真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「誰にでもイヤラシイ秘密がある」(2018/制作:オフィス吉行/提供:オーピー映画/脚本・監督:吉行由実/撮影:藍河兼一/録音:大塚学/音楽:柿崎圭祐/編集:中野貴雄/助監督:江尻大/整音:西山秀明/効果:うみねこ音響/グラフィック:竹内雅乃/タイトル:佐藤京介/スチール:本田あきら/監督助手:井上卓馬、他一名/撮影助手:赤羽一真、他一名/ポストプロダクション:スノビッシュプロダクツ/仕上げ:東映ラボ・テック/協力:南長崎エリート/出演:一ノ瀬恋・桐島美奈子・吉岡沙華・可児正光・安藤ヒロキオ・白石雅彦・国沢実・Gregory Tuichin・Sergey Viasov・吉行由実・KAZUMI・東京JOE・中村勝則・松島政一・郡司将史・鎌田一利・山本宗介)。出演者中、Gregory TuichinとSergey Viasovに、KAZUMIから鎌田一利までは本篇クレジットのみ、クレジット戦終盤に力尽きる。
 尺を優雅に費やすおヨーロッパ映画風のオープニング・クレジットはさて措き、七時過ぎに武井典子(一ノ瀬)が目覚めると、ベッドの隣に夫の姿はなかつた。別室で寝てゐた青年実業家で毎晩帰りの遅い明夫(山本)を起こし、手作りジャムの瓶が卓に並ぶ、如何にもインスタ映えしさうな朝食。噛み合はないか擦れ違ふ会話の末に、明夫が漫然と出社してタイトル・イン。典子がこの若さ―別に疑はしくない公称二十三歳―でレスを拗らせる一方、後述する成瀬の典子に対する呼称が山下である点をみるに、結構最近離婚した母の春江(吉行)は典子の高校担任であつた森川(国沢)と、甚だ残念ながら劇中絡みにまでは至らないまゝに濃厚な関係を謳歌する。自宅ヨガからの、春江の電話に遮られるワンマンショーを経て、外出した典子は開店前のバー「アモーレ」店内、ママの佐伯理恵(桐島)と楠田慎吾(安藤)が乳繰り合ふのを窓ガラス越しに目撃、その場は仰天して立ち去る。葛城ユキ系のKAZUMIがインストラクターのヨガ教室(ほかに女子二名と男子一名が生徒に見切れる)にて、典子は理恵と改めてミーツ。こんなそんなで「アモーレ」に遊びに行つた典子は、取引先(鎌田一利と松島政一か郡司将史)と来店した、高校時代の同級生・成瀬健二(可児)と再会する。当時、典子と成瀬君は一度だけキスまでならしたことがあつた。そんな最中、理恵が楠田のシンガポール長期出張に同行するゆゑ、その間典子がアモーレを任される大飛躍、もとい格好となる。
 配役残り、暗がりで引くと内藤忠司にしか見えない東京JOEは、典子アモーレ初来店時のカウンター客。郡司将史か松島政一は、典子が任されたアモーレ、セカンドまでの撮影部×EJDらと賑はふカウンター要員、もう一人誰かゐる。吉岡沙華はアフターかビフォアか知らんけど、客とアモーレをよく使ふデリヘル嬢・リンリン、中村勝則がリンリンの客。Gregory Tuichinと、ex.黒蛇会のSergey Viasovは、何時も二人連れでアモーレに来る陽気な外国人・マイクとテリー、正直どつちがどつちかは特定不能。そして中村勝則でも三人目の国沢実でもなく、吉岡沙華を介錯する白石雅彦が、リンリンがアモーレに連れて来る矢張り客の山下にして、春江と別れた典子父。疑似、あるいは方便“パパ”と飲みに来たリンリンの前で、リアル娘である典子が「パパ!?」と目を丸くするのと、山下に続きリンリンが連れて来た森川先生も、元教へ子達と対面し壮絶な爆死を遂げる一連は笑かせる。
 一ノ瀬恋が耳馴染のない名前の割に見覚えはあると思つてゐたら、まゝある所属事務所移籍に伴ひ改名した、二作前の2017年第一作「股間の純真 ポロリとつながる」主演のex.あゆな虹恋であつた吉行由実2018年一本きり作。三年もの御無沙汰といふことは、新婚当初からなのかよとしか思へない不自然な若妻が、華麗か豪快なマッチポンプも交へお盛んな―主に中高年の―周囲に振り回される。直截なところ、物語自体は全く以て何てことない今作の特徴は、2015年第二作「お昼の猥談 若妻の異常な性体験」の甘美よもう一度と挑んだ、吉行由実ならではの女子トークピンク。尤も、離婚事由が性格でなく、あくまで性―生活―の不一致と良江の口からこの期に聞かされた典子が、「親の性生活なんて知りたくないはよ」とキュートに臍を曲げてみせるカットは瑞々しいものの、流石に相手が吉行由実か桐島美奈子となると、奥田咲と羽月希の、あの二人がしかも全裸で、キャイキャイ普通にスイーツに舌鼓を打つ奇跡のシークエンスには些かならず遠い。かといつて吉岡沙華(a.k.a.春野ゆりか・中山あゆか、らしい)では、馬面以前に口跡が覚束なく論外。女子トークピンクとしては不発気味にせよ、ビリング頭と二番手・三番手が、各々三回・二回・一回の本濡れ場をこなす教科書的な構成はスマートの極み。見かけ通りでは詰まらない、秘密があるからこそ輝けると、森川先生との交際を典子に告白した良江が公開題も珍しく即したテーマをサラッと開陳するのは、とかく公開題がへべれけである例が多いピンク映画にあつてはさりげなく光り、武井夫婦が燻らせる火種も、幾分以上の力技込みで諸々万事回収なり解消してみせる。グッドルッキングな男優部にヒロインがお姫様のやうに扱はれるハーレクインな濡れ場は、それはそれでデジタルのクリアさにより親和する吉行由実の持ち味ないし真骨頂。ワーギャー騒ぐには値しないともいへ、綺麗な綺麗な一作である。


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )




