真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「いたづら天使 乱れ姿七変化」(2015/製作:ナベシネマ/提供:オーピー映画/監督:渡邊元嗣/脚本:山崎浩治/撮影・照明:飯岡聖英/編集:酒井正次/助監督:永井卓爾/撮影助手:矢澤直子・高橋史弥/照明応援:広瀬寛巳/編集助手:鷹野朋子/協力:榎本敏郎、他二名/応援:関谷和樹/スチール:津田一郎/録音:シネキャビン/仕上げ:東映ラボ・テック/協賛:GARAKU/出演:桜木凛・五十嵐しのぶ・岡田智宏・ケイチャン・津田篤・山口真里《愛情出演》・樹花凜)。出演者中、山口真里は本篇クレジットのみ。狭義のピンク映画に於いて、恐らく自作後初となるウルトラ久し振りに見かけた榎本敏郎の名前に驚いて、クレジット終盤に玉砕する。
 夫・透(岡田)が一人ニッカニッカ時計仕掛けに行動する、香川家の朝。送り出した元部下の妻・千尋(桜木)が、時刻表と生活してゐるみたいと溜息をついたところで、街景のロング・ショットに品のないフォントでドヒャーンと起動するタイトル・イン。何処で売つてゐるのか、ドット柄の凄いワイシャツを着た社内での愛称はドット君ことこちらも元同僚の永山孝夫(津田)が、外回り中と称して千尋を訪ねて来る。壁ドンと胸キュンを経て華麗に濡れ場初戦、ベタだの陳腐だのを欠片も懼れぬ渡邊元嗣の強靭なポップ・センスが、量産型娯楽映画を強くする。事後、不義をやらかした自己嫌悪を抱へて千尋は外出。退屈なOL生活に厭き結婚してはみたものの、専業主婦はもつと退屈だつた。贅沢な悩みを振り回す千尋は、衝動的に世界の消滅を願ふ。他方、薄いパープルのメイド服に身を包んだ、神様(樹)登場、神様!?「だ・れ・に・し・よ・う・か・な」と、自ら正しく神様のいふとほりに神様が飛ばしたメイド靴は千尋を直撃。“神を信じますか?”と手書きしたポケット・ティッシュを手に現れた神様を、当然千尋はチープな小道具もとい勧誘かと完スルー。すると樹花凜が素頓狂な決定力でシレッと叩き込む超絶の名台詞が、

 かう見えて神なのだ。

 確かに神には見えねえ、言ひ得て妙さに十万億土の彼方まで広がる大草原。反面“ダハハハハ”だの“バッハハーイ”だのと一々メソッドが古臭いのは、絶妙に神臭いかも。当たり前だがなほも神を信じない千尋に対し、神様は二人のダンス動画をスマホで撮影。それを千尋が見せられてみると、神様だけターンする毎にクルクル扮装がコスプレ変化するのは、迸るGARAKU(ex.ウィズ)魂とデジタル化の恩恵とを直結させた、ナベシネマならではの麗しい一幕。
 配役残り五十嵐しのぶは、乱れ姿七変化をさういふアプリかと依然納得しない千尋に業を煮やした神の気紛れで、ドット君からドット柄のスカーフを巻いたドットさんにさせられた永山孝子、立ち位置が元同僚から元先輩へと、微妙にシフトしてもゐる。その違和感は、当人始め千尋以外の全人類は共有しない。千尋をAVにスカウトする山口真里(役名はスカウトの女)噛ませて、ケイチャンこと要はけーすけは、千尋を騙くらかす悪徳芸能プロダクション社長・ジョニー北山。二作務めた十日市秀悦の後を継ぐナベシネマ二代目、亜紗美も入れると三代目。十日市秀悦の更に前に、真の初代がゐたならば申し訳ない。
 自身の引退なり復帰も挿みつつ、荒木太郎2010年第三作「恋情乙女 ぐつしよりな薄毛」(監督・脚本・出演:荒木太郎/原題:『夢しか夢がない人のプロレタリア恋愛』)以来まさかの大復帰を遂げた桜木凛を主演に擁した、渡邊元嗣2015年第一作。結論から先走ると、デジタル時代もゴールデン・エイジの第二章を軽快に爆走するナベが、画期的新機軸の女子トークピンクをも押さへ2015年戦線の先頭に飛び込んで来た!ダラけてる人類に神様が定期的に与へる、神の癖に阿弥陀籤で選ぶ今回の試練は、ズバリ日本消滅。そしてそのカタストロフィを回避するための条件は、白羽の矢をたてられた千尋が一ヶ月後二十七歳の誕生日までにトップ・アイドルになること。ファンタ路線のアイドル映画と来た日には、流石俺達のナベだぜと、拍手喝采するのは全然早計。神の与へた試練を回避するために、悪魔に魂を売る。全体樹花凜の絡みはどうするものかと思ひきや、神と悪魔が腐れ縁のセフレ関係。矢継ぎ早に叩き込まれる超展開に、度肝を抜かれるのもそれでも未だ早い。何より圧倒的なのは、千尋のスマホを覗き見た、透が岡田智宏一流の持ち芸でほくそ笑む謎カット。一旦放置されたかに見えた伏線が満を持して火を噴く、アップデートされた現代性も鮮やかな一発大逆転ラスト。悪魔に魂を売るのも千尋の選択にせよ、世界を救ふのは、愛であつて欲しい。神様が僅かに窺はせる真心に、即してゐるのも素晴らしい。五十嵐しのぶに話を戻すと、千尋を溺愛する透が幾ら据ゑられたとはいへ膳を喰ふ不自然ささへさて措けば、神の全能の証明の枠内に、三番手を回収する論理も地味に秀逸。滅ッ茶苦茶に面白い、これ今作の最大の勝因は、絶好調を維持するナベや穴のない強力な俳優部だけでなく、何気に比類ない脚本の強度ではなからうか。普段は控へる二度目の自リンを貼ると、悪魔か神とアイドル、完全に何時か観たやうなオーラスは御愛嬌。この世界に神とか悪魔がゐるのかゐないのかは不信心者につき知らん、ただピンク映画には、渡邊元嗣がゐる。


