真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「性獣のいけにへ」(昭和59/製作:オフィスツー/配給:新東宝映画/監督:麿赤児/脚本:丸山良尚/製作:大阿久和夫《オフィスツー》/撮影:長田勇市/照明:長田達也/助監督:東山通・岩永敏明・高橋博/撮影助手:小川真司/照明助手:上田成幸/音楽:太田洋一/編集:鈴木歓/録音:銀座サウンド/現像:東映化学/スチール:岡本昌己/衣裳協力:自前多数・感謝/製作補:大塚聖一/タイトル:日映美術/製作協力:大駱駝艦、大鯨艦、シアター・パラダイス、保苅藤原設計事務所/出演:花真衣・紫衣名・伊藤清美・沙覇羅ナナ・古川あんず・三宅優司・行田藤兵衛・束間燃・田村哲郎・大杉漣・松田政男《友情出演》)。衣裳協力クレジットのオネストに草。
 深い森の中、旧日本軍の軍服を着た大杉漣が女をうねうね拉致。家財道具一式抱へ、男と女が線路の上を逃避行。木々の間から、男が女を負ぶつて出て来る。西部劇のロケーションのやうな土手、何某か弦楽器を抱へた男を乗せた乳母車を、女が押す。一般映画はだしの四ショットを叩き込んだ上で、改めて深い森の中に競り上がつて来るタイトル・イン。過半数手も足も出ない俳優部に先に白旗を揚げておくと、一組目と二組目の女が、紫衣名と沙覇羅ナナなのだけれど何れが何れなのか特定出来ないのが最大のアポリア、ビリング推定だと紫衣名が一組目。アバンでは遠過ぎてまるで見えないが、花真衣と伊藤清美が四組目と三組目の女。行田藤兵衛・束間燃・田村哲郎の三人が、多分二組目から四組目の男、正直もうどうしやうもない。
 Y字の三叉路の集合部で、学生服のミハシ(ビリング推定で三宅優司?)がトランクに腰を下ろしてゐる。そこに通りがかつた二組目の伊達男と女に、ミハシは下宿屋・カワモトの道を尋ねる。辿り着いたミハシを、軽く白塗りのカワモト由紀子(紫衣名?)が出迎へる。カワモト邸は隙間だらけで、漏れ聞こえる物音に誘はれミハシが二組目の伊達男が女を手篭めにする現場を覗いてゐると、部屋に入り込んで来た由紀子の兄と称するタカシ(大杉)は、女・タマエ(沙覇羅ナナ?)と伊達男は夫婦で、手篭めにするのも何時もの夫婦生活であると伝へる。ミハシの階下に住む花真衣の連れの男は両足を失つた傷痍軍人で、フクザワの連れの女・シズエ(伊藤)の、心臓には穴が開いてゐた。そしてただの仮住まひを求めた学生などではなく、何事か任務なり大義を帯びたらしきミハシも、一丁のオートマチックを所持してゐた。
 出演者残り松田政男は、カワモト邸の庭にてミハシとミーツする刑事。プロテクター舞踏を披露する古川あんずは、本物のカワモト由紀子。プロテクター舞踏に至る顛末が、一ヶ月に亘る監禁凌辱の末にさうなつたとかいふ方便が、白々しい実も蓋もなさが笑かせる。因みに古川あんずと田村哲郎は、この時遠く既にex.大駱駝艦。
 如何なるものの弾みか話の転がりやうか、昨今は大森立嗣・南朋兄弟の父親としても知られる麿赤児唯一の映画監督作が、しかもピンク。一癖二癖どころでは済まなさうな男女が集ふ浮世離れた館に現れた、拳銃持ちのセイガク。やがて官憲も介入し、謎が謎を呼ぶ、といつて、通常のミステリーが繰り広げられる訳では、別にない。片仮名にせよ平仮名にせよ、“アングラ”の四文字で括られる領域の空気に支配された始終は、通常か明確な起承転結の構築は、恐らく最初から志向してゐまい。二三四組目が愛欲に溺れる形で、花真衣と伊藤清美をも擁し濡れ場も回数だけならば設けられるものの、これ本当に三百万で撮つてゐるのか甚だ疑問に映る、下手に重厚な撮影と、男優部中唯一覚えのある大杉漣が本格的な絡みに参加しない逆説的な配役も勿論響き、直線的な煽情性には甚だ遠い。ミハシがカワモト邸にやつて来た目的が終ぞ明らかとならないのはまだしも、また選りにも選つてこの野郎の口跡が如何せん不安定で、要の台詞が所々聞き取れずただでさへ劇中世界に重く立ち篭めた霧を、なほ一層深くする始末。当時的にはこれで最先端であつたのやも知れないが、この頃のシンセによるペラッペラの劇伴も、今となつてはキツい。完全に諸手を挙げたのは、その時点では全く意味不明―また偽由紀子も軽く白塗るものだから識別に難い―であつた、タカシが体の表に鉄板を装着した完白塗りの女を責める一幕。ぱぱぱぱで「星条旗よ永遠なれ」をがなる大杉漣に後ろから突かれる古川あんずが、朗々とドイツ語で「歓喜の歌」を熱唱し始めるに至つて、潔くか力尽きて完敗を認めた。兎にも角にもつもりが判らぬゆゑ、新東宝が頭を抱へたかどうかは兎も角、小屋は匙を投げたにさうゐない頓珍漢作。量産型娯楽映画の荒野に毒々しく咲いた、一輪の徒花である。


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 「異常暴行 美肉ぐるひ」(1992『女子大生監禁 バイブ地獄』の1998年旧作改題版/製作:旦々舎/提供:Xces Film/監督:浜野佐知/脚本:山崎邦紀/撮影:河中金美・田中譲二・植田中/照明:秋山和夫・宮内倫史/音楽:藪中博章/編集:《有》フィルム・クラフト/助監督:杉山正弘/制作:鈴木静夫/ヘアメイク:小川純子/スチール:岡崎一隆/録音:銀座サウンド/現像:東映化学/出演:露木陽子・深乃麻衣・五月純・栗原良・芳田正浩)。
