真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「色道四十八手 たからぶね」(2014/製作:PGぴんくりんく/監督・脚本:井川耕一郎/企画・原案:渡辺護/プロデューサー:太田耕耘キ《ぴんくりんく》・林田義行《PG》/撮影:清水正二/録音:シネキャビン/編集:酒井正次/特殊造形:新谷尚之/助監督:佐藤吏/監督助手:北川帯寛/撮影助手:海津真也・矢澤直子/照明応援:広瀬寛巳/編集助手:鷹野朋子/スチール:太田耕一/メイキング:松本岳大/タイミング:安斎公一/現像:東映ラボ・テック/協力:坂本礼・大橋聡子・大石隆史・北岡稔美・柴晶子・佐倉萌・池島ゆたか・神戸映画資料館/『尺八弁天地獄唄』唄:結城リナ/出演:愛田奈々・なかみつせいじ・佐々木麻由子・ほたる・野村貴浩・岡田智宏)。スチールの太田耕一は、太田耕耘キの本名。
 日野繭子の題字担当は何処にもクレジットされない、第一次タイトル開巻。製作のみのPGぴんくりんくクレジットと、広瀬ヒロミ名義のひろぽんによる渡辺護のイラストに続き、“ピンク映画五十周年記念”を真正面から謳ふ。春画に岡田智宏一流の朴訥とした―春画についての―イントロダクションが入り、中盤登場する四十八手体位写真集のモデル・雀(ほたる/ex.葉月螢)と久生(野村)の一戦。無茶な体位に挑んだ、久生が腰を破壊。「馬鹿夫婦春画を真似て筋違ひ」の川柳を紹介した上で、「けれども僕には、その川柳を笑ふことが出来ないのです」、と岡田智宏が自らを顧みて再度明朝体でのタイトル・イン。葉月螢のダブついた腹肉は見なかつたフリをすると、少なくとも撮影部は情感豊かな色を出す。
 タイトル明けは意表を突く、新婚一年の高橋一夫(岡田)と千春(愛田)が千春主導で興じる紙相撲。アイロニカルな、小道具とでもいつた寸法か。初心な素振りを千春が見せる夫婦生活をひとまづ披露した数日後、十一時前に一夫が帰宅すると、先に寝てゐた千春が「たからぶね・・・・」なる謎の寝言を漏らす。翌朝その話題を振られた千春が動揺も隠せない中、一夫と千春は一夫の叔父である、健次(なかみつ)・敏子(佐々木)夫婦宅に遊びに行く。昭和の香り高い珍本、四十八手体位の写真集を一夫に譲らうかとしたところ、エロ免疫の皆無な千春に見つかるとと一旦固辞された健次は、全然免疫ないんだと含みのある表情を浮かべる。ただそんな健次と千春は、健次曰く「一夫君の結婚相手が君だつて知つた時は驚いた」の一言で豪快にバックれる、四十八手を諸々試すほどのコッテリした男女の仲に五年前からあつた。掠めるやうに見切れるエキストラ部も、配役は残らない。
 ピンク映画に関する二大ZINE、東の『PG』と西の『ぴんくりんく』がタッグを組み、ピンク映画五十周年を記念して自主制作を起動。したものの当初監督に予定されてゐた、企画自体の原案でもある渡辺護が準備段階で死去。指名された格好の、長篇かつ商業初監督作となる井川耕一郎が跡を継いだ一作。有志が自分達で渡辺護に映画を撮らせ、ピンクの五十周年を言祝がうとする。その、心意気自体は全く以て敬服するに吝かでないにせよ、それはそれ、これはこれ、俺は心の棚の上。出来不出来は、全然また別の話。これで素晴らしければ万事が丸く収まるか余計な角も立たないところが、直截に面白くも何ッともないんだな、困つたことに。
 何はともあれ、最早頑なさすら感じさせかねないレベルで、濡れ場をことごとく中途で端折つて済ますのには呆れるのも通り越して匙を投げた。何か、井川耕一郎は絶頂ないし射精に至る絡みを撮ると、自分か家族が死ぬ呪ひでもかけられてゐるのか?中途半端な拘りもしくは、下手な美意識なり矜持が邪魔をするのだとしたら、いつそ量産型裸映画には関らないで頂きたい、据わりと居心地が悪くて悪くて仕方がない。敏子の“女の勘”一点突破で一本調子に進行する、七十分強もの尺を空費しておいて最終的には平板な展開もさることながら、満足に繋がりもしないカットさへ散見される始末。敏子が一夫にスワッピング、もといクロスカウンターを提示する件。敏子が立ち上がる画から、次のカットでは瞬間移動したかの如く位置が飛び過ぎで、更に一層酷いのが、健次の誕生日祝ひの席、敏子が探偵に依頼した浮気調査の結果を突きつける修羅場。カットが変る毎に、一夫が口にグラスをつけてゐたりゐなかつたりするのは、間違ひ探しでも仕掛けたつもりか、一々違和感に躓いて躓いて仕方がない。性愛そのものよりも、それに振り回される人間か人生の滑稽さに主眼を置いたのかも知れないが、濡れ場ひとつといふのが本当にひとつも最後まで描かず、それ以前にカットも満足に繋がらないやうな映画に、ピンクが周年記念を祝はれる謂れがあるのであらうか。十一年前、四十周年記念に挑んで大御大・小林悟は死んだ。小林悟も小林悟で、文字通りの決死は兎も角、「桜貝の甘い水」の仕上りは例によつて何時も通りのアレなのだけれど、どれだ。閑話休題、岡田智宏が十八番のメソッドで素頓狂にキレる優作ばりの狂気や、よもやまさか人間紙相撲の大技。見所が決してなくはないとしても、闇雲なガチ屋台崩しオチには呆気にとられ、上滑りする紙芝居アニメーションが、木に竹も接ぎ損なふ。渡辺護の御名が持ち出されるや、しばしばコロッと世評がチョロ負かされるのが常々謎に思つてゐるものだが、ワーキャー持て囃されるには、清々しく値しまい。いい加減、名前で映画を扱ふ悪弊から解放されないか。

 因みに、あるいは改めて。未完の大女優・愛田奈々は鼻差の六日後に公開された池島ゆたか2014年第二作「官能エロ実話 ハメられた人妻」(脚本:五代暁子)を最後に、何某か大人の事情を拗らせて姿を消す。
 あと些末をひとつ思ひだした、わざわざ頭に載せた皿、サクッと落としてたら全然意味ない。


