真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「SEX相姦図 不倫まみれの人妻」(1997『痴漢と覗き 奥さんのすけべ汁』の2005年旧作改題版/製作:旦々舎/配給:新東宝映画/監督:的場ちせ/脚本:山﨑邦紀/企画:福俵満/撮影:田中譲二・田宮健彦・今井孝博/照明:上妻敏厚・新井豊・荻野真也/編集:㈲フィルム・クラフト/音楽:中空龍/助監督:松岡誠・加藤義一/制作:鈴木静夫/録音:シネキャビン/現像:東映化学/出演:北原梨奈・青木こずえ・篠原さゆり・山本清彦・樹かず・伊藤正彦)。
 外出する北原梨奈と、その姿に機材車もといワゴン車の運転席から視線を注ぐ、伊藤正彦―の口元―を手短に抜いてタイトル・イン。こゝで、世間的に何れの名義が主に認知されてゐるのか知らない―当サイト的には後者―が、伊藤正彦はa.k.a.山口健三。ザックリ調べてみたところ伊藤正彦で昭和末期にデビュー後、元号の境目付近で山口健三に改名。恐らくキャリアの最後期、元に戻した模様。
 本篇冒頭は痴漢電車、新妻の早瀬若菜(北原)に、戸建を貸す大家の畑田吾郎(山本)が電車痴漢を働く。実はこの、あるいは二人で度々プレイに及ぶ一連の一幕。後述する侘助が目撃する形ですら一切関らない、純粋無垢に枝葉を彩る女の裸。セット撮影につき、完全に剥いたオッパイを扉ガラスの外側から撮る、非現実的かつ訴求力の高い画も放り込んでのける。同じ理由で、潤沢に投入される乗客要員は、的確に配置される。
 夜の早瀬家、夫の匠(樹)と若菜の夫婦生活挿んで、若菜同様、家賃半額のキャッシュバックと引き換へに畑田が自宅で重ねる、矢張り店子である東山瑶子(篠原)との逢瀬。瑶子のアナルに「締まるー締まるー」と忘我する畑田が、勢ひ余つて女を絞め殺してゐさうなキナ臭い音声情報を、盗聴ライターの侘助(伊藤)がキャッチする。男主人公の名前が侘助、最高といふ以外の言葉が見つからない。
 配役残り、青木こずえは泡を食つた侘助が相談する、『ラジオエイジ』誌の編集者、劇中固有名詞不詳。密談するのに、一々連れ込みに入る清々しさよ。その、他。瑶子の行方不明事件を伝へるアナウンサーと、畑田の固有名詞と住所までは突き止めた侘助が、素性を洗ふ御近所の声を、それぞれ樹かずと篠原さゆりが担当。
 大蔵との手打ちそれとも、古巣エクセスへの女帝帰還!といふ訳では残念ながらなく。金子文子の最期を描いた非ピンクの一般自主とはいへ、遂に浜野佐知最新作の本格的起動を言祝いだ、訳でも別にあるまいが。これまで限られたサイトでしか配信されてゐなかつた、1997年薔薇族入れて第十作、ピンク限定第九作が地元駅前ロマンに飛び込んで来た、のみならず。順に北沢幸雄の「-社員女子寮篇-」(1993/脚本:笠原克三/主演:上杉愛奈)、佐藤寿保の「婦人科病棟」(1994/脚本:五代響子/主演:石原ゆり)、同年坂本太の「人妻下宿」(脚本:大門通=浅尾政行/主演:小栗景子)。そして、大御大・小林悟の「女課長の私生活」(1996/脚本:如月吹雪/主演:三代目葵マリー)と、本家で四本制作された末に仁義なき新東宝が看板を強奪だか無断拝借した、新田栄のライフワーク―でもない―「痴漢と覗き」シリーズ(1989~2000/全十三作)の間隙を他監督が縫つた、傍系全五作の最終作。網羅出来るとは、正直思つてゐなかつた。適当に改題した結果の、サードパーティに関してはキリがないか直截に面倒臭いので、洗ふてみようとトチ狂ふ蛮勇も最早湧いて来ない。
 若菜と畑田が二人で再三繰り出す電車痴漢と、勝手に恋焦がれた若菜に、詫助が向ける双眼鏡。とかく“痴漢”の方が疎かにされる例(ためし)の多い中、木に路線を接ぎ気味ともいへ、「痴漢と覗き」の御題に群を抜いて綺麗に応へてみせた点が、とりあへず麗しい。偶然殺人現場と思しき音声を聞いてしまつた盗聴師が、岡惚れを拗らせる若妻の、生命の危機を回避すべく奔走する。多分「ミッドナイトクロス」(1981/米/脚本・監督:ブライアン・デ・パルマ/主演:ジョン・トラボルタ)的な社会不適合者の、元々捻ぢ曲つたものは捻ぢ曲つたまゝでなほ、逆説的に真直ぐな純愛を描いた物語。若菜に非ず侘助が実質主役となると、まづ篠原さゆりは、ひと絡みこなしたのち殺されるだけの、純然たる三番手に潔く止(とゞ)まる。ビリング頭もビリング頭で、たとへば昨今の面子でいふとかなで自由と佐倉絆を足して二で割つたやうな、北原梨奈がほゞ三十年後の現在でも全然第一線で通用しさうに身目麗しい、反面。童顔をも思はせかねないルックスから、脱いでみると思ひのほか豊かなお胸―と案外大ぶりなどエロい乳輪―を除くと、一本の劇映画を背負ふに足るサムシングには如何せん乏しく、脚本上の配慮も特に図られてはゐない。一度は身を任せつつ侘助を生温かく突き放す、青木こずえが持ち前の絶妙な距離感を投げ捨てるのが精々。浜野佐知映画平素の、女達が激越に希求する主体性の獲得も、苛烈に荒ぶるミサンドリともども完全に鳴りを潜める。最終的に手酷く手の平を返されこそすれ、瞬間風速的にせよ一度は見れた楽しい夢を、チンケな人生を自認するダメ人間が噛み締める。浜野佐知といふより寧ろ、山﨑邦紀が撃ち込んだ精一杯誠実な絵空事は胸に染入りつつ、伊藤正彦の三枚目は三枚目なりの華ないし、表情の欠如から突破力の不足を感じなくもない。土台、中折れさへ頭に載せずポークパイで、工藤俊作を気取るに至つては噴飯もの。色男は一応色男でも歪みきつた色男の、真央はじめが侘助役であつたなら、そんな他愛ない感興も脊髄で折り返す。大体マオックスを連れて来てゐれば、神戸軍団スリーカード―あと二人は大将の神戸顕一と、森純―も揃つたのに。埒の明かぬ、閑話休題。濡れ場的には二番手も一戦きりで温存、主演女優が献身的に手数を稼ぎ続ける構成で、北原梨奈の悩ましい肢体を胸か股間一杯に堪能させる。実に旦々舎らしい、信頼性の高い裸映画。対して劇映画としては、山﨑邦紀が思ひ描いたであらう基本線に、珍しく浜野佐知が大人しく沿つた一作、といふ印象が最も強い。相性のいゝやまきよが迸らせるポップな変態性も、地味に援護射撃を撃つ。
 率直に白旗を揚げさせて貰ふと今回、映画本体は全く与り知らないアキレス腱が、映写も音響―もしくはラウドな空調―もへべれけで、言葉を選ぶとゴミな駅前の上映環境。それゆゑ、侘助が畑田当人とヤサを特定するメソッドは、二回目でどうにか理解した。けれど、果たしてその畑田宅に、そもそも―侘助が拾つた電波を発する―盗聴器を仕掛けたのは誰なのか。終盤の要を成す謎に、終ぞ辿り着き損ねた限界は潔く認めざるを得ない。

 最後に、コンプ記念に傍系前四作も、改めて振り返つておくと。濡れ場を連ねるのに一杯一杯の坂本太と、この御仁にしては、まだマシな部類の小林悟佐藤寿保を新田栄みたいなだなあと思つて見てゐると、最後までまるで新田栄のやうな映画であつた衝撃も大きいが、こゝは素面で完成度の高い、北沢幸雄を随一と推すものである。