 大写しの女の舌舐めずりにクレジット起動、片や、街行く女々に声をかける芳田正浩。女が男の乳首にキスマークを残し、芳田正浩は“君の人生が変る話”とあんまり殺せさうにはない殺し文句で、モデルのスカウト然と女々に声をかけて回る。女は男の首筋も舐め、舌と舌を絡める。ロケーション的には新宿か渋谷か何処ぞの映画館街、一人も捕まらない芳田正浩が苛立たしげに上着のポケットから取り出した二つの銀色のローターを、掌の中でチャカチャカ回してタイトル・イン。ここまで開巻実は、その人と知れる形では芳田正浩しかフィーチャーしてゐない。
 女子大生の美咲(露木)が、パパさんの本郷(栗原)に旦々舎名物ブリ尺ことブリーフの上から口唇性行、見てゐるリアルタイムで思ひついた。栗原良が露木陽子の顔の上に体を移すのは、下から大股開きでグイングイン腰を振るグラインド込みで、豪快に煽情性が爆裂する斬新な体位あるいは画かも。一方、芳田正浩(以後芳正)は三番手を何となく捕まへることに成功。その際資料と称して女に見せる、コンパニオンの3万円~8万円からアダルトビデオの100万円~200万円まで諸々記載されたモデル別ギャラ一覧表中、ウェデイン―グ―ドレスなるポップな脱字が微笑ましい。フィニッシュまで力強く走りきる美咲と本郷の一戦に並走して、芳正はまんまと車に乗つた三番手をハンカチに染ませた何某かの薬物で水のないプール。檻の中に監禁された三番手は命惜しさに体を開き、どうやら、幼少期に目撃した張形で自慰に耽る母親(露木陽子の二役)の痴態にトラウマを派手に拗らせると思しき芳正は、こんなもんで感じるんぢやねえよと腹の中で慟哭しながらバイブで責める、やゝこしい男だ。
 愛人の性欲の強さに白旗寸前の本郷と、そんな情けないパパさんに臍を曲げる美咲の姿を噛ませた上で、配役残り右の胸元に薔薇の刺青のある深乃麻衣は、兎に角有名になりたくてアダルトビデオであらうと何だらうとザクザク芳正のキャッチに乗る二番手。勿論、三番手同様檻の中に直行する。
 薔薇族込みで浜野佐知1992年全十二作中第十一作のDMM戦、残弾数は僅か一。未だ地元駅前ロマンに着弾してゐないデジエク復活作含め今後の新作と、エクセスがDMMでも見られないド旧作を小屋に放り込んで来る気配もあるにせよ、なかなか以上に厳しいところではある。昭和・平成と、再来年からのその次。浜野佐知にはシレッと元号を三つ跨いで、ピンクを撮り続けてゐて欲しい。目下その可能性を保持するのは浜野佐知のほか今上御大に、渡邊元嗣と関根和美。全員普通に達成してる気も、しなくはない。
 二三番手の最終的な去就は綺麗に等閑視したまゝに、芳正は母親と瓜二つの美咲と出会ひ、当然捕獲する。手も足も出しやうがない本郷は蚊帳の外に、性豪ぶりを誇る美咲と舌を巻く本郷の相対なんぞ完全に何処吹く風、映画は監禁ものに完全に軸足を移す。となると適当な文言を並べただけで意味は殆どない新題よりも、映画の中身に全く即した旧題の方が断然判り易い。
 監禁ものに移行したら移行したで、特段新味にも踏み込みにも一見欠いた展開は、終盤二度弾ける。芳正のローター責めに、美咲が失神。すると芳正は生きてはゐるけれども意識的に反応しはしない肉体に、“眠れる美女”だ“生きてるマネキン”だ、“血の通つたダッチワイフ”だと垂涎狂喜。今なほ山﨑邦紀の中で脈々と息づくピグマリオン・コンプレックスの、プリミティブな萌芽が興味深い、更に先立つものもあるのかも知れないけれど。山﨑邦紀に続いて、今度は浜野佐知が面目躍如。一旦覚醒後、再度水のないプールに沈められさうになつた美咲は、「何度も同じ手を喰ふと思ふの?」と華麗に大逆襲。「貴方生身の女が怖いんでせう」、「私みたいなスケベな女」と剛球をドッカンドッカン放り込みつつ美咲が騎乗位でガンガン気をやり芳正を制圧するのは、浜野佐知かく戦へりを叩き込む文字通り女性上位の十八番。平板な監禁ものがラスト十分で大化けしたと、その時点にあつては括目した。括目してみた、ものの。絡み要員どころか、どうやら壊れて母親になつたらしき芳正の去就も矢張り殆ど等閑視した上で、残り尺を自力で帰還した美咲と―ただ仕方なく待つてゐた―本郷の締めの濡れ場で堂々と駆け抜け、後には何にも残さない映画的に無体な結末は、ある意味量産型娯楽映画らしい無頓着なドライさが清々しい。


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 「制服挑発 下着の奥」(1992『制服ギャル 下着大図鑑』の1999年旧作改題版/製作:獅子プロダクション/提供:Xces Film/監督:笠井雅裕/脚本:瀬々敬久/撮影:下元哲/照明:伊和手健/編集:酒井正次/助監督:今岡信治/監督助手:原田兼一郎/撮影助手:小山田勝治/照明助手:広瀬寛己/スチール:佐藤初太郎/録音:銀座サウンド/現像:東映化学/出演:佐倉ちひろ・浅野桃里・桜井あつみ・久須美欽一・杉本まこと・池島ゆたか・佐野和宏・広瀬寛己・飛田翔・佐藤宏・小獅子)。出演者中、広瀬寛己以降は本篇クレジットのみ。寛巳でなく寛己なのは、クレジット通り。
 タイトル開巻、窓の中から抜いた街景に、嬌声が被さる。カメラがパンすると、吃驚するくらゐに綺麗なTバックの尻。主不在の零細芸能プロダクション「浅見企画」、何故かナース服を着たアイドルくずれの演歌歌手・羽生沙耶(浅野)と、歌手くずれのマネージャー・稲田ケンジ(佐野)の開巻を飾る一戦。ダボッとしたジージャンが80年代の残滓を引き摺る佐野和宏のファッションには目を覆ひつつ、どうやら本当に演歌系の芸能プロらしき、ロケーションは全体何処なのか。何時の間にか日も暮れて、繁華街に大きなキャリーバッグを引き如何にも上京して来ました風情の佐倉ちひろ。社長の浅見(池島)が帰還するも、大絶賛事後にも関らず沙耶と稲田は衣装探しを方便に悪びれるでもない浅見企画に、九州旅行中に浅見が歌声に惚れ込み口説き落としたバスガイド・鷹栖幸子(佐倉)が現れる。見るから垢抜けない幸子を沙耶は小馬鹿にする一方、浅見は幸子と沙耶を組ませての、演歌界初の制服デュオを目論む。幸子のバスガイド姿は兎も角、ところで沙耶はどうして看護婦なのかといふ何気に根本的な疑問に対しては、最後まで一欠片の解答も提示されない。