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 「美乳夜曲 乱れる白肌」(2018/制作:ナベシネマ/提供:オーピー映画/監督:渡邊元嗣/脚本:波路遥/撮影・照明:飯岡聖英/録音:梅原淑之/編集:酒井正次/助監督:小関裕次郎/監督助手:植田浩行/撮影助手:岡村浩代・スリグルン/照明助手:広瀬寛巳/スチール:津田一郎/選曲:徳永由紀子/MA:ポストモダーン/仕上げ:東映ラボ・テック/カラリスト:石井良太/出演:妃月るい・里美まゆ・横山みれい・小滝正大・本多菊次朗・ケイチャン)。クレジット終盤に力尽きる、各部セカンドからラボテまでを一緒くたにされると、流石について行ききらん。
 スナップ写真の貼られた部屋で、主演女優が身支度。口遊み始めた鼻歌はドリフの「誰かさんと誰かさん」、ではなく、スコットランド民謡を基にした唱歌「故郷の空」。スナップの中から小滝正大を抜き、深夜の公園。自作イラストでTシャツをわざわざ作つたのか、泥酔した怪獣絵師・蜂谷真(小滝)が、ブランコで「故郷の空」を鼻歌で口遊む妃月るいを目撃、「平安《ひらやす》京子ちやん・・・・!?」と一々固有名詞を口に出して絶句する。軽くパンチラ掠めるズームを暫し見せた上で、混乱し卒倒した蜂谷が意識を取り戻すと、ブランコには朽ち果てた、草で編んだ髪飾りが残されてゐた。画面左半分をデカデカ占拠する、非現実的に大きく鮮明な満月にタイトル・イン。確かに闇雲な月フィーチャーに、窺へなくもなかつた趣向にしても。
 こちらは、“筋肉は剣よりも強し”、“僕のアソコはムキムキマン”。冷蔵庫の中のミネラルウオーターにまで“筋肉の水”、手書きの―他愛ない―筋肉ネタが膨大か執拗に貼り巡らされた一室。日課の筋トレに余念のない、蜂谷の大学時代の同級生・燕和男(本多)が、数十年前と変らぬ京子を見たとする蜂谷の電話を一笑に付す。社長の倅である蓬莱渉(ケイチャン/ex.けーすけ)の家に、今と殆ど全く変化のない蜂谷と、バンカラな燕は当時居候してゐた。そんな三人といふか三馬鹿にとつて、矢張り同じ大学に通ふ京子(妃月)はマドンナであつた。ところで、自慢の筋肉を活かしたジゴロ。とかいふぞんざいな造形を振られた本多菊次朗は、「女子トイレ エッチな密室」(2014/監督:中川大資/脚本:小松公典/主演:由愛可奈)以来結構久々のピンク復帰。それも、それとして。中川大資、今何処。
 配役残り、横山みれいはアポ無しで燕宅を急襲する、ワン・ノブ・顧客の中田マリ。横山みれいと本多菊次朗による色々重量級の一戦に際しては、フィニッシュは男優部もフレーム外に排し、実用的、あるいは即物的なアプローチに徹する。2016年第二作「めぐる快感 あの日の私とエッチして」(脚本:山崎浩治/主演:星美りか)・2017年第一作「揉んで揉乳《もにゆ》~む 萌えつ娘魔界へ行く」(脚本:増田貴彦/主演:佐倉絆)と、地味に二番手キャリアを着々と積み重ねる里美まゆは、“秘密クラブの人気ホステス”を嫁にした、蓬莱の妻・高山タツコ。親爺の会社を継いだにしては、別姓なのか?二番手三番手とも誠麗しき絡み要員であるのは、いはずもがなといふ奴か。
 2014年第一作「天女の交はり ぬくもり昇天」(脚本:山崎浩治/主演:樹花凜)セカンド助監督でピンク初参戦し何時しか五年、小関裕次郎の監督デビューが洩れ聞こえて来る一方、前述したメグアノを最後に、長く続いた座付き脚本家の座を退いた山崎浩治に続き、何気に永井卓爾も遂に外れた渡邊元嗣2018年唯一作。ナベ自身ピンク前作「神つてる快感 絶頂うねりびらき」(2017/脚本:波路遥/主演:あかね葵)からだと一年、正月薔薇族でも九ヶ月といふ異例の長期空いてゐるのだが、小川欽也1998年第四作「悩殺占ひ 巨乳摩擦」(脚本:水谷一二三=小川欽也/原作:睦月影郎/主演:風間今日子)チーフ助監督―セカンドはひろぽん―で初土俵を踏んで早二十年!最後の大物助監督たる永井卓爾が、小山悟との共同といふか半分こ監督作「いんらんな女神たち ~目覚め~」(2014/永井吾一名義/主演:友田彩也香)を遺し戦線を離脱したトピックには、更に驚かされた。と、与太を吹きかけて。何か引つかゝりを覚えよくよく調べてみると、工藤雅典の電撃大蔵上陸作と、それ以前に清大2018年第二作のチーフについてゐたのを忘れてゐた。改めて、単独デビューを果たして呉れて全然構はないんだぜ。
 映画の中身に、話を戻せ。人生の折り返し地点もとうに通り過ぎた男達の前に、在りし日と同じ姿のまゝで現れた、憧れの君。卒業と同時に帰郷した京子は、実は燕と蓬莱とは一度限りでシテゐながらも、蜂谷含め三人の誰とも、固定した関係は持たなかつた。ツイッター上で激賞する声をちらほら見かけたゆゑ、満を持した渡邊元嗣の渾身に猛然と期待して、小屋の敷居を跨いだ、ものではあつたものの。終盤、蓬莱の出し抜けな一言で「かぐや姫」に持ち込むのは、些か無理筋ではあるまいか。帰京する女に男達が銘々贈り物をする、確かに「かぐや姫」といへば「かぐや姫」なのかも知れないが、如何せんニュートラルに過ぎよう、そこだけ抽出するにもほどがある。本来然るべき位置の締めの濡れ場をあへて排したラスト十分も、美しいことは美しいにせよ、捻りのない展開にはストレートの威力と諸刃の剣の、平板さも決して目立たなくはない。逆に、締めの濡れ場を然るべき位置に置けない分、序盤から裸映画を貪欲に攻める姿勢、ないし至誠は、外様が跋扈する昨今にあつてはなほさら、万感胸に迫るものもありつつ、その点もその点で、妃月るいの嬌声が地味にラウドなのが、軽く琴線を逆弾きしもする。十二分に真心の込められた映画ではあれ、天下御免の大エースである以上、ワーキャー騒ぐ出来でもない、としか思へなかつた一作。渡邊元嗣がこの程度ならば、加藤義一が奇跡の確変に突入するか、森山茂雄が轟音を鳴らす大復活を遂げない限り、城定秀夫に対抗する弾がなくなるぞ、こんなもんぢやナベはないだらう。


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 「性と愛のコリーダ」(昭和52/製作:日活株式会社/監督:小沼勝/脚本:田中陽造・鹿水晶子/プロデューサー:伊地智啓/撮影:安藤庄平/照明:高島利隆/録音:紅谷愃一/美術:徳田博/編集:山田真司/音楽:多摩零/助監督:黒沢直輔/色彩計測:関寿之/現像:東洋現像所/製作担当者:青木勝彦/出演:八城夏子・宮井えりな・小川亜佐美・岡尚美・岡本麗・桂たまき・松井康子・坂本長利・神田橋満・長弘・本田博太郎・井上博一・鶴岡修・浜口竜哉・森川麻美・十時じゅん・結城マミ・団巌・田畑義彦・水木京一・谷文太・清水国雄・中平哲仟・梨沙ゆり・斉藤博・星野かずみ・金井美稚子・岡田真理子・松井真美・青崎美由紀・片桐夕子・上月左知子・谷ナオミ/緊縛指導:謝楽斉)。出演者中、田畑義彦から青崎美由紀までは本篇クレジットのみ。謝楽斉の正確な位置は、青崎美由紀と片桐夕子の間。クレジットはスッ飛ばす配給に関しては、事実上“提供:Xces Film”。
 海辺を走るビートル、服部明(神田橋)がハンドルを握り、背広姿につき助手席もサラリーマンかと思ひきや、後々含め遣り取りを聞くにそもそも職業を持つてゐるのかから怪しい、謎造形の友人・奥田繁夫(本田)。二人は遠目に断崖から飛び降りる女を目撃、大慌てで現場に。しがみついてゐた日下静江(小川)は、服部が懸命に伸ばした手も届かず、凄く映画的、といふか映画風に落ちて行く。服部と小川が地場の漁師(遠過ぎて識別不能)に舟を出して貰ひ、海の中を捜してゐると当の静江が、何故か全裸で岩に打ち上げられてゐたりする底の抜けたスペクタクルを経て、テレビ番組「800万人OLの性と愛」の収録スタジオ。カウンセラー(上月)が投げる、二番目の質問に合はせてタイトル・イン。膨大な俳優部に、覚悟した爆死は実際その通りに。
 薔薇の花を咥へた大変態・大沼漠(坂本)が、公園で女子高生三人組(桂たまきと森川麻美に結城マミ)に露出し、茂みの中清水国雄と青姦するユキ(岡本)には、覗きと痴漢する。一方、薄暗い水族館。五日前に死んだゆゑ、空になつたモブラ・ジャポニカ(和名:イトマキエイ)の水槽前に佇む江川のぞみ(八城)に、警備員の堤安吉(井上)が接触する。とこ、ろで。堤がのぞみを水のないプールする際の、殺し文句が「モブラ・ジャポニカ見せてあげようか」。そこだけ掻い摘めば歪みが冴えた名台詞にせよ、のぞみを監禁する自室に堤が―まさか盗んだのか?―モブラ・ジャポニカを飼つてゐる、ことになつてはゐるのだが。尖鋭的に長い、頭部の特徴的な形状に加へ鰓が体の横に開いてゐる点と数十cm大の大きさ的にも、イトマキエイでないどころかノコギリエイでさへなく、堤の部屋にゐるのはノコギリザメではなからうか。
 テッセンなら見切れるつもりが、綺麗に手も足も出なかつた辿り着けるだけの配役残り、松井康子は寝てゐるところを大沼がロープで―ユッルユルに―フン縛らうとする、太つた女。団巌は大体似たやうな感じで、木賃宿にて浣腸される大男。大沼が“大変態”といふのが劇中官憲からもさう扱はれるものの、実際仕出かす内容はセクシュアルでないものも多く、児戯的な悪戯により近い。長弘はのぞみの不倫相手で課長の相沢、宮井えりなが、のぞみが否応なく無断欠勤してゐる隙に、相沢を寝取る真知子、職場での机はのぞみの二つ前。水木京一はロマポの看板を持つたポン引き、大沼に声をかける。そして片桐夕子が、ロマポのポスターが貼り巡らされたちよんの間で大沼を感激させるハーセルフ。大沼の緊縛に“熱い!!ここが火のやう”と片桐夕子が喜悦すると、大沼が葉巻に観音様で火を点け“本当だ”と感嘆するのは、紋切型を引つ繰り返す斬新なネタ。鶴岡修は、女子高生三人組の通報を受け大沼を追ひ駆け回す畑野巡査。脊髄で折り返し、装弾数ガン無視で引鉄を引くトリガーハッピー。そして谷ナオミが、畑野に追はれはふはふの体の大沼を助けるハーセルフ。「こんな様子ぢやまた今年もブルーリボン賞貰へないは」、とかいふクソ面白くない自嘲を受けての大沼のフォローが、「ピンクリボン賞貰つたでせう」。ちな、みに。ブルーリボン賞に対抗しピンクリボン賞が正式に設立されたのは、昭和55年である。浜口竜哉は、大和製鋼経理課に勤務する静江の上司、この人も課長。これだけ矢鱈な頭数がありながら、コミタマもサブも影英もゐないとは。全体如何なる相談か、画竜点睛を欠くにもほどがあると、大いに難じざるを得ない。
 日本国内でヒットしたのか否かはさて措き、少なくとも話題は呼んだ大島渚の「愛のコリーダ」の半年後。それ行けといはんばかりに公開された、小沼勝昭和52年第二作。しかも通常三割増しの尺に、何処からでもビリング頭を狙へる名前を惜し気もなく並べた、闇雲に豪華な女優部。ついでにタイトルロゴも限りなく酷似、といふか、これ重ねてみないと違ひが判らないだろ。何でまたこの時斯くも前のめりになつてゐたのかはこの期に兎も角、とりわけ量産型娯楽映画の世界に於ける、二番煎じといふ奴はこのくらゐ清々しくて、寧ろちやうどいいやうにも思へる。
 最終的にはクロスしなくもない、服部宅に転がり込んだ静江に奥田も交へての、フリーダムな三角関係と、堤から偏執的に凌辱され続けた末、のぞみが何時しか性的に一皮剝ける。如何にも通俗ポルノグラフィー的な人を喰つた展開に、大沼の大騒ぎが木に片桐夕子と谷ナオミをも接いだ上で、ランダムに挿み込まれる。三ヶ月前「悶絶!!どんでん返し」(監督:神代辰巳/脚本:熊谷禄朗/主演:谷ナオミ)に於いて開花した、薔薇の鶴岡修を投入するハチャメチャな大技も炸裂させつつ、大人の映画の筈なのに、概ね子供騙しにさへ満たない―にも関らず片桐夕子×谷ナオミを藪蛇に擁した―大沼パートはいつそ等閑視、するとして。静謐な美貌で小川亜佐美が乱打するエモーションを軸に、ニューシネマの如く鮮烈なクライマックスを迎へる静江篇と、堤がのぞみ宅から盗んで来た金魚を、ノコギリザメにバクバク捕食させる―今でなくともとうに許されまい―シークエンスの衝撃を頂点に、のぞみと堤の「完全なる飼育」はそこそこ見応へがある。ナンシー・アレン系オバパーの八城夏子はおろか、殆ど濡れ場要員に過ぎない宮井えりなにすら、小川亜佐美がビリングの後塵を拝してゐる甚大な疑問さへ強ひて呑み込むならば。さうはいへ、直截にはまとまりを欠いたちぐはぐか散漫な印象は禁じ難く、徒なプロダクションにはあはよくば本家を喰つてみせる野望が透けて見えるのかも知れないが、端的に何がしたかつたのかサッパリ腑に落ちない、狂ひ咲いた徒花感満載の一作。あるいは企画といふ言葉で評した方が、今回の場合は適切なのかも。


