真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「ハレンチ・ファミリー 寝ワザで一発」(2002/製作・配給:国映株式会社・新東宝映画株式会社/製作協力:Vシアター/監督:女池充/脚本:西田直子/企画:朝倉大介/プロデューサー:衣川仲人・森田一人・増子恭一/撮影:伊藤寛/録音:小南鈴之介/編集:金子尚樹/助監督:大西裕/制作:島田剛/音楽:クラウジオ石川 みさ りえ《♡》/挿入曲:“Imperador do samba”Vo.ちなみ Fl.なおこ Per.クラウジオ/監督助手:躰中洋蔵/撮影助手:鏡早智・溝口伊久江・中島美緒/照明助手:迎修輔/編集助手:蛭田智子/制作助手:山川邦顕/スチール:岩田治樹/タイミング:安斎公一/タイトル:道川昭/現像:東映化学/録音スタジオ:シネマンブレイン/リーレコ:日映録音/協力:朝生賀子・石川二郎・伊藤一平・今岡信治・上井勉・江木俊彦・榎本敏郎・甲斐亜咲子・岡田靖広・岡田桃子・岡田杏子・片良あゆみ・金島智巳・小泉剛・駒木綾子・境あかり・坂本礼・田尻裕司・大橋大輔・浜野一男・星野諭生・星野真理・保土田靖・Mighty・松本唯史・森角威之・矢船陽介・山田まり・山本明佳・エスペトブラジル・ホテルアルパ・フィルムクラフト・レジェンドピクチャーズ/ビデオ版挿入曲:“Anjo Boonhan”byCLAUDIO & VIVA!YOSHIKOS/出演:絹田良美・今野順貴・佐野和宏・水原香菜恵・本多菊次朗・江端英久・佐々木基子・石川裕一・リンコーン ヌーネス・マリア ホドリゲス・山本草介)。
 大人が生徒の、水泳教室風景。インストラクターは渋谷美樹(水原)と、美樹とは不倫の仲にある所帯持ちの丹波(本多)。水原香菜恵と絹田良美・佐野和宏のみクレジットした上で、一同を驚かせる大きな水音をたて、巨漢の女がプールに飛び込んで来る。プカリと尻だけ浮かせた百貫が、表を向いてビデオ題「くひこむ水着 ~インストラクターの女~」でのタイトル・イン。因みに、水原香菜恵がReebokの競泳水着を殊更喰ひ込ませるシークエンスが、設けられる訳では特にない。
 巨漢女の正体は、美樹の厚意で泳がせて貰つてゐた友人の“ぶーやん”こと本名藤森昌(絹田)。嫁に子供が出来た、にも関らず関係に執着する丹波と、半ば以上に見切りをつけた美樹の拗れた情事を経て、警備員のぶーやんがその日から新シフトで勤務するオフィスビル。異変に気づいたぶーやんが踏み込んだ一室には、キャップとか鉄マスクで顔を隠した佐野和宏が。ぶーやんが佐野を捕らへようとすると、後頭部にサッカーボールが飛んで来て「お父さん逃げて!」。まさか連れて来たのか勝手について来たのか、息子・旭(今野)の健気な懇願に負け、人に教へられるレベルの柔道を活かした背負ひ投げでほぼほぼ仕留めながら、ぶーやんは物取り目的で忍び込んでゐた大崎和美(佐野)を逃がす。
 配役残り、本職演出部の山本草介は、生徒不足―といふか旭一人―でロイヤリティーを払へぬ和美に、契約解除を通告する学習塾フランチャイザー。佐々木基子と石川裕一は、甲斐性なしの和美に匙を投げ家を出た―まだ―妻・涼子と、その間男。要は新東宝ごと国映がピンク撤退して久しい中、石川裕一なんて久し振りに見たな。玄関口の靴に母親が男を連れ込んでゐるのを察した旭は、帰宅した踵を返す。リンコーン ヌーネスとマリア ホドリゲスは、仕方なくぶーやん宅を訪ねた旭の度肝を抜く、ぶーやんの養親・カルロスとマリア。ぶーやん亡父の工場で働いてゐた二人が、親戚中から人情の紙風船を被弾したぶーやんを引き取つた縁。後半の火蓋を的確に切る江端英久は処女のぶーやんが重い、もとい想ひを寄せる、一緒に柔道を教へる大矢俊郎、現役時代は雑誌に載るクラスの選手。あと主に協力部からエキストラに大量動員、水泳教室の生徒要員と、フランチャイズ本部要員。ぶーやん宅にて出し抜けにオッ始まるサンバのカーニバル隊に、結婚式の式場要員、と更に子役二人。
 惜しまれ労はれつつ、第三十一回の今年で最後となるピンク大賞。最優秀作品賞と守屋史雄の男優賞を受賞した城定秀夫の「世界で一番美しいメス豚ちゃん」を観に行く前に、是非通つておきたかつた女池充2002年第一作、で国映大戦第十二戦。いふまでもなく、二作の共通項は主演女優が過積載。何処で拾つて来たのか、馬ならぬ豚の骨が三番手に潜り込む―エクセスは平然とビリング頭にも捻じ込んで来るけど―なり、稀に目を離した隙に既知の女優がオッソロシく目方を増す悲しみを通り越した惨劇はあれ、太つた女を積極的に好む、あるいは太つた女にしか勃たないよりニッチな層を攻めて来るほどの、市場の広がりはピンクには基本ない。ところで、今作自体の第十五回ピンク大賞に於ける戦果は、ベストテン第五位と監督賞に、佐野の男優賞。
 前半は諸々外堀を埋めるのと並行して、水原香菜恵と佐々木基子の濡れ場を思ひのほか十全に楽しませる。江端英久投入で尺を折り返し、満を持してぶーやんのデブい、もとい初心い恋路といふ本題に突入する構成は、量産型娯楽映画に誠実に取り組まないことで定評のある女池充にしては、女池充でなくとも綺麗に形になつてゐる。個人的に太るくらゐなら死んだ方がマシといふ鉄の人生観の持ち主ゆゑ、絹田良美に対してはピクリともクスリとも、琴線を爪弾かれはしない。それ、でも。美樹が練つた子供騙しの作戦案に従ひ、ぶーやんは美樹宅の押し入れに和美と潜む。丹波の介入で卓袱台が爆砕するどころか、大矢が美樹と恋に落ちかねない雰囲気に泣きだしたぶーやんに、和美が「行かなくていいの?」。ベッド・インを賭けての、ぶーやんと大矢の柔道勝負。劣勢のぶーやんに、和美が今度は「頑張れぶーやん、負けるな!」。仕事と事実上嫁は既に、家と息子も、失ふ予定の中年男。和美は自らも人生に負けさうで頑張らないといけないのに、自分で自分の背中を押すかのやうに「頑張れぶーやん、負けるな!」。佐野が撃ち抜くどストレートなエモーションが、素直に泣ける。小屋では幾多―には満たぬにせよ―のオッサン客を、感涙の海に沈めたにさうゐない。一度は入つたアルパから、手ぶらで出て来た大矢に和美が詰め寄るカットでは、今回唯一佐野らしいエッジも弾ける。大矢との対戦を前に、「頑張つて」とかいふ美樹にぶーやんが「ホントに頑張つていいの?」、「嘘つき」、「アタシ絶対勝つから」と叩き込む決意のジェット・ストリーム・アタックも鮮やかに、全部は観るなり見てゐない以上のあくまで推定だが、女池充の最高傑作ではないかしらんと普通に思へる一作。美樹の翻意に関しては丹波乱入に伴ふ、藪蛇気味な怪我の功名で片付けられるとして、最後にひとつ残らなくもない不足は、一人ぶーやんのみが慮る、親爺よりも大人びた旭の孤独に手が回らなかつた点。木に竹も接ぎ損なふスレッスレのところで辛うじて有効に機能する、サンバ隊挿んで歩いてゐた三人が消えた道のラスト・ショットが、絶望の苦さを匂はせなくもない余韻を残す。


