真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「普通の女の子 性愛日記」(昭和60/製作:TWIN‐CAM JAPAN CORPORATION/配給:株式会社にっかつ/監督:佐野日出夫/脚本:白鳥洋一・佐野日出夫/企画:進藤貴美男/撮影:落合遼一・岩神卓郎・森井美光・岡沢勝美/照明:中村友彦・野村秀之・村松春雄/録音:佐伯晃・小池洋二/TD:山梨一寿/助監督:古野克己・田渕英夫・松田行二/VE:青木正治/ヘアー&メイク:黒川尚子/スタイリスト:滝和幸/MUSIC:佐耆弘徳・園田容子・中浜真二・篠崎勲/Vocal:林千珠子/車両:樋口博/編集:坂田翔/協力:ホテルL&L《柏インター》・THEPhenomenon Studio・小松越夫《劇団 火の鳥》・ルナティック・オフィースピエロ・ST.クレオール・ビデオスペース アルファー/出演:渡瀬ミク《新人》・早見瞳《新人》・庄司恵子・田口ゆかり・美沢映子・外山えりか・田口美穂・塩谷営理子・岡本忍・梅沢薫《友情出演》・杉田一夫・関けんじ・飛場英二・佐藤恒治・弾十郎・伊藤彰洋)。出演者中、田口ゆかりから岡本忍までと、飛場英二に弾十郎は本篇クレジットのみ。但し田口ゆかりに関しては、ポスターには正しく載る田口あゆみのよもやまさかありえない歴史的大誤爆。ビリング推定で弾十郎が、ポスターでは青山文彦か。それと正直、何にこんな大勢が関つてゐるのかてんで判らない。
 朝の室内をのんびり舐めて、“大沢直子 二十歳OL”(渡瀬)が起床。直子は置手紙に従ひ、出勤前にルームメイトの“庄野ユキ 十九歳 秘書専門学校一年生”―この二人にのみクレジットが入る―(早見)を起こして行く。出勤風景を軽く押さへた上で、霧深い森の中を、直子が素頓狂な扮装で走るイメージ。“一番悲しかつたこと”として高校時代、本間たかし(弾十郎=青山文彦?)の子供を中絶、高校も中退した過去を振り返つてタイトル・イン。本社の課長・三田村雄介(伊藤)との不倫が、同僚女子社員(美沢映子以下五名?岡本忍は男かも知れんけど)の密告により発覚した直子は、最終的には転勤を拒否し退職する。
 配役残り、だからゆかりでなく田口あゆみは、会話を聞くにユキの高校以前からの友人と思しき野々村紀子。ユキが紀子に紹介して貰ふバイトといふのが、客先に出張してオナニーを見せる斬新な風俗。多分当時五十一歳の梅沢薫が、その顧客の車椅子紳士・坂上?脱ぎもしない癖に妙にビリングが高い庄司恵子は、雄介の妻・洋子。杉田一夫は娘に説教を垂れるヒット・アンド・アウェイで直ぐに退場する、直子の父親・直道。またこの男が父親の威厳も貫禄にも何もかも欠き、そんな馬の骨を何でまたわざわざ連れて来たのか最も謎の多い一幕。佐藤恒治は、劇中直子が最後に出会ふメガネ・青山紀彦。タケシ役とされる関けんじが、一旦退職後一時期ホテトルをしてゐた直子の客なのか、ユキ周りの名前なのかは不明。飛場英二に関しては手も足も出ない、とんちピクルス似の、直子が勤めてゐた事業所の長・スガワラ?
 「夜のOL 舌なぶり」(昭和56/監督・脚本:宗豊/主演:朝霧友香?)で豪快に火蓋を切つた、エクセス提供東映ナウポルノ第四弾で「聖女地獄絵図」(昭和55/脚本:梅沢薫/主演:吉田さより=風祭ゆき)が―その内―来る予習にと、DMMに一本だけ入つてゐるのを見てみた佐野日出夫、jmdb準拠で最終第九作、因みに「聖女地獄絵図」は第六作。見てみた、ところが。ビデオからビスタにブローアップした買取系ロマポの無惨なファースト・カットに、脊髄反射で愕然とするや否や、あとは奈落の底に真つ逆様。壮絶な画質の火に油を注ぎ、全ての繋ぎがことごとくキレを欠き、当然グジャグジャに混濁する時制。時代のダサさの直撃をむざむざ被弾する、壊滅的に貧相な俳優部。不倫相手を刺したヒロインが、鉄道自殺―また御丁寧に傍迷惑な死に方だ―を制止された弾みで出会つた新しい彼氏と、ラブラブのハッピーエンド。だなどと、そもそも自堕落の極みの物語。ついでに、冗談みたいに馬鹿デカいボカシ。ホコテンでユキと軽く交錯した直子が、青山と連れ立つて歩くラスト。両手にケミカルな色のジュースを持つて、直子の下に駆け寄る青山の挙句―始終結構多用する―スローモーションのショットの、爆裂するダサさにも大概震へたが、田口あゆみを本クレで田口ゆかりに誤植する衝撃が、地獄巡りに近い一篇にある意味華麗に止めを刺す。どんな映画にも、何処かひとつチャーミングなところがある。淀川テーゼの信頼性さへ揺るがしかねない、詰まらなくすらない救ひやうのない面白くなさが、一種の破壊力にグルッと一周しかけるキナ臭い一作。佐野日出夫がどうかう以前に、石川江梨子名義による菊池エリの銀幕初陣「団地妻 W ONANIE」(昭和60/構成・監督:奥出哲雄)に触れた際にも思つたことだが、斯様な寒々しいのも通り越し糞々しい代物を小屋に木戸銭を落とした客に見せておいて、ロマポが終つたのもむべなるかなとこの期に改めて呆れ果てた次第。今更ないはずもがなをこの際敢て文字にしておくと、映画がビデオに対抗するのに、ビデオに寄せる戦略は根本的に間違つてゐた訳だ。


