真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「熟女の色香 豊潤な恥蜜」(2013/制作:セメントマッチ/提供:オーピー映画/監督:池島ゆたか/脚本:五代暁子/原題:『ダブルサイコ』/撮影監督:清水正二/音楽:大場一魅/編集:酒井正次/助監督:中川大資/監督助手:北川帯寛/撮影助手:海津真也・矢澤直子/照明応援:広瀬寛巳/編集助手:鷹野朋子/録音:シネ・キャビン/現像:東映ラボ・テック/スチール:津田一郎/タイミング:安斎公一/協力:ステージ・ドアー/出演:村上涼子・沢村麻耶・日高ゆりあ・樹カズ・野村貴浩・北川帯寛/Special Thanks:山ノ手ぐり子・松井理子・倖田李梨・リト《写真出演》)。出演者中北川帯寛と、カメオ枠のリトは本篇クレジットのみ。
 鬼もとい一時的に実家に帰つたカミさんが居ぬ間に、河中吉弥(樹)は水商売の女・ジュン(日高)を堂々と自宅に連れ込む。それにつけても、衰へ知らずのイケメンも兎も角、樹カズ(御歳フォーティーフォー)は髪の量が異常だ、羨ましいことこの上ない。シッポリ楽しんだのも束の間、四十路目前の吉弥の八つ年上の妻・真理子(沢村)が、母親と喧嘩したとやらで予定を一日早め緊急帰宅。潰れた同僚を休ませてゐるだなどと、その場すら凌げてゐない旦那の嘘を看破した真理子は、大らかにも吉弥の火遊びを許容する。恐々河中家脱出を図るジュンが覗く廊下越しに、シャワーを浴びると真理子が画面を右から左に横切りタイトル・イン。タイトル跨いで主演女優登場、男運のなさから恋愛自体遠ざかつて久しい三十七の通販会社事務員・小田島めぐみ(村上)に、取引先の吉弥が言ひ寄る。サクサク吉弥はめぐみの部屋に転がり込み、俄に始まる甘い同棲生活。とはいへ、離婚に易々と同意してゐるらしき真理子に対する謎。自身の豊満な肉体に対するコンプレックスと、現実味を帯びて来た結婚への執着。諸々の焦燥に、めぐみは騒がされる。
 配役残り野村貴浩と北川帯寛は、めぐみがろくでもない男性遍歴を回想する中に登場する、借金男とマザコン男、北川帯寛は乳も揉む。一人目のスカジャンDV男は、演出部動員かとは思ふが特定には至らず。Special Thanks勢から山ノ手ぐり子・松井理子・倖田李梨は、めぐみがオフで交錯する赤いハイヒールの女。倖田李梨だけがキチンと抜かれ、幾許かのマトモな台詞も与へられる。正体不明のリトは、在りし日のスナップ写真の中に映る、高校入学時の吉弥。幾ら何でも、1989年にしては写真が古過ぎないか?
 池島ゆたか2013年第二作は、最近オーラスにクレジットされるシナリオ題が「ダブルサイコ」なるヒッチコックもの。全面的なアプローチとしては案外久し振りで、「熟女・人妻狩り」(2006/主演:竹本泰志)以来。颯爽と三番手が駆け抜ける秀逸な開巻、会話は聞こえど、ジュンの目には夫婦が一人づつしか見えない画作りに、丁寧に起爆装置が露出する一つ目のサイコを、諦めかけた幸せに駆られる、二つ目のサイコが追走する構成は非常に面白い。但し、ハンターの存在しないミイラ同士の化かし合いひの中、オーソドックスなサイコとセカンドサイコとの激突。乃至はトラディショナル・サイコがセカンドサイコに喰はれる驚愕の魔展開への期待も高めたものだが、尺に合はせるかのやうに作劇は力尽きる。最終的には精々日常的なヒステリーの範疇に納まつてしまつたセカンドサイコが、貫禄のオリジナルサイコに呑み込まれるラストには些か落胆。折角「ダブルサイコ」なんて画期的にカッコいいタイトルをつけたのに、女の裸―村上涼子のボリュームは、個人的には過積載―をさて措けばこれではヒッチコックの「サイコ」で事足りよう。そんな辺りに何となく、森山茂雄の「痴漢電車大爆破」を想起した。