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 「愛人生活 きみとなら…」(2018/制作:関根プロダクション/提供:オーピー映画/脚本・監督:関根和美/撮影:下元哲/照明:代田橋男/助監督:加藤義一/録音:小林徹哉/編集:有馬潜/監督助手:江尻大/撮影助手:榎本靖/スチール:本田あきら/選曲:友愛学園音楽部/協力:SHIN・鎌田一利・松島政一・中村勝則/整音:ポストモダーン/仕上げ:東映ラボ・テック/出演:きみと歩実・優梨まいな・明里ともか・なかみつせいじ・竹本泰志・柳東史・山本宗介)。
 仰角のマンション外景にタイトル開巻、愛人業の川崎奈緒(きみと)がサラダをこしらへてゐると、パパさんになつて二年の会社社長・森山大輔(なかみつ)が奈緒に持たせたマンションを訪ねて来る。改めて見たなかみつせいじ(今更ex.杉本まこと)は、前髪の減り具合がいよいよ壮年も通過しつつある感を漂はせる。マンションの賃貸契約更新を口火に、かんだ何だベタベタか適当な導入で挨拶代りの初戦に軟着陸。フェードをかます一手間が、一本調子につき却つて雑に映る体位移動さへさて措けば、外様作が続いたあとでは関根和美すらもに、何故かグルッと一周した新鮮さを覚える。まづは女の裸を見せる、ど初つ端・オブ・ど初つ端な本義を等閑視してゐないだけなのに。
 竹本泰志パートを後回しに、女が愛人業なら、男はホストといふ清々しさ。自称する“これでもNo.1”といふのが実際No.1に見えるホストの堂島孝弘(山本)が、乗客のセレブ妻・本宮優子(明里)を自宅に迎へ入れる。明里ともかは、関根和美前作「福マン婦人 ねつとり寝取られ」(主演:江波りゅう)二番手から一歩後退。とはいへこのレベルの上玉が三番手に座つてゐて呉れると、裸映画は頗る安定する。一種のSOHOを終へたのち、連れ戻しに上京して来た、親同士が子供の頃に決めた許嫁の吉永美穂(優梨)に呼び出された堂島は、奈緒もよく使ふ居酒屋に。やさぐれた遣り取りの末、堂島が美穂からジョッキの酒をブッかけられるそこそこ修羅場を、奈緒に目撃される。
 配役残り竹本泰志は、不渡りを出し両義的に廃業した奈緒のex.パパさん・柳瀬俊之。再起を賭けたビットコインでババを掴み、奈緒に泣きついた挙句、逆ギレして犯しもする情けない濡れ場要員。柳東史は、美穂の初心さに触発され、奈緒が想起する過去。高卒で就職した町工場にて出会ひ、同棲に至つた土屋茂。定職についてゐるのに、ある朝奈緒の持ち金を盗んで姿を消す闇雲な濡れ場要員。一見贅沢な起用法が藪蛇にも思へ、竹本泰志と柳東史をも擁して主演女優の絡みを積み重ねる実は執拗さが天晴。スチールの一部を担当してゐるらしいSHINを除いた協力勢と、演出部で再三が本当に都合三度ロケ使用される居酒屋要員。三人組客の関根和美×鎌田一利×加藤義一、参加してゐたのか、菊ギロTで店員役のEJD。単騎で見切れる中村勝則までは判つたものの、未だ松島政一が特定不能。あと全然関係ないのが本当に全ッ然関係ないけど、井土紀州と鎌田一利て似てなくね?
 今や業界を代表する看板に成長したきみと歩実(ex.きみの歩美)を、「俺が育てた」面するのも十二分に許される―現にしてゐるか知らんけど―気がする、関根和美2018年第三作。互ひに異性を喰ひ物にする女と男に、一途な田舎娘を噛ませた他愛ない物語。ビリング頭とトメによる、正しくクライマックスたる締めの奈緒V.S.堂島戦を、一撃で粉砕してのける無造作極まりない何気に衝撃のラストはある意味関根和美一流とはいへ、僅かな隙もない充実した俳優部に支へられ、直截にいふと何故か、あるいは不思議と充実して観てゐられる。二番手の優梨まいなは、竹洞哲也2017年第四作「ヤリ頃女子大生 強がりな乳房」(二作とも脚本:当方ボーカル/主演:若月まりあ)・第五作「まぶしい情愛 抜かないで…」二部作以来。かういふ可愛くてオッパイが大きい女の子は、横好きな映画で下手に持ち腐らせるくらゐなら、いつそ関根和美でサクサク脱いで貰つた方が余程いいといふのは、大雑把な暴論に過ぎるであらうか。プリップリの乳尻をこれでもかこれでもかと堪能させるきみと歩実、三番手をガッチリ固める明里ともか。三花繚乱の女優部もさることながら、部屋着から勝負服まで種々の装ひも彩豊かに、現代ピンク最強の男前を叩き込み続ける山本宗介も、寧ろ山本宗介が見所。この期に薔薇族を食はず嫌ふ、当サイトは純然たるヘテロセクシュアル乃至のんけではあれ、女優部よりも山宗を愛でてゐるのが正解なのではないかと、本気で思つた。ヒロインが土壇場で卓袱台を引つ繰り返される大概な結末も、堂島が然るべき落ち着き処に落ち着いたのであればと、徳俵一杯一杯で救済する。救済出来てねえよ、タコといふ至極全うな異論に対しては、当然反駁しない。そもそも親同士が勝手に決めた許嫁だとか、前時代的な設定も大概ではある。