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 「ダブルファイナル 性力増強!! お下劣クリニック」(1994/受審:新東宝ビデオ株式会社、の筈/監督:浜野佐知、の筈/出演:田村香織・手塚莉絵・栗原良・樹かず・杉本まこと)。
 ボディコンの田村香織が黒ブリーフ一丁の樹かずと軽く乳繰つて、本格的な尺八と騎乗位。手塚莉絵がナースの白衣を脱ぎ、矢張り口唇性行と性器愛撫、こちらのお相手は栗原良。ビリング頭二人を一分強で掻い摘むと、相変らず凄まじく酷い書体のタイトル・イン。新東宝ビデオ的には、一種の社風なのかしらん。
 旧旦々舎の庭に薮中―博章―劇伴が鳴り、栗原良が「ウチでセックス出来ないんです」。三年間夫婦生活が御無沙汰といふ患者の悩みを、恐らくハーセルフの女医(田村)が聞くカウンセリング。当人のアイデンティティとしては、セックスのエキスパートといふよりも“心の専門家”らしいゆゑ、専門は精神科か。白痴に二三本陰毛を生やした造形の、看護婦(手塚)が脇に控へる、こちらは下の名前が莉絵ちやんと劇中香織センセイから呼称される。香織が口にしたセックスレスの単語に、耳慣れぬ風情で栗原良が首を傾げる時代性。
 配役残り、ダッボダボにオーバーサイズのスーツに眩暈がする―断じて褒めてはをらん―樹かずは、香織の彼氏かセフレ。杉本まことはいざ挿入、といふ段になると萎えてしまふ勃起不全の相談に訪れる患者其の弐。
 嘘か本当か知らないが、“業界初の同時引退作品”を謳つた一本。ホワイエ、もといとはいへ。如何にも引退作的な湿つぽさないし花道調の晴々しさ賑々しさ、あるいはメモリアルな何某かとは一切全然まるで無縁。あと田村香織と手塚莉絵は二人とも、ピンクとは全く関係がない。
 香織が栗原さんの検査を莉絵に振つた時点で、検査キタ━━━(゚∀゚)━━━!!出し抜けにスラックスを下され呆気にとられるリョウを、莉絵がズッポズポ吹いてのける端から底を抜いた、大らか且つ低劣な琴線を最短距離で直撃する実戦的な煽情性が、そのまゝ大人しく全篇を支配する。本職の映画といふ訳ではなく、物語なり主題なりにも振り分ける労力を潔く端折つた上で、さうなるとあとは火の玉ストレートな濡れ場に全てを賭ける。腹を括つた、浜野佐知の豪腕が痛快に火を噴く。中折れに悩む杉まこがよく見る夢の中身といふのが、観音様の中からエイリアンが覗いてゐる。俄かに起動する山﨑邦紀の気配と、結局杉まこには未だ望まぬ子作りもしくはAIDSに対する、即ち所謂ノースキン挿入に潜在的な抵抗があるとかいふ方便で、コンドームの正しく薄皮一枚で問題を克服する煌びやかに底の浅い即物性とが清々しい、素晴らしいとはいつてゐない。それでゐて、処置を施す治療ルームと称した、要は単なる寝室に連れ込まれ呆然とするリョウや杉まこが、香織と莉絵からザックザク喰はれる辺りには、旦々舎らしい攻撃的な女性優位がそこはかとなく薫りもする。絡みぶりのよりダイナミックな田村香織と、上半身を大きく使ふ尺八がエモい手塚莉絵。粒の揃つた二枚看板に、無駄で下品なメソッドに興を殺がれることもない、劇映画にも十分に耐へ得る男優部。一見他愛ないか何でもない素振りで、なかなか高水準な小一時間をサクッと見させる。

 一点、凡そ三十年を経た現代の視座から眺める分には、軽く躓かざるを得ないシークエンス。治療ルームにて莉絵に吹かれる栗原良の姿―より直截には棹―に、香織が勝手にワンマンショーをオッ始める。目を丸くするリョウに対し、カウンセラーがオナニーしてはおかしいか問ふた香織は、続けて「女医やカウンセラーも、子供を産んだお母さんも」、「同時に、性欲を持つた生身の女なの」。今時―といつてもう三年前だが―触れるだけ触れて小栗はるひは豪快に等閑視してのけた、エイセクシュアルの存在に留意するならなほさら、ヘテロセクシュアルなるよくてアプリオリな前提、故意の悪し様にいふならばひとつのドグマに、囚はれてゐなくもないのではなからうか。


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 「Eカップ女子高戦士 ブルマームーン」(1993/受審:新東宝ビデオ株式会社、の筈/監督:浜野佐知、の筈/出演:武田りつ子)。
 往来を歩く女子高生(武田)を、車の中から抜く。カメラがりつ子(大絶賛仮名)の正面に回り込むカット挿んで、多分兄弟と思しき、車を回すのは平本一穂とジャンク斎藤。公園ぽく整備された林に入るのは、どうやら単なる近道の類であつたらしく、再び往来に出たりつ子を平一とジャン斎が襲撃。冬服セーラー服―りつ子が着てゐるのは長袖の夏服―の飾られた、旧旦々舎の煉瓦部屋に拉致る。
 今回それなり以上のヒットを飛ばしたのか、「潮吹き女子校戦士 ブルマームーンS 星野かおり」(1994/監督:柴原光)、「デビュー杉浦あゆみ 18才 ブルマームーンXX」(1995/監督:榎雄二郎)と、現状確認可能な限りで少なくとも三本は制作された、「ブルマームーン」シリーズの栄えある第一作。それにつ、けても。セーラーならぬブルマームーン、本家の連載―と二ヶ月後のテレビアニメ放送―開始が前年。ブームの真只中、冷静に考へると怖気づき二の足を踏んでゐてもおかしくはない、火中の栗を果敢に拾ひに行く胆力が清々しい。
 ジャン斎いはく、二人がりつ子を攫つた目的は“可愛い娘と着せ替へごつこ”。そのまゝりつ子が代る代るあれこれ犯される一方的かつ一本調子の展開は、ロゴを十全にあつらへたブルマームーン的意匠にも、浜野佐知が今なほ、否、最期まで頑強に咆哮し続けるにさうゐない苛烈な女性主義からも一旦遠い。つ、いでに。実は武田りつ子が女学生には煌びやかに映らない地味に障壁の高いキャスティングに関しては、デローンと悩ましいオッパイと、りつ子がジャン斎から着させられる、スクール水着のエモーショナルなエロさに免じて等閑視するべきだらう。
 さうは、いへ。タイトルから脊髄で折り返して容易に想起し得る、いはゆる“美少女戦士”実写版的な特撮はおろか、満足なコスプレ要素すら凡そ皆無。折角“ブルマームーン”なる画期的にグラマラスな意匠に辿り着いておきながら、如何にもな扮装で大見得切つてみせる、一撃必殺絶好のショットを設けない。そもそも浜野佐知にさういつた、雑に括るとオタク的な外連に対する意識の有無から甚だ怪しい辺りには、大いなる、激越な心残りも否み難い。尤も、嬲られ尽くした挙句往来に放棄されたりつ子が、木々に囲まれ何となく回復。したかと思ふと、夜の旧旦をほてほて再訪。兄弟を個別撃破する逆夜這ひを仕掛けたのち、平一はセーラー服を着せ緊縛、ジャン斎は女子の体操着を着せられ檻の中。二人を拘束した上で、颯爽と一撃もとい二撃離脱。旦々舎らしい、ラディカル通り越したアグレッシブ・フェミニズム―あるいはブルータル・フェミニズム―ならば吹き荒れる一作。と、いふか。劇中気配さへ一切窺はせない、旧旦に兄弟以外の同居人がゐなかつた場合、離れて身動きを封じられたこの二人、そのうち確実に息するのやめるよね。


