真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「日本発情列島 ONANIE百態」(1992/製作・配給:新東宝映画/監督:深町章/脚本:周知安/製作:伊能竜/撮影:稲吉雅志/照明:伊和手健/編集:酒井正次/助監督:国分章弘/監督助手:原田兼一郎/撮影助手:佐久間栄一/照明助手:小田求/スチール:津田一郎/現像:東映化学/録音:銀座サウンド/協力:水上荘・バラエティショップ アラジン/出演:橋本杏子・中川みず穂・如月しいな・杉原みさお・千秋まこと・石川恵美・ジミー土田・荒木太郎・立川平成)。脚本の周知安と製作の伊能竜は、それぞれ片岡修二と向井寛の変名。出演者中千秋まことが、ポスターには千秋誠。器用なのがこの人の場合、逆のケースも存在する。
 浅草繁華街のスケッチに出囃子が鳴りタイトル開巻、実名大登場、2代目快楽亭ブラック十六番目の名義である立川平成が高座に上がる。落語にも色々ある中、艶笑譚を得意とする平成が、新東宝創立三十周年記念にそのまんま「日本発情列島 ONANIE百態」と題した一席で人類の自慰の歴史を振り返るとする、壮大にして想定外のコンセプトが開陳される。開チンとか最早いはんからな、レベルが変らん。
 配役残り、最早誰なのかよく判らん―所以は後述する―石川恵美は、魚を赤貝に当てる快楽を覚えるギャートルズ以前の原始人、言葉を喋らない。如月しいなはドカーンと時間が飛んで明治時代の開明的な女学生・綾小路で、ジミー土田が、綾小路に毎度毎度なメソッドで悶々とする轟、どうせ下の名前は渉。橋本杏子は大東亜戦争の最中、隣組の中川みず穂宅に実家から届いた野菜をお裾分けするマチコ。何気に今作、jmdb準拠で中川みず穂の最終戦となる。千秋まことはザクッと現代、ヤリたい一心で矢鱈と従順な荒木太郎を、いはば人間バイブレーターに扱ふ女。男を人間バイブに女がオナニー、ここの方便だけは冴えてゐる。杉原みさおは、平成の劇中弟子・珍宝亭満好、字は推測。
 種々雑多な日本ビデオ販売の「Viva Pinks!」レーベル作を、手当たり次第見て行く殲滅戦第十四戦で一旦最終戦。誰の何だつたかは忘れたが、タグなしの「Viva Pinks!」作もex.DMMの何処かしらに転がつてゐる、筈。縁があれば、何時か辿り着くか再び巡り会へるであらう。深町章1992年第六作は、凡そ一年後に矢張りお盆公開された、「ニッポンの猥褻」(監督:深町章/脚本:瀬々敬久/主演:久保新二)共々、公式に二本存在する新東宝創立三十周年記念作。因みに、四十周年は「痴漢病棟」(2002/監督・主演:愛染恭子/脚本:山口伸明)が火蓋を切るPINK‐Xプロジェクト。そして五十周年を大々的に寿ぐ体力は、最早残されてはゐなかつた。あと三年辛抱したら、六十周年も来るのだけれど。
 旧約聖書のオナンからとマキシマム大上段の大風呂敷を広げておいて、鎌倉時代に諸首とか称された要は双頭ディルドで二人の女が燃える件を、一幕丸々影絵で乗り切つてみせる豪快なルーズさには、幾ら本格時代劇なんぞ到底展開し得ぬのも仕方のない安普請とはいへ、流石に呆れるのも通り越した。鮮やかな奇手とは映り難く、開き直るにもほどがある。周年記念作らしく倍増の女優部を擁してゐながら、顔まで汚して闇雲なアマゾン―あるいは山本大介―造形の施された石川恵美は素面の煽情性には程遠く、橋本杏子と中川みず穂が咲かせる豪華な百合が、立川平成の喋りに遮られるパート尻には激しい怒りを覚えた。兎にも角にも全篇を下手に貫く、上様のオナーニーなり枡席でマスをかく類の、他愛ない落語が一々煩はしくて煩はしくて仕方がない。ハーフ要員に男優部の一翼を担はせる、あるいは賑やかし程度ならばまだしも、2代目快楽亭ブラックに―しかもメモリアルな―映画一本背負はせるのは些かならず無理な相談。千秋まことに対抗し、平成がダメ弟子の満好―漫好かも―を高座上で人間電動フグに仕立てるクライマックス。尺八を吹かせたところ早々に果てた平成が「ごめんフグ行つちやつたの」と頭(かうべ)を垂れ、「ブウ」と河豚を模して頬を膨らませた満好がむくれるのがサゲ。何が“おあとがよろしいやうで”だ、よろしかねえよ。凝つた趣向を狙つたと思しきものの、力及ばず明確にやらかした一作。一年時期までずらしての、三十周年記念作がもう一本ある点は奇異にも思へたが、邪推するに、「ニッポンの猥褻」で寧ろ仕切り直したのではあるまいか。

 ところで最近ではゐろはに京子出演作を見られるだけ見てゐたりする内に、気づくと深町章(ex.稲尾実)の感想が九十九本のハンドレッド・リーチ。小屋だけで普通に到達した、“無冠の帝王”新田栄。新作を狙ひ撃つた浜野佐知と、合はせた格好の渡邊元嗣。小屋で未見旧作に当たれば当然自動的に、強ひて忌避するのも無理があるゆゑ、何某かのテーマが発生すればこの際、ex.DMMによる半ドレッドも辞さないことにした。


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )


« 快感ONANIE ... 絶倫探偵 巨... »
 
コメント
 
コメントはありません。
コメントを投稿する
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。