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 「女詐欺師と美人シンガー お熱いのはどつち?」(2015/製作:旦々舎/提供:Xces Film/監督:浜野佐知/脚本:山邦紀/企画:亀井戸粋人/撮影:小山田勝治・猪本太久磨/照明:ガッツ・蟻正恭子/録音:沼田和夫・廣木邦人/監督補:北川帯寛/助監督:菊嶌稔章・藤井愛/音楽:真梨邑ケイ・中空龍/劇中歌:『I LOVE NEW YORK』作詞・作曲・歌:真梨邑ケイ、『Summer Time』、『野ばら』/ライブ演奏:今野勝晴 Piano & Keyboards・金子健 Wood Bass/編集:有馬潜/整音:若林大記/音響効果:吉方淳二/録音スタジオ:シンクワイヤ/ポスター:MAYA/タイトル:道川昭/グレーディング:東映ラボ・テック/ロケ協力:Paradise Cafe・田中スタジオ/撮影機材:アシスト・株式会社 Po-Light・株式会社フルフォレストファクトリー/協力:真梨邑オフィス/写真提供:黒佐勇/出演:真梨邑ケイ・加藤ツバキ・倖田李梨・荒木太郎・ダーリン石川・竹本泰志・平川直大・滝ともはる・藤井愛・なかみつせいじ)。出演者中、滝ともはるはまだしも、藤井愛が載つてゐるのに何故か平川直大が本篇クレジットのみ、チーフ照明のガッツは守利賢一の変名。
 サーマターイムとヴォーカル・インに続いてタイトル開巻、後ろに今野勝晴と金子健を従へた、ジャズシンガー・中空ならぬ空中ジュリア(真梨邑)のライブ風景。庭にプールがある方の、私称第一ミサト。画面左から、何時でも首に馬鹿デカい一眼レフをぶら提げた造形がポップなカメラマン・吉岡(平川)。ジュリアとは男女の仲にもある、プロデューサーの藤沢修司(なかみつ)。中央にジュリア挟んでマネージャーの君津ひとみ(倖田)と、ジュリアのヌード写真集―レディ・デイになぞらへて―『Lady J』を企画するデザイナーの郡山好夫(竹本)。一列に並んだ一同でジュリアの活躍を言祝ぐライブの打ち上げ、出来上がつたイメージを壊したいだのファンを裏切り続けたいだなどと、自信タップリプリにぶつてのける真梨邑ケイが、意図的に芝居をデフォルメした際の小川真実を彷彿とさせる。その夜、ジュリアと藤沢の絡みの中途で、昼夜から一転裾の大きく割れたパンツで闊歩する、女詐欺師の椎葉ゆかり(真梨邑ケイの二役)。ゆかりが逗留するホテルに入ると、結婚詐欺で大金を巻き上げた何処ぞの市会議員・松原(荒木)がゆかりの所在を探し当て詰めかけてゐた。ゆかりが松原を適当にあしらふ最中、星川か星河ミワの名前で矢張り騙した、川崎慶太からの電話も着弾する。今度はゆかりと松原の絡みの中途で、プールサイドでの『Lady J』撮影風景。窓からそれを眺めつつ、ひとみと郡山は乳繰り合ふ。
 配役残り、倖田李梨V.S.竹本泰志戦を三度目の正直で完遂したタイミングで中盤の火蓋を切る加藤ツバキは、ゆかりにカモられ自殺した悟郎(一切登場せず)の娘・二本松夕香。ライターで、ゆかりの自叙伝を企画する。硬軟両極端な二種類のキャラクター像を使ひ分ける加藤ツバキにとつて、今回は個人的に好みの方の―知らんがな(´・ω・`)―ソリッド版。滝ともはるは、ジュリアの主戦場たる横浜は馬車道のライブハウス「Paradise Cafe」オーナーのヒムセルフ。本来は演出部の人間なのか、藤井愛はゆかりが逗留するホテルのフロント。そしてダーリン石川が、攻め受け両面で素晴らしい暴れぶりを披露する川崎慶太。
 浜野佐知2015年第二作は、電撃古巣復帰したデジエク第四弾「僕のオッパイが発情した理由」(2014/脚本:山邦紀/主演:愛田奈々)、前作の第六弾「性の逃避行 夜につがふ人妻」(2015/脚本:山邦紀/主演:竹内ゆきの)に続くデジタル・エクセス第七弾にして、ピンクどころか劇場映画初主演のビッグ・ネームを招聘した、エクセスのお盆決戦作。真梨邑ケイの名前がこれまで当方の歪な琴線に触れたことはないのだが、還暦間近である点も踏まへると、今なほプリップリの肢体の美しさは衝撃的。総尺も増えた分歌を歌ふ場面は潤沢に設けられるものの、本職のジャズ歌手としての実力のほどは、ズブッズブの門外漢につき正直よく判らん。自曲で所々音を外してゐたやうに聞こえたのは、ズージャーてのはああいふものなのか?
 映画本体に話を戻すと、夕香から女詐欺師としての黄昏を突きつけられたゆかりは、酒を飲みながらの危険な湯船にて、戯れに自ら首を絞めてみる。童女のやうにも聞こえる、歌ひ手が判らない「野ばら」起動。ゆかりが意識を取り戻したのは、ホテルでなく空中邸の薔薇風呂の中。まるで勝手が掴めないまゝライブのサウンド・チェックと称して連れて行かれた、夕香が新人スタッフとして働く「Paradise Cafe」のステージ上で、ゆかりはいはゆる並行世界の存在を認識する。ジュリアがゐる世界と、藤沢が貸しスタジオ田中もとい「ファレコ」管理人の、ゆかりが元々ゐた世界。往来自体を自分で選択なり操作することは出来ないにせよ、二つの世界を往き来する過程で、ゆかりは確かにそろそろ潮時の―本来の自分であつた―女詐欺師ではなく、美人シンガー・ジュリアの人生に居心地の良さを覚えるやうになる。序盤は大御所のエクセスライクに振り回された、覚束ない足取りのスター映画かと一旦危惧させておいて、ゆかりの意識を軸に―ゆかりがジュリアである間、元々のジュリアは夢を見てゐるのに近い状態にあるらしい―二つの世界を丁寧に積み重ねる。ゆかりの都合のよさにも上手く味つけされた、目の前の現実だけではない、より多くの可能性を摸索する物語は抜群に見応へがある。エクセスの大勝負に自重してか、浜野佐知が何時もの如くラディカルなフェミニズムを主演女優に仮託することもなければ―代りに撃ち抜くのは加藤ツバキ―山邦紀が奇矯なモチーフを持ち込むでもないパラレル一本勝負を、果たして如何に見事に畳んでみせたものかと固唾を呑んでゐたところ。ジュリアとゆかりを視覚的に区別する、ゆかり右肩の蝶のタトゥー。アイコンを逆手に、二つのほぼ同じ肉体と別々の意識とが劇中の法則を超えてクロスする、でもなく、最もプリミティブなオチに硬着陸する関根和美も吃驚なラストには、小屋の狭い椅子の上で引つ繰り返つた。堂々とやらかした感が寧ろ清々しい、ツッコんだ方が負けなのかも知れない豪快作である。

 とはいへ、不要な困難も予想される大物映画にしては十二分な仕上がりで、近年オーピーでは苦戦気味であつた浜野佐知が、エクセスでの元気な様は頼もしい。加へて、未だ着弾のタイミングも定かではない山邦紀2015年第二作―第一作は来月来る―に続き、我等がナオヒーローこと平川直大が、三年ぶりに浜野組に帰還したトピックが何より嬉しい。


