真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「牝猫 くびれ腰」(2003/制作:セメントマッチ/提供:オーピー映画/監督:池島ゆたか/脚本:五代暁子/原題:『DENPA-KEI』/撮影:鈴木一博/編集:酒井正次/音楽:大場一魅/助監督:田中康文/監督助手:笹木賢光、他一名/スチール:津田一郎/録音:シネキャビン/現像:東映ラボ・テック/協力:阿佐ヶ谷『スターダスト』・色華館/挿入歌:『愛しのピンナップ・レディ』作詞:五代暁子、作曲・歌:大場一魅/出演:望月梨央・美奈・紅屋トミ子・本多菊次郎・樹かず・神戸顕一・色華昇子・吹雪桜子)。サード助監督と、二名クレジットされる撮影助手に力尽きる。プロジェク太画質に阻まれ、小さな活字がよく見えない。ところで出演者中本多菊次郎が、ポスターでは本多菊次朗。
 火にかけられた薬缶が蒸気を噴く、海外への留学も決まつた優秀な息子(樹)の、恋人(美奈)を家に招いての団欒で開巻。交される会話は何の過不足もなく表面的には幸福さうなものながら、男、即ち父親(本多)は鷲掴みにしたショートケーキにグラスの黒ビール、男の左隣に座る息子の恋人は丸齧りする胡瓜にワイングラス、右隣の妻(望月)はバナナにポン酒、更にその隣の息子はドラ焼きにジュース、かウーロン茶。銘々がてんでバラバラの品を、しかも手掴みで口にする光景にはストレンジが否み難い。笑ふ四人の姿を順々に捉へるカメラが、狂騒的にグルグル回り始めてタイトル・イン。その夜妻を抱いた男は、事後玄関先から洩れる強烈な光に誘はれる。男が外に出ると、右目に眼帯、左手には松葉杖を携へた看護婦姿の謎の女(紅屋)が。女は「フフフフ・・・」、と笑ひながら男を手招きする。男が注意を留めると、女は姿を消す。後日、外回り中の男の携帯が不意に通じなくなる。そこに謎女が、再び男の前に姿を現す。女は児童公園に男を誘(いざな)ひ、宇宙人であるとかいふ自らの正体を明かす。半信半疑の男に滑り台の下に張つた暗幕を捲らせると、そこはUFO内部に通じてゐた。フルアーマー大屋政子とでもいつたメイド(色華)の見守る中、男は女を抱く。
 順風満帆過ぎる人生を歩む男、不意に出現した謎の女を、男は異空間で抱く。二度目に女を抱いたのち、我が家に帰宅した男を、愛すべき筈の家族がどうした訳か拒絶する。これは果たして現実なのか、それとも悪い夢なのか・・・・
 一言で片づけてしまふならば、江戸川乱歩いふところの、「現し世は夢であり、夜の夢こそ誠」。延々とした繰り返しが冗長といへなくもないオチの落とし方は、芸としては必ずしもなつてはゐないが、その分、それだけに却つてネタ自体の突進力は強く活きる。映画やロックは、ちよつと下手糞であつたり壊れてゐたりするくらゐが一番エモーショナル、といへる時もある。それが正しい見方なのかさうでないのかはひとまづ兎も角、さういふいはゆる“ツボ”を御共有頂ける諸兄には、お薦め出来るやも知れぬ一作。因みに個人的には、深い感銘を受けた。野球の投手の投げる球でいふならば、コントロールは出鱈目で球速も然程速くはないけれど、呆れるくらゐ真つ直ぐでそこそこ重いド直球に譬へられようか。兎にも角にも、やらうとしたことはやり抜いた感のある池島ゆたかを、本多菊次朗が全力で受け切つた様は天晴である。
 配役残り、神戸顕一は男の部下。吹雪桜子は、部下に連れられ男が入るバーの白塗り女バーテンダー。都合二度のバーでの男と部下との会話の中では、男の出身校が、慶応の大学院から国公立の理系へと摩り替つてしまふ。男と妻の、一体どれだけの子沢山なのか判らない奇怪な遣り取りといひ、風呂敷を拡げる上での細部の積み上げは例になく上手い。さういふあれやこれやがあつてこそ、ラストの間延びしかねない一点突破の中での、冷酷な正体明かしが更に響いて来るのであらう。紅屋トミ子と吹雪桜子は、通り魔ロツク楽団「母檸檬」のツイン・ヴォーカル:御手洗水子と御手洗花子。さういふ全くの異業種から、一体どういふ顛末でピンクで脱ぐことになつたのか、花子の方は脱がないけど。

 御馴染み「スターダスト」はさて措いて、協力としてクレジットされる色華館とは、UFO内部のロケーションに用ゐられる、色華昇子の自宅マンション。これが、百万本の造花とそれなり以上の電飾とに正しく極彩色にデコレートされた、壮絶にオッソロシイ部屋。アレな店の内装とでもいふならば兎も角、かういふ空間で日々の生活を過ごしてゐる人間がゐるなどとは、世人には計り難いものがある、とでもしか形容のしやうもない。
 本筋からは清々しくどうでもいい笑ひ処、二度目に男が謎の女を抱く件、正常位の男の更に上から、傍目におとなしく見てゐればいいものを、盛り上がつたメイドが覆ひ被さる。因みに改めてお断りしておくと、色華昇子はオバQ顔の名物オカマである。基本喜悦する色華昇子を煽り気味にピンで抜いた画から、尻を抜かれ悶絶する本多菊次朗が身を仰け反らせ二度三度と下からフレーム・インする見切れぶりが絶品。


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 「五十路をばさん 助平つたらしい尻」(2005/製作:サカエ企画/提供:Xces Film/監督:新田栄/脚本:岡輝男/企画:稲山悌二/撮影:千葉幸男/照明:高原賢一/編集:酒井正次/助監督:城定秀夫/音楽:レインボーサウンド/監督助手:都義一/撮影助手:池宮直弘/選曲効果:梅沢身知子/製作進行:阿佐ヶ谷兄弟舎/出演:美幸・望月梨央・岡田智宏・丘尚輝・本多菊次朗・小川真実)。
 有限会社ハッスル健康食品杉並支店に勤務する吉岡和也(岡田)は、五十過ぎのビルの清掃婦・上杉光子(美幸)の尻に何時も夢中だ。開巻早速、ここで大半の観客は振り切られてしまふにさうゐない。無理もここまで来ると、アヴァンギャルドとでも思つてゐないととてもやつてゐられない趣すら漂ふ。吉岡が安穏とババアとの情事の妄想に呆けてゐると、後ろ向きに階段を掃除しながら下りて来た光子の尻に激突され、二人は縺れ合ふやうに転んでしまふ。同僚で恋人の石田恵利香(望月)に絆創膏を貼つて貰ひながら、他の社員が外回りで出てゐるのをいいことに、求められるまま吉岡は恵利香を抱く。今作中ここで唯一、岡輝男脚本が全うな方向の輝きを見せる。吉岡が上着を脱がせると、恵利香は薄手のロンTを身に着けてゐた。「あ、ババシャツ」といふ吉岡に対して恵利香は即座に、「ウォームビズ」。朴訥とした岡田智宏の台詞回しに、望月梨央持ち前の鋭角が上手く絡む。
 休日、恵利香とのデートの待ち合はせに向かふ途中の吉岡は、街行く光子の姿に目を留める。何か買ひ物でもしたのか、小袋を胸に抱き宝石店から嬉しさうに出て来る光子の姿に、女を感じた吉岡は胸をときめかせる。休日明け、恵利香が金庫に保管しておいた筈の会社の金がなくなつてゐた。前日遅い時間に社内に見かけた光子を恵利香は疑ひ、ビルの管理会社に連絡する。結局金は恵利香の不注意で机の下から出て来るが、光子は馘になつてしまふ。気の毒に思つた吉岡は、光子のアパートを訪ねてみる。
 本多菊次朗は、光子の二十年前の恋人・鈴木誠。光子は鈴木の将来を慮り当時身を引くが、別れ際に、同日同場所同時刻での二十年後の再会を約束する。約束の日は間近、光子が買つた指輪は、その際鈴木に対し幸せに暮らしてゐることを装ふ為のものであつた。吉岡は、光子の鈴木との再会への準備に協力することになる。再会の日前日、「私に女を思ひ出させて呉れるかしら?」と乞はれ、吉岡は念願叶ひ光子を抱く。一方鈴木は妻・史子(小川)とのノルマごなしの濡れ場を経つつ、いよいよ当日。も、約束の場所に光子は現れない。鈴木が諦めたところに、一方吉岡の携帯には、光子から助けを求める電話が入る。慌てて吉岡が駆けつけると、よく判らない倉庫の中には折角着た和服も露に乱した光子が。行きずりの男(丘)に連れ込まれ犯されたのだといふ。昼間から泥酔して光子を犯し、事後男が吐き捨てた一言、「何だ、よく見るとオバサンぢやねえか」。

