真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「絶倫探偵 巨乳を追へ!」(2018/企画制作:ふくよか舎/提供:オーピー映画/監督・編集:横山翔一/脚本:奥山雄太《ろりえ》/撮影監督:新里勝也/助監督:小関裕次郎/制作・衣装:望月麻里/VE:金子豊明/整音:戸根広太郎/音楽プロデュース:ひと:みちゃん/劇伴:松石ゲル/美術:石川茜・酒田科申《ふくよか舎》/美術アドバイザー:柴田正太郎/監督助手:鹿島遼太/撮影助手:梶田基文/Bカメ撮影:立会達也/VE助手:日出健太朗/特殊メイク:玉木康介・石田光/視覚効果:三橋翔太/タイトル:大脇初枝/画像処理:秋野太郎/食事担当:石井潤/ポスター撮影:本田あきら/ヘアメイク:ビューティ☆佐口・上戸良子/演出部応援:広瀬寛巳・永原大裕/制作部応援:小堀亜瑠/アクション指導:中村友則《ふくよか舎》/仕上げ:東映ラボ・テック《株》/タイミング:田中泰晴・小荷田康利/協力:上野オークラ劇場・ステージドア・須田邸・宮嶋信光・角田睦・中村廉紀/機材協力:《有》ジオ・スタッフ/主題歌:『街の灯が消えたら《ハテナシのテーマ》』 劇中歌:『疲れた心にセックス探偵ハテナシ』・『走れハテナシ!《外堀あたりまで》』 作詞・作曲:ひと:みちゃん/出演:春原未来・卯水咲流・きみと歩実・長野こうへい・あらい汎・伊神忠聡・近藤善揮・山岸拓生・奥山雄太・高木健・後藤剛範・滝本より子・屋良ケント・小倉薫・小倉彰馬・桂三若・三富政行・川島直人・簗田薫・木村香代子・折笠慎也・越坂康史・大貫隆行・丸山大悟・藤本裕貴・下城麻菜・大野歩・ビューティ☆佐口・丸山圭・中野美穂・轟雅子・道信瑠璃・ひと:みちゃん・作者本人・福吉大雅・巴山祐樹・並木大介・松原一郎・落合彰吾・おおともひさし・西後知春・びー・たけだりょう・ハメ肇)。出演者中、奥山雄太から後藤剛範までと、屋良ケント以降は本篇クレジットのみ。流れるスピードに比した甚大な情報量、以前に。幾ら何でも字が小さ過ぎんだろ、最前でも見えねえよ。今回はex.DMMで洗ひ直したものの、画質と画面の大きさ如何では、液晶の一時停止でも判読出来ない気がする。
 サラリーマンで賑はふ新橋の夜の町、クロフク(高木)が客を呼び込むクラブにて、女優志望のホステス・ユミカ(春原)は芸能界のコネを出汁に言ひ寄る師匠(桂三若)を手荒く撃退、店長(三富)にコッ酷く怒られる。ションボリしての帰途、ユミカは何者かの影に怯え、現に帰宅してのシャワーを、影が覗いてゐた。一転ポップな主題歌起動、女優部三本柱と、主演の長野こうへいまでジャーンとクレジットした上でドガーンとタイトル・イン。画になる派手派手しさが、ピンク離れしたクオリティ。
 映画好きな両親(屋良ケントと小倉薫/小倉彰馬が子役)の影響で俳優を志す果梨玉男(長野)は、ある意味英才教育で育まれたイマジネーションが常時暴走気味。今日も今日とて、葬式シーンのオーディションで相手役の女優(簗田)に大勃起し撃沈する。大家(木村)から家賃を滞納したアパートも追ひ出され途方に暮れる果梨は、学生時代の演劇仲間・前張達郎(伊神)を頼りピンク映画制作会社「GOカンパニー」に。ヤクザみたいな社長・権座我鳴(近藤)に見初められ、ピンク出演の決まつた果梨ではあつたが、感動的なリハを経てのいざ本番といふ段、相手役のユミカがスタジオから忽然と姿を消す。黒尽くめの男女がユミカを拉致するところを目撃した果梨は、前張に教へられた伝説のダークヒーロー・セックス探偵に助けを求めるべく夜の新橋に。ステレオタイプな支那人の日本語を操るなな(きみと)が違法マッサージを施す店で、人並み外れた洞察力を発揮し果梨が辿り着いたセックス探偵の珍鎮(あらい)は、だがしかし、既に勃たなかつた。
