真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「おもらしドール 淫行の極致」(昭和61『SM・倫子のおもらし』の2008年旧作改題版/製作:国映/配給:新東宝映画/監督:片岡修二/脚本:片岡修二/企画:朝倉大介/撮影:倉本和人/照明:佐藤才譲/音楽:芥川たかし/編集:酒井正次/助監督:橋口卓明/監督助手:末田健・五十嵐伸治/撮影助手:菊野太郎・佐久間栄一・大木誠/照明助手:佐野秀丸・中山清/車輌:JET RAG/スチール:田中欽一/録音:銀座サウンド/現像:東映化学/出演:下元史朗・早乙女宏美・森崎めぐみ・堀江実香・池島ゆたか・八合昇・劇団滑車・外波山文明・堺勝朗)。出演者中、八合昇と劇団滑車は本篇クレジットのみ。照明の佐藤才譲―佐藤才輔の変名あるいは単なる誤字か―が、ポスターには石部肇。
 恐らく、頭数の寂しさを誤魔化す目的もあると思しき、反転開巻。暴力団の関東竜か龍神会組長・堂島セイイチロウ(多分外波山文明の二役)が銃撃、殺害される事件が発生する。敵対する黒崎組の犯行かと思ひきや、関係なかつた黒崎組が手打ちした上で関東竜神会の犯人捜しに協力するまさかの事態に進展。一方、関東竜神会傘下の松葉組。後に脳軟化症であつた事実も判明する、組長の松葉金次郎(堺)が堂島を殺させたとするケロッととんでもない告白に、若頭の沼田(外波山)と松葉の妻・アキコ(森崎)は度肝を抜かれる。悪びれるでない松葉と、アキコは夫婦生活に。一人残された沼田が、頭を抱へてタイトル・イン。サドマゾがスイッチする夫婦生活、アキコを一頻り責めた松葉が、今度はオシッコを飲ませろと要求。アキコの聖水に喜悦しつつ、松葉は卒倒する、死んでゐれば腹上死ならぬ股下死である。ともあれ―身から出た錆でしかないのだが―松葉組の危機に駆けつけた、沼田の五分の兄弟分・野沢(下元)が、カッコいい劇伴に乗つて関西からワイルドに登場。野沢が病室の敷居を跨ぐや、恐らく意識は回復しないまゝ松葉は譫言を発する。「倫子ちやんの、オシッコが飲みたい!」、堺勝朗絶妙な片言の口跡での思はぬ切望に、一同はマンガみたいにドン引きする。
 配役残りスッピンなのは女子高生設定からの要請なのか、早乙女宏美がその倫子ちやん。堂島の一人娘で、松葉が―野沢に始末される―子分二人に堂島を殺させたのは、自身のある意味無邪気な劣情に邪魔であつたからなどといふ大概な方便であつた。松葉に堂島殺しを白状すると開き直られ、沼田らはどうにかして願ひを叶へる方向に。捕へるところまではどうとでもなるにせよ、後々を考へた結果、秘密裏にオシッコを松葉に飲ませるには倫子を調教しよう、しかも―関東では面が割れてゐない―野沢が、といふ明後日だか一昨日な方向に話は展開。野沢は仕方なく「ROPER'S HOUSE」に調教指南を受けに行く、とかいふ次第で池島ゆたかが、「地獄のローパー」二部作で登場する「倒錯の館」主人と同じ造形の「ROPER'S HOUSE」主人。何処から連れて来たのか感を爆裂させる、ラリッたバンギャのやうな堀江実香が「ROPER'S HOUSE」M嬢。
 底抜けにカッコいいヒロイズムに投げ縄緊縛、“終”ならぬ“縄”と大書する画期的なエンド・マーク。そしてピンク映画の歴史に箍の外れたスペクタクルを刻み込む、驚愕のクレーン車数十メートル宙吊り!三十年前に人類が遭遇した永遠の規格外、正しく伝説の「地獄のローパー」二部作。第二作「緊縛・SM・18才」の次作となる、片岡修二昭和61年第二作、因みに、第一作の「逆さ吊し縛り縄」は四作前。
 スッピンの早乙女宏美がボーイッシュなどころか単なる波田陽区で、否応なく脆弱な女優部。風に木の葉が揺れるが如くバタバタと人が死んで行くともいへ、あくまで軸足をオーソドックスな任侠物の範疇から逸脱しない分、「地獄のローパー」二部作と比べると如何せん飛翔力不足は否めない物語。女優部とは対照的に充実した男優部が奮闘しつつも、一見粒の小さく見えかねないのは、それはそもそも「地獄のローパー」二部作を相手にした敵が悪い。ライターに火を点けるやうにサイレンサー付きの銃を振り回し、カッチョよく戦つて極道としてではなく変態として死んで行く死に様を選ぶ下元史朗は颯爽とスクリーンを駆け抜け、生粋のサディストとマゾヒストとが、最終的には涅槃で添ひ遂げてみせるのは結構な大ロマン。「地獄のローパー」影の第三作完結篇とも目すべきか目し得る、時代の波に埋もれた一作に、思つて思へなくもない。


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 「陶酔妻 白濁に濡れる柔肌」(2016/製作:フリーク・アウト/提供:オーピー映画/監督:国沢実/脚本:高橋祐太/撮影・照明:飯岡聖英・海津真也/撮影助手:宮原かおり/照明助手:広瀬寛巳/録音:小林徹哉/助監督:菊島稔章・青木真/編集:酒井編集室/カラリスト:如月生雄/スチール:本田あきら/音楽:與語一平/整音:シネキャビン/機材:《有》アシスト/タイトル:小関裕次郎/協力:はきだめ造形・小川隆史/仕上げ:東映ラボ・テック/出演:美泉咲・吉川いと・清水五郎・浦町夏鳴・市川裕隆・星野あかり)。前作から二作続けて、姓と名の間に何も挿まない無印国沢実、何事か心境の変化でもあつたのか。