 出演者残り杉本まことは、幸子が東京での宿を頼る今井タクロー。関係性を一切語らず―後述するリカに、今井が幼馴染と釈明―その夜に突入する濡れ場には、ルーズな作劇に匙を投げるばかり。桜井あつみは、一悶着経てションボリ帰つて来た幸子を更なる絶望の底に叩き落す、実は今井の婚約者・大森リカ。この人の制服は、制服のまゝ男の家まで来た客室乗務員といふ豪快な寸法。三番手にヒロインの傷口に塩を塗らせる用兵はそれなりに秀逸にせよ、要はコスプレといふエクセスからの御題に対し、造形に上手く組み込まうとする工夫を覗かせたのは幸子のみで、二三番手に関しては力技でしか対応してゐない。広瀬寛己は、今井宅から飛び出した幸子の、歌を褒めて呉れるルンペン。この件のガード下のロングや、終盤、稲田の置手紙を読んだ幸子の目が据わつたショット。画的な文字通りの見所は、ちらほらなくもない。久須美欽一はオリオンレコードからデビューの決まつた幸子を、浅見が売つた作曲家の先生かプロデューサーとかその辺り。その他多分佐藤宏がアダルトビデオ監督で、絡み推定で飛田翔が男優。恐らく獅子プロ内トラの小獅子―それ以上は特定不能―は、稲田のギターで流しのプロモーションに出撃した幸子に、ピンサロ感覚で手を出す性質の悪い酔客か。
 滝田痴漢電車を観に行くと大体な確率で名前を見かける笠井雅裕は、獅子プロで約十年の助監督修行を経て、何のものの弾みかロマポばりに尺の長い「いんらん姉妹」(昭和63/新東宝)でデビュー。以来新東宝とエクセスでピンク十四本と、ENKで薔薇族を二本監督。今作は1992年第二作にして、ピンク映画最終作。因みに橋本杏子―この人と杉原みさおの、齢の取り方には少なからぬ衝撃を受けた―の元夫としても知られる笠井雅裕がハシキョンと結婚したのはピンクから足を洗ふ前年のことで、自身の会社を興した笠井雅裕は、AV戦線で今なほ現役である。
 脚本が瀬々敬久だからといつて、しかもエクセスで徒にポリティカルな方向に振れてみせるでもなく、歌を全然聴いて貰へない幸子が煽情的な赤の下着で流してみたところ一時的に好評を博したり、アイドルに返り咲くと息巻き浅見企画を飛び出した沙耶が、選んだ道はAVアイドルであつたりだとか、浪花節か雑草系の奮戦記的には全く順当な、順当過ぎて殆ど平板な展開に終始。沙耶に連れられる形で浅見企画と袂を分つた稲田が、社長とのキャンペーンの最中、ラジカセが故障してオケが止まつた幸子の窮地に、様子を窺つてゐた物陰からギターを抱へて飛び込むベタなシークエンスは、何で稲田が一々ギターを持参してゐたのかさへさて措けば佐野和宏の突破力に支へられ軽くグッと来る。となると、といふか兎にも角にも苦しいも通り越し十二分に致命傷たり得るのが、滑舌に影響を及ぼすほど顔の曲がつた主演女優のエクセスライク。録音スタジオにて幸子が久須りんに手篭めにされる一幕、あまりにも発声が不安定で、バルタン星人ばりにビブラートする悲鳴には腹を抱へた。当然、全篇を貫く歌唱の方もお察し。桜井あつみも桜井あつみで所詮はオッパイ頼りの御愛嬌ぶりで、まともな女優が浅野桃里一人きりの脆弱な三本柱は、オーソドックスな娯楽映画のセンで攻めるには如何せん厳しい。ある意味、プロフェッショナルの矜持を持つ沙耶が何処の馬の骨とも知れない幸子を軽視する構図と、実際の浅野桃里と佐倉ちひろの立ち位置が綺麗に相当してゐるともいへ、斯様に屈折してゐるのかゐないのかよく判らない配役が、下手にハマッてみたところで始まらない。幸子と稲田が付くのか離れるのか、グダグダ右往左往するキレの悪いラストまで登場以降始終佐倉ちひろに支配され、この時既に、笠井雅裕はピンクに留まる情熱を失つてゐたのかしらんとすら邪推しかける、挽回の気配なり気骨を感じさせない負け戦である。


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 「女囚101 性感地獄」(昭和51/製作:日活株式会社/監督:林功/脚本:久保田圭司・大原豊/プロデューサー:海野義幸/撮影:山崎敏郎/照明:新川真/録音:秋野能伸/美術:柳生一夫/編集:井上親弥/音楽:多摩零/助監督:高橋芳郎/色彩計測:田村輝行/現像:東洋現像所/製作担当者:服部紹男/出演:珠瑠美・山科ゆり・丘奈保美・牧れいか・木島一郎・織田俊彦・浜口竜哉・森みどり・梨沙ゆり・嬢沙菜恵・飯田紅子・野村真樹・雪丘恵介・玉井謙介・谷口えり子・伊豆見英輔・小泉郁之助・橘田良江・北上忠行・小見山玉樹・影山英俊・水木京一・近江大介)。出演者中、雪丘恵介から伊豆見英輔と、北上忠行以降は本篇クレジットのみ。クレジットはスッ飛ばす配給に関しては、事実上“提供:Xces Film”。
 三年の実刑判決を喰らひ、愕然とする珠瑠美の馬面を左に置き、右半分を大書で埋め尽くすタイトル・イン、完璧な強度の画面設計には惚れ惚れさせられる。
 珠ならぬ多摩女子刑務所、妙に場慣れしたズベ公達からは一応浮いた萩村佐夜子(珠)は―何故か100は欠番の―101号の番号を頂戴し、99号パン女の志村紀代美(牧)らとともに、内藤珠江(丘)が房長の24房に入る。一同をドン引きさせる佐夜子の罪状は、ズバリ殺人。夫の勇治(織田)を送り出した直後に押し入つた暴漢(小見山)を、小夜子はネクタイで絞殺。激しく抵抗するどころか、まさかの返り討ち。但しそもそも小見玉は、小夜子の浮気をでつちあげて離婚に持ち込まうとした、勇治の姦計の弾だつた。