 「本番授業 教へ子に、教室で」(1996/企画・製作:フィルム・ハウス/提供:Xces Film/監督:坂本太/脚本:有田琉人/プロデューサー:伍代俊介/撮影:創優和/照明:三浦方雄/編集:金子尚樹 ㈲フィルムクラフト/助監督:上田良津/製作担当:真弓学/録音:ニューメグロスタジオ/効果:協立音響/現像:東映化学/監督助手:加藤義一/撮影助手:井深武石・国松正義/照明助手:澤登晃/ヘアーメイク:大塚春江/スチール:本田あきら/出演:河村恵美子・林由美香・小川真実・野上正義・平賀勘一・大場政則)。
 角度で意図的に隠したのか、絶妙に校名が読めない銘板。淡々と校舎の画を連ねクレジット起動、無人の教室にタイトル・イン。明けて本篇開巻を飾るのは、尺八を吹くウルットラどエロい尻のライン。ギアをトップのその先に一息で捻じ込む、坂本太のエクストリームが清しい。私立何処そこ高等学校(仮称)英語教師の町田美佐子(河村恵美子/吉行由美のアテレコ)が、恋人の同僚教師・平岡(平賀)を高めのホテルみたいにダダッ広い自室に連れ込んでの、灯りを消す点けるの攻防戦を繰り広げつつの絡み初戦。本来ならば見えなささうでギリッギリ見える絶妙な光量を保つてゐるものの、小屋の上映環境如何によつては、容易く漆黒に沈んでしまふにさうゐない。事後教師の仮面を被つた美佐子が生真面目すぎると、平岡が一応テーマらしきものを投げはする。明けたカットが、まさかの新幹線。緩やかにひかり号が減速する線路脇の坂道を、俳優部が下から歩いて来る形でのフレーム・イン。純然たる重量級通俗ポルノの中にも、つい油断してゐると掛け値なく映画的なショットを放り込んで来る辺り、フィルハ作の侮れないところ。卒業が危ふい不良生徒の補習に関し、学年主任から呼出を喰らつた美佐子は、数学教師の栗山真弓(林)に気が重い旨素直に打ち明ける。
 配役残り小川真実が学年主任の宮川で、ペッタペタに撫でつけたオールバックに馬鹿デカい鼈甲―風―フレーム、妙にレトロなルックスに作り込んだガミさんが、宮川とズッブズブといふかグッチョングチョンとでもいふか、兎も角特濃な男女の仲にあるPTA会長・黒田。そして大場政則(ex.大場政則で田原政人)が、件の不良生徒・クラモト潤一、間抜け面で魔少年ぶりやがるのが猛烈に腹が立つ。その他は演出部の生徒要員さへ影ひとつ見切れない、ミニマム布陣。
 国映ばかり見てるとシネフィルになるから、坂本太1996年第一作。ついでといつては語弊もあれ、ピンクに本番もへつたくれもない―極々稀にこともない―“本番授業”二部作第一作が、浜野佐知の1994年矢張りか偶々第一作「本番授業 巨乳にぶつかけろ!」(脚本:山崎邦紀/主演:君矢摩子)。シレッと平勘が皆勤を果たしてゐたりするのは、如何にも量産型娯楽映画らしい静かなファインプレー。
 理事長の息子(潤一)とかいふステレオタイプなアンタッチャブルが、補習事業に託けて美人教師を手篭めにする。フランス書院ばりに類型的極まりない物語の中、潤一といふか要は大場政則が「上の口は嫌がつても、下の口は喜んでるぜ」の苔も枯れた常套句を繰り出すに至つては、凄え!坂本太は機軸なり意匠の新しさなんて求めてゐない、些末なオリジナリティー如き易々と放棄してみせたと、グルッと一周して感動した。反面、筆の根も乾かぬうちに全く逆の与太を吹くやうだが、一度目の強姦未遂を訴へた美佐子に対し、所謂マン臭を隠すための体罰行為とかいふ、潤一側からのへべれけな主張を全肯定する黒田と宮川は、二人がかりで美佐子の観音様を見分しようとする。世界観がアメイジングすぎて寧ろクラクラ来る、底の抜け倒したシークエンスを堂々と放つておいて、後に宮川が再度美沙子の籠絡を試みる件に際しては、“自分の殻”だの“聖職者といふ自意識”だの“本当の欲望”だのと、ペッラペラの方便を臆面もなく垂れてのけるのは坂本太の持ち味。そもそも、幾ら福笑ひのやうな面相をしてゐるからといつて、これではトメに配したにも関らず潤一が道化に過ぎなくなるリスクに一瞥だに呉れず、美佐子の開花を目し、平岡が宮川と通じてゐた超展開に突入するに及んで、流石に端から外れてゐた箍といへども挙句木端微塵。クライマックスは、並走する平岡V.S.宮川戦と、適当な空き部屋に黒板と机を置いただけの“特別教育室”に於ける、美佐子V.S.潤一戦。残り尺もいよいよ残り僅かなタイミング、何はともあれこのまゝヒロインの濡れ場で逃げきるものかと思ひきや、定石を破るどころか破壊する土壇場中の土壇場で、改めて平勘とオガマミが飛び込んで来る破天荒なクロスには素面で度肝を抜かれた。寧ろ、これで主演女優がエクセスライクの徒花―直截には毒花―を咲かせたならば、逆の意味で完成してゐたものを。頭頂部から顎までの距離は長くオッパイも小ぶりながら、男顔美人の範疇に辛うじて踏み止まる河村恵美子がしなやかな肢体を誇り、何よりこの人、煽情的に体をうねらせるアクションに長けてゐるのが、撮影部の助太刀も借りるとなほさら、ピンク映画にあつては圧倒的なアドバンテージ。女の裸に四の五のいはず滾るには申し分ない、鮮やかにして潔い一作である。


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )




 「実録エロ事師たち 巡業花電車」(昭和49/製作:日活株式会社/監督:林功/脚本:田中陽造/原作:吉村平吉『実録エロ事師たち』立風書房刊/プロデューサー:岡田裕/撮影:安藤庄平/美術:柳生一夫/録音:古山恒夫/照明:田島武司/編集:山田真司/音楽:月見里太一/助監督:山口友三/色彩計測:田中正博/現像:東洋現像所/製作担当者:古川石也/出演:星まり子・二條朱実・殿山泰司・武智豊子・牧れい子・榎木兵衛・三川裕之・雪丘恵介・浜口竜哉・五條博・森みどり・玉井謙介・影山英俊・北上忠行・桂小かん・水木京一・小見山玉樹・池田誉・しまさより・大谷木洋子・近江大介)。出演者中三川裕之から浜口竜哉、森みどりと玉井謙介、桂小かん以降は本篇クレジットのみ。クレジットはスッ飛ばす配給に関しては、事実上“提供:Xces Film”。
 東京地方検察庁、お勤めを終へるエロ事師の殿村銀次郎(殿山)が最後の段取りで、出納係の愛子(星)に売防法違反の追徴金三万円を支払ふ。いい女だと殿村が新聞紙越しに色目を呉れる愛子が、殿村の名を呼んだカットを止めてタイトル・イン。浅草の町を通過して殿村が向かつた先は、料亭「蔦の家」。三川裕之や玉井謙介ら、昭和の顔をしたオッサンが詰めかけた一室にて、五郎(北上)をマネージャーに和美(牧)と福夫(影山)の白黒ショーがオッ始まる。ところで、抜いた上での台詞まで与へられるにも関らず、清水国雄がまたしてもクレジットレスで客要員に加はる。福夫、あるいは影英がグダグダで無様なショーに、匙を投げた殿村は中座。一旦仔細は豪快にスッ飛ばすとして、興行会社の社長(雪丘)から男女の白黒ならぬ、要は百合を咲かせる白白ショーの一週間地方巡業を持ちかけられた殿村は、“花電車のマユミ”なるどストレートな異名を轟かせるマユミをまづ想起、相方は愛子に目星をつける。
 「蔦の家」をあとにした殿村が一人で水割りを舐める店に、五郎らも臆面もなく現れる。クレジットあり出演者残り、浜口竜哉と小見山玉樹に池田誉は、続けて来店するオカマ三連星。ここでコミタマの隣に、池田誉の代りにサブこと庄司三郎がゐればといふのは、矢張り欲張りか。後述する、兄弟感覚で酷似する榎木兵衛―ヒョーエが兄貴―も出るし。殿村のヤサは、アパートにしては中に入ると戸建にしか見えない「三浦荘」。武智豊子が、かつては吉原の遊郭「角海老楼」にてその名を馳せたレジェンド女郎であつた、戦後の荒稼ぎが脳にキテ以降は殿村が面倒を見る朝顔太夫、殿村の筆を卸したのもこの人。森みどり(a.k.a.小森道子)は住み込みの女中、多分ヨシエ。五條博は、福夫に業を煮やした殿村が訪ねる、女社長に囲はれ引退した名白黒ショー男役、人呼んで歌麿ボーイ。この辺りに雪丘恵介の出番挿んでしまさよりは、殿村が物量作戦で愛子を口説き落とす過程の美容師。そして二條朱実が、日本一と評される卓越した花電車芸を誇るマユミ、何故か各種資料にはジュン子とある。影山英俊ともどもハマリ役ぶりが清々しい榎木兵衛は、殿村率ゐるマユミと愛子の白白ショーに同行する、興行主・柿本。大谷木洋子は、四人での雑魚寝を成立させるべく、柿本に買収される仲居。水木京一と近江大介は、マユミがリンゴ切り―マン力でタコ糸を引き、林檎を切断する花電車芸―を失敗した際の客。桂小金治(二代目)弟子の桂小かんは、愛子がリンゴ切りに成功する際、殿村の背後の座席に座つてゐた男。時代も時代なこの頭数で珍しくロマポの俳優部を完全攻略出来たものの、しまさよりの少し前に登場する、普通に美人の喫茶店ウェイトレスに該当する名前が見当たらない。
 小屋に来れば観るが、殿山泰司を除くと皆勤する―少なくとも―星まり子・二條朱実・五條博・榎木兵衛の配役が全然違ふ点を見るに、二ヶ月半前に封切られた曾根中生昭和49年第一作「実録エロ事師たち」(脚本:下飯坂菊馬/主演:二條朱実)とは精々パラレルな、続篇でも何でもない別の物語と思しき林功昭和49年第二作。世界一周するにも厳しい、八十日間に満たないとなると流石に量産型娯楽映画が二匹目の泥鰌を狙ふにしても些か早過ぎる、全体元々どういふ企画であつたのか。
 映画は殿村が四人で温泉街をドサ回る、湯煙ロードムービーが尺の後ろ三分の一強を占める。頭三分の二弱は、折角シャバに戻つたばかりでホームタウンを離れるのを初め渋つてゐた殿村が、寂しさを紛らはせるべく旅に出る腹を固めるに至る顛末の二部構成。兎にも角にも、正しく狂ひ咲く超絶のロマンティックとラウドなエモーションとを、やさぐれた馬鹿馬鹿しさで慎ましく押し隠した前半のラストが果てしなく素晴らしすぎて、尻すぼむといふほどではないにせよ後半が脱力する、あるいは二條朱実と榎木兵衛は電車に乗り遅れた感は否めない。前半ラストに話を戻すと最初に気づくのが、あれで仁義は弁へた福夫、即ち影山英俊のプチ見せ場といふのも何気にグッと来る。二條朱実同様、中盤真のクライマックスに蚊帳の外とはいへ、憚りながら初見の星まり子―恐らく無印「実録エロ事師たち」がデビュー作―には、昭和は遠くおろか平成も終らうとするこの期に目を見張つた。エッジの効いたいはゆる男顔と文字通りの雌雄を争ふ、たをやかさを感じさせる正調美人かつ、当時「泣くなおつぱいちやん」(作詞:富永一郎/作曲:井上忠夫/a.k.a.井上大輔)なる、案外エクストリーム名曲をもリリースするに足るグラマラス。平凡な人生を諦めるかのやうにくすむ東京地方検察庁出納係と、殿村に口説き落とされ、一皮剝け華やかに開花する裸稼業の女。演技指導の成果か地力のなせる技か、対照的な二つの相を麗しく輝かせ、遂に成功したリンゴ切りに笑顔を弾けさせるラスト・ショットは、失速した終盤を幾分以上に救ふ。とこ、ろで。濡れ場ひとつ満足にこなすでない、殿山泰司を恭しく有難がるのはシネフィルに任せる、そんなに憎まれ口を叩くのが楽しいか。悪し様に罵り倒す、武智豊子との絡みは確かに絶品。反面、最期に投げる「ババア!」のシャウトの、脊髄で折り返したスピード感が泣かせる。


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )




 「課外授業 暴行」(1989/製作:国映株式会社/配給:新東宝映画/監督:瀬々敬久/脚本:佐々木宏・瀬々敬久/企画:朝倉大介/撮影:斉藤幸一/照明:加藤博美/編集:酒井正次/助監督:小原忠美/不明:山川明人・松本キヨシ・小泉玲・松岡邦彦/録音:銀座サウンド/現像:東映化学/出演:中島小夜子・松永久仁彦・清野歴史・小川真実・島田由香・伊藤清美・佐野和宏・加藤海彦・山本竜二・下元史朗/友情出演:瀧口裕美・隈井士門・伊藤猛・マブゼ・佐々木宏・丸沢直巳・五代響子)。正確なビリングは、山竜と下元史朗の間にカメオ部を挿む。山川明人以下四名の担当を不明としたのは、瀬々から東化まで“スタッフ”の一括りで一遍に打ちやがるため、ひどい。
 「卒業式まで、あと三日だつた」、空港脇、セーラー服でフーセンガムを気怠く膨らませる中島小夜子のモノローグ。カメラが引き、赤い車が中島小夜子を迎へに来る。左端を車が通過する、卒塔婆にしか見えないボラードが林立する船着場にタイトル・イン。三十年の間に失はれたてしまつたにさうゐない、荒涼さが爆裂するロケーションが比類ない。逆に、その間果たして何が生まれたんだらう。
 都立鳳工業高校三年の岡山桃か百、愛称・モモ(中島)が、数学教師の矢沢ヒデトシ(下元)とカーセックロス。ところがそれは性質の悪いハニートラップ―良質のハニトラが如何なるものか知らんけど―で、車の外からポラロイドを向けた引野か曳野?ことジョニー(松永)が、豪快に一千万を要求。清野歴史改めレキシ(ヒムセルフ)が待つ、亡父がジョニーに遺した漁船、その名も「ジョニー丸」で出港、矢沢を撒いた三人は、チャカ持ちの見るからキナ臭い佐野が溺れてゐたのを引き上げる。人民服の朝鮮人・リン(島田)、兄貴分(加藤)にマツ(山本)とジョニーが交錯する一方、意識を回復した台湾人でシャブ中のキム・キンギョ(佐野)は、女の不在に暴れるだけ暴れると嵐のやうに捌けて行く。そんな最中、将来に関するモラトリアムな不安を捏ね繰り回しつつ、カップヌードルを食さうとしてゐたジョニーとレキシは、入管の収容所から脱走して来たジャパゆき・ヤン(小川)と出会ふ。
 配役残り伊藤猛以外のカメオ部は、超絶の映画的虚構で矢沢がクロスする、サラ金強盗要員、瀧口裕美が矢沢と再会を果たすヨシムラマミか。ガチャガチャする中一人も特定能はないが、頭数は一応合ふ。無闇に飛び込んで来る伊藤猛は、モモを奪はれたまゝジョニー・レキシ、そしてキンギョが踏み入れた歓楽街、三人と藪蛇な悶着を起こす通りすがり。伊藤清美は、ヤンを伴つた台湾帰国の手引きを、キンギョが頼る国籍がやゝこしいブローカー、あるいは同業者。合はせられないピント越しの画面奥には、昭和天皇の新聞記事が霞んで見える。
 香ばしい原題が「羽田へ行つてみろ、そこには海賊になつたガキどもが今やと出発を待つてゐる」、国映大戦第十戦は瀬々敬久デビュー作。遠く今は亡き伝説のピンクス・極狂遊民カチカチ山さんの16mm上映会で観た思ひでも、この期に及んでは懐かしいのも通り過ぎた。
 四海幇まで持ち出したワールドワイドな大風呂敷は、太宰で木に竹を接ぐ瀬々自身の青さ以前に、発声がへべれけな若手俳優部の非力に足を引かれる。翌年、佐藤寿保の「半裸本番 女子大生暴行篇」(脚本:夢野史郎)でエターナルに開花する絶対美少女・中島小夜子も、今作時点では未だ甚だ粗削り。高が知れた六十分の尺に、最終的には台湾まで見据ゑ、争奪戦を繰り広げながら羽田と東京を往き来する展開を詰め込むとあつては、本来の主眼である筈の女の裸が、申し訳程度に済まされるのには論を俟つまい。さうはいへ、あるいはそんな中でも。轟くかの如く、佐野が煌めく。サクッとヤサを突き止められた、兄貴とマツに日本はアメ公のオカマだと痛罵するに続き、「も一回原爆でも落として貰つてな、目でも覚ませよ」。悪態つかせた佐野の、疾走感が圧倒的。ゴミ捨て場にて半壊したラジカセで「蘇州夜曲」を鳴らしつつ、拾つたグラサンを戯れにかけてみるショットも超絶カッコいい、トートかTシャツ商品化せんかいな。エンドレスな繰り返しに終始する教師人生を漫然と生きる矢沢に対し、情けなくなると説教を垂れるモモが撃ち抜く、「ちやんと生きてよね」は確かなサムシングを刻み込む。全般的にはある意味素直に纏まりを欠き、裸映画としては落第点にせよ、端々どころでなく方々突き抜けて光る、エッジの効き過ぎた一作。昭和どころかいよいよ平成も終らんとするこのタイミングで、改めて見てみるのも一興。喪失感なり空虚なんて時化たエモーションがテーマたり得ない、豊かな次代が来ればいいのにな、とは思ふものの。政のクソッタレぶりを見やるにつけ、さうなる雰囲気なんて一ッ欠片たりとて見当たらねえ。黙つてないで、また雑言叩いてお呉れよ佐野。


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )




 「性鬼人間第二号 ~イキナサイ~」(2018/制作:フリーク・アウト/提供:オーピー映画/監督:国沢実/脚本:高橋祐太/撮影:藍河兼一/照明:岩崎智之/助監督:菊嶌稔章・金本慎吾・粟野智之/スチール:本田あきら/編集:酒井編集室/音楽:與語一平/録音・整音:Pink-Noise/特殊造形:はきだめ造形/タイトル:小関裕次郎/仕上げ:東映ラボ・テック/カラリスト:石井良太/協力:Abukawa corporation LLC./出演:南梨央奈・桜木優希音・朝桐光・永川聖一・折笠慎也・片桐俊次・細川佳央・あいだひな・松本格子戸・清水大敬ら計九名・たんぽぽおさむ)。出演者中、あいだひな以下九名は本篇クレジットのみ。それとタイトルの小関裕次郎が、ポスターでは杉田慎二。
 “眠れ 死の申し子たちよ 憎しみの海に”―スペースで改行―と、「エルム街の悪夢3」でも引かれたエドガー・アラン・ポーを恭しく引用する開巻。どうせフラグしか立たないのだから、この手の虚仮威しやめればいいのに。それとも、様式美でも感じない、底の浅い己の不徳を恥ぢ入るべきなのか。
 金髪ウィッグに黒尽くめの扮装で、軽くメーテル入つたゴスロリ・バービー(南梨央奈の二役目)に男が接触。サングラスをずらしバービーが美しい瞳を覗かせると、手始めに南梨央奈のみクレジット。したかと思へばカット跨いで、絡みにガンッガン突入する潔さ。バービーを、介護医療機器メーカー「インダストケア」社の介護企業部部長・増川久(片桐)が責める。バービーの首を絞め、締りに喜悦する増川の視界が歪み、浮かんでは消えるたんぽぽおさむの幻影に増川は戦慄する。片や朝方の場末、特殊捜査機関「奇怪事件捜査研究所」こと略称「奇捜研」の三番手ならぬ三枚目担当・尾澤一平(永川)が、痛飲した末に彼女のゐない身を嘆く埒の明かない千鳥足。そこに何者かに怯えるやうに、トランクス一丁で逃げて来た増川が一平と交錯、挙句どさくした腕の中で悶死する。今時意図的としか思へないプリミティブさで、画面右半分に配された西洋人形の眼が赤く発光、いゝ感じに古めかしいタイトル・イン。“キャップ”と呼ばれる奇捜研の長に、何時の間にか昇進してゐた森崎真紀(桜木)の走りショットを所々で止めて、残りの役名あり俳優部クレジットが追走。桜木優希音は走る姿が美しくない、といつた評に触れた覚えもあるのだが、切り取り方の勝利か、全然そんなことはないやうに映る。一平と、同じく奇捜研の一員で真紀とは公然と男女の仲にもある本郷達哉(折笠)が待つ増川急死現場に真紀も到着。真紀は増川の勤務先であるインダストケアの社名に、かつて介護ロボットの開発に参加してゐた木島竹次郎博士の名前を想起する。真紀が本郷と向かつたインダストケア社では、取締役の重原俊彦(細川)と企画開発部主任の秋本富士子(朝桐)が、退職者リストに木島が漏れてゐる点に関し社外の人間と白を切る一方、木島邸を訪ねてみた一平は、地に咲く花を平然と踏み潰す、表情を失したヘルパー兼メイドの清野日奈(南)と出会ふ。恐らく脳をいはした木島当人(たんぽぽ)は、自由の利かない体でその癖奇声をあげ暴れ回る、何でまた藪から棒にさういふ造形にしたのか厄介極まりない反面、到底外に出て他人に危害は加へ得ない状態だつた。そんな最中、バービー女王様と豚プレイに興じた重原が雑居ビルの屋上的なロケーションにて、増川同様の変死体となつて発見される。
 配役残り本篇クレジットのみエキストラは、インダストケア社内と富士子逃走時の通行人要員。社内の高橋祐太と往来の松本格子戸は見切つたものの、清水大敬をロストしたのが口惜しい。妙にピンで抜かれる、通行部のトリを飾る普通に可愛い女があいだひな?
 2016年第三作にして、奇捜研、あるいは性鬼人間シリーズ前作「性鬼人間第一号 ~発情回路~」(主演:桜木優希音)、五年ぶりの寺西徹。2017年第二作「ピンク・ゾーン 地球に落ちてきた裸女」(主演:阿部乃みく)、少なめに見て十年ぶりの町田政則。2017年第三作「スペルマーダー 嵐を呼ぶエクスタシー」(主演:佐倉絆)、七年ぶりのGAICHI(ex.幸野賀一)に引き続き、池島ゆたか2006年第五作「ホスト狂ひ 渇かない蜜汁」(脚本:五代暁子/主演:日高ゆりあ)以来、実に十二年ぶりともなるたんぽぽおさむをサルベージした国沢実2018年第二作。前作「SEXアドベンチャー ワンダー・エロス」(主演:並木杏梨)の山科薫については、然程のブランクも空けず他の組で普通に仕事をしてゐるゆゑ無視する。それと実はたんぽぽおさむだけでなく、十二年ぶりが驚く勿れもう一人。何気に岩崎智之も、関根和美2006年第一作「不倫関係 微熱の肌ざはり」(脚本:関根和美・宮崎剛・水上晃太/主演:朝丘まりん)以来のピンク参加。
 満を持すといふよりは、開始四十五分にして漸く無理から捻じ込んだ桜木優希音の濡れ場を方便に、監視下の富士子を外に逃がす。即ちドラマを大きく動かす、肉を斬らせて骨を断つが如き奇策が裸映画的にはなほさら光りつつ、矢張り前作「第一号 ~発情回路~」同様、性鬼人間が又しても在り来りな物語を生煮えさせるものかと思ひきや。良きにつけ悪しきにつけグルッと一周してのけるのが、「第二号 ~イキナサイ~」の妙。パルス銃を外付けパーツで強化したパルス133を真紀が構へるや、日奈が出し抜けにバービー化。本郷もプロップを抜くや、今度はバービーが出し抜けの火に油を注いで藪蛇に全裸。「砕け散れ!」と電・ジ・エンド感覚でバラバラになるプリミティブ特撮から、蝋燭一本倒れただけで忽ち屋敷が燃え落ちる―のを映像にはしないが―までザックザク一気呵成。バービーが増川達を死に至らしめた原理も、そもそも単なるマネキンに過ぎなかつた根本的な謎をも、見事に完放置。「あれは一体何だつたの・・・・!?」とか確信犯的な台詞を桜木優希音に吐かせ、畳みもしない大風呂敷をトッ散らかしたまゝ勢ひで駆け抜けるラストの清々しさは、さながら70年代粗製怪奇映画の趣。そしてタイトル画面と、所々どころでなく全篇隈ない粗雑さを見るに、それは恐らく非力な不作為の所以ではなくして、正方向に結実を果たせてゐるのか否かはさて措き、明確に志向した企図であつたのではなからうか。ただ、だとすると、あるいはだとしても。仮にさういふ嗜好であつたとしても、さうなるとデジタル時代ひとつのベーシックたり得よう、藍河兼一が作る現代的にシャープな画とのミスマッチは否み難く、根本的ないし戦略的な齟齬は際立つ。
 あと一点特筆しておきたい、もしくは通り過ぎること能はざるのは、永川聖一が日奈相手に、巧みな腹話術を披露する件。たとへ陳腐であつたとて惰弱であつたとて、あのよくいへば繊細な、直截には粒の小さなエモーションこそが、それを忘れては遂に終る国沢実の生命線と常々見るものである。