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 「女編集長 丸出し恥辱責め」(1995/製作・配給:大蔵映画/監督:小林悟/脚本:小林悟/原案:荻久保則男/撮影:柳田友貴/照明:真崎良人/編集:フィルム・クラフト/助監督:国沢実/スチール:佐藤初太郎/録音:シネキャビン/フィルム:AGFA/現像:東映化学/協力:新宿T・Sミュージック/出演:不二子・風間晶・白都翔一・坂入正三・荒木太郎・浜崎優・港雄一・田村ちなみ)。
 遠くの車がなかなか来ないロング、運転するのは主演女優。急ブレーキを踏むと個人的には「《淫》四十八手 巨乳責め」(1994/監督:川村真一/脚本:双美零と友松直之の筈/主演:青木こずえ)をいの一番に想起するブレイクビーツ起動、車外から運転席を撮つたスチールにタイトル・イン。寝てたところを呼び出した社員カメラマンの橘(白都)に、㈱快楽出版の女編集長・雅美(不二子)は轢き逃げて来た交通事故の事後対応を相談する。話は適当に纏めて―全然纏まつてないけど―絡み初戦。家主とのトラブルが原因だなどと、シネ・リーブル博多ばりにクソな理由で十五日に惜しまれつつ閉館した、新宿T・Sミュージックに公開当時所属の不二子。首から上は完全に時代の束縛に囚はれながらも、本当に綺麗な体をしてゐる。尤もお芝居の方は大御大も潔く匙を投げるレベルだつたのか、この時期由実由美を併用する吉行由実のアテレコ。翌日の快楽出版編集部、新聞に自身が仕出かした事件の記事が見当たらず、隣席の橘にVサインを送つた雅美は、何者かに社外に呼び出される。偶々その場に居合はせた、何時もより気持ち長いモジャモジャ頭が案外正方向にカッコいい無頼派カメラマン・横田(坂入)が、実は雅美の事故現場を激写。そこで横田が口を噤む引き換へに提示した条件といふのが、横田持ち込み企画のヘアヌード写真集出版とかいふ超展開。
 配役残り、トメの田村ちなみは、一応編集者ではあるもののお茶汲み扱ひのカオリ。荒木太郎と浜崎優は幾分台詞も与へられる編集者要員、部内にはもう三人見切れるも、その中に背格好だけでその人と知れる国沢実は含まれず。港雄一は快楽出版会長、雅美が編集長の座にゐるのは、要は愛人を編集長にしたといふ次第。風間晶は、横田の情婦・山本エリコ、こちらもこちらでこの人がヘアヌードのモデルにといふ寸法。万事が棹と蛤とに支配された、何て清々しい世界なんだ。
 元々さういふ志向があつたのかどうかは知らないが、昨今スピリチュアル方面に活路を見出した荻久保則男(a.k.a.まんたのりお)の原案を擁した、小林悟1995年全十二作中第六作、ピンク限定だと第四作。何某か秘めたものを感じさせるカオリは、横田企画から蚊帳の外に追ひやられ不貞る橘に急接近。橘の行きつけこと御馴染「RiZ」にて二三杯盃を交すや否や、出し抜けに「私のヘアヌード撮つて下さい」と切り出す超展開に次ぐ超展開。一方、遅々として進まぬ撮影に煮詰まる横田は、エリコの排尿姿に俄かに点火、お前は下元哲か。さうして出来上がつた写真集は、過激過ぎて問屋の取次拒否を喰らひ大爆死。生じた損害を補ふべく会長自ら下命した次なる企画が、何と会長と雅美のセックス写真集!超展開発超展開経由の魔展開にクラクラ来るのも必至な、紛ふことなき大御大仕事。一体全体、荻久保則男は如何なる原案を出したのか、あるいは、荻久保則男が出した原案は実際には如何なるものであつたのか。尤も、いはゆるお人形のやうに整つた顔立ちで正体不明の決定力を誇る田村ちなみまで女優部の粒はそれなりに揃つてゐるゆゑ、裸映画的にはひとまづ安定する。ところがとなると、締めの濡れ場は、馬鹿騒ぎから離れたカオリと橘がミサトのプール脇にて青姦。これといつた意味もなく中途半端に引くラスト・ショットは、女の乳尻が見えず裸映画を一円安くする。


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 「カルーセル麻紀 夜は私を濡らす」(昭和49/製作:日活株式会社/監督:西村昭五郎/脚本:大工原正泰/プロデューサー:海野義幸/撮影:山崎善弘/美術:横尾嘉良/録音:秋野能伸/照明:新川真/編集:辻井正則/助監督:飛河三義/色彩計測:村田米造/現像:東洋現像所/製作担当者:高橋信宏/音楽:奥沢散策/主題歌:「夜の花びら」 作詞:なかにし・礼 作曲:神保正明 唄:カルーセル麻紀 テイチク・レコード/出演:カルーセル麻紀・中島葵・宇南山宏・石津康彦・中平哲仟・浜口竜哉・小泉郁之助・五條博・叶今日子・島崎みどり・橘田良江・織田俊彦・溝口拳・谷文太・佐藤了一・賀川修嗣・小見山玉樹)。出演者中、浜口竜哉と五條博、島崎みどり以降は本篇クレジットのみ。クレジットはスッ飛ばす配給に関しては、事実上“提供:Xces Film”。
 開巻と同時に主題歌起動、劇中では彫師の父親に彫られたとされる、左太股の牡丹を抜いて速攻タイトル・イン、クレジットが流れるフォーマットの安定感。ところで牡丹に話を戻すと、ウィキペディアでは薔薇とされてゐるのは何でなんだ?
 山西友夫(石津)がちびちびウイスキーを舐めながら自堕落に競馬新聞を広げてゐると、キャバレー「レディーファースト」のホステス・源氏名ミサこと鮎川涼子(カルーセル)が帰宅する。完全に水商売の女とヒモにしか見えないこの二人、厳密にはヤクザ者の池谷に、山西が退職金でナシをつけ涼子を身受け。但し墨を入れた女との結婚を嫌つた父親からは勘当された、山西が職も家族も捨てた格好の内縁の夫婦といふ関係であつた。尤も目下実質的には矢張り見た目通りホステスとヒモに過ぎず、二人はすつかり煮詰まつてゐた。そんな最中、涼子はレディーファーストのショータイムにて自慢の喉を披露する形で、歌謡曲ヒットメーカーの仙波良文(宇南山)と出会ふ。山西が池谷(中平)に競馬で三十万の借金を膨らませる一方、涼子は仙波と何時の間にか男女の仲に。帰宅してみると窮した山西に衣類・貴金属を質に入れられてゐた涼子が愕然とするその頃、山西は通ふ小料理屋の看板娘・三崎玉代(中島)と寝てゐたりなんかする煌びやかなまでのろくでなしぶり。アパートを出た涼子は、サクサク仙波先生にマンションを持たせて貰ふ。
 その他配役織田俊彦は、この人もこの人で軽快な名司会を披露する「レディーファースト」マネージャー。a.k.a.の市村博でポスターには記載される、五條博は仙波のマネージャー・石野。浜口竜哉は、仙波とミーツした夜の涼子と、今でいふアフターで連れ込みに入る常連客の秋山。小泉郁之助は小料理屋の大将・三崎英吉、関係性を明確に示す台詞に欠き玉代との間柄がよく判らないが、嫁にしては齢が離れ過ぎてゐるゆゑ男手ひとつの父娘ではなからうか。濡れ場を担当するビリング推定で多分叶今日子が、涼子に心を移した仙波に邪険にされる、石野いはく一発屋。池谷が山西に唆させ誘き寄せた涼子の、ブルーフィルムを撮る件。辿り着ける最後は、色事師の一人に佐藤了一がゐたやうな気がする。
 前年性転換手術を受けたカルーセル麻紀をタイトルと当然ビリング頭に据ゑた、西村昭五郎昭和49年第四作。とはいふもののこれが、凡そスターの看板映画とは思へない酷い扱ひ。美貌と天賦の才を認められ、栄光―と愛―を掴みかけたイレズミ者のホステスに、粘着質にもほどがある昔の男がグジャグジャ付き纏ふ。新居を探し当てた山西と涼子が外出してゐる隙に、仙波先生が一発屋を選りに選つて涼子に宛がつた筈のマンションに連れ込んでゐたり、山西と玉代が乳繰り合ふところに英吉が怒鳴り込むポップな修羅場に、時間差で山西を訪ねた涼子も現れてみたりする御都合的か脇の甘い箇所は兎も角、如何にも量産型娯楽映画的な、定石通りの下衆展開を積み重ねた果ての、テンプレの斜め上を行くどうしやうもないバッドエンドはあまりにも、といふかあんまりな無体さが圧巻。「あんた、アタシの幸せメチャクチャにするのね!」、今時の若い娘にはさうさう形にし得まい大時代的な常套句をカルーセル麻紀が放つた瞬間、清々しいほどに胸糞悪い映画を観たと思はずグルッと一周して感動した。素気ないロングから再度主題歌を暫し聴かせ、何もない水面に何故か寄つたかと思ひきや、暗転とともにエンド・マークが叩き込まれるラスト・ショットは、意味のなさが無常観に繋がつてゐるのではとか錯覚しかねないハッタリ感がある意味完璧。全盛期とはいへ如何せん些かくどいカルーセル麻紀―見せらんないのかも知れないが、頼むから寝る時くらゐ化粧を落として呉れ―よりも、不完全無欠に惰弱な山西を演じ抜く石津康彦の完成されたダメ人間芝居が寧ろ心に残る、出来が屑なのではなくクズい物語を描いたクズ映画の秀作である。