 別に大した物語もないゆゑ大体登場順にサクサク配役残り、橘田良江・木島一郎・浜口竜哉は女看守の牧村和美と看守主任の鮫島に、多摩女子に常駐するハンサム医師・肥沼、ハンサムにはハンサムぽい名前つけたれよ。山科ゆりは24房で珠江中心の輪からは外れ、馴染めぬ同士で佐夜子と仲良くなる小林ユキ。森みどりは24房最年長、既にアガッた佐川スギ、梨沙ゆり・嬢沙菜恵・飯田紅子・谷口えり子はその他女囚要員。女優部ならぬ女囚部は、風呂だ何だで全員脱ぐ。北上忠行は懲罰房で佐夜子を犯す看守の田中、玉井謙介と近江大介はその他看守。野村真樹が、勇治の浮気相手・川島マキ。社長の娘をオトして、高級クラブの店長の座につかうとかいふセコい寸法。とこ、ろが。人を呪はば穴二つ、影山英俊は、佐夜子を捨てた勇治も捨てる、マキが乗り換へるプレイボーイ。ムービーウォーカーにも記載のない水木京一は、生後二ヶ月のサキコを死なせたクズ亭主、恐らくユキに殺される、小泉郁之助は多摩女子所長。雪丘恵介は、これで絡みで締めてるラスト・カットを介錯する年配、多分お金持ち。最後に刑事役とされる伊豆見英輔が、刑事が何処に出て来たのかからよく判らない。
 翌年もう一本の女囚101「女囚101 しやぶる」(昭和52/監督:小原宏裕/脚本:松岡清治/主演:谷ナオミ)とは、森みどりが丸つきり同じやうな役で出て来る以外には、一欠片たりとて掠らない林功昭和51年第四作。もう一点、“性感地獄”だ“しやぶる”だと、辞書を開いて目に入つた単語をつけてみたが如く、適当極まりないタイトルも共通してゐる。
 女子刑務所と来れば百合の花咲き、淫湿もとい陰湿な苛めが横行する。遠く過ぎ去つた時代の色合ひ以外には、これといつた見所を探すのも難い一作ながら、仮に量産型娯楽映画の神髄を類型性に求めるならば、今作のやうな純然たるフォーマット映画こそがその鑑であるとする強弁も、やらうと思へば出来なくもないやうな気の迷ひも、しないではない、せんでええけど。徐々に株を上げる佐夜子と、派手に撃墜された珠江が、前段珠江のハチャメチャな大暴走込みで対峙するのが、残り尺考へると些か早過ぎやしないか?と訝しんでゐると、ラストといへば誰か殺さないと気が済まない乾燥したセンスと、無様に破滅に至る男の一方、女は逞しく生きる的な、まるで脊髄反射か自動出力で脚本を書いたかのやうな清々しいほどに心のこもらないオーラスが、グルッと一周して琴線に触れる。何となくか、やんはりと。


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 「めぐる快感 あの日の私とエッチして」(2016/制作:ナベシネマ/提供:オーピー映画/監督:渡邊元嗣/脚本:山崎浩治/撮影・照明:飯岡聖英/編集:酒井正次/助監督:永井卓爾/監督助手:小関裕次郎/撮影助手:猪本太久磨・岡村浩代・磯崎秀介/スチール:津田一郎/録音:シネキャビン/効果:梅沢身知子/仕上げ:東映ラボ・テック/協賛:GARAKU/出演:星美りか・里美まゆ・横山みれい・橘秀樹・小滝正大・ケイチャン)。
 モノクロ無声映画風味の開巻、上野の王比伊神社。何時の時代か、浴衣姿で縁結びのお百度参りに励む彩香(星美)に、願ひが叶つて和服の修平(橘)が指輪を贈る。装ひと求婚の風俗との齟齬如きさて措き、威圧的なまでに胸元をいはゆるロケット型に盛り上げる、星美りかのオッパイが凄え。そして現代、UFOは未来人の乗つたタイムマシンだ何だと他愛ないムー話に盛り上がる、彩香と凜香(里美)の片桐姉妹に加へ、大森修平と川島司(小滝)の大蔵大学都市伝説研究部の面々。今はその手のネタも、ミミズバーガーやラジオ体操第4と十把一絡げに都市伝説に括られるのか。因みに小滝正大(ex.小滝正太)は、「熟妻と愛人 絶妙すけべ舌」(2012/監督・脚本:後藤大輔/主演:春日野結衣)から四年ぶりのピンク復帰。彩香の、過去にメールを送るといふ思ひつきにヒントを得た修平は、司が学ランの下に着る白Tにやをら数式を書き殴り始める。アルプス一万尺の二番を手遊び込みでフルコーラス噛ませた上で、夢を追ふ将来を熱く語る修平に彩香がウットリしてタイトル・イン。往々にして渡邊元嗣が仕出かす、下手にデジタルな安つぽいタイトル・インはどうにかならないものか。フィルム時代から、元々頓着ないのか酷い時はスッカスカな手の抜きつぷりに逆の意味で驚かされることもあつたが。
 三年後、普通に就職した彩香に対し、修平は発明と起業の準備期間と称して、姉妹が同居するマンションの一室にどう見ても自堕落に寄生。片や凜香が挙式間近の司は一流企業で順調にコースに乗り、ヒモを抱へ煮詰まる姉とは対照的に妹は玉の輿をゲットしつつあつた。こんな筈ぢやなかつた感を拗らせる彩香のスマホに、“過去の自分にメールを送れるサービス”との「過去ポスト」なる正体不明のアプリが着弾する。戯れに彩香が過去の自分に修平とは付き合はぬやうメールを送つてゐると、世界的なIT起業「リンゴ社」代表取締役のスティーブ・成仏(名刺オチで一切登場せず)に、SNSを介して認められた朗報を持つて修平が現れる。双方感激した流れで突入する絡み初戦、ミッチリ完遂したのち満ち足りた彩香がフと傍らを見やると、隣にゐるのは修平の筈が何と司。事後の軽い後悔がまんまと当たり、彩香が過去ポストで昔のメルアドに送信した忠告メールによつて、現在の歴史が変つてしまつてゐたのだ。