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 「伊豆七島入れ喰ひ逆ナンパ巡り」(1993/受審:新東宝ビデオ株式会社、の筈/監督:浜野佐知、の筈/出演:君矢摩子・川原みずき・樹かず)。
 調布飛行場か、徒歩で飛行機に乗り込む搭乗口にズンドコした劇伴が鳴り、カメラは機内にも突入する。女が水の中で水着から尻を出す、世辞にも綺麗とはいへない水中撮影挿んで、機内から捉へた離陸する翼にタイトル・イン。一旦中盤に先走ると、結局伊豆大島から帰京する訳でもない始終にあつて、尺的には折返しを少し跨いだ辺りで唐突に挿入される、矢張り機内から抜く上空カットの意味が何気に全く判らない。
 翼越しに伊豆大島を抜き、機は大島空港に着陸。ロビーを進むネームド俳優部のロングに、原文は珍かなで“性態調査に降り立つた調査隊”のスーパー。基本的なコンセプト―のイントロ―をその一言で事済ます奔放な大雑把さと、それで特に支障も生じない、爽快な薄さとが清々しい。ごつた返す海岸をバリバリ物色風情で散策する君矢摩子が、一人の男にコンタクト。テトラポットの大して隠れてもゐない物陰で、盛大な青姦をキメる。
 浜野佐知が「盗撮!!逆ナンパLive ~B98の誘惑~」に続き君矢摩子を迎へ、二番手に池島ゆたか1993年第一作「新人OL 婦人科検診」(脚本:五代響子)主演の川原みずきを擁したアダルトビデオ。無闇矢鱈に情報量の多いパケによると、新東宝ビデオの十周年周年記念作とのこと。当然名前の入る女優部―まとめて“超セクシー巨乳タッグ”と括られる―に対し、樹かずが“ハイテクナンパ男優”とか逆に字数が三倍に嵩むぞんざいなのか、却つて面倒なのか理解に苦しむ片づけられ方をしてゐるのが琴線を撫でる。ハイテクナンパ男優、プリミティブに面白い、ハイテクナンパ男優。
 二杯目の茶を煎じるほど、神戸軍団を三枚揃へた―そこは一切関係ない―「盗撮!!逆ナンパLive」がどうやら好評を博したらしく、今回は三人編隊で伊豆諸島に足を延ばす一作。“伊豆七島”なる呼称に対し、七島以外の有人島から抗議があがつてゐる状況は寡聞にして知らなかつた。確かに、道理として通つてゐる。
 閑話休題三人に喰はれるのが順に、君矢摩子とテトラポット戦を戦ふのは、体つきと左鰓の黒子から恐らく森純、こゝは結構自信がある。川原みずきが公衆シャワーで接触する、髭のオッサンが一瞬平勘ぽく見えかけたけれど、多分違ふ。君矢摩子が民宿に連れ込むのは、森純との二回戦。君矢摩子と川原みずきが“水着で入る断崖の混浴温泉”にて捕獲する、禿頭―パケ裏面によると御齢六十五―には手も足も出ない。もう少し近づいて撮るなり、喋らせるなりして呉れないと。そもそも、正体を特定しようとする、営みこそが不毛であるのは自覚してゐなくもない。樹かずが正ナンパするのは、水撮要員込みで川原みずきの流用。最後の、川原みずきが民宿に連れて来て君矢摩子も交へた巴戦に雪崩れ込むのは、森純にさうゐなく映る、ものの。流石に再び画が引きすぎてゐて、断定はしかねる。忘れてた、樹かずが流用川原みずきを正ナンする直前、逃げられた君矢摩子が絵に描いた如くポップにむくれる、後ろ髪を縛つた男は一肌脱がない点からも、もしかすると山﨑邦紀かなあ。当時四十五にしては、髪が白い気もするけれど。水撮パートは繋ぎ程度と看做した上で、計六幕の主要エピソード中最もエモーショナルなのは、オッサンが露天風呂で向かうから声をかけて来た、超セクシー巨乳タッグに尺八を吹いて貰ふ。予期せぬ画期的な僥倖の、ドリーミンな歓喜が伝はつて来る禿頭パート。
 基本的には君矢摩子の超絶肢体を黙つて抜いてさへゐれば、幾らでも形に出来たものを。このビデオに於いて君矢摩子さんがセックロス致してゐるのは、あくまで伊豆大島で捕まへた現地男で、なほかつその模様を盗撮したものであります。といふ体裁を頑なに死守する諸刃の剣で、兎にも角にも如何せんカメラが遠い。寄つて呉れよ、カットを割つて画角も狙つて、普通に乳尻撮つて呉れよといふ、精を放つ、もとい血を吐く叫びは禁じ難い。総じて同様に、お相手の首から上にも施さざるを得ない、ただでさへなモザイク面積の爆増に対しても痛痒を否めず。水でも飲むやうにサクッと滞りなく見進められはしつつ、いざ振り返つてみると、物足りなさも少なからず残す一作ではある。


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 「生でドピュドピュ注射して…」(1993/受審:新東宝ビデオ株式会社、の筈/監督:浜野佐知、の筈/出演:松下英美)。
 薮中―博章―劇伴に、嬌声が乗る。看護婦の松下英美(ハーセルフ)が秘裂に指を這はせ、暗転して松下英美のみのクレジット。平本一穂に吹く尺八で繋ぎ、再暗転タイトル・イン、アバンはアバン。
 整形外科の入院患者・平本康介(平本一穂)の個室を英美が訪ね、風呂に入れぬらしい平本の代りに体を拭いてあげる。恐ろしく無造作に下半身も剥かれると、平本は勃つ。続けて本格的に一戦交へるのは、英美が辞したのち、マスマスのつてゐた平本のイマジン。
 最早息を吐くが如くクレジット的には等閑視される配役残り、ジャンク斎藤は、あゝだかうだ屁みたいな方便で英美に手をつける医師・金沢。アダルトビデオにして初めて辿り着き得た知見として、この御仁、結構小さいのではあるまいか。何が?ナニが。栗原良は固有名詞不詳の英美彼氏、ハモニカを吹くカットに際しては、ほぼ真上から抜く俯瞰が出し抜けに火を噴く。
 多分これで全部の、公開順に浜野佐知1993年第一作「超いんらん 色情不倫妻」(脚本:山崎邦紀/主演:美咲舞/二番手)と、珠瑠美同年第三作「若奥様 不倫漏らす」(主演:中上絵奈/二番手)。珠瑠美1994年第一作「熟女スワップ 獣のやうに」(主演:珠瑠美/三番手/二番手に二階堂美穂)に、浜野佐知同年第九作「水沢早紀の愛人志願」(脚本:山崎邦紀/主演:水沢早紀/二番手)。ピンクに四本出演してゐる、松下英美を擁した一作。“私のCTスキャンで貴男のジュニアを診てあげる”、パケに踊る下らなさが最高な惹句に心温まる。
 看護婦は男の体に対する耐性がついた結果、羞恥心をなくしてしまふだの。セックスをすると女を取り戻すだとか、あるいは男は幾つになつても子供。取つてつけたやうな看護師の匿名証言―実際取つてつけたのだらうが―で最低限の体裁を整へた上で、松下英美の対平一、対ジャン斎、対栗良。平本との再戦に、金沢も加はる巴戦までを滔々と連ねる。ザクザク切り刻むのでなく、フェードでヌルヌル繋ぐ濡れ場に映画的な旨味は特に見当たらないが、あまりにもぞんざいなカッティングに戦かされることもない以上、ひとまづ落ち着いて女の裸を愛でてはゐられる。金沢のへべれけさに可笑しみを見出す余地も決してなくはないのかも知れないが、そもそもジャンク斎藤に一欠片の魅力も見出さない見出せない、当サイトにはそれも叶はなかつた。

 付記< 仏流炒め物、もといさて。藪から棒に火蓋を切つた、浜野佐知AV戦の初戦に於いては“諸事情につき”と言葉を濁してみたが、とうに上梓されてゐるゆゑ、勝手にカミングアウトしてしまへ。先般出版された浜野佐知の自伝通り越した戦記、『女になれない職業』(ころから刊)巻末のフィルモグラフィー作成に、山﨑邦紀監督から乞はれ微力の彳部程度協力させて貰つた過程で、浜野佐知のアダルトビデオが、相当数配信で見られる僥倖に直面、すはと喜び勇んだものである。とかいふ顛末はどーでもよく、グーグル先生も知らない、出雲静二と秋山和夫が同一人物なる衝撃の新事実始め、読み応へ過積載のエモーショナルな一冊につき、当サイトにお立寄りの諸賢にも、御購読をお薦め致す次第


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 「逆レイプ女王様 愛川まや 牝豹の生贄」(1991/受審:新東宝ビデオ株式会社/監督:浜野佐知、の筈/出演:愛川まや・石井基正・山口賢二)。石井基正と山口賢二には、各々“AS 友人”・“AS 夫”と役名までクレジット併記される。役名といふか、役柄といふか。
 まや女王様(大絶賛ハーセルフ仮名)の仁王立ちを、足下からカメラが舐める。気を張つてゐないと割と覚束ない、素の表情にアバンでは愛川まやのみクレジット。女王様にしては吹いて下さる、尺八を仰角に抜いた画が―以降サブタイトルが入る度に―暗転して“もう一つの物語”。朝食の支度をするまやに、夫(山口)が背後から迫る。喘ぐ口元のアップを止めて、凄まじく酷い書体のタイトル・イン。“新居の幸せな午後”、素敵なマンションでまやと夫が適当に乳繰り合つて、ゐたかと思へば。唐突に起動する砂嵐挿んで、女王様ver.のまやが奴隷を張る。アバンギャルドと紙一重に無造作な、雑すぎる構成が堪らない。“爽やかな休日の朝”から、その発想を忘れてゐた女体ならぬ男体盛りを展開する“女王様のお食事”と続いての、“親しい友人の来訪”。クレには友人とあるものの、劇中の遣り取りを窺ふに、夫の後輩である石井基正が愛欲の巣に遊びに来る。石井基正キタ━━━(゚∀゚)━━━!!、とても2022年の感興とは思へない。
 “スペルマに血が混じるまで…”“女王様が責めまくる”だとか、パケにはブルータルな惹句も躍るアダルトビデオ。確かに、夫犬が勝手にハモニカを吹いて女王様激おこの件では、熱ロウで責められた山口賢二が普通に絶叫してゐる。例によつての確認可能な限りで、愛川まやは新田栄の「痴漢と覗き」第六作「露天風呂篇」(三本とも1991/脚本:夏季忍=久須美欽一)に主演したほか、大御大・小林悟の「女子大生 奴隷志願」(主演:工藤ひとみ/四番手)と、イヴちやん(a.k.a.神代弓子)の妹である家永翔子(a.k.a.竹田愛美)の最初で最後作「巨尻 ぶち抜く!」(脚本・監督:珠瑠美/二番手)に出演してゐる。
 往来する虚実が最終的に何処かへと膨らむなり抜ける、でもなく。さうなつて来ると所詮は漫然とした羅列に止(とど)まる、総じてはいふほどの無茶もしないプレイの数々を、副題と砂嵐とでズッタズタに切り刻む。まるで断裁するかの如くぞんざいな繋ぎに、そこでさう切るのかよ!とその都度軽く度肝を抜かれる以外には、物語的な面白さは絶無で、山賢のところに大穴の開く、俳優部の旨味も大いに物足りない。琴線の触れ処を探すにも俄かには難く、最早ホッケーと乳尻を眺めるほかない、スタージョンの黙示に支配された大山の、山腹から下を成す一山幾ら作。最終章の“新しい一日が始まる”、夫と一泊した友人を普通に送り出したまやが、「さあてお掃除でも」とか伸びをして、玄関に引つ込まうとする一欠片の変哲もない画に、兎に角叩き込まれるFINには起承転結の転部でも平然と映画を強制終了してのける、大御大・小林悟に近い正体不明の衝撃を受けた。といふか転がすところまで辿り着くどころか、起部から満足に起きてない。