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 「淫乱美巨乳 たわわな媚肉」(1997/製作:多呂プロ/配給:大蔵映画/出演・脚本・演出:荒木太郎/撮影:清水正二・飯岡聖英/編集:酒井正次/撮影助手:岡宮裕/演出助手:横井有紀/スチール:佐藤高太郎/制作:小林徹哉/イラスト・音楽・脚本協力:槇原まんじゅう/協力:ついよし太・東京UT・劇団火の鳥・ペンジュラム/録音:シネキャビン/現像:東映化学/出演:槙原めぐみ・吉行由実・森下ゆうき・野上正義・太田始・内藤忠司・《今泉浩一》/声.国沢実)。出演者中、普通に姿を見せ台詞も与へられる今泉浩一が、括弧つきの理由がよく判らない、要はカメオ枠なのかな。あと、佐藤高太郎て誰や。
 てつきり古の麗しき七色王冠を予想してゐたら、となると少なくとも上野でかけたにさうゐない、ツートンOP開巻に軽く驚く。鐘の音鳴る教会のロングからカメラがもう一段ドーンと引いた上で、カット切り替り暫し桜を捉へる。最悪撮影部が何とかして呉れなくもないのは、映画の強み。売春婦のダリア(森下)が、巴戦の注文を携帯で受ける。公園の片隅で似顔絵屋を開業する春菊(槇原)を、「嫌はれ者が絵描いてやんの」といきなしな悪態でダリアが急襲。志すマンガがモノにならず困窮する春菊に仕事を持ちかけると称して、ダリアは太田始の相手に引き摺り出す。一貫して春菊が嫌悪のみ覚える、今時のポリコレにも案外合致する初戦を完遂、キレた春菊が二人を殴り倒してタイトル・イン。何時もの堀内満里子とは一目で異なる、何れにしても当時的にはとうに古い、80年代のサンデーみたいな筆致のイラストは、クレジットを見るに主演女優が自ら手がけた御様子。
 配役残り、クレジットに於いて、自分の名前を一番デカくする神経は如何なものかと思へぬでもない荒木太郎は、春菊の唯一の理解者・キョージュ。実際に教授で、なほかつキョージュもキョージュで“書かずの巨匠”らしい、今や“撮れずの巨匠”である。隙あらば、起動する余計な与太。閑話休題、家賃を払へない春菊に、ヒステリックに喚き散らす大家の声は、声色を変へた吉行由実、殆ど変つてないけど。そして改めて吉行由実が、白いブラウスを悩ましく盛り上げるいはゆる着衣巨乳がエクストリームに素晴らしい、春菊が憧れを寄せる小川すみれ、大屋の娘でもある。雑然と本の積まれた謎部屋に帰宅したすみれを、ポップかベタに虐げる正体不明の同居人の声は、小林徹哉に聞こえたが実際には国沢実。内藤忠司は、ダリアのマゾ客。へべれけなプレイボーイ造形を強ひられ、幾ら何でも負け戦に苦戦する野上正義は、春菊の周囲に出没する自称(?)詩人・ヤマギシ。今泉浩一は、春菊に描かせた似顔絵が気に入らず、代金の五百円を払はない人。この期に及んで、この人が下手糞な理由が見えた、もしくは聞こえた。最終的に、口跡が不安定なんだ。
 バラ売りex.DMMに新着した、荒木太郎1997年ピンク映画第三作。この年薔薇族一本込みで全六作、前年即ちデビュー年から五作を発表し、以来生え抜きとして本隊のレギュラーをずつと張つて来た、のに。
 はみ出し者が理想形を投影する同性に、ホモソーシャルな思慕を拗らせる。尤もそこは女の裸で商売するピンク映画ゆゑ、締めの濡れ場に際しては華々しくフルスイングのエモーションで大輪の百合を咲き誇らせる。何はともあれ、何はなくとも、槙原めぐみのオッパイの説得力。裸にして立たせてみると、森下ゆうき共々結構下半身を中心に重たさを感じさせる体躯でもあるものの、単なる肉の塊といふ訳ではなく、何某か尊い生命の本質的な、いふならばゲッター線的なサムシングが満ち満ちて映る槙原めぐみの絶対巨乳は、些末をさて措かせる決定力を都度都度撃ち抜く。春菊のがさつかつ粗暴なキャラクターと、意図的に体の線を封殺したファッションとの対照も必然の如く迸る。昨今久しく見ない気がする張尺―張形を用ゐた無修正の尺八―も多用し、絡みは何れもアグレッシブ。近作を思ひ起こせばいはゆる枯れのやうなものも連想せざるを得ない、充実した直線的な煽情性の面でも申し分ない。さうは、いへ。先に槙原めぐみのオッパイに関して“何はなくとも”と述べたが、逆に、もしくは直截にいふと、槙原めぐみ―と吉行由実―のオッパイしかないんだなあ。すみれの真相に下手に踏み込んだのも諸刃の剣に、グジャグジャ自虐ないし自閉的に春菊が内向する始終は、槙原めぐみの偉大なるオッパイがあるにせよ、多義的に抜けないこと抜けないこと甚だしい。ざつくばらんに片付けてしまへば、荒木太郎の癖に、隠々滅々路線国沢実のやうな逆の意味で盛大に自爆、あるいは自縛する一作。クライマックスの白百合も美しさだけは手放しで称賛するに値する反面、それまでの全てを覆し、春菊が自己を肯定するに至る、至らせる力強さには些かならず遠い。ついでに火にガソリンを注ぐのが、中盤“本を仕上げに行きます。”と自ら二百字詰原稿用紙にメッセージを残しておいて、斯くも綺麗に別れておきながら、すみれを籠絡すべく出撃するヤマギシを、尾ける春菊の傍ら、臆面もなくキョージュがひよつこりゐやがる一大疑問手。そこ平然と引つ繰り返してゐては、そもそも置手紙の意味がまるでないだろ。流石荒木太郎だと、呆れるのも通り越して吃驚した。