 劇中木島が研究してゐたのが、人工知能“artificial intelligence”ならぬ、人工感情“artificial feeling”。そこ“artificial emotion”でよくね?とも脊髄で折り返して思ひかけたが、もしかすると、いはゆる“AFOK”の“AF”との近似を狙つたのかも。それと発情回路なるガジェットが実は一部品も登場しない第一号に対し、今回は明確に―現物はさて措き―感応回路が登場する。ここで“感応回路”といふのは文脈上当サイトがさう解したといふだけで、「これも人工感情の研究のためだ!」と称し、木島が膳を据ゑた富士子のお乳首をレロレロ舐め始める愉快なシークエンスを窺ふに、感応ではなく、ある意味ダイレクトに“官能回路”であるのやも知れない。介護ロボットに、官能回路が必要であるところの所以は知らん。


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )




 「熟女のはらわた 真紅の裂け目」(1997/製作:国映株式会社/配給:新東宝映画/脚本・監督:佐野和宏/原題:『ふくろふの夏』/企画:朝倉大介/撮影照明:京王撮影兄弟会/音楽:安田光一/編集:酒井正次/特殊造形:松井裕一・山崎覚之/助監督:梶野考・森元修一/応援:広瀬寛巳/録音:シネ・キャビン/現像:東映化学/協力:中島宋松、福島清和、大迫さん、リスキー・バー、苗田忠彦、本多さおり、バンブー・ハウス/出演:麻生みゅう、佐野和宏、工藤翔子、白都翔一、吉行由実、神戸顕一《特別出演》、小林節彦、板橋元、チン・ピョー、楠本頼子、山岡樹《子役》)。撮影の京王撮影兄弟会は、斉藤幸一の変名。特殊造形メインが祐一でなく松井裕一なのは、本篇ママ。
 寄るにしても寄り過ぎで何がどうなつてゐるのかよく判らない、手足から舐めた脱獄者の佐野が、眼光をギロリと呉れてタイトル・イン。八ヶ岳の山中を、タケオ(佐野)が囚人服のまゝワッセワッセ逃げる。それを見下ろす梟―の精密な模型―が、全篇を通して執拗も通り越し食傷するほど繰り返し繰り返し、殆どどうかした勢ひの頻度で登場する割に、その視点に如何なる含意があるのかは、節穴の見る限り佐野の口なり筆から確たる言葉で聞かぬことには瞭然としないにさうゐなく、あへて雑な物言ひを吹き散らかすならばいはゆる国映系が否定した、量産型裸映画といふ属性ないし本分に最も重きを置く当サイトの立ち位置としては、さういつた禅問答に何本か毛を生やした程度のモチーフに興味はない。山の中から一転、ネオンが安く光るRISKY BAR。服役中の刑務所から逃亡したタケオについて、弟分(白都)が店を訪ねて来た官憲の対応に追はれ、その声だけ聞こえる店内では、白都翔一の情婦・ユウコ(工藤)が呑気に悠然とグラスを傾ける。タケオを警察に売つたのは妻の頼子で、なほかつ白都翔一は頼子と関係を持ち、元来タケオの店であつたバーのマスターの座にも座つてゐた。タケオが草野球の男(多分チン・ピョー)を半殺しにして衣服を奪ふ一方、東京から援交男(小林)といづみ(麻生)が、あくまでデート限定の名目で八ヶ岳を訪れる。この期に改めて見てみると、デビュー年の麻生みゅう―封切りは「ザ・痴漢教師 制服狩り」(脚本・監督:北沢幸雄/主演:メイファ)の方が一ヶ月半早い―が最終的に首から上はウホッてゐるものの、手足はハッとするほど細い。時の流れは、残酷である。
 俳優部残り、京極夏彦『魍魎の匣』の登場人物に遮られ素性に辿り着けない楠本頼子が、タケオ配偶者の概ねハーセルフ。佐野の映画にカメオで参加する―挙句ただでさへ数少ない絡みをもこなす―縁が謎な神戸顕一は、いづみを連れタケオが侵入した山荘に、現れた正当な管理者。吉行由実が、物件を見に来た有閑マダム。山岡樹は、エピローグに出て来る頼子の息子。問題が、切つてしまつたのか、消去法で板橋元に該当する配役がどうにもかうにも見つからない。
  九戦目にして、国映大戦急展開。これまで素のDMMにも入つてゐなかつた国映作がex.DMMの、しかもバラ売りのみならず月額にもまさかの新規着弾。「バット・オンリー・ラヴ」(2015)で十八年ぶりの監督復帰を果たすまでの、佐野和宏商業第十五作に喜び勇んで喰ひついた。前回の「ペッティング・レズ 性感帯」(1993 秋/監督:サトウトシキ/脚本:小林宏一/主演:ゐろはに京子)に関しては、正味な話素のDMMでバラ買ひした直後に、ex.DMMのピンク映画chに新着してゐて正直微妙な心持ちでもありつつ、まあよしとしよう。キモオタたる者、好きなものに切る身銭惜しむべからず。
 復讐を期し脱獄した男が、偶さか知り合つた援交少女を伴ひ、自らを裏切つた妻の所在地を目指す。結局元ゐた場所に戻つて来たりするのもあり、詰まるところあまり動かないロードムービー。外堀すら満足に埋められない、女主役のいづみが特にも何も輝かず、幾ら佐野だけ見てゐればそれでいいともいへ、逆に佐野のカッコよさくらゐしか見所が見当たらない起伏を欠いた物語は、平板な展開に終始した果て遂に力尽き、失速する感は否めない。これで叙情的にでも纏め上げたつもりなのか、そもそも撃つたの誰ならないづみと母子のミーツに開いた口が塞がらないか腰も砕ける以前に、女の裸をさして満足に拝ませもしない癖に、クレジットを起動させてから優に五分!もちんたらちんたら他愛なく潰す尺が象徴的な、漫然とした冗長な一作。とりわけ、撮影部は孤軍奮闘するギッリギリにソリッドな画の中で、大御大映画に出演する際と全く同様、何時も通りペッラペラにヒャッハーする白都翔一の迸るミスキャストぶりは比類なく、神戸顕一以上だか以下に今作最大の謎。別に、そこ既に二年目の川瀬陽太でよかろ?