 こちらも前作から使用の、鮮血飛び散る新ロゴ開巻。富士を遠く望む街景噛ませて、階段を連れ立つて下りる清水五郎と美泉咲と、下から上がつて来る星野あかりとが交錯する。今回何気に、野外でクインクインよく動くカメラが、放つておくとすぐ塞いでしまふ国沢実の映画に、適宜上手いこと風を通してゐる。「人は人の何を愛する?」、姿形なのかそれとも内なる心なのかと美泉咲がモノローグで投げてタイトル・イン。ここで、清水五郎とかいふジョン・ドゥじみた名義の正体が、蓋を開けてみれば発声の確かさで周囲とは一線を画する佐藤良洋。別に改名した形跡も窺へず、瞬間的な変名の由は不明。それとトメに比べて重要度の低い方を先に片付けておくと、荒木太郎2013年第二作「嫁の寝床 恥知らずな疼き」で初土俵を踏んだ美泉咲は、荒木太郎次作「異父姉妹 だらしない下半身」(愛田奈々とW主演)以来三年ぶりのピンク映画復帰。ツイッターのアカが消滅ではなく凍結されてゐる、愛田奈々も何時か我々の前に文字通り返り咲く日が来るのであらうか。
 タイトル明けは総合病院院長の倅である久我拓馬(清水)が、自宅兼のマンションに開業する「久我メンタルクリニック」。国沢実と精神科、如何にもヤバさうな組み合はせにフリーク・アウトが又ぞろが暗黒面に堕ちるのかといつた脊髄反射の危惧は、幸ひにも華麗に回避。妻帯者の担当医に横恋慕するゴスロリ・三沢綾(吉川)に一服盛られた上で、久我は拘束される。その流れでは当然綾が久我に跨る三番手奇襲、吉川いとの、ほどよく柔らかさとしなやかさとを併せ持つ若い肢体が眼福眼福。久我の妻・詩織(美泉)の顔見せ挿んで、事後正しく猟奇的な彼女―古いな、俺も―な綾は、久我を阿部定。帰宅した詩織が異変ならぬ異臭に気がつくと、憐れ、あるいは何と。アベサダれた久我の一物は、綾に調理され食された後だつた。綾を連行する刑事二人組は国沢実と、菊りんではないから青木真?半年後、久我は死亡したドナーから提供された陰茎の移植手術を受ける。術後久我の男性機能は回復どころか寧ろ向上し、元々玉の輿狙ひの結婚で隙間風の吹いてゐた詩織との関係も、即物的に蜜月を取り戻す。そんな雨降つて地固まつたある日、判り易いフラッシュバックに襲はれた久我は、全く面識のない星野あかりの幻影を見る。
 配役残り星野あかりは、いい感じの一軒家に住むやさぐれた水商売女・広崎小夜子。前作に於ける権高な選良と、今作に於いては粗野な底辺とを演じ分ける演技の幅を地味に唸らせる市川裕隆は、小夜子の内縁の夫・野田恭一郎。浦町夏鳴は、ムショ帰りのその足で、他愛ない修羅場の末に野田を刺す小夜子の元ヒモ・黒木靖。このくらゐといふかそれだけの役ならば、別に今回珍しく不在の、国沢組限りなく専属といつていい村田頼俊で別に構はなかつた気はしないでもない。
 前作に引き続き高橋祐太と組んだ、国沢実2016年第一作。チンコに自我を支配された、見て呉れは久我ver.の野田は小夜子の下に帰還。それを詩織が奪還しに行く展開は、久我家パートが良くも悪くも夫婦生活に終始する一方、佐藤良洋と星野あかりが熱と重みのあるドラマを固定する広崎家パートで加速され、裸映画的にも裸の劇映画としても充実する。人は人の何を愛するのか、最終的にメイン・テーマに明確な回答は与へられないといふか、姿形は久我に変れど野田を愛した小夜子に対し、ビリング上はヒロインたる詩織は単に野田の棹に垂涎してゐただけなのではあるまいか。そもそも、詩織にせよ野田の本人認証をモノを通して果たす小夜子にせよ、要は最も肝要なのは棹なのか!?といつたチンコ至上主義には草も生やしかけつつ、再度アベサダれたのち今度はサイバー化した久我と、明白な殺人未遂がどう不問に付されたのかよく判らない詩織の締めの濡れ場。フとした弾みに詩織が久我の中に残る野田の痕跡に慄くカットは、絡みの最中にスパッと捻じ込んだサスペンスが鋭く光る。話の薄さが余計なものを拗らせない方向に働いてゐるのか、高橋祐太とのコンビで国沢実が安定する気配を窺はせる一作。となると、たとへば山﨑邦紀の変幻怪異を平然とバッサバッサ切り捨てる浜野佐知ほどの豪快さを持たない場合、重ねてたとへば小松公典が見境なく仕掛ける情報戦を持て余す竹洞哲也も想起するに、デジテル化した結果十分伸びたにしても依然決して長くはない尺の量産型娯楽映画にとつては、これで案外、暫く名前を見聞きしない岡輝男の軽さなり薄さが、あれはあれで絶妙な匙加減であつたのかも知れない。

 最後に、最も重要なのは、裸映画的にも裸の劇映画としても主演女優を喰ふ大活躍を見せる星野あかり。国沢☆実の宿業を感じさせる陰々滅々路線どころか、木端微塵に底の抜けた2007年第一作「THEレイパー 暴行の餌食」(脚本:樫原新辰郎=樫原辰郎と共同脚本)。工藤雅典が工藤雅典な「お掃除女子 至れり、尽くせり」(2010)に、荒木太郎も常日頃以上だか以下に玉と砕けた2011年第一作「淑女の裏顔 暴かれた恥唇」(脚本:西村晋也)。3.11とどうしやうもないといふかしやうもない形で向き合つた、相ッ変らず工藤雅典が工藤雅典な「夏の愛人 おいしい男の作り方」(2011)。ひたすらに作品に恵まれなかつた悲運のヒロイン・星野あかりを、二番手ながら国沢実が九年越しで自力救済、当人的には五年ぶりピンク復帰での初日作となつたトピックには映画単体の出来を超えて胸が熱くなつた。


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 「ロリータ恥辱」(昭和63/製作:獅子プロダクション/配給:新東宝映画/監督:佐藤寿保/脚本:夢野史郎/企画:大橋達夫/撮影:斉藤幸一/照明:加藤博美/音楽:ラジカル・ヒステリーツアー/編集:酒井正次/助監督:小原忠美/監督助手:山田修一/撮影助手:青柳知之/照明助手:松本キヨシ/車輌:若月誠一郎・町田晃一郎/録音:銀座サウンド/現像:東映化学/出演:藤沢まりの・芳村さおり・伊藤清美・渡剛敏・風見怜香・南崎ゆか・隈井士門・佐野和宏)。
