真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「痴漢電車 指で点検」(昭和62/製作・配給:新東宝映画/監督・脚本:深町章/企画:伊能竜/撮影:下元哲/照明:守田芳彦/音楽:二野呂太/編集:酒井正次/監督助手:橋口卓明・五十嵐伸治/撮影助手:村山浩/照明助手:馬田里庵/スチール:津田一郎/録音:東音スタジオ/現像:東映化学/出演:田口あゆみ・橋本杏子・水野さおり・松田知美・ジミー土田・池島ゆたか・山本竜二・増利仁・津崎一郎・橋井友和)。出演者中増利仁が、どう読むのかも誰の変名なのかにも辿り着けず。
 パンで順々に移動する高層ビルのロングに電話が鳴り、南田(池島)・西川(ジミー)・北山(山本)が“何時ものとこ”に呼び出される。ドラムロールが起動してタイトル・イン、駅のコンコースを目的地に向かふ三人を一人づつ押さへて、一堂に会したのは何時もの「鈴乃」。多分東野辺りの東“トン”ちやん(増利仁か津崎一郎=津田一郎)交へ、この面子での雀歴が十二年も超える四人が麻雀の卓を囲む。適当な流れで記憶に残る牌の話になり、さりとて過剰な思ひ入れをあくまで否定する西川の手が、赤い中“チュン”を引いたところで止まる。以降北山が白“パイパン”、南田は發“あを”と、三人が三元牌を引く毎に、それぞれの色に因んだ過去の女性遍歴を想起する。といふ趣向のオムニバス仕立ての一作、実は当サイト、マージャン全然知らないんだけど。
 配役残り橋本杏子が、西川が電車の車中で会敵したルミ子。当初処女を騙りつつ、“メンスの時ぢやないと燃えない”と称し、経血を滴らせながら電車逆痴漢で男を漁るハードコアな女。橋口卓明変名の橋井友和は、西川が同居する同僚のヒムセルフ。血が極端に苦手な橋井君が、西川に紹介した婚約者がルミ子といふオチ。水野さおりは、北山が一方的に電車痴漢を仕掛けるパイパン、呼称されぬゆゑ役名不明。無毛を苦に五年前一度自死を図つた、パイパンを救つた矢張り博打打ちで老けメイクの山竜が闇雲に登場する白パートが、最もトッ散らかつたまゝどさくさ振り逃げる。南田が痴漢する女子高生のチエミが松田知美、田口あゆみがチエミの姉で、福島の牧場主に嫁いだとかいふユウコ。青色を担当するのは、闇雲に未だ蒙古斑の残るチエミ。そして問題が、まんまと三百万カッ浚はれた―相続成金の―南田に、他愛ない真相を明かす牧場主。東ちやん同様、この人も背面肩口からしか抜いて呉れないため、津田一郎は見れば判るにも関らず、増利仁と津崎一郎を詰めきれない。ただ、僅かに覗く横顔を窺ふにどちらかといふと牧場主が津田一郎で、東ちやんの背中は深町章に見えるやうな気がしなくもない。
 “指で点検”なる下の句は盲牌にかけたのか、深町章昭和62年第一作。回想突入は各色の丸枠で色も合はせた車両を囲んで火蓋を切る三篇のうち、青―実際には緑だが、信号の要領で青―は無理矢理気味でもあれ、細かいことをいひない。苛烈な性欲に駆られ、切なささへ漂はせ男を求める橋本杏子の痴態に、グラマラスの力任せで圧す水野さおり。田口あゆみと松田知美は締めに車内で百合も咲かせる姉妹丼勝負と、四本柱で最後に登場するビリング頭が、実はヘテロの痴漢電車には乗らない一種の奇襲も繰り出しつつ、バラエティ豊かに裸映画的には過不足なく安定。呆然と南田が手から落とした發が、東ちやんに大三元を振り込む大オチが綺麗に決まる気の利いた小品である。

 にしては一点画竜点睛を欠くのが、宅を囲んだ四人の並び。各篇冒頭で各々西川・北山・南田に寄る程度で、東ちやんは頑強に背中しか見せない画角から基本微動だにせず、東ちやんの対面は西川、ここまではいい。問題が東ちやんの画面左手に北山で、右手に南田。即ち、東南西北を実際の方位にも合はせようとした場合、北山と南田の座り位置が逆である。


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