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 「パンチラ病院 おとうさん大興奮!」(2018/制作:《有》大敬オフィス/提供:オーピー映画/音楽・脚本・監督:清水大敬/撮影:宮原かほり/照明:大久保礼司/録音:荒木俊一/助監督:永井卓爾/スチール:田中幹雄/撮影助手:西村翔/照明助手:加藤雄大・石塚光・西山金吉/演出助手:山梨太郎/制作進行:関本一樹/仕上げ:東映ラボ・テック/出演:海空花・水谷あおい・成宮いろは・さとう愛理・なかみつせいじ・清水大敬・山本宗介・萬歳翁・米山敬子・稲本恵・中村勝則・小坂敏夫・生方哲・周磨ッ波・大利根月男)。出演者中、米山敬子以降は本篇クレジットのみ。
 タイトル開巻、即ローションかましてヌッルヌルにしてテッカテカの絡みを轟然と飛び込ませるジャスティス。相ッ変らず繋ぎは雑で、一般映画なりVシネその他方面までは手が回らないものの、少なくともピンクに於いては宮原かほり(ex.宮原かおり)の初撮影部メイン作の割に至つて即物的な画ばかりながら、観客の劣情を刺激する、より直截にはチンコを勃たせることにいの一番に重きを置く清水大敬漢の姿勢、もしくは至誠が清々しい。岡野家での、東日興業社長・鮫島(清水)と元秘書であつた岡野明美(成宮)の、ラーメンで譬へるならば家系な逢瀬。事後、鮫島はその日が誕生日の明美に腕時計を贈る。ここで、その腕時計のブランドでどの程度の品かといふ辺りに―も―てんで目が利かないのが、この男の限界。一方、明美の夫で係長の武男(なかみつ)以下、山口裕子(海空)と名なしの社員要員(中村勝則・生方哲・周磨ッ波・大利根月男)が普通に勤務中の東日興業。暴君の鮫島が帰社するや、一同は脊髄で折り返して恐々とする。鮫島に煙草を買ひに行かされる武男に、裕子が代りに買つて来る助け舟を出す一幕と、武男の娘・美由紀(水谷)と音楽部OBのウェーイな彼氏・玉城(山本)の一戦を経て、鮫島に厳命された明美へのケーキを提げ呆然と歩く武男は萬歳翁が運転する車に撥ねられ、井上病院に担ぎ込まれる。意識を取り戻した武男は、看護師の金山弘美(海空花の二役)が裕子と瓜二つであるのに続き、清掃員の並木隆(清水大敬の二役)ら院内関係者が―ほぼほぼ―ことごとく周囲の誰かしらとソックリであるのに、一々清水大敬一流の、俳優部に自身と同等の熱量と圧力を求めるエキセントリックな演技指導に従ひ、オーバーアクト通り越して狂騒的に驚愕する。
 配役残り山本宗介の二役目は、専門不詳の医師・上田正志。唯一といふか唯二人武男と初対面となる米山敬子と稲本恵は看護師で、上田の指揮でシューベルトの「野ばら」を歌ふ井上病院合唱部。成宮いろはの二役目は並木の妻で警備員の制服を着てゐる癖に、浴室の掃除なんかもしてゐたりする、挙句運動した汗を流しに来た武男のお背中を流すどころかヌイて呉れさへする玲子。普通に考へるとムチャクチャとか破綻といつた言葉ですら片付かない出鱈目なシークエンスも、何故か案外すんなり通る清大映画の魔術。あるいは魔術的映画とかいふと、何だかグッと高尚な代物にでもなつたかのやうに勘違ひしかねない、しかねねえよ。水谷あおいの二役は、フォクスィーなおメガネを披露する以外は、大した働きも見せない神経外科の女医・内山。そしてさとう愛理が、鮫島の援交相手で二十年前武男を車で轢き殺さうとした吉川瞳と、二役目で弘美の姉・恵子。最後に小坂敏夫は、武男の後任係長に座るヒムセルフ。
 2018年はピンク三本に正月薔薇族と、竹洞哲也に次ぎ、関根和美や山内大輔と並ぶ重用を受けた清水大敬第二作。予告に目を通した時点でミッエミエの結末に、一欠片の捻りもなくベタ足で突つ込む無防備な作劇が、前述した、観てゐてなかみつせいじが気の毒になるほどのエキセントリック演出にさんざ搔き回された末に、終盤は煌びやかなほどのダサさが矢継ぎ早に爆裂する。ついでにダサさでいふと、サックスを持つ際の、全身しまむらで揃へました的な主演女優の私服もどうにかならんのか。閑話休題、手放しで讃辞に値するそこそこ複雑な四番手の捻じ込みやうと、実用的な質と圧倒的な量とでゴリゴリ攻めて来る濡れ場の迫力を除けば、素面の映画として世辞にも褒められた出来では全く以てない。尤も全く以てないにせよ、決して幸福とはいへなかつた人生を歩んだ草臥れたおとうさんが、自らに向けられた悪意の存在しない弘美曰くの“私達の世界”で、執拗通り越して偏執的なパンチラに垂涎する。評価するしないは兎も角、斯くもクソ以下の憂世に、せめてもの南風を吹かさうとする清水大敬の心意気、ないし時代認識は理解し得る。玉城に関して山宗にぞんざいな造形が与へられる点には大いに疑問も覚えたが、終に火を噴く仮借なき懲悪のカタルシスを思へば、百歩譲つて仕方がない。頑ななローアングルも強ひられ、晴れの初陣なのに宮原かほりはいはれた通りに撮つてゐるに過ぎない印象も覚えつつ、弘美と武男が「ときめいてますかー」とグルグル踊りだす、抜けた底が宇宙を一周して頭上から降つて来さうなカットにあつては精一杯の健闘を見せ、出し抜けに職を辞した裕子が出た屋上では、抜けるやうな広さを捉へる。何れも、あと数秒尺を割いてゐれば、折角の仕事がもう少し強いインパクトを残せたのではなからうかと、素人目に思へなくもないけれど。何はともあれこの題材で、他愛なくもないゴミ以下のメッセージを仰々しく実クレジットで大書する、悪い病気が鳴りを潜めてゐるだけで及第点。とかいつてしまふと逆に馬鹿にしてゐるやうな気もするが、今の、このタイミングでの清大を、清大の愚直なエモーションを当サイトは支持する。