 何だもかんだもねえよ。

 その為光子は鈴木との再会を果たせなかつたといふ次第ではあるが、何故(なにゆゑ)にかういふ藪を突いて蛇を出すにも程がある展開をとかいふ以前に、岡輝男(=丘尚輝)が、自ら地雷原に飛び込むやうな真似をしてみせるのだかが全く判らない。因みに強力な、本質は別に宿さない細部。今作、行きずりの男の劇中設定名は木島周平。何でそんなところに一々気付くのだか我ながら不思議でもあるが、丘尚輝演ずる木島といふ端役は、六年遡る「出張和服妻 -ノーパン白襦袢-」(主演:青山くみ)にも登場する。
 続く展開は、いや増して更に怒涛。数箇月後、恵利香とは別れた吉岡は何と光子と結婚してしまふ!出勤がてら未だ床の中の光子からゴミ出しを命じられる吉岡ではありつつ、「あのいやらしい尻に敷かれてはゐるが、俺は、幸せだ!」と、傍からは恐ろしいまでに全然理解出来ない幸福感を、しかも爽やか極まりなく満喫するといふラストには、驚愕、だとか恐怖、だとかいつた言葉ですら最早追ひつかない。セックス、乃至はエロスを描いた映画といふよりは、寧ろ荒唐無稽なファンタスティック、あるいは背筋も凍る戦慄のスリラーといつた方が適当であるやも知れぬ怪作中の怪作。木端微塵に打ち砕かれ、「お前はロベルト・ペタジーニか!」、そんなツッコミを入れる余力も残らない。

 そのやうな瑣末はこの際どうでもいいやうな気もするが、今作中妄想、あるいは回想シーンは何れもキネコで処理される。本来ならばそのことを、“瑣末”だなどといふ言葉で片付けは決してしないところではあるのだが、流石に力尽きた。完膚なき完敗を認める。


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 「サイコレイプ -もう…やめないで。-」(2005/制作:ネクストワン/提供:Xces Film/監督:工藤雅典/脚本:日下由子/企画:稲山悌二/プロデューサー:秋山兼定/撮影:井上明夫/照明:小川満/助監督:増野琢磨/監督助手:宮崎剛・祝大輔/撮影助手:橋本彩子/音楽:たつのすけ/編集:三條知生/イラスト:オオヌマユウコ/出演:夕樹舞子・佐々木麻由子・矢藤あき・粕渕公・三上哲・なかみつせいじ)。
 金曜夜、同じ編集室に勤める四人での飲み会の帰り途、半ば呆れ顔で前を行く恵美(矢藤)と香(佐々木)の後ろには、すつかり泥酔して足元もままならぬ奈津子(夕樹)と、奈津子を抱へながらどうにかかうにか歩かせてゐる正樹(三上)。奈津子はホテルに入らうと甘えるが、正樹はまるで取り合はない。終電が無くなると前を行く二人に急かされると、正樹は半ば酔ひ潰れた奈津子を放置し行つてしまふ。工藤雅典のストイックな作風からは、その行動の非常識さが少々目立つ。車道をフラつく奈津子は危うく轢かれかけ、単車の男・涼(粕渕)と出会ふ。タクシーでも呼んでやらうかといふ涼を遮ると、奈津子はバイクのハンドルに脱いだピンヒールを掛け誘惑する。ホテルで奈津子は涼と寝る、「その夜は、優しい男の子に御褒美をあげた。私を一杯食べさせてあげた」、「まさか、狼に、肉の味を覚えさせたとは思はなかった・・・」。
 翌朝痛む頭を抱へつつ朝支度する奈津子は、前日正樹に棄てられた際に膝を怪我してしまつてゐた為、その日はジーンズを選んだ。いよいよ家を出るかとしたところ、お気に入りのピンヒールは無くなつてゐた。外に出た奈津子は、何者かの強い視線を感じる。その頃編集室では、香が奈津子に連載の担当を奪はれたと激昂してゐた。実際は締め切り間際に編集長から指示された奈津子が香の書いた記事を大幅に手直ししたものであつたが、香は遅れて出社した奈津子を激しく罵ると、飛び出して行く。痛飲した前夜の酒と香の件とに完全に負け、体調を崩した奈津子は殆ど何もせぬまま早退する。地下鉄の駅まで辿り着き定期を忘れて来たことに気付いた奈津子は、編集室に取りに戻る。あらうことか、香も未だ戻らず二人きりのオフィスでは、正樹と恵美が絡み合つてゐた。正樹は、一度寝ただけの奈津子が恋人気取りのことに辟易してゐると恵美に零す。更に大きなショックに、奈津子は見舞はれる。帰宅しビールを飲みながら眠つた奈津子は一旦目を覚ますと、更に缶ビールを開ける。奈津子が気付くと、鏡台には「かわいさうな僕の奈津子」といふ、謎の切り貼りの紙片が貼り付けられてあつた。その夜、一人帰宅途中の恵美は、フルフェイスのヘルメットを被つた謎の男に、ピンヒールで撲殺される。
 なかみつせいじは、香とは懇意の作家・植田健治。担当を奪はれた報復の為に、原稿を取りに来た奈津子を犯すことを香に依頼される。香とも既に関係を持つ、好色な植田は段取り通り部屋を訪れた奈津子を手篭めにする。後に香が結果を楽しみに再び訪れると、机に向かつたまま反応の無い植田は、ピンヒールを左目に突き立てられ惨殺されてゐた。驚愕する香を、フルフェイスの男が襲ふ。
 主人公の周囲に付き纏ふ謎の男の存在と、男が繰り返す凶行、果たして男の正体は。同じく夕樹舞子主演の前作のやうに、まるでお話の体を為さないといつた有様ではなく、一応通して観させるだけの最低限の強度は有してゐるのだが、不足が一切残らぬ訳ではない。粕渕公や三上哲の、単なる大根ぶりといつてしまへば正しくそれまででもあるのだが、あへて別方向からの表現を用ゐるならば最早清々しいまでの芝居の古臭さについては、それはそれとして苦笑とはいへ楽しんで観てゐられなくもない為、ひとまづさて措く。その点に関しては主演女優も勿論同罪ではあれど、夕樹舞子の場合はまあその美しさに免じて一切不問にも付せよう。その上で残る問題は、まづ第一に、折に触れ繰り返してもゐることではあるが、解かれた謎の真相の衝撃度が肝になる類のサスペンスに対して、ピンクといふカテゴリーで正面戦の展開を挑むのは矢張り何とも物理的に苦しいものがある。今作に於いては<四人キッチリと殺して>しまつては、殆ど後には残らないのだ。加へて解せないのは、<奈津子の手放しで攻撃的な狂気>への甚だしい飛躍の補完が、一切行はれてゐない点。いきなりリミット・ブレイクに狂はれても、凶行の繰り返しを繋げるのが関の山で、物語が収束のしやうもない。更には、<謎の男が奈津子の狂気の中にのみ>存在するものではないところは、逆に苦しくはないか。劇中実在するフルフェイスの男が、バイク便の配達員として編集室に出入りしてすらゐるといつた件は、観客へのミス・リーディングの一環のつもりなのかも知れないが、蛇足としか思へない。凶刃ならぬ凶靴、乃至は凶踵を振るふ際の衣に、何故に彼の姿を借りねばならなかつたのかが全く見えない。オーラスの濡れ場の面子から鑑みると、今作の隠された第二のテーマは実は単為生殖への願望なのか?幾ら何でも、まさかさういふ訳の判らない変則はあるまい。工藤雅典の基本ポテンシャルの高さが、一本の劇映画としての求心力をひとまづ有せしめはするものの、元々底の浅いサイコ・サスペンスには、更に大穴も幾つか開いてゐると難じざるを得ない。

 ところで。オオヌマユウコといふ名前が確かにイラストとしてクレジットされてはゐるものの、今作中の、一体何処に何のイラストが使はれてゐた?