 唯一正方向―かどうかも甚だ疑はしいが―に特筆すべきは、無理ッから捻じ込まれる吉行由実の濡れ場。山荘内に通された有閑マダムは、暑いからとか神戸軍団総帥に脱ぐやう促し、自身も「許して下さるはね」だの上品ぶつた台詞を垂れながらザックザク脱ぐ。ぶ、ぶわはははは!よもや佐野が今上御大と寸部違はぬ底抜けシークエンスを撮るとはと、度肝を抜かれると同時に腹を抱へた。


コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )




 「痴漢電車 隣りの太股」(1995『痴漢電車 痴漢のテクニック』の2001年旧作改題版/企画:セメントマッチ/制作:オフィスバロウズ/提供:Xces Film/監督:池島ゆたか/脚本:五代響子/撮影:下元哲/照明:田中二郎/編集:酒井正次/スチール:津田一郎/助監督:高田宝重/監督助手:森山茂雄/撮影助手:鍋島淳裕/撮影助手:市川修/録音:シネキャビン/現像:東映化学/出演:藤原史歩・林由美香・杉原みさお・吉行由美・山ノ手ぐり子・神戸顕一・佐々木共輔・池島ゆたか・平岡きみたけ・佐竹秀雄・寺島京一・柿木貴光・白木努・樹かず)。出演者中、佐竹秀雄から白木努までは本篇クレジットのみ。
 八十年代の残滓を引き摺るサイジングの、ダサいスーツが板につかない樹かずのモノローグで「俺の名前は藤沢和哉、二十三歳になつたばかりのサラリーマンだ」。“大きな声ぢやいへない”、藤沢に最近出来た趣味といふのがズバリ痴漢、清々しすぎて真綿色したシクラメンも枯れる。てな塩梅で、若く予想外にムッチムチの山ノ手ぐり子(=五代響子=五代暁子)に電車痴漢敢行。手マンとワンマンショーを並走、山ノ手ぐり子の尻―パンティ越し―に精を放つ。そこまで好き放題し倒しておいて、満ち足りるでなければ勝ち誇るでもなく、虚しく手を洗ふ化粧室。何故なら痴漢してゐないと不能の藤沢はその理由を、“俺から去つて行つた美保の所為なんだ”と滾らせるか拗らせた繋ぎで電車の画にタイトル・イン。日常的な痴漢行為の元凶を、フラれた元カノに求めると来た日には。釘バットをブン回しながら、雌叫びをあげ浜野佐知が小屋に突入する幻影が浮かぶ。
 何時ものやうにホケーッと電車に揺られる藤沢は、大股開くどころか、乳まで露に佐々木共輔の痴漢に悶え狂ふ藤原史歩(吉行由美のアテレコ)の痴態に目を丸くする。「今度会つたら絶対痴漢してやる」とか藤沢が明後日な決意を固める一方、降車後桃子(藤原)は佐々共から三万円を受け取る。それは会社員の副業の、イメクラのプレイだつた。
 配役残り神戸顕一は、桃子の上司・田中課長。課長風情に斯様な権限があるのか甚だ疑問だが、内定を餌に就活時の桃子を一度だけ抱き、以来入社後も粘着質に付き纏つてゐた。中盤に飛び込み、華麗なヒット・アンド・アウェイで風のやうに去りぬ林由美香が、件の美保。一濡れ場どストレートな絡みを入念に完遂した上で、玉の輿に乗り換へると藤沢にケロッと別れを告げる。恐らく杉原みさおが声をアテてゐる吉行由美は、桃子が見守る中、藤沢に痴漢される女。殆ど声は出さず、下着を絞り込んだ二次的Tバックまでしか見せない。遂に桃子が藤沢の電車痴漢に相対する現場に、池島ゆたかと変な帽子の平岡きみたけが垂涎、完ッ全に発情した杉原みさおが「オリャ!」と乱入する。本クレのみエキストラ部は乗客要員、下手に目立つうじきつよし似は誰なのか。高田宝重と森山茂雄は、もしも仮に万が一見切れてゐたとしても確認出来なかつた。佐々共は、ダブル痴漢時とラスト電車、桃子の客とは別人面でもう二回乗客の頭数―車内の撮影は全てセット―を増やす。正直紛らはしい、悪手に思へる。
 別にex.DMMで見られるものを、前の週に観た新作が滅法面白かつたゆゑ、小屋に出撃することにした池島ゆたか1995年第三作。セクハラ課長に幻滅し、イメクラ稼業でストレス解消と男への復讐を兼ねる女と、現金彼女に絶望し、電車痴漢でストレス解消と女への復讐を兼ねる男、しかも平時はインポ。似た者同士と意気投合した二人は男の回春を図るべく、再度再々度と痴漢電車に乗る。主に藤沢周りの、平成の次代では凡そ通用し得まい行動原理にさへ目を瞑れば、まゝある“起”だけでなく、起承転結の全てに電車痴漢が不可欠な展開は何気に素敵な出来。首から上は飛鳥裕子系の、美人不美人の徳俵間際で攻防戦を繰り広げる馬面とはいへ、ウエストの細さを筆頭に、主演女優も素晴らしく美しい体をしてゐる。樹かずに負けず劣らず、私服のセンスは酷いけれど。寧ろワーキャー持て囃すのは積極的に避くるべき、良質の量産型娯楽映画たる物語本体よりも今回枝葉で目についたのが、全く以て自己中心的かつ、卑小な好色漢をその限りに於いて、それはそれとして綺麗に演じ抜く神戸顕一。桃子がラブホで田中に喰はれる件、徹頭徹尾一方的なセックロスに終始するばかりか、いざ挿入するや三こすり半レベルの鮮やかな高速。にも関らず「私は上手いだらうハハハ」、と勝手か正体不明に自信満々で高笑ふ鬱陶しさ極まりない神顕の姿には、グルッと一周して心洗はれた。山宗・細川佳央・櫻井拓也らの参戦で、現代ピンク男優部の厚みが俄然増したものの、神戸顕一に代るタレントが案外見当たらない。清大だと如何せん些か―でなく―パワフルすぎて、滑稽よりも高圧が先に立つ。