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 「黒下着の女 欲情の赤い蜜」(2015/制作:関根プロダクション/提供:オーピー映画/脚本・監督:関根和美/撮影:下元哲/照明:代田橋男/助監督:茨城空/編集:有馬潜/録音:シネキャビン/仕上げ:東映ラボ・テック/撮影助手:浅倉茉里子/照明助手:北村哲夫/監督助手:桜庭泰時・原口大輝/選曲:山田案山子/スチール:小櫃亘弘/効果:東京スクリーンサービス/出演:きみの歩美・桜木郁・酒井あずさ・なかみつせいじ・竹本泰志・柳東史・牧村耕次)。見慣れぬ名前のセカンド勢には、正直自信がない   >見切りかよ>>大体チーフ助監督は誰の変名だ
 水門近く、よく晴れた絶好の陽気と開けたロケーションには不似合ひな、馬鹿デカいサングラスと黒尽くめの衣装でキメたきみの歩美が佇む。リエ(きみの)が婚約者のヒロキ(なかみつ)に「ぼちぼち一緒に寝ない?」と膳を据ゑると、未だ容態の安定しないリエをヒロキは慮りつつも結局婚前交渉、水は低きに流れる。ちやんと前後にフェードを入れる想起明け、画面奥に歩み行くリエの後ろ姿がスロー・モーションから、やがて止まつてタイトル・イン。一ヶ月前、階段から落ち記憶喪失になつたリエは、ヒロキと暮らしてゐた。時折キーンといふ耳鳴りとともに、リエは断片的なフラッシュバックに囚はれる。茶髪のウィッグをつけた、まるで商売女のやうな扮装のリエと背格好の全く似通つた女が、「パラダイスプロダクション」なる見るからに怪しげな一室に消える。ヒロキからリエの特徴なりスナップを記録した、タブレットを見せられてもリエはまるで釈然としない中、フラッシュバックは進行する。後ろにムライ(牧村)を従はせた妖艶な美女・ゆりえ(酒井)に、ウィッグの女・リリー(きみの歩美の二役)はブルーホテルの1190号室に向かはされる。そこでリリーは組織の客(竹本)に抱かれ、ハメ撮り写真を撮られた。
 配役残り柳東史は、街でリリーの姿を見つけ後を追つたリエが、敷居を跨ぐ会員制としか表に出されてゐない店のバーテン。初見では単なるその他カウンター客要員かと思はせた、三作目にして目下全作二番手の桜木郁は―リリーの好物である―タンカレイのストレートを頼んだリエを捕まへる、リリーの妹分・サトミ。ここで、2010年第三作「家政婦が見た痴態 お願ひ汚して」(脚本:関根和美・新居あゆみ/主演:鈴木ミント)以来の関根組となる酒井あずさも普通に久し振りなのだが、てつきり初参戦かと思ひきや、柳東史に至つては1999年第二作「喪服妻 うなじの残り香」(主演:岸加奈子/未見)以来相当の御無沙汰後の大復帰といふトピックには、調べてみて少なからず驚いた。
 フロンティア・リバイブが遂に現在進行形のニュー・関根和美・ピンクことNSPに突入、ハンドレッド・関根和美第八十戦は2015年第一作にして、当然デジタル・オーピー初陣。デジタル・オーピー観戦もかれこれ八作目、使用する機材か仕上げの塩梅なのか、画質が結構まちまちなのが過渡期ぶりを窺はせる。といふかよくよく思ひ返してみるならば、フィルム時代も組毎に結構画調に差なり違ひはあつた。今回今作、屋内は暗めの画も安定する反面、そこそこ設けられる屋外ショットが、根本的に矛盾した物言ひにもならうがかつてのキネコ感を漂はせるのが屈折して感興深い。
 物語的には記憶を失つた女が徐々に辿り着く、穏やかではない過去。何が起こるでなくリエが外出し、プラプラ歩いて適当に帰つて来る。デジタル化に伴ひ十分延びた尺を、絡みは兎も角さうでない繋ぎのカットもゆつたり長めに回すこと―だけ―で乗り切る。グルッと一周して寧ろ大胆な戦略はこの際さて措くとして、序盤は緩やかに、中盤以降はサトミによる加速も受けリエが急速に取り戻して行くリリーの過去が、敵がコールガールだけに何れも濡れ場に直結するゆゑ、酒井あずさの裸をもう少し観たかつた心残りさへ除けば、裸映画的には過不足なく安定する。画面手前のヒロキと、その背後でリリーを手籠めにするムライの背中越しに、要は間に男二人を挟んでなほ、きみの歩美のオッパイを的確に抜くショットには、何気に超絶の技術に感服した。他方、リエがサトミと再会する件の呼び水となる、リエが目撃したリリー?のやうな女。そもそも、リリーが記憶を失つた顛末。始終の重要な要素を豪快にスッ飛ばしてのけるのは、如何にも関根和美らしいシレッとした剛腕。ともあれ実は現状最強クラスの男優部布陣にも支へられ、きみの歩美と桜木郁のプリップリした肢体を尺も延びた分タップリと堪能するには格好の一作。関根和美がデジタル初戦のタイミングで、何でまた斯様に柄にもなければ逃げ場もないノワールな題材を選択したのか、あまりピンとは来ないけれど。


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 「不倫人妻 ただれた下半身」(1992『若奥様 下半身熟女』の1998年旧作改題版/制作:シネマ アーク/提供:Xces Film/監督・脚本:小林悟/撮影:柳田友貴/照明:小野寺透/編集:フィルムクラフト/助監督:青柳一夫/監督助手:杜松蓉子/スチール:田中スタジオ/録音:銀座サウンド/現像:東映化学/フィルム:AGFA/出演:椎名美月・冴木直・小川真実・朝田淳史・白都翔一・石神一・港雄一)。
 ヤクザ者の三国(朝田)と兄貴分の花村(港)が、三国と当時今貴子(椎名)のハメ撮りビデオを見る。貴子は結婚を機に三国とは別れ、三国の手元に残されたのはビデオと、月五万支払ふ旨の手切れの誓約書。悪くない話に思へるのは詮無い貧乏性か、端金に不満を持つ三国の思惑を酌み、花村が出張る格好に。さうとも知らず、ニッコリ笑つたCM感覚でカップヌードルカレーを手に主演女優が改めて登場、振り返るとエプロンの下は裸でタイトル・イン。貴子が家では基本裸エプロンで通す藪から棒に関しては、後に暑かつたからと適当に言ひ訳する以外に、特にも何も何ら方便を設けない姿勢は寧ろ潔い。裸映画は、女の裸を見せるのがジャスティス、その志は清々しい。貴子がビールを飲み飲み三分を待つてゐると、呼び鈴が鳴る。旦那が早く帰宅したのかと思ひきや、早速花村来襲。幾ら清々しい心意気ともいへ、貴子が花村を前に裸エプロンであるのを一欠片も恥らはないのは、エンジン全開絶好調の大いなる無頓着。ビデオを持ち出されるや貴子は本格的に点火、一戦交へた後、三国が音を上げた貴子の好き者ぶりに花村も一旦手ぶらで退散する。花村は続いて、実は誓約書は貴子の手によるものではなく、面白半分で代筆してゐた貴子の友人・ヨシエ(冴木)を訪ねる。ビデオを見せられるとヨシエもよろめきかけて、土壇場で我に返る。
 出演者残り石神一は、互ひの夫婦生活トークのみ出番のヨシエ夫。白都翔一が、実質入り婿に近いらしい貴子の夫・沢井。沢井が花村と三国に呼び出されるのは、カット頭の画面手前には小林悟も見切れる純喫茶摩天楼。脅された沢井が自棄酒を痛飲するのが、今度は軽快にゴーゴー音楽流れるスナック摩天楼。スナック摩天楼のママはほぼ定位置の板垣有美、沢井の左右に三人座るその他カウンター客は、背中しか見せないゆゑ流石に手も足も出ない。何処まで引つ張るのか如何に捻じ込むのかと地味にハラハラさせられた三番手たる小川真実は、沢井が頼る同級生で弁護士の照井。実にスマートな配役ながら、因みに板垣有美のアテレコ。
 大御大・小林悟の、1992年ピンク全十三作中第七作、薔薇族が更に五本。沢井家のホワイトボードに出前の電話番号が並ぶのは、貴子が料理をしない無精を描いたらしからぬディテール。尤もらしからぬのは神も宿し損ねたその細部くらゐで、総じては相も変らず紛ふことなき大御大仕事。後生だから折角何百本も撮つたのに、何本かは見紛はせて欲しい。アテレコ三番手と随分な扱ひの小川真実が無理なく展開に加はるのが、今作のピークといふ名の関の山。沢井は何処で油を売つてやがるのか、一人で三国か花村のヤサに乗り込んだ照井は、一服盛られ手籠めにされる。結構な悲劇も豪快にさて措いて、照井発案の“最後の手段”を頼りに、沢井は花村・三国との最終決戦に挑む。一応それなりのクライマックスかに思ひかけたのは気の迷ひ、わざと席を外した沢井が、花村と三国が妻を強姦するビデオを逆撮影、誓約書とビデオ―マスターだとかコピーだとかは勿論一切スルーする―を奪還する。確かに“最後の手段”だなといふ大らかなツッコミ処も兎も角、捨てる前にビデオを見てみると、ビデオの中でヤラれてゐるのは貴子、ではなく照井。となるとそこは、ヤクザの方が一枚上手といふオチにならうところが、さうはならずに貴子が人のビデオに盛り上がり突入する夫婦生活の、しかも途中で適当に振り逃げるラストの紙一重を跨ぎかねないルーチンぶりが、小林悟が小林悟たる所以。即ち、観客が裸映画に女の裸以外の何某かを求めるある意味色気を許さない、厳格な父性にも似た逆説的なストイシズムこそが、小林悟映画の本質である。どんな与太でも吹きやいいつてもんぢやねえんだよ(´・ω・`)


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 「ピンサロ病院3 ノーパン診察室」(2000/製作・配給:新東宝映画/監督:渡邊元嗣/脚本:中野貴雄/企画:福俵満/撮影:飯岡聖英/照明:東海林毅/編集:酒井正次/助監督:佐藤吏/監督助手:森角威之/撮影助手:岡宮裕/照明助手:小久保亮介/スチール:津田一郎/衣装協賛:《株》ウィズ・中野貴雄/録音:シネキャビン/現像:東映化学/出演:黒田詩織・西藤尚・工藤翔子・水野里蘭・奈賀毬子・山信・ジミー土田・十日市秀悦)。
 波止場ショット、テンガロン・ハットに頭陀袋とポップに流れ者扮装の黒田詩織が、ピンサロ「ホットリップス」がホステスを募集するチラシに目を留める。安普請ぶりを回避、しようとする気配すら窺はせないホットリップス店内。店長のドトキン(ジミー土田)がハッスルタイム開戦を宣言、軍艦マーチが起動し嬢の音無由紀(工藤)・リカ(水野)・一瀬レナ(奈賀)が客々を抜く。その場に乱入した赤城政子こと通り名・上州小政(黒田)はドトキンに啖呵を切り、面喰はせる間も与へず自慢の手コキで陥落、強引にホットリップスに加はる。他方、あるいはその後。こちらは、こちらもププッピドゥな扮装で裸足で逃げるモンロー(西藤)と小政がミーツ。矢継ぎ早、勿体ぶる素振りすらみせず「月夜に悪魔と踊つたことがあるか?」と、この当時は最新の決め台詞も披露しつつ当の悪魔・六剣郎(十日市)登場。角の生えた被り物とメイクでバッチリ決まつた首から上と、マントに三叉の槍のオプションとで結構出来上がつてゐるかに思へた六剣郎の造形も、明るいところでよくよく見てみると何ちやない―クラッシャー・バンバン・―ビガロ柄の革ジャンに普通のジーンズ。寧ろロッケンロー寄りの、随分と安つぽい衣装ではある。モンローを巡り六剣郎と争つた小政は半殺しにされながらも、レモン汁を目に浴びせるキュートな毒霧で辛うじて脱出。所改めモンローが小政にキスすると、不思議なことに小政の傷は治つた。本格的な百合に移行、モンローの観音様はハート型と小政いはく“奇抜なデザイン”をしてゐた。モンローも小政に連れられホットリップスに加入、モンローに吹かれた客は加齢なりインポなり、何れにせよ勃たないモノが勃ち、雑誌にも採り上げられ大評判となる。
 配役残り山信は、ギターを抱へた渡り鳥造形でホットリップスに現れるラテンのジョー。潤沢なその他ホットリップス客要員はチンコ方面以外にも目が見えるやうになつたり車椅子から立ち上がつてみたりと台詞も芝居もそれなりにある割に、全員手も足も出ない。いや、車椅子から立ち上がるのは中野貴雄か。
 記念すべき第一作「ピンサロ病院 ノーパン白衣」(1997/監督:的場ちせ=浜野佐知/企画・脚本:福俵満/主演:麻生みゅう)、最高傑作の第二作「ピンサロ病院2 ノーパン女医」(1998/監督:北沢幸雄/企画・脚本:福俵満/主演:倉本梨里)、ピンサロ病院4よりもノーパン白衣3により近い最終作「ピンサロ病院4 ノーパン看護」(2001/監督:的場ちせ/脚本:山邦紀/主演:望月ねね)。ピンサロ病院シリーズ残す第三弾は、渡邊元嗣2000年最終第六作にして明けて正月映画。因みに4が封切られた頃にリリースされたビデオ題が、「新人看護婦 大卍祭 5人の《秘》診療テク」。だから全員ピンサロ嬢で看護婦ではない上に、“大卍祭”なる闇雲な用語は意味が全く判らない。
 よくいへば最大の羽目外し作といふか、要は羊頭を懸けて狗肉を売る一作。m@stervision大哥がリアルタイムでケリをつけられてをられるやうに、“ピンサロ病院”はモンロー景気にドトキンがホットリップスを模様替へしただけで、ピンサロ風の愉快な病院でも何でもない、単なる病院ピンサロである。別に女子高でも修道院でも何でもいい、モチーフのワン・オブ・ゼンに過ぎない。物語的には千年に一度神と人間との契約を仲介する、天使を文字通り悪魔の毒牙が狙ふ。浜野佐知の剛力ピンクに挟まれた間二作が、二作続けて地球か人類の危機を迎へてみせるのもなかなかどころか大概豪快なシリーズ構成とはいへ、脇目もふらず見事電車道を駆け抜けたノーパン女医に対し、今作はとなると一旦大風呂敷を途中まで拡げておいて、中盤は実は男女の仲にある由紀とドトキン、リカ×レナ×ジョーの巴戦と、要は本筋から概ね乖離した濡れ場に暫し終始。素頓狂な不思議ならぬ天使ちやんキャラの枠内から半歩と出でない西藤尚に対し、この面子の中だと案外最も展開の推進力を誇る十日市秀悦が退場してゐる間ストーリーの足が止まるツケの回つた、終盤の詰め込み具合がギューギューも通り越しガッチャガチャの印象は否み難い。組み合はせ自体が無理からな、締めの絡みを何と一時間も跨いで捻じ込むのには結構吃驚した。総尺六十三分弱、相当横紙を破つたものとみえる。豪快なシリーズ構成は兎も角、今作単体の構成は直截に頂けない。鵜呑みにしていいものやら如何なものやら、jmdbの記載頼みでは六年ぶりとなるジミー土田大復帰も正直不発気味のまゝに、見所は悪魔に憑かれた由紀こと工藤翔子の千葉のジャガーばりのハードロックなメイクと、無闇にポテンシャルの高い四番手。水野里蘭がメリハリの利いた容貌と、工藤翔子にも奈賀毬子にも勝るとも劣らない豊かなオッパイを誇る超逸材、ピンク出演が最初で最後なのが猛烈に惜しい。豪華五本柱の後ろ二人が限りなく単なる濡れ場要員でしかない点を本作最大の弱点と看做すならば、正しく諸刃の剣といふほかもないけれど。


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 「中年男女 一夜限りの不倫」(1994『不倫妻 一夜の快楽』の2007年旧作改題版/製作:飯泉プロダクション/配給:新東宝映画/脚本・監督:北沢幸雄/企画:森あきら/撮影:千葉幸雄/照明:隅田浩行/音楽:TAOKA/編集:北沢幸雄/助監督:増野琢磨・瀧島弘義/撮影助手:片山浩/照明助手:藤森玄一郎/ネガ編集:酒井正次/車輌:高木明/効果:東京スクリーンサービス/出演:吉行由美・西野奈々美・石原ゆり・白都翔一・杉本まこと)。出演者中吉行由美が、新版ポスターでは吉行由実。元版は不明、時期的には多分由美のまゝか。
 手前に海を置いたビル群の遠景に、証明シリーズみたいなカッコいいフォントが飛び込むタイトル開巻、クレジットが追随する。夜の新幹線で出先に向かふ、妙なスケジュールでの一泊弾丸出張を翌日に控へた宮崎博史(杉本)と、共働き―恐らく別の会社―で経理職の妻・典子(西野)の夜の営み。事後自分も抱へた仕事に強行日程を労つて呉れない典子に、博史は子供のやうに不満を覚える。翌日、そんなことならさつさと出張ればいいのに昼間の時間が空いてゐる博史は典子を昼食に誘ふも、呆気なくフラれる。電話ボックスから出て来た博史に、自身も友人との食事を断られた、単身赴任の夫を送り出して来た直後の人妻・白川佳枝(吉行)が声をかける。甚だどころか輝かしいまでに不自然なシークエンスながら、吉行由実が据ゑた膳を喰はない男などゐるものか。結構豪勢なランチの後、博史は新幹線ギリギリの時間まで佳枝を飲みに誘ひ、やがて夜行―列車―で現地に入るテーブルに変更しホテルに入る。だから、博史が昼から夜にかけて半日では済まない時間を自由に使へる、そもそも意味が判らない。
 配役残り、挙句一回戦後風呂で乳繰り合つてゐる内に、博史は夜行の時間も逃す。これが深町章の映画で博史役が山本竜二であつたならば、自由な世界だなオイで済むところが、北沢幸雄の良くも悪くも硬質で生真面目な演出の中では、如何せん抜け落ちる底も感じざるを得まい。兎も角斯くなる次第で石原ゆりは、佳枝の大胆極まりない思ひつきで、巴戦要員に呼ばれるホテトル嬢。強引とスマートの紙一重で戯れるが如き、三番手の放り込みやうは味がある。珍しくオールバックでない白都翔一は、博多転勤の決まつた佳枝夫。佳枝と博史が昼食を摂るレストランにて、背中だけ見切れる中年男なんて流石に全然手も足も出ない。
 新版公開時に観逃してゐたのを、八年の歳月を経て地元駅前ロマンで落穂拾ひした北沢幸雄1994年第一作。最初の公開時からだと二十有余年、さういふ番組が何気なく組まれるピンク映画の環境は、私には極めて感興深いものに思へる。他の道に進んだ者リタイアした者鬼籍に入つた者であつてさへも、小屋の敷居を跨げば特段気負ふでなく日常的普通に会へる。それはそれとしてそれだけのことでしかなかつたとて矢張り貴く、さういふ、時間が流れてゐるのかゐないのだか判然としないやうな場所も、世の中にはあつていいのではなからうか。等々と柄にもなくおセンチな気分になつてしまつたのと、今作は全く関係ない。夫婦生活で幕を開け若干街をウロウロした末ホテルに入つて以降は、各々の夫婦に関する会話も夫婦生活に直結。佳枝と博史が互ひの腹を探り合ふ、正直何ちやない心情を一々モノローグで聞かせる演出は、何事か終盤の大転換に向けての周到に用意された伏線か一種の叙述トリックかと思はせたのは、単なる明後日だか一昨日な深読み。北沢幸雄なりの量産型娯楽映画に於けるポップ感であるのやも知れないが、時折仕出かす他愛なさの枠内より半歩と出ではしない。一夜明けての佳枝と博史の姿はそれなりにセンシティブに描かれてあるともいへ、それも体裁を整へる手数以上のものではなく、濡れ場以外には眉ひとつ動かさない濡れ場要員の濡れ場要員ぶり―結局、石原ゆりはおろか要は吉行由美と杉本まことを除く全員が濡れ場要員だ―がある意味麗しい、裸映画・オブ・裸映画である。女の裸を一時間愉しませて、後には余韻も残さない。その姿勢もそれはそれとしてそれだけのことでしかないにせよ、矢張り尊い。

 序盤博史は計算の早い典子の力も借り、週三回二十年。二秒に一突き一回十分として、三百突×年百四十四回×二十年。生涯残り八十六万四千回のピストンに、そこはかとない無常観を滲ませる。藪から棒な発想といふ以前に、舌の根といふか棹の先も乾かぬ内にそれ以外で一晩中腰を振り倒した次第。人間にとつて精神とは何ぞやと、埒の開かない繰言を考へさせられる。


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 「昭和エロチカ 薔薇の貴婦人」(昭和55/製作・配給:株式会社にっかつ/監督:藤井克彦/脚本:宮下教雄/プロデューサー:村井良雄/撮影:安藤庄平/照明:木村誠作/録音:福島信雅/美術:柳生一夫/編集:山田真司/助監督:浅田真男/色彩計測:森島章雄/現像:東洋現像所/製作担当者:沖野晴久/軍歌演奏:本間良博/挿入歌:『月火水木金金』ポリスターレコード/出演:宮井えりな・飛鳥裕子・麻吹淳子・大河内稔・市村博・八代康二・高橋明・坂本長利・兼松隆・溝口拳・小見山玉樹・武藤寿美・佐藤了一/緊縛指導:浦戸宏)。出演者中、佐藤了一は本篇クレジットのみ。配給に関しては事実上“提供:Xces Film”か。
 対局中のチェスの盤上を、真上から抜いてタイトル・イン。昭和初期、北九条子爵夫人の絹子(宮井)が、人目どころか鳥の囀りさへ憚りながら急ぐ。絹子が向かつた先は、絹子の肖像画を制作中の画家にして愛人・秋本ショーゴ(市村)宅。絹子の要件は逢瀬ではなく、北九条が信州に隠居することに伴ふ別れ。逆上し迫る秋本を頑なに拒む絹子は、二人の関係が発覚し激怒した北九条(大河内)に剃毛されてゐた。クレジット経て、完成した肖像画をポップに唐草模様の風呂敷に包み、五尊の地蔵墓横目に秋本は雪深き信州に足を踏み入れる。ナチスの軍服に身を包んだ男装の麗人・若月涼子(飛鳥)と従者・啓太(兼松)と啓次(小見山)兄弟の二頭の馬に蹴散らされながらも、兎も角秋本は北九条山荘に到着、坂本長利が執事の小池。肖像と引き換へに絹子の身柄を要求する、幾ら何でも単刀直入に過ぎる秋本が北九条にのらりくらりといなされる中、名の通つた大陸浪人である父親と北九条が親交を持つ、涼子一行も北九条山荘に現れる。秋本と交錯した際には、丸つきり逆方向に馬を走らせてゐたんだけどな。部屋に通されるなりベッドの上でも啓太・啓次を従はせる濡れ場を披露しつつ、入浴中の涼子が何者かに襲はれ、剃毛されかゝる事件が発生。失神させられた涼子の往診に訪れた医師の高木(八代)と看護婦の由紀(麻吹)に続き、ソ連スパイを捜索中の憲兵・服部(高橋)と水野(溝口)も北九条山荘に入る。配役残り声オタ必見、武藤寿美は幼少期絹子の子役、同じく佐藤了一は絹子が目撃した母親の不貞を黙認する父親。
 藤井克彦昭和55年第一作、閉鎖された空間に役者が揃ひ、諸々奇怪な事件が起こる、果たして事の真相や如何に。大元ネタは知らないが、要は中村幻児昭和59年第二作「ザ・SM 緊縛遊戯」(脚本:吉本昌弘)みたいな趣向の衝撃の結末一発勝負。さうするとオチのキレが肝とならうところが、折角軍手のミスリーディングも上手く機能し、「もう居らんだらうな、絹子の男は」の無体で見事な一言が決まつて以降に、なほ十分弱尺を費やす漫然とした構成が一つ目の致命傷。二つ目は、シャープな容姿とは不釣り合ひな威圧的なオッパイを誇る飛鳥裕子と、三番手にして最美人の麻吹淳子に対して、覚束ない佇まひは演出上の要求に応へたものかも知れないとはいへ、ポケッとした馬面の主演女優が如何せん弱さを否めない。見所はまんま愛の嵐ばりにオッパイを披露する飛鳥裕子のショットと、今作に於ける戦績で鬼六先生の寵愛も得る、“二代目SMの女王”―初代は当然谷ナオミ―こと麻吹淳子の責められ初陣。普請はそれなりに厚いものの中身は薄い、ロマポといへど何だかんだで量産型娯楽映画らしい一作ではある。

 追記< 実はシネスコ上映してゐた旨を、翌週館主から振られる。全然気付かなんだこの男の節穴ぷり(´・ω・`)