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 「奪ふ女 中出しの誘惑」(2007/制作:セメントマッチ/提供:オーピー映画/監督:池島ゆたか/脚本:五代暁子/撮影:清水正二/編集:酒井正次/音楽:大場一魅/助監督:中川大資/監督助手:金沢勇大/撮影助手:海津真也・関根悠太/協力:阿佐ヶ谷『スターダスト』・鎌田一利/挿入歌:『愛しのピンナップ・レディ』作詞:五代暁子、作曲・歌:大場一魅/出演:結城リナ・春咲いつか・大沢佑香・野村貴浩・平川直大・吉原あんず・相良蒼生・神戸顕一)。出演者中、神戸顕一は本篇クレジットのみ。挿入歌の「愛しのピンナップ・レディ」は、元々「牝猫 くびれ腰」(2003)用に書き下ろされたオリジナル曲である。
 出勤がてらゴミ出ししてゐた早川みさえ(結城)は、家庭ゴミと一緒に捨てたリカちやん人形を、貰つても構はないかと工藤和子(春咲)に尋ねられる。壊れてゐるのにと承諾すると、直すといふ和子はみさえに、友達になつて呉れることも求める。マンション住まひで如何にもヤリ手な感じのスーツ姿のみさえと、安アパートに住み、野暮つたいジャージを着た和子。対照的な、二人ではあつた。みさえ宅での、恋人・君島俊介(野村)との濡れ場。付き合ひ始めて四年になる君島にはそろそろ一緒に住む、そして結婚への明確な意思があつたが、念願叶つて広告代理店への就職を果たしたばかりのみさえには、そんな気は一切なかつた。二人は、何とはなしに擦れ違ひ始める。
 みさえは和子のアパートに遊びに行く、この和子宅が、協力としてクレジットされるピンクス有志の鎌田一利氏宅で、今作以降池島ゆたか監督作に頻出する。たとへば、大傑作「NEXT」(2008)に於いては、若き日の高島夕景(千葉尚之)が青春の苦闘を過ごすのが同じ部屋である。和子はみさえに過去を語る。高校時代、和子の両親はそれぞれ新しいパートナーと姿を消す。和子はいはば捨てられたのだ。見るも鮮やかに不承不承、和子は叔母である菊地文子(吉原)に高校卒業までといふ条件で引き取られる。文子の娘、従姉に当たるリカ(大沢)からは召使になることを厳命され、シンデレラばりにコキ使はれる。ある日、リカの先輩・村沢尚也(平川)が遊びに来る。自分に対しても優しい尚也に和子は心をときめかせるが、そんな従妹の姿を憎々しげに見詰めるリカは、彼氏(一切登場せず)も居るといふのに尚也を誘惑、和子に見せつけるやうに寝る。和子は酷く傷つく。
 劇中現在時制に回帰し、再びみさえ宅での、和子も交へて君島と三人での夕食。俊介は家庭的な和子に好印象を持つ。部屋に流れる挿入歌のCDを、君島が和子に後日プレゼントすることを約束するこれ見よがしな件には、池島ゆたか持ち前の何時までも微妙にプロフェッショナルに徹し切れぬ脇の甘さも一見垣間見えたが、今回は後に綺麗に回収される。和子帰宅後二人は寝る。君島が思はず中で出してしまつたことにみさえは激昂、激しく言ひ争ひ、完全に仲違ひしてしまふ。そのことをみさえから打ち明けられた和子は、まるで別人のやうなウィッグを着け君島に秘かに接近。泥酔させた君島を、処女を装ひつつ寝取る。
 最短距離で直截には、気違ひ女に一組のカップルが恐ろしい目に遭ふ一篇。兎にも角にも、振り幅の強大な和子の戦慄すべき二面性を見事に演じ抜く、春咲いつかの振り切れた怪演が素晴らしく、且つ凄まじい。一度寝ただけで俄かに一足どころか、二足も三足も飛ばし結婚を語り始める和子に、君島が唖然を通り越し愕然とさせられるシーンの、正しく狂乱ぶりにはこちらも身震ひさせられる。平素のピンクの観客に呑み込めるものや否かは兎も角、鬼気迫る迫力が充満する。人形と同じで、捨てたものを私が貰つて何が悪い、といふ歪んだ和子の論理が、歪んだままでも貫徹させられる脚本の充実も光る。一方、レギュレーション上の尺に屈し編集してしまつたのか、欠けてゐるやうな気がする外堀も和子絡みで幾つか予想される。和子は引き取られ先での虐げられた体験から狂つてしまつたのか、あるいは元々壊れてゐたのか。即ち和子の言葉通り、両親から捨てられてしまつたことに由があつたのか否か。加へて、文子の下を離れてからの和子の去就。今は何をして暮らしてゐるのか、加へて今回みさえに向けられた狂気で、リカらに対する復讐は行はれたのか。さういふ和子のバック・ボーンの積み重ねには若干不足も見られるが、劇中進行する出来事としては、受ける結城リナも堅く、文句なく見応へある。世相を反映してか案外多く散見されるこの手のサイコ・スリラーの中でも、群を抜いた一作といへよう。

 オーラスに登場する相良蒼生は、矢張りゴミを出してゐたところを、別の街の別の和子に声を掛けられる青年、あるいは新たなる被食者。撮影当時は「ちょーごーきん」とかいふ劇団に所属してゐたらしいこと以外もは、全く判らない。
 さて最後に、「今作の何処に神戸顕一は見切れてゐたのか」コーナー♪これが実は、正直いふと些かならず覚束ない。劇中唯一臭いのはみさえ宅のテレビに映る手錠の男で、声は何となく神戸顕一に聞こえもしたのだが、明瞭に視認は出来なかつた。そもそも、神戸顕一にしても恐ろしく若く見えた手錠男の映像が、何の元ネタなのかもまるで見当がつかない。その場面は、家に仕事を持ち込んだみさえがライトボックスで何か写真をチェックしてゐるところに、君島より和子からの助けを求める電話がかかつて来るといふものである。ライトボックス上に強力に神戸顕一警報が発令されたものではあつたのだが、結局そのカット、カメラがチェック中の写真に回り込むことはなかつた。流石にクレジットまでしておいて、切つた訳ではあるまいな。池島ゆたかが神戸顕一の自監督作連続出演に正しく固執することに関する是非は兎も角、少なくとも出演してゐることを、観客に知らしめる意思の存在が平素は感じられはするのだが。


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 「拉致ストーカー 監禁SEX漬け」(2003/製作:小川企画プロダクション/提供:オーピー映画/監督:小川欽也/脚本:水谷一二三/撮影:図書紀芳/照明:岩崎豊/音楽:OK企画/助監督:加藤義一/監督助手:城定秀夫/撮影助手:吉田剛毅/照明助手:酒入康之/効果:東京スクリーンサービス/出演:三上翔子・風間今日子・加藤由香・なかみつせいじ・竹本泰志)。繰り返すが脚本の水谷一二三とは、小川欽也の変名である。
 ソファー越しに裸の上半身を迫出す加藤由香、原田明子(加藤)と北山竜二(竹本)との濡れ場で開巻。劇伴が状況の緊迫を指し示すものに切り替ると、明子の夫で物騒にも長ドスを抜いた原田昇(なかみつ)登場。妻と間男の不貞の現場に怒鳴り込むと、北山はそそくさと退散、原田は返す刀の峰で明子の体をいたぶる。カット変り舞台は同じ居間にて、原田が北山に報酬を渡す。北山は要は世にいふ便利屋で、元々原田が望んでゐたものの中々実現出来なかつた明子との離婚を成立させる為に、現行犯で発覚する不倫を仕組んだものであつたのだ。加藤由香の出番は徹頭徹尾このパートで終り。今にしてみれば、一人の主演女優が数作に亘つて起用されることも目立つ小川欽也映画ヒロインの、加藤由香からの移行が窺へるともいへるのか。
 早速原田は、北山に次なる仕事を依頼する。新たな標的は、原田の友人の娘で新進女優の早川由美(三上)。由美はマネージャーの河合玲子(風間)と、百合の花を咲かせる関係にあつた。二人は一週間休暇を取り、伊豆に逗留する。その間原田が由美を引き離す隙に、北山が対明子戦で披露済みのスケコマシの手管で玲子を攻略、男の味を覚えさせ二人の肉体関係に終止符を打たせようといふのである。この辺りまでは、大ベテランならではの手堅い立ち上がりを、見せてはゐたのだが。
 そんな次第で伊豆。一人出歩く由美を、恐ろしく不自然な構図で原田が待ち構へる。原田は東西テレビのプロデューサーを装ひ由美に声を掛けると、娘へのサインを求める。由美が手帳に筆を落とし注意を逸らしたところを、原田は定番の薬品を染み込ませたハンカチで眠らせ、そのまま車で拉致、玲子への不在証明工作もこなしつつ監禁する。裸でベッドに拘束された状態で由美が意識を取り戻すと、原田はある真実を告げる。初めのコンタクトの取り方からも、原田が由美の父親の友人といふのが、嘘であることは既に明らかであらう。二年前、デビュー前未だ高校生だつた由美は、一人の痴漢を捕まへる、それが原田だつた。但しそれは冤罪で、にも関らずその結果原田は一代で成した会社を失ひ、そもそも明子との不仲もその件に端を発してゐた。といふ訳でそれ行け復讐だといふのであるが、あの・・・それ・・・

 いきなり割るのかよ!

 通例で考へるならば。全篇を通して手替へ品替へ繰り広げられる陵辱劇、その果てに由美が「どうしてこんなことするの・・・?」、あるいは「私が何をしたといふの・・・!」とでも泣きを入れたところで、原田が「未だ俺の顔を思ひ出せねえのか」なんて勢ひで―観客にも―秘められた動機を開陳する、などといふ辺りが相場ではなからうかとも思はれるのだが。のつけから真相を詳らかにしてしまつて、一体ここからどう展開させる、あるいはお話をもたせるつもりだといふのか。小川欽也による既存の映画文法の解体、といふか直截に片付ければ単なる無頓着には畏れ入るばかりである。気を許して一歩間違ふと、逆に天真爛漫にすら見えてしまひかねない。
 ところで、その頃玲子は。風呂上りに自慰に耽つてゐると、押入れに忍び込んでゐた北山が伽椰子ばりに登場、当然の如く驚く玲子をそのまま手篭めにする。これも又、最早清々しいまでに天衣無縫なシークエンスである。この小川欽也の大らかさの百分の一でも長谷川和彦が持ち合はせてゐたならば、水谷豊が未だ若い内に、とうの昔に「連合赤軍」は完成してゐたのかも知れない。その場合それが面白いのかどうかは兎も角。そんなこんなで以降は、原田×由美と北村×玲子の絡みとが延々と併行されるばかり。正しくつるべ撃たれる濡れ場は良質な撮影にも支へられ何れも充実してをり、それはそれとしてピンクとしては全く不足は無いのだが。それでゐて、ミイラ取りがミイラになつたとでもいふ寸法なのか、何故かその内北村と玲子は手放しで仲良くなつてみせる。呑気に睦まじくロープウェイに乗りに行つたり、美味しい温泉卵の感想を交してみたりなんぞ、何時の間にやら普通に恋人同士の伊豆を満喫してゐたりなんかする、一体何を見せたいのだか全く判らない。とはいへ今作最大のアメイジングは、これだけ自由奔放でゐながら、その癖最終的には実は物語が壊れてしまはない点。間延びした攻略に嵌りまんまと由美を支配下から失ふも、御都合な力技とはいへ原田の当初目的は別の形で達成される。それは確かに棚牡丹でありあるいは自爆でしかないといへばそれまでだが、ラスト・カットが渋過ぎる。暗い部屋で酒を飲み飲みテレビを見て笑ふなかみつせいじの、苦笑からやがて狡猾な哄笑へといふダンディな名演技が、実際上はハード・ランディングでしかない終幕を巧みに補正。基本へべれけながら、不思議とでもしか最早いひやうのない纏まりも見せる、妙な器用さがお茶目な一作である。