 あと、サブタイのひとつに“心暖まる晩餐の時”とあるのは、さういふ用法の時は“温まる”だと思ふよ。


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 「盗撮!!逆ナンパLive ~B98の誘惑~」(1993/受審:新東宝ビデオ株式会社、の筈/監督:浜野佐知、の筈/出演:君矢摩子)。
 芋を洗ふ海水浴場、かと思つたのは人工的に波を作り出した大規模プール。ヴィヴィッドなハイレグ水着の君矢摩子が漫然とほつゝき歩いて、ゐる画が凄まじく唐突に暗転、君矢摩子のみクレジット。再度ほつゝき歩きロングに戻した上で、改めて暗転タイトル・イン。以降あちこちに繰り出す―後述する―オープンの画質が、結構壮絶。
 明けて本篇が突入した先はこれ見よがしに撮影機材の転がる、控室に模した旧旦々舎の煉瓦部屋。ハーセルフの君矢摩子がヒムセルフの栗原良に、尺八をソファーに横たはつて吹く。自らの左腕で半分隠す、栗原良の左太股で潰れた横乳がエクストリーム。最も大事な点ゆゑもう一度いふ、横乳エクストリーム。リョウ―君矢摩子の呼称は栗ちやん―が零す悩みといふのが、セックスを生業にする割と根源的な問題。性のマンネリ化を覚え刺激を求めたリョウは、摩子ちやんが逆ナンパして―旧旦に連れて―来た男との一戦を盗撮する。なる画期的か頓珍漢コンセプトを、空前絶後の我田引水ぶりを爆裂させ発案、摩子も二つ返事で乗る。騎乗位の体勢から仰角に抜いたオッパイが殊更エモい、君矢摩子の超絶裸身に次ぐ二番目の見所は、この件の眩い無造作か無防備なドラマツルギー。三番目の飛び道具に関しても、後述する。
 兎も角、とかいふ方便での配役残り。アバンのプールにて、摩子が捕獲する特徴のないジージャンは森純。モリジュンに遡る、何故か摩子からの接触を断る頭のおかしな奇人は知らん。あと少し遡つて控室の二人を呼ぶ、助監督の声の主も。ボディコンを着装した摩子が、車で送つて貰ふ形で捕まへるゲーターズならぬゲッターズ―ジュリアナ東京の表に駐屯したナンパ師の集合名詞―は樹かず。そし、て。リョウが遂に到達する極北の趣向が、自らと摩子、に摩子が連れて来た素人を交へた巴戦のAV撮影。モリジュンとかずに関しては、一応撮つてゐるだけといふ体。さういふ次第で―実は無駄に出張つた有難味のない―水族館は素通りした摩子に、公園で声をかけて来る関西人は終始首から上にモザイクがかけられて、はゐるものの。モザイク越しの正体が、神戸顕一であるのはすぐに看て取れる。ところで旦々舎と神戸顕一の接点といふのが俄かには記憶になく、調べてみると浜野佐知1993年第五作「変態妻 わいせつくらべ」(脚本:山崎邦紀/主演:小林亜樹)に、内トラで全然事済む程度の、男優部おまけの五番手で出演してゐた。
 確認し得るだけで浜野佐知1994年第一作「本番授業 巨乳にぶつかけろ!」(脚本:山崎邦紀)と、未見未配信の第四作「本番熟女 巨乳わし掴み」(同)主演の君矢摩子を擁した一作、発売日は八月二十五日とされる。
 正直嬌声が些か姦しいのは議論の分れる点かともいへ、スタンダードなプレイに終始する君矢摩子の裸を大人しく愛でてさへゐれば、十二分にも十三分にも満たされる。の、だけれども。その先の荒野に、埋もれた果実を見つけてしまつた、地雷の起爆装置かしら。要は君矢摩子が素人を逆ナンすると称して、思ひきり普通にネームド男優部を集める。よくいへばモキュメンタリー形式は、わざわざツッコミを入れるのも面映ゆいほど限りなく透明に近い。問題は、今日の雨ではなくその面子。改めて整理すると、登場順に森純と副将格の樹かず、そして、御大将・神戸顕一。即ち、当年の第六回ピンク大賞で特別賞に輝いた、神戸顕一率ゐる男優スーパーグループその名も神戸軍団(神戸顕一・樹かず・真央はじめ・山本清彦・森純)から、残念ながら真央元とやまきよは欠いた三枚揃ふスリーカードが、見えないところで火を噴くゼロ番目の切札。君矢摩子×3/5神戸軍団×栗原良(a.k.a.リョウ/a.k.a.ジョージ川崎/a.k.a.相原涼二)、何だこの、闇雲か藪蛇に豪華な布陣。量産型裸映画に於ける、神戸軍団共演作で話を進めると。最も肉迫したのが本名の小林一三名義で樹かずがセカンド助監督についてゐる、池島ゆたか1995年薔薇族込みで第五作「咥へる人妻たち」(脚本:五代暁子/主演:岩下あきら/山・神・真の共演)。次に惜しいのが、本篇には影も形も出て来ないにも関らず、真央元の名前が何故かポスターには載つてゐる深町章1994年第六作「痴漢電車 いたづら現行犯」(脚本:双美零/主演:青木こずえ/樹・神・山の共演)、別に惜しくない。神戸軍団総員出演どころか、カルテット作からどうしても見当たらない。とは、いへ。今作同様のスリー・オブ・ア・カインドとなると、封切り順に池島ゆたか1993年薔薇族込みで第四作「新痴漢電車 指師で開きます!」(脚本:切通理作・五代響子/主演:木戸原留美/神・真・小林一三=樹の共演)と、続く第五作「女子大生 後ろから突き上げて」(脚本:五代響子/主演:岡崎結由/森・真・神の共演)。小林悟1994年薔薇族込みで第五作「スチュワーデス みだらな私生活」(主演:吉行由美/樹・森・神の共演)に、勝山茂雄第二作「ドキュメント 性熟現地妻」(1995/主演:摩子/神・樹・山の共演)と小川和久1995年第七作「最新ソープテクニック ねつとりご奉仕」(主演:早川優美/真・山・神の共演)。野上正義1996年第一作「浮気妻 淫乱同窓会」(主演:貴奈子/真・神・山の共演)と、池島ゆたか1996年薔薇族込みで第三作「わいせつ秘書 肉体ご奉仕」(脚本:五代暁子/主演:神無月蘭/神・真・山の共演)まで、探せばそこそこ見つかりもする。かうして見た限りでは、神顕・マオックス・やまきよの組み合はせが一番多いのと、畢竟、これで全部といふ訳でもないだらう。と、いふか。おかしいな、確か浜野佐知のアダルトビデオを見てゐた筈なのに。


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 「女体サーカス奇譚 囚はれの乳姫」(1992/受審:新東宝ビデオ株式会社、の筈/監督:浜野佐知、の筈/出演:立花未沙・栗原良・平本一穂・杉本まこと)。
 檻の中に、黒パンティと首輪しか身に着けてゐない立花未沙が、鎖に繋がれ寝てゐる。物語らしき物語こそないものの、設定は明確。団長(栗原)と調教師(平本)から主にも何も、全力性的なトレーニングを受け倒す踊り子(立花)を、本格的にメイクしたピエロ(杉本)が心配さうに見守る。通して見終つたのち気づいたのが、よほど口跡に難があるのか嬌声以外、踊り子には一言の台詞も与へられない。いはゆる衝撃のといへば確かに衝撃的な、ラストから逆算した案外論理的な造形であるのかも知れないけれど。
 パケには“変則体位”に“変形結合”、“サーカスFUCK”といつた仰々しい惹句、のみならず。危険行為を真似ぬやう厳禁する注意書きまで躍る、割に。実際行はれるアクロバットといへば、リスクを負ふのは棹、即ち急所を鉄に触れさせる、寧ろ男の方にも思へて仕方のない鉄格子越しの尺八なり後背位なり、体の柔らかさを活かした大開脚程度と虚仮威しぶりのなかなか清々しい一作。立花未沙は八月八日のARZON発売日とjmdb封切日との比較で、五ヶ月弱先行する新田栄の「痴漢と覗き」第九作、「痴漢と覗き ‐下着マニア‐」(1992/脚本:亀井よし子)にも主演。二三番手で何処かに紛れ込んでゐる可能性も否み難いが、現状、確認能はず。
 実は至つて直球勝負に徹するプレイの間隙を縫ひ執拗に挿入される、多分旧旦々舎の庭を原野に模した、低い視点で草木の間を駆けるショット。男優部と絡んでゐなければ基本檻の中で寝てゐる踊り子に、ピエロが忘れぬやう思ひだすやう再三再四促す故郷“ふるさと”。もしかすると何某かの元ネタでもあるのか、踊り子が文字通り獣性を取り戻す、木にバオバブを接ぐオチは流石に読めなかつた、普通に接ぎ木してんぢやねえか。といふか、動物スチールのインサートで事済ます安普請は仕方もないにせよ、些か判り辛い食肉目の足跡は、くどいくらゐ顕示的であつても罰は当たらなかつたのではなからうか。切れ味鋭いのか、鋭すぎて切られてゐるのに気づかないのかは兎も角、弾力感に富んだ乳尻が頗る魅惑的な、立花未沙を実直に嬲るストロングスタイルの濡れ場以外の見所といへば、正直お芝居もしくは目力の全く伴はない立花未沙の起動、ないし回帰に対し、馬鹿馬鹿しいズーム込みで栗原良と平本一穂が戯画的に慄く、微笑ましいオーバーアクト。と、本来踊り子的には本分でもある、カットを跨ぐや否やズンドコ意表を突く、劇的ではないが激越にチャチい激安劇伴を鳴らした上で、適当に煽情的な扮装で立花未沙が踊るシークエンスに於いての、プリミティブか無造作なエロチシズム。反面、耳を塞ぎ難い最大のアキレス腱は、物音をガッチャガチャ拾ふどころか演者の台詞さへバッキバキに割れる、ぼろぼろの録音はもう少し―でなく―どうにかならなかつたものか。