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 「ドロドロの人妻たち -痴漢と不倫の果て-」(2004『三面記事の妻たち -痴漢・淫乱・不倫-』の2016年旧作改題版/製作:フィルム・ハウス/提供:Xces Film/脚本・監督:佐々木乃武良/企画:稲山悌二/プロデューサー:伍代俊介/撮影:鏡早智/照明:サブリナ/録音:シネキャビン/編集:フィルムクラフト/助監督:小泉剛/監督助手:福本明日香/撮影助手:橋本彩/照明助手:花木洋美/スタジオ協力:カプリ/タイトル:高橋タイトル/現像:東映ラボテック/出演:葉月蛍・竹本泰志・瀬戸恵子・牧村耕次・酒井あずさ・柳東史)。各話ごと冒頭にクレジットされる出演者中、葉月螢が本篇では略字。撮影助手の橋本彩子ではなく橋本彩は、本篇クレジットまゝ。あと照明部セカンドに続いてスチール:元永斉
 スタッフ・クレジットの後を追ふ形で、鼻歌で家事を切り上げ美奈子(葉月)登場。「今日はお友達の麻衣子と、フランス料理のランチバイキングを食べに行くんです」と、以降ああだかうだな心情に加へ見れば判る状況まで逐一といふか一々一から十まで音声情報にして呉れやがる、後の電車痴漢のシークエンスに際しては官能小説朗読の領域に突入するトゥー・マッチ・モノローグ超起動。殆ど、演出の労を放棄したやうにさへ映る。とまれそんな乃武良クレジット通過してタイトル・イン、俯瞰の陸橋を潜る電車ショットに“第一話 痴漢”。特に混み合つてもゐない車中、美奈子は手鏡での品定めを経た痴漢を被弾。慌てて途中の駅で降りた美奈子が、偶々その駅が降りる駅で再会した痴漢は、現在塾講師の清純女子高時代の恩師・梶山ハルヒコ(竹本)だつた。そもそも倦怠期を持て余してゐた美奈子はとかいふ次第で無人の教室戦に、結局約束をスッぽかされた、お友達の麻衣子(瀬戸)がプンスカして“第二話 淫乱”。雑貨屋を覘いて出て来た麻衣子のバッグに、私服警備員?の飯島益男(牧村)がネックレスを忍ばせる。麻衣子に接触した飯島は、どう見ても事務所には見えない普通のマンションの一室に連行。麻衣子を喰つたつもりの飯島が、最終的には麻衣子に喰はれるある意味男女の機微。第二話オーラス、完全に火の点いた状態で帰宅する麻衣子に、コインランドリーで捕獲される童顔の男は小泉剛。“第三話 不倫”、欲求不満をアンニュイに拗らせる智美(酒井)は、不倫相手の飯島を麻衣子に奪はれる。一旦出撃、雑貨屋表まで来て引き返しそこら辺の児童公園でぼんやり黄昏る智美に、美容ドリンクのセールスマン・津野田浩史(柳)が声をかける。
 今でいふといんらんな女神たち的な勝利一との合同デビュー企画、単独第八作の次に来る再びの坂本太・デビュー二作目の羽生研司との二度目のトリオ企画。三話オムニバス構成に、佐々木乃武良が一人で挑んだ単独全十作中第九作。一話と二話はそれなりにスマートに、二話と三話は結構力技でリンクさせ、とりあへずの統一感は醸成した上で、過剰モノローグが爆裂する素頓狂な第一話。瀬戸恵子の馬力で一点突破する、裸映画的には最もストレートな第二話。場面と台詞は陳腐なものばかりながら、メランコリックな劇伴と、階段坂中央の手摺越しの攻防戦に顕著な、そこそこ凝つた画作り。中身は薄いけれど闇雲に抒情的な第三話と、一人で三話各篇の毛色を綺麗に変へてみせた点は、ひとまづ買へる。尤も、共に陽性の裸映画であつた前二話に対し、第三話で藪蛇に舵を切つてしまつた分、実は一話から巧みに撒かれた伏線は評価に値しつつも、男優部が全員ニュースに登場する出し抜けなバッドエンドは、愕然と膝から崩れ落ちる酒井あずさの姿を追体験するといふよりは、それ以前の釈然としなさ、全体佐々木乃武良はこの時、観客のエモーションを何処に持つて行きたかつたのか?といふ漠然とした疑問を残す。土台が、これでは三面記事に載るのは妻たちではなく男ばかりではないかといふツッコミ処に関しては、エクセスにその手の野暮をいつてみても始まらない。