 配役残りex.冨田じゅんの滝本より子は、ユミカが姿を消したスタジオに出入りする、ケータリング「仕出しのくり鳥」のオバチャン。出演だとカメオの清水大敬2012年第二作「発情バスガイド おしやぶり巨乳」(主演:中居ちはる)、声のみの参加でも後藤大輔2013年第一作「艶めき和服妻の痴態」(主演:周防ゆきこ)以来となるそこそこカンバック。夫婦なのか、後藤剛範がもう一人のくり鳥・大男。卯水咲流は、果梨が店長になつたばかりの違法マッサージ店をガサ入れする女刑事・彩。滅多に撃ちこそしないが、矢鱈と脊髄で折り返して一般市民にも銃を向けるトリガーハッピー予備軍。山岸拓生は警察庁長官・締義正、ミソジニーの塊。そして殆ど誰でも変らない奥山雄太が、義正の息子・義雄、ユミカの大ファン。友達でもなければ全員見切れる訳がない―ついでにクレジットは読めない以前に見えない―膨大なその他俳優部中、僅かに確認出来たのは劇中ピンクの現場で果梨の前に、ユミカと絡んでゐた折笠慎也のみ。
 OPP+版「新橋探偵物語」が結構早くから単騎公開自体は先んじて決まつてゐた割に、ポレポレ東中野に於ける城定秀夫の「恋の豚」(2/2~2/15)が終つてから漸く、アップリンク渋谷での上映スケジュール(3/16~何時まで?)が発表された、横山翔一長篇デビュー作。ど頭で謳はられるかとも予想した、第一回大蔵映画新人監督発掘プロジェクト最優秀賞に関しては触れられず。「マジカル・セックス 淫ら姫の冒険」(監督:山本淳一/脚本:大畑晃一・山本淳一/主演:阿部乃みく)・「デコトラガール 天使な誘惑」(監督・編集:柿原利幸/脚本:川﨑龍太・唐戸悠・木村洋輔/プロデューサー:藤原健一/主演:天使もえ)に続き、大絶賛お盆封切りでトリを務める、2018オーピー完全外様のピンク映画新規参入作である。
 発動中何故かフィルム映写機のリール音が鳴る、第六感のシックスもとい“セックスセンス”で難事件を解決し巨悪に立ち向かふセックス探偵が、行方を眩ませた女を捜し新橋の町を奔走する。清々しく相応しい物語は、覚醒後果梨のダサいメタルフレーム―と滝本より子を拘束するユッルユルの緊縛―に目を瞑れば、端役まで含め穴のない分厚い俳優部と、手慣れた素面でカッコいい画像処理も駆使する、隙のない演出とに加速され軽快に走る。攫はれたまゝ暫し退場せざるを得ない、春原未来がビリング頭にも関らず最たる劣勢を強ひられる匙加減の難しさはさて措き、年を跨いで上野の四代目を襲名したきみと歩実と、ピンク四戦目にして初の非旦々舎参戦を果たした卯水咲流は鉄板の安定感。キュートでファニーなななのアルアルに勝るとも劣らぬ、がらつぱち造形を彩がテンポよく弾けさせての、セクセン発動条件を巡るドタバタは激しく笑かせる。綺麗に締める、ラストも十全、に、しては。異形の恋といふ伝統的なエモーション自体は酌めなくもないにせよ、徒にバッド・テイストかつ、不用意に映画を湿らせる方向に振れてみせるのがどうにもかうにも解し難い。一息にスッカスカ、もといスカッと駆け抜ければよかつたのに。監督自ら“結末やストーリーが変はつてます!”と臆面もなく公言する、OPP+版を観るなり見れば腑に落ちるのか?欲張らうと思へば欲張れた濡れ場は量的にも金玉を踏み抜くには遠く、裸映画的には精々習作程度。かといつて、素面の娯楽映画としてもさうさうワーキャー騒ぐほど面白いのかといふと、甚だ怪しい一作。詰まるところ、ある意味予想外の充実を見せる本隊に対し、外様新規参入トリロジーは三連敗。マジセク論外、一見一番マシなのは新橋に思はせて、実は障りがないのはデコトラかも。全く以てプレーンで、当たりもしないけれど。

 よくよく反芻してみると、女を捜して貰はうとした男が、自ら探偵となる。即ち、依頼人の存在しない探偵物語といふのはなかなかの変則。シリーズ化が噂されなくもないものの、半年も経過したこの期に続篇の話は一切全く欠片たりとて聞こえては来ない。今回少なくともピンク版では果梨がADAM本体と邂逅さへしてをらず、作らうと思へばどうとでも膨らませるなり転がせられる、筈。


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )


« 日本発情列島... 新・したがる... »
 
コメント
 
コメントはありません。
コメントを投稿する
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。