真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「ビデオガール 夢中女人」(1991/企画:サン企画/製作:Gプロダクション/配給:大蔵映画/監督:市村譲/原案:桜井文昭/脚本:夢野春雄/撮影:立花次郎/撮影助手:余郷勇治/照明:高橋甚六/助監督:高橋純/スチール:最上義昌/編集:酒井正次/音楽:東京スクリーンサービス/効果:サウンドBOX/録音:銀座サウンド/フィルム:日本アグファゲバルト《株》/現像:東映化学《株》/出演:中川みず穂・山岸めぐみ・グリーン・井上真愉美・ファイター裕・野澤明弘・登根嘉昭・江戸太郎・吉田正治)。
 夕刻か朝方か、薄暗い陸橋遠景に即座のタイトル・イン。遠目のAV撮影風景に、“二十世紀に於ける性の氾濫はAVビデオによつてその頂点に達してゐた”云々と、回りくどい割に内容は殆どないナレーションが入る。“AVビデオ”なる、武士の侍が馬から落ちて落馬する類の珍単語は兎も角、性に関する娯楽の頂点の座を、仇敵たるアダルトビデオに諾々と明け渡してよいものかといふ根本的な疑問も過ぎりつつ、結論を先走るととてもではないがそれどころではなかつた。予定してゐた男優が来ないとやらで、監督(登根嘉昭?)が自分でAV嬢(グリーン)との絡みに及ぶ濡れ場初戦を経て、“ここにも一人その―ドロップアウト注:AVビデオの―快楽を求め欲求不満を解消してゐる男が存在してゐた”と、ビールを飲み飲みボサッと歩くロングで佐藤武雄(ビリング推定でファイター裕)登場。結構馬鹿デカいフラミンゴのネオンサインを掲げた、その名もそのまんまビデオフラミンゴで三上涼子(山岸)の「そこまでされたいの」を借りて来た佐藤は、見進める内にビデオの世界に入り込み、三上涼子を抱く。射精とともに佐藤が我に返ると、驚く勿れ、侘しい寡暮らしの部屋に三上涼子の持ち物の女物のバッグがあつた。それはさて措き改めて振り返るに、開巻のグリーン篇には全体何の意味があつたのか。
 配役残り吉田正治は、「そこまでされたいの」の男優、実のところ何のことはない芳田正浩である。井上真愉美(真愉見ではなく真愉美名義はクレジットまま)は矢張りAV女優、役名は判らないが、次回作のタイトルは「イケイケ快感天国」らしい、何だそれ(´・ω・`) 後述する川辺のパンの件に於いて、佐藤と―多分―実際に交錯する中川みず穂は、この人もビデオガール、「SMつぽくない」の広瀬裕子。野澤明弘が、「SMつぽくない」の中でプレイに匙を投げられ、チェンジの憂き目に遭ふ―代りに佐藤が招き入れられる―男優。因みに「そこまでされたいの」にせよ「SMつぽくない」にせよ、佐藤宅のテレビに映し出されるビデオの中身は、画面のルックと―本篇同様―恐ろしくとりとめのない内容に、恐らく何れも今回新撮されたものではなからうか。最後に、グリーンの現場にもう二人見切れるカメラマンか助監督、あるいは、居るのか居ないのか甚だ微妙な井上真愉美の―ビデオの中での―相手役。候補はほかに見当たらないとして、清々しく変名感を爆裂させる江戸太郎については手も足も出ない。
 さて市村譲1991年第四作は、衝撃的も通り越し壊滅的な問題作。日本語が一切判らなくとも全然関係ない第一の衝撃は、とりあへず画が遠く、兎にも角にも暗い。そんなに俳優部を満足に抜きたくないのか、それとも市村譲は演者に近付くのが嫌なのか、寧ろ綺麗にその人と知れるショットの方が余程少ないくらゐ。とりわけ、井上真愉美のパートは本格的に暗黒。あまりに暗くまるで要領を得ないので、部屋を真暗にして見てみたところが矢張り一体何が映つてゐるのか本当に判らない。原案には桜井文昭と大蔵本体が絡んでゐながら、これで商業映画として成立してゐるのが信じ難いほどに暗い、藤原健一の「女囚701号 さそり外伝」(2011/主演:明日花キララ)よりもなほ暗い。あるいは、大蔵本体が絡んでゐるからこそ破れた横紙なのか。散発的に当たる照明で井上真愉美は辛うじて識別可能にしても、犯してゐる男の方は所々僅かな光の隙間に覗く衣服で判別するほかないゆゑ、そのカットが佐藤が借りて来たAVの中身なのか、実生活とAVとの境界を喪失した佐藤の幻覚なのか判断に苦しむ始末、そこから混濁させてどうする。佐藤と同じ迷宮に見るなり観る者を叩き込む、メタフィクションでも狙つたつもりか。終盤まで温存される中川みず穂こと広瀬裕子は、一応佐藤に最後通告を突きつける。“キミは既に狂つてる”、“夢も現実も見境がつかない”。全く以て御尤もといふしかない話で、見過ぎたものか何なのか、AV好きのチョンガー男が拗らせた狂気。を描いた映画にしては、第二の壊滅はそもそも映画自体が狂つてゐる。前述した画面の圧倒的な暗さと薮蛇な遠さとで、ただでさへ捉へ処があるない以前に視覚的にすら見えもしない始終は、市村譲の根本的に脈略を欠いた語り口に委ねられた結果、五里霧中が火に油を注がれ木端微塵な支離滅裂に。加へて、AVを見てゐる間終始独り言をグチャグチャ垂れ続ける、不快といつた表面的な印象では済まない佐藤の造形に否応なく次第に募るより本質的な不安は、川辺でパンを食べてゐる際―その場面設定の唐突さが既にキナ臭い―膝元から落としたビデオを、確か借りた物にも関らず踏みつけたかと思ふと、バラバラに壊した挙句に引き出したテープで自らグルグル巻きとなるシークエンスに至つて確信に変る。ファイター裕の、目が完全にヤバい。まさかとは思ふが、本物を連れて来た訳ではあるまいな。気違ひが気の違つた展開に放り込まれて右往左往する、気違ひみたいな映画、気違ひの気違ひによる気違ひのためのピンクか。土台が、通常三割増の女優部四本柱を擁しておいて、女の裸もちやんと見せずに何が始まるのかとツッコむ気力も最早失せる、危険なレベルでダウナーな一作。“覗くな、狂ふぞ”―予告篇では、“観るな、狂ふぞ”ではなかつたか?―との、いざ観てみると狂ほしく詰まらなかつた「マウス・オブ・マッドネス」(1994/米/監督:ジョン・カーペンター)の惹句を何となく思ひだした。


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 「盗撮ファミリー 母娘ナマ中継」(2014/製作:ラボアブロス/提供:オーピー映画/監督・脚本:田中康文/撮影監督:下垣外純/編集:酒井正次/音楽:小鷹裕/助監督:菊島稔章/監督助手:奥本裕也/撮影助手:大坪隆史・藤井良介/編集助手:鷹野朋子/応援:小林徹哉/メイク:ビューティ☆佐口/出演:佳苗るか・里見瑤子・月美弥生・柳東史・世志男・津田篤・岡田智宏・北川帯寛・和田光沙)。クレジット終盤に力尽きる。
 公園をホテホテ歩く佳苗るかが、ジョギング中の北川帯寛と擦れ違ふ。北川帯寛に佳苗るかが心を奪はれてゐる風情を窺はせると、劇伴が起動しタイトル・イン。その夜の竹内家、誰の蔵書なのか少女コミックで埋め尽くされた部屋。同級生の友達・茜と電話で話す女子大生―大学周りのロケは早稲田周辺―で多分一人娘の美織(佳苗)は、キャッチが入つたと電話を切る茜の態度に女の友情の儚さを嘆く。美織がカルピス・ウォーターを取りに台所に向かふと、父・浩介(柳)はヱビスと枝豆で晩酌をやつてゐた。そこにパックの白い顔で現れた母・加奈子(里見)と、浩介の夫婦生活は結局浩介が拒み不発。一方、実は未だ生身の男を知らぬ佳苗はローターを持ち出し、北帯をオカズに自慰。すると画面手前に悶える美織を置いて、部屋の壁に佳苗るかと北帯の濡れ場をドーンと映写する大胆な演出は裸的にも映画的にも映える。ところがその模様は、竹内家の表に停めた車の中から蕪木(世志男)に盗撮されてゐた。世志男の煙草てマルメンライトなんだ、哀川翔や瀬々敬久と同じだ。茜(和田)に連れられ行つた合コンで知り合つた院生・南部(津田)と、美織が地味に距離を近付けつつあるある日、例によつて擦れ違つたテコンドー教師とのウォン・ビンビン(北川)は、帰国せねばならなくなつたと出し抜けに美織に告白する。
 若干前後して配役残り、美織がビンビンの求愛を被弾する前段、攻撃的な胸の谷間を見せつけ飛び込んで来る月美弥生は、出張先での浩介の火遊び相手・愛美。首から上は幾分垢抜けないものの、魅惑的なトランジスタ・グラマーと驚異的な腰の括れが棹の琴線を激弾きする、超絶ボディを誇る。エロ映画のエキスパートたるフィルム・ハウス勢を主としたエクセス重戦車軍団が事実上退役した今、浜野佐知に任せたい逸材、清水大敬もいいかも。ビンビンは篭絡した美織の目隠しされた事後の写メを、美織のスマホから加奈子のガラケーに送信。岡田智宏は、美織を誘拐したとする蕪木に加奈子が誘惑することを指示される、偶々竹内家を訪ねて来た興亜生命セールスマン・高野。サクサク上げた応接間、加奈子がわざと高野のズボンにコーヒーをこぼす火蓋がケッサク。当然その様子もモニタリングする蕪木のツッコミも、ここは劇中僅かにクリシェのクリシェぶりを効果的に加速する。それと、チラッとだけ見切れる茜の彼氏は、菊島稔章でも田中康文でもないゆゑ奥本裕也?
 何故か大蔵公式はコメディとして推す、田中康文2014年第二作。といつて、劇伴の軽妙さを除けば然程も何も笑ひ処がある訳でもなければ、終始平板な画作りにも足を引かれ、予想外のネットワークで繋がる盗撮隊の面々がギャラを奪ひ合ふ件以外には、特段シークエンスも弾まない。定番中の最強定番・黒のセルフレームと、ロリッロリした扮装がエクストリーム・キュートな主演女優。ゲリラ的に爆裂するダイナマイト級の三番手に、中盤の長丁場を背負ひ抜く、その内二十年選手ともなると女優としては十二分にレジェンド枠の里見瑤子。大概強力な三本柱を擁しながら、演出部・撮影部双方の非力に阻まれ下心の盛り上がりにも大満足には至らない始末。荒木太郎や国沢実はおろか、加藤義一や竹洞哲也にも正直望みは薄く、しかも後ろからは山内大輔やよもやの今岡信治までもが猛然と追ひ駆けて来る中で、田中康文に小さく纏まつて貰ふ場合ではない。重ねて筆を横滑りさせると、2010年代ピンク映画の依然最高傑作「あぶない美乳 悩殺ヒッチハイク」(脚本:佐野和宏/主演:みづなれい)以来、強ひられてゐるのか自発的なものなのかは与り知らぬ以上一旦兎も角、兎に角森山茂雄が長く沈黙し続けてゐるのも全く以て全身全霊を込めて如何なものか。今作に話を戻すと、最終的には美織が眼鏡をオミットする、この星の上の数少ない真の美に唾する人類史上最大の大罪も、当然断じて酌量の余地なく看過し難い。