 由美と玲子が“休暇を過ごすのが伊豆”といふ時点で、賢明なる諸兄には既にお察し頂けようか。さう、こんちこれまた舞台は御馴染み花宴である。クレジットにこそ載らないものの、表札や通りに面した看板は繰り返し抜かれ、あまつさへ原田の下を脱出した由美が、「済みません!ペンション花宴まで乗せてつて下さい」と不自然な叫び声で止める通り掛かりのライトバンも、挙句に花宴の営業車であつたりする。ここは今時のオタ風にいふと、いはゆる“聖地巡礼”とでも称して、ピンクスならば一度は花宴を訪れておかなければならないのであらうか。


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 「美人保健婦 覗かれた医務室」(2003/制作:セメントマッチ/提供:オーピー映画/監督:森山茂雄/脚本:黒澤久子/プロデューサー:池島ゆたか/撮影:飯岡聖英/編集:酒井正次/音楽:大場一魅 /助監督:城定秀夫/撮影助手:赤池登志貴・宇野寛之/監督助手:北村翼・松丸善三/出演:麻木涼子・川瀬有希子・河村栞・野村貴浩・西岡秀記・池島ゆたか・松木良方・神戸顕一・本多菊次朗・北千住ひろし・石動三六)。出演者中、北千住ひろしは本篇クレジットのみ。
 綜合商社の「大蔵商事」医務室、保険医の大西真子(麻木)が男性社員(北千住)の喉を診察する。カット変ると医務室のベッドの上では、真子とは同期で総合職の高橋桐子(川瀬)が、別の男性社員(神戸)と一戦交へてゐる。淫蕩な桐子は勤務時間中にしばしば、誰彼構はぬ相手と医務室をラブホ代りに利用してゐた。ドアに“立入禁止”の札を掲げ、真子が仕方なく一旦医務室を後にしたところでタイトル・イン。非常階段で一服してゐた真子は誰もゐない筈の屋上に人の気配を感じつつ、施錠されてある屋上には入れなかつた。真子が戻ると、佐川弘美(河村)が医務室を訪ねてゐた。桐子と同じく真子と同期でこちらは一般職の弘美は、鬱病持ちで矢張り度々医務室に入り浸つては、ボリボリとタブレット感覚で錠剤を口にした。弘美に続き、リストラの不安に始終慄く松浦(池島)も医務室に現れる。松浦も、医務室の常連だつた。各々悩みを抱へた二人はまるで上の空に、真子は熱心にレシピ集に目を落とす。
 西岡秀記は、真子の彼氏でエリート社員の遠藤彰。仕事で遅くなる遠藤の部屋で真子は料理を作つて待ちながら、一段落ついたのでタバコに火を点ける。ものの換気扇が動かないゆゑ、慌ててタバコを消す。さういふ女の心理も判らぬではないが、料理してゐる最中換気扇は使はなかつたのか?家庭的な女を気取るべく、真子は部屋を掃除してみたりなんかする。とはいへ、帰宅した遠藤と食事を摂り、ヤることはヤッてその日は帰宅した真子自身の部屋は、典型的な汚部屋であつたりもするのだが。こゝで。劇中真子宅の見事な散らかりぶりは、全体誰の自宅で撮影したのか。母親からの電話を取つた真子は、遠藤との関係を誇らしげに仄めかす。翌日、例によつて医務室には真子と弘美。そこに桐子が経理部長の岡田(石動)と現れたため、二人は退散する。何時ものやうに非常階段でタバコを吸つてゐた真子は、再び屋上に上がつてみると、けふは鍵が開いてゐた。驚く勿れ屋上にはデスクを置き忙しく仕事をしてゐる風の、浅岡信幸(松木)がゐた。真子を見止めた浅岡から、コピーを取つて呉れと手渡された書類は、てんで意味を成さぬものだつた。衝撃を受けた真子が呆然としてゐると、鍵をかけ忘れた粗相を激しく悔いながら岡本公平(野村)が現れる。岡本は真子に事情を説明する、浅岡は、公共工事に関る会社ぐるみの不正工作の責任を一身に背負はされ、自殺に追ひ込まれる。実際に屋上から飛び降りはしこそすれ、浅岡は死にきれなかつた。挙句すつかり狂つてしまつた浅岡を、何時正気を取り戻されるか判らない以上会社は飼ひ殺す選択を決定。岡本は、その監視役だといふのだ。屋上で唯一人、存在しないケニアでのダム建設プロジェクトを精力的に推進してゐる、つもりの浅岡を真子は可哀相だと慮るが、対して岡本には、そんな浅岡が幸せさうに映つた。
 主人公の支配する世界と、個性的なその世界の住人。理想的な恋人と、屋上に隔離されてゐた飛び道具、にその監視者。道具立てとしては揃ひ過ぎるほどに揃ふ森山茂雄の第三作は、そこまでは素晴らしく充実してゐたにしては、以降が全く解せない。けふもけふとて医務室は桐子に明け渡し、一服するかとしてゐた真子は、タバコを忘れて来てゐた。医務室に戻つた真子は、桐子と男性社員其の参(本多)との情事に思はず目を奪はれる。そこを岡本が急襲、後ろから真子を無理矢理抱く。以降、どういふ訳だか真子が漫然と岡本にもなびいてのけるのが判らない。多少その前では取り繕はねばならぬともいへ、実家も裕福な遠藤に真子が何かしら不足のあるやうには描かれてゐない。セックスの相性といふならばピンク的にも判り易いが、明確にはおろか黙示される訳ですらない。その癖岡本は汚部屋に上げてゐるにも関らず、最終的にバーで三角関係の三者が図らずも対峙する段ともなると、真子は「公平とゐる時のアタシより、彰とゐる時のアタシの方が好きなだけ」と来たもんだ。“女心と秋の空”とでもいふ方便か、知るかタコ。畢竟、桐子や弘美―と松浦―それぞれの物語に手堅くケリがつけられる反面、肝心のヒロインがまるで片づかない。クライマックスの、浅岡を先頭に真子、岡本と三人でケニアを目指すいはゆるハーメルン・マーチは全くの機能不全。最後の濡れ場―二人して仕事を休んだ汚部屋での、真子×岡本―からエンディングまで随分間が空く要は間の抜けた間延びも、カテゴリー上大いに火に油を注いでゐる。
 そもそも、この浅岡といふキャラクターが決定的に惜しい。江戸川乱歩いはく、「うつし世はゆめ よるの夢こそまこと」。自らの狂つた意識の中にしか存在しないプロジェクトに生きる浅岡こそ、正しくこの乱歩テーゼを体現する、虚構上極めて魅力的な登場人物であつたのに。現し世といふ現実世界よりも、夜の夢といふ一種の真実に生きた方が、人間の一生としてはあるいはより豊かであるのかも知れないといふ視座は、真子と相対する岡本の浅岡への眼差しとして既に提出されてもある。最終的には、浅岡の懐いた夜の夢の誠の一点突破で、真子といふ主人公の見せるブレを捻じ伏せる力技も、攻め方次第では成立し得たのかも知れないとさへ思ふ。さうはいへ浅岡のキャラクターが表面的には、何某かの人間といふ存在に対する認識の深遠さを窺はせるものではなく、類型的な団塊然とした、平板で高圧的なまるで魅力的ではない造形に止(とど)まつてもゐるのだけれど。