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )




 「痴漢電車OL篇 車内恋愛」(1994/製作・配給:新東宝映画/監督:深町章/脚本:周知安/企画:中田新太郎/撮影:稲吉雅志/照明:伊和手健/編集:酒井正次/助監督:田尻裕司/監督助手:徳永恵実子/撮影助手:小山田勝治/照明助手:小田求/スチール:津田一郎/録音:銀座サウンド/現像:東映化学/出演:西野奈々美・神戸顕一・杉本まこと・ゐろはに京子・樹かず・川本佳奈・しのざきさとみ・池島ゆたか・本間優作・小松越雄/ナレーション:芳田正浩)。脚本の周知安は、片岡修二の変名。
 第一声が“世の中不況である”、娯楽映画の開巻なのにいきなりあんまりな芳田正浩のナレーション。雑踏の中にさりげなく西野奈々美がフレーム・イン、劇場で観てゐればこれで一目瞭然なのか、PCの液晶画面を通して見る分には軽い『ウォーリーをさがせ!』感覚。高井望(西野)は短大卒業後三菱ならぬ三角証券に就職、憧れの証券レディに。ところが入社と同時にバブル景気が弾け、“将来に不安さへ覚える今日この頃だ”―芳ナレ―とか適当に体裁を整へると電車の汽笛が起動、VHS題の「痴漢電車OL篇 Ⅲ」でタイトル・イン。課長(神戸)に電車痴漢された望は、一旦慰謝料で手を打ちつつ、転職も視野に入れる。そんな望に、AもBもない単数形のヘッドハンター(杉本)氏が接触する。とこ、ろで。神戸課長が部下とは知らず痴漢に及んだ所以が、芳ナレ曰く“不況になると痴漢が増える”、ドラキュラか。“勿論正式なデータがある訳ぢやないが”と言ひ訳した上で、“不況でサラリーマン達のストレスが増えたとすれば何となく肯ける話だ”と豪快に片付けてのける、底の抜け具合が臍で茶を沸かす。いふまでもなく、斯様にへべれけな方便、現代ピンクでは到底通らない。
 配役残り、少しでも厚目に塗るとおかめ顔が際立つゐろはに京子は、高卒の商社オーエル。樹かずは、電車痴漢を通してゐろ京に捕食される、同じ会社の営業部有望株・轟渉。池島ゆたかは、時短で日も高い内に帰宅するサラリーマン。劇中明示はされないが、定石からだと苗字は園山にさうゐなく、下の名前は多分髙志。しのざきさとみがそんな亭主に手を焼き、外で働き始める妻の明子で、何故しのざきさとみよりもビリングが高いのかが解せない川本佳奈は、明子が親密になる同僚・江藤、下の名前はどうせ倫子。残り二人、イメクラの客が本間優作で小松越雄が重役。
 深町章1994年第二作は、jmdbをex.DMMで補完したゐろはに京子第五戦。更なるjmdbの記載漏れがないとすると、ゐろはに京子の戦歴は全七作。残り未見は唯一のエクセス、佐藤寿保の「痴漢と覗き 婦人科病棟」(1994/脚本:五代響子/主演:石原ゆり?/2002年に『痴漢と覗き 名器診断』と改題)と、あの―どのだ―関根和美の「《生》女子大生 姉妹交換」(同/脚本:川合健二=関根和美/主演:林由美香)の二本、血を吐くやうに観るなり見たい。
 深町章×ゐろ京の前回痴漢電車「エッチな下半身」―に於いてもゐろ京は樹かずと絡んでゐる―同様のオムニバス、といふか不景気で括るザックリした雰囲気を除けば、三篇が一切全く一欠片たりとてリンクさへしない、よりルーズな一作。尤も、乳に勝るとも劣らない尻のパンチ力も誇る西野奈々美と―首から下に関しては―随一の美しさを誇るゐろはに京子に、造作以上に色気が堪らないしのざきさとみ。オッパイ部を三枚並べた布陣は矢張り強く、裸映画的には下心豊かに見てゐられる。片岡修二らしいアスファルトの匂ひのするオチに着地する望篇と、特に捻りもなく轟が無体に転落するゐろ京篇とを経ての、津田スタを主な舞台に繰り広げられる園山家(推定)篇。いざ勤めに出るや自分よりも帰りの遅く、園山が次第に猜疑を募らせる明子は、エクストラな四番手と百合の花を咲かせてゐた。となると、当サイト的にはここは池島ゆたかではなく、女房をよもや女に寝取られ徒に重厚に苦悩する、栗原良(a.k.a.リョウ・ジョージ川崎・相原涼二)の出番を期待しかけたいところが、まさかの三人での新性活―倫子のセクシャリティはガン無視―に活路を見出す、予想外の無理から大団円には軽く度肝を抜かれた。そこかしこの無造作さが清々しい、良くも悪くも大らかなクラシカルである。

 それはそれ、あるいはそれもそれとして。jmdbの記載にある、岩田治樹が今作のプロデューサーだなんて全体何処から湧いて来た与太なのか。


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )