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 「後家さんの乱れ帯 ウレシ汁が止まらない」(1997/企画・製作:フィルム ハウス/提供:Xces Film/脚本・監督:坂本太/企画:稲山悌二《エクセス・フィルム》/プロデューサー:伍代俊介/撮影:佐藤文男/照明:清水康利/助監督:羽生研司/監督助手:紀伊正志/製作担当:真弓学/撮影助手:佐藤琢也/照明助手:池田義郎/ヘアメイク:松本貴恵子/スチール:本田あきら/美術:ミサト工房/編集:金子尚樹《フィルム・クラフト》/録音:シネキャビン/効果:東京スクリーンサービス/現像:東映化学/出演:高橋みほ・青木こずえ・平賀勘一・林由美香・山本清彦・久須美欽一)。
 寄席感覚の三味が鳴り、狛犬から神社を舐めて「日本舞踊教授月影流宗家家元」の表札。一年前に家元であつた夫と死別した、家元代理の月影春美(高橋)が適当に舞ふ。ところで壁にかゝる亡夫・満の遺影は、浴衣の坂本太。隣室の物置部屋に潜んだ目下二人暮らしの義父・秀明(久須美)が、そんな春美の姿を覗くマジックミラーに、上手いこと秀明自身も映り込ませた画にタイトル・イン。タイトル明けはともに月影流の弟子である広田奈津子(林)と、結婚も見据ゑた金本幸作(山本)のカーセックス。ところが勃たない金本に、奈津子が原因の目星をつける含みを投げる。満からは月影を出ての再婚を促されなくもない春美が、頑なにそれを拒む定番の、あるいは在り来りな図式を如何にも図式的に成立させつつ、弟子で矢張り後家の杉村加代子(青木)には、満は久須美欽一十八番のウッハウハさで手をつける。漏れ聞こえる春美ワンマンショーの嬌声に、一旦必死に自制する秀明が、店でも開けるレベルで春美の下着を大量に抱へ込んでゐたりする、明確な意図を以て底を抜いたギャグに腹を抱へる。
 配役残り、「てな訳でひとつ宜しくお願ひします!」と絶妙なアバウトさで、軽快に尺の折り返しに飛び込んで来る平賀勘一は加代子の義兄・俊一。平勘が「てな訳でひとつ」と口火を切るカットが、アテ書きされたとしか思へない鮮やかさで完璧。
 ex.DMMに未見の残り弾が終になくなつた、坂本太1997年最終第三作。百年の歴史を誇る日本舞踊の流派を舞台に、互ひに忸怩たる恋情、といふかより直截には劣情を拗らせる後家と義父に、後家に岡惚れする馬鹿弟子と、もう一人の後家を絡める。濡れ場に突入すると兎も角、素のお芝居に際してはどうにもかうにも表情の乏しい正調エクセスライクな主演女優を擁し、今回坂本太が選択した戦略は、脇を硬軟自在の面子で固めてのコメディ路線。一応坂本太らしい心にもない能書として、青木こずえの決定力で「死んだ男に操を立ててどうするの?」と撃ち抜いた上で、「今生きてる自分の欲望に素直になりなさい」と堕落論的な真実を畳みかけもするものの、受ける相手が棒立ちの大根では所詮暖簾に腕押し。何故か師匠に心を残すゆゑ、金本が奈津子相手に勃たないとかいふ前半のへべれけな方便も清々しいが、草を生やすのはまだ早い。青木こずえと平賀勘一のアシストを受け、遂にフッ切れた春美は墓石に左手薬指の指輪を返し、自ら秀明に逆夜這ひ。締めの濡れ場を華々しく大完遂したかと思へば、躊躇しもせずにバレてのけるが何時の間にか坂本太の隣に、久須りんの遺影も並んでゐたりする衝ならぬ笑撃のラストには度肝を抜かれた。狙ひ澄ましたものか最早自暴自棄気味のカウンターなのかは知らないが、出し抜けな一発勝負に完全に意表を突かれ、完敗を認めるに如くはない。日本舞踊が主モチーフだけに、日本人の美意識に特徴的な無常観?然様に平板な牽強付会で、負け戦に油を注ぐか塩を塗つてどうする、単なる無造作な無体にさうゐない。