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 「溺れるふたり ふやけるほど愛して」(2016/製作:多呂プロ/提供:オーピー映画/監督・脚本・出演:荒木太郎/撮影・照明:飯岡聖英/編集:酒井正次/撮影助手:宮原かおり・榮穰・岡村浩代/演出:榎本敏郎/演出ヘルパー:冨田訓広/制作:佐藤選人・小林徹哉/メイク:ビューティ☆佐口/ポスター:本田あきら/協力:花道プロ/録音:シネキャビン/仕上げ:東映ラボ・テック株式会社/出演:神納花・松すみれ・塚田詩織・野村貴浩・津田篤・天才ナカムラスペシャル・冨田訓広/特別出演:平川直大・淡島小鞠・ほたる)。ポスターには記載のある音楽の首里音楽研究会が、本篇クレジットには確か見当たらない。
 立体ロゴとタイトル開巻、先にクレジットが流れる。天下りの工場長・長谷川修平(荒木)が、朝から枯れ果てて定時出社。派遣の工員には陰口を叩かれつつ、仕事も特に何するでもなく、新聞をスクラップしかけた長谷川は突如襲はれた激しい苦痛に悶絶。担ぎ込まれた病院で、あつさり手の施しやうのない末期癌を宣告される。とまれとりあへず職場復帰してみた長谷川に、工場の事務員・小山内美紀(神納)は、「死んでる時間の中にゐたくない」だ「このまゝ終りたくない」だとかありがちな方便で退職を申し出る。ここで神納花といふのが、今何処田中康文大蔵移籍の第三作「女真剣師 色仕掛け乱れ指」(2011)・第四作「感じる若妻の甘い蜜」(2012)以来の電撃ピンク復帰を遂げたex.管野しずか。妻・秋子(淡島)と死別した長谷川は、秋子の思ひ出も残る親が遺した家での、現在は弟・哲平(野村)夫婦との同居生活。弟嫁の千里(松)のみならず、哲平も兄の遺産に対する色目を隠さうともせず、長谷川は家に帰つても針の筵に座らされてゐた。万事に力尽きた長谷川は、飛び込まうかとした急流の畔で、傾(かぶ)いたホームレスの保志(天ナス)と出会ふ。何のためにも誰のためにもならないとこれまでの来し方を述懐する長谷川を、山﨑邦紀に気触れたのか保志は完全な芸術家と称揚する。
 配役残り塚田詩織は、保志が長谷川に引き合はせる謎の女・ジャネット。水上荘の法被を羽織り、寿限無をシャウトしながら賑々しく大登場。「イン・ザ・ムード」鳴り響く中、散発的に自慢の爆乳を最短距離で誇示する「オッパーイ!」を連呼する飛び道具的三番手にして、今作唯一の清涼剤。利いた風な口を叩いた割に、結局美紀はデリ嬢に。客(ナオヒーロー)と別れた美紀と、出社もしないで徘徊する長谷川は再会する。以降美紀を取り巻く男達が、順にコバテツが客、順番を前後して冨田訓広の二役目、ナオヒーローの二役目、津田篤があがりを吸ひ取るダニ。この中で津田篤のビリングが高いのは、絡みがあるから。こちらは加藤義一2014年第一作「制服日記 あどけない腰使ひ」(脚本:鎌田一利/主演:桜ここみ)以来のピンク帰還となるほたる(ex.葉月螢)は、偶さか平穏を取り戻した長谷川と縁側でかき氷を食べる、多分病人友達。その他、長谷川を揶揄する派遣行員は佐藤選人と冨田訓広に、台詞のないビューティ☆佐口と、背中しか見せないもう一人。あと、ぞんざいにステージ4を告知する医師のアフレコが、クレジットは完全に素通りしてゐるけれど岡田智弘に聞こえたのだが。塚田詩織に話を戻して、それどころでなくなる前に触れておくと、塚田詩織の豪快な起用法に加へ、松すみれに秋子の秘密を明かさせるカットでは、荒木太郎の演出も冴えてゐた。
 改めて後述するが荒木太郎が心配にさへ思へて来る、2016年第二作。再会した美紀を、長谷川は食事に誘ひ、食後にはソフトクリーム、締めにブランコに乗る。それだけの一日が楽しくて楽しくて仕方がなかつた長谷川は、コバテツと別れた美紀を、再び同じ店に誘ひ、ソフトクリーム経由のブランコと、かつて美紀が“死んでる時間”と吐き捨てた工場での仕事と変らない、同じことを繰り返す。脊髄反射で臍を曲げ、一旦別れを告げるも踵を返した美紀は長谷川に、「金出せよいい夢見させてやんぞ」と悪し様に詰め寄る。これは、これはこれで無力に立ち尽くすほかないダメ人間に、延髄斬りを叩き込む残酷な天使が降臨するドラマが起動したのかとときめきかけたのは、俺史上最大級空前の早とちり。風俗嬢に入れ揚げ全財産を貢いだ男は、弟嫁まで含め全てを失ひ最終的には野垂れ死に。女も女でちよろまかした金をダニに吸ひ取られるまでは兎も角、何故か男の後を追ふかのやうにみるみる消耗、挙句急流に身を投げるストップモーションがラスト・ショット。だ、などと。斯くも一欠片の救ひもないどうしやうもない物語を、荒木太郎は一体何を考へて撮つたのか。長谷川と美紀の造形なり関係性から火を見るよりも明らかなやうに、黒澤明「生きる」の翻案をチラシに謳ふまでもなく実際に取り組んでおきながら、全ての生命力を失ひ落下運動の如く死に至るのが、荒木太郎にとつての“生きる”といふことなのか?全然生きてねえよ。侘び寂びなんぞでは片付かぬ明らかに尋常ではない生命観に荒木太郎が心配にさへ思へて来る、2016年恐らく最大の問題作である。