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 「情欲怪談 呪ひの赤襦袢」(2018/制作協力:映像集団マムス/提供:オーピー映画/脚本・監督:佐々木浩久/撮影:鏡早智/照明:山本浩資/録音:坂元就/特殊メイク:土肥良成/編集:大永昌弘/助監督:島崎真人/監督助手:中田円凛/スチール:宮沢豪/音楽:ゲイリー芦屋/機材提供:鈴木昭彦/仕上げ:東映ラボ・テック《株》/協力:植野亮/企画協力:『赤いにほひ』原案:木原浩勝/出演:浜崎真緒・栄川乃亜・加藤絵莉・しじみ・佐倉萌・野田博史・小坂ほたる・白石雅彦)。
 “ここに残酷あり”、“この世に残酷あり”、“あなたの中に残酷あり”。ドーンドーンドーンと大書三連打を叩きつけたモーションで、タイトルを撃ち込む開巻。センセーショナルな外連は買へなくもないものの、結果論としては派手派手しく喧伝するに値するクルーエルが、狂ひ咲く訳では別にない。何某かのオマージュであつたりするのやも知れないが、そつたら高尚なこたオラ知らね。
 何れもピンク初陣の浜崎真緒が栄川乃亜を、ドラスティックに責める。淫夢から分間宮冴子(浜崎)が目覚めると、傍らには腹部を大きく血に染めた―苗字は多分―倉橋里美(栄川)の死体が。二段構への悪夢から冴子が目覚めると、リアル傍らには大学の助教授で、夫と称する真一(野田)が。わざわざかこれ見よがしに、真一は婚姻届けの写しを持つてゐたが、冴子にその認識はなかつた。二年前、一年間の海外赴任から帰国した真一が帰宅したところ、腐敗の始まつた里美の変死体と、前後不覚の冴子が記憶を喪失してゐた。ちなみに冴子が娑婆にゐるのは、証拠不十分での不起訴。朝つぱらからの夜の営みを経て、実はその模様もモニタリングしてゐた、恐らく精神科医の進藤絵里奈(加藤)が分間宮家を当然冴子の往診に訪れる。加藤絵莉は、榊英雄の「さまよふアゲハ 蜜壺トロトロ」(2016/脚本・助監督:三輪江一/主演:水城りの/全て二作とも)・「裸の劇団 いきり立つ欲望」二部作以来のピンク第三戦。一般映画じみた外様でばかりお高くとまつてゐないで、本隊作にも出ればいいのに。憎まれ口、もしくは閑話休題。患者の配偶者に対し、“貴方”とか呼びかける絵里奈は案の定、真一とは男女の仲で通じてゐた。そんな最中、赤い腰巻―の幻影―を見たといふ冴子の訴へに、納戸から出て来た、真一祖父の日記を持ち出して絵里奈は驚愕する。
 配役残り真一の祖父で、大陸から帰国した憲兵の茂三は自動的に野田博史の二役。その間に女児の出産を挟み、渡邊元嗣2016年第一作「熟☆ギャル☆白書 極楽仁王勃ち」(脚本:山崎浩治/主演:立花はるみ)ぶり久々に濡れ場も担当する佐倉萌は茂三の、ではなく、茂三が愛人になる戦争未亡人の千代。在不在が実は本筋に影響しない、エクストラな五番手。そしてしじみが腰巻の主、遊女のお吉。茂三と身請の約束を交しつつ、果たせないまゝ結核で命を落とす。白石雅彦は、お吉が死んだ旨を茂三に伝へる、大仰な和尚。小坂ほたるは、冴子の死後分間宮家を訪ねる、冴子の元カレ・幸太郎、苗字は多分真名田か真田か愛田辺り。冴子と別れたのち女の子、あるいは女装子になつた飛び道具。突然現れた幸太郎を、絵里奈が―冴子の―変態の弟?と訝しむのは、直後に後述する前作に絡めた小ネタか。
 前作「絶倫謝肉祭 奥まで突いて!」(2017/主演:さくらみゆき)に続く佐々木浩久のピンク映画第二作は、前年の「女いうれい 美乳の怨み」(2017/主演:佐倉絆)で、復活後一勝四連敗の戦歴を山内大輔が漸くだか辛うじて引き分けに持ち込んだ、公式パブに謳つて曰く“真夏の大蔵怪談シリーズ”最新作。個々の映画自体よりも、死屍累々な企画そのものの方が寧ろ恐ろしい。
 ありがちな怨念に端を発するウェルメイドな幽霊譚に、里美が土手腹から大量出血しての死因が最終的には不明な、大雑把な姦計が絡められる。一緒くた一枚物の挙句瞬間的な代物で、クレジットも碌すつぽ見させず拙速に済ます。くらゐ、逼迫せざるを得ない羽目になる尺加減も激しく謎に、悪夢明けと我に帰る幽霊ショックとが、幸太郎登場による一時的な転調を除けばひたッすら一本調子にエンドレス。満足に纏める気の恐らく初めからない物語は当然纏まらず、かといつて目を覆つてヒエーヒエーするほど怖いかといふと、全く以てさうでもなく。大半の観客に置いてきぼりを喰らはせるにさうゐない、寧ろ映画そのものの不条理の方がよほど不可解といふ意味で怪異ではあれ、特段面白くも何ともない。幾ら量産型娯楽映画的な伝統を言祝ぐにせよ、憲兵が出て来ただけで諸手を挙げるといふのは、幾ら何でもハードルが低過ぎるのではなからうか。ベルが鳴れば涎を垂らす、犬でもあるまいし。その癖、あるいはついでに。選曲の、真面目に怖がらせる意図の有無から甚だ疑はしい、徒に饒舌なばかりの音楽も癪に触る。殊に開巻の百合、劇伴がラウドで浜崎真緒の台詞がよく聞こえないのは、全体如何なる了見の音響設計なのかと耳を疑ふか頭を抱へた。
 怖くなく面白くなく、お盆祝儀で豪華五枚の女優部を擁したにも関らず、おまけに大してエロくもないんだな、これが。前回同様、ポケーッと放り出させたオッパイを、中途半端な距離からフラットに撮るカットが延々積み重ねられるのは、ほぼほぼ暴れさせるに終始するしじみの起用法ともども根本的に考へもの。寄れよ、揉むなり吸へよ、肌の質感を感じさせて呉れよ。ここから先は純然たる一私見に過ぎないが、乳尻に拘泥のないのなら、裸映画に関らないで欲しい。旦々舎は「雪子さんの足音」で開店休業中につき、佐々木浩久は清水大敬の爪の垢―繋ぎはザクザクだけど―を飲んで、腹でも壊してしまへばいい。“清水大敬の爪の垢”なる一種のパワーワードに漂ふ、劇薬感。


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 「痴漢 極楽指めぐり」(1997/製作:関根プロダクション/配給:大蔵映画/監督:関根和美/脚本:関根和美・小松公典/撮影:小山田勝治/照明:秋山和夫/録音:シネキャビン/音楽:リハビリテーションズ/編集:㈲フィルム・クラフト/助監督:小松公典/効果:東京スクリーンサービス/現像:東映化学㈱/スチール:佐藤初太郎/監督助手:高橋涼子/撮影助手:新井毅・村雨右京/照明助手:草彅篤/出演:水乃麻亜子・樹かず・冴月汐・悠木あずみ・下川おさむ・山内よしのり・近藤力)。東化のあとにスチールと各部セカンドが来る、変則的なクレジットは本篇ママ。
 ブルーバックのタイトル開巻、何を見せたいのかぼんやりした夜景から、下パンするとくたびれた風情の樹かず。日々接待に振り回される和也(樹)が、如何にも関根和美らしいザックリした時制異動で妻・茜(冴月)との夫婦生活を想起する。その絡み初戦に、特段の脈略は一切ない清々しさ。ある意味、量産型裸映画といふ奴はこのくらゐ貪欲でないと務まらない、のかも。カーセックスの気配を感じ取つた和也は、フェンスを越え車に近づく。車中でうねる、いはゆるゴムマリ感を弾けさせるオッパイに惹き寄せられ、一線を跨いだ和也は何と車のドアを開け水乃麻亜子の体に手を伸ばす。そもそも、それ室内灯点かね?といふ根本的な疑問は果敢に等閑視、完遂を果たし初めて和也の存在に気づいた二人は和也の弟で国立医大二浪中の孝夫(下川)と、高校の同級生で女子大生の彼女・洋子(水野)であつた。所変つて孝夫宅、ニットキャップを脱ぎ、衝撃的にあんまりな前髪も露に―頭だけ見れば兄貴と弟どころか、息子と父親である―和也を説教する孝夫は、シャワーで改めて裸を見せた洋子が帰るや態度を一変。凄いスリルを覚えたと、和也に痴漢の弟子入りを懇願する。
 配役残り、小松公典の変名である近藤力は、薄ら笑ひで和也の社会的生命を抹殺する刑事。若い頃が、太田始系の色男。悠木あずみは課長と不倫したからとか、無体通り越して意味不明な理由で男を捨てるOL・由美で、山内よしのりが捨てられる剛。ex.山内よしのりの山内健嗣が声優メインにシフト、今も活躍してゐるとは寡聞にして知らなんだ、ついでに同い齢。
 少し油断してゐた隙に、バラ売りex.DMMに新展開。インターフィルム提供の国映系は、そのうち月額にも流れて来るかも知れないにせよ、まあ当分来ない大蔵旧作がちらほら新着。上等だと喰ひついた、関根和美1997年ピンク第四作。最後の野望として掲げるハンドレッド・関根和美に、一縷の希望が繋がれたのか。関根和美以外には国沢実や和久時代の今上御大のほか、梯子を外してゐながら―当サイト観―荒木太郎も新たに入つてゐたりする。次に見たる、復権のフラグだとでもいふのいならいいのだけれど。
 物語的には全十三作を撮り上げたライフワーク―超嘘―の割に、新田栄は滅多に両立させない痴漢と覗きを、和也は大胆だかプリミティブだか兎も角見事に両立。あるいは、無防備か極まりないへべれけに不自然なシークエンスをも、ものともしない関根和美ならではの蛮勇あつてこそ、ともいへようか。ヤリチン弟に乞はれ、接待疲れ兄貴がスリリングな棚牡丹を喰らつたまではよかつたものの、土壇場で露見しおまけに糸を引いてゐた筈の二親等は消滅。憐れ容赦なくお縄を頂戴した和也が消沈して帰宅すると、あらうことか茜は孝夫に寝取られてゐた。どうするんだこの局面、もう逃げ場がないぞ。退路を自ら断つておいて、その先に臆面もなく無造作に進んでみせる辺りが、関根和美の関根和美たる所以ともいへ、流石にここから如何に畳むつもりなのかと、別の意味で固唾を呑んでゐると。魔展開に魔展開を合はせる、豪ッ快なクロスカウンターが爆裂。ピカレスク方向に和也が一皮剝ける終盤は、三番手が締めの濡れ場を担ふ平常ならば精々構成の不出来なり仕損じが、寧ろ三番手でなくてはならなくなるアメイジングな離れ業を成立させてのける。最終的に、百歩譲つて小説ならばまだしも、覗きながら痴漢するといふのが如何せん画的に箍か羽目を外さない限り成立し得ない。といふ無理さへ強ひてさて措く―措けねえよとする異論に対しては、反論しない―ならば、グルッと一周した強引さが痛快に抜ける一作。「俺の痴漢人生はまだ始まつたばかりだ」と、まさかの男坂エンドにはこの際喝采するのみ。必ずしも、槍を投げてゐる訳ではない。