 この期に及んで反芻してみると、これ公開題からムチャクチャだ、杏里風にいふとアイ・キャント・ストップ・ウレシ汁。好き勝手に下手な鉄砲を打ててゐた、麗しき時代。


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 「団地妻 雨やどりの情事」(昭和52/製作:日活株式会社/監督:西村昭五郎/脚本:久保田圭司/プロデューサー:栗林茂/撮影:森勝/照明:直井勝正/録音:高橋三郎/美術:徳田博/編集:堀田好倫/助監督:上垣保朗/色彩計測:関寿之/現像:東洋現像所/製作担当者:田中雅夫/協力:ホテル 目黒エンペラー/出演:宮下順子・水城ゆう・花上晃・鶴岡修・堀勉・高橋明・本田博太郎・日夏レイ・原田千枝子・田畑善彦・伊豆見英輔・小見山玉樹・賀川修嗣・田中加奈子・畑昇)。出演者中、伊豆見英輔以降は本篇クレジットのみ。クレジットはスッ飛ばす配給に関しては、事実上“提供:Xces Film”。
 諸々開いた傘を俯瞰で捉へる雨の雑踏に、サクッとタイトル開巻。クレジット明け、スーパーに於ける主婦連の他愛ない噂話が、電光石火の速攻で藪蛇なエキサイトメントを叩き込む。曰く小見山さんの御主人がパイプカットしただの、再び小見山さんの御主人が鬘だだのと、西村昭五郎と久保田圭司、どちらの仕業なのかはさて措き、何でまた斯くも出し抜けに小見山玉樹をフィーチャーするのか。何れにせよ、量産型娯楽映画ならではの豊潤さを強く高く尊びたい。
 団地妻の恩田千秋(宮下)が、エビフライにする海老を十尾買つて帰る。もしかすると俳優部後ろ二人が、千秋に二人ゐる子供(兄妹)の子役?ある夜、例によつて酔つて遅く帰宅した夫・肇(花上)から気紛れに求められつつ、小用を訴へた娘を手洗ひに連れて行つてゐる隙に、肇は寝てしまふ。千曲高校のクラス会に出席した千秋は、ザックザク言ひ寄つて来る同窓生・園部(本田)の勢ひに折れ、待ち合はせに指定された喫茶店「パール」に。ところが人を誘つておきながら園部に不義理を喰らつた千秋が、さりとて真直ぐ団地に帰る気にもなれず。漫然とぶらぶらしてゐたところ、街は何時しか雨。水をひつかけられたキャデラックから慌てて降りて来た北上準一ことジュン(堀)と、千秋はミーツする。因みに今なほ現役の堀勉が、ex.ミスタースリムカンパニー、中根徹も在籍してた時期があるんだ。
 配役残り日夏レイと原田千枝子は、軽く台詞も与へられる千秋の同窓生・敏子と光枝。ある意味満を持して登場する小見山玉樹が、園部の詫びの電話を千秋に繋ぐ「パール」のウェイター。千秋には高級外車所有の富裕層を偽るジュンの本職は、高橋明が工場長の修理工場工員。高橋明の、トゥー・ワイルドなボス役の安定感。登場するなり高橋明が誰かを怒鳴りつけるか殴り倒すロマポが、全体全部でどれだけあるのか。鶴岡修も工員で、ジュン兄貴分の相良。水城ゆうは、相良の彼女・マキ。賀川修嗣は、アイハラから預つたキャデラックと工場の売上金を盗み、指名手配されたジュンを最初に発見する制服警察官。田畑善彦と伊豆見英輔は、ジュンを追ふ背広刑事。特筆すべきが、順番的にいふと賀川修嗣と田畑善彦の間に、千秋とジュンが度々使ふレストランのウェイター役で、クレジットレスの影山英俊が飛び込んで来るサプライズ。刹那の出番で確かな存在感を撃ち抜く、ロマポ脇役部の二大巨頭―本当は庄司三郎/a.k.a.サブも入れて三大巨頭―たるコミタマと影英が、ともにウェイター役で映画を掠めて行くのが側面的な今作最大の見所、本見所は正直知らん。
 ロマポが誇つた一大看板の「団地妻」シリーズを、ピンクは兎も角買取系との絡みで、全何本にカウントするのが正解なのか自力で指折り数へてみるのも直截に面倒臭い、西村昭五郎昭和52年第四作。偶さか出会つた女と若い男が、銘々虚飾に塗れた逢瀬を重ねる。千秋とジュンが目黒エンペラーで乳繰り合ふのと同時進行で、徐々に捜査の網が狭まる情け容赦ないカットバックは、終に二人が大絶賛エッサカホイサカする部屋が官憲に踏み込まれる、西村昭五郎らしいドライ且つ無体なラストに否応なく帰結する。終盤はそれなりにスリリングかドラマティックに盛り上がらなくもないものの、野暮つたくグジャグジャ惰弱に執心するジュンに千秋が危ない橋を渡つてまで入れ揚げるのが些か理解なり共感に難く、先述したコミタマと影英や高橋明、個々に気を吐く俳優部の奮闘が、関の山といつた感もなくはない。タイトル・インから何となく団地にパンしこそすれ、代り映えしない日常に鬱屈とする、人妻の寂寥なり焦燥ならば兎も角、そもそも事件らしい事件は千秋が出歩いた先で主に起こるのもあり、画一的もしくは人工的といつた、団地そのもの乃至団地性は限りなく稀薄ではある。今からしてみると途方もない贅沢にさへ思へかねない、専業主婦が在り来りな閉塞感を拗らせるのに、最終的には集合住宅も戸建も関係なからう。プログラムピクチャーにあつてフォーマットを否定する、難癖気味の与太を吹くやうだが、人間はそこまで図式に忠誠を誓へはしまい。ただもう一点素面で目を引いたのが、驚く勿れ序盤を優に通過した二十六分で漸く初オッパイを披露する、千秋と肇の風呂場夫婦生活。陰影も噛ませた上で暈しを構図に取り込んだ、何気に超絶のショットには激しく感心した。