 グリル越し視点でマイクテストした藤沢まりのが、恐らく原宿のホコテンを適当にインタビューして歩き回る。女性ヴォーカルの「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」起動、マイクがガンマイクを持つた隈井士門と激突すると、何故か男の方が突き飛ばされて大の字に。軽く遣り取りを交したちさ(藤沢)がその場をローラースケートで離れるロング噛ませて、自宅にてハレー彗星が地球に激突しただとか何とか超日記をちさが書いてゐると、ラジオが「マジカル・パイレーツ・ツアー」なる海賊放送にジャックされる。パイレーツ?とちさが呟くと暗転、「藤沢まりの 淫媚楼」のビデオ題でタイトル・イン。双方眼鏡をかけたまゝ、加へて母親はハイヒールを履いた両親(伊藤清美と渡剛敏)のゑぐい夫婦生活を、ちさは途中まで覗く。多分同級生なのに何故か制服が違ふ、男言葉のカズコ(芳村)との掴み処があるのかないのかモッサリした一幕挿んで、深夜再びマジカル・パイレーツ・ツアーをキャッチしたちさは、周波数帳―そんなのあるんだ―を頼りに出撃、勝手について来たカズコは構はず送信地点と思しき廃小学校に忍び込む。ちさが散策する内に、置き去りにされた機材を集めた放送車に辿り着いたカズコは、マジカル・パイレーツ・ツアーの主(佐野)に犯されかける。カズコが自力で逃走したのち、ちさも放送車に乗り込む。“ABCDジャンピン・ジャックのパイレーツ”とその場の勢ひで海賊放送を更にジャックしたちさは、カズコが犯される嘘実況を放送する。
 配役残り南崎ゆかは、ちさがジャンピン・ジャック・パイレーツで実際の殺人を実況する、隈井士門にレイプされた末に殺される女。作中、最良質の当然要求されて然るべき商品性を担保する風見怜香は、同じくちさが実況する蛇―のオモチャ―でオナニーする女。南崎ゆか殺害時、実はジャンピン・ジャック・パイレーツ即ち自身の殺人の実況を聴いてゐた堀田ジュン(隈井)は、下調べの一言で片付ける虚構の方便で捜し出したちさに接触する。
 後述するVHSジャケには“BRAIN SEXが股間を爆裂する”なるとんでもなくイカれた、もといイカした惹句も躍る佐藤寿保昭和63年最終第四作。結論を先走ると、当時平板なヌキ目的のAVユーザーからは、新東宝ビデオは一部地雷視されてもゐたのではなからうか。
 海賊放送を流す男と、海賊放送を更にジャックする少女。故郷である東京の荒廃を憂ふ男に対し、少女は軽やかにいつそ破滅を願ふ。やがて悪ふざけの度が過ぎた少女は、殺人者とミーツする。箍の外れたロマンティックな大風呂敷は、確かに震へるほどに魅力的ではあつた、途中までは。今なほ最前線のその先に駆け抜け得よう、藤沢まりのの冴えたキューティーは刹那的な幻想を易々と不滅とも誤認させるものの、片や甚だ限定的な風俗の枠内より半歩とて踏み出で得まい隈井士門の糞ダサいハンサムぶりは致命的も通り越して絶望的。上下とも画期的に中途半端なサイズのジージャンとジーパン、しかもケミカルウォッシュのといふ扮装は逆の意味で衝撃。何で見てゐるこつちが無性に恥づかしい気持ちにさせられなければならないのか、後生だから勘弁して欲しい、80年代。唐突極まりないちさ両親の死が、呆気ないか不甲斐ない情死なのか劇中イマジンなのか判然としない辺りから、順調に拡げられた風呂敷は畳まれるどころか綻び始め、兎にも角にも今作最大の難点は、肝心要本丸ビリング頭の藤沢まりのが何時まで経つても脱がない―寧ろ脱がずとも映画を支へきるのは、この場合諸刃の剣ともいへるのだが―挙句、不発気味の映像マジックに頼つた濡れ場の意味が判らない、裸映画的には論を俟たず、量産型娯楽映画のポップ性に固執するならば敷居の高さが如何なものかな、何れにせよ根本的な不誠実。佐野が殺られるカットの鮮烈さで幾分盛り返しつつ、所詮は焼け石に水、到底逆転しない程度の反撃。殺傷力の高いモチーフを乱れ撃ち、圧倒的な主演女優を擁しながら、ある意味見事に尻すぼんだ一作である。

 一点映画本篇からは全く離れて凄まじいのが、VHSジャケがわざわざ御丁寧に“いんびろう”と振り仮名まで打つておきながら、“淫媚桜”の大誤字。そんな豪快な代物がそのまゝ店頭に並んだ、昭和の大らかさが今となつては麗しい(´・ω・`)


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 「女房交換 ヒクつく下半身」(1993『変態姉妹 亭主交換』の1999年旧作改題版/製作:旦々舎/提供:Xces Film/監督:浜野佐知/脚本:山崎邦紀/撮影:河中金美・田中譲二・難波俊三/照明:秋山和夫・上妻敏厚・永井日出雄/音楽:藪中博章/編集:㈲フィルム・クラフト/助監督:女池充/制作:鈴木静夫/ヘアメイク:斎藤秀子/スチール:佐藤初太郎/録音:銀座サウンド/現像:東映化学/出演:小森菜奈・貝満ひとみ・章文英・杉本まこと・栗原良)。