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 「痴漢電車 腰くだけ夢心地」(1996『痴漢巨乳電車 ゆれてはさんで』の1999年旧作改題版/製作・配給:大蔵映画/監督:小林悟/脚本:如月吹雪/撮影:柳田友貴/照明:渡部和成/編集:フィルム・クラフト/助監督:佐藤吏/スチール:佐藤初太郎/タイトル:ハセガワ・プロ/録音:シネキャビン/現像:東映科学《株》/出演:かとう由梨・まりも《新人》・姫川夢子・桃井良子・吉行由実・港雄一・坂入正三・山本清彦・白都翔一)。
 車窓から見える住宅地と、一転走り来る電車の画。ジッパーを激しく下げ悩ましい胸の谷間をガンッガン見せつけるかとう由梨の背後に、スーツ姿の白都翔一が忍び寄る。セットを外からカメラが左にパンすると、来よつた来よつたとスポーツ新聞越しに様子を窺ふ港雄一。白都翔一が手を伸ばしてみたかとう由梨の尻は、あらうことかノーパン!すると斜めに捉へたギラついた港雄一の、触り易いやうにパンツ脱がしてやつたんや感謝せえよなるモノローグが差し挿まれるのは実に親切設計。量産型娯楽映画といふのは、斯くあるべしと思ふ。ミナコが達したところで、『塀の中からアイラブユー』で知られるヤクザ上がりの作家・荒木啓三(港)が「どやワシの女房の触り心地は、ええ思ひしたなう」と介入。目を白黒する純(白都)に、交叉する電車ショットを噛ませてタイトル・イン。クレジット明けると荒木とミナコ二人きりの駅のホーム、普通に煙草が吸へた時代の大らかさ。投げやりな時制移動で振り返られる顛末は、結婚以来の勃起不全に悩む荒木はある日、電車痴漢に悶えるミナコの痴態に愚息の復活を予感。集めた痴漢男にミナコを抱かせ、荒木を勃たせた者が勝ちとする底の抜けたグランプリを企画する。一方、免許証と名刺を取り上げられ、東京湾をも匂はされた純に泣きつかれたイメクラ嬢の彼女(桃井)は、母集団の増員を図り他の参加者を探すことにする。
 配役残り坂入正三は、赤ちやんに扮し看護婦スタイルの桃井良子と事に及ぶイメクラ客。看護婦の次に人妻が好きとのことで、桃井良子の口車に乗せられ一件に棹もとい首を突つ込む。吉行由実アテレコのまりもは桃井良子と同じイメクラの嬢・あすか、山本清彦はあすかの客。やまきよは純と同じく、電車の車内で荒木に捕まる。その件、凄んだ港雄一が介入するや、時代劇にて凄腕が登場する際の感覚で、如何にもそれつぽく鳴る尺八が堪らない。アテレコの主だけに止(とど)まらない吉行由実は、一旦荒木家に招集され消沈し帰りの電車に揺られる三馬鹿の、集団痴漢を被弾する女。なかなか以上に刺激的な一幕ではあるものの、ジーンズを軽く下ろされたパンティまでしか見せず、画面向かつて左にはスポーツ紙で顔は隠した小林悟も見切れる。姫川夢子はサカショーの相手をする、三人目のイメクラ嬢、清々しいまでの劇中世間の狭さは気にするな。サカショーに乞はれ、対ミナコ―あるいは荒木―の奇策を思ひつく。
 大御大・小林悟1996年全十一作中第五作、ピンク限定だと全九作中第四作。インポの強面亭主が回春を目的に、眼前で女房を痴漢師なり助平男に抱かせる選手権を仕掛ける。纏めてしまへば簡単明瞭かつ在り来りな物語ではありつつ、大御大の語り口が大雑把過ぎるため、展開のそこかしこに開いた大きく深い溝を適宜補ひながら見るか観る羽目になる。状景を空想するほかない文字情報に対し、画像媒体、殊に動画のテレビなり映画の受容に関し想像力の欠如を促す弊を唱えへる御仁は、全体如何なる名画ばかり通つて来たのか。兎も角、今作に於ける一撃必殺の決戦兵器は、今風に譬へるならば幾分地味にして、その分オッパイは大きい篠田麻里子ともいふべきかとう由梨の眼福。前半は尻を見せる程度に出し惜しみ、V.S.純・サカショーの二連戦をほぼ孤軍奮闘する桃井良子と、何れも短いまりもと―しかも脱ぐ訳ではない―吉行由実に任せた上で、かとう由梨が初めて濡れ場らしい濡れ場を披露するのは三十一分半の荒木家バイブ戦。バイブ戦ゆゑ男の体に遮られることもない、長く伸ばした美しい肢体の素晴らしさにはストレートに惚れ惚れさせられる。荒木曰くの“性の祭典”当夜、トップバッターはサカショー。最大の見せ場はここから、姫川夢子の対ミナコ奇策といふのが、自身に加へあすかも投入しての三輪の百合畑。姫川夢子とまりものエクストリームなオッパイ合はせに、かとう由梨も参戦する魅惑的なオッパイ・トライアングルは超絶。決定力の漲る第一戦、繋ぎに徹したやまきよの第二戦、それなりにドラマ的な捻りも交へた純の第三戦と連なる構成は地味に秀逸。そもそも、最大の爆発力を有した吉行由実を温存してなほ、かとう由梨から桃井良子まで、ルックスにも何ら遜色のないオッパイ班を四枚並べた布陣はあまりにも強力。何といふこともない起承転結とはいへひとまづ綺麗に纏め、裸映画的には大鉄板。プログラム・ピクチャーの大樹、枝葉の先なれど華やかに咲き誇る一作である。