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 「新・日本エロばなし 人妻竜宮城」(2003/製作:フィルム・ハウス/提供:Xces Film/脚本・監督:坂本太/企画:稲山悌二/プロデューサー:伍代俊介/撮影:創優和/照明:淡紅朱天/編集:フィルムクラフト/録音:シネキャビン/助監督:江利川深夜/監督助手:木下裕美・山屋昌弘/撮影助手:沼田知久/照明助手:藁部幸二・泥良壱斗/スチール:木原伸幸/タイトル:高橋タイトル/現像:東映ラボテック/出演:山口玲子・桜田由加里・林由美香・立花りょう・堀越のあ・森口久美・乙川沙良・藤咲涼・二葉このみ・久須美欽一・千葉誠樹・行本貢・吉田祐健)。とうに見慣れた撮影部メインは兎も角として、照明部に散見されるあからさまな変名が清々しい。
 オフィスで下着姿の桜田由加里が妖しく迫るのを、女房(一切出て来ない)には逃げられた侘しい中年男の夢でオトしてタイトル・イン。下着メーカー「ビューティー・ランジェリー RYUGU」の商品企画営業部に配属された浦島太郎(吉田)の重い足取りを、人の気も知らない後輩(行本)が冷やかす。行本貢といふ人は、AV畑の演出部か制作部からの援軍。一時間前に出社するといふドメスティック・ルールを破り、定時に商品企画営業部(ガラス戸には企画営業部)に辿り着いた浦島に、まさかの総勢六名からなる女子社員勢(立花りょうから二葉このみまで)がオッカナイ剣幕で詰め寄る。驚く勿れといふのが無理な話、何と全員脱ぐ女子社員要員は立花りょう以外誰が誰やら全然手も足も出ないが、一人アイドル級の美少女が居る。そこに女王様然と現れた部長の乙姫薫(桜田)は、新作下着のいはゆる枕営業を、堂々と推奨する。女子の着替へに鼻髭を伸ばし垂涎する、浦島とは同期の人事部長・船田宗一郎(千葉)の顔見せと、不倫の仲―少なくとも船田は妻帯者―にある乙姫との一戦挿んで、浦島はランジェリー店オーナー・海野さより(林)の自宅に出向く。亭主(矢張り一切出て来ない)に先立たれたさよりがガツガツ膳を据ゑるものの、情けないことに浦島は勃たず、さよりを激怒させる。続けて女子社員が実着プレゼンに使用済みのランジェリーを届けた―どういふ物の流れだ―黒潮通販専務・黒潮和己(久須美)も、浦島が時間に遅れた結果下着の鮮度が失はれたと御立腹。ションボリする浦島と、乙姫・船田が鉢合はせ。船田は浦島に二契約取つて来れば部長に昇進させてやると口から出任せ、尻馬に乗る乙姫は、契約を取れるまで帰社しなくともよい旨を言明する。憐れ敗走し昼間から泥酔する浦島は、路地裏のゴミ捨て場にて水槽ごと捨てられた小亀を発見。何となく不憫に思ひ、亀を持ち帰る。
 誰か他の監督にせよ“旧”日本エロばなしがある訳では別にない、坂本太の2003年最終第四作。jmdbは何故か工藤雅典の「寝乱れ義母 夫の帰る前に…」(主演:麻田真夕)を、しかも「寝乱れ襦袢 夫の帰る前に…」とタイトルも間違へた上で坂本太監督作にカウントしてゐる。実に器用なことをする、無駄といふべきか。話を戻して面白いのが、浦島太郎が助けた亀から亀の精改め亀野麗子(麗子といふのは浦島初恋の人の名前/山口玲子)がブルンブルン爆乳を放り出しながら現れるのが、尺も折り返し地点間際といふ敵が亀だけに正しく亀なペース配分。逆に、麗子登場以降はザクザク高速展開。寧ろ、船田が浦島の部長昇進の条件となる契約数に二件といふ数字を出した時点で、その後の推移は固定されてゐるともいへるのだが。①麗子に回春して貰つた浦島が②さよりをチャッチャとオトし、③黒潮には麗子が出撃。重ねて④麗子が船田も撃墜する濡れ場をも噛ませて、煙に消える夢ではないウラシマニック・サクセスまで四つの絡みで一直線。更に中盤を飛ばし余した十分で、浦島と麗子の締めの濡れ場と、出社するや六人の女子社員が下着姿でお出迎へ。そこに麗子と乙姫も飛び込み、朝つぱらから、だから社内だろといふのに怒涛の一対八計9Pが爆裂する酒池肉林オフィス乱交を完遂。盆暮れ映画でないにも関らず何でまた斯くも闇雲に豪華なのか判らない、賑々しく、且つ万人が予想し得るオッサンの御伽噺を、裸映画のアルチザン・坂本太は余計な色気をみせることもなく、予想通りの形で綺麗に撃ち抜いてみせる。祐健の酔ひ芝居は案外へべれけで、不用意に匂はせた別れのファンタジー要素を、最終的には無造作にオッ放り出して済ます辺りは些か頂けないものの、然様な瑣末は気にするな。二度の浦島V.S.さより戦を頂点に、スチャラカなシークエンスによく馴染むスチャラカな劇伴も麗しい、明るく楽しくエロいピンク映画のポップ・チューン。束の間の夢だけ見せて、後には何にも残さない、欠片も仰々しくない。常々思ふところだが娯楽映画のひとつの到達点は、かういふ偉ぶらない境地にもあるのではなからうか。

 ところで、商品企画営業部の面々に何れか一人でも既婚者であることを示す描写は特にも何も全くなく、さよりは未亡人、麗子はそもそも亀。“人妻竜宮城”と看板に謳ふ割に、劇中人妻が見当たらない件。エクセスだなあ、あるいは、エクセスだもの。


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 「せつなく求めてⅡ ‐人妻編‐」(2000/製作:吉行プロ/脚本・監督:吉行由実/撮影:清水正二/編集:酒井正次/録音:中村半次郎《シネキャビン》/音楽:ゲイリー芦屋/助監督:瀧島弘義・松岡誠/撮影助手:岡宮裕/照明応援:田中康文/ポスター:木下篤弘/タイトル:道川昭/フィルム:愛光/配給:大蔵映画《株》/協力:荒木太郎・麻生みゅう・里見瑤子・堀内満里子・横須賀正一・木村朗子・末長エウニセ智美・坂口周/出演:川奈恵美・吉行由実・林由美香・岡田智弘・川瀬陽太)。
 ケイセイ学園教師・池永修司(岡田)の妻・雪子(林)が妊娠の兆候を訴へるも、待望のあまりか雪子は、度々誤認を繰り返してゐた。他方刑事の竹内淳(川瀬)と妻の香奈(川奈)が、安アパートに越して来る。結婚が原因で竹内が左遷されたらしきことを、香奈は気に病む。気に病むといふか、気を病んでゐるのだが。池永夫妻は商店街でお買物、雪子が鉢植ゑを見てゐる間表で煙草を吸ふ修司は、五年前に姿を消した義妹である香奈と再会する。修司の呼びかけを香奈は無視するが、過去に一度だけ、二人は関係を持つてゐた。無銭飲食、もとい万引きで補導された生徒・加藤(暗過ぎて男女の別もよく判らん)の身許を引き受けに警察署に出向いた修司は、修司の名前を知つてゐた竹内と出会ふ。結婚自体初耳の修司に、竹内は摘発した売春組織の構成員であつた香奈と結婚しただなどと、そもそも初対面の人間にザクザク打ち明ける。香奈と修司は、互ひに互ひに対する複雑な感情に揺れる。といふか修司と再会しようがしまいが、香奈は揺れつぱなしなのだが。
 配役残り御大将の吉行由実が、香奈の実母で修司の義母・沙野子。冒頭修司に挨拶しながら追ひ越して行く女生徒二人は、画面向かつて左が麻生みゅうで右が里見瑤子に見えるやうな気もしつつ識別不能、一人分のアフレコは何れの声でもない。
 当時、荒木太郎の「せつなく求めて ‐OL編‐」と連続して公開された続篇。幾らでも―荒木太郎・吉行由実ともに大好きな―故福岡オークラで観る機会はあつた筈にも関らず、綺麗に忘れたものか、今回完ッ全に初見の感触。「‐OL編‐」に関しては、地元駅前ロマンにて大蔵・オーピー旧作を随時消化する枠―目下2010年次に突入―で改めて観てゐる。前作を通つてゐないと判らないやうな断片的な描かれ方しかなされないが、死別した義父の面影を残し、相思相愛で想ひを寄せる義兄を実母に寝取られた―といふのもおかしな表現ではある―主人公が、ともあれ漸く義兄と結ばれた後に家を捨てた、五年後の物語となる。好意的には今作の最も顕著な特徴は、美味しいところを自らカッ浚つて行く吉行由実。ブスブスと燻りかつ不安定なのみで正直感情移入には遠い香奈が、唐突に姿を消す。竹内から報せを受けた修司がとりあへず実家に赴いてみたところ、五年前香奈よりも先に家を出た沙野子が何時の間にか戻つてゐた。酒を飲みウダウダしてゐる内に沙野子がシレッと洩らす、前後篇纏めて劇中世界を引つ繰り返す正しく衝撃の告白が、香奈に鬱屈と振り回されるに終始する始終の中で、唯一強い光芒を放つハイライト中のハイライト。続けて通算二度目の、そして恐らくは最後とならう沙野子と修司の情事。心情的にも煽情性の上でも川奈恵美は抜けが悪く、林由美香は素の芝居は兎も角茶を濁す程度に止(とど)まる中、吉行由実が唯一人、裸的にも映画的にも質感の伴つた両義的に見応へのある濡れ場を撃ち抜く。大体が、となると香奈が恨み節めいて“母は、私にとつて、一人の女でしかなかつた”と一人言つ以前に、あるいはだからこそ沙野子が出した答への通りに“誰も家族なんかぢやなかつた”次第である。最終的に香奈が竹内の鞘に納まるにしてもさしたる契機があるでなく、土台主演女優が魅力に乏しいゆゑ、無理なり方便は通り難い。吉行由実も飛躍ないしは予め設定されてゐた着地点への距離を埋めきれてはをらず、ここと竹内と修司の初対面の件が、文体が荒れる箇所。要は今風に悪し様にいふならば、“サガ”にせよ“タチ”にせよ性の悪いメンヘラビッチを、岡田智弘と川瀬陽太の王子様二人が「大丈夫?大丈夫?」と厭きもせず構ひ続けて呉れる。実にある意味都合のいい、直截には胸糞悪い女目線の御伽噺である。普段他愛のない―当然男の―下心をそのまま形にしたやうな代物を喜んで観てゐるのだから、たまには真逆のセンから攻めるアプローチもあつていいのかも知れないが。虚構の世界にリアリズムを持ち込む愚を犯すと、詰まるところ香奈当人に快方ないしは更正の気配が些かも認められる訳ではない以上、今後も手がかゝり続けるにさうゐないカミさんを抱へた竹内の行く末が気懸りなばかり。地雷を踏んだ自業自得?それをいつちやあお仕舞よ。