 古の旦々舎の庭を舐めて、マンション建設中の立ち退きを強ひられた姉夫婦が一時的に実家に戻つて来るといふ―母親が知らん間に首を縦に振つた―話に、菜奈(小森)が強硬に異を唱へる。さして深く考へもせずに同意する夫の昭彦(杉本)は姉を知らず、母・冴子(章)も判つてゐないと完全に臍を曲げる菜奈に、冴子も匙を投げる。誰も姉さんの正体を知らないとベランダでぼんやりする菜奈が、喘ぎ声とともにフェードしてタイトル・イン。明けて飛び込んで来るのは、貝満ひとみのグイングイン動きまくるM字開脚!姉が自慰する淫夢にうなされる菜奈も菜奈で大概どうかしてゐるやうにも思へつつ、野暮はいひない、フルスロットル浜野佐知の凄まじさにおとなしく圧倒されるべきだ。起きた菜奈は隣で眠る昭彦を起こしての夫婦生活、「好き貴方大好き」だなどとプリミティブな求めがチャーミング。頭から撮つたオッパイで―白ブリーフ越しの―チンコをグリグリする画と、逆に尻からの―パンティ越しの―観音様でグリグリする画とが交互に連ねられては逆に体位として繋がらない、骨を断つために切らせた肉はさて措き、小森菜奈の幼さを残す顔だちとは対照的にプリップリに実つたオッパイが堪らない。お前は一体何を求めてピンク映画を観るなり見てゐるのかつて?女の裸に決まつてるぢやないか
 配役残り、小森菜奈V.S.杉本まこと戦をキッチリ完遂したのち改めてゴジャースに登場する貝満ひとみが、菜奈が頑なに忌避する姉・ひとみ。バブル気分が抜けてゐないひとみの華美な装ひには反して、乗つて来た車が単なる機材車に過ぎないのは御愛嬌、誰もそれつぽいセダンの一台でも持つてゐなかつたのか、栗原良がひとみの配偶者・雅人。菜奈は参加しない荷物の運び込み、家内に入るなり早速股間を誇示するひとみに、昭彦はコロッと釣られる。
 旧題と新題とで意匠がある意味見事に180°変つてしまふのが、幾らエクセスのすることとはいへ流石にあんまりな浜野佐知1993年第五作。旦々舎の場合当然、今作の内容に即してゐるのは女主導で男を交換する元題の方。といつたところで、スワップスワップいふほど正式にスワッピングする訳でも、別にない。
 菜奈に眠剤入りのブランデーを盛つた上で、ひとみは菜奈の隣で眠る昭彦に夜這ひを敢行し、冴子もその様子を覗き見る。放たらかしにされた雅人含め全方位的に無防備な凄い一幕を発火点に、冴子いはくの“夜這ひの血”流れる、昭彦が諦観混じりに分析する逞しき母系家族が本格起動。過去に男を寝取られたなり何なり、菜奈がひとみに対して拗らせる確執が解消どころか詳細さへ語られることはないまゝに、菜奈が勝手に今でいふ肉食方面に開眼、挙句冴子まで娘婿に跨り、防戦一方の男供は無力に喰ひ散らかされる。素面の劇映画としてはあちこちスッカスカでもあるものの、清々しく旦々舎らしい麗しき女性上位映画。それでゐて、鬼のやうにどエロく求められて然るべき商品性も盤石に兼ね備へてのけるのが何より素晴らしい。女達が夫婦の関係性を逸脱した性行に及ぶに際して、矢鱈と“家族”を方便に持ち出す点に関しては一抹の違和感も感じながらも、主体的に性を希求する女が男を虐げる映画が男が見ても面白い。映画史に残り得るアクロバットを成し遂げ―次回作の話は中々聞こえて来ないが―今なほ戦闘態勢を緩めない浜野佐知の、正しく浜野佐知・オブ・浜野佐知ともいふべき一作。

 一件特筆すべきは、ひとみに眠剤ブランデーを盛られた翌日。帰宅した雅人を―下着と―スッケスケのネグリジェで菜奈が迎撃、ガンッガン69を敢行中のところに、遅れて帰宅した昭彦が度肝を抜かれる件。女房が栗原良とセックスしてゐるのを目の当たりにした、杉本まことが愕然とする。この当時には未だ確立してゐなかつたのかも知れないが、90年代旦々舎がエクセスを主戦場に戦つてゐた時代の定石とは配役が逆であるのと、遠く後々の二十二年後、なかみつせいじに改名した杉本まことが栗原良の跡目を継ぐトピックを想起するに、歴史の流れに感慨深いものがある。


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 「女教師の秘密 縛つてあげる…」(2016/製作:オフィス吉行/提供:オーピー映画/脚本・監督:吉行由実/撮影:小山田勝治/録音:西山秀明/編集:中野貴雄/助監督:江尻大/撮影協力:山川邦顕/スチール:本田あきら/緊縛協力:佐倉萌/制作応援:広瀬寛巳/ポストプロダクション:スノビッシュプロダクツ/仕上げ:東映ラボ・テック/出演:加納綾子・岡田智宏・桐島美奈子・ピン希林・白石雅彦・白石みお・和田光沙・吉行由実・樹カズ)。高速クレジットに振り切られ監督助手をロストする。
 ダサいオフィス吉行新ロゴからズージャー開巻、外回りを一仕事終へた岡田智宏が颯爽と登場すると、速攻のタイトル・イン。進藤(岡田)が直行した先は、スレッスレのミニスカが徒に煽情的な玲子(加納)の英会話教室。a.k.a.さらだたまこのピン希林と白石雅彦・和田光沙が、生徒の珠代と白木に、名もなき生徒要員。クレジットレスの生徒要員がもう三人、その中で一人だけ目立つ髭のオッサンは、何処かで観たやうな気もするのだが。英会話もさて措き玲子に見惚れる進藤は、教室明け珠代と白木に捕まり一杯に。進藤をガッカリさせる玲子と夫・直樹(樹)のキレイキレイな夫婦生活挿んで、進藤は帰宅。一切出て来ない息子は留学中、目下二人で暮らす妻の夏江(桐島)とは、進藤の意には反する形で長くレスの状態にあつた。母親が軽く倒れ実家に戻る夏江を送つた帰り、進藤は大きな荷物を抱へた玲子を拾ふ。自宅に届けた後、下しそびれた玲子のキャリーバッグを開けてみると出て来た緊縛用の赤いロープに、進藤は静かに衝撃を受ける。
 配役残り、三番手投入をヒロインの秘密の真相に絡める。地味に秀逸な起用が光る白石みおは、三年前直樹の部下にして浮気相手・美紀。ラストに飛び込んで来る吉行由実は緊縛要員、家庭内別居中の白木妻。並走する普通のホームパーティー含め更に若干名見切れる内、パートナーもをらず―恐らく―自縛した状態で一人モゴモゴしてる、樫原辰郎いはくピンク映画の妖精こと広瀬寛巳が捧腹絶倒、この人本当に妖精だ。