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 「生抜き温泉芸者」(1997/製作・配給:大蔵映画/監督・原案:小林悟/脚本:伊藤清美/撮影:柳田友貴/照明:ICE T/編集:フィルムクラフト/音楽:アンサンブル J/助監督:堀禎一/スチール:大崎正浩/タイトル:ハセガワタイトル/効果:タムサウンド/録音:シネキャビン/現像:東映化学㈱/協力:浅草ロック座・上山田温泉 参見番/出演:上城唯・葉月螢・久保谷紅子・港雄一・坂入正三・河合純・牧村耕二/協力出演:薩摩剣八郎・高竜也・若林とめ・東中野酔狂連)。協力の参見番は1997年当時、浅草ロック座会長・齋藤智恵子が経営してゐた上山田温泉(長野県千曲市)の芸者置屋。
 またしても2016年に上野で上映してゐた割に、麗しの七色王冠開巻、全然弄らずにかけたのかな。本篇の火蓋は対面座位の要領で芸者を抱へた男が、足と尻だけで競争する御座敷芸。芸者は三本柱の雛子(上城)・ミツバ(葉月)・コヨミ(久保谷)に、客要員は東中野酔狂連。ほかに酔狂連を接待してゐると思しき牧村耕二まではいいとして、三味ともう一人馬鹿騒ぎの輪から少し離れ、ニコニコ酒だけ飲んでるのは若林とめと高竜也(ex.池田正一)?兎も角、参見番から結構箍の外れた本格的な大人数、芸者の大軍がゾッロゾロ出撃する画にタイトル・イン。公式サイトが繋がらないため、参見番が現存するか否かは不明。クレジット中は芸者の行列から、画は不意を突いて夏祭りにスイッチ。射的に興じる港雄一が、さりげなく見切れる。
 クレジット明けは久保谷紅子の濡れ場を、牧村耕二が介錯する。銘々の設定程度が関の山で、らしくもらしからずもなく物語が存在しないゆゑ、サクサク配役残り。港雄一は、リストラされたとかで当地に逗留する市川、元の役職は部長。河合純は、婚約指輪を一旦雛子の左手薬指に通しまでしたex.恋人・カズオ。長野で親爺の会社を継ぎ、三代続く芸者稼業に帰郷して身を投じた雛子と邂逅する。坂入正三は、ミツバの上客・モリヤ、煎餅屋。薩摩剣八郎は、ジャンケンに勝つても負けても雛子が脱ぐ、不条理な野球拳に戯れる何処ぞの社長。問題が、剣八郎を接待する側の三人組(男二人×女一人)。秘書(メガネの女)を連れる立場の真中に座る男が、何処ッからどう見ても中田新太郎にしか見えない件。
 ピンク映画前作に続きバラ売りex.DMMに新着した、薔薇族一本挿んで小林悟1997年最終第六作。大御大にどれだけ需要があるのかは知らないが、打撃戦に応じる覚悟で、配信されるなり見るんだぜ。川崎に移りソープ嬢に転身する、あへていへば“のみ”のコヨミは兎も角、縁談を破談にされた男と再会する雛子に、宿したモリヤの子を堕ろすミツバ。実は脛に派手な傷持つ市川まで含め、恐らく伊藤清美は盛り込まうとしたと思しきドラマの種は諸々なくもない、ものの。あれやこれやも何もかも、事もなげに等閑視してのけるのが小林悟。精々散発的な一幕一幕が、起承転結も満足に起動しないまゝ漫然と連ねられた果て。尺も四分の三を通過したタイミングで五分半火を噴く夏祭りパートが、劇映画とは殆ど別の領域へと今作を弾き飛ばす。上城唯は百歩譲つてまだしも、片肌脱いだ在りし日の齋藤智恵子が、二人上に乗つて団扇を振る山車を延々、より直截にはダラダラ追ふ一頻りは、記録映画といふほどの代物でさへなく、わざわざ35mmフィルムで撮影したホーム・ビデオくらゐにしか見えない。サカショーがヘドバンばりに天パを高速振動させるエクストリームなハモニカなり、上城唯の威勢のいい鉄砲乳といつた琴線の触れ処も絶無といふ訳では必ずしもないにせよ、映画丸ごと底を抜いた上で、雛子が市川がお勤めを終へるまでに、祖母の形見である三味線の上達を誓ふラスト。唐突に暗転、銀冠菊一斉打ちのそれはそれとして見事なショットに“完”を叩き込んだのちの容赦ない静寂は、ヒャズ・レフト・ザ・ビルディングとでもいはんばかりの、有無をいはせぬ正体不明の迫力を後に残す。

 新着記念に、久々もしくは改めての与太。当サイトが小林悟に“大御大”の尊称を冠するところの所以は、何時だつたか上野オークラの公式ブログが小川欽也に対して“御大”と称したのを目にし、小川如き若造と同じ御大扱ひでは小林悟に失礼だらうと思ひ、サモ・ハン・キンポーの大大哥に倣つて、御大に大をもうひとつ重ねたものである。小林悟と小川欽也といふと、実は四つしか生まれ年は違はないんだけど。