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 「美人スチュワーデス 制服を汚さないで…」(2002/製作:シネマアーク/提供:Xces Film/監督:下元哲/脚本:甘木莞太郎/企画:稲山悌二・奥田幸一/撮影:小山田勝治/照明:代田橋男/編集:酒井正次/録音:シネキャビン/助監督:高田宝重/撮影助手:塩野谷祐介/メイク:島田万貴子/スチール:佐藤初太郎/出演:桜田由加里・佐々木基子・風間今日子・今井恭子・千葉誠樹・石川雄也・なかみつせいじ・しのざきさとみ)。現像のクレジットがないのは、本篇ママ。
 シティ・ホテルでの、絶妙に擦れ違ふ新日本航空スチュワーデス・片桐志津子(桜田)と交際二年になる、同社チーフパイロットの速見雅人(千葉)の一戦を経てタイトル・イン。先走ると、今作目を引くのは古めかしい鮮烈さがイカす、タイトルのフォント程度か。ミーティングルームに集合する志津子と、ブルブリした造形が正直考へものの木下綾乃(佐々木)と最近年下の彼氏が出来た吉本深春(風間)に、遅れて現れた、最近転職して来たばかりの森川京子(しのざき)。未だ打ち解けない風情の京子に、綾乃は不穏な雰囲気を感じる。大胆不敵にも営業運行中の機内にて敢行する綾乃と木村チーフパーサー(ここでは声は聞かせるのと、首から下しか見せないなかみつせいじ)の情事に志津子が目を丸くする一方、輸入家具店を経営するイケメン乗客・神谷雄二(石川)が、志津子を見初める。元々は自身が狙ふ気で神谷の情報を仕入れてゐた綾乃は、速見とは煮詰まり気味と思しき志津子に神谷をプッシュする。
 配役残りまさかの五番手となる今井恭子は、常習の機内露出プレイに燃えるマニア客。改めて本登場するなかみつせいじが、そのお相手氏。佐々木基子戦に於いて頑なに視覚的な特定を回避したのは、ここで再登板を果たす為の方策か。今井恭子の痴態に前席から垂涎する男性客の背中は高田宝重ではなく、最終盤、飲み物のお代りを貰ふ客で見切れるのは下元哲。
 開巻秒殺で壮絶な画質のキネコに目を覆ふ、下元哲2002年最終第三作。いはずと知れた撮影部出身のカメラマン×ディレクターである下元哲にとつて、心中如何許りか。m@stervision大哥は、北沢幸雄のコリアン・ピンク「韓国の人妻たち 激しく、淫らに」(2002)にも参加した下元哲が渡韓時に撮影した、空港内外・機内・機内から見える機外ショットと、新規のセット撮影との画調を同調させる目的の戦略的選択と捉へておいでのやうだが、流石にそれは好意的解釈としてもどうかと思ふ。そのくらゐ肌の色を中心に画は汚い。加へて凄いのが、今回空港方面に足を伸ばす手間隙さへ端折つたらしく、制服の志津子・綾乃・深春がそれぞれ空港内を闊歩する定番カットを、豪快な合成で処理してみせてゐるチャーミングには度肝を抜かれた。外面(そとづら)に関しては諦めるとするにして中身の検討に入ると、綾乃は危険視する京子が、深春と志津子を連破するハニーならぬリリー・トラップ。唐突に出入りする、深春の休職と復職。そもそも光でトンで殆ど見えないことも兎も角、電話越しの速見に約束を反故にされた志津子がその場―空港内某所と思はれる―でオッ始めたオナニーを、凝視する神谷の視線。蒔くだけ蒔いておいて、清々しく放置される展開―の種―の数々。出し抜けな神谷の性癖に関しては以後のエクストリームに免じて等閑視するにせよ、脈略を完全にスッ飛ばして突入する京子が深春相手に狂ひ咲かせる第一次百合。姿の見えない深春を不自然にも志津子はフライト中の機内で捜し、後には京子と志津子が制服のままアフターに繰り出す。悉く、始終を埋め尽くす無造作。制服以前に汚れた画面に文字通り見るべき点はないとすると、後に残るは小林悟ら御大領域に突入しかねないのではなく、ドップリ首まで浸かつた暴力的なルーズさ加減。万事を放り投げた上で、棚から戻つて来た神谷と志津子が結ばれる木に竹しか接がないハッピー・エンドには、呆れる以外にどのやうな対応が許されるといふのか。“中に飛ばして!”とかいふ志津子のラスト・シャウトに逆撫でされる気力も失せる、逆の意味での見所には事欠かないネガティブな問題作である。