 孝夫宅のクローゼットに潜んだ和也が、グジャグジャしたお惚気会話に「死ね」と吐き捨てるドライなカットと、中に出させた剛とは別に、和也を胸に浴びた由美が事後我に帰つてあげる、「やだあこれ誰の」なる何気な名台詞は手放しに笑かせる。


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 「新・したがる兄嫁 ふしだらな関係」(2001/製作:国映株式会社・新東宝映画株式会社/製作協力:Vシアター/配給:新東宝映画/監督:上野俊哉/脚本:小林政広/企画:朝倉大介/プロデューサー:衣川仲人・森田一人・増子恭一/音楽:山田勳生/撮影:小西泰正/照明:多摩三郎/編集:金子尚樹《フィルムクラフト》/録音:福田伸《福島音響》/助監督:坂本礼/監督助手:伊藤一平・吉川かおり/撮影助手:田宮健彦/照明助手:大橋陽一郎/タイトル:道川昭/現像:東映化学/制作応援:岩田治樹・森元修一/協力:上井勉・女池充・梶野孝・エレメンツ・MAN-ZOKU/出演:江端英久・佐藤幹雄・宮川ひろみ・佐々木ユメカ・飯島大介・新納敏正・大橋寛展《スタント》・松江哲明・三坂知絵子・大西裕・躰中洋蔵・今岡信治・菅沼隆・朝生賀子・堀禎一)。協力のMAN-ZOKUてあのMAN-ZOKUだよな、何を協力して誰とどういふ繋がりなのか。
 ハモニカが鳴り、VHS版仕様か「新・したがる兄嫁」のみのタイトル開巻。住宅地のロングから、神社の境内に買物帰りの女。「私の名前は市田明子」と口火を切るモノローグの、素頓狂な口跡に脊髄で折り返して腹を抱へる。何となく想起した、翌年「義母の秘密 息子愛撫」(監督:渡辺護/脚本:六田耕=太田耕耘キ・樫原辰郎・渡辺護)の相沢ひろみに、劣るとも勝らない宮川ひろみのプリミティブ破壊力が、新東宝―あるいは国映―なのにエクセスライクを迸らせる。この期につき念のためお断り申し上げておくが、宮川ひろみと相沢ひろみは別人、改名した類の同じ轍ではない。
 明子(宮川)が借家に帰宅すると、夫の幸一(江端)はごろ寝しながらマンガ雑誌を戯れに開いては、あれも「ダメだ」これも「ダメだ」と人の仕事を凡そ全否定。釣られたら負けを承知の上で、なほ黙つてをれずにいふ、一番お前がダメだろ。劇団員の幸一が、座長の女であつた明子を寝取る、もとい明子と結婚して三年。明子が家計の全てを賄ひ芝居一本に打ち込ませて貰つてゐるにも関らず、幸一は三年連続で劇団の本公演を外される。そんな市田家に、幸一の弟で、大河ドラマの主役に起用されるほどのスター俳優である真二(佐藤)が、ホンが詰まらないといふ理由で降板し、事務所も辞めて来た―実際には馘―と転がり込んで来る。
 配役残り、顎は顎でも坂本礼ではない別の顎であつた松江哲明と、思はず喰ひつくレベルのメガネ美人である三坂知絵子―新海誠の嫁―は、明子勤務先のラブホテルに嬉々と入つて来るカップル。飯島大介は、幸一を食はせてゐる現状に「大変だ」を連呼しながら、明子を手篭めにするラブホ社長。帰りの遅い明子を捜しに行つた―正確には真二に行かされた―のに、幸一がホケーッと「蒲田行進曲」に思ひを馳せる境内の石段。佐々木ユメカは、頭を抱へる下手糞なカットで幸一と交錯する、編集者・クメ子、何でそんな頓珍漢な名前なんだ。大橋寛展は、幸一の見事なボディダブル。パッと見背格好が全く同じで、完全に江端英久は階段落ち出来るものだと思つて見てゐた。新納敏正は、ジャケットと訛りが変な編集長。大西裕以降の、要は演出部ばかりのエキストラ隊は明子が転職した清掃員と、クメ子職場要員か。真二がスるパチンコ店内にもう一人見切れるオッサンは、この中には含まれない。
 国映大戦第十一戦は、第一作「白衣と人妻 したがる兄嫁」(1998/脚本は全て小林政広/ビリング頭は江端英久)と、直近の後日譚たる第二作「したがる兄嫁2 淫らな戯れ」(1999/ビリング頭は本多菊雄)。レンタル落ちに三千円出さないと目下俄かには見られない、前日譚の「どすけべ姉ちやん 下半身兄弟」(2000)に続く、上野俊哉(2013年没)の「バカ兄弟」シリーズ結果的最終作。尤もかといつて「淫らな戯れ」の更に後を描いた物語といふ訳ではなく、前三作に於いて良助と健司であつた兄弟の名前から変る、昨今でいふリブートである。兄嫁も、春代でなく明子。
 何はともあれ裸映画的には、絡みは何れも中途で手短に端折られ、宮川ひろみは兎も角、佐々木ユメカに至つては辛うじて乳を見せなくもない程度の体たらく。何もかんも脈略をスッ飛ばしたとて、三坂知絵子の濡れ場を遮二無二放り込んで呉れさへしてゐたならば、まだしも立つ瀬のあつたものを。当然といふまでもなく、三番手の麗しきポジションは存在しない。それでゐて不思議と腹も立たないのはそれでも脚本なり演出の成果なのか、登場人物の移動を妙に逐一追ふといつた、特段何てこともないシークエンスを潤沢にかマッタリ回す内に、気がつくとサクサク尺が進んでゐるライクウォーターな一作。一応オチはオチとして落ち着きはするものの、そもそも、佐藤幹雄が気骨のある演技派俳優といふ壮大なスケールの直截にいへばミスキャストが、それをいつては元も子もない最大のチャーミング。宮川ひろみの薄幸顔と、胸は小さく胴は長い要は貧相な体躯がどストライクな御仁以外には、何処を捕まへればよいのか判らない掴み処のなさの割に、当時のピンク大賞でベストテン五位を獲つてゐたりする辺りは、如何にも名前で映画を観てゐた風情が透けて見え憎々しい中、今回素面で清々しさを覚えたのが、真二が市田家に辿り着く道すがら。再三登場する境内の石段にて真二はスチャッとグラサンを外し、「相ッ変らずシケた町だぜ」。わ、わはははは!煌めくほどのダサさが類型性の範疇によつて、小賢しい今作を量産型娯楽映画の大樹に首の皮一枚繋ぎ止める。斯くも無防備なクリシェを、ある意味綺麗に撃ち抜くには素晴らしく適任。さう考へた時、佐藤幹雄が出奔したスター俳優とかいふ自暴自棄気味なキャスティングも、それはそれでそれでもハマリ役であつたのかも知れない。


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 「絶倫探偵 巨乳を追へ!」(2018/企画制作:ふくよか舎/提供:オーピー映画/監督・編集:横山翔一/脚本:奥山雄太《ろりえ》/撮影監督:新里勝也/助監督:小関裕次郎/制作・衣装:望月麻里/VE:金子豊明/整音:戸根広太郎/音楽プロデュース:ひと:みちゃん/劇伴:松石ゲル/美術:石川茜・酒田科申《ふくよか舎》/美術アドバイザー:柴田正太郎/監督助手:鹿島遼太/撮影助手:梶田基文/Bカメ撮影:立会達也/VE助手:日出健太朗/特殊メイク:玉木康介・石田光/視覚効果:三橋翔太/タイトル:大脇初枝/画像処理:秋野太郎/食事担当:石井潤/ポスター撮影:本田あきら/ヘアメイク:ビューティ☆佐口・上戸良子/演出部応援:広瀬寛巳・永原大裕/制作部応援:小堀亜瑠/アクション指導:中村友則《ふくよか舎》/仕上げ:東映ラボ・テック《株》/タイミング:田中泰晴・小荷田康利/協力:上野オークラ劇場・ステージドア・須田邸・宮嶋信光・角田睦・中村廉紀/機材協力:《有》ジオ・スタッフ/主題歌:『街の灯が消えたら《ハテナシのテーマ》』 劇中歌:『疲れた心にセックス探偵ハテナシ』・『走れハテナシ!《外堀あたりまで》』 作詞・作曲:ひと:みちゃん/出演:春原未来・卯水咲流・きみと歩実・長野こうへい・あらい汎・伊神忠聡・近藤善揮・山岸拓生・奥山雄太・高木健・後藤剛範・滝本より子・屋良ケント・小倉薫・小倉彰馬・桂三若・三富政行・川島直人・簗田薫・木村香代子・折笠慎也・越坂康史・大貫隆行・丸山大悟・藤本裕貴・下城麻菜・大野歩・ビューティ☆佐口・丸山圭・中野美穂・轟雅子・道信瑠璃・ひと:みちゃん・作者本人・福吉大雅・巴山祐樹・並木大介・松原一郎・落合彰吾・おおともひさし・西後知春・びー・たけだりょう・ハメ肇)。出演者中、奥山雄太から後藤剛範までと、屋良ケント以降は本篇クレジットのみ。流れるスピードに比した甚大な情報量、以前に。幾ら何でも字が小さ過ぎんだろ、最前でも見えねえよ。今回はex.DMMで洗ひ直したものの、画質と画面の大きさ如何では、液晶の一時停止でも判読出来ない気がする。
 サラリーマンで賑はふ新橋の夜の町、クロフク(高木)が客を呼び込むクラブにて、女優志望のホステス・ユミカ(春原)は芸能界のコネを出汁に言ひ寄る師匠(桂三若)を手荒く撃退、店長(三富)にコッ酷く怒られる。ションボリしての帰途、ユミカは何者かの影に怯え、現に帰宅してのシャワーを、影が覗いてゐた。一転ポップな主題歌起動、女優部三本柱と、主演の長野こうへいまでジャーンとクレジットした上でドガーンとタイトル・イン。画になる派手派手しさが、ピンク離れしたクオリティ。
 映画好きな両親(屋良ケントと小倉薫/小倉彰馬が子役)の影響で俳優を志す果梨玉男(長野)は、ある意味英才教育で育まれたイマジネーションが常時暴走気味。今日も今日とて、葬式シーンのオーディションで相手役の女優(簗田)に大勃起し撃沈する。大家(木村)から家賃を滞納したアパートも追ひ出され途方に暮れる果梨は、学生時代の演劇仲間・前張達郎(伊神)を頼りピンク映画制作会社「GOカンパニー」に。ヤクザみたいな社長・権座我鳴(近藤)に見初められ、ピンク出演の決まつた果梨ではあつたが、感動的なリハを経てのいざ本番といふ段、相手役のユミカがスタジオから忽然と姿を消す。黒尽くめの男女がユミカを拉致するところを目撃した果梨は、前張に教へられた伝説のダークヒーロー・セックス探偵に助けを求めるべく夜の新橋に。ステレオタイプな支那人の日本語を操るなな(きみと)が違法マッサージを施す店で、人並み外れた洞察力を発揮し果梨が辿り着いたセックス探偵の珍鎮(あらい)は、だがしかし、既に勃たなかつた。
 配役残りex.冨田じゅんの滝本より子は、ユミカが姿を消したスタジオに出入りする、ケータリング「仕出しのくり鳥」のオバチャン。出演だとカメオの清水大敬2012年第二作「発情バスガイド おしやぶり巨乳」(主演:中居ちはる)、声のみの参加でも後藤大輔2013年第一作「艶めき和服妻の痴態」(主演:周防ゆきこ)以来となるそこそこカンバック。夫婦なのか、後藤剛範がもう一人のくり鳥・大男。卯水咲流は、果梨が店長になつたばかりの違法マッサージ店をガサ入れする女刑事・彩。滅多に撃ちこそしないが、矢鱈と脊髄で折り返して一般市民にも銃を向けるトリガーハッピー予備軍。山岸拓生は警察庁長官・締義正、ミソジニーの塊。そして殆ど誰でも変らない奥山雄太が、義正の息子・義雄、ユミカの大ファン。友達でもなければ全員見切れる訳がない―ついでにクレジットは読めない以前に見えない―膨大なその他俳優部中、僅かに確認出来たのは劇中ピンクの現場で果梨の前に、ユミカと絡んでゐた折笠慎也のみ。
 OPP+版「新橋探偵物語」が結構早くから単騎公開自体は先んじて決まつてゐた割に、ポレポレ東中野に於ける城定秀夫の「恋の豚」(2/2~2/15)が終つてから漸く、アップリンク渋谷での上映スケジュール(3/16~何時まで?)が発表された、横山翔一長篇デビュー作。ど頭で謳はられるかとも予想した、第一回大蔵映画新人監督発掘プロジェクト最優秀賞に関しては触れられず。「マジカル・セックス 淫ら姫の冒険」(監督:山本淳一/脚本:大畑晃一・山本淳一/主演:阿部乃みく)・「デコトラガール 天使な誘惑」(監督・編集:柿原利幸/脚本:川﨑龍太・唐戸悠・木村洋輔/プロデューサー:藤原健一/主演:天使もえ)に続き、大絶賛お盆封切りでトリを務める、2018オーピー完全外様のピンク映画新規参入作である。
 発動中何故かフィルム映写機のリール音が鳴る、第六感のシックスもとい“セックスセンス”で難事件を解決し巨悪に立ち向かふセックス探偵が、行方を眩ませた女を捜し新橋の町を奔走する。清々しく相応しい物語は、覚醒後果梨のダサいメタルフレーム―と滝本より子を拘束するユッルユルの緊縛―に目を瞑れば、端役まで含め穴のない分厚い俳優部と、手慣れた素面でカッコいい画像処理も駆使する、隙のない演出とに加速され軽快に走る。攫はれたまゝ暫し退場せざるを得ない、春原未来がビリング頭にも関らず最たる劣勢を強ひられる匙加減の難しさはさて措き、年を跨いで上野の四代目を襲名したきみと歩実と、ピンク四戦目にして初の非旦々舎参戦を果たした卯水咲流は鉄板の安定感。キュートでファニーなななのアルアルに勝るとも劣らぬ、がらつぱち造形を彩がテンポよく弾けさせての、セクセン発動条件を巡るドタバタは激しく笑かせる。綺麗に締める、ラストも十全、に、しては。異形の恋といふ伝統的なエモーション自体は酌めなくもないにせよ、徒にバッド・テイストかつ、不用意に映画を湿らせる方向に振れてみせるのがどうにもかうにも解し難い。一息にスッカスカ、もといスカッと駆け抜ければよかつたのに。監督自ら“結末やストーリーが変はつてます!”と臆面もなく公言する、OPP+版を観るなり見れば腑に落ちるのか?欲張らうと思へば欲張れた濡れ場は量的にも金玉を踏み抜くには遠く、裸映画的には精々習作程度。かといつて、素面の娯楽映画としてもさうさうワーキャー騒ぐほど面白いのかといふと、甚だ怪しい一作。詰まるところ、ある意味予想外の充実を見せる本隊に対し、外様新規参入トリロジーは三連敗。マジセク論外、一見一番マシなのは新橋に思はせて、実は障りがないのはデコトラかも。全く以てプレーンで、当たりもしないけれど。

 よくよく反芻してみると、女を捜して貰はうとした男が、自ら探偵となる。即ち、依頼人の存在しない探偵物語といふのはなかなかの変則。シリーズ化が噂されなくもないものの、半年も経過したこの期に続篇の話は一切全く欠片たりとて聞こえては来ない。今回少なくともピンク版では果梨がADAM本体と邂逅さへしてをらず、作らうと思へばどうとでも膨らませるなり転がせられる、筈。