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 「熟女の誘惑 入れ食ひの宿」(2018/制作:OKプロモーション/提供:オーピー映画/監督:小川欽也/脚本:水谷一二三/撮影監督:創優和/録音:小林徹哉/編集:有馬潜/音楽:OK企画/助監督:加藤義一/監督助手:小関裕次郎/スチール:本田あきら/整音:ポストモダーン/仕上げ:東映ラボ・テック/お手伝ひ:鎌田一利/協力:東中野リズ子/出演:白木優子・原美織・福咲れん・櫻井拓也・岡田智宏・平川直大・姿良三・なかみつせいじ)。脚本の水谷一二三と出演者中姿良三は、小川欽也の変名。
 OPPカンパニー・ロゴとOKPクレジットに続いて、前作から使用するPRODUCTION I.Gロゴ風の“小川欽也監督作品”に、小川欽也が撮影本番を指示する「ヨーイ、サーッ!」―“サーッ”はスタートか―の音声が新たに入る。男の部屋での、同じ会社に勤める北村圭二(櫻井)と、十年上の彼女・会川芳子(白木)がお盛んに励む騎乗位で豪快にアバン突入、一緒にイッてタイトル・イン。裸映画はかうでなくてはといふ安定感が、何気に轟く。事後、北村はガツガツ結婚に逸る一方、勝手に齢の差を気に揉み芳子が二の足を踏む関係性を提示した上で、社長秘書に抜擢した芳子を、戯画的なチョビ髭が絵に描いたやうによく似合ふ社長の大川(なかみつ)は大いに気に入る。大川が芳子を伊豆の別荘に誘ひつつ、お抱へ運転手は子供が生まれて休暇中。誰か社内に心当たりを求められた芳子は、大学時代に自動車部でレース経験のある北村の名前を挙げる。
 配役残り、いまおかしんじ2017年第一作「感じるつちんこ ヤリ放題!」(脚本:守屋文雄/主演:涼川絢音)以来と、何時の間にか思ひのほか間が空いてゐた岡田智宏は、北村らが常連の和風スナック「みよし」の店主。役名は吉野とされるが、劇中“オジサン”としか呼称されない。平川直大は、北村の同僚・山下拓哉。トモヒーロー×ナオヒーローのダブルヒーローを、「みよし」から一歩も外に出さず展開の外堀埋めに徹しさせる贅沢起用。ところで「みよし」がロケーション的には、店内に竹洞哲也2018年第三作「人情フェロモン もち肌わしづかみ」(脚本:当方ボーカル=小松公典/主演:友田彩也香)のポスターが思ひきり目立つ、近年再び御馴染「リズ」。二度の出番が何れも玄関口の、何故か垂直に近い俯瞰で脳天からのみ抜かれる姿良三は、件の伊豆に大川が所有する別荘の別荘番。当然、別荘の物件は天下御免の大聖地たる白壁の宿「花宴」。原美織は、一行を追ひ駆けるかの如く花宴に現れる、大川の娘・朱美。一同の帰京後、オジサンをして“会社チャカチャカ娘”といはしめる、アクティブ通り越してアグレッシブな火種ぶりを発揮する福咲れんは、社内有望株の北村を狙ふ塚本ヤヨイ。改めて女優部の戦歴を整理すると、竹洞哲也2017年第二作「熟女ヴァージン 揉まれて港町」(脚本:深澤浩子)に於ける、メガネにニット帽をボサッと合はせた、比類ない麗しき破壊力の印象が今なほ鮮烈に残る白木優子は、三年目五作目にして、初の非竹洞組。原美織も何時の間にか三年目で、こちらは四作目。残念ながら引退に伴ふラストピンクとなる福咲れん(ex.大塚れん)もこれまた三年目で、この人は七作目。引退含め移り変りの一見激しい本職AV畑からも、案外継戦する傾向が見られなくもないのは心強い。下手な鉄砲を途方もない数撃ち尽くすのが、量産型娯楽映画の心意気、量も質。
 主演女優の去就に六十分でケリをつけてゐながら、そこから温存した朝倉ことみの濡れ場を無理から捻じ込み、見事卓袱台を引つ繰り返す前々作「昇天の代償 あなたのゐない夜」(2016/主演:広瀬奈々美)にあつては強ひて勘繰れば。本篇六十分の前後に、セルフかプチなドキュメンタリー・パートを設けて尺を埋める。伊豆を小川欽也で挟む驚天動地の構成を大爆裂させる、前作「湯けむりおつぱい注意報」(2017/主演:篠田ゆう)では限りなく明示的に。決して窺へなくもなかつた、ロマポばりに長くなつたデジタル時代のフォーマットに対する反旗を今回は完ッ全に排した、年一本ペースを採用した純粋伊豆映画第八作。
 北村との交際をぐずぐず拗らせる芳子に、大川が鼻の下を伸ばす三角関係が、朱実登場とヤヨイ襲来によつて四角どころか五角関係にあれよあれよと縺れて行く物語は、今上御大の縁起物だからと徒に有難がらずとも、弟子筋で基本パッとしない竹洞哲也に爪の垢を頓服させたくなる程度には、普通に出来てゐて飽きずに見させる。女の方からホイホイ寄つて来る、おまけに仕事上も出世頭の男主人公が櫻井拓也といふのが如何せん柄でない、といふ初歩的にして拭ひ去り難い疑問さへ呑み込むならば。しかも汎用性すら高い、現代ピンクが誇る男前の至宝・山宗こと山本宗介がゐるではないか。
 裸映画的には年齢的にもオッパイの大きさも綺麗にばらけた華々しい三本柱を擁し、完遂率の高い濡れ場を乱打する始終は素晴らしく見応へがある。花宴にて大川父娘が芳子と北村を挟撃する格好の、二つの絡みが並走する中盤の見せ場もさることながら、当サイトが注目したいのは、雨の夜ヤヨイがアポなしで北村宅に押しかけ、ザックザク膳を据ゑる一幕。雨に濡れた衣服を乾かせて欲しいとサクサク脱ぎ始めたヤヨイは、北村に寒いゆゑ体を擦るやう求める。お気づき頂けたであらうか、これは即ち。暑いのを方便に年増女がザックザク脱ぎ始める、得意とするへべれけなイントロダクションを自ら裏返したアンサーシークエンスなのである!劇映画的にも、伊豆に行つて完全に帰つて来たものかと一旦思はせておいて、締めの濡れ場を大体一時間で大完遂したのちに、急展開が十字に火花を散らし目まぐるしく飛び交ふ怒涛の一大ラッシュを経ての、再突入した伊豆で大団円を謳ひ上げる貪欲かつ、加速したプログレッシブ伊豆映画。先に触れたアンサーシークエンス含め、齢八十四にして、小川欽也は今なほ新しい扉の向かうに進まうとしてゐる、否案外軽快に進んでゐる。年間ベストに挙げてワーキャーするほどでは全くないにせよ、俺はその事実に胸が熱くなつた。今年の伊豆映画も、楽しみにしとります。


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ピンク映画の感想のインデックスです。
当該タイトルを踏んで頂ければ、別ウインドウで表示されます。

監督別五十音順に整理、同一監督内は製作順。
(製作年/V)は、正確にはピンクではなくVシネ。

小林悟
裂けた柔襞」(昭和62/買取系ロマンポルノ)
田口ゆかりの裏本番恥戯」(1989)
異常性告白 私に毛を下さい」(1989)
令嬢たちの狂乱 ダブル縄祭り」(1990/旧題:『団鬼六 令嬢縄責め』)
痴漢電車 乳房がゆれる」(1990)
ラスベガス狂乱 襲はれて」(1990)
痴漢電車 よせばいいのに」(1990)
奴隷女子大生 腰が柔らかくなるまで」(1991/旧題:『女子大生 奴隷志願』)
痴漢電車 乗つたら押して」(1991)
ONANIE 快感入学」(1991)
痴漢電車 スリと女と痴漢」(1991)
喪服妻 恥ぢさらしな襦袢」(1992/旧題:『団地妻 喪服のけぞる』)
制服娼婦」(1992)
女子大生 スカートの中」(1992)
痴漢電車 後ろから揉ませて」(1992)
不倫人妻 ただれた下半身」(1992/旧題:『若奥様 下半身熟女』)
内科室」(1992)
禁断スワップ 丸出し夫婦」(1992/旧題:『スワッピング 本番丸出し』)
ザ・ブラインドキャット」(1992/Vシネ)
通勤電車 快感フルコース」(1992)
ピンクセーラー 私に火をつけて」(1993)
痴漢電車 イケナイ遊び」(1993)
痴漢電車 ブルセラ隊摘発」(1994)
姉妹どんぶり ‐味くらべ‐」(1994/旧題:『強制わいせつ姉妹』)
スチュワーデス みだらな私生活」(1994)
痴漢電車 舌は許して」(1994)
痴漢電車 くひこみ調査隊」(1994)
復讐性犯罪 白濁レイプ」(1994)
淫乱民宿 おかみさんがイク!」(1994)
湯けむり温泉芸者 極上の腰使ひ」(1995/旧題:『好色温泉芸者 秘湯覗き』)
変態姉妹 ナマでお願ひ」(1995/旧題:『エッチな姉妹 出張逆ソープ』)
痴漢電車 お尻が疼く!」(1995/旧題:『痴漢電車 美乳押しつけ』)
女編集長 丸出し恥辱責め」(1995)
痴漢電車 とれたて純白汁」(1995/旧題:『痴漢電車 開き上手の女』)
色欲怪談 発情女いうれい」(1995)
ワイセツ母娘 欲情まみれ」(1995/旧題:『母と娘 女尻こすり合ひ』)
パイズリ熟女・裏責め」(1995)
十八歳・のぞいて開く」(1996)
痴漢と覗き 女課長の私生活」(1996)
痴漢電車 腰くだけ夢心地」(1996/旧題:『痴漢巨乳電車 ゆれてはさんで』)
縄の悦び 凌辱縛りあげ」(1996/旧題:『OL調教 いたぶる』)
小林ひとみ 男狂ひ有閑マダム」(1996)
巨乳ソープ 谷間でイつて!」(1996)
巨乳レイプ 強制パイズリ」(1997)
小林ひとみの快楽熟女とろける」(1997)
村上麗奈 極上けいれん妻」(1997/旧題:『村上麗奈 究極名器妻』)
エロ教師 ONANIEづくし」(1997)
生抜き温泉芸者」(1997)
痴漢チン入乱乳電車」(1998)
未亡人銭湯 奥まで洗つて」(1998)
樹海熟女狩り」(1998)
性懺悔 罪しちやつた」(1998)
白乳秘書 淫美なナマ足」(1998)
未亡人銭湯2 入口濡らして」(1999)
新人OL 部長のいたづら」(1999/国沢実との共同監督!?)
美容師三姉妹 乱れ髪くねり腰」(1999)
ねつちり女将の乱れ帯」(1999)
どすけべ女社長 未亡人の性欲」(2000)
未亡人女将 握つて食べて」(2000)
愛染恭子の人妻セールスレディ ~快楽の実演~」(2000)
うぶ肌の愛人」(2000)
ミニスカ教師 そそる脚線美」(2000)
欲しがる兄嫁」(2000)
別れさせ屋 失禁する人妻」(2001)
美人秘書 おしやぶり接待」(2001)
淫乱女房 下半身の甘い香り」(2001)
性犯罪ファイル 闇で泣く女たち」(2001)
巫女の美肌」(2001)
川奈まり子 桜貝の甘い水」(2002)