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 「Dカップスペシャル 揺れる乳頭」(昭和61?/製作:新映企画?/配給:新東宝映画?/監督:新田栄/脚本:池田正一/企画・製作:伊能竜/撮影:高井戸明/照明:出雲静二/音楽:レイボーサウンド/編集:酒井正次/助監督:あかぬま雅彦・佐々木良/録音:銀座サウンド/現像:ハイラボセンター/出演:小野さおり・秋津モモ・西條美栄・野田洋子・佐々木誠人・山倉俊・山本竜二・岡柳太郎)。レイボーサウンドの脱字以前に主演の水野さおりをも豪快に誤植してみせる小野さおりは、本篇といふかVHSクレジットまま。
 大胆にも白昼の河原にて、エロ本オカズにオナニーする女子高生の津田マイコ(小野ではなく水野さおり)が犯される、のは、現在は教師となつたマイコの、過去の忌まわしき体験に基く悪夢。ジョギング中のマイコが、顔見知りの爽やか氏(佐々木)と挨拶するカット噛ませて、マイコは休日前の仕事終りにバツ2の友人・アキコ(ビリング推定で多分秋津モモ)の家に遊びに行く。そこに訪れた新しい彼氏・田沢か田澤トシオ(不明)も、アキコの強引な勧めに従ひ同泊。その夜アキコと田沢か田澤の情事の気配に目覚めたマイコは、最後まで覗いてオナニーしつつ、翌朝は未だ眠る二人を残しコッソリ捌ける。南酒々井の自宅に戻り、陵辱されて以来男を遠ざけて来たマイコが、アキコにアテられたのかバナナを持ち出しオナニーしてゐると夜分に来訪者が。管理人を装つた目出し帽がアキコを急襲、ところが目出しはオナニーさせたマイコを、何故か抱かうとはしなかつた。
 配役残り不完全消去法で野田洋子は、ジョギング中のマイコが遭遇するや自身も野外オナニーに果敢に突入する―学習能力といふ言葉を知らんのか―青姦嬢、お相手氏は判らん。二日目の夜もオナニーを眺めるだけで手を出して来ようとはしなかつた目出しを、マイコは追ひ駆ける。山本竜二は、目出しを捕まへ損ねたマイコが、仕方なく入つた店のマスター。西條美栄は、財布を持たずに飛び出して来たマイコが山竜に喰はれかける現場に、現れる山竜の正規パートナー。昭和の香りを漂はせ、乳も太いが要は体全体太い。ここで整理すると、後述する新宿でマイコに声をかけ華麗に無視されるナンパ師は演出部動員にせよ、開巻の制服レイプ魔ンに、田沢か田澤と青姦氏。全員濡れ場もこなすにしては、男の名前がひとつ不足してゐる。
 新東宝―でも活動してゐた―時代の新田栄が何か見たいとしてみたところ、辿り着いた謎の一作。何が謎なのかといつて、まづ「Dカップスペシャル 揺れる乳頭」といふのは、如何にもなVHSタイトルではあるまいかと思はれる。ハイラボセンターで現像してゐるところからみるに、ピンク映画であることはまづ間違ひなからう。配信動画とはいへ原版の画質は、AVではなく35mm主砲によるものである。そこで、近々の例では新着した鈴木ハルの「昼濡らす人妻」(1989)などは、「人妻柔肌中毒」なるVHSパッケージでぞんざいに放り込まれてゐながら蓋を開けてみるとタイトルは元題で入るゆゑまだいいものの、今回は中身も「Dカップスペシャル~」でしかタイトルされない。加へて、jmdbの水野さおりの項にそれらしき該当作品の記載が見当たらない。今作の製作年を昭和61年と推測したのは、アキコ宅を後にしたマイコが新宿の街をブラつく、背景に「コクーン」(前年歳末封切りの正月映画)の上映中パブが見られる点からの推測である。因みに、jmdbによると水野さおりの映画活動期間は昭和60年から63年、一方その頃の新田栄はといふと、年間四捨五入で二十本と結構な量産態勢に入つてをり、更に一層手も足も出ない。ただテーマといふか主モチーフから窺ふに、丸々漏れてゐるのでなければ時期的にも「快感絶頂ONANIE」(昭和61)が最も臭いやうな気もする。挙句に男優部が名前の数から足らないとあつては途方に暮れるほかないところではあれど、兎にも角にも先に進む。女学生時代の強姦被害から男性恐怖症といふ割に、マイコは気前よく脱ぎ続ける穏やかな裸映画、グラグラ落ち着かないカメラは癪に障るが。話を戻してそのことは同時に、劇映画としてはへべれけであり、髪のボリュームが今となつてはハチャメチャな主演女優以下、女優部は全滅で時代の流れを超え得ない。新田栄が、目出しに生殺しにされた格好のマイコからいはゆる逆ナンされたにも関らず、何故か断る中年男で何時もの如く自ら見切れる以外には派手なツッコミ処にさへ欠く。ただ最終的には各々の障害を克服した男女が目出度く結ばれるラストは、他愛なくすらなかつた筈の一篇を不可思議な麗しさで締め括る。この辺りが、ピンク映画は観て見てみないと判らない、ピンクに限らんか。