 配役残り、二作続けてトメを譲つた横山みれいは、多分寿退社済みの彩香が愛妻(予)弁当を届けに向かつた司と、見るから怪しげに逢瀬するバツイチ子持ちの先輩・重森紀子。「本気の恋でも潔く身を引くのが年上女の心意気」が、男をオトす必殺の殺し文句。クローゼットの中からラストに文字通り飛び込んで来るケイチャン(ex.けーすけ)は、ドッペルならぬドッピュルゲンガー。斯様な駄中の駄洒落をどさくさ紛れでも何でも形にし得るといふのも、確かにさうさう得難いタレントではある。
 改めて近年ナベシネマを振り返つてみたところ、降順に此岸と彼岸を跨いで全身整形生前の記憶を移植した瓜二つロボット時空を超える女忍者と来て、日本消滅回避を賭けての神と悪魔に板挟み。フィルム最終作にナベシネマズ・エンジェルも大量動員しての処女の難病ものは比較的おとなしいにせよ、相変らず易々と時空を超えてみたり衝撃のディストピア結末を叩き込んだ上に、人類の存亡を巡り天女とセックスどストレートなインセプション既視感もなくはない人造人間悲譚、涙腺を決壊させるみるくの恩返しと、見事に連なる種々雑多に飛び道具を満載したファンタなフィルモグラフィーにはクラクラ来る。完全に日常の地べたに止(とど)まる物語となると、オッパイ姉妹の恋愛ドタバタを描いた2013年第一作「姉妹相姦 いたづらな魔乳」(2013/主演:ティア・眞木あずさ)まで、何と十二作遡らなければならない徹底した軌跡には圧巻の言葉しかなく、更にその前作では相変らず地球壊滅の危機を迎へてゐたりする。ここいらで2009年第一作「しのび指は夢気分」(主演:夏井亜美)以来、エース格といふポジションも踏まへるならばなほさら大概御無沙汰の、ナベ痴漢電車を出発進行してみせるのは如何か、痴漢電車の基礎理論「ベッドの上で起こることは、全て電車の中でも起こる!」を定立したのは渡邊元嗣と山崎浩治のコンビなんだぜ。
 そんなこんなで渡邊元嗣2016年第二作は、送信速度が正しく光速を超えるメールが巻き起こす、四角だか五画だか六角関係。うん、何時も通りのナベだ。要はヒロインの打算が誤算を生む利己的極まりない展開ながら、司と凜香も同じ穴の狢に据ゑ彩香の現金さを薄める方便も有効に、“いまを選ぶのは、未来のわたしぢやない”と彩香に臆面もなく撃ち抜かせるエモーションを、しみじみと爽やかなオーラスで補強し堂々と成立してのけるのが、一途な真心に熟練した技術の伴つたナベシネマの強さ。瑣細はかなぐり捨て、一撃に全てを賭ける凄味には、渡邊元嗣の娯楽映画に対する鉄の信念が透けて見える。時の流れまで含め縦横無尽に入り組むお話を入念に進行する代償に、主演女優でさへ二回、二番手三番手はともに一戦きりと回数こそ確実に少ないものの、その分結構エグく攻める濡れ場は何れも腰から下への訴求力が高く、裸映画的にも遜色なく安定する。一見さうは見えない里美まゆもいはゆる脱いだら凄い系で、巨乳部を三枚揃へた三本柱は眼福眼福。実は修平にも過去ポストが着弾してゐた、馬鹿丁寧なパラドックスよりも、絵馬を通して過去の自分からのメッセージが届く方が寧ろ豪快な力技ともいへ、さういふ些末な野暮はいひない。身勝手な右往左往を無理から美しい帰結に引つこ抜くパワー系の一作を、ドッピュルゲンガーが一旦ガッチャガチャに散らかす如何にもナベシネマらしいラストを、胸に染み入るオーラスで再度締め括る構成は矢張り心憎い。

 唯一の心残りは、脊髄反射で内トラが予想された、凜香に言ひ寄る童貞デブ上司役の永井卓爾の不発。いや、蛇足・オブ・蛇足に過ぎないのは判つてゐる。


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 「聖なるボイン もみもみ懺悔室」(2016/制作:加藤映像工房/提供:オーピー映画/監督:加藤義一/脚本:深澤浩子/撮影監督:創優和/録音:小林徹哉/編集:有馬潜/助監督:小関裕次郎/音楽:OK企画・友愛学園音楽部/録音所:シネキャビン/仕上げ:東映ラボ・テック/監督助手:植田浩行/撮影助手:佐藤雅人/スチール:本田あきら/出演:折原ゆかり・伊織涼子・加山なつこ・深澤幸太・柳東史・世志男・津田篤・広瀬寛巳・なかみつせいじ)。
 何故かプロレスラーの宣材ばりに大きく胸を張つた、竹中神父(なかみつ)のポスターみたいな遺影から、カメラが下がつて引くとシスター服の三本柱が手を合はせてタイトル・イン。三人前の修道女服をレンタルするのが関の山だつたのか、安普請も通り越しスカスカな美術に開き直るが如く、手前に添へられた線香の無造作な折衷感は微かにクスリと来る。それと、結局回想カットのひとつ設けられるでなく、写真一枚限りの登場に止(とど)まるなかみつせいじが、ゼロ特記でトメに座るのには軽く驚いた。
 出所したヤクザの立花柳二(深澤)が、拾つて呉れた酒屋の大将・島本(世志男)のライトバンでヤサを目指す。ヴィジュアルは百歩譲るとして、スーパーライトどころでは済まず江端英久1ミリ的に軽い深澤幸太の発声に、幾らやさぐれた2.5枚目を気取つてみせたところで、苦笑すら漏れぬ居た堪れなさを禁じ得ない。閑話、あるいは憎まれ口休題、ベランダに干された真黄色のパンツに、ミズエ(名前しか登場しない)が待つてゐて呉れたものかと感激した立花が、玄関が開くなり抱きついた女は、レッドな他人のシスター絵美(折原)。当然双方ワーキャーする騒ぎとなり、続けてシスター怜子と香織(伊織涼子と加山なつこ)も顔を出す。かつての住居が今は三人が暮らす「のらKYOUKAI」に変つてゐるのを確認した立花が、諦めて立ち去らうとすると照明が赤く一転するとともに、ホンワカホンワカOK劇伴起動。修道女が三人がかりで立花に迫る、のは、「のらKYOUKAI」の隣に住む官能小説家・小林トオル(柳)の『破廉恥シスターシリーズ』作中の出来事。怜子と香織の二人で営業する「修道女BAR マリア」で痛飲したものの、飲代を払へなかつたシケた立花は、小林が破廉恥シスターシリーズにマリアを実名登場させたばかりに、ストーカー的な痴漢の出没に悩む店の用心棒の座に納まることに。