小林政広
一週間 愛欲日記」(2000)

小南敏也
密着指導 教へてあげる」(2021)

小山悟
ドM卒業 さよなら、ご主人様」(2015)
果てなき欲望 監禁シェアハウス」(2015)
痴漢電車 淫コースは夢いつぱい!」(2016)

近藤幸彦
女秘書の告白 果肉のしたゝり」(昭和51/ロマンポルノ)


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 「エロ教師 ONANIEづくし」(1997/製作・配給:大蔵映画/監督・脚本:小林悟/撮影:柳田友貴/照明:ICE T/編集:フィルムクラフト/助監督:堀禎一/スチール:佐藤初太郎/タイトル:ハセガワタイトル/録音:シネキャビン/現像:東映化学㈱/協力:若松劇場/出演:大倉由希恵・細川しのぶ・風間今日子・久須美欽一・坂入正三・河合純・樹かず・港雄一)。協力の若松劇場―頭に船橋がつくのが正式名称―は、同年一月大倉由希恵がデビューしたストリップ小屋、2013年八月末で閉館してゐる。
 マンション外観から軽く寄り、バスタブ内でシャワーを浴びる女の下半身。肉づきで判らぬでもないが、ティルトアップするとショートカットの細川しのぶ。正直、ネイティブな仏頂面が際立つ。電話に呼び出された三上―三上の漢字は当寸法―冴子(細川)が慌てて風呂から出ると、最近不登校の妹・瑠美を捜させてゐた恋人の金井から。他人に捜させた挙句家で湯なんか浴びてゐないで、お前も動けといふ脊髄で折り返した論難は細川しのぶのオッパイに免じてさて措くとして、瑠美が男とホテルの中に消えた目撃情報を聞くや冴子が体に巻いてゐたバスタオルを落とす、裸と映画の二兎を追つたポップな演出がそこはかとなく琴線を撫でる。毎朝一緒に家を出る瑠美が学校には行つてゐない事実を、担任の坂本加奈子(大倉)のアクシデンタルな家庭訪問で冴子は知る。遣り取りを交す加奈子と冴子を、カメラがまるでといふかまんまピンポン感覚で単調に行つたり来たりする、グルッと一周してアバンギャルドな回想を経て、傘の柄でグリグリする股間のアップに、加奈子は加奈子で瑠美を捜し奔走する画を繋げてタイトル・イン。腰回りだけで、傘の主が細川しのぶでも風間今日子でもないのも看て取れる。
 クレジット明けはホテル「スタークレセント」、瑠美(誰か判らんアテレコの風間今日子)が、一度きりしか呼称されない固有名詞を聞き取れなかつた港雄一に尺八を吹く。冴子と金井(河合)がスタクレに飛び込むも、一足違ひで瑠美らは離脱した後。泣きだして自身の妹に対する無関心を責める冴子に対し、金井が必ず捜すと慰めながらもそのまゝ大絶賛和姦に突入する大御大展開には、釣られたら負けを承知の上で、確かに姉がそんなだからと草を生やさざるを得ない。一方、こちらは真面目に生徒を捜す加奈子は、タギングだらけの公園のベンチで、ミッチ以下年金生活者の前川(久須美)に、リストラされ妻子にも逃げられたゆゑ、“リストラ”だとかどストレート且つあんまりな綽名で二人からは呼ばれる広沢。見るから怪しげな三人組と、一緒の瑠美を発見する。配役残り樹かずは、カジュアルver.の加奈子に声をかけるナンパ師。正しく第一声だけ聞かせて、カット跨ぐと即ベッド・インとかいふ清々しいまでの絡み要員。
 半ドレッド戦はそれでも見果てぬ遠い夢なのか、バラ売りex.DMMに新着した小林悟1997年第四作。2016年五月末、上野に旧題ママ―2000年新題が「高校教師 ゆびで漏れる雫」―で来てゐるため、ツートンOPかと思ひきや大蔵時代の王冠開巻に面喰ふ。この辺りの一見ランダムさに、何某かの法則性は果たしてあるのであらうか。
 開巻から飛ばす細川しのぶは、一濡れ場こなすと河合純ともども潔く退場。瑠美が何時の間にかあるいは何が何だか何となく更生するほかは、物語らしい物語も例によつて存在しない、ねえのかよ。肝心要の主演女優はといふと、瑠美の居場所と称して連れ込まれたラブホにて、まんまと三人組に輪姦されるや何はともあれもしくは何が何でも性的に点火。したものの樹かずにも満足出来ず、“ONANIEづくし”に及ぶといふ次第。常識的な映画文法の範疇では木に竹すら接ぎ損なふ、出し抜けなり乱雑な挿入にせよ、板の上での持ち芸であつたのか摩天楼と恐らく若松の舞台上での、手替へ品替へするワンマンショーは確かな完成度。足が正直長くはないものの、スレンダーな大倉由希恵がそこそこ以上に美人で、髪を纏めエレガントなおメガネで武装した女教師ver.のノーブルさと、案外ラフな普段着との対照も何気に光る。更に特筆したいのが、家でも社会でも、広沢の場合は会社から邪魔扱ひされ公園にたむろする、久須美欽一×港雄一×坂入正三の、大御大版ゲーターズとでもいふべき絶品の3ショット。久須りんに至つては、その両方に名前を連ねてゐる、偉い!何故か皆が皆グダグダ仲良く中折れしつつ、代る代る一人の女に群がるシークエンスは、輪姦のエクストリームとは全く別種の、穏やかなユーモアを惹起しなくもない。ハモニカの順番を巡り前川が広沢を突き飛ばすどさくさ紛れのギャグや、一旦上手く勃たず、再度加奈子にリベンジを挑む前川に広沢が声をかける、「頑張つて下さいよ」の援護射撃には微笑ましさをも覚える。ポリコレ?そんなもの小林悟を見るか観る時には、箱に入れて鍵をかけて棚の上にでも仕舞つて、仕舞つたことさへ忘れてしまへ。