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 「人妻のじかん 夫以外と寝る時」(2008/製作:松岡プロダクション/提供:Xces Film/監督:松岡邦彦/脚本:今西守/企画:亀井戸粋人/撮影:村石直人/照明:鳥越正夫/編集:酒井正次/助監督:永井卓爾/監督助手:竹田賢弘・関谷和樹/撮影助手:松宮学・船渡友海/照明助手:越阪部珠生/音楽:山口貴子/出演:山口真里・華沢レモン・小川はるみ・伊庭圭介・サーモン鮭山)。
 電話で菜穂子(山口)が夫・浜田太(サーモン)と諍ふ、結婚して三年、初めての夫婦旅行を計画してゐたのに、太の仕事の都合で反故になつてしまつたのだ。防衛関連の大手に勤める太は仕事仕事に追はれ妻のことを顧みず、菜穂子はそのことに強い不満を抱いてゐた。旅支度のまま家を飛び出してしまふつもりで、電話を叩き切つた菜穂子は一旦は実際に最寄り駅まで向かつたものの、結局踏ん切りがつかずに帰宅する。その夜、太は偶然再会した大学の同級生・石垣保(伊庭)を家に連れて来る。石垣は学生時代には小説の新人賞を取り脚光も浴びたが、現在は本業だけでは食へない脚本家で、カルセンでシナリオ教室を開きどうにか凌いでゐた。読書家の菜穂子に石垣は図書館で見覚えがあり、同じ作家のファンであつたことから俄かに意気投合する。菜穂子は、残して行つたチラシを頼りに、石垣のシナリオ教室を訪ねてみる。シナリオ教室には、計男四名女二名の若い受講生が見切れる。
 主演女優を四番打者に見做すならば、完全無欠、超絶の五番打者ぶりを発揮する華沢レモンは、石垣のシナリオ教室の元生徒・佐藤千佳。かつては石垣と男女の仲にもあつたが、現在は甲斐性の無い石垣にはポップに見切りをつけ、別の男(一切登場しない)に乗り換へてゐた。偶々会つてしまつた流れで未だ猛烈に未練を残す石垣に無理矢理家に連れ込まれ、仕方なく寝る。石垣が果てるや「ハアッ!」とこれ見よがしな溜息を突き、別れ際には「ぢやあね、死んぢやダメよ☆」といふ、風間今日子ばりの突き放された温かさがハクい名台詞を極める。小生の出鱈目な文脈の中では、彼女らの持ち前の距離感は、カウリスマキ映画の登場人物にも通ずる。
 とここまでは、山口真里の悩ましい豊かな胸の膨らみで目を惹きつつ、ギアとしてはいはば慣らし運転。松岡邦彦が恐ろしい急加速と、怒涛の猛突進を炸裂させるのはここから。菜穂子は蔵書の中から、シナリオ化を目指す石垣が読みたがつてゐた小説を、家まで届ける。石垣は葱を背負つて転がり込んで来た鴨を軽い気持ちで抱くが、菜穂子は違つた。初めは形ばかりの抵抗も見せておきながら事後は見事に掌を返し、石垣との出会ひを俄かに運命と勘違へる。目を白黒させる石垣を余所に、菜穂子は急加速も通り越して暴走。どちらかといはなくとも千佳に心を残す石垣は、忽ち困惑させられる。
 鈍感で自分勝手な太との生活を嘆いて菜穂子はいふ、「自分の時間を、無駄にしたくはない」。石垣との逢瀬の後には、「生きてるつて実感と、ちやんと繋がつてる熱い時間」、を取り戻したとか。何が“自分の時間”だ“熱い時間”か、間男と不貞を働いてゐるだけではないか。要はさういふ、潤沢な稼ぎのある亭主が居ながら贅沢極まりない悩みを抱へた、自分探しの勘違ひスイーツ(笑)の物語である。対して石垣の側からいふならば、さういふ、性質の悪い地雷女を踏んでしまつたといふ話にもなるのだが、松岡邦彦は執拗に、サイコパス然とした、といふかそのものの菜穂子の粘着を容赦なく描く。演出の充実に加へ、受けに回る伊庭圭介の、金と力を欠く情けない色男ぶりもジャスト・フィットな適役。
 石垣の部屋に落とした首飾を取りに来た千佳と菜穂子とを鉢合はせさせておいて、放たれる第三の矢・小川はるみは、仕事をちらつかせ若い石垣の肉体を求める映画プロデューサー・新井鈴子。受講生は帰つた後の教室で事を致さうかとしてゐた現場に、菜穂子が闖入する。“物好きなオバサン”と千佳からは馬鹿にされた菜穂子は、今度は鈴子に対し「こんなババアと!」と金切り声を上げる。桃色の威力に豊かな主演女優を挟んで、上下に同じくらゐづつ歳の離れた芸達者を擁する、何と芸術的な配役か。それにつけても、小川はるみを捕まへて「こんなババア」とは・・・・小川はるみが松岡組常連であることも踏まへれば、ある意味、監督と出演者との間で信頼関係が築かれてゐなければ撮り得ないシークエンスではあらう。モノになりさうな仕事がオシャカになつた石垣は、「何てことして呉れたんだ!」と一旦は菜穂子と完全に訣別する。
 ここからの、結局場所は改めて鈴子が石垣を満喫するところからの展開が凄まじい。挫折、絶望、誘惑。誤解、凶行、教唆、翻意、そして情交、陶酔。人間の不善なることをロック・オンした松岡邦彦の、一気呵成の馬力は正しく比類ない。背筋が凍る菜穂子の地雷女ぶりに加へ小金に汲々とする石垣の姿や、クライマックスまんまと騙されてしまつた見事なミス・リーディングにも、確実な演出力が光る。強力無比なエンジンとシャープな足回り、スポーツカー並みの機動性と速力とを具へた、ダンプカーにも譬へられようか。エクセスからの要請か一本調子に明るい撮影のトーンは少々気になるが、2008年も松岡邦彦&今西守コンビには大いに期待させられる、アグレッシブな快作である。


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 「定食屋の若女将 やめて、義父さん!」(2004/製作:キティスタジオ/提供:Xces Film/脚本・監督:野上正義/企画:稲山悌二《エクセスフィルム》/制作:野上正義《キティスタジオ》/撮影:中本憲政/編集:田中修/助監督:城定秀夫/監督助手:三浦麻貴/撮影助手:溝口伊久江・大城真輔・新島克則/制作協力:柳田友貴/スチール:本田あきら/録音:シネキャビン/効果:梅沢身知子/現像:東映ラボ・テック/音楽:ピッコロ/フィルム:報映産業/出演:三月瞳・水原香菜恵・乱孝寿・前川勝典・牧村耕次・濱村彰利・YADANE・城定夫・野上正義)。照明は、jmdbその他には墓架冶郎―“ボッカチオ”から取つた変名か―とあるが、本篇にはそもそも照明のクレジットがない。出演者中、YADANEと城定夫は本篇クレジットのみで、牧村耕次がポスターには牧村耕治。
 下町の定食屋、屋号が呼称される場面も一回あつたのだが、ちやうどその時に後ろの親爺が大きなクシャミをしたので聞きそびれた、それはまあいい。店内には食事中の客(濱村)もゐるといふのに、大将の勝典(前川)は何やら大声で妻・志乃(三月)といがみ合ふと店を飛び出して行く。よく台詞が聞こえないのでディテールは覚束ないが、まあ今作の場合掛け合ひの小ネタが聞こえないのは苦しいにせよ、お話自体は頗る判り易いものゆゑ大勢に影響はあるまい。パートのたま(乱)は客に何かと過剰な世話を焼き、終には客の定食に手をつけようとして志乃にたしなめられる。例によつてエクセス主演女優の演技力に大きな期待は出来ない中、大ベテラン乱孝寿をコメディエンヌの飛び道具として、自由に暴れさせようといふ意図が看て取れる。勝典に続いて客も退席、そろそろ店を閉めようかとしたところに、流れ者(野上)が来店する。流れ者の固有名詞が呼称されることは終にないゆゑ、本稿に於いては便宜上“ノガミ”と仮称することとする。藪から棒に色気づいたたまが手洗ひで鏡を覗き込んでゐる隙に、ノガミは食ひ逃げ。その頃、勝典は浮気相手の風俗嬢・あけみ(水原)のマンションにゐた。勝典は定食屋は処分して、あけみと風俗店を始めるつもりでゐた。翌日勝典は戻らぬまゝ志乃とたま二人きりの店に、一本の電話がかゝつて来る。志乃の昔の恋人・大友(牧村)からであつた。今は貿易会社を経営してゐるといふ大友と再会した志乃は、図らずも心をときめかせる。
 夫婦の危機もあり、傾きかけた定食屋に現れた二人の来訪者。すつたもんだの末最終的には各々納まるべき鞘に納まり、店は活況を取り戻す、といふ定番の人情喜劇に概ね不足はない。とはいへ傑作とまでいふには些か以上に遠いのは、ノガミと大友、舞台に刺激を与へる二人のストレンジャーのうち、何れが柱となるのかが必ずしも明確ではない点。更には、大友に金を渡し別れた志乃の前に不意にノガミが現れる場面などはよく出来てゐるのだが、それ以外は概ね、一幕芝居の吉本新喜劇のやうに、銘々が黙つてゐても勝手に定食屋に来て呉れそこから話が展開するので、それぞれの交錯が平面的なものに止(とど)まり、立体的な劇中世界の奥行きあるいは深まりがあまり生まれて来ない点が挙げられようか。志乃は大友に会ひに店を空け、終にたま一人きりの店内。そこに再び訪れたノガミとの、合計年齢が凄まじくインフレする濡れ場―ギネス申請でもしてみてはどうか、今更だが―と、その後のすつかりソノ気になり回春した乱孝寿の厚いを最早通り越した超化粧には、矢張り暴発気味とはいへ決定力が溢れる。加へてそれを力技とはいへ、大団円で回収してみせたところは、娯楽映画の畳み際として全くお見事。
 ひとつ話の本筋からは全く横道ですらない上でなほかつ特筆すべきは、あけみと大友の絡み、に於ける撮影。二人をベッドの上に捉へた画から、不意にカメラが左上に動く。もののそこにはグラスが二つ並んでゐるのみで特に何某かがある訳ではなく、再びカメラは悪びれるでなく元の位置に戻る。「大先生かよ!」と心の中でツッコミを入れながら観てゐたところ、実際にクレジットの中に柳田友貴の名前があつて吃驚した。あの、まるでフェイントでもあるかのやうなカメラの動きには、我々が未だ誰一人辿り着き得てゐないだけで、実は何程かの深遠な意義があるのであらうか。多分、ねえよ。