 最後にもう一ツッコミ、為にする嘘ないしは事実誤認であるのかも知れないが、健康問題でも家族との不和でもなく、中高年―男性―自殺の原因第一位は経済的な要因ぢやろ。


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 「萌え盛るアイドル エクスタシーで犯れ!」(2016/製作:フリーク・アウト/提供:オーピー映画/監督:国沢実/脚本:高橋祐太/撮影・照明:海津真也/撮影助手:榮穰/照明助手:広瀬寛巳/録音:小林徹哉/助監督:夏湖・浅井康生/編集:酒井編集室/スチール:本田あきら/音楽:與語一平/整音:シネキャビン/タイトル:小関裕次郎/特殊造形:はきだめ造形/仕上げ:東映ラボ・テック/タイミング:石井良太/衣装協力:小平海美/協力:菊嶌稔章・《有》アシスト/出演:浅田結梨・夏目優希・桜木優希音・比佐仁・太三・豊川尚人・村田頼俊・生方哲・丘尚輝・鎌田一利・周摩要・電撃チャック・中村勝則、他大勢)。オープニングとエンディングとで主要キャストのビリングが異なる、オープニングはポスターと同じで太三がトメに来る。出演者中、五十音順で並べてみた生方哲以降は本篇クレジットのみ。
 のちにMC曰く“北半球に残された人類最後の正統派アイドル”なり“地上に舞ひ降りた天使”こと、アンダーグラウンドアイドル・熱音郁(浅田)のライブ開巻。曲は誰が書いたのか知らないが、浅田結梨の不安定な音程が爆裂する一節経て、郁がファンに「ありがとー☆」と手を振りタイトル・イン。とりあへず、きみと歩実とここまで2016年歌謡ピンクは豪快に二連敗、澁谷果歩のギターも大概御愛嬌ではあつたが。
 熱音郁大ファンの「スマイル警備」警備員・槍上亜久人(比佐)が、てれんこてれんこケミカルライト感覚で誘導灯を振つてゐると、通りがかつた高部万美(桜木)に当ててしまふ。当たり前も通り越し万美は口汚く激昂、ダメ人間・変態と罵られた槍上が万美を公衆便所に連れ込み手酷く犯すのは、ここでは勿論槍上の妄想。ここでピンク映画初陣の―三輪江一と同じ事務所所属の―比佐仁が、国沢実と田嶋謙一(ex.田崎潤一)を足して二で割つた俳優部、より正確にはダメ人間部のアルティメットウェポンたる逸材。国沢組次作には出て来ないやうだが、どうにか継戦して貰へないものか。話を戻して見るから怪しげな自称映画プロデューサー・須東寛二(豊川)に郁がまんまと捕獲される一方、帰宅した槍上の部屋に現れた謎の男・ディック(太三)は、“あなたのエロな妄想を実現するアプリ”なる「EROS NOTE」を槍上のスマホにダウンロードする。その時は真に受けなかつた槍上ではあつたが、後日同じやうな形で再会した万美を、EROS NOTEを使ひ実際に凌辱する。
 配役残り、凄腕がチュッパチャップスを咥へてゐるクリシェが清々しい夏目優希は、EROS NOTEの餌食となつた万美・郁の前に現れる謎の女・ユリアヌス。郁には性被害に遭つた女性を調査する探偵と名乗るも、一体その場合クライアントは誰なのよ?村田頼俊は、ラメラメのオレンジのジャケットで如何にもそれらしく務め上げる、イベントMC。生方哲以降は、十数人は擁したと思はれる、ライブ会場の客席要員。丘尚輝を又してもロストしたのは痛恨の極みながら菊りんも客席に見切れるほか、後述するマラ神を崇拝する群衆の中に、ひろぽんと国沢実も顔を出す。
 前々作「スケベ研究室 絶倫強化計画」(2015/主演:竹内真琴)・前作「陶酔妻 白濁に濡れる柔肌」(主演:美泉咲)と続く高橋祐太とのタッグで、それ以前からの好調を加速する国沢実2016年第二作。DEATHならぬEROS NOTEと来た日には、と草を生やさうとする態度は、今作を全然ナメてゐる。EROS NOTEの持つ力を認めた槍上は、ティアドロップのグラサンをキメるとその名も“地獄の警備員”に大変身、大暴走。槍上に須東から解放された郁は、感謝の気持ちと称して尺八を吹く。あるいは握手会会場で操られた郁がファンの手を乳に誘(いざな)ひ、ステージ上で諸乳を揉みしだき、果てにはゾンビ化した大勢のファンに輪姦される。高橋祐太はチンコでキーを叩いてゐるとしか思へない、神々しいまでに一撃必殺のシークエンスを連打する傍ら、EROS NOTEでエロスの神・ディック―因みに造形的には角の代りにチンコの生えた鬼―とロゴスの神・ユリアヌスの行動の自由をも手中に収めた槍上は、やがて自らをマラ神と成す。DEATH NOTE如き小賢しい推理か心理サスペンスどころか、神々の争ひが地球を丸ごと包む大ロマンに物語は大バースト。V.マドンナなプロテクターは殆ど全く機能しないともいへ、最終的に郁が槍上亜久人改め地獄の警備員改めマラ神と対峙。破滅の危機に瀕した、

 世界をオッパイが救ふ

 作劇的に最大級にして、同時に最も崇高なスペクタクルを臆することなく撃ち抜けるのは、ナベか国沢実しかゐない!これは2016年は国沢実がいよいよ天下を取る―監督賞だけなら二回獲つてるけど―のかと、海よりも深く感銘を受けた、のに。そこで救つたまゝおとなしく映画を畳めないのが、同時に国沢実の素直でない限界。