 配役残り広瀬寛巳は、相対論かも知れないが意外な巨体で妙な戦闘力を発揮する大立ち回りを披露する、プリミティブにワイルドな痴漢氏。津田篤は小林先生担当編集のヒムセルフ、怜子に筆卸して貰つた小林が書き上げた、シリーズ最新作「破廉恥シスター 童貞おどり喰ひ」に感激のあまり、勢ひ余つて薔薇を咲かせかける。
 最早暗雲も立ち籠めない、加藤義一2016年第三作。座付脚本家の深澤浩子への変更に、一旦胸を撫で下ろした向きも見受けられるやうだが、加藤義一、依然全然ヤバいのではなからうか。娑婆に戻つて来たヤクザ者に、訳の判らん聖なるボイン三連星と、隣人のポルノ作家、ひとまづ如何にもピンク映画的な面子は揃つたかに見える。否、少なくとも形式的には揃つてゐた。そこから香織×島本、怜子×小林、そして絵美×立花。三者三様の色恋沙汰が並走するのも十全な展開とはいへ、満足に交錯するでも深く踏み込まれるでもなく、要は何れも精々三番手程度の濡れ場ばかりを連ねた始終は、エモーションの結実には終に遠い。ただでさへ脆弱か非力な人情ドラマを、挙句に浩子について来る幸太が軽く薄く逆噴射する始末とあつては、加藤義一の発掘脚本家との心中路線は相変らず。ついでに、機能のキの字にも至らない些末な小ネタが火に油を注いで癪に障る。今時、ダンプ松本の「マジだぜ」を覚えてゐる観客が、小屋に全部で百人ゐたとして全体何人ゐるといふのか。殆ど唯一の見所といへば、初めて加藤義一が深澤浩子と組んだ前々作にして、熟女・爆乳AV女優ユニット「3boins」初戦の「ボインのお宿 熟女大宴会!」では撃ち損ねた、六峰の巨山を連ねるジェット・ストリーム・アタックを放つたくらゐ。繰り返すが、加藤義一は依然全然ヤバいのではなからうか。破綻してゐないだけで、何もないところで安定してる。ツッコミの愉楽にも欠く寒々しい白夜の荒野にも似た一作に、弥増す徒労が骨身に染みる。

 ペテン師な竹中神父の造形は前作「巨乳OLと美乳人妻 ~北へ向かふ女たち~」(主演:福咲れん)と合致するものながら、最終的な同期は図られず。


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 「人妻家庭教師 濡れしぐれ」(2000/製作:小川企画プロダクション/配給:大蔵映画/監督:小川欽也/撮影:郷田有/照明:岩橋豊/助監督:寺嶋亮/音楽:OK企画/編集:フィルムクラフト/スチール:津田一郎/脚本:水谷一二三/監督助手:亀谷英司/撮影助手:西村友宏/照明助手:山下由美/録音:シネキャビン/効果:東京スクリーンサービス/現像:東映化学/タイトル:ハセガワタイトル/出演:椎名絵里香・江本友紀・小池結・杉本まこと・久須美欽一・平川ナオヒ・中川大輔)。照明の岩崎ではなく岩橋豊は、本篇クレジットまゝ。物凄く中途半端な位置にクレジットされる脚本の水谷一二三は、小川欽也の変名。
 一浪生の佐藤拓也(中川)が英語のテキストを―何故か縦書きのノートに―和訳し、その背後では、人妻家庭教師の奈美(椎名)が呑気にコーヒーを楽しむ。一旦一段落、訳をチェックする奈美が拓也の背中に無造作に押しつけるオッパイの表現に、チョイチョイ裸を挿み込む―だけの―プリミティブな演出が妙にそゝる。奈美が玄関の中から拓也に送り出されタイトル・イン、自室で寝転がり拓也が改めてイマジンを膨らませる奈美の痴態にクレジット。画が替る毎に、ブラを外してゐたりゐなかつたりする繋がりの悪い無頓着さに、ここでは躓く。佐藤家と津田スタジオを兼用する、奈美自宅。奈美の夫・浩史(杉本)は勤務先倒産につき失業中、元高校教師の奈美が家庭教師のアルバイトをしつつ、浩史は―正確には“元”―社長秘書の清水の紹介で、漸く新しい就職先が決まりかけてゐた。そんな流れでの夫婦生活、主演女優の椎名絵里香が、絶妙に美人過ぎないルックスと、デカい乳輪がどエロくて素晴らしい。入念な濡れ場を完遂してなほ、カット尻まで杉本まことが乳を触り続けるジャスティス。
 配役残り小池結は、家庭教師の終り際に遊びに来た、要は大概強引な三番手の捻じ込みやうを振り抜く拓也の彼女・友紀。一応一年後輩の受験生なので、二人とも通れば目出度く同級生となる格好、目出度いのかどうかよく判らないけど。後を辞した奈美が“あんな可愛い彼女”と述懐するのが、正直通らない下駄面。平川ナオヒ(現:平川直大)は、実は生徒との淫行を仕出かし教職をドロップアウトしてゐた奈美と再会する、当時喰はれた平川あきら。奈美がその後結婚したのを知ると、過去を出汁に関係を迫る悪ナオヒーローぶりを披露する。椎名絵里香×平川ナオヒと、江本友紀×杉本まこと。二つの絡みが苛烈なクロスカウンターを放つて同時進行する中盤を支配する江本友紀は、ところでその頃浩史が会つてゐた前述の清水久子、愛称チャコ。端からそのつもりで、浩史に転職の代償としてワン・ナイト・ラブを求める。仕事を世話して呉れたばかりかヤラせても呉れるなんて、爆裂する史上空前の濡れ手で粟感が堪らない。慰撫して呉れ、怠惰でもいい、もつと俺達を優しく慰撫して呉れ!