 登場人物はその他、勝典が店に物件としての査定のため連れて来る、どう見ても撮影スタッフにしか見えない不動産屋、中本憲政か。城定夫は、ラスト賑はふ店内の、冒頭濱村彰利が座つてゐたのと同じ、最も見切れる席で飯を喰ふ男。他に同シーンに客は男が五人と、女が一人。更には大友逮捕のニュースを伝へる女子アナウンサーが出て来るが、“YADANE”とクレジットされる者が何れを指すのかは全く不明。
 それもそれとして一応心に残るのは、三月瞳のオッパイ。天然ものでないのが惜しいところではあるが、まるで今時の成年コミックにも出て来さうな威勢のよさである。とはいへ流石に詰め込み過ぎたか、乳首が赤道を遥か上方に昇つた、最早よく判らない位置にある。もう一人も標準的な耐用年数を既に遠く彼方に通り過ぎた乱孝寿なだけに、水原香菜恵のナチュラルは一際美しく輝く。


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 「変態穴覗き 草むらを嗅げ」(2007/製作:旦々舎/提供:オーピー映画/脚本・監督:山邦紀/撮影・照明:小山田勝治/撮影助手:邊母木伸治/照明助手:田中康文/助監督:横江宏樹・新居あゆみ/協力:丘尚輝/音楽:中空龍/出演:香咲美央・里見瑤子・吉岡睦雄・平川直大・風間今日子・荒木太郎)。
 夜の闇の中、パンティ・ストッキングに満悦する牛さんの着ぐるみを着た里見瑤子といふ、いきなりビートの効いた開巻。
 人気ピンク女優であつたゆり(香咲)は、脚本家の影中暗黒(荒木)と結婚し引退する。無防備なプロットにも思へてしまふのは、私が下衆の所為か。とはいへ暗黒の仕事は遅々と捗らず、経済的に窮乏した夫婦は庭木の葉を揚げた天婦羅ばかりを食す日々を送る。今回山邦紀は内角スレスレのシュートを、終に自分自身に向かつて投げ込んでみせるつもりか。そんなゆりを、ピンク仲間である監督の澄田勇吉(吉岡)や女優の堀川ミナ(風間)、結婚以前からゆりを半ば崇拝視する俳優の箱島笛男(平川)らは心配する。協力の丘尚輝は、撮影シーンに登場するカメラマン、黙して見切れるのみ。同じく現場に姿を見せる女助監督は、ほぼ間違ひなく新居あゆみか。大仰なサングラスで、顔は殆ど隠してゐる。
 古代アナトリア半島に栄えたリディア王国、リディア王カンダウレスは我が妻の美しさをひけらかしたくなり、側近ギュゲスに強要し王妃の裸身を覗き見させる。そのことに気付き、恥辱に震へた王妃はカンダウレスの暗殺をギュゲスに指示。暗殺後、ギュゲスがカンダウレスの妻を改めて娶りリディアの王となつた。といふヘロドトスの『歴史』(まんま登場する)の一節に、暗黒は感銘を受ける。暗黒はパンストを履かせただけのゆりの裸身を激賞する自らの姿に、カンダウレスを重ね合はせたのだ。暗黒は王妃にゆり、ギュゲスには箱島といふ配役を念頭に置き脚本を書き始める。箱島を家に招き、実際にゆりとの夫婦生活を覗き見させた暗黒はフと思ひ留まる。これでは、自分が箱島に暗殺されゆりを寝取られてしまふことになる。それは気に喰はない、といふ次第で。暗黒はギュゲス役には、牛さんの着ぐるみを着たレズビアンでパンストフェチのヘアメイク・潮路マリモ(里見)を想定し直して脚本を改稿する。牛さんの着ぐるみを着たレズビアンでパンストフェチ、そんな人物の登場が些かの疑問も抵抗も感じさせないといふのも、山邦紀映画ならではであらう、まこと稀有な作家である。
 暗黒の、右往左往しながらも脚本執筆の進展に伴ひ、徐々に渾然として行く脚本内の虚構と現実の暗黒とゆりとの生活。とはいへ、私見では山邦紀は最終的には実は冷徹な論理性を以て宗とする映画監督であるので、虚構と現実とを混濁させるつもりが今一つ混ざり切らず、濁り得ない。等々といつた感想になるのであらうか、などと思ひつつ観てゐたものであつたのだが。ところが、小倉名画座の音響がへべれけで、至るところで台詞がサッパリ聞こえん!飛躍の大きな展開の舵を取る、要所要所の台詞が悉く聞こえないとあつては、殆ど物語の中身も理解出来ぬ。おとなしくシャッポを脱ぐ、これでは感想も書けぬ。九月の番組予定の中に今作の名前は無かつたので、改めて十月以降の前田有楽旅情篇にて仕切り直しを図る所存である。

 私はのんけのピンクスであるが、同時に小屋特有のワンダーランド性も尊びたい。なので平素は、「映画館に映画を観に来る、そんなことは馬鹿でも出来る」、くらゐの心積もりではある。「ピンクの小屋に映画観に来るなんて馬鹿ぢやね?」といふ了見も一面からの良識として自分の中に留保しておきたいとは思ふが、流石にものには限度といふものがある。少々場内がやかましくとも、時には自らに火の粉が降りかかつて来ようとも、あまり尻の穴の小さなシネフィル然としたこれ見よがしな拒否反応や、そもそもの忌避を示したくはない。あくまで少々で、度が過ぎれば降りかかる火の粉に関しては容赦なく撃退したことも過去にはあつたが。色んな映画があり、色んな映画の観方がある。時には映画を観に来てなどゐない者まで含めて、色んな観客が居る。小屋といふものはさういふものであつて別に構はないとは思ふが、それにしても木戸銭を落としてゐる以上、最低限映画は一応観させて欲しい。ストーリーの理解もままならぬでは、幾ら何でも話にならぬ。これではこれからは台詞の一つや二つ聞こえずともさして構はぬであらう映画だけを選ぶか、あるいは根本的に考へねばなるまい。


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 「教育実習生 透けたブラウス」(2003/制作《オープニング・クレジットまま》:加藤映像工房/提供:オーピー映画/監督:加藤義一/脚本:岡輝男/撮影:創優和/照明:野田友行/編集:フィルム・クラフト/音楽:レインボー・サウンド/助監督:竹洞哲也/監督助手:今村昌平・宇野寛之/撮影助手:山口大輔/照明助手:深澤修司/タイトル:巨匠/出演:佐倉麻美・しのざきさとみ・酒井あずさ・流章一郎・丘尚輝・なかみつせいじ・JYUKITIROU・KYOSYOU・風間今日子・しらとまさひさ)。サード助監督が宇野寛之で撮影部セカンドが山口大輔といふのは、逆ぢやないか?
 念願叶つての母校での教育実習初日、真部位(漢字が全然判らん)女子大教育学部の安西桃子(佐倉)はいきなり寝坊してしまふ。慌ただしく身支度を済ませ飛び出す桃子は、一体この大事な一日に、どうして寝過ごしてしまつたりなんかしたのか。前日、母校に恩師・油谷満次郎(なかみつ)を訪ねた桃子は驚愕する。桃子が大学に通ふ四年の間に、共学であつた高校は男子校「池照男子学園」へと様変りしてゐたのだ。男子校に女の教育実習生はマズいといふ油谷に、桃子はスカートを自らたくし上げつつ卒業出来ぬと泣きつく。別に母校に拘らずとも、別の高校に行けばよいだけの話ではないか、などといふ至極妥当なツッコミはひとまづ控へよう。桃子はそもそも四年前に、矢張り卒業単位目当てで油谷に体を任せてゐた。同構図からカット変ると桃子の衣装を女子高生の制服に替へ、同じパートできのふのことから四年前への、二段構への回想が綺麗に決まる。関根和美に、加藤義一の爪の垢でも煎じて呑んで欲しい。
 前日の油谷との情事でクタクタになり、結果遅刻した桃子は再び驚かされる。実習の監督官として桃子を待ち受けてゐたのは油谷ではなく、高校時代から苦手だつたハイミスの科学教師・神崎真知子(しのざき)、油谷は交通事故で入院したとのこと。何のことはない、油谷は桃子と別れた後、今度は出会ひ系でゲットした人妻・山本慶子(酒井)とホテルで一戦交へ、帰途慶子に尺八を吹かれながら車を運転してゐたところ、ハンドル操作を誤り事故を仕出かしてゐた。といふ一幕を潔く駆け抜ける、酒井あずさの濡れ場要員ぶりには戦慄を禁じ得ない。さて措き、明白な敵意を剥き出しにする真知子に、桃子は三年Z組を受け持つことを厳命される。Z組は、問題児ばかりの学内のお荷物クラスであつた。桃子が戦々恐々Z組に入ると、御挨拶にもいきなり四人の生徒が雀卓を囲んでゐた。ハーフの二卵性、キクとイサム(JYUKITIROUとKYOSYOU)のロバート兄妹に、ロック好きの不良・星川清(流)。薄くなり始めた頭頂部を気にし何時も何かしらを被つてゐる、留年十年(大笑)の沢田正浩(丘)。留年十年の高校生役に丘尚輝、開き直つたカウンターを放つにもほどがある。そこに遅れて、代議士を父に持つ、自閉気味で出席日数も足りない梶原裕二(しらと)が現れる。教壇に立つ桃子に誰も関心を払はず早速崩壊したクラスに、桃子はヤケクソといつた風でもなく大胆奇抜な一計を案じる。再び自らスカートをたくし上げ、パンチラを披露するつもりだつたのだが。朝寝坊し慌てて飛び出して来た桃子は、何とノーパンであつた!目を丸くする一同、「イヤーン」とポップに赤面する桃子。ふざけた沢田が水鉄砲で桃子を撃つと、

