真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「ザ・ブラインドキャット」(1992/製作:ファントム プロダクツ/監督・脚本:小林悟/制作・企画・原作:中山康雄/撮影:柳田友貴/照明:佐久間優/美術:安部衛/録音:山崎新司/編集:金子尚樹/殺陣:二家本辰巳/ガンアドバイザー:BIG SHOT/選曲:ビモス/助監督:青柳一夫/制作担当:最上義昌/撮影助手:宮本章裕/照明助手:織田裕介/編集助手:松木朗/効果:井橋正美/小道具:長田征司/ヘアメイク:田中尚美・太田美香/スチール:佐藤初太郎/タイトル:道川昭/車輌:ランナーズ/監督助手:増野琢磨・杜松蓉子/宣伝担当:鵜野新一《キングレコード》/コーディネーター:岡崎恭子《キングレコード》/協力:ホテルニュー塩原・ニューメグロスタジオ・日本コダック㈱・東映化学・KPニュース社/挿入歌:『薔薇の囁き』作詞:千家和也 作曲:葵まさひこ 編曲:葵まさひこ 唄:中村晃子《キングレコード》/出演:高橋めぐみ・国舞亜矢・片桐竜次・牧冬吉・野口貴史・二家本辰巳・沢まどか・港雄一・山本竜二・白戸正一・石神一・芳田正浩・奈切勝也・池田龍二・丘慎二・塚田亘・熊倉盛揮・石井浩・宮崎基・松岡稜士・所博昭・大滝明利・甲斐純一郎・米沢裕・宮田博一・福永喜一・前田悟・高野ひろき・中島正・浅野桃里/特別出演:淡谷のり子・岡部瑞穂・中村晃子)。
 川の中、一対三で乱闘する大滝明利。ザックリした塩原温泉の遠景に、唐突なタイトル・イン。鳴り始めた歌謡曲のやうな劇伴に即効不安を覚えかけてゐたら、要は主題歌の歌謡曲だつた、イントロぢやねえか。JRバス関東塩原温泉駅に降り立つた、盲目で流しのマッサージ嬢、だなどと如何にもアレしかない設定の宮川霧子(高橋)が、逃げる大滝(大絶賛仮名)と早速ドンピシャのタイミングで交錯する。大滝が兄貴分の中西(不明)と、何某か大きな取引に使ふと思しき―ヌード写真のテレカを加工した―割符を確認する、準備中の喫茶店「キャンドル」に霧子も入店。目が見えないのを看て取り、脊髄で折り返して手を出さうとした二人を、霧子は合気系の長けた体術でサクッと斥ける。退散させた霧子が仕込み杖で三人屠る死闘を回想して曰く、「私はまた、抗争事件に巻き込まれるのかしら」。何が“また”なのだか全ッ然判らないが、兎に角要は女座頭市がヤクザと一戦交へる、本筋に強引か豪快に導入するダイナマイトな独白に震へる。続けて―だから開店前の―キャンドルに現れた、割符を狙つてゐるぽい田宮章子(国舞)を霧子は捕獲。章子から聞いた町の様子が、三年前に地場の組が解散して以来、大組織傘下の東雲興業が進出。売春・麻薬・賭博に闇金と、温泉街を好き放題に荒らしてゐた。とりあへず「CAT美療」―全角は劇中小道具ママ―のチラシを撒いて回る霧子は、章子の口利きで実名登場「ホテルニュー塩原」の専属に納まる運びとなる。
 辿り着ける限りの配役残り、幾らヒット・アンド・アウェイな一幕限りの出演にしても、何がどう転んだコネクションなのか見当もつかない淡谷のり子は、ホテルニュー塩原の女将。女将補佐的な風情で付き従ふ岡部瑞穂が、ニュー塩原の当時リアル女将。流石に淡谷のり子ともなると、リアル女将を従へて些かの遜色もない貫禄がある。小林組刻印の火蓋を切る白戸正一と沢まどかは、女将のドラ息子とそのお目付役。白戸正一といふのが、寡聞にしてこれまで知らなかつたが前年薔薇族での、白都翔一デビュー当初の旧名義。音は変へずに、随分と華々しくなつた。白影役で御馴染の牧冬吉は、霧子の塩原最初の客・平林。東雲が画策する大規模な拳銃密輸入を追ひ塩原に入つた、警視庁特捜部の刑事、てんで役には立たないけれど。片桐竜次が、当然中島もとい中西らも草鞋を脱ぐ東雲興業の、肩書はあくまで社長・西東。野口貴史が代貸で、二家本辰巳は本部づきの針木。そして矢張りこの人がゐないと、小林悟の映画は始まらない。中途半端なビリングは解せぬ港雄一が章子の祖父で、四年前の昏倒以来、床に臥せるシンジロウ。一年後に解散した、田宮一家の十代目。浅野桃里は、白戸正一が入れ揚げるキャバレーのホステス・テルちやん。実は中西の情婦とかいふ、類型的な関係性が清々しい。奈切勝也は博打で負け東雲に三千万の借金をこさへる、シンジロウに対する呼称がお爺ちやんの割に、兄貴かと思ひきや章子からは叔父さんとか呼ばれる釈然としない親族。石神一と芳田正浩は、終盤東雲が田宮家に乗り込み、章子が囚はれて以降大活躍する東雲要員。ピンク部・ストリーム・アタックのトリを務める山本竜二が、一度は針木に屈し拘束された霧子と、サシの絡みも敢行する黒沢か黒澤。満を持してといふか何といふか、兎も角途方もないデウス・エクス・マキナぶりを爆裂させる中村晃子は、未確認飛行物体みたいな帽子を被つた片桐警視。
 ほかの記載が見当たらないjmdbを鵜呑みにするならば、大御大・小林悟最初で最後のVシネ、変名とかもう知らん。案外素手の格闘も普通にこなし、得物は仕込み杖に加へ暗器も駆使するだけでなく、果てはデリンジャー的な小型拳銃まで携行する霧子の、非常識に高い戦闘力の所以なりバックグラウンドに半カットたりとて触れることもないまゝに、粛々と、あるいは―概ね―テンプレ通りに進行する湯煙エロティック・バイオレンス。興味深いのが高橋めぐみの女座頭市が、綾瀬はるかには及ばない程度にサマになる。ダッチワイフ顔の最大の元凶たる、見る者を不安にさせる病的に表情のない目をサングラスで隠すと、まあまあの美人で通らなくもない。大浴場に於いての立回りで明らかな如く、どうやらスタントダブルも使はずに、体もそこそこそれなりに動く。そしてピンクゴッド・小林悟を連れて来ておいて、女の裸的に手ぶらで帰す訳がない、筈。割符以外の初オッパイは、二十四分漸く浸かる、主演女優の風呂まで待たせる。その後も浅野桃里と白都翔一による濡れ場らしい濡れ場がありつつも、超絶スタイルの国舞亜矢を全体何処まで温存する気なのかと、さんざやきもきさせ倒しての終盤。やつとこさ石神一と芳田正浩が抜群のコンビネーションでヒン剥いた!と歓喜させたのも束の間、難解な画角で頑なにTKB―剝かれる際、瞬間的に見切れてはゐる―は回避するのかと、一旦落胆させておいて。遂に解禁、しはしたものの。折角なのでそこは、ねちねち執拗に揉み込むショットが、どうしても欲しかつた心は大いに残す。無論、小林悟ならではのフリーダム通り越してブルータルなツッコミ処は満載を超えた過積載。霧子の明々白々な銃刀法違反は歯牙にもかけられず、元々半死半生のシンジロウはおろか、章子をもが何時の間にか命を落としてゐたりする無体な展開には、虚無に片足突つ込んだドライなビートが吹き荒れる。ドスを抜いた針木がシンジロウをサクッと刺す、無造作なカットに吃驚したのが方向の正否は問はないベクトルの最大値。挙句最終的には、中村晃子が美味しいところを全部カッ浚ふといふか、より直截には卓袱台を床板ごと引つ繰り返す。ついでに、デリンジャーが走つて逃げる相手に当たるどころか届くのか?そもそも小林悟が招聘された企画の経緯自体謎といへば謎な、出鱈目なおかずばかりの幕の内弁当を思はせる一作。人様に臆面か性懲りもなく勧められるくらゐ面白くもないが、途中で見るのをやめてしまふのを我慢するほどでもない。世評はこつちの方が高い、続篇の「妖闘地帯 KIRIKO」(1994/製作:ジャパンホームビデオ/監督:宮坂武志/脚本:宮坂武志・内藤忠司・中村雅/主演:高橋めぐみ)も今作同様素のDMMに入つてゐるゆゑ、何時か遠く時の輪の接する辺りで、気が向いたら見てみよう。


コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )




 「変態姉妹 ナマでお願ひ」(1995『エッチな姉妹 出張逆ソープ』の1998年旧作改題版/製作・配給:大蔵映画/監督:小林悟/脚本:如月吹雪/撮影:柳田友貴/照明:荻久保則男/編集:㈲フィルム・クラフト/音楽:東京BGM/助監督:国沢実/録音:シネ・キャビン/効果:サウンドBOX/スチール:佐藤初太郎/フィルム:AGFA/現像:東映化学㈱/タイトル:ハセガワ・プロ/協力:東京TSミュージック/出演:田村ちなみ・氷室真由美・東美由紀・吉行由美・門倉達哉・白都翔一・樹かず・港雄一)。
 逃げる男と追手が四人、マルイ表の新宿にタイトル・イン。追はれるのは出張ホストの木下浩(門倉)で、追ふのは樹かずをリーダー格に、国沢実は含まない特定不能のその他三名。「チキショー、あの女の亭主がヤクザだつたなんて」と、木下の清々しい説明台詞を経て回想パートに突入。最終的には木下がチェンジを喰らつたクライアント(氷室)が、ヤクザの女房であつたとかいふ次第。動体視力のテスト級に、TSミュージック(2017年閉館)の看板を何故か瞬間的に抜いた上で、木下と、帰宅途中の女子高生・繭(田村)が交錯する。
 配役残り港雄一が、四人を引き連れ木下自宅マンションの外階段踊り場に陣取る、氷室真由美の旦那で何処ぞの組長。組長自ら、堅気相手に出張んなや。白都翔一は、繭が元々二人暮らししてゐた姉の、内縁の夫か情夫・永山。姉との関係継続をちらつかせ、日々繭に手をつける。そして鬼の形相で田村ちなみと白都翔一の絡みに介入する吉行由美が、繭の姉・裕美。裕美のレイジの矛先は、永山ではなく繭に。すつかり消沈して肌を隠す繭のすぐ傍ら、裕美と永山がオッ始める一幕。頻りに繭にも伸びる永山の手を、裕美が無言で払ひ続ける人を喰つたシークエンスが堪らない。何はともあれ103cmを刻み込む東美由紀は、ヤサにも戻れない木下が頼る、ソープのユキさん。繭は裕美から脊髄で折り返した、無造作な無体さで放逐。一方ユキからも袖にされ、帰るアテも行くアテもなく途方に暮れる木下は、漏れ聞こえるハミングの野ばらに誘はれ、取り壊し予定の母校中学校校舎に忍び込んだ、繭と再会する。と、いふか。新宿にて一回交錯してゐる以上、厳密には確かに再会である筈が、繭と木下のサプライズをものの見事にスルーして済ます豪胆な大らかさが、貫禄の大御大仕事。
 バラ売りex.DMMに新着する度ホイッホイ飛びついてゐるのに、彼岸、もとい悲願のハンドレッドにはまだまだ、まだまだ果てッしなく遠い小林悟1995年第三作、ピンク限定第二作。姉の男から要は日常的に犯されてゐたどころか、寝取つたと誤認した姉に追ひ出された少女と、下手を打つた大学生の出張ホストが都会の片隅にてミーツする。と掻い摘むと一応映画的な物語にも思へ、如何にもTS臭い美人ではあれ表情の乏しい女優部と、万事頓着ない小林悟の、ある意味器のデカい演出とに遮られ、情感は一向に深まらない。頑ななまでに悲壮感を拒む繭の浮き足立つた造形には、寧ろ自動なり通俗的、あるいは惰弱な感情移入を拒む、厳格なストイシズムをも覚えるべきなのか。小林悟映画の常で、たとへば久須美欽一の如く何気に長けてゐる訳でもないのに、港雄一の途方もなく長い濡れ場を通して繭がその身を捧げたにも関らず、結局一件を収束させる切札は、だから堅気のセイガク相手にエンコ。小指を失つた木下と繭が、兎も角新しい日々を迎へる的なぞんざいなラストには、最早ある種の虚無主義さへ漂ふ。

 さて、豆腐に鎹でも打つか。元題は繭と裕美の“エッチな姉妹”に木下の施す“出張逆ソープ”と、実際の本篇に珍しく綺麗に即してゐる。他方新題に関しては、“変態姉妹”のグルッと一周した無味乾燥さはこの際さて措き、姉は兎も角、少なくとも妹の方は永山と木下に劇中都合二度装着を求める、明々白々なコンドーム推奨映画であつたりもする。


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )




 「生抜き温泉芸者」(1997/製作・配給:大蔵映画/監督・原案:小林悟/脚本:伊藤清美/撮影:柳田友貴/照明:ICE T/編集:フィルムクラフト/音楽:アンサンブル J/助監督:堀禎一/スチール:大崎正浩/タイトル:ハセガワタイトル/効果:タムサウンド/録音:シネキャビン/現像:東映化学㈱/協力:浅草ロック座・上山田温泉 参見番/出演:上城唯・葉月螢・久保谷紅子・港雄一・坂入正三・河合純・牧村耕二/協力出演:薩摩剣八郎・高竜也・若林とめ・東中野酔狂連)。協力の参見番は1997年当時、浅草ロック座会長・齋藤智恵子が経営してゐた上山田温泉(長野県千曲市)の芸者置屋。
 またしても2016年に上野で上映してゐた割に、麗しの七色王冠開巻、全然弄らずにかけたのかな。本篇の火蓋は対面座位の要領で芸者を抱へた男が、足と尻だけで競争する御座敷芸。芸者は三本柱の雛子(上城)・ミツバ(葉月)・コヨミ(久保谷)に、客要員は東中野酔狂連。ほかに酔狂連を接待してゐると思しき牧村耕二まではいいとして、三味ともう一人馬鹿騒ぎの輪から少し離れ、ニコニコ酒だけ飲んでるのは若林とめと高竜也(ex.池田正一)?兎も角、参見番から結構箍の外れた本格的な大人数、芸者の大軍がゾッロゾロ出撃する画にタイトル・イン。公式サイトが繋がらないため、参見番が現存するか否かは不明。クレジット中は芸者の行列から、画は不意を突いて夏祭りにスイッチ。射的に興じる港雄一が、さりげなく見切れる。
 クレジット明けは久保谷紅子の濡れ場を、牧村耕二が介錯する。銘々の設定程度が関の山で、らしくもらしからずもなく物語が存在しないゆゑ、サクサク配役残り。港雄一は、リストラされたとかで当地に逗留する市川、元の役職は部長。河合純は、婚約指輪を一旦雛子の左手薬指に通しまでしたex.恋人・カズオ。長野で親爺の会社を継ぎ、三代続く芸者稼業に帰郷して身を投じた雛子と邂逅する。坂入正三は、ミツバの上客・モリヤ、煎餅屋。薩摩剣八郎は、ジャンケンに勝つても負けても雛子が脱ぐ、不条理な野球拳に戯れる何処ぞの社長。問題が、剣八郎を接待する側の三人組(男二人×女一人)。秘書(メガネの女)を連れる立場の真中に座る男が、何処ッからどう見ても中田新太郎にしか見えない件。
 ピンク映画前作に続きバラ売りex.DMMに新着した、薔薇族一本挿んで小林悟1997年最終第六作。大御大にどれだけ需要があるのかは知らないが、打撃戦に応じる覚悟で、配信されるなり見るんだぜ。川崎に移りソープ嬢に転身する、あへていへば“のみ”のコヨミは兎も角、縁談を破談にされた男と再会する雛子に、宿したモリヤの子を堕ろすミツバ。実は脛に派手な傷持つ市川まで含め、恐らく伊藤清美は盛り込まうとしたと思しきドラマの種は諸々なくもない、ものの。あれやこれやも何もかも、事もなげに等閑視してのけるのが小林悟。精々散発的な一幕一幕が、起承転結も満足に起動しないまゝ漫然と連ねられた果て。尺も四分の三を通過したタイミングで五分半火を噴く夏祭りパートが、劇映画とは殆ど別の領域へと今作を弾き飛ばす。上城唯は百歩譲つてまだしも、片肌脱いだ在りし日の齋藤智恵子が、二人上に乗つて団扇を振る山車を延々、より直截にはダラダラ追ふ一頻りは、記録映画といふほどの代物でさへなく、わざわざ35mmフィルムで撮影したホーム・ビデオくらゐにしか見えない。サカショーがヘドバンばりに天パを高速振動させるエクストリームなハモニカなり、上城唯の威勢のいい鉄砲乳といつた琴線の触れ処も絶無といふ訳では必ずしもないにせよ、映画丸ごと底を抜いた上で、雛子が市川がお勤めを終へるまでに、祖母の形見である三味線の上達を誓ふラスト。唐突に暗転、銀冠菊一斉打ちのそれはそれとして見事なショットに“完”を叩き込んだのちの容赦ない静寂は、ヒャズ・レフト・ザ・ビルディングとでもいはんばかりの、有無をいはせぬ正体不明の迫力を後に残す。

 新着記念に、久々もしくは改めての与太。当サイトが小林悟に“大御大”の尊称を冠するところの所以は、何時だつたか上野オークラの公式ブログが小川欽也に対して“御大”と称したのを目にし、小川如き若造と同じ御大扱ひでは小林悟に失礼だらうと思ひ、サモ・ハン・キンポーの大大哥に倣つて、御大に大をもうひとつ重ねたものである。小林悟と小川欽也といふと、実は四つしか生まれ年は違はないんだけど。


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )




 「エロ教師 ONANIEづくし」(1997/製作・配給:大蔵映画/監督・脚本:小林悟/撮影:柳田友貴/照明:ICE T/編集:フィルムクラフト/助監督:堀禎一/スチール:佐藤初太郎/タイトル:ハセガワタイトル/録音:シネキャビン/現像:東映化学㈱/協力:若松劇場/出演:大倉由希恵・細川しのぶ・風間今日子・久須美欽一・坂入正三・河合純・樹かず・港雄一)。協力の若松劇場―頭に船橋がつくのが正式名称―は、同年一月大倉由希恵がデビューしたストリップ小屋、2013年八月末で閉館してゐる。
 マンション外観から軽く寄り、バスタブ内でシャワーを浴びる女の下半身。肉づきで判らぬでもないが、ティルトアップするとショートカットの細川しのぶ。正直、ネイティブな仏頂面が際立つ。電話に呼び出された三上―三上の漢字は当寸法―冴子(細川)が慌てて風呂から出ると、最近不登校の妹・瑠美を捜させてゐた恋人の金井から。他人に捜させた挙句家で湯なんか浴びてゐないで、お前も動けといふ脊髄で折り返した論難は細川しのぶのオッパイに免じてさて措くとして、瑠美が男とホテルの中に消えた目撃情報を聞くや冴子が体に巻いてゐたバスタオルを落とす、裸と映画の二兎を追つたポップな演出がそこはかとなく琴線を撫でる。毎朝一緒に家を出る瑠美が学校には行つてゐない事実を、担任の坂本加奈子(大倉)のアクシデンタルな家庭訪問で冴子は知る。遣り取りを交す加奈子と冴子を、カメラがまるでといふかまんまピンポン感覚で単調に行つたり来たりする、グルッと一周してアバンギャルドな回想を経て、傘の柄でグリグリする股間のアップに、加奈子は加奈子で瑠美を捜し奔走する画を繋げてタイトル・イン。腰回りだけで、傘の主が細川しのぶでも風間今日子でもないのも看て取れる。
 クレジット明けはホテル「スタークレセント」、瑠美(誰か判らんアテレコの風間今日子)が、一度きりしか呼称されない固有名詞を聞き取れなかつた港雄一に尺八を吹く。冴子と金井(河合)がスタクレに飛び込むも、一足違ひで瑠美らは離脱した後。泣きだして自身の妹に対する無関心を責める冴子に対し、金井が必ず捜すと慰めながらもそのまゝ大絶賛和姦に突入する大御大展開には、釣られたら負けを承知の上で、確かに姉がそんなだからと草を生やさざるを得ない。一方、こちらは真面目に生徒を捜す加奈子は、タギングだらけの公園のベンチで、ミッチ以下年金生活者の前川(久須美)に、リストラされ妻子にも逃げられたゆゑ、“リストラ”だとかどストレート且つあんまりな綽名で二人からは呼ばれる広沢。見るから怪しげな三人組と、一緒の瑠美を発見する。配役残り樹かずは、カジュアルver.の加奈子に声をかけるナンパ師。正しく第一声だけ聞かせて、カット跨ぐと即ベッド・インとかいふ清々しいまでの絡み要員。
 半ドレッド戦はそれでも見果てぬ遠い夢なのか、バラ売りex.DMMに新着した小林悟1997年第四作。2016年五月末、上野に旧題ママ―2000年新題が「高校教師 ゆびで漏れる雫」―で来てゐるため、ツートンOPかと思ひきや大蔵時代の王冠開巻に面喰ふ。この辺りの一見ランダムさに、何某かの法則性は果たしてあるのであらうか。
 開巻から飛ばす細川しのぶは、一濡れ場こなすと河合純ともども潔く退場。瑠美が何時の間にかあるいは何が何だか何となく更生するほかは、物語らしい物語も例によつて存在しない、ねえのかよ。肝心要の主演女優はといふと、瑠美の居場所と称して連れ込まれたラブホにて、まんまと三人組に輪姦されるや何はともあれもしくは何が何でも性的に点火。したものの樹かずにも満足出来ず、“ONANIEづくし”に及ぶといふ次第。常識的な映画文法の範疇では木に竹すら接ぎ損なふ、出し抜けなり乱雑な挿入にせよ、板の上での持ち芸であつたのか摩天楼と恐らく若松の舞台上での、手替へ品替へするワンマンショーは確かな完成度。足が正直長くはないものの、スレンダーな大倉由希恵がそこそこ以上に美人で、髪を纏めエレガントなおメガネで武装した女教師ver.のノーブルさと、案外ラフな普段着との対照も何気に光る。更に特筆したいのが、家でも社会でも、広沢の場合は会社から邪魔扱ひされ公園にたむろする、久須美欽一×港雄一×坂入正三の、大御大版ゲーターズとでもいふべき絶品の3ショット。久須りんに至つては、その両方に名前を連ねてゐる、偉い!何故か皆が皆グダグダ仲良く中折れしつつ、代る代る一人の女に群がるシークエンスは、輪姦のエクストリームとは全く別種の、穏やかなユーモアを惹起しなくもない。ハモニカの順番を巡り前川が広沢を突き飛ばすどさくさ紛れのギャグや、一旦上手く勃たず、再度加奈子にリベンジを挑む前川に広沢が声をかける、「頑張つて下さいよ」の援護射撃には微笑ましさをも覚える。ポリコレ?そんなもの小林悟を見るか観る時には、箱に入れて鍵をかけて棚の上にでも仕舞つて、仕舞つたことさへ忘れてしまへ。


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )




 「十八歳・のぞいて開く」(1996/製作・配給:大蔵映画/監督:小林悟/脚本:如月吹雪/撮影:柳田友貴/照明:真崎良人/編集:フィルム・クラフト/助監督:佐藤吏/スチール:佐藤初太郎/タイトル:ハセガワ・プロ/録音:シネキャビン/現像:東映科学《株》/出演:河原めぐみ・青井みずき・桃井良子・残間ゆう子・坂入正三・芳田正三・志良玉弾吾・白都翔一)。初めて見た芳田正浩の芳田正三名義は、恐らく、あるいはどうせサカショーに引き摺られた単なる誤植にさうゐない。
 麗しき七色王冠開巻、一人娘で高校三年生の森ひなこ(河原)が、父・一郎(坂入)が再婚した両親の寝室を覗く。残間ゆう子が、未だひなこが母とは認めてゐない後妻の信子。残間ゆう子と坂入正三による、コッテリとした濡れ場。無闇に揺れるカメラも兎も角、合はせる気のサラッサラ窺へないリップシンクが清々しい。ヤリ遂げた上で校舎外景、ひなこの担任・西岡(白都)のスパルタ補習。“このクラスの平均点を著しく下げた貴様等”と痛罵される対象者は、教科書よりも鏡を見てばかりのコウダ真美(青井)に、留年生活幾星霜の池田篤(志良玉)。見覚えがウッスラなくもない志良玉弾吾(非佐藤吏)が、何者の変名であるのかには辿り着けず。そして、パパを困らせたいだとか子供じみた理由で、答案用紙を白紙で提出したひなこ。無防備に下衆い西岡を適当に言ひ包めたひなこを、皆で「やつたね!」と讃へてタイトル・イン。ここで久々につき改めて整理すると、青井みずきといふのは、子役時代に戻したらしい相沢知美(1997~/a.k.a.会澤ともみ)の裸稼業デビュー時名義。jmdbには今作以降の記述しかないものの、池島ゆたか1995年薔薇族込みで第四作「色情女子便所 したたる!」(脚本:岡輝男/主演:柚子かおる=泉由紀子)の存在が、少なくとも確認出来てゐる。一目見ると誰でも相沢知美と判るほど顔は完全に出来上がつてゐる反面、首から下は未成熟色濃くガリガリ。所々尻が青いのが、それは痣か何かなのか、まさかの蒙古斑なのか。
 配役残り、豪華にも純然たる絡み要員の桃井良子は、ひなこ・真美・篤が廊下から固唾を呑む教室にて、西岡に喰はれる教育実習生。ひなこの豪快な和姦見解で、ザクッとスルーされる無造作な展開も、絡み要員にはグルッと一周して相応しい。だから正三でなく芳田正浩は、ひなこの家庭教師。

 残弾数、ゼロ!

 終にバラ売りにすらex.DMMに未見ピンクがなくなつた、小林悟1996年第一作。後生だから、新着させて貰へまいか、需要の如何は保証しかねるが。当サイトはまだまだ、もつともつと大御大が見たい。いよいよ以て、最終章のその先の、薔薇族の蓋を開けるほかないのか。
 性懲りもない繰言はさて措き、ex.DMMに脚本を絶賛するコメがついてゐたのを、遂に―最も単純な確率論からは―小林悟が四、五本は撮つてゐておかしくない、百本に一本の一作に巡り会へたのか。とときめきかけたのは、勿論糠喜び、当然糠喜び。糠喜びに決まつてんだろ、学習能力といふ言葉を知らんのか間抜け、僕だけど。ひなこの進路相談で再会した元カノである信子を、今でいふリベンジポルノで脅迫する形で西岡を全方位的な絶対悪に据ゑてみせた辺りは、小林悟の映画にしては上々の構成かと南風を吹かすにせよ、依然脚本を絶賛するには果てッしなく遠い。全体コメ氏は、何の映画を視聴されてゐたのか。時制が謎な西岡が信子を手篭めにする件に、篤に続き西岡に撃墜された真美の、自主退学をひなこが必死に思ひ留まらせる一幕が直結される木端微塵な脈略の大御大編集にクラクラ来てゐると、帰宅したひなこが、事後に直面するとかいふ寸法。断じていふが、そこまで見ないと絶対に話が繋がらない。強ひてポリアンナばりによかつたを探すばらば、挿入と連動して劇伴が鳴り始め、完遂とエンド・マークの“完”がシンクロするラストの裸映画的―には―磐石くらゐ。当面最後の一本も、相変らず何時も通りの大御大映画。余韻なり感傷に浸る余地を欠片も残さない徹底的、あるいは完膚なきまでのドライさに、寧ろ小林悟の小林悟たる所以を見るべきなのか。それでも俺は、小林悟が見たい。


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )




 「女子大生 スカートの中」(1992/製作・配給:大蔵映画/監督・脚本:小林悟/撮影:柳田友貴/照明:小野寺透/編集:フィルム・クラフト/助監督:杜松蓉子/録音:銀座サウンド/現像:東映化学/出演:冴木直・桜井あつみ・杉原みさお・石神一・白都翔一・坂入正三・朝田淳史)。
 通称“スノー学園”―在学生同士の会話の中では単に“スノー”とも―こと、白雪女子大学の銘板開巻。白女生の亜貴子(冴木)と千浪(桜井)がそこら辺のベンチに腰かけて、暫く大学に出て来ない由香利の話に。由香利は姉夫婦宅に居候してゐるとの設定で、姉要員に板垣有美の顔が浮かんだのは純粋無垢な早とちり。姉宅にかけてみる電話を二人で押しつけ合つて、組み替へる足にタイトル・イン。各個人の携帯電話所有がギッリギリ当たり前でなかつた、時代ならではのアバンではある。
 亜貴子にレポートを書かされるタケシ(白都)が、誘拐されたと助けを求める由香利の留守電に仰天する。一方、その頃シャワーを浴びてゐる亜貴子は早く来た生理に眉を顰めつつ、血は亜貴子の股の間からではなく、天井から落ちて来てゐた。その旨を告げる、亜貴子の尻に血が滴るカットはサスペンス的にも結構な出来であつた、にも関らず。結局上の階のオバサンが、梅漬けの瓶を引つ繰り返しただけとかいふどうでもいいオチには錯乱しさうになる。ねえ、何がしたいの!?その、木に竹も接がない一幕は何のためにあるの!?それなりのサスペンス演出まで繰り出して、何で蛇の足にも満たないエピソードで予め規定された尺を削るの!?意味を解さうとしたら負けなのか、正体不明の敗北感に打ちのめされる。
 兎も角、あるいは気を取り直して配役残り、朝田淳史は、千浪にレポートを書かされるヒロシ。女子大生が、レポートを書かせた男と―課題もそこそこに―セックスする、のが所与の条件として成立してゐる世界観。最早完全無欠、英雄的な天才映画監督と、小林悟を讃へるほかない、自棄起こすなや。再度強ひて気を持ち直し、己を奮ひたゝせ杉原みさおが、一年前の夏、三人で下田に行つた由香利。ツーリング中の石神一の単車に喰ひついた由香利を放置して、亜貴子と千浪は風呂に。その間、軽く二尻を満喫した由香利は、まんまと石神一に犯される。光量はまるでコントロール出来てゐないものの、全裸に剝かれた由香利が木々の中を逃げる画が結構エロい。石神一に中で出されての妊娠疑惑に怯えた由香利は、堕胎費用を稼がうと六本木で夜の街デビュー。酔つたフリしての“抱きつきスリ”―劇中用語ママ―に開眼するも、半ヤクザの柳川(坂入)に捕まり、継続的に手篭めにされるどころか売春を強要されるに至る。斯くもへべれけな転落展開で、映画が暗く地の底まで沈まないのが小林悟は本当に不思議、常に乾いてゐる。
 シネフィルでもあるまいし、国映作づくのもらしかねえなと、息抜きに大御大・小林悟1992年第三作。四の五の野暮な不平を垂れながらも、この人の映画に何だか落ち着く心持ちを感じなくもないのは、絶対にどうかしたか弱つてゐるからにさうゐない。
 今回小林悟が繰り出す、思ひもよらぬ方向から弾が飛んで来るアメイジングな飛び道具が、何と1990年に刊行され何やかや話題を呼んだ呉善花の『スカートの風』。とは、いへ。書名まで挙げ『スカートの風』を切り出しておいて、通俗的未満に他愛ない処女膜談議から、冴木直の「複雑なんだよね」の一言で雑に収束して済ます辺りが、流石の大御大。といふか、よもやまさか公開題がそこから流れて来てゐようだなどと、夢にも思はなかつた。寧ろ小林悟の「女子大生 スカートの中」といふ一作が、呉善花の『スカートの風』をフィーチャーしてゐるかも知れないと考へる方が、エスパーでなければ頭がおかしいかとも思ふが。
 兎に、角。白都翔一と、何故かトメに座る朝田淳史は潔く御役御免で退場した後半。由香利を捜すべく再び下田に入つた亜貴子と千浪が、プリミティブにも由香利の名を大声で呼ぶと、宿の窓から浴衣の由香利がしかも手を振り元気に応へるシークエンスには度肝を抜かれた。大声で呼ぶのかよ!え、呼んだらゐんのかよ!?大wwwww御wwwww大wwwww、この際草でも生やす以外に、もうどうしろつていふんだ、小屋ならリアルに卒倒してゐた気がする。以降は人外のタフネスを大発揮した柳川が、由香利に次いで亜貴子と千浪も連破。それ、なのに。空前絶後の楽天性でヨリを戻すと、改めて『スカートの風』流しの三人仲良く浸かつた湯船にて、TKBで手打ちするラストはグルッと二三周して圧巻、映画をバターにしてしまへ。散発的にしかも果てしなく遠い超俯瞰を繰り出し、柳田“大先生”友貴も大御大のスーパーフリー作劇を補強する。尤もオッパイを三枚並べた布陣は矢張り強力で、裸映画的には水準以上に安定してのける離れ業は、正方向に小林悟なればこそ。同じ純粋裸映画でも、不条理に詰まらないだけの珠瑠美に対し、ベクトルの絶対値―正否は等閑視する―だけは無闇に馬鹿デカい破壊力で楽しませて呉れる小林悟との間には、これでそれでも決して越えられない壁が、幾枚と連なつてゐるのかも知れない。


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )




 「ONANIE 快感入学」(1991/製作・配給:大蔵映画/監督:小林悟/脚本:鈴木和夫/撮影:柳田友貴/照明:小野寺透/編集:酒井正次/助監督:青柳一夫・植田中/スチール:田中スタジオ/録音:銀座サウンド/現像:東映化工/出演:冴木直・久保田未花・板垣有美・斎藤桃香・白河悠衣・渡辺大作・坂入正三・朝田淳史・芳田正浩)。脚本の鈴木和夫は幽霊博士で知られる鈴木和夫なのか、そもとれ単なる同姓同名なのか。
 女子大生・ルミ(冴木)のオナニー開巻、陰影のキマッた画がエロい。ベッドの脇に用意しておいた胡瓜を持ち出して、手短に完遂。純然たる余談でしかないが、当サイトの管理人は胡瓜は水鳥川彩の観音様に挿して差し出されても食へない。男に幻滅してワンマンショーを覚えたルミは、オナニーの学校に行つて勉強したとの素頓狂なモノローグを経て、何故かといふか何といふか、気紛れな選曲でタンゴ起動、茄子越しにタイトル・イン。今回大先生にしては思ひのほか、意図の明確なショットが散発的に冴える。
 身勝手なセックスでルミに部屋を追ひ出された級友の羽仁ヨーイチ(芳田)は、イッパツ儲けたと一欠片たりとて悪びれず。ヨーイチが汗を拭はうとハンカチのつもりで取り出したのが、“入学随時 入学金授業料無料 但し女性のみ”なる「国際ONANIE学院」の要綱であつたとかいふ、グルッと一周した不自然さが天衣無縫の領域に突入するシークエンス。とまれ、看板はよく出来た「国際ONANIE学院」、但し内部は何時もの摩天楼。“オナニーは心身安定の元”、“オナニーで生き抜かう”とプリミティブな貼紙がスッ惚ける中、フリーアルバイターの竹中チエ(斎藤桃香=斉藤桃香)・薬剤師の三原エイコ(久保田)らと受講するルミに、学院長の井田(渡辺)は特別学習と称し、別室にて個別に体験告白を聞く旨を告げる。
 配役残り坂入正三は、高校時代の自転車通学中サドルによるグリグリに目覚め、遂にフィットネスバイクを導入するに至つたエイコの部屋を訪ねる、新聞の集金人。チンコの形にしか見えない超極太の木彫り道祖神を用ゐる、ヒサエ(白河)の体験告白中に登場する不能の夫(もサカショー)と同一人物なのかは、集金人はエイコを襲はとするにつき必ずしも不明。もう一点如何にもDie On Timeな無頓着さが爆裂するのが、エイコが襲ひかゝつて来た坂入集金人を、サントリーオールドで殴打し撃退する件。音効がへべれけで、何で殴つてゐるのか激しく面喰はされる。板垣有美は、ヒサエの真最中を急襲する姑。そしてビリングと同期して体験告白三番手を務めるチエが繰り出すメソッドは、結構な手間をかけて張形風に加工したスルメを挿入、蛤の中で膨らませる匂ひが強烈さうな荒業。加工過程を、クッキング番組感覚で詳細にトレースするのが感興深い、実用性でも志向してみせたのか。
 ルミの体告は第一次芳田正浩パートで相殺する、小林悟1991年第十二作、ピンク限定第十作。つらつら四者四様のオナ模様を連ねるに終始する、劇映画的にはユルユルに見えて、これでハードコアな裸映画。底の抜けたオナ学の方便と、幾ら大御大作とはいへ珍奇に過ぎる井田の造形を、回収する一手間も欠かさない。特筆すべきはルックスから腰までは寸胴ながら、尻から下のラインは超絶な久保田未花、の料理法。実はオッパイさへ見せずに、フィットネスバイクのサドル上で悩ましく躍る久保田未花の尻を延々、延ッ々狙ひ続けるのは素材を最大限に活かすエクストリーム。白河悠衣も白河悠衣でボサッとした面相ながら、キュッと括れたウエストは絶品。ヒサエが役目を終へるや、お風呂―でオナニーする―の時間と称してさつさと捌けるのも清々しい。階段で果てたチエの股間からは、スルメ張形に予めパージ用としてとりつけてある、まんまタンポン状の紐が導火線よろしく覗く。それを手に取つたルミが、まさか引き抜いてみせるのか、引き抜くカットが映倫審査を突破し得るのか!?といつた、結局流石に引き抜けはしないものの、裸映画的な一大スリリングも撃ち抜く。顔ぶれだけ見ると脆弱な女優部と通常運転でスッカスカの物語を、濡れ場の的確さで克服する一作。克服し得た辺りに、それはそれでそれなりにもしかすると万が一、馬鹿にならない小林悟の演出力が垣間見えるのかも知れない。

 問題が小林悟でこの手の粗相は観るなり見た覚えが案外ないのだが、朝田淳史が出て来やしない点。井田の回収要員は恐らく演出部、何れにせよアサジュンではない。ヒサエ配偶者役でキャスティングされてゐたものが、何某かのアクシデントでトンでたりとかしたのかな。


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )




 「制服娼婦」(1992/製作・配給:大蔵映画/監督・脚本:小林悟/撮影:柳田友貴/照明:小野寺透/編集:フィルム・クラフト/助監督:青柳一夫/スチール:大崎正浩/監督助手:杜松蓉子/録音:銀座サウンド/現像:東映化学/フィルム:AGFA/出演:大滝ゆり・冴木直・杉原みさお・白都翔一・浅間凌次・石神一・港雄一)。
 え、主人公これ?と軽く見紛ふ、パッとしない主演女優の背後に冴木直と杉浦みさお、三人ともセーラー服。野中マリ(大滝)を毛嫌ひする三田清子(冴木)と羽生世津(杉原)は、部活をしてゐなければ塾にも通つてゐない、マリの放課後を何やかや邪推する。何某か危ないアルバイトをしてゐるのではないか、それとも売春!?と二人が顔を見合はせたタイミングでタイトル・イン。クレジット明け、現にといふか何といふか、事そこに至るバックグラウンドは軽やかにスッ飛ばし、例によつて小林悟が不愛想なバーテンのスナックでホステスとして働くマリは、常連客と日常的に金を取り寝てゐた。港雄一が、女子高生―ぽくも限りなく見えないけど―の肉体に何時も通りフガフガ垂涎する医師の大村先生、フランケンか。もう二人、カウンターに見切れる客要員は不明。
 更に配役残り白都翔一と浅間凌次は、何故か一人暮らしのヒロシ宅にて清子×ヒロシ、世津×カズヒコの組み合はせで乱交を仕出かす仲の同級生・ヒロシと宮本カズヒコ。但し四人でギリッギリ挿入まではしない程度にマリをリンチする件では、一回カズヒコがヒロシに対しカズヒコと呼びかける。アフレコ時に、せめて俳優部は気づかなかつたのか。それと浅間凌次(a.k.a.畠山智行)は、高校生に見えるか否か以前に、そんなダブッダブの体で脱ぎ仕事すんな、甚だ見苦しい。気を取り直して石神一も、度々マリを買ふスナック常連客。リンチ後流石に沈むマリの肩越しに、心配さうに眉を八の字に寄せ覗き込む、マンガ顔を活かしたファースト・カットの構図が素晴らしい。ところでjmdbの今作の項では、杉原みさおが杉浦みさおに、ついうつかり通り過ぎかねない絶妙な誤記が瑞々しい。
 明後日か一昨日な見所に富んだ、小林悟1992年第四作。さう掻い摘むと、大御大仕事の大抵は片付けられるのかも知れないけれど。各々大村先生と石神一から、友達を紹介するやう乞はれてゐたマリは、そのことを逆手に取り清子らに逆襲。まづは和解を偽装し世津をマリもマリで一人住まひの自宅に招いた上で、遅れて大村先生到着。するや大村を世津に任せといふか押しつけ、マリはバイトに。リンチの件で“監獄行き”―劇中用語ママ―云々と脅迫した大村は、「オジサンに任せなさい」と泣きだした世津のブラのホックを外す。一方、清子に関しては。和解を偽装し自宅に招いた上で、遅れて石神一到着。するやマリは買物に、以下略。横着するにもほどがある、面子が違ふだけで、幾ら小林悟とはいへあまりの仕打ちにクラクラ来た。おまけにこの杉原みさお×港雄一、冴木直×石神一の濡れ場が何れも途方もなく長く、中盤元々稀薄なビリング頭の影は、忘却と二人のオッパイの遥か彼方に暫し霞む。かと思ひきや、対ヒロシ・カズヒコに際しては、マリが両親にほぼほぼ捨てられてゐた出し抜けな事実が大開示。「社会から捨てられた女つて、ドロドロに汚れないと生きて行けないのよ」だなどとやさぐれたメッセージが、木に竹も接ぎ損なふ。挙句の果ての、まるで口笛吹いて空地に行く類の道徳番組エンドは驚愕の一言。脈略といふ概念さへ心の棚に仕舞つてしまへば、女の裸―だけ―は確かに潤沢。とはいへリピートと右往左往に終始した末に、展開は花火玉の如く爽快に砕け散る。絶対値の大きさが、小林悟の中でもデカい方の衝撃作。ベクトルの正負は、さて措くに如くはない。全篇を貫く両義的に闇雲な校則批判には、これでリベラリストたる大御大の面目躍如も垣間見える、どれでだ。


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )




 「通勤電車 快感フルコース」(1992/製作・配給:大蔵映画/監督・脚本:小林悟/撮影:柳田友貴/照明:ジミー宮本/編集:酒井正次/助監督:日垣一博/スチール:佐藤初太郎/タイトル:ハセガワ・プロ/録音:銀座サウンド/効果:中村半次郎/フィルム:AGFA/現像:東映化学/出演:松岡利江子・西野奈々美・伊藤舞・杉原みさお・板垣有美・坂入正三・芳田正浩・白都翔一)。
 電車の画から、松岡利江子が芳田正浩の電車痴漢を被弾。のを―セット―車輌の外側から抜くショットに、今回初めて気づいたが、何気に実景の電車の色も合はせてある、さういふ心も配るんだ。パンティを突破された良子(松岡)が落としたバッグの下には、佐川ジュンジ(芳田)がそれ以前に落としてゐた財布が、カット跨いで電車が通過する鉄橋にタイトル・イン。駅から漸く出て来た良子は結構入つてゐる財布をチェックすると、名刺を頼りに佐川に連絡、ワインの御礼に与る。何処まで本気なのか泥酔した良子は、自宅まで佐川に送らせる迎へ狼。苦しいだ何だと膳を据ゑ絡み初戦を大完遂、ピンコ勃ちの乳首が直線的にエロい。味を占めた良子は今度は太田(白都)の電車痴漢を被弾するや、「あらここにも落ちてるは、届けなくつちや」と太田の上着から落ちてもゐない財布を掏る。とんでもない女だ、この天衣無縫なシークエンスこそが御大仕事の醍醐味。あるいは、直截にいふと度を越したやつゝけ仕事にして初めて到達し得る、グルッと何かを一周した破壊力。ところが翌朝、一部始終を見てゐたとかいふ声だけでその人と知れる板垣有美から脅迫電話がかゝつて来つつ、十万といふ要求金額で急に話は萎む。
 配役残り、後に披露する、気取つて天パをペッタペタに撫でつけた髪型が捧腹絶倒な坂入正三は、良子と寝た太田の武勇伝に、「まるで快感フルコースぢやねえかチッキショー」と喰ひつく、健康機器KK営業部のカワムラヒロシ、太田とは同僚の関係か。“快感フルコース”とは何ぞやといふと、痴漢からベッドまででフルコースとするこゝろ、その発想。とまれ太田とカワムラは、良子の更に先を行き、痴漢した女の懐に自ら財布を忍び込ませ、連絡を待つナンパ術を考案。全体どうすれば、そんなメソッドが上手く運ぶと思へるのか。そしてa.k.a.草原すみれの西野奈々美が、太田とカワムラで挟撃する格好のマユミ。マユミもマユミで板垣有美の横槍を受けながらも、財布に先に気づいて連絡した太田と快感フルコース。ここで初めて見切れる、アクティブに不愛想なバーテンは小林悟。伊藤舞と杉原みさおは、カワムラ×伊藤舞、太田×杉原みさおの形でタッグマッチを敢行する二人連れ。伊藤舞に至つては手コキで抜く痴女暴れを敢行するものの、杉原みさおにいはせると男運が悪い。結局板垣有美の正体は、スリを働いたと因縁をつける謎の因業ババア、木に竹も接がねえ。
 大御大・小林悟、1992年怒涛の全十八作中第十五作、ピンク限定だと十三作中の十二作目。ホゲホゲしてるサカショーを見てゐるだけで、何だか心が安らぐのは疲れてゐるからにさうゐない。大概な良子、何しに出て来たのか判らない板垣有美、正体不明のセカンド泥鰌に鼻の下を伸ばす男達。ネジの緩んだ有象無象が織り成す掴み処のない展開で、既に十分お腹一杯といふか胸やけしさうなのだが。最も大御大が大御大たる所以は、西野奈々美・伊藤舞・杉原みさおが続々と投入される後半、前半をほぼ一人で戦ひ抜いた主演女優が暫し完全に姿を消す豪快作劇。物語といふほどの物語でも全くないにせよ、腐つてもヒロインの筈なのに。お芝居の硬さをさて措けば、首から上も下も実はかなりの美人である松岡利江子が、恐らく間違ひなく小林悟の映画にしか出演してゐないのは、歴史の軽い悲劇といふべきか。他の組に出てゐたら出てゐたで、結局三番手が関の山であつたのかも知れないけれど。徒に豪華な二三四番手の濡れ場を消化したところで、残り尺はあと僅か。会社も休んでゐたらしく友人からの電話で再起動した良子が、相変らずな手口で財布を拝借したカワムラに連絡を入れるラストは、よくいへばいはゆる“変らないか終らない日常”とでもいふ奴なのか、何ひとつ完結してゐないにも関らずな結末が清々しいほどに大御大映画。尤も―地味に予想外な―伊藤舞をもが飛び込んで来る面子の粒は揃つてゐるだけに、深く考へずに女優部フルコースを楽しむ分には裸映画として普通に安定する。


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )




 「異常性告白 私に毛を下さい」(1989/製作・配給:大蔵映画/監督:小林悟/脚本:松瀬直仁/撮影:柳田友貴/照明:小野寺透/編集:金子編集室/助監督:青柳一夫/スチール:大崎正浩/音楽:サウンドボックス/録音:銀座サウンド/現像:東映化工/出演:林葉なほ・一ノ瀬まみ・浅川美希・五十嵐ユキ・朝田淳史・工藤正人)。
 “倉庫”の札を抜くポップ開巻、倉庫だといつたら倉庫、有無をいはさぬ倉庫感が何か感動的ですらある。マネキン脇で岡本(朝田)と、ケイコ(不完全消去法で早乙女ルイ似の五十嵐ユキ?)が大絶賛真昼間から、勤務時間内の一戦。マネキンの股間に何となくタイトル・イン、クレジット間は、マネキンと手マンを適当に繋ぐ。明けて工藤正人が倉庫のドアノブをガチャガチャしながら、「おかしいなあ、何で鍵かゝつてるんだろ?」。異なる解釈の余地を欠片たりとて許さない、ブルータルなほどの判り易さが清々しい。特に仕事もないのを自任するグータラ社員・高野雄治(工藤)が、喫緊の課題でも全ッ然ない在庫の点検に訪れたのに、ケイコは当然の如く動じつつ、岡本パイセンは鍵をかけてゐると意に介さず事を続行。遂に高野も嬌声に気づく中、岡本パイセンの膣外射精が、傍らのマネキンの臍辺りに付着する。入れ違ふ格好で高野が倉庫に入ると、何と岡本の精を被弾したマネキンが生身の林葉なほに。またこの林葉なほが、普通に超絶可愛いくて何故か吃驚した。高野が騒いでゐるゆゑ岡本とケイコが倉庫に戻つて来るも、岡本命名によるマネキンだからマキちやん(林葉)は高野にしか見えない。「貴方のお家に連れてつて」と乞はれ、高野はマキを家に持つて帰ることに。手前に配した段ボールで遮つての、工藤正人が林葉なほの五体を分解してマネキンに戻す、昨今の山内大輔ならばまだしも、この時期の大蔵映画でまさかの切り株スプラッタ、血飛沫こそ飛ばないものの。
 配役残り、マキをバラした状態のマネキンをバッグに詰め込み、汗を流す高野と交錯するのは小林悟。特に何するでない点に関しては、改めていふまでもあるまい。帰宅後マキを復元した高野のアパートを訪ねる一ノ瀬まみは、交際四年、未だ処女と童貞同士の高野彼女・ユリコ。また一ノ瀬まみが殆ど藪から棒に、全盛期を思はせる美しい色の白さを輝かせる。そして二回戦を戦ふビリング推定で浅川美希が、岡本パイセンが高野に宛がふ、ケイコ友人の童貞キラー・アサカワ。部屋でセーラー服を着てゐるのは、好きで着てるだけ方便。流石に不自然さを自覚したのか、そもそもセーラー服でなくて別に構やしないのに。
 公開十一月にしては、撮影は真夏と思しき小林悟1989年最終第十四作、ピンク限定だと第十一作。ユリコが部屋に入るや、マキは再々度マネキンに。ユリコが―自身の―母親に承諾を得ての、高野に純潔を捧げる中盤の見せ場を経た上で、マキが私もシタいと高野二連戦に突入。したところが、元々マネキンであるマキの足と足の間には、然るべき器官が何もなかつた。てな塩梅でマキが私に毛を下さい穴を下さいと高野に哀願するのが、奇想天外な公開題の真相。大蔵が提示した御題先行なのか松瀬直仁の脚本に追随した形なのか、企画の推移が物凄く気になる。普通に二枚目の割に振られる役は三の線も多い工藤正人の部屋に、マネキン人形が変化(へんげ)したアイドル級の美少女が転がり込む。さう掻い摘んでみると、ナベシネマばりにキラッキラ輝やかんばかりの夢物語、かと思ひきや。選りにも選つて頭の固いユリコの存在が、ある意味周到なミソのつき始め。結局、マキがマネキンでなく人間になつて見えてゐるのが徹頭徹尾高野だけ。といふ劇中最も根本的かつハードルの高い謎が終ぞ解消も何も半ば等閑視して済まされるまゝに、高野のみならず見るなり観た者の恐らく全てを奈落の奥底に叩き落す、よもやまさかの全てを失ふ正真正銘の絶望エンドには度肝を抜かれた。工藤正人がマネキン相手に腰を振るのが締めの濡れ場とかいふ、裸映画的にはなほさら阿鼻叫喚も大概なのだが、死の匂ひさへ濃厚に漂はせる空前絶後にダークなラスト・ショットは衝撃的。流石の大御大、何を仕出かすにしても絶対値のデカさが他を圧倒してゐる。


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )




 「痴漢電車 イケナイ遊び」(1993/製作・配給:大蔵映画/脚本・監督:小林悟/撮影:柳田友貴/照明:ジミー宮本/編集:フィルム・クラフト/助監督:国沢実/録音:シネキャビン/スチール:佐藤初太郎/現像:東映化学/フィルム:AGFA/タイトル:ハセガワ プロ/出演:吉行由美・冴木直・藤沢美奈子・芳田正浩・樹かず・白都翔一・港雄一)。
 雑居ビルの「川上探偵事務所」、川上(港)に今井(白都)が、どうも出勤するや家を空けてゐるらしき妻・知子(吉行)の素行調査を依頼する。川上が仕事を受けるとベンチャーズ風の劇伴起動、魅惑的なボディコンで武装した知子が出撃、駅構内の画にタイトル・イン。電車の車内、知子から川島か川嶋タケシ(芳田)にコンタクト。連れ立つて降車後ベッタベタ地下道に消える二人を、レイコ(冴木)が尾行する。ラブホでの濡れ場初戦を経て、事後は川島をアッサリ袖に振つた知子を、レイコが急襲。てつきりレイコは川上の助手か何かかと思ひきや、他の女と寝た男ではなく、人の男に手を出した知子へのダイレクト・アタックを敢行した川島の職場恋愛相手。知子とレイコがとりあへず入つた、喫茶店と称したハウススタジオの一室。知子の言ひ分は、知子が子供の出来ない体につき、今井夫婦はセックスレス。さりとて肉の飢ゑには抗へず、“燃え上がつた時にはボディコンを着てイケナイ遊びに駆け込む”とかいふ方便。“何が子供が出来ないのよ、そんなのアンタの勝手でせう”とレイコが知子に掴みかゝる無体な修羅場に、この人もレイコを同業者かと勘違ひしてゐた川上が割つて入る。観客を驚かすなり騙す前に、川上がレイコを見紛ふカットを盛り込んでおくのが先だと思ふ。
 配役残り、一言二言台詞も吐く国沢実は、レイコと川島が勤務する「東北物産」東京営業所の、営業所所長辺り。にも関らず、ジャンパー姿の無頓着が堪らない。樹かずは、レイコが知子の向かうを張り、あるいは同じ轍を踏んで痴漢電車のイケナイ遊びを仕掛ける行きずりのイケメン、レイコを連れ込む自室はジリオン部屋。冴木直V.S.樹かず戦の完遂を待つて飛び込んで来る藤沢美奈子は、私の彼氏を返してとレイコに泣きつく樹かずカノジョ。女学生ギミックのおさげ髪が思ひのほか馬面に火に油を注ぎつつ、改めてこの人のプロポーションは超絶。巨乳・ストリーム・アタックを完成させる強力な女優部の中でも、オッパイだけなら最強の攻撃力を誇る。反比例するかの如く、存在感は薄らぼんやりしてゐるものの。
 小林悟1993年ピンク映画最終第九作、薔薇族込みで第十作。案外少ない気がする、感覚の麻痺。腕の一本くらゐ引き換へてでも辿り着きたいが、ハンドレッドが流石に遠い。公開題まで口にさせておきながら、何気にシリアスな主演女優の寂寥を、カラッと等閑視してのけるのがピンク・ゴッドこと小林悟。中盤以降は何故か冴木直が、寝取られた女が臆面もなく人の男を寝取る自堕落な展開を支配する。樹かずの部屋に入るレイコが、遅刻する旨を営業所の川島に連絡。川島主導でテレフォンセックスをオッ始める件なんて、どうでもよすぎて確かビリングは頭の筈の知子もスッ飛ばし、何で斯様な一幕に尺を割いてゐるのか感動的なほど呑み込み難くてクラクラ来る。挙句レイコ曰くの元凶たる知子に対し、藤沢美奈子が何故かレイコと共同戦線を張るに及んで、映画の底は完全に抜ける。川島の協力を取りつけるにあたり、レイコが藤沢美奈子をいはばでなく売るに至つては寧ろ、グルッと一周した清々しささへ覚える。結局知子は川上、今井はレイコと藤沢美奈子で押さへる痴漢電車挟撃から、今井家で川上が知子を喰ふ一方、今井はレイコ・藤沢美奈子とジリオン部屋にて巴戦といふのがクライマックス。川上が適当な説教を垂れて夫婦の問題は強制落着、川上×レイコ、樹かず×藤沢美奈子でダブル電車痴漢に戯れるラストの乾いた白々しさこそが、未だ恐らく誰もその真価には辿り着き得てゐまい大御大仕事の本質。こんな映画ばかり、現場で倒れそのまゝ他界するまで、正真正銘の命懸けで撮つてゐたんだぜ、そんな人間理解出来る訳がない。だからこそ、かうして懲りずに観るなり見られるだけ追ひ続けてゐる次第。戦つて、死ぬ。虚勢を張つてみせるのは容易いが、小林悟は、実際に戦つて死んだ。

 女の裸以外で唯一琴線に正方向で触れたのは、知子のイケナイ遊びといふよりも、川上から攻める電車痴漢。セット撮影である利を活かした、視点でいふと網棚辺りから狙ふ画角が目新しい。


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )




 「ねつちり女将の乱れ帯」(1999/製作・配給:大蔵映画/監督:小林悟/脚本:三河琇介/撮影:飯岡聖英/照明:ICE&T/編集:酒井正次/助監督:竹洞哲也/スチール:佐藤初太郎/監督助手:森角威之/撮影助手:鏡早智/タイトル:ハセガワタイトル/録音:シネキャビン/現像:東映科学《株》/出演:里見瑤子・春日奈々美・南けい子・坂入正三・田嶋謙一・港雄一)。
 林中の道路脇に停めたロードバイク搭載の四駆が、車中でヤラかしてゐると思しき揺れを見せる。致してゐるのは水上荘を継いだ元競輪選手、とかいふ素頓狂な設定の欣一(坂入)と、一年の交際を経て結婚を約したヒカル(春日奈々美/多分佐々木基子のアテレコ)。事後車外で放尿するヒカルを、欣一は義妹を迎へに行くところなのだからと急かす。そもそもヤッておいてといふ至極全うなツッコミは、開巻の速攻で二番手の裸を見せる方便に免じてさて措くべきだ、車が走りだしてタイトル・イン。クレジット時の画面は、助手席の車載カメラ。先に俳優部を片付けてスタッフに突入した途端、何故か軽く傾くクレジットが正体不明の御愛嬌、ハセガワ何してる。フランスでのワイン留学から三年ぶりに帰国した鮎美(里見)を伴ひ、欣一は水上荘に帰還。ここで竹洞哲也、ではなく森角威之が二人を出迎へる欣一競輪選手時代の後輩で、現在は水上荘従業員の三太郎。一方ヒカルは車からも降りずに、複雑な表情を浮かべる。没母の着物を着てみた鮎美が水上荘を継ぐことを申し出、現役復帰を摸索する欣一は、渡りに船とばかり快諾する。翌日兄妹は、山菜採りの最中の事故で、二人の母親が命を落とした滝を訪れる。といつて、実は欣一と鮎美はそれぞれ別の夫の連れ子で、没母と兄妹は血が全く繋がつてゐなかつた。それゆゑ三年前の母死去時、周囲の親戚が二人の仲を危ぶみ、鮎美をフランスにやつたものだつた、各々実父の去就に関しては完スルー。
 配役残り田嶋謙一は、居酒屋―店舗は内外ともリズ―を営むヒカルの、常連客を通り越した情夫・小川。星座のユニフォームで来店するので草野球でもして来たのかと思へば、単なる猫党。家でテレビ見るのに、全然関係ないチームのユニを着る意味が判らない。兎も角、営林署勤務の小川が欣一が相続した山にバイパスが通るインサイドな情報を入手したのが、ヒカルが欣一に接近した発端。何気に華麗なる女優部三冠を達成する―うち和姦は対ヒカルのみ―港雄一は先代からの水上荘の上客で、建設会社社長の村松。そしてラスト二十分に突入して漸く初めて遺影が抜かれる南けい子が、水上荘の先代女将にして鮎美・欣一の継母。m@stervision大哥がリアルタイムで仰せの通り、寧ろサカショーと南けい子が兄妹にしか見えない。
 豪快なキャスティングはこの際さて措き、デフォルトで禁忌に触れかねない兄妹の周囲で欲深き魑魅魍魎が蠢く、小林悟1999年第五作。打算の道筋に最低限筋が通つてゐなくもないヒカル・小川に対し、息を吐くやうに女を犯す村松の造形は、幾ら“犯し屋”の異名を誇つた港雄一を擁したとはいへ、流石に底が抜けてゐる。二代続けて村松に手篭めにされた鮎美は、結局南けい子が命を落としたのは事故死だつたのかそれとも自死なのか終に明示しないまゝ、件の滝に入水。その場に欣一が間一髪駆けつけヒシと抱き合ふまではいいとして、残念ながら尺が殆ど残らない。微塵の躊躇も葛藤も窺はせずに兄妹がオッ始め、一応ロケーションだけは悪くない軽く引いたロングに“完”が叩き込まれるラストは、そもそも火種が何ひとつ解消されてゐないのに濡れ場でヤリ逃げる貫禄の大御大仕事、全ッ然完結してねえ。そんな中でも琴線に触れたのは、田嶋謙一が里見瑤子を犯し始めるやハードロック調の劇伴がドカドカ鳴り始め、片や港雄一が里見瑤子を犯し始めるやハイキーな照明が迸るプリミティブかつポップな演出、ではなく。山菜を採りに山に入つた鮎美を、ヒカルからその旨聞きつけた小川が追ふ。その件、小川は都合四度「山菜、採れますか?」と声をかけつつ鮎美を神出鬼没に追ひ詰めるのだが、計四回の「山菜、採れますか?」を、田嶋謙一が何れも巧みに声色を変へてのけるのは数少ない正方向の見所聞き処。


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )




 「田口ゆかりの裏本番恥戯」(1989/製作・配給:大蔵映画/監督・脚本:小林悟/撮影:柳田友貴/照明:小畑新生/編集:金子編集室/助監督:青柳一夫・松瀬直仁/音楽:東京BGM/録音:銀座サウンド/現像:東映化学/出演:田口ゆかり《ロック座》・工藤正人・いか八朗・神田勢山・武藤樹一郎・板垣有美・港雄一・関たかし/特別出演:高崎慶子・風見怜香)。正確なビリングは、特出の女優部がクドマサといか八朗の間に入る。
 山中の舗装道路を、喪服の女が歩いて来るロング。崖つ縁に佇んだ田山ゆかり(大体ハーセルフ)は入水するのかしないのか、揃へて脱いだ草履にタイトル・イン。因みに今作、タイトルがjmdbには「田口ゆかりの裏本番 恥戯」でDMMには「田口ゆかり 裏本番恥戯」とあるが、本篇準拠ではどちらも不正解。母の葬儀から姿を消したゆかりを、妹の千鳥(高崎)と―ゆかりの―恋人の苗字不詳ケンイチ(武藤)が捜しに来る。揃へた草履までは見つけたものの、ゆかり当人は見つからず。ゆかりが飛び出したのは、ケンイチから“強引に誘惑”―ケンイチの弁明ママ。誘惑といふか、普通に迫つてゐるやうにしか見えない―する形で千鳥とケンイチが関係を持つたゆゑ。直後の事後をゆかりに見咎められた千鳥が堂々と逆ギレしてのける、ゆかりもゆかりで後ろ暗いポイントが、ゆかりの運転ミスによる母の事故死。それでゆかりが娑婆にゐるのは執行猶予がついたからなのか、兎も角、爆裂するそれとこれとは感が如何とも抑へ難い。ともいへ、「判つたはよ私が死ねばいいんでせう?死ぬはよ」と逆ギレのクロスカウンターを華麗か苛烈に放つ、ゆかりも矢張りゆかりではある。死に損なひ打ち上げられたゆかりを、山釣りに来てゐた近所の民宿経営・アイダ幸夫(工藤)が救助。山小屋に運び介抱がてら、催した幸夫はゆかりをサクサク犯す。ヤることは全て済ませた上で、謝罪とか告白とか責任とか口にする幸夫はゆかりを自身の民宿に招く。動くなといふのに、幸夫が車を取りに行くや移動を始めたゆかりは、千鳥・ケンイチと遭遇。逃げた山の中で小用を足すゆかりを、山釣りがボウズのアイダ泰三(港)とその甥(関)が発見。山の中に喪服の女、大概突飛なシチュエーションであるにも関らず、ミッチと関たかは至極当然といはんばかりの勢ひでザクザクゆかりを輪姦する。
 とか何とか辿り着いた幸夫の民宿にて、ゆかりが幸夫の父親であつた泰三と双方驚きの再会を果たしたりしながらも配役残り、風見怜香は幸夫との結婚を約され、てゐた親戚の悦子。突如現れたゆかりに、脊髄で折り返した敵対心を燃やす。ところで高崎慶子にせよ風見怜香にせよ、特別扱ひする理由が解せぬ、全く普通の三本柱である。そして問題なのがいか八朗と小林組の裏看板女優・板垣有美に、当時既に芸能生活三十五周年前後を誇る講談師の神田勢山。何だかんだで半ば呆れてプイッと民宿を後にしたゆかりが、“上着”と“浮気”を絡めた他愛ない夫婦(いか八朗と板垣有美)喧嘩に巻き込まれかけつつ、構はず立ち去る、神田勢山は多分いか八の弟役。この三人の出番はフレームにつむじ風のやうに紛れ込むこの場限り、全体何しに出て来たのだか一ッ欠片たりとて判らない。こんなにある意味見事に木に接いだ竹見たことない、結構な山の中まで出張つて撮影してゐる点をも踏まへるならばなほさら、神田勢山を何処から連れて来たんだ。内トラに二三本毛を生やした程度の感覚で気軽に出し易いといふのも含めてか、量産型娯楽映画作家が、時に謎の人脈を発揮する。
 幻の昭和64年にギリッギリ滑り込んだのか、平成の火蓋を切つたのか今となつては定かではない、大御大・小林悟1989年ピンク映画第一作。この年ピンク全十一作と、薔薇族三作。いか八×板垣有美×神田勢山が飛び込んで来る―だけの―件も酷いが、劣るとも勝らないのがその少し前のゆかりの歓迎会と称した宴席。事実上許嫁のエツコがゐるといふのに、幸夫は開口一番「今度僕とゆかりさんが結婚することになりました」。流石小林悟だ、最早とでもいふほかない。藪から棒の素頓狂ぶりがエクストリーム過ぎて、劇中一同と同時に観客ないしは視聴者の度肝も抜いてみせる。挙句前が酷ければ後ろも更に劣るとも勝らず、風見怜香の濡れ場はゆかりに関する押問答を通して―何故か―泰三がエツコも犯す形で処理し、通算三度目に山に入つたゆかりは、エツコの手引きによる関たかともう二名(演出部か)に再々度凌辱される、要は入山する度に犯されてゐる。山に入る女はレイプされる、どんな世界観だ。そして挙句の正しく果てのラストはといふと、何でか知らんけど幸夫とエツコがよもやまさかのV字復縁する傍ら、ゆかりは一応撮影部がそれなりの気概を見せなくもない、砂浜で豪快に自慰に狂つて“完”。要するに、母親を死なせるは妹には男を寝取られるはで満身創痍状態のヒロインが、出し抜けに犯され倒した末終に気が触れる。幾ら量産型娯楽映画、あるいは商業ポルノグラフィーとはいへ、斯くも無体な物語見たことない。流石大御大、とでも深く感銘を受ける以外に、如何なる態度が残されてゐようか。自棄なのか?さうでもない。


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )




 「痴漢電車 スリと女と痴漢」(1991/製作・配給:大蔵映画/監督・脚本:小林悟/撮影:柳田友貴/照明:小野寺透/編集:フィルム・クラフト/助監督:青柳一夫・植田中/スチール:大崎正浩/録音:銀座サウンド/現像:東映化工/出演:高橋めぐみ・長崎ゆき・坂入正三・朝田淳史・石神一・板垣有美・冴木直)。
 出発する駅のホームを電車の中から抜いた画と、カーブを曲がる電車の画を適当に繋いでタイトル・イン。劇中団体名ママで大日本弁護士協力会に勤務する瑩子(高橋)が、AV畑で老人部男優として今なほ現役らしい―詳細求む―サカショーの電車痴漢を被弾する。ここで、一応でなく確かに美形ではあるものの、壊滅的に表情、もしくは生気さへ乏しい高橋めぐみに拭ひ難い違和感に関して、個人的に整理がついた。この人よくいへばマネキン、直截にはダッチワイフ顔なんだ。造作に引き摺られてか、あるいは化粧の塗り具合の問題なのか、質感から生身に見えない。駅を出たところで財布と、母親の形見のイヤリングを掏られてゐるのに気づいた瑩子は、その場で「ようし!」とポップに奮起。友人の多恵子に援軍を仰いでの、犯人捜しに着手する。とここまでは、驚く勿れ序盤にして最低限物語が出来上がつてゐる、かに思へたのに。
 配役残り長崎ゆきが、瑩子に呼びつけられたスナック「美風」―カウンター席に座つて摩天楼が背中に来るのが識別法―で待ち惚けを喰らはされる多恵子。小林悟映画でしか見なければ、未だ脱いでゐるところを見たことがない―別に見たいといつてゐる訳ではない―板垣有美は、実戦的な切札にと瑩子が連れて来た大弁協調査部のアツミタマコ女史。サカショーが痴漢かスリかで、下心をくすぐられなくもない多恵子と、杓子定規に喧々するタマコが対立するのは、後々ひとつの軸として機能するのかと思ひかけつつ、勿論そんな筈もなく。この件で一番面白いのは、痴漢の特徴を多恵子に問はれた瑩子の回答が、「ギョロ目で冴えない奴」。無造作に放られたど真ん中のストレートに、呆気に取られ喫した見逃し三振の如き清々しさである。とりあへず、瑩子と多恵子の二人で電車に乗つてみる。痴漢後、駅を出てから多恵子にトッ捕まつた石神一は、スリではないと頑なに否定した上で、劇中自己紹介ママで“自分は憲法第四十九条改定に基き編成された海外特別派遣協力隊員であります”。“改正”、ではなく憲法を“改定”するとは普通いはないが、そもそも日本国憲法第四十九条は議員の歳費に関する規定につき、また随分と瓢箪から駒な改憲をやらかしたものである。石神一が闇雲に“御国のために”を連呼するのも、実はこれで反戦平和主義者らしい小林悟が徒にポリティカルな方角にスッ転んでみせるのかと思ひきや、最早煌びやかなまでのその場限りでさうもならず。それはさて措き、電車痴漢再戦を経て尾行した瑩子が突き止めたサカショーの勤務先が、三流不動産と書いて読みはミツル。とかく枝葉ばかりが咲き誇る一作である、チャチい造花なんだけど。タマコが調べあげたサカショーの役名は佐々木、朝淳と冴木直については後述する。実車輌ショットを散発的に挿み込みながらも、絡み―あるいは俳優部が登場するカット―は全てセット撮影。中盤瑩子の傍らにボサーッと無防備に見切れるメガネは、青柳一夫なのか植田中なのか。
 改めて、「痴漢電車 スリと女と痴漢」。全く中身はないやうな気もするが気が利いて聞こえなくもない公開題に、その内バラ買ひするつもりでゐたら月額動画に流れて来た小林悟1991年第十三作、ピンク限定だと第十一作。薔薇族五本を含めての、全十七作といふのは何はともあれ凄まじい。今やローテーションを堅持してゐたとて、十七本撮らうと思へば五六年はかゝる。今作の十年後に壮絶な戦死を遂げる大御大の、逝去後ぼちぼち二十年。この期にピンク映画が命脈を保つてゐる僥倖を、寧ろ言祝ぐべきなのかも知れないが。
 閑話休題、珍しく早々にそれらしき道筋が出来上がつたにも関らず、木に竹ばかり接いでゐる内に、畢竟展開は順調に迷走する。最後のトライにタマコと電車に乗つた瑩子は、タマコの背後を取つた朝淳と冴木直の、冴木直の耳に母親のイヤリングを発見する。降車したのち冴木直を捕まへた瑩子は、拾つたと称する冴木直に招かれるまゝ家について行く。そこに遅れて朝淳が帰宅したところで、瑩子は想起する。本篇開巻画面左から佐々木に痴漢される瑩子の、更に右―無論実際にはカメラがそこまで行かない―には矢張りコンビで揃つた朝淳と冴木直が。大雑把なフラッシュバックで瑩子が辿り着く、朝淳が掏る男で冴木直がブツを運ぶ女だとかいふ出し抜けな核心に、呆れるのも通り越し畏れ入るのはそれでもまだ早い。二人して瑩子を嬲る最中、燃え上がつた冴木直と朝淳が完遂するのを待つて、何をどう突き止めたのか救出に飛び込んで来た佐々木と、瑩子が結ばれる最早感動的に底の抜けたラストはこれぞ正しくな大御大仕事。全体、斯様にちぐはぐな始終で大団円ぶるつもりかといつた以前に、土台が財布は兎も角、お母さんのイヤリングは依然冴木直の耳元にあるまんまでもある。最大限に好意的な評価を試みるならば、親の形見よりも、男の方が大事といふ瑩子の姿勢に、遠く遥か彼方の最終的には堕落論にも通ずる、即物性への肯定的な眼差しでも看て取ればよいのであらうか。安吾が落とした雷にでも打たれてしまへ、俺が。

 そんな中でのハイライトは、ダッチワイフ顔のビリング頭でなければ、これといつた代表作の見当たらなさが、消費財に徹した量産型娯楽映画に於ける女優部として、ある意味鑑ともいふべきトメに座る冴木直でもなく、長崎ゆきの濡れ場が一番の見所。着衣の状態だと単なる垢抜けない骨太程度に一旦見せかけて、一服剥ぐやなかなか以上に大きさも形も申し分ないオッパイに、意外とくびれた腰から充実した尻にかけてのラインが超絶、意表を突いた眼福を撃ち込んで来る。


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )




 「うぶ肌の愛人」(2000/製作:小林プロダクション/配給:大蔵映画/監督:小林悟/脚本:山瀬よいこ/撮影:飯岡聖英/照明:ICE&T/編集:井上和夫/美術:飛鷹純/助監督:竹洞哲也/スチール:佐藤初太郎/監督助手:加藤義一/撮影助手:堂前徹之・板倉陽子/タイトル:長谷川プロ/録音:シネキャビン/現像:東映科学《株》/協力:新宿セーラーズ 03-5273-8799/撮影協力:劇団華/出演:吉沢綾・夏目麻美・須賀美ゆり・南けい子・根本ひろみ・宮本妙織・山田和美・小野有美・島貫孝子・小澤ひとみ・及川亜希子・松永由佳子・剣幸志・中村総司・柏原秀隆・高木信弘・坂入正三・港雄一)。出演者中吉沢綾がポスターには吉澤綾で、宮本妙織から高木信弘までは本篇クレジットのみ。
 机の下、男の足が女の和服の裾を乱してタイトル・イン。裸映画的に小洒落た開巻ではありつつ、悪くないのはここまで。そこまでなのかよ、勝負つくの早過ぎるだろ。渋く煙草を傾ける男は会社社長の横井ヨウジ(港)で、派手なネイルが和装に似合はない女は、十六年関係の続く愛人のサトミ(夏目)。横井の娘の菜香子が、実の母親よりもサトミに懐いてゐる外堀を埋めた上で、横井はサトミに、妻のユキエから離縁を切り出された本題をぶつける。明けた先はまさかの、多分加藤義一の選曲によるデスメタルが爆音で鳴るビアンバー。菜香子(吉沢)はカウンターから見初めたボックス席のキヨコ(須賀美)と、手洗ひにて情を交す。事後、菜香子とは懇意のバーテンダー(根本)に菜香子がバイである旨を聞いた、真性ビアンのキヨコは匙を投げる。ところで菜香子の両刀設定には、主演女優の絡みの回数を自然に、あるいは自堕落に増やす以外の意味は特にない。
 闇雲に膨大な俳優部、配役残り宮本妙織から松永由佳子までがビアンバー要員。剣幸志から高木信弘までは、サトミが横井に持たせて貰つた居酒屋の客要員。特定出来たのは、サトミの店から最後に捌ける剣幸志のみ。南けい子が編集長の職につくユキエで、何か怪我でもしたのか左頬に大きな絆創膏の目立つ坂入正三が、ユキエの間男で出入りのカメラマン。
 どういつた縁なのかものの弾みか、前作薔薇族「炎馬の如く」に続いてライターの山瀬よいこを脚本に迎へたピンク限定で小林悟2000年第三作。謎の大量動員に面喰ふのは、ピンクの観方が卦体な当サイトの勝手にしても、展開自体もある意味順調に迷走、逆の意味だ。レース越しの被写体にソフトフォーカスかと見紛ふほどのハイキーな照明を当てるとなると、飯岡聖英がまるで坂本太と下元哲を足して二で割つたやうな画面で撮りあげる菜香子とサトミが出し抜けに大輪を咲き誇らせる百合が、普通に見てゐて完ッ全にクライマックスにしか見えないテンションにも関らず、尺をまだ二十分残しやがるんだな、これが。以降実はサトミの兄でもあつた予想外か藪蛇な劇中世間の狭さを炸裂させるサカショーに、何故か菜香子が籠絡される最早蛇だか百足だか判らなくなる一幕を経て、改めて締めを担ふのはサトミと松井。締りなんぞしないのは、この期にいふまでもあるまいが。ことここに至つて露呈する今作の致命傷は、恐らく山瀬よいこが少なくとも十全に表現出来てはゐない、父娘双方向に対するサトミの複雑な心境を、どうせといふか畢竟とでもいふか、小林悟も小林悟でてんで理解してをらず、となると当然、見るなり観てゐるこちらにも伝はる訳がない。ないまゝに、最終的には濡れ場で作劇を放り投げるのが何時もの大御大仕事。この時期の映画となると故福岡オークラで観てゐておかしくはない筈なのだが、欠片も残つてゐなかつたのか、全く以て初見の印象。それとも、素直に寝てたのか。


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )


« 前ページ