 妻との関係に隙間を抱へる二枚目中年が鼻の下を伸ばす、英会話教師の別の顔。吉行由実2016年第一作は近作の傾向とりわけ椿かなり主演作を想起するに、飛び道具臭がプンプンする起承転結の転部から又ぞろ派手に玉と砕けるのか、と事前には思ひきや。結局、中年夫婦が倦怠期を緊縛で解消しまんた(≧∀≦)、の清々しい一点突破で駆け抜ける案外アッサリした展開には、ある意味逆の意味で驚かされた。ともいへ濡れ場を介錯する男優部を岡田智宏と樹カズ、グッドルッキングが爆裂する渋いイケメンで固めた上に、ロケーションから小洒落た女優部を綺麗に撮ることに全てを賭けたハーレクインなピンクは、それはそれとしてそれなり以上に安定する。加納綾子と桐島美奈子が全裸で年相応の世間話に話を咲かせる、プログレスした女子トークピンクの可能性には、幾分の心残りも感じつつ。その際桐島美奈子のボリューム溢れるオッパイが絞り込まれてあれば、それでもなほ桐島美奈子が普通に旦那の愚痴や親の健康の話とかしてたりしたら完璧、超絶、吉行由実は映画の歴史を変へる。歯止めのきかなくなつた与太はさて措き、面白いかどうかは一旦兎も角吉行由実のオサレ系裸映画はピンクを女性層にも販路を拡げる上で、目出度く盛況の内に終了したらしいOPP+にうつてつけに思へなくもない。あるいは、浜野佐知で敢然とクィア戦線に突入してみせるか。


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 「潮吹きギャル 順子」(昭和60/製作・配給:新東宝映画/監督・撮影:西原儀一/脚本:福田慎二/出演:林香依兌・大原薫・高橋樹里・有田英子)。脚本の福田慎二は、西原儀一の変名、てかクレジットこれだけ!?
 新東宝カンパニー・ロゴみたく何某かがキラキラする画、全篇を通して逆の意味で特徴的な、昭和の喫茶店で流れてゐたBGMのやうな適当な劇伴鳴る中、あつさりと秒殺のタイトル・イン。要は御大将・西原儀一以外の全てのスタッフと、男優部をオミットするビデオ版クレジットに悶絶する。蓋を開けてみるとそれどころか、といふのは後述する。
 潮を噴く噴かないの攻防を繰り広げる、元風俗嬢・順子(林)と同棲する無職の英二(速見健二)の絡み初戦。西原儀一が自ら回すカメラがここでは基本ズームを多用しつつ、引き方がランダムで甚だ見辛い、体位さへ判然としないのは何気にでもなく致命傷ではなからうか。事後、コンドームの中の精子に英二が思ひを馳せた流れで会話はぼちぼち回らなくなる首に至り、フリフリする“受付”と大書されたパンティ。友人から不妊に悩む山本竜二の話を聞きつけた英二は、最終的には総額五百万近くになる高いのか安いのかよく判らない値段で、順子の代理母契約を取りつける。
 配役残り高橋樹里は、順子と山竜は二回戦の最中、爽やかなまでのクズぶりを発揮する英二が連れ込む女。台詞がよく聞き取れなかつたのだがサムシング避妊具を入れてゐるらしく、ゴム無しの挿入を要求、英二が生の味を占めるフラグを立てる。時代を超え得る正調美人が出て来ると何故だか驚いてしまふ大原薫は、つくづくロクデナシな英二がこつそりコンタクトを取る、山竜細君。となると残される大問題が、男優部とともに公開当時ポスターにも名前の載る―VHSジャケも当然―有田英子に、相当する登場人物が劇中スナップの類はおろか人影すら一切見当たらない。
 名前を見聞きすることはあつても映画に触れる機会には恵まれなかつた、ピンク映画黎明期から活動した大ベテラン監督・西原儀一(2009年没)の、引退間際昭和60年第一作。因みに次作次々作も「おしめりギャル 良子」(主演:水野良子)に、「もぎたてギャル 明子」(主演:林香依兌)とギャル三部作が続く。“潮吹き”・“おしめり”・“もぎたて”と三枚並べてみると、パワーダウンして行つてゐる感は否めない。
 それは兎も角今作に限つた中身はといふと、物語らしい物語が起動するでもないまゝに、かれこれと濡れ場だけが流れて行く。前半戦をマッタリと消化、後半に突入して三番手・二番手の順で投入。したかと思ふと展開の推移に不安を覚えるほどに各々タップリと尺を費やした結果、一旦良くも悪くも観客の別に期待はせずとも予想を裏切らない着地点にそれなりの安定感で落ち着きかけながらも、ヒロインを見事に等閑視し投げ放つたエンディングにはある意味度肝を抜かれた、直截にいへば愕然とさせられた。そもそも、有田英子の豪快な頭数詐欺をも仕出かすとあつては、誠腰の据わつたやつゝけ仕事と完敗を認めるほかはない。音声のみで処理する英二&順子と山竜の最初の顔合はせ明け、誰も居ない街頭に英二と順子が大雑把な繋ぎで出現する、たとへば細山智明辺りが好みさうな謎演出は、全体この期に及んで何がしたかつたのか。


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 「Eカップ 満乳」(昭和63/製作:プランナーズハウス・パオ/配給:新東宝映画/監督:佐々木良/脚本:斉藤美恵/製作主任:渡辺明彦/撮影:伊東英男/照明:斉藤正明/助監督:石崎雅幸/編集:金子編集室/効果:髙野効果団/音楽:東京スクリーンミュージック/演出助手:四宮一志/撮影助手:渡辺たけし/照明助手:横須賀港一/車輌:田治康伸/録音:銀座サウンド/現像:東映化学/出演:豊田香里奈・鈴木美子・秋本ちえみ・田山ガン・石神一・真山豊・西田新太郎)。