 桃子のブラウスは透ける。

 馬鹿馬鹿し過ぎさの紙一重も超え、ここに至ると寧ろ鮮やかですらある。天才とまではいはぬが第六作にして、早くも加藤義一は渡邊元嗣の領域に手を届かせてみせたのか。加へて、間に桃子の対油谷戦、油谷の対慶子戦と二つ絡みも経てのことであるから結構遠く遡るが、開巻のバタバタした朝の様子の中に、桃子がパンティを履き忘れるといふ描写は実はキチンとなされてある。馬鹿馬鹿し過ぎさの為に、一手一手の論理的手続きを周到に積み重ねる。プログラム・ピクチャーといふ判り易過ぎるくらゐがちやうどいいともいへる娯楽映画の領域にあつて、かういふ加藤義一の姿勢は正しく至誠といへるのではなからうか。
 一方真知子は姦計を練る、Z組の生徒を―梶原を除き―全員退学させ、全校での大学進学率を上げる。そのことで学内を牛耳り、イケメン生徒ばかりを入学させ逆ハーレムを築かうといふのだ。まづ校内で喫煙してゐるところを捕まへ、キクとイサムを葬り去る。続けて沢田と星川の弁当にこれを混ぜろと、フラスコに入つた如何にも怪しげな薬品を梶原に渡す。梶原は一年の頃に万引きを揉み消して貰つて以来、真知子のいはば性奴隷の状態にあつた。早弁してゐた沢田と星川は豹変すると、授業中の教室で桃子を犯す。それが真知子の薬品の効果であり、教師といふ夢を諦める桃子と、桃子に訴へられた沢田と星川、一石で三鳥を落とすことを狙つた卑劣な計画であつた。ところが、良心の呵責とほのかな恋心とに屈し、梶原は桃子に真相を白状する。俄かに意を固くした桃子は、真知子への対抗意識も顕に、残つたZ組の生徒を全員卒業させることを誓ふ。部活動その他一芸に秀でた生徒には卒業が認められるといふ方針を盾に、桃子は高校時代自らも汗を流したチアリーディングに三人を誘ふ。男がチアリーディングかよと臍を曲げる沢田らではあつたが、眩しい桃子のチア姿にも心をくすぐられ、Z組はやがて団結して行く。
 とかいふ訳で、マチコ先生×スクールウォーズとでもいふべきお話ではあるのだが、惜しむらくは、既に語られてゐることでもあるがさういふメイン・プロットが漸く完成するのが、尺も折り返しを遠く通り過ぎた殆ど終盤に差しかゝつた地点であるといふ点。その為、桃子とZ組の生徒の学園生活の描写は、何れも断片的なものに終始する。とはいへこれが、細切れに止(とど)まる分カテゴリー上不可避な安普請にも然程阻まれることなく、桃子とZ組の生徒との交流の瑞々しさが純化されたまま残る、といふ逆説が成立してゐるといへなくもない点が面白いところ。それが何れも、たとへ紋切り型にステレオタイプに過ぎなくとも。何とも温かな肌触りの心地良さ、それこそが加藤義一映画の肝ではないか、改めてさう思はされた。かつての同級生で今は身重の妻を抱へる沢田はアルバイトをしなくてはならず、交通整理のバイトをしながらチアの動作を練習するカットや、特訓の成果を披露する当日、にも関らず四人揃はなくてはならない筈が三人しか居ない教室での沢田の姿には、役者としての丘尚輝に初めて真つ直ぐなエモーションを感じた。儂の映画の観方は、九州の醤油よりも甘いぞ。
 何だカンだとありつつ、新しい、だけれでも同時に変らない日常が幕を開けるラスト。再び透け、させられた桃子のブラウスの胸元をアップで抜いて「イヤーン」と幕を引くオーラスは、メイン・プロットの完成をさて措いたとて延々尺を費やし描いた一度目のブラウスが透けるまでが、構成として決して無駄ではなかつたのかとも、思はず錯覚させられる。鑑賞後の心持ちも全く爽やかな、青春ピンクの佳篇といへよう。

 風間今日子は、星川が憧れる女子大生。ポップ・センスの本格投手加藤義一にあつても、かき上げた髪をそよがせる風間今日子を憧れのマドンナとしてスローモーションで撮るといふのには、些か無理があつた。それと同じく佐倉麻美主演の前作で感じた濡れ場に際しての何ともいへぬ生々しいいやらしさは、今回は感じられず。それが映画の違ひなのか、フィルムとプロジェク太といふ上映方式の優劣によるものなのかは、ひとまづ決しかねる。
 劇中星川が好きなロックといふことで都合二度流れるバンド・サウンドは、確かクレジットにはなかつたやうな気がするが、Sheher Tonightの音源であると思はれる。他で全く見かけない星川役の流章一郎は、誰かの変名かとも思つたが、見覚えなく全く手も足も出なかつた。とはいへキクとイサム役の他二名とは明らかに異なり、何れにせよカメラの前に立つことに覚えがあるやうには見えた。


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 「濡れ続けた女 吸ひつく下半身」(2008/製作・配給:新東宝映画/監督:深町章/脚本:後藤大輔/企画:福俵満/撮影:清水正二/編集:酒井正次/助監督:佐藤吏/監督助手:金沢勇大/撮影助手:種市祐介/照明応援:広瀬寛巳/選曲:梅沢身知子/写真:晶/出演:里見瑤子・華沢レモン・友田真希・川瀬陽太・かわさきひろゆき)。写真の晶といふのは、ポスターでは“スチール■AKIRA”。
 「名も知らぬ、遠き島より」、「流れ寄る、椰子の実一つ」。川瀬陽太による、島崎藤村の「椰子の実」の朗読で開巻。
 ムームー姿に前時代的、よくいへばエキゾチックなメイクのテル(里見)は、靴と手帳のみを残し姿を消した男(一切登場せず)を想ひ自慰に溺れる。一方大東亜戦争末期、軍医少尉の寺田(川瀬)は、何処とも知れぬ海岸に打ち上げられる。海藻を採つてゐたテルが手をかざすと、気絶してゐた寺田は意識を取り戻す。そこに現れた衛兵伍長の山崎(かわさき)は、右足を大きく怪我してゐた。テルが海藻を巻くと止血には成功したが、山崎の右足は、既に壊死が始まつてゐた。ところが再びテルが山崎の右足に手をかざすや、不思議なことに傷は完治した。驚喜する山崎を寝室に残し、テルは海軍風のカレーライスを寺田に振舞ふ。その場で読心術と精神感応、更には念動力を披露したテルは、寺田に衝撃的な真実を伝へる。一方寝室に一人の山崎に、テルの娘・ミル(華沢)が接近する。
 これは為にする方便でも何でもなく、壮大なスケールの大河SFである。軍医であるといふ設定から、テルが見せる各種の特殊能力を寺田が然程拒否反応も示さずに受け容れられる、といふ巧みな構成を織り込みつつ、それにしても驚愕を禁じ得ない、テルの口から語られた真実とは。太陽を挟んで地球のちやうど反対側に、地球と全く同じやうな惑星が存在する。その星の名前が劇中呼称されることはないので、そちらの文明の方が進んでゐる点に敬意を表し、ここでは“真地球”と仮称する。真地球人は五十万年前に既に地球を訪れてゐたが、その時点での地球人はといへば、未だサルから毛の抜けかけたやうな存在だつた。その為太陽エネルギーを出力、互ひの海をいはば触媒に利用する時空回廊装置を海中深くに残し、真地球人は地球を後にする。寺田と山崎とは、その装置を通つて地球とは反対側の、但し地球時制では2008年の真地球に到達したといふのだ。
 寺田は、テルの家に手帳を見付ける。手帳には“平成二年”といふ見慣れぬ元号と、矢張り「椰子の実」の一篇が書き記してあつた。平成には首を傾げながらも、寺田は自分達の他に、真地球に漂着した者の存在を感じる。テルは寺田に、真地球自体に関する絶望的な事実を告げる。人口が1/3に激減した大戦終結後、真地球人は遺伝形質を操作して自らの生殖能力に手を加へる。その結果真地球人は各種の特殊能力を手にしたが、やがて徐々に真地球人には女しか生まれなくなり、今では全く男は生まれなくなつた。テルが十八年前、回廊装置を通つて真地球に現れた男との間に儲けたのがミルである。テルは男を愛するが、男は地球に残して来た妻を忘れられず、真地球に初めて雪が降つたある冬の朝、手帳と靴だけを残し再び海中の回廊装置に姿を消す。テルは語る、恐らく、ミルらが最後の世代になるであらう。進んだ文明を有しながら、女ばかりの、滅び行く種族。若いミルはそんな母星に見切りをつけ、山崎の郷愁の力も借り、地球に脱出しようと試みる。
 二月末エクセス神野組でのピンク映画デビュー、五月オーピー池島組を経て、前二作とは異なり助演ながら新東宝にも初参戦のAV界では当代人気熟女女優といふ友田真希は、寺田の妻・初江。出番があまりないことに加へ、向かうに回すは里見瑤子・華沢レモンといふ何れもピンク勢最強の実力派であることもあり、それほど強い印象は残さず。
 壮大な設定の中で、見事に鮮やかに交錯するそれぞれの情念。寺田は地球に残した初江を想ひ、山崎は万能の薬効を持つ真地球産海藻を利しての、立身出世の野心を燃やす。十八年前に現れ再び地球に姿を消した男を忘れられない母と、初めて見る男である山崎に若い欲望を滾らせるのと同時に、娘は未来を喪つた故郷を捨てる決意を固める。驚異の充実度で編まれたSF巨篇ではあつたのだが、残念ながら、敵は尺は六十分と初めから規定されたピンク映画。更に二年後の地球時制2010年真地球、地球に帰還を果たした山崎から時空回廊装置の存在を伝へ聞いた初江が、命からがら真地球に辿り着いたところで今作は唐突に幕を閉ぢてしまふ。絶滅を間近に見据ゑた真地球人、真地球で再会した寺田と初江、真地球に留まつたテル、そして地球に戻つた山崎と故郷を捨てたミル。更には手帳と靴の男。風呂敷が万全に拡がつたところまではいいものの、肝心のそれぞれの辿る運命の行く末は、清々しく一切描かれない。起承転結でいへば、どう見ても転部の入りで強制終了させられてしまつた風にしか受け取れない。ここは新東宝さんには、無理は承知で是が非とも続篇の製作をお願ひしたいところである。大河SFロマンの筈が気が付けば、久保新二と牧村耕次との珍演奇演合戦のコントに収束してゐた、などといふ箆棒な力技などといふのにも、明後日を向いた期待をしてみたりみなかつたり。
 今作の白眉は、手帳と靴の男を忘れられないテルが、寺田に縋りつく濡れ場。「いいの同情でも好奇心でも」、「ただシタいの、寂しいの堪らなく寂しいの!」と激情を爆発させるテルと、初江のことが脳裏をよぎりながらもテルを受け止めてしまふ寺田。二人の姿は超絶に情感豊かで素晴らしいの一言に尽きるが、残念ながら同時に炎のやうに残念なのは、ここで被さる劇伴が恐ろしくショボい点。すんでのところで、あまりにも大きな魚を釣り逃がしてしまつた、決定的な名場面たり得てゐたところなのだが。
 ところで一つ解せないのは、太陽エネルギーの干渉を受けてどうたらかうたらとかいふ説明で生じる時空回廊装置のタイム・ラグ・ルールが、手帳と靴の男には適用されてゐない点。地球に戻つた山崎とミルとが矢張り約六十年前時制に辿り着けてゐること、更に寺田を追つた初江が2010年の真地球に到達したところを見ると、時空回廊装置を挟んで真地球と地球との間には、約六十年の時差が概ね常に存在することになる。とするならば手帳と靴の男は、平成ではなく昭和初期の地球からやつて来たことにならなくてはならないのでは。続篇以降がもしも製作されるならば、その中で解消される疑問であるやも知れぬが。