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 「最新ソープテクニック」(1993/企画:メディアトップ/配給:新東宝映画/脚本・監督:上野俊哉/プロデューサー:佐藤靖/撮影:西川卓/照明:林信一/編集:金子編集室/メイク:岡本佳代子/録音:ニューメグロスタジオ/効果:協立音響/現像:東映化学/協力:佐藤俊喜・成瀬正行・勝山茂雄・堤栄一/出演:杉本笑・小林昭次・森みなみ・久須美欽一・辻丸耕平・桂圭一・山科薫・川上孝二)。協力の佐藤俊喜は、いはずと知れたサトウトシキの本名。「再会」が原題らしい。
 トルコ街を軽く舐めて、「三番のお客様お待たせ致しました」とソープランド「グランドキャニオン」のボーイ・井上ユージ(小林)が、馬でも鹿でもなく猿面を顔見せ。ロゴから怪しい恐らくVHS仕様、杉本笑つきのタイトル・イン。最新かどうかは兎も角、嬢が客にソープテクニックを施す接写が暫し。尺八に漏らす声で、客が久須美欽一であるのは看て取れるといふか聞いて取れる。ユージが客からの電話を受けてゐると店長役の平賀勘一が、クレジットレスで飛び込んで来るサプライズ。店長とは男と女の仲にある、あゆみ(森)に満足した久須りんと入れ違ひに、大野クミ(杉本)が渡り歩く三軒目の店にグラキャの敷居を跨ぐ。“規則で一通り”とかいふ店長のクミに対する底の抜けた面接を、覗いてみたユージは女がクミであるのに衝撃を受ける。
 配役残り、辻丸耕平はグラキャに草鞋を脱いだクミの初陣客。昭和63年デビューの本職AV男優部にしては単調な乳揉みを露呈した挙句、事後の態度も横柄なクソ野郎。山科薫は、クミに肛門性行を強要する今風にいふとモンスター客。一応、クミとユージの接着剤の役割を果たす。桂圭一と川上孝二が二人ともまづ間違ひなくクミの客なのが、どちらがどちらなのかには手も足も出せず。もしかするとコアなAVクラスタなら突破可能な障壁なのかも知れないが、そこまで出来なくとも流石に困らない気はする。
 上野俊哉デビュー作にして、本家新東宝の全七作と、大蔵が新版公開に際して他社の看板を強奪したプラスワンの「ソープテクニック」シリーズ栄えある第一作。栄え、ある?バラ売りex.DMMに大御大・小林悟まで新着、俄かに風雲急を告げて来た。
 臆面もなく不器用を自称し、人間関係を理由に就職したホテルを半年で辞めた青二才の特殊浴場従業員が、卒業を機に交際が自然消滅した高校時代の元カノと、新しく移つて来た嬢として再会する。寧ろ特筆すべきレベルで劇伴が画期的にダサく鳴り、見るからアダルトビデオ畑臭い男優部に逆(さか)向きに彩られる、のに加へ。ついでにかおまけに、女優部の枚数自体が基本より一枚少ない中でも、下手に映画を気取るなり拗らせるでなく、標準的な量産型裸映画の枠内でとりあへず見てゐられはする。クスリともピクリとも、面白味の見当たらない点さへさて措けば。
 中盤クミの方からユージを新居に誘ひ、そのまゝまさかの同棲生活に突入。ザックザク膳を据ゑて来るにも関らず、なほかつクミが客に抱かれてゐる間、激しくやきもきしてゐる癖ユージがクミをすんでまで夜這ひながら頑なに抱かない中盤は、遂に二人が―再び?―結ばれる締めの濡れ場に於いての、炸裂する極大のエモーションへの期待込みで、あるいは期待を繋ぐ程度には、唯一の見所らしい見所といへなくもない。尤も、あゆみが戯れにユージを喰らふカーセックロスを目撃したクミが、その場は素知らぬフリして切り抜ける。時点で恐ろしいことに、残り尺僅か二分、スリリングなバスケの試合みたいだ。現金にスッキリしてハンドルを握るユージの傍ら、クミは助手席で押し黙る帰途を経て、何時も通りのほゝんとグラキャに出勤するクミからカメラがドガーンと引く超俯瞰に、六十分に五分余す唐突さの暗転終を叩き込む。全体この時上野俊哉が何を描きたかつたのかサッパリ腑に落ちない、別の意味での衝撃のラストには予想外の球に飛んで来られて度肝を抜かれた。この物語を、如何に受け止めたものやら皆目判らない。といふのと同時に、ここから、新東宝の本流だけで足掛け四年計七作「ソープテクニック」シリーズが積み重ねられるに至つた、出発点たり得るくらゐ果たして今作が好評を博したのか。更なる、もしくはより根源的な不可思議が拭ひ難い。あるいは、さういふ馬鹿正直か杓子定規な考へ方がそもそもの間違ひで、特に何がどうといふ訳でなくとも、公開題中の一文言を共有するのみの緩やかにもほどがある連作が適当極まりなく展開されるのも、ピンクらしいの一言で片付ければ片付けてしまへるのであらうか。


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