 ラブホ―まづ間違ひなく目黒エンペラー―にて男女が交戦中、但しぎこちないパンがベッドの上に到着するまで三十秒。ラスト電話口で二十歳と名乗るのは、後述する宇野との上下関係を鑑みるに怪しいかも知れない女子大生の水口セツコ(豊田)と、劇中呼称ママで出会ひクラブを介して月四回二十万の愛人契約を結んだ田島(田山)の情事。事後の会話、柳沢慎吾のレプリカのソックリさんの隣に住んでる人みたいな、田山ガンの素頓狂なハスキーに耳を抱へる。紹介して貰つてよかつたと満足する田島に対し、「これが友情の始まりだ、なあんちやつてね」とセツコが「カサブランカ」に軽く掠めておどけてみせたところで、頭に豊田香里奈を冠するVHS題のタイトル・イン。何処ぞの御仁に似た類の輩かと、何気にでもなく不安に駆られる。
 田島がセツコを送る車を俯瞰のロングで追つた後、朝の雑踏。出勤する田島に美沙(秋本)が接触、“お昼に公園で待つてます。”とするメモを手渡す。表向きの間柄は語られない美沙は元々田島の愛人で、セツコを手に入れたことも影響してか、田島は美沙を疎んじてゐた。豊田香里奈と秋本ちえみなあ、オッパイと若さ以外何ひとつ豊田香里奈が秋本ちえみに勝つてゐるポイントが見当たらないのだけれど。閑話休題、一方セツコは後輩の宇野(ビリング推定で真山豊)に、宇野が監督する女子大生と中年のラブストーリーを描くとの8ミリ映画に誘はれる。
 配役残り、活動期間の短さも兎も角、何かしら代表作に恵まれてゐれば時代を獲つてゐてもおかしくなかつたのではあるまいかとこの期に思はれる、絶対美人の鈴木美子は田島の細君・マリコ。だからそこそこ以上の美巨乳も誇る鈴木美子を嫁に持ちながら、余所の女にうつゝを抜かす田島に本格的に腹が立つ、発声は柳沢慎吾のレプリカのソックリさんの隣に住んでる人だし。不完全消去法で西田新太郎が、宇野の8ミリ映画に於けるセツコ演ずるマリの相手役にして、孤高のラッパーEJD似の小林、別に宇野の同級生にしか見えない。そして脆弱な男優部の中何気に役者の違ひを見せつける石神一は、マリコの間男・マコちやん。宇野8ミリ映画の撮影現場にもう一人―だけ―見切れる、まだ幼い顔立ちの男は不明。
 鈴木美子の出演作を何か見られないかと辿り着いた、謎の監督・佐々木良の多分最終作。jmdbで僅かにトレース可能な略歴としては一年間の助監督修行を経て前年「激写!! 本番フォーカス」(脚本:池田正一/主演:秋本ちえみ)でデビュー、十年空けて最後の活動は自主映画「八月の光」(1998/監督・脚本:岩田正惠・桜蘭桃子)の製作。
 映画の中身はといふとピンクを殆ど全てのメインにポスターを貼り巡らせた、宇野のアパートの造形。小林の最後の台詞は「マリ、君の瞳に乾杯」に、映画全体のラストを締める―締まつてはゐないのだが―セツコは「愛とは決して後悔しないことだ、ナンチャッテ」と、良くも悪くもピュアな映画愛をストレートに覗かせる。それでゐて、あるいはそれなのに。驚く勿れ宇野はセツコと小林の絡みを、おまけに本番で大敢行。8ミリ映画といふか、ブルーフィルムでも撮影する気か。となると俳優部の全員が何れかと挿しつ挿されつする格好となり、裸映画的には極めて従順に濡れ場濡れ場を連ね倒した挙句、結局終ぞ物語らしい物語は碌に起動もしない始末。一本調子で中途半端にムーディーな劇伴の選曲も、全体何がしたいのだが生煮え感を加速、より直截にいへば火に油を注ぐ。終始ぼんやりしつつも突発的な絶対値の酷さを叩き込むのは、実は田島の子を宿してゐた美沙宅に、田島が出向いての一幕。脅かすつもりが美沙が本当に手首を切つてしまふ一悶着経た上で、何故か美沙は唐突に別れに同意、即座の正しく舌の根も乾かぬ内に「だから抱いて」。何だそれ、“だから”の意味が全然判らねえよ。尤も、正否はさて措き振り幅を感じさせるのはその件が関の山、全般的には臭いシネフィルぶりを窺はせるものの当の映画は漫然とするばかりで一欠片たりとて面白くも何ともない。いはば、清水大敬スーパーライトとでもいつた風情の一作。ジャケ写に釣られて普通にヌキ目的で借りられた諸兄は、相当ババを掴んだ思ひをなされたのではなからうか。


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 「三十路スチュワーデス 敏感名器」(2003/製作:IIZUMI Production/提供:Xces Film/脚本・監督:西沢幸紀/企画:稲山悌二《エクセスフィルム》/製作:北沢幸雄/撮影監督:清水正二/編集:北沢幸雄/音楽:TAOKA/助監督:城定秀夫/監督助手:北村翼/撮影助手:岡部雄二・広瀬寛巳/スチール:本間あきら/録音:シネキャビン/ネガ編集:酒井編集室/効果:東京スクリーンサービス/現像:東映ラボ・テック/出演:穂高奈月・水原香菜恵・葉月螢・兵頭未来洋・なかみつせいじ)。
 台所からパンすると、少し離れたベッドの上で女が自慰。あれ?開巻は別に全然悪かないぞ。ベッドの手前には、髑髏のあしらはれた掌に乗るくらゐの大きさの容器。接写は上手いこと誤魔化しながらも、穂高奈月が全身抜いてみると寸胴でガックリ来る。女がドクロ容器に目をやると、カット跨いで空港内を闊歩する三十路スチュワーデス。スチュワーデスの松井絹江(穂高)は、チーフパーサーの佐川健二(兵頭)がインドネシアから持ち帰つた媚薬を受け取る。効能は感度と締りの向上、但し塗り過ぎると貝のやうに閉ぢてしまふとのこと。塗つてみた絹江がもどかしい口跡で喜悦した繋ぎで、何故かキネコのタイトル・イン。クレジット明け、空行く機影にオーバーラップする、絹江と同僚の田中萌(水原)の機内での仕事ぶりの、セットすら使ひもしない安い画が鮮やかなまでにダサい。