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 「痴漢電車 緩めて、締めて」(1991『痴漢電車 無理やり奥まで』の1999年旧作改題版/製作:旦々舎/提供:Xces Film/監督:浜野佐知/脚本:山崎邦紀/撮影:河中金美・田中譲二/照明:出雲静二・中村誠/音楽:藪中博章/編集:金子編集室/助監督:広瀬寛巳/制作:鈴木静夫/ヘアメイク:斎藤秀子・並木務/スチール:ブルー&アンバー/録音:ニューメグロスタジオ/現像:IMAGICA/出演:早瀬理沙・神崎亜子・久須美欽一・芳田正浩・石井基正・南城千秋・広田まみ)。
 尺八を吹く主演女優の尻に、着弾した電話の音声が被さる。男役は不特定に撮られてあつて、実際特定出来ない。電話の用件は、天狗OFFICEから風俗のプレイ内容と料金を確認する早瀬理沙の声。正直いつて、そこにその電話がかゝつて来る状況が最後まで見ても結局呑み込めない。男が果てると一転、痴漢電車出発進行。早瀬理沙が、山邦紀の電車痴漢を被弾する。そこそこ攻め込み、パンティの中にまで手を潜り込ませた画に唐突なタイトル・イン。この件も山邦紀が役得感を爆裂させるだけで、ヒロインの開放性といふ以外には何ら以降に繋がる訳でも全くない。とまあとかく、ちぐはぐな開巻ではある。
 改めて、風俗記事の編集プロダクション「天狗OFFICE」。主幹で、劇中呼称は親方の天狗(久須美)はドッカとデスクに両足を上げ、マスミ(早瀬)とオガタ(芳田)が適当に仕事をする。親方は資料を取りに行く口実で、マスミを伴ひ上階の資料室に。とはいへ資料室とは名ばかり、要はヤリ部屋ぢやないかといふオガタの愚痴を口火に、コッテリとした濡れ場を堪能させる。序盤は物語らしい物語も起動しないまゝに、この時点では大して気にもならない。高級デートクラブの体験取材に繰り出したオガタは、マスミへの仄かでもない関心を匂はせつつ、若くてグラマーな娘といふ電話での注文に対し、実際に若くてグラマーな神崎亜子に感激する。神崎亜子が本当にピッチピチで、俺も感激した。脈略をスッ飛ばした洞察力でオガタが取材中であるのを見抜いた神崎亜子は、誌面での顔出しの交換条件にダイヤルQ2のパーティーラインで肉体関係の相手を捕まへ、海外の慈善団体に寄付すると称して金も受け取つてゐる謎の女の素性を調べることを依頼する。モチーフの懐かしさに関しては、懐かしくて当然なので通り過ぎる、二昔も前の映画だ。
 配役残り、“ダイヤルQ2の女”の正体は、隠すなりミスリードしようとする素振りも窺はせずにマスミ。南城千秋はマスミに捕まる、ユニセフも知らない好色漢。但し事後マスミをAVにスカウトする予想外の顔を見せ、狭い界隈の中、神崎亜子第二戦に際してダイヤルQ2に強い奴がゐると“ダイヤルQ2の女”調査に自信を覗かせる、親方の知人であつたりもする。何の条件も設けずに若い頃の窪塚洋介似の石井基正は、電車で痴漢したマスミに、心を奪はれる男前。トメに座るところを見るに、当時はそれなりのネーム・バリューがあつたと思しき―但し現在の目では、三番手扱ひの神崎亜子に全然及ばない―広田まみは、構つて貰へぬ挙句天狗OFFICEにまで乗り込んで来る親方の女房。
 最低限痴漢電車の体はなしてゐる程度の、浜野佐知1991年第二作。博識で有能な―と、いふほどのタマでもない―事務員。電車痴漢を受け容れ、ダイヤルQ2で男を漁る奔放な女。セックスの対価に受け取つた金を、本当にチャリティー寄付する善人。恋心込みで、一個の人格とは思ひ難い様々の相に混乱を来たすオガタと石井基正に、マスミは決然と宣言する「私は一枚のフロッピーディスク」。消去も書き込みも自由、その時々に挿し込むフロッピーの中身がそれぞれ異なる如く、各々の自分に自在に変貌する。マスミが作中所与の視座として辿り着いてゐたフリーダムは一見、あるいは絡みの海の中に埋没した展開の中にあつては漸く魅力的にも思へ、残念ながら話がそこから一切進まない。オーラスは、二対一の電車痴漢。とんでもない人間を好きになつたのではないかと困惑するオガタに、石井基正は行くところまで行くしかないとよくいつてもとりあへずな、直截には御座成りな腹を固める。最初と最後を痴漢電車で締め、マスミと石井基正のミーツは電車痴漢そのものではあるものの、拡げただけの風呂敷は、単なる散らかした布でしかあるまい。南城千秋と寝てゐたことを知り、親方は激昂一番マスミを馘に。元々辞める心積もりでもあつた、オガタも脊髄反射で後を追ふ。一人きりの天狗OFFICEにて、「何であんなことで馘にしちやつたんだ」と黄昏る久須美欽一の姿も、後年熟成する“どうしてかうなつたんだ”で御馴染み、御存知旦々舎の千両役者・栗原良十八番の見せ場と比べると未だ大いに非力さを感じさせる。濡れ場の質量には遜色ないながら、平板な裸映画である。


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 「緊縛絵師の甘美なる宴」(2014/製作:幻想配給社/提供:オーピー映画/監督:友松直之/脚本:百地優子/撮影・照明:田宮健彦/助監督:高野平/緊縛指導:有末剛/編集:酒井正次/録音:シネキャビン/ライン・プロデューサー:石川二郎/衣装:佐倉萌/撮影・照明助手:河戸浩一郎/スチール:本田あきら/制作応援:柴田譜靖・山口通平/現像:東映ラボ・テック/制作プロダクション:アウトサイド/出演:小司あん・若林美保・あやなれい・森羅万象・津田篤・橋靖)。
 片足吊られた格好で縛られた小司あん(ex.あん)の艶姿に、森羅万象が絵筆を走らせる。太股に垂れる汁を認めた森羅万象は笑みを浮かべ、改めて小司あんの全身を抜いてタイトル・イン。この期に及ぶにもほどがありつつ、よくよく見てみると実は思ひのほかマスクの甘い森羅万象の色気が女優部もさて措き堪らない。もしかしてこの人若い時分、太つてゐなくて髪もあつた頃には、相当な二枚目であつたのではないか。
 全十巻の画集を刊行中の緊縛絵師・小池満造(森羅)の屋敷に、担当編集・早川(高橋)が詩織(小司)を連れて来る。編集長(全く登場しない)の知人の娘とやらで、両親とも死去したゆゑ天涯孤独の身となつた詩織を、小池家の女中にでも置いて欲しいとのこと。応接間から一転、あやなれいの爆乳が飛び込んで来るインパクトある繋ぎは完璧。小池の書生・伊藤聖斗(津田)は小池のモデル・美香(あやな)と密通してゐるところを、この人も元々はモデルであつた小池の妻・佐代子(若林)に目撃される。小池が妻にも縄をかける夫婦生活に、詩織を噛ませた一夜明け。目の上のタンコブたる師匠に対し姦計を巡らせる伊藤が、迎へに出た筈の美香と懲りずに乳繰り合ひ何時まで経つてもモデルが到着せず仕事にならない中、小池は呼びつけた詩織に言明する「お前を緊縛するぞ」。ど直球極まりないが、森羅万象の正しく森羅万象を統べかねない決定力あれば、どんな台詞も通らうといふものだ。
 東京電撃映画祭と日課のツイッターでの炎上無双のほかは、何故か何の沙汰も聞こえて来ない友松直之の2014年第二作。毎度御馴染み友松節こと、トモマツイズム縮めてマチズムを今回は一切廃し、第一人者の有末剛をも擁した至つて正攻法の緊縛もの。といつて、我が国に於けるサドマゾといふと伝統的に予想され得る、あるいは古い頭が脊髄反射で連想する縄が縛る前から湿つてゐさうなジメジメした精神性は、友松直之のドライな論理にとつては端から遠い。一通りあれやこれや縛るなり吊るなりしたショットが並べられこそすれ、それはあくまで一通りで、緊縛を様式美として追求せんとする気配も然程窺はせない。尤も、あるいは逆に。逆転劇をより鮮烈なものとするギミックに緊縛を配し、摘み取られ陵辱される花と、打ち拉がれ赤子のやうにといへば聞こえもいいが、要は無力に抱(いだ)かれる花。一瞬ネタを割るのが早過ぎるのではないかと早とちりさせられかけた、攻守、乃至は主客が綺麗に、あるいはより苛烈に倒立する復讐譚は女の裸のこともSM趣向も一旦忘れ、素面の劇映画として力強く見応へがある。ところでとなると、そんな詩織を小池の下に遣はせた、そもそも編集長はどういふつもりであつたのよ、だなどと瑣末な疑問は忘れてしまへ。一見安寧に濡れ場を連ねるに終始する風に見せて、何気なく構築した起承転結を軽妙に丸め込む深町章の文字通り妙手とは別の形で、近作だと2013年第二作「尼寺 姦淫姉妹」(主演:緒川凛)にも連なる、物語を劇的に捻じ伏せる幕引き際の豪腕は素直にお見事。尼寺にて最初に披露された、「中年は、キモいか!」、「臭いか!」、「ウザいかーッ!」の中年三原則が再び森羅万象の口から火を噴くのも、対する詩織のアンサーが素敵・渋い・カッコいいといふのは安直で弱いともいへ、一度(ひとたび)の名台詞が十八番に昇華する瞬間に立ち会へたやうで嬉しい。
 ところがとなると厳しいのが、俳優部に開いた大穴。確かに乳は太いものの、場末の商売女の如き風情が清々しく縄に映えない三番手に関しては、オッパイの大きさは百難隠すといふことにして―俺は一体何をいつてゐるのだ―ひとまづ兎も角。何処で拾つて来た馬の骨なのか、橋靖が果てしなく酷い。それもどうかといふ話でしかないのだが、実年齢よりも上と思しき役を振られた結果口跡は行方不明で、濡れ場に際して腰も満足に振れぬのは何をかいはんや。カックカック非人間的に規則正しい腰使ひに、ロボット・ダンスかと思つた、頓珍漢なサイバーパンクかよ。下手に、もとい下手ではない本格の作劇の中にあつて、なほかつ作品世界の中心には量産型娯楽映画界の重鎮・森羅万象がドッカと座るだけに、殊更に役者の違ひが目についた。