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 「婚前交渉 淫夢に濡れて」(2003/製作:加藤映像工房/提供:オーピー映画/監督:加藤義一/脚本:岡輝男/撮影:図書紀芳/照明:小川満/編集:フィルムクラフト/録音:シネキャビン/助監督:竹洞哲也/監督助手:山口大輔/撮影助手:末吉真琴・田沼加奈子/照明助手:佐藤浩太/スチール:佐藤初太郎/音楽:レインボーサウンド/タイトル:ホーラX/現像:東映ラボ・テック/出演:りる・林由美香・風間今日子・柳東史・丘尚輝・小川真実)。タイトルのホーラXは、竹洞哲也の変名か。
 タイトル開巻、拘束された主演女優に、鋏を手にした白頭巾の男が迫る。旧姓堀内の嶋田光葉(りる)が、鋏を用ゐた危なつかしい愛虐に悶える淫夢から跳ね起きると、隣に夫が眠る寝室には、吊るされた人形の裂かれた腹から零れた綿が降る。のも、二段構への夢オチ。「その夢は、私に忘れかけてゐた二年前の忌まはしい出来事を思ひださせた」との光葉のモノローグで、本篇突入。堀内酒店看板娘の光葉がハイエースで得意の大泉家に到着、カットの端々でこれ見よがしに邪悪な相を見せる大泉徹子(小川)に、遅いと軽く怒られる。その日大泉家では、光葉とは幼馴染でもある智也(柳)の婚約者でセントエルモス病院看護婦・杉浦洋子(林)が、徹子に御挨拶。智也と徹子は、既に故人の智也父親が、智也が三歳の時に再婚した後妻が徹子といふ関係。一見話は恙なく進行しつつ、突如淫蕩女に変貌した洋子と智也はどさくさ破局。智也はさういふ形で別れた女が洋子で六人目ともなる不可解な悩みを、光葉に打ち明ける。
 配役残り風間今日子は多分五人目、巨乳未亡人の真山みかげ。別に喪服に袖を通すでもなく、寡婦属性は藪蛇か闇雲ともいへる。丘尚輝は最終的な光葉夫・淳と、洋子を寝取る男の首から下―と声―を兼任。
 中州に2006年五月までは大蔵の直営館があつたのもあり、2002年のデビュー以来ピンクは全作追ひ駆けて来たつもりが、何故か脱けてゐた加藤義一第七作、2003年的には第三作。改めて慌てて見てみたところが、小屋に来てゐない筈がない割に不思議なことに清々しく初見の印象。仮に脳内から欠落するくらゐ面白くも何ともないにせよ、何処か一カットか二カットは覚えてゐるか思ひだすもんなんだけどな。
 他愛もない私的な繰言はさて措き、物語の核―当然尺的な限界もあるゆゑ、枝葉といふほどの枝葉が繁る訳でもないのだが―としては、智也が深く付き合つた女といふ女は、ことごとく呪はれてゐるのではあるまいか。果たして、それは一体誰の仕業なのか、とでもいつた趣向のサイコスリラー風味のサスペンス。洋子宅にてオッ始まる婚前交渉と、如何にも怪しげな風情の徹子のミシン仕事が並走。カタカタ高速上下するミシン針と、柳東史のいはゆるピストン運動とをカットバックでリンクさせる演出は、おどろおどろしいといふよりも寧ろ馬鹿馬鹿しさ寄りに可笑しく、洋子が囚はれる淫夢の中で、人形に針が一本刺される毎に、林由美香の体中の穴といふ穴を責めるバイブの数が一本づつ増えて行くポップかつ煽情的な演出は、スリラーも何もかんもスッ飛ばして裸映画的には手放しで有効。尤も、方便が卒なく繋がる一転目までは普通に決まるものの、余計な色気を出したオーラスのどんでん返し二転目は正真正銘のレス・ザン・イントロダクションぶりに、蛇に描いた足が足にすら見えない始末、ある意味見事にやらかしてしまふ。だらしない緊縛にも映えるカザキョンの偉大なるオッパイと、りるの綺麗な乳首は全く以て眼福とはいへ、土台素面の劇映画的には無惨に引つ繰り返つた卓袱台を、デフォルトで決められた上映時間が有無をいはせる暇さへ与へず締め括るといふか強制終了してのけるのが、量産型娯楽映画のせめてもの救ひ。


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 平成29年映画鑑賞実績:158本 一般映画:9 ピンク:132 再見作:17 杉本ナンバー:31 ミサトナンバー:4 花宴ナンバー:5 水上荘ナンバー:11

 平成28年映画鑑賞実績:175本 一般映画:9 ピンク:156 再見作:10 杉本ナンバー:38 ミサトナンバー:2 花宴ナンバー:2 水上荘ナンバー:5

 再見作に関しては一年毎にリセットしてゐる。そのため、たとへば三年前に観たピンクを旧作改題で新たに観た場合、再見作にはカウントしない。あくまでその一年間の中で、二度以上観た映画の本数、あるいは回数である。二度観た映画が八本で三度観た映画が一本ある場合、その年の再見作は10本となる。それと一々別立てするのも煩はしいので、ロマポも一緒くたにしてある。

 因みに“杉本ナンバー”とは。ピンクの内、杉本まこと(現:なかみつせいじ)出演作の本数である。改めてなかみつせいじの芸名の変遷に関しては。1987年に中満誠治名義でデビュー。1990年に杉本まことに改名。2000年に更に、現在のなかみつせいじに改名してゐる。改名後も、旧芸名をランダムに使用することもある。ピンクの畑にはかういふことを好む(?)傾向がまゝあるので、なかなか一筋縄には行かぬところでもある。
 加へて、戯れにカウントする“ミサトナンバー”とは。いふまでもなく、ピンク映画で御馴染みプールのある白亜の洋館、撮影をミサトスタジオで行つてゐる新旧問はずピンクの本数である。もしもミサトで撮影してゐる一般映画にお目にかゝれば、当然に加算する。
 同様に“花宴ナンバー”は、主に小川(欽也)組や深町(章)組の映画に頻出する、伊豆のペンション「花宴」が、“水上荘ナンバー”は御馴染み「水上荘」が、劇中に登場する映画の本数である。