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 「不倫女房 絶品淫ら顔」(1994『不倫妻 夫の眼の前で』の2002年旧作改題版/企画・製作:オフィス・コウワ/提供:Xces Film/脚本・監督:佐々木尚/プロデューサー:高橋講和/撮影:紀野正人/照明:三浦方雄/音楽:伊藤善行/編集:金子尚樹 ㈲フィルム・クラフト/録音:ニューメグロスタジオ/効果:協立音響/現像:東映化学/助監督:堀田学/ヘアメイク:中村乃里子/スチール:小島浩史/監督助手:井戸田秀行・広瀬寛巳/撮影助手:塚園直樹/照明助手:佐藤文雄/編集助手:網野一則/出演:浅井理恵・草原すみれ・吉行由美・杉本まこと・久須美欽一・真央元)。
 マンションの外景に秒殺タイトル・イン、但しこのマンションは、純然たる単なる背景。原宿駅に降り立つた伊原か井原か庵原忠男(真央)は、タップリ二分費やしてお目当ての一軒家に。若い真央元の、トレード・マークたるカリ高カットのカリの高さが、未だ発育途上なのが―この時点では―微笑ましい。結局夫婦どちらの縁故なのかは語られずじまひに済まされつつ、母親が死に天涯孤独の身となつた忠男は、東京の親戚宅に身を寄せることに。ドアを開け忠男を招き入れる主演女優のファースト・カットをわざわざ二度繰り返し、忠男は早速広瀬真由美(浅井)に欲情する。部屋に通されたタイミングで、郷里に残した彼女・吉行由美との一戦の繋ぎの判りにくい回想挿んで、よくよく考へてみるとさうさうないシチュエーションにも思へるが、忠男は夫婦と同居する真由美の女子高生の妹・美紀(草原すみれ/a.k.a.西野奈々美)にも劣情を滾らせる、清々しく節操のない男だ。その夜、闇雲に魔王然とした夫・康弘(杉本)に激しく責められる、真由美の派手な夫婦生活の気配に目を覚ました忠男は、そのまゝ始終をガッツリ覗く。だから、さうなるといよいよ以て美紀の同居が不自然ではある。
 配役残り久須美欽一は、忠男のために康弘が捻じ込んだ就職先の上司。職場にはモブ―計五名、若い広瀬寛巳の姿も―に加へワン・カット明示的に抜かれる形で、上垣保朗夫人の小泉ゆかも見切れる。
 ロマンポルノ「ピンクのカーテン」シリーズ(昭和57~58)で知られる―手前は未見なのに何だが―上垣保朗は一旦Vシネ戦線に退いた後、九十年代中盤二年間に亘り、佐々木尚と名義を変へ三作のピンク映画を発表。更にその間、佐々木尚第二作「義母と息子 不倫総なめ」(1995/主演:小泉ゆか)との間に上垣保朗名義で監督した、唯一のピンク映画の新版を再来週観に行く―正直無駄に話がやゝこしい―予習がてら、DMMに入つてゐるのをこれ幸と見ておいた佐々木尚第一作。忠男が真由美を手篭めにするまでで、マッタリ前半を消化。久須美欽一に勤務態度を注意されるや逆ギレ退職した忠男が帰宅すると、広瀬家には雪国から吉行由美が強襲上京。改めて後述するとして忠男には勿体ないのはさて措き、吉行由美の二戦目が拝めるのは喜ばしいにせよ、その後は元々設定程度の物語が、木端微塵に砕け散る。転がり込んだ先とはいへ自宅でついでに事後にも関らず、何故か再びスーツを着込んだ忠男は真由美を連夜の陵辱。続けて深夜、カルピスを飲みに起きたところを犯された美紀は、何と止めに入る姉の前で忠男を受け容れる。ここでディテールを詰めるべく、日日(ひにち)を整理しよう。忠男が真由美を初めて手篭めにした日を初日に設定すると、何だかんだといふか何が何だか判らないけれど兎に角いはゆる姉妹丼が成立するまで、忠男がまさかの一夜にして女優部三冠を達成するまでが二日目の出来事。康弘の一週間のシドニー出張は明後日からと二日目の朝に語つてゐたゆゑ、その日ともう一日は帰宅しておかしくないのに、杉本まことは二日目の朝以降綺麗に退場。それ以前に、棹の根も乾かぬ内に忠男の部屋でヤッた直後の、吉行由美の存在が消失するイリュージョンが逆の意味で画期的。結局手替へ品替へ巴戦し倒した末、ヤリ疲れそれぞれ眠る真由美と美紀を残し、忠男が新しい旅立ちとばかりに一人広瀬家を後にするラストは不完全無欠に正体不明。そもそも、ある意味真央元はハマリ役なのだが、自己中心的で粗暴な忠男の造形が感情移入に激しく難い。居候しかも無職の分際で、忠男が卓の下では姉妹に尺八を吹かせながら、偉さうに肉を喰ふ件なんぞ憎くて憎くて仕方がない。三本柱に穴はなく、現在の水準より普請の厚さも感じさせる画作りは終始堅い。申し分ない筈の裸映画が、となるとゼロで十分なのに積極的にマイナスにまで突入した劇映画に足を引かれる、珍しい形の一作である。

 因みに今作、真由美が康弘の眼の前で、忠男なり美紀に抱かれるシークエンスは一切全く一欠片もない。


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 「痴漢電車 即乗りOKスケベ妻」(1997/製作:関根プロダクション/配給:大蔵映画/監督:関根和美/脚本:関根和美・樹かず・片山圭太/撮影:小山田勝治/照明:秋山和夫/助監督:片山圭太/録音:シネキャビン/監督助手:横井有紀/撮影助手:中川克也/スチール:佐藤初太郎/効果:東京スクリーンサービス/編集:㈲フィルム・クラフト/音楽:リハビリテーションズ/現像:東映化学/協力:映画屋倶楽部/出演:冴月汐・風間今日子・白井ゆかり・樹かず・山本清彦・杉本まこと・飯島大介《友情出演》・岡田謙一郎《友情出演》・吉田祐健《友情出演》・上田良津・寺島京一・生方哲・戸成典子・坂部濠)。
 電車通勤のOL・小泉里佳(風間)の尻に痴漢の手が伸びる。背後には、如何にも怪しげな飯島大介。但し飯島大介の両手は、拡げたスポーツ新聞で塞がれてゐた。贅沢にも飯島大介に続き吉田祐健も姿を見せつつ、体が動いた弾みで里佳のイアホンが外れるタイミングでギターリフが鳴り始めタイトル・イン。濡れ衣をかけられた飯島大介は降車、再度背中を確認した里佳は驚く。そこに居たのは、親友の片岡美穂(冴月)の夫・達夫(樹)であつたのだ。カット跨ぐとここは珍しく無駄のない快速展開、里佳が達夫は不在の片岡家に乗り込んでの直談判。激昂した美穂は里佳と絶交したものの、どうしても気になり朝送り出した達夫を尾行、同じ電車に乗つてみることに。
 配役残り白井ゆかりはそんな美穂の眼前痴漢に遭ふコギャル・麻美子で、杉本まことが麻美子をオトしたつもりが最終的にはオトされる痴漢師・純一。点火された麻美子主導で二人はホテルに、そしてその後を追ふ美穂、主目的は完全に消失してゐる。山本清彦は、里佳の彼氏・琢磨。飯島大介と祐健のみでは飽き足らず、終盤更に飛び込んで来ることに度肝を抜かれた岡田謙一郎は、美穂を陥落する痴漢師。クレジットでは、友情出演勢は三人纏めて中年男とされる。上田良津以降は乗客要員、どの人が上田良津なんだろ。
 何のテーマも特に目当てがあるでもなく、タイトルだけで適当に選んだ関根和美を漫然と見る。ルーズな愉悦が、それはそれとしてそれなりには代へ難い。夫に痴漢の嫌疑をかけられた若妻が、真相を究明すべく電車に乗る。痴漢電車的には、実は案外どころでなく大筋はしつかりしてゐる。美穂が一人で達夫と同じ電車に乗るところから幕を開き、三番手と二番手の濡れ場を連続で消化する中盤と、翌日今度は里佳と二人で達夫と同じ電車に乗るところから幕を開く終盤。綺麗に三等分された、三部構成の尺の配分―だけ―は完璧。本筋は一向進まないにも関らず、抜群のタイミングでヒロインが痴漢電車に乗車することで全体のテンポは悪くないよりもう少し好調。となると、一歩間違へれば名作痴漢電車たり得てゐたのかも知れない、のに。寄り道ばかりして遊んでゐる内に、結局本筋の筈の数珠に似た腕飾りが確定する疑惑は清々しく放置、美穂が被痴漢の快感に目覚めて終りだなどと開いた口から砕けた腰骨が飛び出すやうなエンディングは流石関根和美。ウィキペディアの関根和美の項にある、“男女の恋愛が織り成す人間模様を社会派的タッチで鋭く描き出す作品”といふのは一体何処のどいつが編集したんだ。そんな途方もない与太、俺でも吹けんぞ。登場順に飯島大介と祐健と岡謙が無駄に見切れる―何て濃い車輌なんだ、しかもこれでもまだ、亜希いずみを温存してゐる―車内の豪華さだけは心に残る、三人がかりで脚本を書いておいて、船頭多くして船何とやらといふ一作である。