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 「セミドキュメント 特訓名器づくり」(昭和56/製作:ワタナベ・プロダクション/配給:株式会社にっかつ/監督:中村幻児/脚本:吉本昌弘・伊藤智司/製作:渡辺忠/企画:才賀忍/撮影:倉本和人/照明:出雲静二/編集:竹村編集室/音楽:PINK BOX/助監督:岡隆通/演出助手:広木隆一・山岡博美/撮影助手:水野真/照明助手:堺一郎/効果:西武千/録音:銀座サウンド/現像:東洋現像所/出演:和田家の人びと 父 野上正義・母 杉佳代子・長男 広田性一・長女 蘭童セル 高校時代の男先生 大杉漣・高校時代の女先生 香川留美・娘の同級生 五月マリア・その恋人 村井浩・父の恋人 水月円・警官 飯島洋一・予備校生 釜田千秋・高橋健一・志村幸雄)。
 郊外の朝、ベランダに出た浪人生の長男・和田総一郎(広田性一/凄い名前だ)を呷りで抜き、逆に庭で体操する父・賢一郎(野上)を、ベランダ視点の俯瞰で捉へる。台所、兼居間では長女・泉(蘭童)と二人で義父の墓参りに行く心積もりの母・帯子(杉)が、気忙しく朝食の支度。男衆は行かないのかといふと、賢一郎は嘘スメルが爆裂する新入社員の歓迎式で、総一郎は予備校の試験。朝は米食を希望する賢一郎が、ボヤいてタイトル・イン。試験が始まるや総一郎は眠たくなる、途中でバッくれた筈の泉が墓参り、してゐるのかと思ふとあらうことか帯子を墓石に縛りつける。そこに現れた総一郎が花で半裸の母親を打つのは、派手な夢オチ。他方問題を見るなり絶望し、隣の総一郎が回収した答案用紙には大きく“死”の文字を書き殴つてゐた加藤(釜田千秋か高橋健一か志村幸雄)に連れられ、総一郎はビニ本屋に。そこで気付いた総一郎に対し、息子には気付かず買物を済ませた賢一郎は、その足で浮気相手の部下・村山静江(水月)と逢瀬する。
 配役残り、大概女学生には見えない五月マリアは、売春で“自立”する泉の友人・アケミ、村井浩は単車でポン引き担当の彼氏。生徒が初潮を迎へたとやらで、保健室に生理用具を求めに来るファースト・カットが素頓狂な大杉漣は、総一郎高校時代の多分担任・浜倉か浜蔵か濱k(以下略)、右翼趣味の両刀使ひ。破廉恥にも白衣を剥くと下は全裸の香川留美が、同じく養護教諭・キョウコ先生。夢精の相談に訪れた総一郎の前で、浜倉とキョウコがオッ始め、呆気にとられる総一郎が自室で目を覚ますと、ベッドにはキョウコが横たはり本番で夢精を治して呉れるのは、何と二段階の夢オチ、流石に乱打に過ぎる。総一郎は、同級生であつた加藤の死を浜倉に報告。まるで意に介さない浜倉宅にて、薔薇族のエロ本を持ち出した浜倉に迫られるも、キョウコが訪ねて来たどさくさに紛れ総一郎は辛くも脱出する。飯島洋一は、総一郎が“ここの家の人が狂つてる”と助けを求める警察官、プリミティブにもほどがある。そこで踏み込んだ飯島警官が、浜倉に宛がはれるまゝキョウコを抱くのは、一旦底が抜けてしまつてゐる以上最早劇中現実なのか悪夢なのか判らない、照明的には後者なのだが。
 ピンク三本を見て一旦終了した筆の根も乾かぬ内に、DMMのピンク映画chに新着した中村幻児昭和56年第二作、買取系ロマンポルノ。どうでもよかないがピンク映画chを謳ひながら昨今新着するのは買取系ロマポとVシネばかりで、ピンクの新しい弾が本当に全然入らないのは如何なものか。愚痴はさて措き、総一郎は浪人生の一般的な憂鬱と、屈折した妹への情動を持て余し、帯子は満足に夫に構つて貰へぬシンプルな欲求不満を募らせる。“自立”と称した売春に二の足を踏む未だ処女の泉は、娘の同級生とは知らずアケミを買ふ父親の姿に衝撃を受ける。飄々と女遊びに明け暮れる賢一郎を除けば銘々が爆弾を抱へた、危なつかしい一家を舞台としたホーム・ドラマ。といつて本筋らしい本筋が起動するでもなく、浜倉とキョウコを気軽に動かせる飛び道具要員に配しあれよあれよと濡れ場を連ねるに終始する、ものかと思ひきや。“夢も現実も狂つてる”と出し抜けにマッドに振れるラストは反則スレスレの一発勝負ながら、ギリッギリの強度で切り抜ける。のんびりと電車が通過するロングに、叩き込まれるエンド・マークはまさかの“合掌!”。“合掌!”て、そんな映画見たことないし、これから出会ふこともまづあるまい。
 純然たる劇映画にしていはゆるも何も“セミドキュメント”要素は皆無であることと、一応自身の緩さを自覚した帯子がセックスヨガ―何だそれ(´・ω・`)―に入会する、と口では語る件はあるものの、実際に名器づくりを特訓するシークエンスは一切ない。さうかう振り返ると、何から何まで豪快の一言しか見当たらない一作ではある。

 挙句に、豪快なのは本篇だけに止(とど)まらぬ。ポスターに影も形も出て来はしない、竹村祐佳の名前がある件。買取系とはいへロマポといふと何となく格式高い印象を持つものだが、案外大らかな世界なのか?最初に観た昭和59年第二作「ザ・SM 緊縛遊戯」(脚本:吉本昌弘)があまりにも鮮烈であつたとはいへ、正直何となく中村幻児の鍍金が剥がれて来た感もなくはないのは内緒。


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 「痴漢電車 乗つたら押して」(1991/製作・配給:大蔵映画/監督・脚本:小林悟/撮影:柳田友貴/照明:鏑矢光一/編集:フィルムクラフト/助監督:青柳一夫/スチール:大崎正浩/監督助手:毛利安孝・植田中/録音:銀座サウンド/現像:東映化工/出演:冴木直・石原まりえ・久保田未花・井上真愉見・板垣有美・朝田淳史・石神一・五十嵐徹・坂入正三)。
 まんま見た目は単なる一軒家の、下宿「みどり荘」外観で開巻。管理人(板垣)が朝食を手に店子の山田を起こしに来ると、山田ハジメ(坂入)の豪快な朝立ちに驚きアッツアツのトーストを腹の上に落とす。寝耳に水ならぬ寝腹にトースト、確かにそれは熱いと思ふ。山田は半裸のまゝバタバタ出撃、駅のホーム実景、電車に乗り込む足々にタイトル・イン。車内で『週刊哲学』を広げる山田に、痴女(石原)が急接近を通り越し密着。気が弱く何も出来ない山田は、反対側から伸びた手(主不明)に痴漢される女の痴態に目を丸くする。店内には三浦弘とハニーシックスの「よせばいいのに」が流れるお馴染み摩天楼、照明が馬鹿に暗い。据膳も喰へない万年平社員―正確には係長補佐―の山田を肴に、気弱を直すには痴漢が一番と銘々が痴漢の武勇伝を語る無体な宴席。石山(石神)が終ぞ役名不詳の冴木直に、五十嵐徹は学生時代家庭教師をしてゐた際の生徒・ユリ(久保田)に。そして、俺くらゐになると自分からは手を出さないと豪語するどれぐらゐなのかサッパリ判らない大山課長(朝田)が痴漢したのは、冒頭の石原まりえ。「痴漢のひとつも出来ない奴は出世しないぞ」と大山に無茶苦茶なハッパをかけられた山田は、補佐を卒業した係長になるべく明々後日に一念発起する。とまあ時代の転びやう如何によつては、プリントが焼却されるどころでは済まない物語ではある。
 正直この辺りを見てゐる時が一番気楽、小林悟1991年全十七作中第十作、ピンク限定だと全十二作中第八作、この年四本目の痴漢電車。全部で十七本、その中に薔薇族が五本、今作の更に後に一本続き年に痴漢電車だけで五本。何かもう、何もかもが凄まじくて軽い目眩を覚える。ところで映画の中身はといふと、らしからぬのか最終的にはらしいのか、なかなか一筋縄では行かない幻惑的な一作。さあて痴漢するぞと乗り込んだ通勤電車、例によつて『週刊哲学』を広げる山田の周囲は、全体主義社会を描いたディストピア映画感覚で『週刊エッチ』ばかり。世の中と反対だから乗り遅れると自省した山田は、今度はどうやら気があるらしき管理人にフラゲして貰つた『週刊エッチ』を持参し乗車、すると今度は周りは全員『週刊哲学』。「何と生きることの難しきことよ」、「でも他の人々は何事もなく生きてゐるではないか」とポップに苦悩してみせる山田の姿は、確かにか案外か兎も角哲学的なのかも。哲学とエッチを対極に配した大胆な対照に加へ、『週刊哲学』と『週刊エッチ』誌自体が素面の小道具として不可思議なまでのクオリティでよく出来てゐる。他方、初めて男に体を触られた冴木直は、二足三足飛びに石山に求婚。冷静に考へてみるとある意味結構な話にも思へ、また別の意味では当然邪険に当惑する石山は、一濡れ場介錯した後冴木直を無下に捨てる。その場に遠目で居合はせた山田は、同じ会社の者ですと冴木直にミーツ。すると山田に心を開いた冴木直が“田舎の空が見えた”だの挙句には“お父さん”だの呼びかけるに至るのは、そこだけ掻い摘むと木に竹すら接ぎ損なふ頓珍漢なシークエンスに思へて、実際の本篇は正体不明な本格派のエモーションを湛へる名なのか迷なのか、判別に苦しむメイ場面。それはそれでそれなりに、終に小林悟が途方もないトライ・アンド・エラー・アンド・エラー・アンド・エラー・アンド・エr(以下略)の末に培つた、知る人の方が絶対的に少ないと思しき真の実力を垣間見たのかと、正しかけた襟を引き千切るのが我等がピンクゴッド・小林悟。結局山田が遂に痴漢した、エッチが大勢を占める車内で一人『週刊哲学』で顔を隠す女―ついでに何故かウエディング・ドレス姿―が勤務先の上得意「細谷産業」の社長令嬢・花子(井上)で、見初められた山田は細谷産業専務の座に納まる。止(とど)めに電車で山田と再会した冴木直が、痴漢がてら月給五十万で専務秘書に転がり込む―因みにここでは基本エッチの車内で、二人だけ哲学―棚から卓袱台が降つて来るやうなラストは、紛ふことなき大御大仕事。小林悟が百本に一本の映画を四五本は撮つてゐる、筈といふ最も単純な確率論を未だ捨てきれずにゐるものだが、なかなかといふか、一向に出会へる気配さへない。