 気を取り直して、貫禄すら漂はせる下衆い千両役者・久須美欽一は、拓也の近所に住んでゐた奈美の教師時代の同僚・小林。案の定拓也にも手を出す現場を盗撮した奈美の、菊の花まで散らす。小池結投入前段、横断歩道を渡る奈美に、いいぢやんと垂涎する特に必要なやうにも見えない内トラは不明、定石だと寺嶋亮か。
 初期ナオヒーロー目当てで見てみたところ椎名絵里香が拾ひものであつた、今年も新作を―どうせ伊豆で―撮影予定の今上御大・小川欽也、2000年案外少ない全三作中第一作。空気ほどしか存在しない物語を通して、二三番手は仲良く一幕限りに、男優部総嘗めの四冠を達成する椎名絵里香の裸をひたすらに見せ倒す、誠腹の据わつた裸映画。それはそれで、いいにせよ。如何にも小川欽也らしい脱力系のフリーダムが、火を噴くのは最終盤。因みに嫁とは半年前に離婚した小林家で結構酷い目に遭つておいて、普通に風呂に浸かる奈美はまづあきら、そこからなのかよ。拓也に続いてついでに小林、最後に申し訳程度に浩史。冷静に振り返ると劇中二日間の間に繰り広げられた濡れしぐれの数々を想起した上で、若い子の摘み食ひを止める決意でケロッと一件を強制落着。再度の夫婦生活で最後を締めるのかと思ひきや、尻が痛むのか嘘生理で回避。その後受験に合格した拓也と再会するものの、その時奈美はといふと御懐妊。ラスト二分半を他愛ない世間話に終始する、即ち締めの濡れ場を放棄した謎エンドには完全に油断してゐて逆に吃驚した。なかなかどうして一筋縄では行かない、ある意味老獪なのかも知れない一作である。


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 「本番裏快楽」(1993/製作・配給:新東宝映画/脚本・監督:鈴木敬晴/企画・製作:田中岩男/撮影:稲吉雅志/照明:斉藤久晃/音楽:雄龍舎/編集:竹村編集室/撮影助手:青木克弘/照明助手:木村文美・フィックス照明/助監督:森山茂雄・平岡きみたけ/録音:ニューメグロスタジオ/効果:協立音響/現像:東映化学/出演:林由美香・牧村耕二・岸加奈子・浅野桃里・清水大敬・木下雅之・平岡きみたけ)。洋泉社刊『女優 林由美香』(2005)には雄龍舎製作とあるが、企画だけでなく製作にも田中岩男がクレジットされてゐる点をみるに、新東宝製作なのではなからうか。それと出演者中牧村耕二が、VHSジャケには殆ど頑ななまでに牧村耕次。
 キャーといふ儚い悲鳴とともに、宙に舞ふ赤いマフラー。画質が粗過ぎて何が映つてゐるのか殆ど判らない壮絶なビデオ画像と、北陸から出稼ぎの日雇ひ人夫・倉田(牧村)が解体現場で大雑把に汗を流す姿とを交互に往き来。親方のヤジマ(清水)が、見た感じ作業は大絶賛中途、日も全然高いのに時間だ帰らうと倉田に告げたタイミングで鈴木敬晴クレジット、どんな現場だ。倉田が水道の蛇口直浴びで汗を流し、再びマフラー舞つて裏ビ映像、漸く林由美香が登場した画を一時停止してビデオ題の「裏快楽 襲はれた妹」でタイトル・イン。ヤジマの悪いも通り越し聞くから怪しげな誘ひを振り切つた倉田が、強姦後廃人状態となつた妹・康子(林由美香の二役)が祖母と暮らす郷里に送金する手紙を認めてゐると、康子が死去した旨を伝へる電報が飛び込んで来る。一方その頃、ヤジマはキョーコ(岸)が店主の売春スナックにて、カオリ(浅野)相手に大ハッスル。如何にも清大的なメソッドで羽目を外し過ぎたヤジマをキョーコが撃退、カオリが食塩を撒く店に、入れ代りで呆然と夜の街を彷徨ふ倉田が現れる。強引にカオリとの―店外―デートを成立させたところに、一仕事終へた岡本桃子(林由美香/但し辿り着けさうで主に辿り着けないアテレコ)が帰還。康子康子と半ば錯乱状態の倉田に、金さへ毟り取れれば構はないキョーコは強引にだか豪快に桃子を宛がふ。配役残り木下雅之は、キョーコの店を仕切る安岡組の西田、平岡きみたけはそのジャンキーみたいな子分。
 林由美香初期の代表作の一本に前述した由美香本が挙げる、鈴木敬晴1993年第一作、敬晴名義第八作。単独監督作全十三作を追ふ鈴木敬晴(ex.鈴木ハル)映画祭も、残すは次作「高級ソープテクニック3 快感天国」のみ。とりあへず、あるいは兎にも角にも。実際に妹を持つ身の一人としては、康子と瓜二つの桃子が過去に出演したかさせられた裏ビデオを所持し、ミーツした後には桃子を抱く倉田が、激しく感情移入に遠い。他人声にエンジェル・ボイスも封じられたこの時期の、要は後年リファイン前の林由美香に、由美香が由美香といふだけで殊更に入れ揚げる訳でもない。ビスタが本来の映画的設計の左右を無惨に断頭するのはいふても仕方ない話にせよ、康子に何も出来なかつた倉田が、西田に捕獲された桃子の窮地に体を張る展開はありがちなエモーションを最低限撃ち抜くともいへ、改めてワーキャー騒ぐほどには思へなかつた一作。ラスト一本に最後の一縷の望みを繋ぎつつ、時に観念論の大樹海を派手にブチまけてみたり、ダサさと同義の愚直な映画愛を覗かせてみたりもしながらも、総じては誰が誰に痴漢してゐるのか判らない痴漢電車を撮つてしまふやうな映画監督。といふ辺りの評価が、鈴木敬晴には最も相当なのではあるまいか。


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 「性辱の朝 止まらない淫夢」(2016/制作:VOID FILMS/提供:オーピー映画/脚本・監督:山内大輔/特殊メイク・造形:土肥良成/撮影監督:田宮健彦/録音:大塚学/編集:山内大輔/音楽・効果:Project T&K・AKASAKA音効/助監督:江尻大/制作:沼元善紀、もう一名/特殊メイク・造形助手:鈴木雪香、他/美術:吉田孝子/スチール:本田あきら/エキストラ:SHU軍団・井尻鯛、他/協力:VOICE、竜巻軒、スナックちばる、ホテル・フォレストイン、株式会社TRIDOM、はきだめ造形、日活スタジオセンター/仕上げ:東映ラボ・テック《株》/出演:朝倉ことみ・涼川絢音・みづなれい・川瀬陽太・竹本泰志・森羅万象・世志男・岡田智弘・山本宗介・太三・松井理子・藤岡範子・中野未穂・和田光沙《友情出演》)。出演者中、岡田智弘と山本宗介は本篇クレジットのみ。演出部応援始め、予想外の情報量に爆死する、協力は順不同。