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 「おマタせ!ピザ宅配 特注!スペルマトッピング」(1992/受審:新東宝ビデオ株式会社/監督:浜野佐知、の筈/出演:柴田はるか・栗原良・平本一穂)。
 間違つても美味しさうには見えないピザをカメラが舐め、往来をラッキーピザの配達員(柴田)が、小走りで配達する無造作か原初的なファンタジー。斯くも呑気なピザ屋見たことない、昭和の出前でもチャリンコに岡持ちくらゐ積むぞ。さて措き配達員の固有名詞は劇中呼称されないゆゑ、便宜上、以下ハーセルフの仮名で通す。はるかがミニスカで歩道橋を上がるロー・アングルと、案外斬新なのかも知れないピザの女体盛り、尺八を吹く様をピザの画とのカットバックで連ね、最後は改めてピザにタイトル・イン。タイトルも入れるのに、ピザをもう少し、旨さうに撮れないのかといふ釈然としなさは正直否めない。
 兎も角はるかが辿り着いた配達先が、並のAV部ではまづ撮らせて貰へまい、よもやまさかの東映化学(a.k.a.東映ラボ・テック)。但し、玄関左手の受付は無人。なる状況を、休日出勤した人が云々、はるかの滔々とした説明台詞で語らせる。ピザが不味さうなアバンに続き、てんで技巧を凝らさない導入にも苦笑―と疑問―を禁じ得ない。これ、山﨑邦紀の脚本なのかな。はるかがイマジンする、雷を落とすノーブロック店長役が覚えのない顔だが、もしかして森田一人?位置情報の詳細を頭に入れて来なかつた、はるかが勝手に中に入つて注文主である山田を捜してゐると、思ひきりカジュアルな管理人(栗原良/a.k.a.リョウ/a.k.a.ジョージ川崎/a.k.a.相原涼二)に呼び止められる。配役残り、一段落して登場する山田は平本一穂。東化の四階が、社員寮になつてゐるとかいふワンダーな設定。だからこれ、山﨑邦紀の脚本なのかな、如何せん逐一短絡的か即物的にすぎる気もしなくはない。
 手前味噌で恐縮だがjmdbのデータを別館が凌駕する、確定分だけで浜野佐知1992年第六作「《秘》性感逆ソープ」を皮切りに、同じく浜野佐知の1993年第八作「お姉さんのONANIE」(主演:国見真菜)と、今度は珠瑠美1994年第四作「過激!!同性愛撫 蜜の舌」。更に矢張り珠瑠美の1995年、第一作「痴漢電車 長襦袢を狙へ!」(主演:神代弓子《イブ》)・第二作「出張ONANIE 女課長の携帯バイブ」(主演:赤木佐智=赤木佐知)、そして第三作「人妻痴漢体験-まさぐる-」と、地味に驚愕のジェット・ストリーム・三作連続出演。何気に息も長く、最低六本はピンクに出てゐる―そのうち半分で主演―柴田はるかを擁したアダルトビデオ。なるほど没個性的なルックスが印象こそ薄い反面、口跡はまあまあ手堅い。底の抜けた、台詞しか宛がはれてゐない割に。ちなみに今作、アダルトビデオ通販サイトのARZONによると、発売日は92年の五月二十三日とされる。
 何れも実際に絡みが撮影されるのは旧旦々舎の、管理人はデリバリーを装つた窃盗事件、を口実にしての身体検査。山田も山田で、注文後三十分の制限時間をオーバーした埋め合はせに、「君の―オッ―パイも一緒に食べさせて」。創造性でチンコが勃つのかと開き直らんばかりの、各々清々しく類型的な方便ではるかに手をつける。女の主体性なんぞ正しく何処吹く風、管理人と山田にはるかが体よくヤラれた上、実はハゲ店長がはるかを売つてゐた無体でもあれ、人を食つたか小馬鹿にしたやうな他愛ないオチで締め括る。寧ろ、ミニマムな展開で首の皮一枚物語の体裁を整へると、平素のマシーンもといレイジ・アゲインスト・ザ・マンは一旦棚になほして、直情的な絡みをただひたすら直線的に叩き込み続ける。商業的な実用性に全てを賭けた、それはそれとして誠実な一作。AVにもAVなりの流儀があるのか、オノマトペを多用するほか、まるで脱力しきつた久須美欽一の如くへべれけに惰弱な貌を覗かせる。ピンクで見た覚えのない、栗原良初見のメソッドもそれはそれとして新鮮。単に、忘れてゐたに過ぎなくとも。柴田はるかの裸以外で最も琴線に触れたのが、はるかが山田も抜いた二段落ついたところで、白ブリーフ一丁の管理人が山田の部屋に、堂々とか極々平然と入つて来ては開口一番「君はピザの配達だけでなくて他に何を配達してゐるんだ?」。ど、どわはははは!他人の居住空間に下着一枚で現れる時点で既に大概な狼藉をも、栗原良の漲らせる徒な重厚感で頑丈か無理から固定。よしんば明後日か一昨日なシークエンスであつたとて、形にしてのける強靭な役者力に震へる。それにつ、けても。幾ら何でも底の抜けるどころか、尻子玉を抜く勢ひの超絶下らない言ひ草は、流石に山﨑邦紀の筆によるラインとは思ひ難い。これが、たとへば岡輝男辺りであつたなら逆に全くしつくり来るものの、当時の旦々舎と岡輝男に接点があつたのか、といふ以前に。目下確認可能な岡輝男のキャリアは、そもそも翌1993年以降である。


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 「SUPER逆レイプ 令嬢男狩り」(1992/受審:新東宝ビデオ株式会社、の筈/監督:浜野佐知、の筈/出演:美崎優衣)。
 掴み処のない顔つきの美崎優衣が、ウエディングドレス姿で自らを漫然と乳繰る。暗転して、美崎優衣唯一人クレジット。新東宝テイストな虹色のラメに彩られた、オペラグローブとブラにパンティのみ身に着けた半裸と、とりあへず羽織つてみました的な和服。装ひを換へ適当に乳尻を繋げた上で、再び暗転してタイトル・イン。一応それなりの美人で、均整のとれた美しい肢体は十二分に悩ましい。口跡も決して壊滅的と匙を投げるほどでもない、ものの。微笑みを湛へるといふよりも、単なる薄ら半笑ひ。美崎優衣の凡そ確たる意思を感じさせない、表情がどうにも心許なくてモヤモヤする、性的ではない意味で。
 旧旦々舎和室、和装で花を生ける多分苗字も美崎の優衣(ハーセルフ)に、執事の羽生(平賀勘一)が「もう間もなくですね」。ドラマらしいドラマ―と脚本―の存在に、何となくホッとする。両親を航空機事故で喪ひ五年、当時高校生であつた優衣は、結婚を間近に控へてゐた。優衣と羽生のマッタリした幸福感に水を差すが如く、美崎家の書生(平本一穂)が血相を変へ飛び込んで来る。優衣の祝言に愕然とする平一の脳裏に浮かぶ、座椅子に扮した平一と優衣お嬢様の一戦は、果たして想起した回想なのか、それとも蒸し返した妄想に過ぎないのか。
 クレジット的に全員等閑視される男衆残り、華麗なる第一声が「結婚するつて本当ですか!?」。鮮やかなダ・カーポ感を爆裂させ矢張り飛び込んで来る杉本まことが、平一先輩格の書生・大野。平一同様愕然とする大野いはく、優衣に対し「僕達はどうなるんですか!?」。
 “女はヤサシイだけぢやない!”、“女はヤラセルだけぢやない!!”―原文は珍かな―と、如何にも旦々舎らしい惹句のパケに躍る一作。今後、小屋にて対峙する初見の旧作ないし、新規配信に二番手以降で出て来れば別だが、美崎優衣に、ピンクの出演作はザッと探してみたところ見当たらない。
 平一と大野―は机―が家具であるのに対し、羽生の場合は馬、の役割を交互にスイッチ。執事ならび二人の書生、天涯孤独の令嬢と、屋敷に暮らす男達との情事がひたすらに連ねられる。羽生の口からは“女王様”の呼称が明確に聞こえつつ、“SUPER逆レイプ”とか煽情的に謳ふほど苛烈なプレイが繰り出される訳でもなく、兎にも角にも最も尺が割かれるのは、尺を吹く時間であつたりもする。端から浜野佐知の苛烈な女性主義を担はせるには主演女優が甚だ覚束ない中、さりとていざ絡みとなると美崎優衣の足も漸く地に着き、安定した男優部に品のないメソッドで興を殺がれるでなく、安心して女の裸を楽しんでゐられる安定した一作。絶妙に判然としなくもなかつた、優衣が昼夜で様相を全く異ならせる虚実の別も、同室に四人全員揃つてゐるにも関らず、何故か羽生は参加しない締めの巴戦。白転大乱撃でザックザク雑に繋ぎ倒すエクストリームの果て、羽生が優衣の幸福を祈願する台詞で決着する。それも、兎も角。今回の収穫―かも知れないの―が濡れ場の最中平勘が洩らす、ピンクでは耳覚えのない喘ぎだか呻きを聞くにつけ、さうか、もしくはそれが、いはゆる本番撮影の証左なのであらうか。何れにせよ、甚大なモザイクに粗く塗り潰された向かう側、本番と疑似を見極めるメソッドを未だ当サイトは獲得してゐない。別に、然程ですらなく本気で希求してもゐないけれど。