 量産型娯楽映画が本当に量産されてゐた息吹を伝へる瑣末、冴木直が石山を二度目は逆襲撃し連れ込んだ自宅には、「赤い光弾ジリオン」のポスターが。
 それともう一点、俳優部が登場する―電車内―カットは全てセット撮影で賄ふのは別にいいとして、散発的に挿み込まれる実車輌ショット。どう見ても網棚の上から撮つたやうにしか見えない画は、一体どんな撮り方をしたのか。


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 「女高生 快感」(昭和54/製作:中村プロダクション/配給:新東宝映画/監督:中村幻児/脚本:白鳥洋一/撮影:久我剛/照明:石部肇/助監督:平川弘喜/編集:竹村編集室/音楽:田所史郎/記録:前田侑子/演出助手:岡孝通/車輌:富士映画/効果:中野忍/録音:ニューメグロスタジオ/現像:ハイラボセンター/出演:深沢ゆみ・杉佳代子・笹木ルミ・高島亜美・巽健二・鶴岡隆史・矢野健作・北山浩一・山下京子・宮本ミサ・依田満夫・中里義一・武藤樹一郎)。
 赤い砂時計から左にパンすると、セーラー服の少女の細い指先が砂時計を引つ繰り返す。的確な劇伴の力も借り、メランコリックな開巻。今度は上にティルトすると、ジミー土田と西藤尚を足して二で割つたやうな主演女優。中沢弘美(深沢)が黄昏がれてゐる放課後の教室に、友達のグー子(高島)が忘れ物を取りに来る。何だその徒名は、授業中居眠りばかりしてゐるのか?二人で行つたディスコの話を軽く挿み、グー子の弘美帰ろでタイトル・イン。置き去られた砂時計を、回収してタイトル・アウト、ここまでは抜群に洒落てたんだけど。
 弘美は初めから私生児として娘を文字通り女手ひとつで育てる、翻訳家の母(杉)の事務所にお小遣ひのおねだり。笹木ルミは、劇中仕事をしてゐる風には特にも何も全然見えない、中沢女史の秘書・和子。改めて帰途につく弘美に、単車に跨つた不良男(以下単車/武藤樹一郎)が接触。グー子とディスコに行つた夜、弘美は手洗ひを出て来たところ襲はれた単車の指で破瓜を散らせてゐた。一方和子の部屋にも、単車は忍び込む。深沢女史の下で働いて三年、和子には―今なほ―無理強ひされる百合で、流産した過去があつた。それで雇用込みで関係が継続してゐる無理は一旦さて措き、娘込みの中沢女史に対する復讐のために、和子が単車を雇つたものだつた。
 残る配役が問題、ポスターに名前が載るのは、ビリング通りの女優部四本柱とポスター順に鶴岡隆史・北山浩一・矢野健作・武藤樹一郎。高島亜美(後の高鳥亜美)の濡れ場を介錯するグー子彼氏が鶴岡隆史なのか、ビリングでは鶴岡隆史に先行する巽健二なのかが手も足も出せずに特定不能。更には何れにせよ七つ名前を残しつつ、その他の登場人物が抜かれるどころか見切れる程度のディスコ要員と、弘美とグー子が会話を交す教室の背景に、不自然な体勢で背中を見せる同級生一人くらゐしか見当たらない。話を戻すと武藤樹一郎も武藤樹一郎で後年とは別人のやうに痩せてゐて、何処に出て来たのか最後まで判らず、結局「強制わいせつ姉妹」(1994/監督・脚本:小林悟/主演:工藤ひとみ・吉行由美)にもう一度目を通して漸く確認した次第。
 全十三作と結構な量産態勢の昭和54年第四作にて、ひとまづ対中村幻児最終戦。いはゆる目力が、カットによつては寧ろあり過ぎてよくいへば業の深さ、端的にはオッカナさすら感じさせる深沢ゆみの佇まひは確かに強い映画的叙情を立ち込めさせるものの、弘美の心情の動きなり揺らぎ具合が如何せん量り辛いのが致命傷。そもそも主演女優の絡みらしい絡みを最後の最後まで温存―しかも見せる形はオーバーラップ―した上で、要は弘美がロスト・バージンするだけの物語を無闇に勿体つけて、あるいは行間を矢鱈と広げて描く始終には、量産型娯楽映画なんだからさあといふツッコミを禁じ難い。説明過多もそれはそれで不格好にせよ、もう少しは判り易く明示的であるべきではなからうか。ノーヘルのタンデムで、弘美が辿り着いた砂浜。海を見て弘美が何を思ふのかが、銘々の勝手な思ひつきにでも委ねるのでなければ本当にちんぷんかんぷんなのは、少々画が強いにせよ流石にシークエンスとして満足に成立し得まい。ついででオーラスのロングに、通過するジョギング男は何某かの狙ひがあるのか単なる間抜けか無頓着なバッド・ラックなのか、個人的には後者に映つた。とかく掴み処があるやうで最終的にはなさげな始終の中、目もとい耳についたのは、弘美が単車に処女を半分失つた夜を想起しながら自慰に耽る件では佐井好子の「二十才になれば」。一応締めの弘美と単車の濡れ場では中島みゆきの「海鳴り」、二曲を堂々と使用してみせる時代の大らかさ。ところでさうなると、現在でもDVDが発売されてゐる「人妻・OL・女子学生 狙つて襲ふ」に関しては、ヒカシューサイドに正式に話を通してるのかな(´・ω・`)


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浜野佐知(的場ちせ)の感想のインデックスです。
当該タイトルを踏んで頂ければ、別ウインドウで表示されます。