 改めて気付いたことだが、この頃は滅多矢鱈と量産してゐた割に、関根和美は2004年の「指使ひ感じちやふ」(主演:桜月舞)以来痴漢電車から離れてゐる。但し「四十路の奥さん ~痴漢に濡れて~」(2006/主演:三上夕希)中に、短い電車痴漢の一幕ならばなくもない。何れにせよ、御無沙汰は随分御無沙汰。ロケーションの貧しさが顕著な昨今、ここいらで気分を変へた久し振りの出発進行を観たいところでもある。


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 「喪服妻奥義 ‐腰は“乃”の字で‐」(1996/製作:旦々舎/提供:Xces Film/監督:浜野佐知/脚本:山崎邦紀/撮影監督:河中金美/撮影:田中譲二/撮影助手:田宮健彦・松本治樹/照明:上妻敏厚・藤森玄一郎/編集:(有)フィルム・クラフト/音楽:藪中博章/助監督:佐藤吏/制作:鈴木静夫/ヘアメイク:斎藤秀子/スチール:岡崎一隆/効果:時田滋/録音:ニューメグロスタジオ/現像:東映化学/出演:愛田るか・田口あゆみ・泉由起子・池島ゆたか・樹かず・真央はじめ・杉本まこと)。
 喪服を着装するるかるかを足下から舐めて、さくさくタイトル・イン。杉本まことの遺影スナップを抜くと、当の亡夫・鈴沢(杉本)がガラッと襖を開け衝撃の登場、するのは導入が大胆な回想。年長なのに呼び捨てにする桂への思慕を抉つけ、鈴沢が妻の亜矢子(愛田)を手篭めにする。亜矢子はそんな桂(池島)と、鈴沢の四十九日の墓参。実相も知らず親友と鈴沢を慕ふ桂の姿に、亜矢子は複雑な心境を覚える。鈴沢の訃報に触れ現れた亜矢子元カレ・狛江登(真央)と、こちらは半ば正当に旦那と亜矢子の仲を邪推する桂の妻・恵美(田口)の顔見せと絡み挿んで、鈴沢のパブリック・イメージに疑問を懐いた亜矢子は勤務先に赴き、かつての部下・塚原真一(樹)と会ふ。泉由起子は、何気に不穏な雰囲気に何となく起動する塚原の彼女・辺見里香。
 気紛れに開催してみた全五作からなる愛田るか映画祭。特に感動的でもないフィナーレは、当時大槻ケンヂに公開題の愉快さがエッセイで紹介されもした、浜野佐知1996年全十一作中第八作、愛田るか的には第二戦に当たる。改めて繰り返すと、初陣と今作が浜野佐知。第三戦に山崎邦紀を挿んで、もう二本は大御大・小林悟。総括すると旦々舎と大御大を以てしても愛田るか鉄壁のポーカーフェイス―単なる無表情ともいふ―を崩し得なかつたのか、今回も残りの四作に劣るとも勝らない一作。といふか、浜野佐知による初陣も明後日だか一昨日な笑ひ処には事欠かないが、御大風フルバーストのいい加減さがグルッと一周する「痴漢チン入乱乳電車」が唯一、別の意味でならば面白いと激しく勘違ひを拗らせればいつていへなくもない。さう考へると、最初に略称チンチン電車を見てゐたからこそ、愛田るか映画祭なんて仕出かさうと思ひ至つたのかも知れない。我ながら、迸る無為ぷりが実に清々しい。歌つて呉れよ太川陽介、俺の為に、Mui-Mui♪話を戻して、皆に愛された好人物と、独善的なサディスト。喪服妻が亡き夫の外面と内面(そとづらとうちづら)の甚だしい乖離に悩む本筋は、磨り硝子越しの押しつけオッパイも披露する亜矢子と塚原の玄関口での一戦を、幾ら瞬間着付を結果的には伏線と解釈するにせよ、無造作極まりなくまさかの夢オチで処理する辺りでほぼ消滅する。鈴沢に仕込まれた“乃”の字腰使ひを通して、亜矢子は主体的な性の悦びに開眼。墓石に喪服を引つかけるショットは印象的な、亜矢子が晴れ晴れと新しい人生への歩を進めて行くラストは旦々舎の王道展開ともいへ、主演女優が牽引力を全く欠く以上仕方もないのか、斯くも行間がスカスカだと最終的には愛田るかの魔性に融解した映画といふ印象が強い。矢張り―塚原戦とは別夜の―淫夢中で絡むのみで、折角弔問に訪れたのに袖にされ続ける真央はじめや、鈴沢家あるいは旦々舎旧邸まで彼氏を尾けたにも関らず、都合のいい物分りのよさで濡れ場だけ消化して捌ける泉由起子は感動的に何をしに出て来たのか判らない。尤も、よくよく考へてみると故人特権で一人気を吐き逃げする鈴沢役の杉本まこと以外は、混濁するほどの中身さへ乏しい雲散霧消した物語の中で、全員が右往左往に終始してゐるやうな気もする。面子の重みは若干どころでもなく落ちるとしても、近年では国沢☆実・工藤雅典・荒木太郎を木端微塵に連破した、星野あかりとの時代を超えた相似を想起しかけたが、自身の破壊力といふよりは作品に恵まれぬ悲運が濃厚な星野あかりと、愛田るかとを並べるのは流石に酷かといふ話である、なら書くな