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 「巨乳拷問 人犬獣倫」(1991/受審:新東宝ビデオ株式会社、の筈/監督:浜野佐知、の筈/出演:真理子・仁村ひとし・吉田正浩)。エンドマークは“FIN”で、薮中劇伴も多用される。
 中折れと広大な面積のウェリントンに、赤いタイを巻いた黒シャツ。全てのアイテムが逆の意味で見事に似合つてゐない、壮絶なスタイリングの主演女優―助演女優がゐるのかといふ話ではある―が、今でいふドヤ顔で廊下を闊歩する。右手の鞭を振り上げた、ストップモーションに真理子とクレジットを入れられ、たところで。三十年以上昔のAV部がノー苗字の真理子だけでは、余程一世を風靡でもして呉れてゐない限り、正直この期に外堀の埋めやうもない。対照的に顔射を浴びたしほらしいアップ挿んで、真理子が二人の男優部に犬の如く引かれるのを尻側から捉へる。改めての、顔射アップが暗転ならぬハレーション転してタイトル・イン。網タイツ越しのオッパイを―サブ―タイトルバックに、“秩序ある生活”。真理子御主人様が、犬男(吉田)と豚男(仁村)を家畜として飼ふ関係性を提示。犬男に持つて来させた、ジョイトイで真理子がワンマンショーに耽る“家畜たちの奉仕”と適当に続いての、“家畜たちの叛乱”。何れかを選ぶやう御主人様に懇願したところ、一笑に付されたのに男優部激おこ。逆上し二人がかりで犯す際、犬男の「女の体はヤラれて感じるやうに出来てるんだよ!」なる台詞には、浜野佐知が全体どんな顔で撮つてゐたものやら、苦笑がてら軽く首を傾げさせられる。
 以降、尺八を吹かせる“女王様の舐め奉仕”。卵を用ゐての所謂WAMを展開する“全身卵黄パック”と、何処に作家の痕跡を望めばよいのか困惑も否み難い、即物的なプレイの数々が漫然と進行。“焦熱の菊座”で熱ロウ責めとアナル×尺八の二穴責めを、しかも豚男と犬男が交互の二連撃。といふエクストリームをも一旦繰り出しつつ、続く次章が“肉壁ワイン洗浄”。割と劇的にパワーダウンもしくはチルアウトしてのける、頓珍漢な構成には祝賀でなく、降伏の意で万歳、それはホールドアップといふ奴だ。そし、て。賽の河原感覚で女体に氷を盛る、“凍える花びら”パートをまるで一時停止感覚で豪快にブッた切り“調教済の女王様”に突入する、凄まじくぞんざいな繋ぎが今作のハイライト、明後日か一昨日にもほどがある。こゝでは真理子が口内に出された精液を、犬男即ち芳正には口移しで返す。最終章が“ある予感”、つげ忠男―次兄が義春―の『ある予感』は昭和61年につき、もしかするとフィーチャーしてゐたのかも知れない。投げ寄越されたウインナーを床で食べた真理子の、何某かが目覚めた気配を感じさせる確かに強い眼差しと、戦慄する犬男と豚男を各々―間抜けな―ズームで抜いた上で、尻は捲られた四つん這ひのチャイナドレスで真理子が不敵に笑ふ姿を最後のカットに暗転、俳優部のみのクレジット起動。豚男と犬男がそれぞれ曰く、「女は矢張り女さ」、「男が主人、女が奴隷」とする歪んだ世界観を再度ブチ壊す物語的な兆しを、一応最後の最後に感じさせはする。ものの、逐一邪魔臭い軽口を叩くのに、わざわざ声を裏返らせる仁村ひとし(=二村ヒトシ)の煩はしいメソッド、以前に。“巨乳拷問”をタイトルで劣情的もとい煽情的に謳ひながら、乳責めらしい乳責めが一向繰り広げられず仕舞ひに終るレス・ザン・画竜点睛、あるいは羊頭狗肉が最大のアキレス腱。


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 「エロ本DX 超お下劣!!練磨変態倶楽部」(1991/受審:新東宝ビデオ株式会社、の筈/監督:浜野佐知、の筈/出演:沢田未菜子・森下亜弥・早瀬理沙・島袋浩・花岡ジッタ)。男優部のクレジットがあるだけ、まだマシなのかも知れない極北感。といふか映像作品に、演出部や撮影部のクレジットがつかない世界。つかなくとて、別に困らない世界に軽く慄く。尤も、受審の新東宝ビデオ株式会社クレジットの有無に関しては、単なる配信に際しての切り具合に過ぎないのかも知れない。あと、何故かといつては語弊もあるが、VHSのパケでは沢田未菜子と早瀬理沙のビリングが入れ替つてゐる、のが何気に理解に難い。
 パイズリを施す沢田未菜子と、ローションを大量に使用しての巴戦を戦ふ森下亜弥に、バイブでワンマンショーする早瀬理沙。クレジットで区切る女優部のハイライトを並べた上、わざわざ“IN”を挿む小癪さはこの際さて措き、これ実は唇?何処なのかよく判らない、人体の極接写にタイトル・イン。物語の予感を一欠片たりとて覗かせるですらなく、淡々と吹き荒ぶ純粋な即物性に震へる。
 “巻頭特集[パイズリ・女上位]”とか、プレイの概要を副題として入れてみせるのはエロ本風味、一々入れてこそのエロ本風味。必要不可欠にして唯一無二、絶対のコンセプト。そこに神が宿るのか否かは知らないし、「見れば判るよ」だなんて、潤ひを欠いたツッコミを脊髄で折り返すのは野暮といふ奴にさうゐない。さうは、いへ。続くパートが“[パイズリ・座位]”といふのに首を傾げてゐると、要は単に男が座つてゐるだけ。更にその次の“[パイズリ・正常位]”に至つては、当然女が下に寝てゐるだけ。木に竹も接ぎ損なふ間抜けなサブタイトルには腰も砕けつつ、沢田未菜子が確かに棹を挟み込み得るポロンポロンのお胸のみならず、御々尻も素晴らしい。表情は・・・まあ、割と覚束ないけれど。正直、ピンクに出てゐないと途端に手も足も出なくなる男優部に関しては、エンド・クレジットが拾つて呉れて助かつた、普通拾ふがな。
 旧旦々舎は世田谷区(経堂三丁目)につき、練馬の所以が謎な純然たるアダルトビデオ。二番手の森下亜弥は浜野佐知1991年薔薇族込みの最終十一作「ザ・虐待 奴隷秘書」(脚本:山崎邦紀)に、早瀬理沙は同じく第二作「痴漢電車 無理やり奥まで」(同)にそれぞれ主演してゐる。
 端的に日程ないし拘束の問題か、百合をも咲かせる森下亜弥と早瀬理沙に対し、沢田未菜子は完全に退場する後半。“Hな「モノ」語り[タマゴ]”と火蓋を切る、まづ普通に服を着た早瀬理沙がTVショッピング感覚でジョイトイ―パケに於ける扱ひは“各種変形小型器具”―を紹介、その後実際に使用してみる。次々都合四品採り上げる件の素頓狂な可笑しさが、精々関の山、にも満たない関の丘。サブタイで仕切る強制操作で、全般的な構成をとりあへず整へはするものの、結局一摘みの挿話さへ終に起動するでなく。半ば動物的なプレイの数々が、漫然と連ねられるに終始する始終は面白くない以前に詰まらなくもない。さうなると、せめてもの救ひは女優部、最後の砦は女の裸、と行きたいところが。首から上も下も覚束ない三番手は兎も角、劇中唯一もしくは辛うじて女優の顔をしてゐる森下亜弥が、乳尻もパンチの効いたポイントゲッター。を、大人しく愛でてゐさせて呉れないのが、ひたすらに安く、兎にも角にも品のないポンコツ男優部。島袋浩がオッパイで挟んで貰ひ、花岡ジッタはハモニカを吹く[パイズリ3P]。花岡ジッタの鼻先であるにも関らず、島袋浩が自らの尻をピシャンピシャン誇示的に叩く、全く以て不要のメソッドが清々しく癪に障る。よしんば浜野佐知がAVを撮る時はAVなりの流儀に沿つたにせよ、二人が間断なく垂れ続ける下卑た無駄口含め、もう少し腐れ男優部に演技指導して欲しい。こんならの自己主張なんて要らねえよ三一、当サイト―の節穴―にはさういふ風にしか映らない。