 因みに寺田と山崎とが打ち上げられる、真地球海岸のロケ地は伊豆。建築家であつたといふ手帳と靴の男が建てたテルの住居は、ピンクでは御馴染みの花宴。そろそろ花宴ナンバーも、カウントし始めなくてはならないのか。別に数へなければならないことは些かもないが。


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 「エアロビ性感 むつちりなお尻」(2003/製作:関根プロダクション/提供:オーピー映画/監督:関根和美/脚本:関根和美・林真由美/撮影:倉本和比人/照明:野口素胖/助監督:林真由美/振り付け:永井祐子/音楽:ザ・リハビリテーションズ/編集:フィルムクラフト/録音:シネキャビン/撮影助手:前井一作/照明助手:小綿照雄/スチール:佐藤初太郎/現像:東映ラボ・テック/効果:東京スクリーンサービス/協力:アーバンアクターズ・フェイムステージ・《有》アトラクターズ/出演:中渡実果・佐々木基子・一の瀬ねね・吉田祐健・中村拓・斉藤秀康・江藤大我《友情出演》・森本浩)。カメオ特記はないまゝに、江藤大我まで全員ポスター記載あり。
 OLの相川留美(中渡)は仕事上犯した数々のミスを、まるで悪びれるでもなく公園の橋の上で不貞腐れる。すると、いきなり背後から留美に抱きつく男(斉藤)が。斉藤秀康は、エンド・クレジットには“公園の男”とあるが、相川といふ留美の苗字を呼ぶ点から、会社の同僚か。幾ら何でも公園に佇むOLに男が脊髄で折り返して抱きつくでは、ピンク映画のオープニング・シークエンスにしてもあんまりである。どういふことかといふと留美は、フェロモンを過剰放出し男に我を忘れさせてしまふ特異体質の持ち主であつたのだ。ヒトフェロモンはとりあへず未だ確認されてゐないとかいふ以前に、言葉は返るがどの道ピンク映画。放つておいたとて、主演女優はヤッてヤッてヤリ倒すのが相場とも半ば決まつてゐる。後にも折に触れ繰り返されるが、留美の特異体質設定は、然程を通り越して殆ど有効に機能してゐる訳でもない。留美が公園の男を投げ飛ばし撃退したところへ、伯父で実業家の井沼聡(森本)から電話がかゝつて来る。留美が井沼の紹介で入つた今の会社への愚痴を投げやりに零すと、井沼はそれならばと留美にアルバイトを持ちかける。ダンス・スタジオ「スターダスト」、レッスン生は全て返した後、オーナーの星野明美(佐々木)とコーチの北見英雄(中村)が体を重ねる。そこに忍び込み勝手に踊つてゐた留美は、営みを中断し駆けつけた二人に見つかると別居中の人妻と素性を偽り、強引に入会を求める。明美と北見の絡み中、出し抜けに流れ始めるユーロビートが実は劇伴ではなく留美がスタジオで流してゐた音楽で、そのことから二人は闖入者の存在を察知する。といふギャグは企図としては面白いのだが、録音レベルが全く劇伴にしか聞こえず、些か判り辛い。
 配役残り、一の瀬ねねは留美と同じクラスの人妻・横井恭子。北見を秘かにでなく明確に狙ひ、フェロモンにやられた北見が留美の方を向いてゐるのが面白くない。副コーチといふ権限を傘に着、何かと留美に邪険にする。吉田祐健は同じく八百屋主人の佐藤英明。来(きた)るエアロビ大会に備へて、留美は恭子・佐藤とチームを組む格好に。ほかにスターダストのファースト・カットに於いて階段で留美と擦れ違ふ若い女と、皆でレッスンを受けるカットにエアロビ女が計四名見切れる、内一人明確に顔を抜かれるのが永井祐子か?
 留美は井沼の命を受けてスターダストに潜入したものの、気がつけばそんなアンナーカバー譚はまるで忘れ去られてしまつたかのやうに、何時の間にか映画は北見を巡る他愛もないラブコメに特化してゐたりなんかする。北見を軸に留美が争ふのは明美と恭子と、実はもう一人。オチの落とし方やいい塩梅にいい加減な留美の特異体質設定といひ、基本線としてはコメディの筈にしては、明美と北見の間の因縁や、終盤の留美の北見への純愛―調―物語は、妙にシリアスであつたりウェットであつたりもする。詰まるところは作劇の軸足は終始覚束ないまゝ終に定まらないのだが、そのやうな瑣末は、最早問題ではない。今作兎にも角にも特筆すべきは、中渡実果&一の瀬ねねの超攻撃的ツートップ。ピンクスにも御馴染みの、爆乳ビーナス中渡実果(ex.望月ねね)に関してはいふに及ばず。鋭角な顔立ちに、絵に描いたやうな見事ないはゆる鉄砲乳を誇る一の瀬ねねも、重量感を漲らせつつソリッドな色気を炸裂させ、狂ほしくエクストリームに素晴らしい。そんな二人が、レオタードに身を包みムチムチと踊つてゐる御姿だけで百点満点。体が硬い設定の留美を、恭子が敵意を剥き出しにしシゴく件。濡れ場とまでは行かないがともにレオタードの中渡実果と一の瀬ねねが、何だかんだとどうでもよく戯れるシークエンスの麗しさは、最早筆舌に尽くし難い。一体、これ以上映画に何が必要だといふのか。天照大御神が再び岩戸に隠れたならば、扉に今作を映写すればよい。ただひとつ気になるのは、濡れ場に入ると倉本和比人が変にアングルを狙ひ過ぎる御節介。下手な調理は加へずに、素材を活かした素直な料理法を心掛けて欲しかつた。更に贅沢をいへば、妄想ネタでも夢オチでもこの際何でも文句はいはないので、留美と恭子の百合の花香る絡みも見たかつたところではある。劇映画としては壊れる以前にそもそも体を為してゐないが、それやこれやは一切さて措き、桃色鮮やかな一点突破のクロスカウンターにKO必至の快作。それでゐて単なるエロ映画ではなく―別にそれはそれでも構はないが―、所々の生暖かい緩さは正しく関根和美映画。そんな辺りも、ファンにとつては嬉しいところである、それは果たして褒めてゐるのか貶してゐるのか。

 冒頭留美が井沼からの電話を受け取る背景には、投げ飛ばされ大の字の公園の男が。“(友情出演)”と名前の後に特記される江藤大我は、そこに通りすがり倒れた公園の男を覗き込む男。特にこの人も留美のフェロモンにやられてのけるでなく、純ッ粋に通りすがり覗き込む姿が見切れるのみ。それだけの役で一々律儀にポスターに名前が載るといふのもある意味凄い、何処の大スターだ。


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