浜野佐知(的場ちせ)
濡れて開く 制服を犯す」(昭和63/旧題:『北村美加 巨乳艶熟』)
密室の美女 責める」(昭和63/旧題:『冴島奈緒 監禁』)
ダブルEカップ 完熟」(昭和63)
痴漢電車 ミニスカートに御用心」(昭和63)
痴漢体験 くはへる股ぐら」(昭和63/旧題:『痴漢電車 エッチがいつぱい』)
豊丸の変態クリニック」(昭和63)
不倫ごつこ 淫らに燃えた妻<オンナ>たち」(昭和63/旧題:『人妻不倫願望』)
痴漢の指先 やめないで」(1989/旧題:『痴漢電車 やめないで指先』)
凌辱レズビアン」(1989/旧題:『沙也加VS千代君 アブノーマルレズ』)
触る女 車内で棒さぐり」(1989/旧題:『痴漢電車 朝から一発』)
レイプ/恥獄」(1989/旧題:『過激本番 乱-みだれる-』)
痴漢電車 早くイッてよ!」(1989)
小泉朝子 淫望」(1989/アダルトビデオ)
エロスの冒険 快楽まみれの女たち」(1990/旧題:『アブノーマル・ペッティング』)
団地妻《秘》セックスライフ」(1990/旧題:『団地妻 恵子のいんらん性生活』)
人妻投稿写真 不倫撮り」(1990/旧題:『特別企画 ザ・投稿写真』)
痴漢電車 緩めて、締めて」(1991/旧題:『痴漢電車 無理やり奥まで』)
美脚秘書 締めつける股間で」(1991/旧題:『女秘書の生下着 剥ぎとる』)
セクサロイドMIKI ボディコング女王様」(1991/アダルトビデオ)
エロ本DX 超お下劣!!練磨変態倶楽部」(1991/アダルトビデオ)
巨乳拷問 人犬獣倫」(1991/アダルトビデオ)
逆レイプ女王様 愛川まや 牝豹の生贄」(1991/アダルトビデオ)
やらしいボディー 穴が性感帯」(1992/旧題:『巨乳 くらひつく』)
快楽熟女 したい、いきたい」(1992/旧題:『超ボディコンOL 後ろから前から』)
折檻水地獄」(1992/旧題:『拷問水責め』)
おマタせ!ピザ宅配 特注!スペルマトッピング」(1992/アダルトビデオ)
絶妙色洗ひ 玉までしやぶれ!」(1992/旧題:『《秘》性感逆ソープ』)
秘書のお姉さん ‐喰はへ込んだら、離さない!‐」(1992/旧題:『ザ・本番 性感帯秘書』)
女体サーカス奇譚 囚はれの乳姫」(1992/アダルトビデオ)
太股愛撫 悶えるナマ尻」(1992/旧題:『ボディコンミニスカ onanie秘書』)
藤小雪の逆泡踊り天国」(1992/旧題:『《秘》潜入逆ソープ天国』)
異常暴行 美肉ぐるひ」(1992/旧題:『女子大生監禁 バイブ地獄』)
究極尻美人 抜かないで」(1992/旧題:『裏本番 女尻狂ひ』)
SUPER逆レイプ 令嬢男狩り」(1992/アダルトビデオ)
裏の後家さん 顔射シャワー」(1993/旧題:『未亡人 シャワーonanie』)
痴女の本能 凄まじい性反応!」(1993/旧題:『巨尻折檻』)
痴漢電車 イクまで動いて!」(1993/旧題:『痴漢電車 あなたとイキたい!』)
妻くどき撮り 変態くらべ」(1993/旧題:『変態妻 わいせつくらべ』)
女房交換 ヒクつく下半身」(1993/旧題:『変態姉妹 亭主交換』)
告白羞恥心 私が、痴女になつた理由」(1993/旧題:『美乳揉みくちや』)
痴熟女 Gスポットの匂ひ」(1993/旧題:『お姉さんのONANIE』)
盗撮!!逆ナンパLive ~B98の誘惑~」(1993/アダルトビデオ)
人妻不倫 わなゝく」(1993/旧題:『好色不倫妻 吸ひ尽くす!』)
生でドピュドピュ注射して…」(1993/アダルトビデオ)
小沢なつみの逆泡踊り天国」(1993/旧題:『《秘》回転逆ソープ』)
伊豆七島入れ喰ひ逆ナンパ巡り」(1993/アダルトビデオ)
恥づかしい検診 興奮OL」(1993/旧題:『失神OL 婦人科検診2』)
奔放マダムは…とつてもエロかつた」(1993/旧題:『朝吹ケイト お固いのがお好き』)
Eカップ女子高戦士 ブルマームーン」(1993/アダルトビデオ)
巨乳教師 パイズリ授業」(1994/旧題:『本番授業 巨乳にぶつかけろ!』)
熟女の股ぐら 焦らされて号泣」(1994/旧題:『全身性感帯 超いんらん女』)
ダブルファイナル 性力増強!! お下劣クリニック」(1994/アダルトビデオ)
破廉恥をばさん -欲しくてたまらない-」(1994/旧題:『近所のをばさん -男あさり-』)
巨乳秘書 逆レイプ」(1994)
好きなをばさん 疼いてしやうがない」(1994/旧題:『近所のをばさん2 -のしかかる-』)
熟練性技 疼き盛りの女たち」(1994/旧題:『本番 恥知らずな下半身』)
水沢早紀 愛人の性・羞恥心」(1994/旧題:『水沢早紀の愛人志願』)
阿鼻叫喚! 熟女の三所責め」(1994/旧題:『本番熟女 急所責め』)
色欲をばさん むしやぶる犬」(1995/旧題:『犬とをばさん』)
パイズリ修道院 私を、懺悔して!」(1995/旧題:『巨乳修道院』)
三十二才毛剃妻 唾液の香り」(1995/旧題:『どスケベ奥さん 感じる剃りあと』)
変態下宿屋 熟女ざかり」(1995/旧題:『本番下宿屋 熟女をいただけ!』)
股がる娘 恥ぢらひラーゲ」(1995/旧題:『私、大人のオモチャです』)
私は、変態 もう、便所まで待てない」(1995/旧題:『景子のお便所』)
熟成姉妹 貪欲SEX」(1995/旧題:『どスケベ姉妹 -巨乳揉みくちや-』)
未亡人診察室 潤み放し」(1995/旧題:『会員制クリニック 女医は未亡人』)
白衣の生下着 太股ねぶり」(1995)
熟女と犬舐め」(1995/旧題:『新・犬とをばさん むしやぶりつく!』)
はしたない妻の蜜壺」(1995/旧題:『小田かおる 貴婦人O嬢の悦楽』)
かまきり熟女 長襦袢を剥ぐ」(1996)
男好きする人妻 四つん這ひ」(1996/旧題:『人妻不倫 のけぞる』)
痴漢電車 締めつける女」(1996/旧題:『痴漢電車 貝いぢり』)
白衣妻 不倫三昧」(1996)
言葉で濡れる人妻たち」(1996)
浴衣妻の内股 ‐はだける‐」(1996)
喪服妻奥義 ‐腰は“乃”の字で‐」(1996)
若妻発情 だらしない舌」(1996/旧題:『老人の性 若妻生贄』)
美畜令嬢 おとなしさうな顔して」(1996/旧題:『深窓の令嬢 レイプ狂ひ』)
人妻飼育日記 不倫初夜」(1996)
極選マダム 前も後ろもナマで」(1997/旧題:『本番熟女 女尻の奥まで』)
本番女医 濡れまくり」(1997)
好きもの女房 ハメ狂ひ」(1997)
性獣一家 家庭教師・盗み喰ひ」(1997/旧題:『変態一家 兄貴の家庭教師』)
肉体保健婦 フェロモン全開!!」(1997/旧題:『白衣のをばさん -前も後ろもドスケベに-』)
ねつとり妻おねだり妻Ⅱ 夫に見られながら」(1997/的場ちせ名義)
隣りの夜SEX ご賞味いかが?」(1997/旧題:『夫婦《秘》性生活 ‐女房はとろとろ‐』)
すけべ教師 引き抜く快感!」(1997)
義母の告白 禁断の絶頂5秒前」(1997/旧題:『義母のONANIE 発情露出』)
ピンサロ病院 ノーパン白衣」(1997/的場ちせ名義)
美姉妹スチュワーデス 朝まで狂乱」(1998/旧題:『奴隷美姉妹 新人スチュワーデス』)
女修道院 バイブ折檻」(1999)
巨乳三姉妹 肉あさり」(1999/的場ちせ名義)
悩殺熟女 吠える下半身」(1999/旧題:『平成版 阿部定 あんたが、欲しい』)
女医の清浄下半身 味はつてみたい!」(2000/旧題:『ノーパン女医 吸ひ尽くして』)
ノーパン介護 白衣の下はスッポンポン」(2000/的場ちせ名義/旧題:『ノーパン白衣 濡れた下腹部』)
熟女たちの欲求 イジリ喰ひ」(2000/旧題:『いぢめる女たち -快感・絶頂・昇天-』)
どすけべ夫婦 交換セックス」(2000/的場ちせ名義)
隣人妻たちの性狩 しとめたい!」(2000/旧題:『いぢめる人妻たち -淫乱天国-』)
白衣にしみる愛液」(2001/旧題:『ピンサロ病院4 ノーパン看護』/的場ちせ名義)
百合祭」(2001/一般映画)
川奈まり子 牝猫義母」(2002)
やりたい人妻たち」(2003/的場ちせ名義)
やりたがる熟女」(2003/的場ちせ名義/旧題:『やりたい人妻たち2 昇天テクニック』)
乱痴女 美脚フェロモン」(2004)
SEX相談 痴女の股ぐら」(2004/的場ちせ名義/旧題:『オーガズムリポート 痴女のSEX相談室』)
桃尻姉妹 恥毛の香り」(2004)
マニア・レポート 剃毛と制服」(2005/的場ちせ名義/旧題:『異常性欲リポート 激ナマSEX研究所』)
四十路の色気 しとやかな官能」(2005)
乱交団地妻 スワップ同好会」(2006/的場ちせ名義)
巨乳妻メイド倶楽部 ご主人様、いつぱい出して」(2006/的場ちせ名義)
巨乳DOLL わいせつ飼育」(2006)
こほろぎ嬢」(2006/一般映画)
SEX捜査局 くはへこみFILE」(2006)
魔乳三姉妹 入れ喰ひ乱交」(2007)
バイブ屋の女主人 うねり抜く」(2007)
SEX診断 やはらかな快感」(2008)
変態シンドローム わいせつ白昼夢」(2008)
女豹の檻 いけにへ乱交」(2009)
魔性しざかり痴女 ~熟肉のいざなひ~」(2009)
色情痴女 密室の手ほどき」(2010)
セクハラ女上司 パンスト性感責め」(2010)
和服姉妹 愛液かきまはす」(2011)
百合子、ダスヴィダーニヤ」(2011/一般映画)
SEXファイル むさぼり肉体潜入」(2012)
喪服令嬢 いたぶり淫夢」(2012)
熟女ヘルパー 癒しの手ざはり」(2013)
僕のオッパイが発情した理由」(2014)
BODY TROUBLE ボディ・トラブル」(2014/一般映画)
性の逃避行 夜につがふ人妻」(2015)
女詐欺師と美人シンガー お熱いのはどつち?」(2015)
黒い過去帳 私を責めないで」(2017)
雪子さんの足音」(2019/一般映画)