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 「ピンサロ病院2 ノーパン女医」(1998/製作:IIZUMI Production/配給:新東宝映画/監督:北沢幸雄/企画・脚本:福俵満/製作・編集:北沢幸雄/撮影:小山田勝治/照明:渡波洋行/音楽:TAOKA/助監督:堀禎一/監督助手:城定秀夫/撮影助手:岩崎智之/照明助手:原康二・小倉正彦/ヘアメーク:角田みゆき/スチール:佐藤初太郎/衣装:JUNKO/録音:シネキャビン/効果:東京スクリーンサービス/現像:東映化学/出演:倉本梨里・佐々木基子・工藤翔子・麻生みゅう・風間今日子・池田一視・中村和彦・河合純・神戸顕一・サイコ国沢・唐沢邦明・いながきまもる・辛梨玉・灰谷二郎・杉本まこと)。
 走つて逃げる池田一視を、慌しくカメラが追ふ。一旦転び、立ち上がつた流れでタイトル・イン。タイトルはおろかクレジットも走行中の手持ちカメラ同様、ガッチャガチャに動き倒し最早満足な判読もまゝならないのは、もしかすると北沢幸雄は荒木太郎よりも馬鹿なのか?と軽く呆れ返る。といふかそもそも荒木太郎の師匠筋に当たる北沢幸雄が、いはゆる荒木調の上だか下を行つてゐたとしても、別に不思議でも何でもないのかも知れないけれど。
 赤い帽子と銀色のジャンパーの二人組にトッ捕まつた澄野渉(池田)は、何だかフワンフワン宇宙船みたいなSE流れる星光病院に連行される。拘束された澄野の前に現れたのは女医の皆元育子(倉本)以下、婦長の息間繰子(イキまくり子といふ寸法か/佐々木基子)と看護婦の大貫倫代(工藤)。おもむろに白衣を脱いだ育子は黒の下着姿で澄野を手コキ、当然目を丸くする澄野の凝視に育子が羞恥を覚えるや、軽く地震的な現象が起こる。院内でのパンティの着用は禁じられてゐる―育子もガーターのみのノーパン―といふ倫代に誘(いざな)はれ、澄野は看護婦の愛多共子(麻生)が佐伯権造(中村)に跨りそれを院長の大洞仙人(杉本)が大燥ぎしながら見守る、これまた素頓狂な一室に。二人が事を完遂、クルクル回りだした装置に狂喜した大洞は、未だ自らが置かれた状況を全く理解しない澄野に荒唐無稽な話を語る。情報統制により噂と片付けられてゐる、地球に衝突し粉砕させる怪彗星。一方、育子が発見者にして最強の使ひ手の、“性的快感と同時に人間に顕れる一種の念力”とのセックス・サイコキネシス。セックス・サイコキネシスで彗星の軌道を変へる作戦が遂行中で、そのために育子にとつて最高のパートナーたる資質の保持者として選ばれたのが、澄野であるといふのだ。リストラ後やくざな道に身を落とし、あれもこれも拗らせた澄野は、大洞が持ち出した大義を一笑に付す。
 配役残り風間今日子・河合純・神戸顕一は、後述する予行演習と本番とに加はるBもゐないのに看護婦Aと、男AとB。河合純は倫代担当で、風間今日子と神戸顕一のペア。河合純と神戸顕一はさて措き、豪華五本柱の一角かつ全盛期の爆乳を爆裂させる風間今日子に、役名がつかない不遇なり不憫には躓かなくないでもない。サイコ国沢から灰谷二郎までは―澄野を捕獲する二人組と―その他院内要員、一件落着後車椅子に乗る国沢実しか確認能はず。ところで、佐々木基子がナース帽の下はフュリオサばりの短髪なのは、同日に封切られた「不浄下半身 尼寺の情事2」に於いて実際に剃髪した名残か。
 北沢幸雄1998年最終第七作にして翌年の正月映画は、第一作「ピンサロ病院 ノーパン白衣」(1997/監督:的場ちせ=浜野佐知/企画・脚本:福俵満/主演:麻生みゅう)から全四作製作されたピンサロ病院シリーズの第二弾。改めて整理すると、1998年正月映画のノーパン白衣と1999年正月映画の2に続き、2001年正月映画の「ピンサロ病院3 ノーパン診察室」(2000/監督:渡邊元嗣/脚本:中野貴雄/主演:黒田詩織)、同年お盆映画の「ピンサロ病院4 ノーパン看護」(2001/監督:的場ちせ=浜野佐知/脚本:山邦紀/主演:望月ねね)と連なる。3には参加してゐない風間今日子が、惜しくも全作制覇を逃す。
 人類滅亡のクライシスに、皆でセックスして立ち向かふ。そこだけ聞くと前後を浜野佐知に挟まれて、ナベはまだしも北沢幸雄までもがファンタ路線に走つたのか。とでも驚くか草を生やしかねないところが、これが改めて見てみると結構以上に素晴らしい。何はともあれ、始終の推移に釣瓶打たれる絡みが必要不可欠な展開が清々しい。大洞はビリング神戸顕一までを一室に集め、セックス・サイコキネシスの予行演習と称した集団プレイ。あくまで乱交はせず、ここでは育子は一人オナニーするに止(とど)まり、未だプロジェクトに賛同を表明してゐない澄野は拘束衣で身動きを封じられ見てるだけ、因みに婦長のお相手は院長。その一幕の火蓋を切る、「いいかみんな、これからこの部屋はピンサロと化す!」なる大洞のシャウトは正しくピンサロ病院といふに相応しい天晴な名台詞。他方、セックス・サイコキネシスで彗星を地球から逸らす任務と恋の狭間で揺れ動きつつ、澄野に一途な想ひを寄せる育子は、澄野が参戦に際し要求した、一千万の報酬に胸を痛める。二度に亘り澄野に寄こされる小切手が、何れも破り捨てられる件は特に一度目がストレートに胸を打つ名場面。クライマックスは残りの一同は予行演習と同じ部屋と、育子と澄野は別室にて、兎も角セクロスセクロス。カウントダウン残り十秒で劇伴が止まり、物語上のピークと、育子と澄野が達する絶頂とが素直に連動した瞬間、嗚呼いい濡れ場を見たと心から感動した。世を拗ねた澄野が正方向の生きる目標を得るに至るラストも、重ねて感動的。序盤は底の抜けた裸映画に見せて、中盤起動した芯のあるエモーションを、見事堂々と撃ち抜いてみせた。考へてみれば脚本は福俵満によるものである訳だから、要は北沢幸雄は与へられた御題を、綺麗に形にした格好か。これから見るナベの3を吟味した上でないと確かなことはいへないが、ピンサロ病院最高傑作と評するに足る一作。嗚呼いい濡れ場を見た、さういふ体験は、ありさうで滅多にない。

 追記< 3も見た、2の優勝。


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 「お昼の猥談 若妻の異常な性体験」(2015/製作:オフィス吉行/提供:オーピー映画/脚本・監督:吉行由実/撮影:藍川兼一/編集:中野貴雄/助監督:江尻大/録音:山口勉/音楽:小鷹裕/監督助手:小鷹裕/撮影助手:中谷太/スチール:本田あきら/ポストプロダクション:スノビッシュ・プロダクツ/仕上げ:東映ラボ・テック《株》/出演:奥田咲・羽月希・野村貴浩・ピン希林・白石雅彦・吉行由実・里見瑤子)。
 住宅地を進む車載目線、往来のピン希林と吉行由実を抜くと、一転暖炉周りに集ふガウン姿の女優部に俳優部限定のクレジット起動、トメにはピン希林が座りタイトル・イン。ピン希林と吉行由実を抜いた画に、元々存在してゐた姦計が匂はされてゐなくもないのか、存在してゐたのだとしたら。
 結婚二年、戸建ての新居に越して来た塚田雪(奥田)は片付けの手を休め、コンビニに夫・哲也(野村)リクエストのコーヒーを買ひに出る。結局買つて来たのがエメマンである点をみるに、ベンダーでよくね?といふのは些末なツッコミ処。道すがら雪は、これ見よがしなカーセクロスに燃える吉行由実(お相手は小鷹裕?)、同じく公園の休憩所でやらかす羽月希(お相手は別人設定の白石雅彦?)に目を丸くする。ショックでピン希林に声をかけられたのにも気づかない雪は、両手一杯に袋を提げた里見瑤子がハンズフリーの電話で喧しく口論がてら、落として行つた紙袋を拾ふ。挙句に、紙袋の中はバイブだつた、何て破廉恥で素敵な町内なんだ。その夜、入浴中の雪を哲也が急襲する夫婦生活の最中、静子(里見)お手製のドーナツを手土産に、リーダー格の高木真紀子(ピン希林)と紀江(吉行)の御近所三人組が挨拶に訪れるも、玄関先まで漏れ聞こえる雪の派手な嬌声を聞き、その日はおとなしく退散する。翌日だか後日、雪が改めて高木邸に招かれると、そこには既に黒のガウンでくつろぐ紀江が。真紀子も青のガウンに着替へ、雪はオレンジ色を着せられ、遅れて現れた静子は白。シエスタと称して、優雅なのか藪蛇なのかよく判らないガウン茶会。最後に一個残つた洋菓子を賭けての、トークの御題は体験告白。初体験は上映中の映画館のスクリーンの裏側だの、飛行機のトイレでオッ始めたところ、機体が乱気流に突つ込み往生しただのといつた武勇伝を、真紀子が凄い粘度で爆裂させる。
 配役残り羽月希は、当然この人も雪の御近所・野沢亜美。奥田咲・羽月希・めぐりのオッパイ・ジェット・ストリーム・アタックが観たい、DVDとかで見たいではなくデカいスクリーンで観たい。白石雅彦は、互ひの刺激を求め別居中の亜美夫・徹、残念ながら明弘ではない。
 真夜キバことBL薔薇族映画「真夜中きみはキバをむく」(2014)は未見につきさて措くとして、2013年唯一作「義父の愛撫 くひ込む舌先」(主演:羽月希)から2014年第二作「妹の匂ひ よろめきの爆乳」(主演:奥田咲)、そして前作「お天気キャスター 晴れのち濡れて」(2015/主演:椿かなり)と足かけ三年三作に亘つて迷走を続けた吉行由実の2015年第二作は、初心な若妻が、淫蕩な御近所に揉まれて一皮剥ける。物語的には石を投げれば当たる類の通俗ポルノグラフィとはいへ、あの―どのだ―浜野佐知でさへ撮れない画期的な新機軸を叩き込んだ青天の霹靂のラッキー・マスターピース。今回吉行由実が編み出した、現状吉行由実にしか撮り得まい画期的な新機軸とはズバリ女子トークピンク。脚本も演出も存在するれつきとした劇映画の筈なのに、まるで奥田咲が素面で女子トークをしてゐるやうに映るのが凄い。ピン希林なるなかなか洒落た変名は、日本放送作家協会理事長といふ要職にも就く本業を慮つてのものなのか、さらだたまこが限界露出でギリギリまで絡む反面、完全に控へに回つた吉行由実にはもう少し―どころではなく―サービスして欲しかつた心も残す高木邸ガウントーク。吉行由実とさらだたまこ、そして文字通りの一昔前を思ふに、何時しか可愛がられる側から可愛がる側に積み重ねたキャリアを跨いだ風情が感慨深い里見瑤子。三大お姉様に囲まれた奥田咲が、畏まるばかりで恐縮至極の様が初々しい。他方、齢も近くサシの野沢家に際しては、極々自然さが却つてエクストリーム。何より素晴らしいのが、いはゆる裸族の亜美に雪が引き込まれる形でと見事な方便で突入する、奥田咲と羽月希による全裸女子トークの圧倒的なジャスティス感。オッパイが大きくて、可愛い女の子といふ正義。最終的には咲かせるし咲かせて貰つて勿論全く構はないのだが、奥田咲と羽月希がオッパイをぺローンと曝け出して、にも関らず別に百合を咲かせるでもなく普通にキャイキャイ女子トークするシークエンスの空前絶後のエモーション、これは最早事件だ。雪がお姉様方に開花させられる過程はそれなり以上に分厚く、展開の進行上説得力の面でも何ら問題はないのに対し、哲也の立ち位置に関しては、行間の埋まらない飛躍の大きさが矢張り否み難い。そのため最終的な仕上がりにはある意味如何にも量産型娯楽映画らしい大雑把さも覗かせつつ、正しく何はともあれ、奥田咲と羽月希による全裸女子トーク。その功績だけで、吉行由実は世界の映画史に人類が絶滅するまでその名を刻むべきであらう。暖炉周りの暗さに弱い安普請デジタル撮影の弱点を的確な照明で回避、且つ女の裸を官能的に捉へた画も印象深い。起承転結を観てどうかういふよりも、寧ろ多方向に芳醇なショットの数々に触れるなり浴びるなり、浸るのがより適当に思へる一作。2015年作は来てない以上まだ観てゐないものが大半を占める中で、それでも俺にとつてはベストを今作で決定してしまつていいやうな思ひすらして来た。どちらかといはずとも一時的な気の迷ひの方が勝つてゐようところゆゑ、何か一本いい映画を観たらケロッと心変りするやも知れないけれど。