 配役残り、なかみつせいじはこの人も絹江らの同僚、機長の後藤俊夫。四人での軽く合コン風味のオープンカフェにて、絹江は後藤をロック・オン。これまでの男漁りを改め、生れ変る決意をする。葉月螢は、後藤の恋人・山田愛美。後藤は愛美にとつて六年ぶり二人目の男で、貴方の為に処女を取つておけばよかつただ何だと、鬱陶しい女。一方後藤いはく、いはゆる“太平洋に爪楊枝”の組み合はせ。後藤が愛美に挿入するや、空から舐める砂浜のイメージ・ショット挿入、波音のSEと物悲しげな劇伴が鳴り始めるポップ感が激しく笑かせる。
 何故か西沢幸紀なる変名を用ゐての、北沢幸雄2003年作。潮時加減のヤリマン女が、媚薬を武器にパイロットの玉の輿を狙ふ。媚薬を塗り過ぎた際に唱へる呪文―入手元は祈祷師―が、逆立ちして三回「ケラヒ!ケラヒ!ケラヒ!」といふのは確かに底も抜けつつ、如何にも量産型娯楽映画的な物語の敷居の低さまで含めた完成度自体は、決して酷い酷いと匙を投げるほどでもない。確かに主演女優は寸胴で、口跡もダッチロール。但しそんなことは、単なるよくあるエクセスライクに過ぎない。m@stervision大哥がリアルタイムで仰せの通り名前を恥ぢるくらゐの出来とも、改めて見たところで思へない。尤も、あるいはにも関らず。今作を最後に、北沢幸雄はピンクを離れる。

 既にお気づきの諸兄も多からうけれど、最後にいはずもがなを。因みに2003年といふと、弟子の城定秀夫が「味見したい人妻たち」(主演:Kaori)でデビューを果たした年である。この時何かが終つたのかも知れないが、それでは代りの何かが始まつたのかといふと、結局もう少しどころでなく結構な時間を要したやうな気もする。


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 「熟☆ギャル☆白書 極楽仁王勃ち」(2016/製作:ナベシネマ/提供:オーピー映画/監督:渡邊元嗣/脚本:山崎浩治/撮影・照明:飯岡聖英/編集:酒井正次/助監督:永井卓爾/監督助手:小関裕次郎/撮影助手:矢澤直子・巽亮人/照明助手:広瀬寛巳/スチール:本田あきら/録音:シネキャビン/効果:梅沢身知子/仕上げ:東映ラボ・テック/協賛:GARAKU/出演:立花はるみ・広瀬うみ・中田暁良・竹本泰志・佐倉萌)。
 街中、キャリーバッグを引いたギャルの野田南(立花)が、背広姿の田嶋涼介(中田)に告白する。カワイコちやんの据膳を頂戴しないとは何事か、整理がつかないだ信じられないだと涼介は逃走。「こんなに可愛くなつて戻つて来たのに」と意味不明の台詞を漏らした南は、所変つて川辺で黄昏る。南が髪を止めた不格好に大きなリボンを解くと、所どころか現世ですらない彼岸の、幽霊活動略して“幽活”面接会場。ドラァグな造形の死神(竹本)が、自身の死を認識してゐない南に幽霊への志望動機を質問する。死人(しびと)臨終履歴で自殺した事実を突きつけられた南は、自死の真相を探る目的で幽霊になることを認められる。万華鏡的なガジェットで自殺当時の状況と、同棲相手とかいふ涼介との一戦を見せられた南が、死神に此岸に放り込まれてタイトル・イン。幽活面接会場、次の順番に見切れる血塗れのデブは当然永井卓爾。全体どんな死に方をしたのかといふ以前に、一体何時まで待たせるのか、早く単独デビューして欲しい。
 仕事を持ち帰らざるを得ない涼介の部屋に、南が現れる。すつたもんだの末に明かされる笑、もとい衝撃の真実。以前の南(佐倉)は“子供の頃から熟女顔”の近年稀にみるレベルの豪快な一点突破で通す元々涼介の幼馴染、兼上京後はルームシェアしてゐた間柄で、涼介に想ひを寄せる南が留学と称して海外で全身整形後、戻つて来たものだつた。帰国当初矢張り涼介に二の足を踏まれ、消沈する南の生気を死神が吸ふ濡れ場噛ませて、相変らず涼介の部屋に南が現れキャピキャピどさくさするところに、三人目の幼馴染にして、兼こちらは元ルームメイトの丸岡翔子(広瀬)が訪ねて来る。何故か翔子には見えない南の存在を確認するべく、翔子が持ち出すギミックがチャーリーチャーリーチャレンジ。映画的に再現が容易である点と、何気な同時代性の両立を果たしてみせたのがさりげなく洒落てゐる。
 立花はるみと竹本泰志の絡みに突入した辺りで気がついたのだが、この期に及んだ気の所為か、シネコンばりにクリアな映像に目を見張つたナベ2016年第一作。御愛嬌な地元駅前ロマンに対して相当いい機材を導入したと思しき我等が旗艦館たる前田有楽。新たにデジタルに移行した、小倉名画座の実力や如何に。
 映画の中身に話を戻すとヒロインが好きな彼氏はあの子が好きで、そんなあの子は百合を咲かせる。ただでさへ一筋縄では行かない上に、トライアングルを四人で構成した挙句三途の川まで跨いだやゝこしいことこの上ない三角関係。渡邊元嗣は山崎浩治とのタッグで複雑極まりない間柄を、観客にさうとは知らせぬお気軽な仕上がりに構築した上で、丹念に繙く。やがて佐倉萌が撃ち抜く、重量級のエモーション「南は翔子のことが大好きだよ」。派手な出オチかと頭を抱へさせた破天荒な配役が、この面子でしかあり得なかつたのだとさへ思はせる超絶の結実を果たすや、あとは照れを隠すかのやうなラストまで一気呵成。今なほ映画の美しさと人の真心とを固く信じて疑はないナベの姿が透けて見える、ポップでキュートな、それでゐて肝心要となるとガッチリ泣かせるナベシネマらしいナベシネマ。デビュー以来の生え抜きといふのもそれは当然判らないではないが、大蔵はOPP+に竹洞哲也も兎も角加藤義一の温過ぎて風邪をひきさうな温泉映画を紛れ込ませるくらゐならば、どうしてナベを連れて行かない、エースだろ?