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 「背徳の海 情炎に溺れて」(2014/製作:Blue Forest Film/提供:オーピー映画/監督:竹洞哲也/脚本:小松公典/撮影監督:創優和/編集:有馬潜/音楽:與語一平/助監督:小山悟/監督助手:小関裕次郎/撮影助手:酒村多緒/スチール:阿部真也/録音:シネ・キャビン/現像:東映ラボ・テック/出演:友田彩也香・翔田千里・倖田李梨・山本宗介・那波隆史・岡田智宏・津田篤《友情出演》・森羅万象)。出演者中、カメオの津田篤は本篇クレジットのみ。
 BFFロゴに風音が被さる開巻、軽装の友田彩也香が、赤い鼻緒の下駄を脱ぎ海に入る。一方茂みの中から、フラつく足下がサマにならない山本宗介が現れる。自死を図つたのではないのか、一頻り波に洗はれると浜に戻つて来た友田彩也香を、山本宗介はインスタントに陵辱。事後、友田彩也香が果てた山本宗介の首筋を見詰めタイトル・イン。温(ぬる)いフォントが、映画全体の硬質なトーンとのミス・マッチ甚だしい。
 淡路夏陽(友田)は自身を犯した横山直也(山本)を何と自宅に招き、アラスカ産と知るまで焼き魚には箸をつけない飯をも振舞ふ。そこにポン酒を携へた、地場の工場長・野嶋勲(森羅)が夏陽の家族の弔問に訪れ、軽く夏陽の体にも手を出した上で追ひ返される。三年前、夏陽は漁師の父・鉄(那波)と母・香澄(翔田)。鉄の弟子筋で、夏陽と結婚を見据ゑた仮谷佐武郎(山本宗介の二役)と幸せに暮らしてゐた。ここで、松原一郎(≒下元哲)第二作「ブログ告白 熟女のエロい尻」(2006/脚本:水上晃太・関根和美/ちさと名義で主演)以来、まさかよもやの翔田千里ピンク復帰には驚いた。まだ来てないけれど、清水(大敬)組で二十年ぶりの大蔵再上陸を果たす加山なつこ、ex.逢崎みゆの青山真希に続く衝撃である。話を戻して、ところが金にはならない漁業に見切りをつけた野嶋は、工場誘致を画策。貧しさに厭き、大勢が野嶋に同調する中鉄らは海を汚染する工場建設反対を主張。いはゆる村八分の状態に置かれたある日、夏陽が一人待つ淡路家に、鉄と香澄と佐武郎は帰つて来なかつた。やがて酒瓶の転がつた無人の舟が沖で発見、三人は舟で酒を飲んだ末に、海に落ち死んだ形で事故処理された。
 配役概ね残り岡田智宏は、先の開けぬ海を一斉に捨てた周囲に与さず、鉄を慮り野嶋の誘ひに二の足を踏んでゐた大槻健太。三本柱にしては絡みが短い倖田李梨が、大槻との祝言を周囲に反対されて、ゐる所以が確か劇中には見当たらない内縁の妻・瀬戸暁美。その他鈍器を手に三人に迫る物騒な二人組は、多分演出部。横山直也の身許を洗ひ、野嶋から報酬を受け取る挙動不審の男は小松公典。直也に半殺しにされる男は血塗れで判らん、惨状を目撃し、悲鳴を上げる女は初めから判別出来るやうに抜かれてはゐないが、背格好だと友田彩也香?
 第27回ピンク大賞で優秀作品・監督・脚本・主演女優・男優の各賞を嘗めた、竹洞哲也2014年第三作。一旦死にかけて、結局死んだ海町を舞台に、意固地なリベンジャーの前に、非現実的、あるいは虚構的にリベンジャーの許婚と瓜二つのストレンジャーが現れるところから始まる物語。友田彩也香には、ワーキャー騒ぐほどの決定力は別に感じなかつた。寧ろクリア過ぎる撮影にも足を引かれてか、二戦目となる友田彩也香は薄さは感じさせない割に矢張り軽く、本来ならばサポートに回るべき山本宗介も、精悍なビジュアルは申し分ないものの、いざお芝居の方はといふと劣るとも勝らず心許ない。尤もこの辺りは、何れも随分マシな部類だと観念するほかあるまい。それと、鬱屈した作品世界に親和してゐるとの見方もあり得るのやも知れないが、正直ロケ中あまり天候に恵まれはしなかつたのでは。何処か知らないが折角の遠征を仕掛けながら、格好のロケーションがそこら辺に幾らでも転がつてゐさうに関らず、決定力のあるショットには終ぞお目にかゝれなかつやうに映る。対して見所は綿密に編み込まれた脚本と、覚束ないビリングをトメで締める量産型娯楽映画界の重鎮、その名も森羅万象。唯一打つた下手は、直也の位置情報を蛇の道に流したこと。一見ふてぶてしく強欲な諸悪の根源に思はせつつ、実は野嶋が己(おの)が身を犠牲にしてでも全てを愛してゐた怒涛のごんぎつね展開を通して、悪漢もとい圧巻の貫禄で重量級のドラマを支へ抜いた森羅万象が、美味しいところを全部持つて行く、ものかと思ひきや。地味に光つてゐたのが、何気に劇中最たるエゴイストに扮した岡田智宏。妊娠した暁美に堕胎を迫る、薄笑ひを浮かべた複雑な表情が出色。文字通りの一昔前には、絵に描いたやうなハンサム好青年か、対照的に戯画的なツッパリ。基本その二つきりしか抽斗を持たなかつたあの岡田智宏がと思ふと、隔世の感に近い興を覚えた。要所要所で森羅万象の脇を固めるポジショニングも重要に、画的にも野嶋が大槻宅に口説き落としに行く際の、ザラついた画調が最も印象に残つた。

 配役最後津田篤は、素人衆の浅知恵に、ザクッと冷や水を浴びせるプロの人。


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 「団地妻 尻奴隷」(昭和60/製作:獅子プロダクション/配給:株式会社にっかつ/監督:片岡修二/脚本:片岡修二/企画:奥村幸士/撮影:佐々木原保志/照明:水野研一/編集:金子編集室/助監督:橋口卓明/監督助手:上野勝仁・伊沢俊幸/撮影助手:中松敏裕/照明助手:白石宏明・佐藤邦雄/色彩計測:図書紀芳/メイク:庄司真由美/車輌:JET RAG/スチール:津田一郎/録音:銀座サウンド/現像:東映化学/出演:アグネス・カーラ、織本かおる、夕崎碧、早乙女宏美、真山理恵子、狼狂二、池島ゆたか、梅沢英二、大橋正幸、園山高志、嶋村圭、劇団滑車、螢雪次朗、下元史朗)。
 ジャンボジェット機の着陸ショット、羽田の表に現れた青いトランク・ケースを引いた黒人娘が、タクシーに乗る。行き先を尋ねられたアグネス(ハーセルフ)が「トキオ!スミヨシ団地」と―日本人によるアテレコかも―答へると、団地外景にタイトル・イン。何事か機動隊(滑車の皆さんか)も出動する騒ぎに阻まれ、車は立ち往生。業を煮やし降車したアグネスのトランクが、機動隊員に突き飛ばされた弾みでチャイナドレスの女(早乙女)の同じ型のトランクとすり替る。一方住吉団地、アニメーターの野沢か野澤シュンスケ(下元)が、同居する兄の嫁(織本)に迫る。団地妻昼下がりの情事かと思ひきや、シュンスケの望みは兄嫁の尻のスケッチ。そこにアグネスが、一年前のブラジル旅行で知り合つたシュンスケの嫁に来たと現れる。
 配役残り池島ゆたかが、兄弟揃つて尻好きのシュンスケ兄、織本かおる夫。螢雪次朗は、ブツを運び損ねた早乙女宏美を激しく責めるヤクザ。当然その一幕は、マゾの早乙女宏美がもつと強くと喜悦し一同がズッこけるのがオチ。夕崎碧は螢雪次朗情婦、狼狂二しか特定出来ないが、梅沢英二から嶋村圭までも多分螢雪次朗の子分。真山理恵子は、ブツとアグネスの引き換へにシュンスケが呼び出された第三埠頭にて、撮影中のテレビ映画(助監督が片岡修二)主演の婦警役。
 今作を紹介した、映画ポスター通販 CINEPO.com のツイートが、ENKの公式リツイートで目に触れDMMで探してみた片岡修二昭和60年第二作。因みに伝説の一大ファンタ作、「地獄のローパー」こと「逆さ吊し縛り縄」(原作:春野妖鬼/主演:早乙女宏美・下元史朗)の前作に当たる。シネポによると初めて外国人団地妻を迎へた買取系ロマンポルノとのこと、ロマポのフラッグシップ・タイトル「団地妻」シリーズ通算第何作なのか、以降にも国際結婚ものが存在するのか否かは知らん。しがないアニメーターが居候する兄貴宅の団地に、ブラジルからの押しかけ女房が転がり込む、見るからにヤバい白い粉を抱へて。一見大胆なストーリーにも見え、最終盤に至るまで概ね団地の一室にてウダウダするに終始する始終は一向に弾みはしない。特筆すべきは、斯様な演出が当時的には果たして有効であつたのか、ガチョーンとビヨーンをミックスしたかのやうな人を小馬鹿にしたSEも乱打した結果、悉く外すギャグ演出の打率零割が凄まじい。仕事中のシュンスケにアグネスから迫つての、一応夫婦生活を覗く兄貴と兄嫁も開戦。兄嫁の背負ひ投げで幕を開け大概な尺を喰ふ、バックを取り合つてみたり、マンクローとキンロックの攻防戦を繰り広げてみたりする正体不明の格闘風シークエンスは、物語の展開も放たらかして何を長々と枝葉に徒花を咲かせ損なつてゐるのか全く意味が判らない。そもそも主演のアグネス・カーラ―ポスターが謳ふ、“褐色ベイビー”なるキャッチは素晴らしい―がプロポーションはそこそこ以上にグラマラスなものの、あどけないといふよりは寧ろ垢抜けないのも通り越し心許ない幼い表情を見てゐると、この子はもしかすると悪い大人に騙されて現場に連れて来られたのではなからうかと変に胸が痛む。正直げんなりした心に止めを刺すのは、一欠片も笑へないコメディが忘れる以前に多分初めから持つて来なかつた、奴隷感ゼロぶり。必ずしもルーズではないのかも知れないにせよ、最早グルッと一蹴もとい一周して、感動するほかないほど詰まらない一作である。