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 「セクサロイドMIKI ボディコング女王様」(1991/受審:新東宝ビデオ株式会社/監督:浜野佐知、の筈/出演:樹まり子)、浜野佐知のクレジットすらない豪快仕様。但し、女が口内に出された精液を、男に口移しで返すカットは確かに浜野佐知。
 薮中劇伴鳴りつつタイトル開巻、何故王なのか、別に構はないけどさ。旦々舎の煉瓦部屋、ボディコンの樹まり子が強烈なバックライトを背負ひ煽情的に屹立、フェードで全裸に繋ぐ。暗転してスーパー起動、“樹まり子はサイボーグである。”だなどとのつけから弾け倒した火蓋を切る。どうせ山﨑邦紀の仕業だらう、と軽い気持ちで括つた高は、最終的に甚だ怪しくなる。さて、措き。“セックスの為だけに作られた、セクシー・サイボーグである。”と、抜いた底を叩いて割る方便は続く。箍のトッ外れた夥しい量ローションを使用しての、樹まり子が男優部二人を相手にする巴戦。一旦攻守を交替したところで、漸く判明する面子が芳田正浩と平本一穂。乳より寧ろエモい、御々尻のパンチ感が際立つ平本一穂との背面騎乗。の事後、誰か―ローション用の―金盥蹴つ飛ばしてない?コランコラン音がするんだけど。
 今にして思へば、よく斯様な真似が罷り通つたなと往時の無法ぶりに軽く首を傾げなくもない、先行して既にブレイク済みである樹“いつき”まり子とはあくまで別人の、樹“みき”まり子デビュー作。動いていゝぞ公取委、本名でないのなら。どうも怪しいソクミルは今作の発売日を元日としてゐるが、ジャケに躍る“92年は『イイ女』が燃える!”なる惹句を窺ふに、実際には91年の少なくとも後半なのではなからうか。因みに、中村光徳の残りは浜野佐知が撮つてゐる、ピンクに樹まり子出演作が三本―オール主演―あるのは全て“いつき”の方。もしも仮に万が一、記録に残つてゐない二三番手辺りでミキマリコが何処かに紛れ込んでゐたとしたら、流石にそれは巡り合はずには神も知るまい。
 息を吐くやうにフェードを濫用する工夫を欠いた繋ぎと、体位を変へるなり棹を咥へ始めたかと思つたら、ほどなく男優部が果ててしまふちぐはぐな構成。繰り返し繰り出される二点の顕著な特徴に加へ、対芳正の、ケミカルライトを用ゐた一戦。確かに挿してゐるのはモザイク越しにも確認出来るにせよ、数本のケミカルライトのみで照明を賄はうとする市村イズム―ないし矢竹メソッド―は如何せん暗いにもほどがある。僅かに光の当たる局所以外、何がどうなつてゐるのか本当に判らない。といつた具合に、そこかしこ粗がバラ撒かれてゐながらも、何はともあれ樹“みき”まり子の奏でる尺八の音色が素晴らしく、樹“いつき”まり子と比べるとそれは見劣つたとて、オッパイも十二分に悩ましい。ど頭で風呂敷をオッ広げたきりのセクサロイドMIKI、以前に。散発的にイメージが挿入される程度の、ボディコン要素も結構劇的に薄い一種の羊頭狗肉はこの際兎も角、逆にもしくはひたすらに。ゴッリゴリに押して来る何れも実戦的な濡れ場を畳みかけ続ける質も伴つた量で、些末を圧し潰してのける始終はある意味圧巻。浜野佐知ならではの迫力と馬力漲る、極めて実用的な一作。それも、それとして。ラストに至つて“サイボーグまり子は甘く危険な誘惑である。注意されたし。”とか初期設定をこの期に及んでといふか、今際の間際に思ひだしたかと思つたら、驚愕のオーラスが“92年、トップを飾つてデビューした樹まり子がサイボーグであることに気づいた人間はゐない。”、原文は珍かな。そ、そんな(゚Д゚)。新人女優の初陣に、幾ら何でも斬新通り越してあんまりすぎる。船出から、難破かよ。尤も、最初と最後に木に竹を接ぐのが関の山、物語もへつたくれもない薄さでは、クレジットのない以上山﨑邦紀の脚本を当て寸法するのも、流石に些か憚られる次第。

 アダルトビデオ二戦目で己の致命的な弱点に直面したのが、ソクミルのユーザー評には今作に於いて樹まり子は本番を行つてゐるとある、ものの。当サイトには、いはゆる本番と疑似を見極める術がない。刑法第175条の向かう側、果たして何処を如何に見るのがコツなのか。


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 「小泉朝子 淫望」(1989/企画:㈱旦々舎/受審:新東宝ビデオ株式会社/監督:浜野佐知/脚本:山崎邦紀/撮影:稲吉雅志/照明:出雲静二/音楽:薮中博章/ヘアメイク:木村たつ子/出演:小泉朝子・平口広美・平地宏二・直平誠)。
 何故か背景が頗るパッとしない灰色のタイトル・イン、BGMがそれなりに聞こえたのはそれもその筈、何時もの薮中音源を使用してゐるのにほどなく気づく。「江戸時代の暦で、タブーの日に女の洗濯を禁じてゐるのは、おそらく女の髪に関はる霊が、この日勝手に移動するのを押さへようとした陰陽道の知識にもとづくものであらう」―原文は珍かな―と、いの一番に宮田登の『ヒメの民俗学』(昭和62/青土社)を引いてみせる破天荒な先制攻撃に、山﨑邦紀脚本も確定。最終的に、録音と助監督以外あらかた押さへる、ほぼフルサイズのクレジットには軽く驚いた。
 とかいふ次第で本篇開巻は、女が洗ふ髪の斬新なアップ。何が映つてゐるのか、初め判らなかつた。朝子(大体ハーセルフ)が湯を浴び、一方居間では、夫の佐藤学(直平)が晩酌がてらカメラを触る。多分、山﨑邦紀の私物。初戦たる夫婦生活の最中、何か電話が鳴つたやうな気がするのは気の所為か。中途で端折つて“何れかの”朝子が回す洗濯機に、不穏な劇伴が鳴る。同じハウススタジオにしては、綺麗に荒らされた部屋。古のスケ番風にメイクの濃い朝子(以降黒朝子/最初の朝子は白朝子)が黒下着で赤ワインを呷り、恐らく吸へない煙草に火を点ける。白朝子に対する関心を隠さうともしない、野卑な隣人(平地)が回覧板を持つて来る流れで黒バックに“いつもの金曜の朝”。白朝子が洗濯機の、黒朝子は洗面台の水面に各々もう一人の自分がゐる幻影を認め、双方当惑する。
 配役残り、往来に酒瓶を抱へ飛び込んで来る平口広美は、黒朝子を訪ねる情夫。無造作に物音を拾ふガッチャガチャな録音には耳を塞ぐと、面相に比して実は軽すぎる平口広美の発声と、絡みの最中も終始あゝだかうだどうでもいゝ無駄口を垂れ続ける、平地宏二(a.k.a.マグナム北斗)の甚だ下品な造形が今作のアキレス腱。それと小泉朝子以外には直平誠が唯一人、黒朝子に求婚するも相手にされない不能氏で、並行する地平に何れも現れる。
 諸事情につき、ex.DMMなりソクミルに浜野佐知のアダルトビデオが、文字通り十指に余る程度入つてゐるのが判明。となると判つた以上、知つてしまつた以上こゝは行くしかない。果たしてピンク専の当サイト―より直截にいふとピンク馬鹿―に、AVを語る言葉があるのか。至極当然にして原初的な疑念に関しては、気づかなかつたプリテンドで蓋を開けてみる。索引的には発売日の特定出来ないものは、とりあへず当該年の最後に置いておく方向で。
 主演の小泉朝子が、口跡は御愛嬌で単にメソッドの問題かも知れないが、積木を崩した化粧も清々しく似合はない、ものの。本来橋本杏子を砥いだ如き結構な美人の上、いはゆる柳腰に、悩ましく膨らんだお胸がエモーショナルに映える。ウィキペディアには昭和63年デビューの翌、もしくは当年引退とあるが、撮影時期までは不明ながら、jmdb準拠で六月封切りの浜野佐知1990年薔薇族込みで第八作「巨尻 羞恥責め」(脚本:山崎邦紀/主演:中原絵美)に、二番手で出演してゐる。
 パラレルな二つの世界で、ヒロインの対照的な二つの人格が交錯する。最も近作では真梨邑ケイといふビッグネームを擁した「女詐欺師と美人シンガー お熱いのはどつち?」(2015)が記憶に新しい、山﨑邦紀がしばしば用ゐる構成の物語。要は日常をスワップした格好の白黒朝子が、それぞれ元ゐた岸に戻るかに一瞬思はせ、結局風呂敷を散らかしたまゝ振り逃げるのはある意味常套である以前に、“新しい「いつも」が始まりさうな日曜日”と、実は最終章の副題で端から割つてもゐる。他方、浜野佐知らしい主体的な女性主義としては、明らかに起きてゐる異変を認識した黒朝子―白朝子は狼狽へるばかり―が、「アタシが信じてるのはこの肉体だけよ」と美しい裸身を誇示する。濡れ場的には元来これ以上踏み込みやうもない旦々舎にあつて、フェードで体位を転換する適当な繋ぎを濫用する以外には、案外通常運行。案外といふか、寧ろ想定の範囲内、であつて然るべきとでもいふか。思ひのほか手堅い画作りが、それもまたその筈。先に触れた概ね網羅するエンド・クレジットに目を通して納得、何処かから連れて来た馬の骨的な面子で茶を濁すでなく、思ひきり本隊の主力が出撃してゐる。考へてみれば、さういふ脆弱な布陣は浜野佐知の職人気質、ないし矜持が許さなかつたにさうゐない。1mmも面白くなかつたらどうしよう、正直その手の危惧あるいは杞憂も事前に覚えなくはなかつたが、この分だとさうでもないやうだ。なので俄然このまゝ、先に進む。