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 「ポルノ チャンチャカチャン」(昭和53/製作:電映/監督:山本晋也/脚本:山田勉/企画:島田美沙子/撮影:伊東英男/照明:出雲清二/音楽:森あきら/編集:竹村編集室/記録:佐藤良子/助監督:宮島利明・大田恵美子/効果:秋山実/録音:ニューメグロスタジオ/現像:東洋現像所/挿入歌『マスマスのつてます』作詞:山本晋也・作曲:峯さだを・編曲:川合英郎・歌:久保新二/協力:ホテル目黒エンペラー・ポルノショップアラジン・日金貿易株式会社/出演:原悦子・橘雪子・乱孝寿・しば早苗・ティミー杉本・与那城ライラ・千葉久美子・早川芳子・山田美江・神原明彦・木南清・桂サンQ・たこ八郎・久保新二・ひろみ麻耶)。出演者中、千葉久美子・早川芳子・山田美江は本篇クレジットのみ。脚本の山田勉は、山本晋也の変名。クレジットはスッ飛ばす配給に関しては事実上“提供:Xces Film”。
 魚眼レンズで捉へた、橘雪子と神原明彦の夫婦生活。カメラに寄つたオッパイなり尻が、厳然たる二次元映画であるにも関らず、立体映画の如く飛び出さんばかりのド迫力。いざ挿入といふ段になると、何故か神原明彦は張形を持ち出しさうとは知らぬカミさん相手に茶を濁しつつ、場面変つてポルノショップにたこ八郎入店。サングラスの中央部を点滅させる店主(木南)と何事か交信したらしきたこ八郎は、棚のビニ本の裏からヘッドフォンを取り出し、エフェクト過多で正直何をいつてゐるのかよく判らない、当局の取締を掻い潜りポルノを製作せよとの指令を受け取る。UFOとロボットを並べて豪快にタイトル・イン、そしてタイトル明けは名曲「マスマスのつてます」がPV風に起動!夜の公園、初めてキスをした原悦子に嫌はれた久保チンは青姦カップル(しば早苗と桂サンQ)を観戦しながら一(ひと)マスかいた後、自棄缶ビールを呷つてゐるとそこに通りがかつた地球に落ちて来たみたいな扮装のひろみ麻耶と出会ふ。サクサクどころかザクザク目黒エンペラーに入つたまではいゝものの、ひろみ麻耶に乗つたつもりの久保チンは、気づくとベンチで全裸で腰を振つてゐるところを警官(不明)に見咎められる。出勤するホワイトカラーが道を急ぐ朝、たこ八郎がポルエフオー二号(ひろみ)に接触、地球人のチンポを変化させる任務を首尾よく果たした旨の交信を交し別れる。実名登場「日金貿易株式会社」に、平社員の田中三郎(久保チン)がションボリ出社。課長の福田武夫(神原)の仲人で結婚を控へた三郎が、自身の超巨根を理由に初夜に贅沢な不安を覚え、係長の大平(たこ八郎の二役?衣装は同じなのだが)も巻き込みグダグダ大騒ぎする一方、婚約者の幸子(原)も、福田の細君・節子(橘)に逆方向からの同じ悩みを打ち明ける。
 配役残り、三郎と福田が、二人でトルコに。与那城ライラが福田の超短小を金平糖と嘲笑するトルコ嬢Bで、ティミー杉本が三郎相手に奮戦しこそすれ、最終的には救急車で運ばれるトルコ嬢A。大平の加はつた三馬鹿で、改めてしば早苗と桂サンQを観戦。官憲が介入してのどさくさに登場する別の青姦カップルの全裸女は、ビリング推定で千葉久美子、男は矢張り不明。恐らく早川芳子は結婚式に見切れる幸子友人のハーセルフとして、残る山田美江がそれらしき頭数から見当たらない。乱孝寿は、三馬鹿が三郎のチンコの相談に訪ねる、造形がよく判らないハマグリ姉さん、この人も救急車で運ばれる。ところで桂サンQに話を戻すと、一時的に桂三枝(現:六代桂文枝)門下に身を置いてゐた、2代目快楽亭ブラック四番目の名前、立川世之介の七つ前に当たる。
 チャンチャカチャンとポスターに躍る赤塚―不二夫―キャラの要素が何処にあるのかはまるでピンと来ない、山本晋也昭和53年第五作。超巨根と小穴に、超短小と大穴。対照的な組み合はせの二組の夫婦が交錯する結婚狂想曲に、当時大流行してゐたUFOブームの影響を受け異星人の地球に対する接触が適当に絡められる。開巻のまんまスパイ大作戦とポルエフオー二号・三号(三号はたこ八郎、木南清が一号?)の暗躍が何気にでもなく齟齬を来す点や、ポルエフオー三号と大平の関係が終に語られずじまひにスッ飛ばされるのには藪蛇感を迸らせつつ、拗れかけた四人が各々元鞘に納まる落とし処は、力技ともいへそこそこには盤石で大団円の名に値しよう。何はともあれ、クシャクシャッとした表情がエクストリームにキュートな原悦子に初見の一撃で恋をした。最盛期にはファンクラブの会員数が七十万を数へたといふ、本格的なアイドルぶりもこの期に及んでなほ全力で肯ける。原悦子がプイッと臍を曲げたりションボリしてみたりキラッキラ笑へば、それだけでその映画はエターナル。さういふ、脊髄に張られた琴線で折り返してみせるのも時には一興ではないか。折り返せ、折り返せ。李師父仰せの「考へるな、感じろ」の境地とは、さういふことであるやうな気がする。


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