 赤暗いラブホテルの一室、右頬に大きなバッテンが痛々しく刻まれた朝倉ことみが、物騒にも威圧的にサバイバルナイフを握り締めた男に抱かれてゐる。加へて朝倉ことみの右肩甲骨下には、天使が羽を捥ぎ取られたかのやうな大きな傷跡が。左足を曳き自室集合住宅の表にまで漸く辿り着いた、川瀬陽太の携帯が鳴る。ユリ子か!?といふ問ひに対し当のユリ子(朝倉)が、屋上から川瀬陽太の眼前にドチャッと降つて来る。潰れたユリ子の頭部に、川瀬陽太が呆然と手をやりタイトル・イン。のつけから陰惨なアバンの完成度は本来完璧な筈なのだが、小倉名画座との比較で何故か暗い画の映写に抱へる結構致命的な弱点が判明した、我等が旗艦館・前田有楽での大いなる苦戦が容易に予想され、現にその懸念はまんまと当たる。
 猫を轢き血塗られたホイールを洗ふ運送会社トラック運転手の吉川(川瀬)に、社長の滝沢(世志男)が人ぢやなきやいいよとデス陽気に声をかける。恐らく竜巻軒で滝沢に紹介された本社とは別の倉庫に勤務する事務員のユリ子と、吉川は結婚する。愛妻弁当を満喫する吉川に、可愛い顔の下にキナ臭さを隠す事務員のミカヨ(涼川)はユリ子が実は滝沢の愛人である、残酷な事実を悪びれるでもなく告げる。気分を変へに吉川とユリ子は、上野特選劇場に「痴漢電車 悶絶!裏夢いぢり」(2015)を観に行く。観終つたあと手洗ひに向かつたユリ子は、呆然と立ち尽くす吉川の目の前で、世界の救済を自任する気違ひ(太三)に鉈状の刃物で惨殺される。仕事も辞め消沈する吉川の下に、高校時代サッカー部の後輩でヤクザの高橋(竹本)が、飛んだ亭主の借金の形に泡風呂で働かせてゐる弥生(みづな)を、身の回り―と下―の世話をさせるために連れて来る。男女の一夜を過ごした翌日、弥生の姿はユリ子に変つてゐた。
 配役残り、どんな役でも卒なくこなし、何でも出来るがゆゑの一点突破力不足が強ひて探した難にさへ最近思へて来た山本宗介は、仮称高橋組推定若頭の真木。今なほ何かと気を揉む高橋と吉川の関係は、高橋が仕出かした不祥事で部がインターハイを辞退、エースストライカーの吉川はサッカー選手への夢を絶たれたといふ因縁。ex.弥生のユリ子も結局亭主との焼身心中で喪つた―厳密には弥生は死に損なふ―吉川は、多分スナックちばるにて和田光沙の連れを消火器でアレックス。森羅万象は、三年後仮釈放された吉川の身元引受人となる、解体会社社長の杉田。高橋いはくヤクザよりも性質の悪いカタギ且つ、ミカヨのパパさんであつたりするありがちな世間の狭さを爆裂させる。杉田解体興業で働く吉川の前に、杉田の妻が初めからユリ子の姿で現れる。不貞が発覚しリンチの末に杉田に左足を殆どサンダーロードされた吉川は、最終的に仮称高橋組傘下のデリヘル「人妻倶楽部 バビロン」の雇はれ店長に。松井理子が「バビロン」デリ嬢のミキで、藤岡範子と中野未穂は特定不能のサヨとレナ。ミキが固定可能なのは声と歩行器をつけてゐるからであつて、三人とも人相ではまづ判らない。ミカヨを連れ瞬間的に登場する岡田智弘は、吉川が入院する「さとう形成クリニック」院長の佐藤。エキストラは飲食店に見切れるほか、組と解体作業員の皆さん。
 前田有楽ではやゝこしいとの評判を呼んだ(笑、山内大輔2016年第一作。尺の大半を占める暗い画面が、本当に漆黒に沈む上野特選を筆頭に、判り易くいふと岡田智弘が連れてゐるのが涼川絢音なのかみづなれいなのか、俄かには識別し難い程度に見えず苦労しながらも、匙を投げるなり臍を曲げるには至らず。朝倉ことみ×涼川絢音×みづなれいと主演級を三枚揃へた三本柱を擁しておいて、濡れ場も暗い以前にスラッシュな描写が兎に角といふか矢鱈と多く、安穏と股間を膨らませるには画期的に適さないものの、川瀬陽太と竹本泰志のツートップを筆頭に、盤石な男優部が静脈色のドラマを頑丈に牽引する。吉川が再会しては再びユリ子を喪ふ、バッド系のタイムリープ。そもそも事が上手く運ぶとそこで再試行する要が発生しない以上、タイムリープものは畢竟悲恋なり悲劇と不可分ともいへようか。娑婆に居場所を失くし、バビロンの門を叩いた杉田嫁に源氏名を求められた吉川が、「ユリ子、お前はユリ子だ」とユリ子と名づけるカットは、そこでクレジットだ!と正体不明の興奮に震へる比類ない強度に溢れ、脈略を完全に放棄してすら突入した二度目の上野特選、吉川が覚醒夢的に悪夢の連鎖を断ち切るラストまで切れ味は失してゐない。尤も、バビロンの嬢が全員顔面が破壊されてゐる辺りで、劇中此岸と彼岸の別は甚だ怪しくなり、クレジットが流れきつてなほ、吉川とユリ子が出会つては別れ出会つては別れる風呂敷は一欠片たりとて畳まれはしない。本来ならば量産型娯楽映画的には敷居の高さを難じたくもなりかけるところが、三ヶ月弱後封切りの後篇「淫暴の夜 繰り返す正夢」を早く観たくて観たくて仕方がなくなるのは、それだけ面白かつたといふ山内大輔の勝利。ともいへ、かういふ、要は山内大輔の好きに任せた映画はかういふので悪くないとは思ひつつ、ここいらで思ひだしたやうにでも、エクセス×フィルハ時代2007年以前の、主眼はあくまで裸映画を時には観てみたいと思つてもみたり。

 最後に、今作は昨年AV女優を引退、現在の肩書がよく判らないみづなれいにとつて、初陣の森山茂雄第十作「肉体婚活 寝てみて味見」(2010/脚本:佐野和宏)、森茂次作にして私選依然2010年代最高傑作「あぶない美乳 悩殺ヒッチハイク」(2011/脚本:佐野和宏)。山内大輔電撃大蔵上陸作「欲望に狂つた愛獣たち」(2014/プロデューサー:加藤義一)から二年ぶり兼、恐らくはピンク最終第四戦となるのか、今後戦線復帰しなければ。首から上は変らないけど総じて肉感的に、殊にオッパイが大きくなつてた。


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