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 「発禁 肉蒲団」(昭和50/製作:日活株式会社/監督:白井伸明/脚本:大和屋竺/プロデューサー:伊藤亮爾/撮影:山崎敏郎/照明:小林秀之/録音:古山恒夫/美術:渡辺平八郎/編集:鍋島惇/音楽:月見里太一/助監督:黒沢直輔/色彩計測:村田米造/現像:東洋現像所/製作担当者:古川石也/出演:東てる美・ひろみ摩耶・二條朱実・芹明香・五十嵐ひろみ・桂たまき・岡本麗・谷本一・木島一郎・島村謙次・益富信孝・大和屋竺・王井謙介・伊豆見英輔・水木京一・北上忠行・近江大介/ナレーター:坂本長利)。出演者中木島一郎と島村謙次、大和屋竺以降は本篇クレジットのみ。クレジットはスッ飛ばす配給に関しては、事実上“提供:Xces Film”。
 一人の色男が四人の女を侍らせる酒池肉林に速攻タイトル・イン、並べた乳尻にクレジットが流れるジャスティス。最初に片付けておくと、タイトルとポスターが謳ふ、発禁された艶笑譚を原作とするとやらの体裁は、本篇には完全に等閑視される。
 天保元年、水戸藩お抱へ医師の放蕩息子・カツタシンザブロウ(谷本)は寺子屋学者タカシマコウベイの娘・ぬい(東)と祝言を挙げておいて、昌平坂の門を潜ると周囲を偽り、ぬいを水戸に残し上京する。元々嗜んでゐた戯作の才を活かし、シンザブロウは金魚亭未央を名乗り深川の廻船問屋「戸田屋」に寄宿。やがて鼠小僧もので一山当てた金魚亭は一端の風流人を気取り遊び歩くも、品川の遊郭「俵屋」の花魁・春菊(ひろみ)に、中途半端な心性諸とも一物の短小さを木端微塵に嘲笑され、一転失意の底に叩き落される。
 配役残り、自ら最重要な大役を務める大和屋竺は、江戸への道中、渡し舟にてシンザブロウと乗り合はせる禅僧、安寧と色即是空を口にするシンザブロウに喝を入れる。芹明香は、金魚亭の身の回りの世話を下まで焼く、戸田屋の女中・加代。春菊に撃墜された泣きつ面に蜂とばかりに、金魚亭は賊徒を主役に据ゑた戯作が御上の怒りを買ひ咎を受ける。粗野にして愛嬌もあり、下卑てゐつつ振り撒くユーモアの端々には知性も感じさせる佇まひが絶品な益富信孝は、枷を嵌められた金魚亭の前に現れる鼠小僧次郎吉。鼠小僧当人は清廉な義賊といふ訳でも別になく、鼠小僧に連れられ、金魚亭は屋根伝ひの夜這ひに。岡本麗が二人が向かつた先、小唄師匠のいね。初陣に二の足を踏む金魚亭を、鼠小僧が後ろから文字通り手取り足取る絡みはさながら人形浄瑠璃の風情。残念ながら、この辺りは現代ピンクには太刀打ち出来ない。ところがいねにも、挿れてゐる筈の棹を小指と誤認された金魚亭は、乱高下する相場の如く再び絶望の淵に。見かねた鼠小僧が連れて来た、仙人造形の医師・タマエホーデンノスケ(不明)に犬の巨根を自身のメダカに癒着させる、大雑把な施術で望みの得物を手に入れた金魚亭は、女々を泣かして回る。五十嵐ひろみが春菊にリベンジを果たした金魚亭が手篭めにする尼僧・比丘尼で、二條朱実と桂たまきが、鶯の谷渡る武家姉妹・岸邊玉と香、二人で百合も咲かせる大サービス。一方、後追ひの分際で義賊風を吹かすもう一人の子の字(木島)は、本家次郎吉と金魚亭とを敵対視する。その他男優部を詰め切れないのは、正直に認めるが当サイトの限界。
 ロマポ何するものぞと高を括つてゐたところが、見事に鼻を明かされた白井伸明昭和50年第三作。一旦逸物を得た金魚亭は豪快にこの世の春を謳歌するものの、やがて捥げたサラミは犬に喰はれ、子の字も捕縛。筆を折つた金魚亭は、姿を消す。何気に完成されたセットが撮影所の地力を轟かせる、ペーソス溢れる獄門台の一幕も経て、生半可な青二才がめくるめく遍歴の末に辿り着いた果ては、穏やかな幸福に包まれた極楽か、安楽死にも似た地獄か。愛欲籠る小屋から立ち去る、黙して語らぬ足下。超絶にカッコいいラスト・ショットが刻み込む、極上の余韻。もつと今作がワーキャー持て囃されないのが不思議なほどの、裸映画の傑作。こんな代物を見せられては、おとなしくロマンポルノにシャッポを脱ぐ。


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 「巨乳OLと美乳人妻 ~北へ向かふ女たち~」(2016/制作:加藤映像工房/提供:オーピー映画/監督:加藤義一/脚本:深澤浩子/撮影監督:創優和/編集:有馬潜/録音:小林徹哉/音楽:友愛学園音楽部/助監督:小関裕次郎/監督助手:植田浩行/撮影助手:高橋草太/スチール:本田あきら/録音所:シネキャビン/仕上げ:東映ラボ・テック/協力:嬬恋村フィルムコミッション/出演:福咲れん・倖田李梨・宇野ゆかり・ダーリン石川・竹本泰志・深澤幸太・青森次郎・なかみつせいじ)。
 別館が何故か素通りしてゐる―知らんがな(´・ω・`)―第七作「婚前交渉 淫夢に濡れて」(2003/脚本:岡輝男/主演:りる)以来長らく使用して来た、カチンコがぐるりと移動するCGから一新、シュッとはしてゐるけれども制止した文字情報のみの加藤映像工房新ロゴで何気に意表を突くと、エンジンの起動音が鳴つてタイトル・イン。夜の道を車が発進する俯瞰の軽いロングが暗転、グチャグチャ他愛ない会話を交しながら、美乳人妻の長谷ひな子(倖田)が運転し、助手席には巨乳OLの大崎愛(福咲)が座るステーションワゴン?―正直この辺りの車種は全然判らん―は一路、といふほどでもなく漠然と北海道を目指す。散発的に挿み込まれる、愛の回想。傷心の愛が帰宅すると、同棲相手といふか要はヒモのバンドマン「インスタントセックス」の狂介こと一ノ瀬芳樹(ダーリン)は、ファンの女子高生・内田美咲(宇野)を連れ込んでゐた。愛が持つて来てしまつた、芳樹だか狂介のスマホのGPSを辿り美咲が車の行く先々に神出鬼没の機動性を発揮して現れる一方、「中華料理店 竹岡」(嬬恋村大字鎌原)に入つた二人は、六百円のラーメン代にも事欠くや、持参する募金箱に手をつけそれでも足りない、見るから神父には見えない竹中茂(なかみつ)と出会ふ。
 配役残り、竹洞哲也の変名の筈の青森次郎は竹岡の大将とされるものの、少なくとも今回公開された70分ピンクver.では声しか聞かせず些か不明、別のバージョンがあるのかどうかも知らんけど。竹本泰志はひな子の夫にして愛の上司・慎吾、忘年会で酔はせた愛をレイプする。深澤浩子の配偶者の深澤幸太は、短大卒業後すぐに慎吾と結婚し、就業経験のない点に関して愛に対抗心を燃やしたひな子に、ヒッチハイクからの据膳かと見せかけた、グーパン一発で卒倒させる強盗の被害者。倖田李梨の持ちキャラにはフィットしてゐなくもないにせよ、銀婚式間近の一筋専業主婦が仕出かすにしては飛躍が大雑把すぎる。
 前作に引き続き脚本家に深澤浩子を擁し、大半を嬬恋で撮影した加藤義一2016年第二作。としたところがこれが、俳優部の顔ぶれのほかはまんま前回と変らない出来栄えである意味吃驚した。脚本の冴えを感じさせるのは執拗に愛―ではなく狂介のスマホ―を追ひ狙ふ美咲の目的ばかりで、女二人の逃避行に至る顛末を、散発的に挿み込まれる愛の回想で小出しにする体裁を採つてみせたりする割に、そもそも如何にひな子が大崎家に辿り着いたのかはスッ飛ばされてゐたりする始末。竹中に騙され続けるのと同じ強度で、愛の言葉には耳を傾けないひな子の頑なさはストレスフルで、そんなひな子の、片棒を背負ひ込まうとする愛の姿は更に理解に遠い。ロケーション―だけ―は豊かゆゑ撮影部は孤軍奮闘しつつ、物語本体が斯くもボロボロでは焼け石にかける水程度。気がつくと何時の間にか、加藤義一と最後に組んだのは案外昔の2009年。それ以外でも、最後に名前を見かけたのは2014年。改めて際立つのは、岡輝男の不在。