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 「人妻・OL・女子学生 狙つて襲ふ」(昭和55/製作:幻児プロダクション、の筈/配給:新東宝映画/監督:中村幻児/脚本:戸田博史/撮影:倉本和人/出演:朝霧友香・青野梨麻・笹木ルミ・高原リカ・立木レナ・飯島洋一・大杉漣・土方鉄人・戸田博史)。
 今回ダウンロード視聴したのが、新東宝は新東宝でも新東宝ビデオ開巻のビデオ版「暴行 人妻・OL・女子学生」、しかも実際のタイトル・インは「人妻・OL・女子学生 暴行」。暴行云々といふのが云々狙つて襲ふの新版公開時の改題なのか、純然たるビデオ題に過ぎないのかは不明。挙句に、ビデオ版ではスタッフが脚本と撮影と監督しかクレジットされないまさかの大惨事。出演者中飯島洋一が本篇では変名の飯田洋一名義らしいのだが、飯島洋一そのまゝでクレジットされてゐる。
 “八十分無制限のバイオレンストルコ”―どんな世界だ―で嬢のアケミ(笹木)が音を上げるのも構はず、精力絶倫の客その名も獣太郎(飯島)はガンッガン腰を振り、カメラも女の裸ではなく飯島洋一を抜く。一方、女社長の美沙(ビリング推定で青野梨麻)がインポの懐刀・小池(大杉)にバイブ奉仕させる社長室。全室モニタリングしてゐるのか、獣太郎の正しく雄姿に目を留めた美沙は、案外戦闘力の高い小池に獣太郎を連れて来させる。一人につき百万円で三人の女を犯す、旨いのか怪しいのかよく判らない仕事を美沙は獣太郎に提示。返事は明日の朝まで待つといつて、獣太郎を地下の電気機械事務所―単なる物置兼機械室―に監禁する、確かにバイオレンストルコではある。ところが鍵がかゝつてをらず、小池が不能なら、美沙も美沙で不感症。不毛な営みの繰り広げられる社長室に辿り着いた獣太郎に、美沙は五年前の過去を告白する。三人の男(土方鉄人・戸田博史と、何故かクレジットをスッ飛ばされる吉岡市郎)に輪姦、以来女の悦びと恋を失つた美沙はトルコ嬢から社長の座にのし上がり、復讐の機会を窺つてゐたといふのだ。獣太郎は快諾、勃ちもしない癖に小池をコーチ役に、スポ根感覚のレイプ特訓が開始される。もしも話が通るならば、友松直之がリメイクすればいいのに
 配役残り、三十五年を経た今の目にも些かなりとて古びず美しく輝く朝霧友香は、現在警察官の長田か永田(土方)の妹・ユカ、女子学生担当。立木レナは、歯科医の黒井(吉岡)の細君・タエコ、当然この人が人妻、ところで黒井の歯科医院の助手は不明。勿論荒木太郎2003年第四作「女曼陀羅 七人の絶頂」(脚本:内藤忠司)の主演女優とは同姓同名、といふかこちらが先輩格の高原リカは、弁護士の白川(戸田)の婚約者・サチヨかサチエ。劇中明示はされないものの、消去法でOL。
 杉作J太郎が、初期は今作から拝借した杉作獣太郎をペン・ネームに用ゐてゐたことが知られ、軽く検索してみるに、それはそれとしてそれなりにいはゆるひとつのカルト作として認知なり浸透してゐると思しき、中村幻児昭和55年第九作。尤も、大御大・小林悟の、紙一重を超え無常観の領域にさへ突入しかねないドライなやつゝけ仕事。人知れず小屋の番組を圧倒的に支配する無冠の帝王・新田栄のツッコミ処過積載のパラダイス温泉、乃至は仏罰上等の尼寺映画。いつそ天衣無縫と見紛つてしまひたくなる、今上御大・小川欽也の大らかな無頓着。そして、最早ひとつの奇跡とでもすらいふほかない、ピンクの枠を通り越し日本映画の最終兵器・関良平。ついでに、ストイックなまでにマトモな映画を撮らうといふ気を窺はせない珠瑠美の名前辺りも想起してみると、ワーキャー騒ぐほどの然程の破壊力といふ訳では必ずしもない。文字通り動物的な絶倫男が特殊浴場の女社長に見初められ、かつて女社長を犯した男達の妹や細君や婚約者を狙つて襲ふ。確かにムチャクチャであるとはいへ、この程度の無体は量産型娯楽映画の豊潤な平野か不毛な荒野にはざらに転がつてゐる。長田から強奪した制服姿で獣太郎がパトカーの車内でサチヨを陵辱する一幕、ヒカシューの「プヨプヨ」が堂々と暫し流れるのは形容し難いスペクタクルではありつつ、意地悪をいへば単に音楽の富を奪取した話でしかない。獣太郎の粗野にして愛嬌もある絶妙な造形は琴線を激弾きし、腕つぷしでは全く敵はない反面、事セックスとなると完全に優劣が逆転する獣太郎と小池の仲良く喧嘩ぶりも裸映画の裸を忘れさせ愉快に見させる。逆説的な物言ひをすると中村幻児の演出力が下手に堅いだけに、珍作なり迷作の類といふよりは、普通にイイ味はひの昭和の映画を見たといふ印象が強い。三百万はユカに渡した獣太郎が、何時かの再会を約し不器用ながらも爽やかに別れるラストは映画を磐石に締め括る。

 獣太郎が相変らず電気機械事務所に閉ぢ込めたユカに缶ジュースを差し入れする件、オールドペプシ(仮称)の250ml缶が懐かしい。話題作りの徒花咲かせももう飽きたから、ここいらでフルモデル・チェンジ以前の、誰が飲んでもコカ・コーラとの違ひが判つた昔のペプシを復刻して呉れないかな。


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 「婚活占ひ 浴衣でチラリ」(2014/製作:ナベシネマ/提供:オーピー映画/監督:渡邊元嗣/脚本:山崎浩治/撮影・照明:飯岡聖英/編集:酒井正次/助監督:永井卓爾/監督助手:小関裕次郎/撮影助手:浅倉茉里子・梅田裕多、もう一名/編集助手:鷹野朋子/効果:梅沢身知子/タイミング:安斎公一/協賛:GARAKU/出演:大槻ひびき・月本るい・坂城君・なかみつせいじ・Kスケ・横山みれい/SPECIAL THANKS:山口真里・西藤尚)。実際のビリングは、Kスケ、愛情出演の二人と来て横山みれいがトメ。
 観覧車からパンした先は、山口真里をチラシのモデルに採用した結婚相談所「マリアージュ」。社員AとB(山口真里と西藤尚)がマネージャーの三浦桜子(大槻)を残し先に退社したマリアージュを、桜子の学生時代からの彼氏で、自称小説家のコンビニ店員・宮下将(坂城)が訪ねて来る。鉄扉を叩いたが如き謎の物音を挿んで、宮下が耳元に息を吹きかけると桜子は点火しタイトル・イン。タイトル明けは勿論大槻ひびきの濡れ場、地味に完璧な繋ぎの強度が素晴らしい。
 事後、もう一度謎の物音挿んで、気軽に顔を出したにしては宮下の用件は、桜子へのプロポーズ。宮下が持参した指輪は桜子が望むティファニーどころでなく、百均でも買へようオモチャ。苦学して社会に出た過去もある桜子は完全に臍を曲げ、ドキドキする恋愛よりもセレブな結婚をと、六年来の関係に終りを告げる。一方、CA衣装のサマー(月本)が街に現れ、現地に到着しただのミッションを開始するだの、聞こえよがしな大風呂敷を拡げる。
 配役残り、マリアージュが企画する浴衣で婚活こと“ユカコン”―何だそれ(´・ω・`)―に参加との方便で、劇中現在時制は浴衣で通す横山みれいは、マリアージュの女性会員・大野美雪、因みに二人見切れる貧相な男性会員は演出部。Kスケ(=けーすけ)は新規でマリアージュの門を叩く、年収九億円の楽チン市場社長・白石ヒロト。なかみつせいじは、マリアージュの男性会員・野々村幸太、この人は年収三千万の勤務医。貧乏人考へだが、それだけの収入があるならどうとでもならないか?
 見るから怪しげに飛び込んで来る月本るいが如何にもらしい急展開の火種を担ふ、お盆第二弾の渡邊元嗣2014年第三作。とはいへ、類型的な結婚狂想曲が藪から棒に数百年の時空を超えるのは流石に振り幅が大き過ぎたのか、振り切られたといふか振り回された感もなくはない一作ではある。何れ菖蒲か杜若、申し訳ないが大槻ひびき・横山みれいの2トップと比べると明確に落ちる三番手の絡み―ところでその受胎は、時間法には触れないのか?―で一旦映画がダレるのはある意味オネストにしても、処理を迫られる情報量の無闇に多い展開の中で、大槻ひびきV.S.なかみつせいじ戦で再び始終が停滞するかに映るのは考へもの。反面、夢を諦めないでと二つの指輪の件、一撃必殺のエモーションを二度に亘つて撃ち抜く渾身こそが、表面的なアイドルなりファンタな要素で照れ隠した、ナベシネマのナベシネマたる所以。ところがさうなると、新顔の月本るいの力も借りなくてはならない、ライアン辺りのエクスキューズには如何せんまどろこしさも否めないゆゑ、いつそ悲恋エンドでよかつたのかもといつた気持ちは残る。兎にも角にも、この際瑣末はさて措くべき、今作に於いて重要なのは大槻ひびきの二撃と、横山みれいのオッパイ。改めて振り返つてみるにつけ、2012第年三作「おねだり狂艶 色情いうれい」・第四作「悩殺セールス 癒しのエロ下着」に、2013年第四作「淫Dream まどろむ白衣」。主演に大槻ひびきを擁したナベの、何処からでも倒せる、あるいは観客を泣かせられるぶりが何気に凄まじい。

 もう一点、驚いたのが、その内デビュー二十周年も迎へる西藤尚が超絶変らない。元々好みのタイプでないこともあり、当時は正体不明に思へた人気に馴染めなかつたものだが、この期に及んで西藤尚株が上がつて来た、遅れ馳せるにもほどがある。


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