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 「淫湯 ぬめり股」(2003『わいせつ温泉宿 濡れる若女将』の2015年旧作改題版/製作・配給:新東宝映画/監督:深町章/脚本:河本晃/企画:福俵満/撮影:清水正二/編集:酒井正次/助監督:佐藤吏/出演:河村栞・里見瑤子・酒井あずさ・岡田智宏・白土勝功・広瀬寛巳・港雄一)。
 緑色のフィルターのかけられた回想画面、出奔する父親を「父ちやあん父ちやあん」と呼ぶ男の子の声が、夢にうなされる岡田智宏のものへと変る。夜明け前の旅館にて、幼少期の体験を今も夢に見る菊夫(岡田)が目覚める。それでも菊夫的には寝過ごしたらしく、社用で急に帰京する旨の書き置きを残し慌しく宿を後にする。さういふ手口の無銭宿泊なり寸借が十八番といへば聞こえもいいが要は関の山の、菊夫はシケた詐欺師だつた。バスに揺られ辿り着いた次の町、菊夫はベンチで隣り合はせたジジイ(広瀬)に、当地の旅館情報のリサーチ。東京に妻子を捨て、流れ着いたこの町で成り上がつた資産家の、愛人(故人)に産ませた娘が女将の旅館。ただし資産家は卒倒し、今は身の回りの世話もその娘に任せてゐた。一稼ぎに格好の舞台と点火した菊夫に道を尋ねられると、ここで初めて新聞紙の下に隠した顔を見せたジジイがザックリ説明したタイミングでタイトル・イン。全篇こんちこれまた水上荘周りでの撮影につき、開巻の回想が凡そ東京から出奔する画に見えない点に関しては気にするな。
 わいせつ温泉宿に到着した菊夫は出迎へた仲居のみつこ(酒井)を適当にあしらひ、板前の祐介(白土)と最中の事を中断させられた女将・さゆり(河村)に対しては、兄妹再会の大袈裟な先制パンチ。そのまゝ当の寝たきりで言葉も話せない謙造(港)と対面した菊夫は、たまたま同じ名前であつた謙造の生き別れた息子・菊夫を騙る。祐介からは人並みに訝しまれつつ、人の好いさゆりはコロッと完全に騙し、矢鱈とノリも尻も軽いみつこもサクッと誑し込んだ菊夫が着々と仕事を進める中、どうも疑はしい煙草を吸ふファースト・カットで登場する里見瑤子は、菊夫を追ふ形で水上荘に現れる―本物の―菊夫の姉・よしえ。潔く逃げ出さうとした菊夫は祐介にトッ捕まり、仕方なくよしえと会ふ羽目に。
 現在も親交のある武田浩介共々、早々にピンクから足を洗つてしまつた河本晃を脚本に擁した深町章2003年第一作。下手な業界の水に洗はれずに、この二人が戦線に留まつてゐて呉れたならば戦況は全く異なつたものになつてゐたのではなからうかと、この期にせんない繰言を吹いても仕方がない。いはゆるフラグを裏切らぬ的確な展開が、観客の予想を大きく上回るエモーションを叩き込むのは、一旦手を握つた菊夫とよしえが祐介の処遇に関して激しく衝突する終盤の修羅場。小悪党には小悪党なりの矜持も持つ菊夫に対し、一見徹頭徹尾クールな毒婦かと思はせたよしえが、遂に露にする悲愴な相。「カッコつけないでよ!」の正しく振り絞るやうなシャウトが琴線を激弾きする、一撃必殺の名場面。終始蚊帳の外気味な性善説ヒロインの弱さは如何せん否めない反面、真の主役たる岡田智宏は飄々としたスマートさで、ウェットにもシリアスにも転ばないやう始終の調子を整へる。始終がピシャッと出来上がる完成感が心地よい、量産型娯楽映画らしい小粒の逸品。リタイアした訳でもないのに深町章が新作を撮れない状況も、嘆いたところで始まらない。


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