する。中途半端な因果応報を肯じない頑強か捻じ曲つた御仁には、グルッと一周した清々しさが最適の一作、もとい二作となり得るのかも知れない。

 十二年の間に改名も経て、杉本まこと(現:なかみつせいじ)が小林役に皆勤するある意味偉業を達成。小川欽也当人は兎も角、なかみつせいじには寧ろ、量産型娯楽映画に底の抜けた本数継戦する途方もないフィルモグラフィーの果てで、そんなことなど綺麗さつぱり忘れてゐて頂きたい。ジャスト今気づいたのが、そもそも公開題すら然程変らない、手の込んだ旧作改題か。


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