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 「乱宴の宿 湯けむり未亡人」(2013/製作:OKプロモーション/提供:オーピー映画/監督:小川欽也/脚本:水谷一二三/撮影:創優和/照明:江戸川涼風/録音:シネキャビン/助監督:加藤義一/音楽:OK企画/編集:有馬潜/スチール:津田一郎/監督助手:城定秀夫/撮影助手:宮永昭典/照明助手:竹洞♀哲也/現像:東映ラボ・テック/効果:東京スクリーンサービス/出演:舞原美咲・あずみ恋・篠田あさみ・久保田泰也・城定夫・姿良三・なかみつせいじ)。撮影の創優和が、ポスターでは何故か吉田剛毅に。
 イメージ風の篠田あさみとなかみつせいじの絡みで開巻、タイトル挿むと案外昨今のピンクでは滅多に見ない、歌舞伎町一番街のネオンサイン。小宮祐二(なかみつ)はやつとの思ひでアフターに漕ぎつけたクラブの女・山野舞(篠田)を、一人住まひの自宅に招く。小出しされる設定を纏めると、小宮は五年前に交通事故で妻(名前すら出て来ない)と死別。ショックで仕事は辞めたものの保険金で購入した株がアベノミクス効果で跳ね、悠々自適の生活を送つてゐた。前戯をコッテリ済ませ一旦シャワー、小宮の悩みは、贅沢にも度外れた大きさの巨根。結局膣が浅く―“かはらけ”といふのは、単なるパイパンのことを指すのではないの?―体が合はないどころか、舞にはそもそも決まつたパトロンが居た。気晴らしに小宮が向かふのは、勿論伊豆。三年前釣りの最中に死んだ亡夫(小宮の亡妻同様、純然たるギミック)を偲び、崖つ縁に佇む佐々木京子(舞原)をスーサイドかとアクティブかつポップに誤解した小宮は、そのまゝの流れで京子が女将を務める、こちらも断固無論花宴に宿を取ることに。仲居の小林真弓(あずみ)を花代五万で口説くのに小宮は成功、真弓にも小宮は大き過ぎたものの、一人寝の寂しさから、京子が月に二度真弓と百合の花を咲かせるといふ重要情報を仕入れる。
 配役残り登場順に、秀を抜いた城定夫と姿良三(=小川欽也=水谷一二三)は、直角に近い俯瞰で人相の識別も不可能な、チッェク・アウトする二人連れ客。久保田泰也は三河屋的ポジションで花宴に出入りもする、真弓の彼氏・小山信二。
 今年目出度く監督生活半世紀を迎へる現役のレジェンド、今上御大・小川欽也の2008年以降は年一本ペースの2013年作。舞攻略に失敗した小宮が、プラッと伊豆に足を伸ばす。小川欽也が2011年に完成させた現代ピンクの到達点、まこと有難き伊豆映画である。ケッサクなのが、伊豆に入つた小宮が漏らす感嘆「何時来ても気持ちいいとこだなあ」。確かに、伊豆ロケに参加してゐるのが微妙なものをサッ引いたにせよ、なかみつせいじが出演した花宴映画は既に十指に余る、確かに何時も来てる。小宮はあちらこちらを結構巡り、伊豆高原ビール目当てに車で出発した時には激しくツッコミかけたが、ちやんと買つて帰り部屋で飲む配慮も忘れない。とまあ伊豆―と花宴―の、今時贅沢にも35mmフィルム撮影による観光PR映像としてはそれはそれとしても、素面の劇映画的には画期的な中身の薄さにも関らず何故か微睡まされることもなく、一時間をそれなりに心豊かに観させる。主演女優は首から上の湾曲を補正した―但しプロポーションは数段落ちる―中村杏里(a.k.a.永森シーナ)で、あずみ恋はさういふメイクなのか顔が少々キツい。花宴に於いてさへも小宮は舞を想起し、しばしば小川欽也にビリングをさて措かせる執心を感じさせる篠田あさみも、といつて然程の決定力を有してゐるでなく、決して特に強靭な裸映画といふ訳でもない。当方当日のコンディションも爆発寸前の腰を抱へ、各駅停車と快速を乗り継ぎ一時間強揺られ遠征したとあつては間違つても満足ではない割には、不思議な一作である。とはいへ、改めて冷静に整理すると①モノがデカく②遊んで暮らせる財産に恵まれた男が、③風光明媚かつ食物も酒も旨い土地にて、探し続けた生涯の伴侶と出会ふ。羨ましい限りに幸福な物語を、ルーチンすれすれの演出で馬鹿馬鹿しさや瑣末な妬ましさなんぞ感じさせずに、穏やかなエモーションとともにマッタリと綴る。伊豆映画を現代ピンクの到達点と称した点に関して、今回実は必ずしも与太を吹いてゐるつもりはない。トウのたちかねない締めの京子と小宮の濡れ場に、真弓公認の小山の夜這ひを噛ませる構成などは確実に老獪である筈で、なかみつせいじの地味に芳醇な名演は、底の抜けた始終を器用に固定する。当たりの際の新田栄の温泉映画も髣髴とさせる、娯楽映画の慎ましやかな名作といへるのではなからうか。

 然し一昨年の助さん角さんも超え、何と加藤義一×城定秀夫×竹洞哲也によるジェット・ストリーム・アタック、リアルタイムでこんな布陣が成立するのが凄い。


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 「巨乳マッサージ しびれて絶頂」(2013/制作:《有》大敬オフィス/提供:オーピー映画/脚本・監督:清水大敬/撮影:井上明夫/照明:瀬尾進/編集:酒井正次/録音:シネキャビン/相談役:丹雄二/助監督:関谷和樹/撮影助手:玉田詠空/照明助手:松浦与作/演出助手:北原大・庭本匠悟/ポスター撮り:山岡達也/現像:東映ラボテック/協力:劇団ザ・スラップスティック・大珍カンパニ/ー出演:青山菜々・なかみつせいじ・中村勝則・中江大珍・山科薫改め三毛猫泣き太郎・サーモン鮭山・太田黒武生・菊池美佳子・齋藤ひろこ・犬山ワン子・李紅蘭・竹本泰志・周磨ッ波・春園幸宏・高木圭一郎・鷹羽和利・愛代さやか・柏木もえ・三沢亜也)。
 若い嫁を貰ひ嫉妬深い亭主・青山武男(なかみつ)が表を掃除する「菜々のマッサージ治療院」に、今日も菜々(華麗にハーセルフ)の巨乳目当てに助平な常連客(中村勝則・中江大珍ともう二名)が詰めかける。軽く着替へを見せる、菜々の身支度が完了してタイトル・イン。大胆にも乳を放り出し乳首で愛撫するオッパイ・マッサージと、触発されたオイルでヌラヌラのイマジン経て、昔の恋人を捜す道中行き倒れた山科恵(三沢)を武男が担ぎ込む。翌朝、回復した恵は十万円の謝礼と一旦開封を禁じた重要書類を残し、青山家から姿を消す。一方山科邸、恵の息子・秀一(山科)と、妻・明美(柏木)のビザールな夫婦生活、柏木もえは何処から声出してんだ。恵が公証役場で作成したらしき遺言状の存在が、目下の夫婦の関心事。そこに帰宅した恵が回想する過去、恵(若年時/愛代さやか)は健児(竹本)と恋に落ちつつ、健児の上京に伴ひ二人は離れ離れに。最後に交した最初の情で恵は妊娠・出産したものの、健太郎と名付けた息子は大黒家に養子に出され、恵は経済的に逼迫した両親の勧めに渋々従ひ地主の息子である山科薫(故人/ヒムセルフな二役目)と結婚する。とまあここまでは、それなりに順当な人情劇であつた。
 後述するが何気に注目してゐた、清水大敬2013年第一作。ぼちぼちの序盤を経ながら、清水大敬が自らワハハハハ!と大笑一番飛び込んで来るや、中盤以降はとんとん拍子の斜め上だか下を爆走する高速展開。結局二年前に他界してゐた、実父―が即ち健児―を捜す過程で足を挫いた大黒健太郎(竹本泰志の二役目)が都合よく待合室に座る「菜々のマッサージ治療院」に、秀一が四人の黒服を引き連れ恵が残した遺言状を寄こせと怒鳴り込む。そこに更に空前の御都合主義を爆裂させ居合はせたのがギックリ腰の割には闇雲に元気な、秀一の応援団の先輩、兼菜々の最初の男でもあるといふ超絶の属性を併せ持つ、アラン・ラッド気取りの風来坊・大海権三(清水)。今も秀一が権三には全く頭が上がらない鉄の上下関係を方便に、始終はザクザク進行、プリミティブ過ぎてフラグに気付かないオチまで猪突猛進。清水大敬が2012年は王道娯楽作家への成長―の気配―を感じさせたにしては、権三がワハハワハハと騒いでゐる内にあれよあれよと一応ハッピー・エンドが転がり込むオートマティックな棚牡丹作劇は逆走しか思はせないが、逐一が壊滅的に不条理でないだけ、カサベテスな頃を思へばまだしも長足の進歩の範疇に止(とど)まるとさへいへるのか。御丁寧にエンド・ロールに際しても織り込まれる、青山菜々の偉大なる爆乳は堂々とスクリーンを支へ抜き、群を抜く馬鹿馬鹿しさもグルッと一周を果たすのに成功したのか、案外腹も立たない一作ではある。
 配役残りサーモン鮭山は、ダメ亭主が当てにならない明美が頼る強面・大海晴夫。何故か権三と同じ苗字なのだが、単なる赤の他人。ある意味清水組常連のその他大勢は、「菜々のマッサージ治療院」常連客と恵の両親と大黒夫妻、それに秀一と晴夫それぞれの配下の黒服。