 付記< 視認は出来なかつたけれども、国沢実2016年第二作のエキストラ要員に、丘尚輝の名前があつた
 備忘録< 執拗に狂介のスマホをチェイスする美咲の目的は、ハメ撮りの削除


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 「実写本番ONANIE」(1991/製作・配給:新東宝映画/脚本・監督:鈴木敬晴/撮影:三浦忠/照明:斎藤久晃/編集:酒井正次/音楽:雄龍舎/助監督:上野茶我丸/演出助手:石田薫/撮影助手:今井裕二・小林嘉弘/照明助手:大島孝/メイク:俵典子/スチール:児玉健二/制作:谷中康子/録音:ニューメグロスタジオ/効果:協立音響/現像:東映化学/撮影協力:スタジオキャビン・クリスタル映像/出演:五島めぐ・南野千夏・伊藤清美・清水大敬・牧村耕治・小林節彦・さとうあきこ・早川誠・一輝郁雄)。出演者中牧村耕治が、VHSジャケ―去年発売されたDVDでも―では牧村耕次に、どうしても間違へておかないと気が済まないのか
 キョロキョロするアップの目元に、他人の手でアイシャドウが施される。ビートの利いたインストとクレジット起動、めぐ(大体ハーセルフ)がメイクさん(さとう)に綺麗にして貰つてゐる楽屋に、監督の沖田(清水)が―めぐ曰くアダルトなのに―台本を手に現れる。台本の中身にめぐがゴネ始めると、男優の一輝君(概ねヒムセルフ/本名義は一騎郁雄か)、マイクも持つ助監督の小林(小林)、めぐのマネージャー・西村(牧村)を矢継ぎ早に顔見せ。シャワーを浴びるめぐが完璧な乳尻を軽く披露した上で、停電に伴ふ暗転とともに鈴木敬晴のクレジット。ブレーカーを落とした小林が怒られて、ビデオ題の「FカップONANIE 巨乳いぢり」でタイトル・イン。作為の欠片も窺へない即物的なビデオ題が、それはそれでそれなりに内容にはジャスト・フィットしてもゐる一方、“本番”と“ONANIE”に関しては本気自慰といふことだらうと好意的に解釈するとして、“実写”が輝かしいほどに意味不明な元題ではある、マンガか小説の原作でもあるのかよ。
 とりあへず他愛ないインタビューから撮影開始、早川誠がカメラマンの早川。「ドキュメンタリーといふのは、事実を何度も再構成したフィクションなんだ」だとかめぐに画期的な演出を施す沖田に、妻のかおりから離婚を切り出す電話がかゝつて来る。挫けかけつつ沖田がなほも撮影を続行するスタジオに、制作会社に場所を訊いたかおり(南野)が離婚届を手に訪ねて来る。かおりは、妊娠してゐた。
 「サヨナラホームランは絶対に打つ」、「欲しいのはそのきつかけだけなんだ」だなどと沖田に仕方のない台詞を吐かせながらのめぐの本番ONANIEの撮影中。配役残り、決定力が爆裂する五島めぐの自乳舐めの最中に飛び込んで来る伊藤清美は、沖田の不倫相手・奈津子。沖田を捨てた奈津子が選んだ、きれいな江頭2:50みたいな男は不明。
 佐々木乃武良と同時進行中の鈴木敬晴映画祭、1991年第三作。あくまで本当に撮りたいのは映画な男が監督するAVの、現場を舞台としたメロドラマ。おためごかしな映画愛には甘酸つぱさも通り越した居た堪れなさを禁じ得ず、誰が演じたところで変らない結果となつたやうに苦笑しながらも、敢て、といふかより直截には選りにも選つて沖田役に清水大敬を据ゑた真向中の真向勝負のキャスティングに、殆どやぶれかぶれな潔さを感じるものでもある。「映画もやつてる人も大嫌ひ」、「世界の中心みたいに馬鹿みたいに本気になつて」と一旦下げるだけ下げておいて、最終的には「映画撮つて欲しい」と今でいふツンデレを華麗に決め最後の夫婦生活に突入する沖田とかおりの物語は、如何ともし難い臭さ、あるいは北極経由でグルッと一周した南風の惰弱ささへ一旦さて措けば、尺も十二分に費やし最低限形になつてゐなくもない、南野千夏は殆ど脱がないが。対して裸映画的にも劇映画的にも正しく対照的に、回想風のイメージの乱打を通して伊藤清美の裸は潤沢に見せ、ある意味伊藤清美らしいグジャグジャした熱演を撃ち抜く見せ場も与へられはするものの、奈津子の言ひ分あるいはエモーションがてんで伝はらない沖田と奈津子の物語は、木に竹すら接ぎ損なふ。いはゆる濡れ場要員の存在を回避しようとした節は肯けなくもないにせよ、改めて南野千夏が殆ど脱がない点まで踏まへると、今回果敢に勝負を挑みはした鈴木敬晴が、基本的にピンク映画初期設定の三本柱フォーマットに玉と砕けた様は否めまい。そもそもが話を戻すとラスト沖田との別れ際、主演女優に「今度映画撮ろ!」なんていはせてのける、要は調子よく自分で自分の背中を押してみせたレス・ザン・ゼロに射程の短い自己憐憫は所詮煮ても焼いても到底食へない代物で、それならばいつそ寧ろ、清水大敬の闇雲な熱量でゴリ押しでもされた方が、ツッコミの楽しさにも満ち溢れまだしもマシなのではなからうかとすら思へた。

 但し、この際男優部には頼らずオナニー・シーンを多用する秀逸な戦略も功を奏し、五島めぐを美しく、そしてどエロく撮ることには大成功してゐる。五島めぐにお世話になつたメモリーのある御仁にはマストで必見と畳語も省みずお薦め出来るし、余程偏狭な琴線の持ち主でなければ、博く何時の時代に見るなり観ても勃つと断言しよう。


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