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 「裏の後家さん 顔射シャワー」(1993『未亡人 シャワーonanie』の2006年旧作改題版/製作:旦々舎/提供:Xces Film/監督:浜野佐知/脚本:山崎邦紀/撮影:河中金美・松本治樹・阿部二郎/照明:秋山和夫・石田政慶/音楽:藪中博章/編集:㈲フィルム・クラフト/助監督:女池充/制作:鈴木静夫/ヘアメイク:小川純子/スチール:岡崎一隆/録音:銀座サウンド/現像:東映化学/出演:YUKO・章文英・RAIRA・栗原良・平本一穂・池島ゆたか)。
 音効先行で肉感的な女がネグリジェを着たまゝシャワーを浴びる、早速、颯爽と走るジャスティス。濡れた薄布越しに透けるヤバいオッパイに俳優部からクレジット起動、乳尻を堪能させた上で、暗転タイトル・イン。明けて肌着も外した完全な裸を、スタクレが追ふ。ボガーンと威圧的な爆乳に対し、案外コンパクトにまとまつたおヒップ始め、締まるところは締まつてゐるのが素晴らしい。素晴らし、かつたのだけれど。結論を先走るとアバンからタイトルバックまで、実は女の頭部を頑なに抜かない不自然な態度ないし賢慮に、その時点で気づくか立ち止まるべきであつた模様。
 劇伴も起動してスーツケースを引く御々足から、上にティルトするとあれゝのれ?広大な面積のおかめ顔に、漆黒の暗雲が立ちこめる。結構画期的な大きさの巨乳よりも、顔面の方が更にデカい。多分新宿ら辺のビル群を見渡した苗字不詳の悠子(YUKO)が、「Hoo,What a fucking amazing!」と感嘆する―この人はどんな僻地から出て来たのか―のに“まあ、すごい…”と日本語字幕が入る予想外のギミックには、果たしてこの映画は大丈夫なのかと度肝を抜かれた。大丈夫では、なかつたのだけれど。一方旦々舎本丸、正確には当時、もしくは旧旦々舎本丸。垣原家家長の久伸(池島)と次男の陽一(平本)が碁を打ち、結婚し既に家を出てゐる長男の辰夫(栗原)は、一人縁側に離れ煙草と缶ビール。男の休日の、ステレオタイプが清々しい。兄弟と血の繋がりはない、久伸の後妻・啓子(故人)の親子ほど齢の離れた一番下の妹が、アメリカで結婚生活を送つてゐたものの、配偶者が交通事故死し帰国。暫く垣原家に置いては貰へまいかといふ相談を、受けてゐる旨久伸が息子達に切り出したタイミングで、当の悠子が現れる。後述するアキレス腱はさて措き、実は啓子に対する思慕を未だ引きずる辰夫は、父と弟が歓待する傍ら軽く苛立つて実家を辞す。ところで辰夫と陽一の母親に関しては、爪の垢ほども語られない。
 配役残りノンクレで飛び込んで来る鈴木静夫は、辰夫行きつけの店のバーテンダー。内装がえらいゴージャスなのだが、旦々舎本丸同様、借り賃の発生しないリアル店舗なのかな?栄の誤字でなく本クレ・ポスターとも章文英の章文英は、辰夫の妻・由峡江。辰夫の啓子に対する想ひをア・プリオリに、観客なり視聴者は余所に予め知る。YUKO共々、漠然とした名義のRAIRAは、陽一の彼女・宮島詩織。いつそ栗原良もリョウで出撃すればよかつたのに、何が望ましいのかよく判らんが。
 ソクミルに残された僅かなフロンティア、浜野佐知1993年第二作。待つてるぜ、エク動。
 悠子が風呂に入る度エクストリームなシャワーonanieに耽るのが、夫と死別して以降の癖と新日本映像公式サイトのストーリー紹介にはありつつ、劇中さういふ描写は一滴(ひとしづく)たりとてなく。辰夫がハードに肉感的な義母に拗らせる劣情も、濡れ場がてらイマジンのひとつでも放り込んでおけばいゝものを、外堀を満足に埋めようともしないまゝ、適当に始終は進行して行く。のが、先に触れた今作のアキレス腱。致命傷については、改めて後述する。悠子が順に陽一に辰夫、そして久伸とも寝る逆ジェット・ストリーム・アタックの果て、陽一は勃起不全。辰夫は由峡江と向き合ふ障碍となる、疑似近親相姦的な横恋慕。当然、久伸の場合は啓子との記憶、ないしは喪失。男三人が抱へる各々の問題を解消したところで、流れ的には何となくまとまつてゐなくもないとはいへ、垣原邸にやつて来た時と同様、藪から棒に悠子は再びアメリカに戻ることにする。そもそも何しに来たのか知らないが、木に竹を接ぎに帰国したのかこの女。一応男衆を煙に巻く程度に自由ではあれ、結局も何も要は端から、悠子の主体性は曖昧模糊どころか五里霧中に覚束ない仕舞ひ。少なくとも、フランク―もしくは無節操―に男好きであるのは酌める。由峡江と詩織もそれぞれ辰夫と陽一に寄り添ふだけの従順な女に過ぎず、浜野佐知が今なほ頑強に吠え続ける、ミサンドリーと紙一重といふか、概ね表裏一体の攻撃的な女性主義は何故か珍しく影を潜める。さうなると物理的な意味に於ける造形のクオリティが、首から下と上とで綺麗に反比例する主演女優が親子三人、男優部を喰ひ散らかすだけの映画が関の山。栗原良十八番の徒な難渋さも稀薄な展開の中さほどでなく活きて来ず、垣原家のロケーションを旦々舎本丸で撮影してゐる点を除けば、旦々舎らしさといつても轟音の煽情性くらゐしか見当たらない。にも関らず、カメラがYUKOのある意味豪快な面相を捉へてしまつたが最後、画が木端微塵に砕け散るのは不可避。となるとビリング頭の顎のラインが、文字通り生死を分つ境界線として機能する、稀有な形でスリリングな一作。YUKOの御尊顔は地雷の起爆装置か、といふのが改めて後述するとした致命傷。まるで悪魔と契約してルックスと引き換へにボディを手に入れたかのやうな、エクセスライクの極北をもブチ抜くYUKOが再び新日本映像公式に拠ると、高校を出て語学留学後、アメリカのポルノ業界に飛び込んだとか雲を掴むやうなイントロが書かれてあるが、如何せん兎にも角にも灰汁が強い。ブルータルな乳の暴力さへあるならば、ほかには何も要らない。針に糸を通す覚悟でエモーションをその一点に集中するか、YUKOのどすこいな力士面の反照で殊更に光り輝いて映る、扱ひに然程差のない二番手三番手を束の間愛でるかの二者択一。取りつく島は、その辺りにしかないのではなからうか。

 最早どうでもいゝツッコミ処ですらないが、新題上の句いはく“裏の後家さん”の裏とは、全体何処の何方(どちら)さん視点なのよ。そもそも旦々舎の裏に誰が住んでゐるのか以前に何があるのか、描かれてゐた例なんて覚えがない。幾らエクセス仕事とはいへ、適当にもほどがある。


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