 個人的に今作を注目してゐたのは、何時の間にか新路線エクセスに鞍替へしてゐた―?―清水大敬に関してではなく、清水大敬三作前「淫行病棟 乱れ泣く白衣」(2011/主演:野中あんり)以来の新作ピンク映画出演となる、グラビアデビュー時の名義が三沢亜也こと御存知しのざきさとみ。そしてしのざきさとみが以前から自身で明確に見据ゑてゐた区切りの年に2013年が当たる、地味に重要なトピック。尤も終に断念したのか劇中現在時制ver.の恵の濡れ場―遺産相続の都合で薫を故人にした以上、相手も見当たらないが―はなく、明確にしのざきさとみが個別にフィーチャーされる訳でも、特にも何も欠片もない。但し新田栄が瀬戸恵子に用意した―のかも知れない―花道「四十路寮母 男の夜這ひ床」(2006)同様、他の組が素通りする中清水大敬がそれはそれとして歴戦の女傑に一舞台設けたものならば、その器量は評価されて然るべきではなからうか。


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 「白乳秘書 淫美なナマ足」(1998/製作・配給:大蔵映画/監督:小林悟/脚本:堀禎一/撮影:柳田友貴/照明:ICE&T/編集:フイルムクラフト/録音:シネキャビン/助監督:堀禎一/スチール:佐藤初太郎/タイトル:ハセガワプロ/現像:東映化学[株]/監督助手:竹洞哲也・城定秀夫/出演:愛田るか・里見瑤子・平川ナオヒ・牧村耕二)。
 無闇にスカート丈の短い一般職OLの制服にて、加奈子(都合二度呼称されはする苗字が聞き取れない/愛田るか)が高橋専務(一度だけ声は聞かせる、大御大?)に頼まれた託物を済ませ帰社する。唐突にラブホテルにて、ニート体質の裕之(平川)と彼女のハルコ(里見)が仲良く喧嘩しつつのセクロス、平川ナオヒ(a.k.a.平川ナオヒロ/現:平川直大)が声から若い。相ッ変らず滑舌が悪く、何をいつてるのか殆ど判らない薩摩剣八郎係長と無駄に社の表で擦れ違つた加奈子の、無人の秘書課での更衣を俯瞰で捉へタイトル・イン。父親が殺人事件を起こし思春期を施設で過ごした加奈子は、幼馴染である裕之の父親・飯田(牧村)に身元を引き受けられ一部上場企業の専務秘書の職を紹介されるも、以後飯田に犯され続ける日々を送る。一方ハルコは、裕之が夢の中で洩らした加奈子の名前に噛みつく。裕之が引き摺る想ひも知らず、飯田はダメ息子の就職の世話を高橋に依頼。加奈子と再会した裕之は、その夜呑みの帰りにへべれけになりながらも愚直な恋心を告白する。
 随時開催愛田るか映画祭、第四回は前作に引き続き小林悟のメガホンによる最終第五作。五本の内訳が旦々舎と大御大、しかも全てに於いて主演となると、そこだけ掻い摘めばまるで嘘のやうに輝かしいキャリアではある。性奴の境遇に苦しむ女が、幼馴染と無造作に再会したことから始まる悲恋物語。大筋としては大体さういふお話の筈なのだが、結局足かけ三年の間に微動だにプログレスしなかつた、僅かでもシリアスなシークエンスに放り込まれるや途端に、美脚ならば結構なのに残念ながらば行ひとつ上の馬脚を現す愛田るかのレス・ザン・演技力。以前に、貫禄の御大仕事が全篇を煙に巻く。里見瑤子の濡れ場とはいへ、裕之とハルコがちんたらちんたら尺を喰ふ序盤から大概なのだが、最大の支離滅裂あるいは五里霧中要は木端微塵は、劇中現在時制で自宅マンションにて飯田に手篭めにされた加奈子が、事後は案外どころでなく普通にイチャイチャしてゐたりなんかする謎描写。それはその光景に衝撃を受けた裕之が、鉄パイプで父親を殴り殺しもしようといふものだ。もしも仮に万が一、元脚本からさうであるとしたら幾ら何でも堀禎一をホスピタルに連れて行くほかないところなので、ここは迸る御大パワーと信じたい。ついでに裕之が飯田を殺める、凶行の件も地味にケッサク。飯田が息子が握り締めた鉄パイプに気付いたカットから、走行中の電車、交通量の多い道路、再び走行中の電車のイメージ・ショットを、のんびりと十数秒連ねる長閑な繋ぎには何故か感動した。子細はどうあれ、最後は加奈子と裕之がセックスしないと話が終らない、そもそも何が始まつたのかもよく判らないけれど。出し抜けに加奈子は子供を欲しがりだし、裕之はそんな女に狂気を覚える。オーラスは加奈子の太股を垂れる精液のストップ・モーションに、「かうするしか、なかつたのよ」と棒よりも一本調子なモノローグが被さり“完”、どうするしかなかつたんだ。小林悟映画の、“完”を打たれたとて完結してる気が全ッ然しない感が実に清々しい。それも兎も角、え、ネタバレ?かうするしか、なかつたんだ。


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