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 「日本発情列島 ONANIE百態」(1992/製作・配給:新東宝映画/監督:深町章/脚本:周知安/製作:伊能竜/撮影:稲吉雅志/照明:伊和手健/編集:酒井正次/助監督:国分章弘/監督助手:原田兼一郎/撮影助手:佐久間栄一/照明助手:小田求/スチール:津田一郎/現像:東映化学/録音:銀座サウンド/協力:水上荘・バラエティショップ アラジン/出演:橋本杏子・中川みず穂・如月しいな・杉原みさお・千秋まこと・石川恵美・ジミー土田・荒木太郎・立川平成)。脚本の周知安と製作の伊能竜は、それぞれ片岡修二と向井寛の変名。出演者中千秋まことが、ポスターには千秋誠。器用なのがこの人の場合、逆のケースも存在する。
 浅草繁華街のスケッチに出囃子が鳴りタイトル開巻、実名大登場、2代目快楽亭ブラック十六番目の名義である立川平成が高座に上がる。落語にも色々ある中、艶笑譚を得意とする平成が、新東宝創立三十周年記念にそのまんま「日本発情列島 ONANIE百態」と題した一席で人類の自慰の歴史を振り返るとする、壮大にして想定外のコンセプトが開陳される。開チンとか最早いはんからな、レベルが変らん。
 配役残り、最早誰なのかよく判らん―所以は後述する―石川恵美は、魚を赤貝に当てる快楽を覚えるギャートルズ以前の原始人、言葉を喋らない。如月しいなはドカーンと時間が飛んで明治時代の開明的な女学生・綾小路で、ジミー土田が、綾小路に毎度毎度なメソッドで悶々とする轟、どうせ下の名前は渉。橋本杏子は大東亜戦争の最中、隣組の中川みず穂宅に実家から届いた野菜をお裾分けするマチコ。何気に今作、jmdb準拠で中川みず穂の最終戦となる。千秋まことはザクッと現代、ヤリたい一心で矢鱈と従順な荒木太郎を、いはば人間バイブレーターに扱ふ女。男を人間バイブに女がオナニー、ここの方便だけは冴えてゐる。杉原みさおは、平成の劇中弟子・珍宝亭満好、字は推測。
 種々雑多な日本ビデオ販売の「Viva Pinks!」レーベル作を、手当たり次第見て行く殲滅戦第十四戦で一旦最終戦。誰の何だつたかは忘れたが、タグなしの「Viva Pinks!」作もex.DMMの何処かしらに転がつてゐる、筈。縁があれば、何時か辿り着くか再び巡り会へるであらう。深町章1992年第六作は、凡そ一年後に矢張りお盆公開された、「ニッポンの猥褻」(監督:深町章/脚本:瀬々敬久/主演:久保新二)共々、公式に二本存在する新東宝創立三十周年記念作。因みに、四十周年は「痴漢病棟」(2002/監督・主演:愛染恭子/脚本:山口伸明)が火蓋を切るPINK‐Xプロジェクト。そして五十周年を大々的に寿ぐ体力は、最早残されてはゐなかつた。あと三年辛抱したら、六十周年も来るのだけれど。
 旧約聖書のオナンからとマキシマム大上段の大風呂敷を広げておいて、鎌倉時代に諸首とか称された要は双頭ディルドで二人の女が燃える件を、一幕丸々影絵で乗り切つてみせる豪快なルーズさには、幾ら本格時代劇なんぞ到底展開し得ぬのも仕方のない安普請とはいへ、流石に呆れるのも通り越した。鮮やかな奇手とは映り難く、開き直るにもほどがある。周年記念作らしく倍増の女優部を擁してゐながら、顔まで汚して闇雲なアマゾン―あるいは山本大介―造形の施された石川恵美は素面の煽情性には程遠く、橋本杏子と中川みず穂が咲かせる豪華な百合が、立川平成の喋りに遮られるパート尻には激しい怒りを覚えた。兎にも角にも全篇を下手に貫く、上様のオナーニーなり枡席でマスをかく類の、他愛ない落語が一々煩はしくて煩はしくて仕方がない。ハーフ要員に男優部の一翼を担はせる、あるいは賑やかし程度ならばまだしも、2代目快楽亭ブラックに―しかもメモリアルな―映画一本背負はせるのは些かならず無理な相談。千秋まことに対抗し、平成がダメ弟子の満好―漫好かも―を高座上で人間電動フグに仕立てるクライマックス。尺八を吹かせたところ早々に果てた平成が「ごめんフグ行つちやつたの」と頭(かうべ)を垂れ、「ブウ」と河豚を模して頬を膨らませた満好がむくれるのがサゲ。何が“おあとがよろしいやうで”だ、よろしかねえよ。凝つた趣向を狙つたと思しきものの、力及ばず明確にやらかした一作。一年時期までずらしての、三十周年記念作がもう一本ある点は奇異にも思へたが、邪推するに、「ニッポンの猥褻」で寧ろ仕切り直したのではあるまいか。

 ところで最近ではゐろはに京子出演作を見られるだけ見てゐたりする内に、気づくと深町章(ex.稲尾実)の感想が九十九本のハンドレッド・リーチ。小屋だけで普通に到達した、“無冠の帝王”新田栄。新作を狙ひ撃つた浜野佐知と、合はせた格好の渡邊元嗣。小屋で未見旧作に当たれば当然自動的に、強ひて忌避するのも無理があるゆゑ、何某かのテーマが発生すればこの際、ex.DMMによる半ドレッドも辞さないことにした。


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 「美人妻 薄毛の柔肌」(1993『快感ONANIE 新妻篇』の1999年旧作改題版/製作:獅子プロダクション/提供:Xces Film/監督:佐藤寿保/脚本:五代響子/撮影:稲吉雅志/照明:小川満/編集:酒井正次/助監督:今岡信治/監督助手:北本剛/撮影助手:飯岡聖英・柳田裕男・寺田緑郎/照明助手:一色嘉伸/スチール:西本敦夫/録音:中村半次郎/効果:東京スクリーンサービス/録音:銀座サウンド/現像:東映化学/出演:浅井理恵・芹沢里緒・浅野桃里・今泉浩一・杉本まこと・川崎浩幸・紀野真人)。出演者中今泉浩一がポスターでは何故か今泉浩一郎なのと、川崎浩幸も川崎季如。いい機会なので整理するとex.川崎季如が川崎浩幸で、ex.川崎浩幸がかな化したかわさきひろゆき。
 照明が見るから煽情的に赤い、オナニーのイメージ風濡れ場で豪快に開巻。「ねえ貴方どうして、どうしてこんなことさせるの」、「どうして抱いて下さらないの」と血を吐くやうな独白に続き、突つ込まれたバイブで果てた浅井理恵が「何時か王子様が」とか言ひ出すに及んで吉行由実かよ!と度肝を抜かれかけたが、「なんて思つてゐた訳ではなかつた」と即座に軟着陸。「でも男を知らないまゝ処女を喪失するなんて誰が想像しただらうか」、と基本設定を手短に開陳してタイトル・イン。住宅地遠影にクレジット起動、倉田か蔵田高弘(紀野)が、帰りの予定を尋ねる妻・玲子(浅井)の問ひかけにも答へず陰鬱に出勤する。
 見合結婚半年、ジョイトイで弄られるばかりの夫婦生活と、心通はない夫婦関係に心を痛める玲子は、結婚を祝した寄せ書きを破り捨て改めて自発的オナニーをオッ始める。配役残り杉本まことは、その最中倉田家のチャイムを鳴らす訪問アンケート収集員。用紙だけ渡して立ち去るでなく、玄関口で夫婦に関する質問を聞き取る光景には、かつては果たしてこのやうな質問調査が行はれてゐたのかと巨大な疑問符しか浮かばないが、兎も角対照的な青の照明で判り易く突入する、玲子のイマジンを介錯する。高弘が浅野桃里と今泉浩一のアダルトビデオでも見てゐるのかと思ひきや、まさかのライブ映像で、しかも直ぐに直で見られる隣室であつた。芹沢里緒が独身時代から高弘が通ふ、客の望む快感を誂へる旨を謳ふコーディネイトサロン「パピヨン」の女主人・繭月真由美、浅野桃里と今泉浩一がスタッフ。今泉浩一はケンジ、浅野桃里の固有名詞は呼称されない。川崎浩幸は、教育ママには真由美が扮する園児プレイに戯れる男、下の名前だけなら学か勉辺り。一見無駄な枝葉を繁らせるにも思はせて、一応真由美が述懐する男も女も色々に貢献する。最後に、玲子がノーパンで出撃する新宿散歩。玲子と歩道橋で擦れ違ふ男の後姿が、どうにも今岡信治に見える。
 国映大戦番外篇、国映作ではないものの佐藤寿保がex.DMMの中に唯一未見で残つてゐた、1993年第三作。いや、矢張り獅子プロの買取系ロマポがもう一本あつた。
 佐藤寿保とはいへ脚本が五代響子(現:暁子)なだけに、無論勿論論を俟たず、サイバー乃至スラッシュな方向に物語が振れてみせることなどなく。逆に下手に仕出かさない分、脇の締まつたソリッドな裸映画として綺麗に纏まつてゐる。生殺しを拗らせ徐々に暴走、更に加速して行く玲子と、巧妙にして大胆な姦計を巡らせる真由美。一人オッパイ部がゐればといふ細(さゝ)やかな不満も残さぬではないにせよ、ふんだん且つ濃密な女の裸を一欠片たりとて疎かにはしない上で、玲子を支配したつもりの高弘が、次第に二人の女に絡め取られて行く展開は綺麗に出来上がる。巴戦と隣室に於いて吹かれる尺八の並走を経て、大完遂を果たしてなほ飽き足らず独走する玲子が、遂に配偶者の倒錯した性的嗜好に辿り着き、そしてそれを受け容れるカットは、裸映画と素面の劇映画、双方のクライマックスたるに十二分な強度を漲らせる。元版新版共々ポスター図案にも採用される、結構高層階にも見えるがそれにしてもな浅井理恵の白昼ベランダ全裸オナニーは、通報されはしまいかと別の意味でもハラハラさせられるほどのド迫力。尤も元版ポスターに関しては些か画が寄り過ぎで、折角の決死が些か判り辛くはある。

 ところで、あるいは例によつて。“新妻篇”とされてゐるがそれでは他に“快感ONANIE”があるのかといふと、珍しくあるにはあるが何れも新東宝の、鈴木敬晴通算六と三分の一作「悶絶!快感ONANIE」(1991/主演:南野千夏)と、激越に観るなり見たい恐らく唯一の監督作「離婚妻快感ONANIE」(1992/監督・脚本・多分主演:下元史朗/撮影:下元哲)であつたりする。


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