 「変態おやぢ ラブ・ミー!イッてんだぁ~」(2018/制作:セメントマッチ/提供:オーピー映画/監督:池島ゆたか/脚本:高橋祐太/撮影監督:海津真也/録音:小林徹哉/編集:山内大輔/音楽:大場一魅/効果・整音:AKASAKA音効/助監督:江尻大/監督助手:佐藤洸希/撮影助手:宮原かおり・スリグルン/スチール:津田一郎・山口雅也/仕上げ:東映ラボ・テック《株》/出演:かなで自由・長谷川千紗・松井理子・竹本泰志・細川佳央・なかみつせいじ・牧村耕次・フランキー岡村・八ッ橋さい子/エキストラ協力:周磨要他若干名、高橋祐太)。撮影部サードのスリグルンは、正体不明の変名ではなくモンゴル国籍の実在する人物。
 白ブリーフ一丁のなかみつせいじが、「久し振りにこんな夢を見た」。“天使が舞ひ降りた”とまで惚(ほう)ける天使とは、ムッチムチの肉体を、ニッコニコ捧げて呉れるかなで自由。うん、確かに天使にさうゐない。なかみつせいじが実に三十年ぶり!?のセックロスを満喫する、まるで四十八手の教科書かの如き綺麗な綺麗な絡みが続く至福は、鬼の形相の長谷川千紗に妨げられる。市民講座「非モテ中高年のための 恋愛スパルタ教室」受講中に寝こけてゐた平野康彦(なかみつ)を、講師で恋愛カウンセラーの高沢美千子(長谷川)がヒステリックも通り越し殆どエキセントリックに叱責。素人童貞の自動車整備工場社長・北川吾朗(フランキー)や、真性童貞のまゝ老境に入り、最早“童帝”の風格すら漂はせる林又蔵(牧村)以下受講生一同(エキストラ協力隊)と、平野が「私はダメ人間です」と口を合はせて連呼させられるブルータルな教室に、アシスタントの三条あかね(かなで)が遅刻して現れる。事そこに至る、来し方に関する平野の回想。まづ平野がリストラされ、暗転タイトル・イン、これぞ正しくな暗転の使用法。
 呆然と分譲マンションに帰宅した、平野は三人暮らし。美容師の息子・雅志(細川)と、息子嫁の理恵(松井)、元介護職。一欠片たりとて登場しない妻とは、平野は雅志の出生直後離婚してゐる。失業した旨言ひ出せず、普通に出勤する体で日がな一日潰す日々を送る平野は、チラシを拾つたセミナーの門を戯れに叩く。美千子からクッソミソに全否定されるばかりの内容に、北川が憤慨する屋上喫煙場。矢鱈とペダンティックな清掃員の林と美千子に続き、初日から時間を間違へたあかねが漸く辿り着いて、役者が揃つたといふ次第。
 配役残り、一貫して悪い役の竹本泰志は、美千子の夫・務。一応バーの経営者とはいへ、目下飲んだくれる事実上ヒモ、しかも暴力を振るふ正真正銘のロクデナシ。八ッ橋さい子は、雅志が嫁と親爺のゐぬ間に自宅に連れ込む、浮気相手でモデルの八代真奈美。下着までしか脱がないが、怒涛の終盤を猛然と起動する修羅場の火蓋を切る、地味な大役を卒なく果たす。基本よく見る面子のエキストラ協力隊中、高橋祐太が赤いTシャツで結構目立つ。それにつけてもこの人中高年といふやうな齢かいなとググッてみたところ、俺の一個上、それは紛ふことなき中高年だ。
 一般―自主―映画第一作「おやぢ男優Z」(2014/脚本:五代暁子/助監督:田中康文/監督助手:小川隆史・菊島稔章/主演:なかみつせいじ・牧村耕次・竹本泰志・坂ノ上朝美/エキストラ:細山智明、他)の、続篇「おやぢ童貞Z」として当初企画されてゐたらしい池島ゆたか2018年第二作。愛するエルビス・プレスリーの、誰でも知つてゐる名曲のタイトルを捩つた公開題を拝命した、池島ゆたかが俄然上機嫌なのは至極当然としても、良きにつけ悪しきにつけデジタル時代の敷居を跨いだ以上、生つてゐる果実は頂戴してターミネーター2のT2ばりに、ODZ2を―公開題とは別に―ガシャーンッと鋼鉄製扉のCGで打つくらゐの外連も見たかつた、明々後日か先一昨日な心は残る。
 スパルタンな女恋愛カウンセラーに、非モテ中高年がケッチョンケチョンに虐殺もとい粉砕される。我が身を省みるのも忘れ愉快痛快に観てゐられる正調ダメ人間系コメディは、やがて各々の人生が大きく揺らぎ、揺らいでなほ、激しく揺らいだからこそなほその先に温かみなり光を求める超本格派の人間ドラマへと大転換。正直何処から褒めたものか窮しつつ、裸映画である以上一層、初陣で主演女優の向かうを張り濡れ場を同じ回数こなす二番手に飛び込んで来る、長谷川千紗が―PG【ピンク大賞】の―新人女優賞当確を確信するレベルで素晴らしい。演出ならぬ艶出部のサポートもあるにせよ、素面女優部にしては堂々としたどころでは片付かぬ豪ッ快な脱ぎつぷりで、素のお芝居で展開の進行役を務めるのはおろか、いざ脱ぐや再加速する大活躍。平野をゴリゴリ捕食する―但し例によつて夢オチ―のと対照的に、配偶者からは恣に虐げられる。度胸と地力で正反対の濡れ場を各々形にしてみせるのも凄いが、それだけに止(とど)まらずクライマックス三連戦の初戦は、エモくてエロいピンク映画の一つの到達点。「私は恋愛カウンセラー、生徒を卒業に導くのが役目です」、この台詞には痺れた。流麗なシークエンスの導入と、美しいファンタジーの両立。今更にもほどがあるが高橋祐太は、この人どうやら一撃必殺を持つてゐるみたい。童貞以外の全てを失つた平野に寄り添ふ、理恵役の松井理子も静かに輝く。矢張りエモくてエロい、棹を勃たせかつ胸にも沁み入る一幕に恵まれる今作は、ビリング上は三番手ながら、構築された緻密の限りを尽くした論理が狂気さへ窺はせる、今世紀最強の痴漢電車「痴漢電車 マン淫夢ごこち」(2016/監督・脚本:城定秀夫)をも超える代表作と、松井理子的にはいへるのでなからうか。反面、かなで自由はお飾りに終始するきらひもなくはないものの、オッパイ大きいだろ!可愛いだろ!だから天使だろ!野暮はいひない、錯乱してやがんのか。
 気を取り直して、男優部では半分オラついたドラ息子に徹するのかと思ひきや、最後に振り絞る重たい情で細川佳央が安定した仕事ぶりのセメント三兄弟―牧村耕次×なかみつせいじ×竹本泰志―を押さへ強く深い印象を刻み込む。細川佳央と山宗に、櫻井拓也。彼等が継戦する限り、一時期顕著であつた若手部のどうしやうもない脆弱性は、枕を高くして解消されよう。相も変らず未熟なポップ感が安くてくどくててんで芸になつてゐない、頭を抱へるフランキー岡村のメソッドや何故そこで劇伴がおチャラけるといつた、瑕疵なり巨大な疑問点もあれ、一見外様とR15+版が跋扈する中、本隊から池島ゆたかが貫禄で敢然と撃ち抜いた威風辺りを払ふマスターピース。オーピーに初めからその気がないとすればそれまでの話だが、濡れ場が質量とも素敵にエグくて、OPP+にしようがない潔さも清々しい。笑つて股間を膨らませ、やがてグッと来る。正味な話、ラストが釈然としない、あの作り方で釈然とする訳がない「ODZ」よりも余程面白いと思ふ。無駄に前に出なければ―ミスを犯すといふ意味で―後ろにも決して退かない、海津真也の堅実な画作りも何気に心地よい。この何気さが、量産型娯楽映画ひとつの肝要。これでまだ城定秀夫と滅法評判のいいナベを残してゐるとなると、もしかして2018年は豊作なのか?


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )