真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「性風俗ドキュメント ザ・穴場」(1991/製作・配給:新東宝映画/監督:深町章/脚本:周知安/製作:伊能竜/撮影:稲吉雅志/照明:田端功/編集:酒井正次/助監督:田尻裕司/監督助手:国分章弘/撮影助手:飯岡聖英/現像:東映化学/録音:銀座サウンド/出演:荒木太郎・渡辺由紀・千秋誠・宮下なお・上田亜衣・姫ゆり・西田早紀・飛田翔)。脚本の周知安と製作の伊能竜は、それぞれ片岡修二と向井寛の変名。
 津田スタの和室が点灯、荒木太郎が「こんにちは、これは日本の風俗をテーマにした映画です」と真正面から大登場。電気を点けないと真暗く、夜にしか見えないんだけど。続けて「人類最古の職業といはれる売春婦は」とか藪蛇な特大風呂敷をオッ広げ、時代の変遷に伴ふ―狭義の―新風俗の興亡をああだかうだ適当に概観しつつ、一通りの業態を潜り抜けた体験談を紹介するとするコンセプトの提示と、漢字でどう書かせる気か荒木太郎に「この映画の脚本を書いたメグリトモヤスです」と自己紹介させた繋ぎで、お店に置いてある風の嬢の目線入り写真にタイトル・イン。
 物語らしい物語も存在しないゆゑサクサク配役残り、渡辺由紀は、メグリが十数年前に凝つた、マントル嬢・アサミ。嬢が好んで口にするプロフィールとして、一位:十九歳専門学校、二位:二十歳OL、三位:二十一歳女子大生とするメグリ調べランキングが絶妙。メグリの御縄は免れながら、アサミが十七歳高校生であつたといふオチがつくのと、嬢の逆サバを八十年代以降新たに見られる特徴とする視座が開陳される。完全に顔をボカシで隠した嬢への短いインタビュー挿んで、盛り上がつた友人(飛田)と嬢を二人呼ぶホテトル篇。ここで初めて辿り着いたのが、飛田翔といふのが田尻裕司の変名。面倒臭い泥酔者を、案外楽しさうに演じてゐる。二人呼ぶホテトル嬢の女優の顔をしてゐる方が千秋誠で、問題が、残りの女優部が姫ゆりすら特定能はず。内訳は千秋誠の連れのホテトル嬢Bと、SM方面にシフトする後半に登場する順にM嬢A、鉄砲乳が見事な女王様に、M嬢B。女王様とM嬢Bでは間違ひなくないけれど、かといつてM嬢Aも姫ゆりとは別人なんだよなあ。
 片岡修二ピンク映画最終作「スチュワーデス禁猟区 -昼も夜も昇天-」(2000/脚本:甘木莞太郎/主演:吉井美希/a.k.a.伊沢涼子)の前作、「性風俗ドキュメントⅡ ザ・快楽」(1992/主演:下元史朗)を見ようとして、無印第一作もDMMの中にあるのを見つけ順番に片付けるかとした深町章1992年第三作。時代と量産型娯楽映画の大山に埋もれた名作たる「性風俗ドキュメント」シリーズ最終第三作が、「最新!!性風俗ドキュメント」(1994/監督:深町章/構成:甲賀三郎/主演:林由美香・荒木太郎)。軽く覗いてみると荒木太郎はピンク男優役で、「ザ・快楽」にもクレジットレスながら顔を出す皆勤賞を達成してゐる。
 話を戻すと物語のみならず、映画の中身も特にこれといつてない。飛田が使へない上にホテトル嬢Bは返すとした金も受け取らず、ならばとメグリが初体験の二輪車に突入する展開なり構成の妙が関の山。所詮はマントルであらうとホテトルであらうとヤッてゐることに―少なくとも映画上―差異は一欠片たりとて見当たらないのと、出し抜けに懐かしきノストラダムスに代表される終末思想まで絡めた、種族の繁栄を等閑視した快楽オンリーのメグリ曰く“世紀末セックス”を、エスエムに直結する方便が豪快もしくは粗雑に過ぎて、後半は幾ら濡れ場の羅列に過ぎぬにせよ、流石に映画が体を成してゐない。夜の街に繰り出すメグリが「それでは失礼します」と津田スタ和室を消灯、残されたテレクラにかけた嬌声が漏れる受話器がラスト・ショット。五分余した早目の尺をそこだけ掻い摘むとそれなりの余韻も残して締め括るのは、幕引き際に長けた深町章の妙手。


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 「人妻ドラゴン 何度も昇天拳」(2017/制作:オフィス吉行/提供:オーピー映画/監督:吉行由実/脚本:吉行由実/撮影:藍河兼一/録音:大塚学/音楽:柿崎圭祐/編集:中野貴雄/助監督:江尻大/アクション監督・脚本:小田歩/整音:西山秀明/効果:うみねこ音響/グラフィック:竹内雅乃/タイトル:佐藤京介/スチール:本田あきら/アクションスタント:翔空手道スタントティーム 北岡剣山・北岡あい/監督助手:増田秀郎/撮影助手:赤羽一真・真木千鶴/ポストプロダクション:スノビッシュプロダクツ/仕上げ:東映ラボ・テック/協力:松岡邦彦・泉正太郎・翔空手道クラブ、もう一名/挿入歌:「Death and Axes」/出演:二階堂ゆり・和田光沙・冴島エレナ・Nick Puma・Mark Chinnery・Eduardo Ferrada・Nicolas Alexis・Sergey Viasov・Iolanda Santos・国沢実・泉正太郎・白石雅彦・岡元あつこ《友情出演》・竹本泰志・柳東史・樹カズ)。出演者中Eduardo Ferradaから国沢実までと、泉正太郎・白石雅彦は本篇クレジットのみ、絶妙な情報量に屈する。
 凄え!デン・デン・デン・ヒャヒャヒャヒャーン、長方形三つで“Y”の字を形作る、ゴールデン・ハーベストを完コピしたオフィ行ロゴが超絶カッコいい。銅鑼の音一閃、案外どころでなくアッサリしたタイトル・イン。明けてフィルム風の画像処理もキメッキッメに飛び込んで来るのは、バタフライマスク着用の北岡あい。如何にもそれらしき劇伴がドンガドンガ爆音を鳴らす中、切れ味鋭い空手の演武にジャンジャカ叩き込まれるオープニング・クレジットも完璧、吉行由実の“導演 脚本”クレジットに痺れる。
 俳優部の先陣を切るのは、カメオがまさかの岡元あつこ。アパート前の掃き掃除に精を出す桜木玉仙(岡元)は、何しに日本に来たのか不明なイケメン米国人ナード・ダニエル(Nick Puma)のゴミ出しにダメ出しする。その場に顔を出した同じ「小河原ビル」の住人・宮城マヤ(二階堂)が、面倒臭い人間に絡まれてゐるダニエルに助け舟を出すと、実は霊視能力を有する占ひ師とかいふ素性を後々明らかにする玉仙が今度は、マヤとダニエルに強い縁“パワー”を感じると目を爛々輝かせる。ものの、マヤは遅れて現れたDV彼氏・悦史(柳)にカッ浚はれる。ヤナーギーの、フラワーに片足突つ込んだオラオラ造形は安定してゐる。
 配役残りMark Chinneryは、カンフー映画、とりわけJAC(現:JAE)好きが昂じて来日したダニエルの友人・ニック、行間埋め係。竹本泰志はマヤの父親にして、ニックが入門する白鶴流空手の十四代宗家・長賢。和田光沙は白鶴流目下一番弟子の友里恵で、その他道場要員は北岡剣山・あいに五段を所持する小田歩をも含めた翔空手道クラブの皆さん、小田歩は海外で師範代を務めてゐた模様。そして泉正太郎が、道場に長賢を見るから怪しげな風情で訪ねる謎の男。白石雅彦は、マヤ・ミーツ・悦史の噛ませ犬となる酔つ払ひ。白石雅彦を瞬殺するも、悦史に強い女は嫌ひだと梯子を外されたマヤが、以来空手を捨てる不自然な因縁。冴島エレナは、マヤが掃除婦のパートに憂身をやつしてゐる間に、悦史が連れ込む浮気相手・春奈、惚れ惚れするほど綺麗なヒット・アンド・アウェイを披露する大絶賛濡れ場三番手。JCVDに通ずる凄味のある色気を爆裂させる樹カズが、白鶴流に敵対する悪の空手組織「黒蛇会」のボス・高山。Eduardo Ferradaから国沢実までは黒蛇会の構成員、多国籍部隊に国沢実を潜り込ませる配役センスが絶品。
 最新作が撮了した吉行由実の、2017年第二作。ダニエルのパラノーマルなアシストでマヤが悦史と手を切つた流れに乗じて、ダニエルはマヤにザクザク求婚。少々乱暴だが、さうしないと“人妻ドラゴン”が成立しない。脊髄で折り返して受諾したマヤは奥儀「真鶴」の完成を目指し白鶴流に復帰、ダニエルも入門する。入門しての、二人の稽古シークエンス。李小龍が「死亡遊戯」で着用したトラックスーツを、あらうことかビキニ状に変形した二階堂ゆりの衣装が爆乳の威力も借り、クッソ鬼どエロくて猛感動。ほかの映画的な全てをこの際忘れてしまふたとて構ふものか、その主演女優のショットだけでとりあへず木戸銭の元は取れるのも通り越して大黒字。どう無理を押しても盛り込み不能に思へた二番手の絡みを、イマジン百合で処理する予想外の大技も見事に決まり、画像処理を適宜駆使する藍河兼一の作る画面は非常に美麗で、大体二打席に一度仕出かしながらも、基本好調を維持する吉行由実がスマッシュヒットを超えた娯楽ピンクの傑作を遂に放つものかと、俄然前のめりかけた、けれど。外人部の大部屋ぶりに関してはさて措くにせよ、過積載の大風呂敷展開がトッ散らかつた挙句、ナベシネマばりの駄CGを乱打する終盤は、流石に勢ひ余つた風は否めない。前述したマイクロトラックをクライマックスに於いても、否クライマックスに於いてこそ二階堂ゆりに着せてゐれば、全体的な評価も全然変つてゐたらうにと思へて仕方ない画竜点睛の欠如感も惜しまれる。とまれところで今回黒蛇会を壊滅させた訳では別になく、続篇で捲土重来を図るのは全然アリ。そこで「悦楽の性界 淫らしましよ!」(2011/監督:渡邊元嗣/脚本:山崎浩治/主演:西野翔)以来の大復帰となる、先般引退を表明した亜紗美を引つ張り出せたなら、超本格の功夫ピンクでこの期に及んで量産型娯楽映画の歴史を変へられるチャンスは大いに見込めるのではあるまいか。

 雑な与太を吹くと、もしも仮に万が一続篇の製作が決定した場合、帰国した(仮定)Nick Pumaは死亡したことにでもして、“未亡人ドラゴン”で如何。


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 「ズームイン 暴行団地」(昭和55/製作・配給:株式会社にっかつ/監督:黒沢直輔/脚本:桂千穂/プロデューサー:中川好久/企画:進藤貴美男/撮影:森勝/照明:木村誠作/録音:小野寺修/美術:川船夏夫/編集:鍋島惇/音楽:高田信/助監督:浅田真男/色彩計測:青柳勝義/現像:東洋現像所/ピアノ調律指導:橋本和久/製作担当:香西靖仁/協力:三石マイクマンスタントチーム/出演:宮井えりな・梓ようこ・大崎裕子・志賀圭二郎・松風敏勝・影山英俊・錆堂連・高樹レイ・飯田紅子・山地美貴・あららぎ裕子・緑川せつ・水木京一・庄司三郎・大谷木洋子・森みどり・片桐夕子《友情出演》)。出演者中、水木京一と庄司三郎は本篇クレジットのみ、らしさ迸る扱ひに勃起する。配給に関しては事実上“提供:Xces Film”。
 団地外景噛ませて、競輪選手の浜口功一(松風)が久留米と広島に二週間遠征する支度がてら、朝つぱらから朝つぱらゆゑその気もない妻・冴子(宮井)を、半ば押し倒し験担ぎの夫婦生活。どうやら以前、出がけに一発カマして来た際に優勝したらしい。功一を送り出した冴子は、ベッドの下から贈り物らしき結構デカい包みを引つ張り出すと、チャリンコの荷台に括りつけて外出。軽く荒野に近い原つぱにて、冴子のチャリンコが正体不明の黒トレンチ(以後黒トレ)の投げた石で倒される。見た目的にはほぼほぼ千枚通しな、調律工具のハンマーフェルトピッカーで際どく嬲られた末に犯された冴子は失神、黒トレはヒット・アンド・アウェイでその場を離脱する。意識を取り戻した冴子が脇のドラム缶に放尿、持ち物が散らばつたコンパクトに映つたのかハッと振り返つた、丘越しにまるで墓標の如く聳える四棟の団地に、ギザギザした煽情的なフォントで叩き込まれるどギツいタイトル・イン。決めのショットの威力は凄まじい反面、黒トレの後背位挿入を間抜けに三回リピートしてみたり、冴子が何に我に帰つたのか必ずしも判然としない等、こなれなさぶりもアバンで早々に散見する。
 団地建設の人夫(庄司)に声をかけられつつ、冴子が向かつた先は同じ希望ヶ原団地別棟の、元カレでピアノ調律師の中林隆也(志賀)宅。回りくどいか勿体ばかりつけたカットを連ね冴子が中林と焼けぼつくひに点火してゐると、気がつけば何もなかつた壁に、何時の間にか冴子が持参した引越祝ひの絵が飾られてゐたりするのは軽い間違ひ探し感覚。絵は後々まで引つ張るアイテムであるにも関らず、どうしてさういふ無駄に判りにくい真似をしようとするのか。兎も角以降、団地内で背格好が中林と限りなく同じ黒トレによる、襲はれた女が犯され、は実はせずに、大体局部から体に火を点けられ焼き殺される、オッソロシイ凶悪事件が頻発。周囲とは別の慄き方で、冴子は中林に対する猜疑を燻らせる。
 配役残り山地美貴は、観音様に油か何か染ませた布を突つ込まれ、人間火炎瓶にさせられる女高生。絶妙なハゲ具合を光らせる水木京一が、以来気がふれ団扇太鼓を乱打しながら南無妙法蓮華経を連呼する女高生の父親、素頓狂な声色も堪らない。あららぎ裕子は、焼け爛れたやうには見えない特殊メイクで、全裸の惨殺死体をジャングルジムに曝される女。ジャングルジム周りに、小森道子が見切れてゐるのは森みどり名義。そして不脱で御祝儀出演の片桐夕子は、調律に呼んだ中林の仕事にあやをつけるオペラ歌手。錆堂連と梓ようこは冴子と中林共通の友人で、多分夫婦で模型店を営む圭吾と沙智、部屋には映画ポスターも溢れる今ならばナード造形。作中一番美人でグラマラスな高樹レイは、冴子が建設中の団地での殺害を目撃する女。大崎裕子は団地に棲息するレス・ザン・ホームのまゆ子で、飯田紅子が焼却炉に放り込まれる最期をまゆ子に目撃される女。残る女優部が詰めきれない、大谷木洋子はキャリアの長さ的に噂話要員ぽくて、若干ビリングの高い緑川せつが、正面からは抜かれないスポ根に非ずのスポコン妊婦?そしてロマポ脇役部随一の色男を誇る影山英俊が、満を持して刹那の戦慄を煌めかせるジョーカー。
 全五作続いた「ズームアップ」シリーズ(昭和54~昭和58)の間隙にインした、十年弱の社員助監督修行を経ての黒沢直輔第一回監督作品、この人はテレビ畑で今も―あるいはつい最近まで―現役らしい。とりあへず、黒トレの野郎が女を次々ヒン剥きまではするものの、何故か冴子を除いて―主演女優特権以外の理由は特に見当たらない―全員燃やしてしまひやがるものだから、総勢七名脱ぐ割に、乳尻にうつゝを抜かす余地は然程はおろか殆どない。寧ろ冴子をやきもきさせる中林とまゆ子のミーツを遮つて、梓ようこの濡れ場で木に竹を接ぐに至つては、二番手を斯くも無様に捻じ込まねばならないのか、どれだけ映画を撮るのが下手なんだと清々しく呆れ返つた。黒トレの正体を巡るサスペンスも、物語によつてではなく、単純に未熟な技法が無駄に錯綜。さんざ外堀ばかり掘り散らかしておいて、五年前冴子が姿を消した原因たると思しき、中林の人間的な問題は結局ものの見事に丸ごと等閑視される。前述したタイトル・ショットに加へ、些かの誇張でなく弩級の大衝撃を爆裂させる火柱臨月。終盤黒トレの女体点火がパラノーマルな領域に突入する、何気な疑問はさて措く。ほかにも団地の建築現場を、あたかも爆撃でも受けた廃墟かのやうに捉へてみたりと、兎にも角にも画の強さ―だけ―は滅法どころか比類なく強く、今作を隠れた傑作と激賞する向きもなくはないやうだが、直截には全篇ぎこちなくてぎこちなくてどうしやうもない、一言で片付けるとナンジャコリャ映画である。不審者の気配に逃げる山地美貴が、手足はバタバタさせどちつとも進んぢやゐないカットには、あまりのダサさに頭を抱へた。起死回生のイフとして、影英のところにコミタマが飛び込んでゐたならば、当サイトもなほ一層諸手を挙げてたかも知れないけれど。


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 「スチュワーデス禁猟区 -昼も夜も昇天-」(2000/製作:シネマアーク/提供:Xces Film/監督:片岡修二/脚本:甘木莞太郎/企画:稲山悌二・奥田幸一/プロデューサー:江尻健司/撮影:下元哲/照明:代田橋男/編集:酒井正次/助監督:松岡邦彦/録音:シネキャビン/音楽:藤本淳/監督助手:躰中洋蔵/撮影助手:西村聡仁/照明助手:たかだたかしげ/ヘアメイク:マキ/スチール:本田あきら/現像:東映化学/タイトル:道川昭/出演:吉井美希・河村栞・林由美香・奥野敦士・下元史朗・本多菊次朗・藤木誠人・木村祐介・井鍋信治)。出演者中本多菊次朗が、ポスターには本多菊雄。
 外から抜いた搭乗橋に―オープニングは三本柱とPまでのみの―クレジット起動、ところが空港の建物内にカメラが入つた途端、キネコになるのに呆れるのも通り越しかけて、ゐると。二人連れでキワッキワに短いスカートの制服で闊歩する、新日空スチュワーデス・戸倉清美(河村)に男(高田宝重か、それとももしかしてこれ江尻健司?)が接触。清美が男に縫ひ包みを手渡す画が、奥野敦士の指示でまさかの一時停止。決してキネコは横着したのではなく、客室乗務員が関与してゐると思しき麻薬密輸を捜査する、岩淵(奥野)と佐伯(藤木)が撮影したビデオ映像といふ寸法であつた、信用してなくて済まなんだ。ところでex.ROGUEが巡り巡つて目下re-ROGUEの奥野敦士、螢雪次朗と森山茂雄を足して二で割つた程度の精々2.8枚目で、全体誰のセカンド泥鰌を狙つたものかと、フラットな視点なり立場からは何だかなあ感も禁じ得ない。閑話休題、一旦泳がせる腹でその件は流して、離陸するJAL機にタイトル・イン。清美の連れで今作のヒロイン・江藤倫子(吉井美希/a.k.a.伊沢涼子)は、m@stervision大哥が御推測の通り吉行由実のアテレコ。一仕事終へた倫子と、求婚してゐるぽい同じ会社の恋人(本多)の濡れ場初戦を入念に完遂した上で、帰宅した倫子は、度重なるエロ電話の主でもある不審者(終始顔は面で隠しつつ、消去法で井鍋信治)に襲はれる。ところに、何故か倫子宅を張り込んでゐた岩淵と佐伯が飛び込んで一旦事なきを得る。
 配役残り、単純に偶さかのコンディションか役を下手に作つたか、声を嗄れさせてゐる下元史朗は、強姦ビデオで脅迫した清美に、麻薬を国内に持ち込ませさせる黒崎、そもそものミーツは不明。清美と黒崎の関係が、純然たる脅し脅されにあるのか、清美が一種の性奴隷に堕してゐるのか絶妙に安定せず映るのは、裸映画的にはなほさら地味に深手。林由美香は岩淵の夫婦仲が完全に冷えきつた妻・キョーコ、木村祐介はキョーコが連れ込む間男。
 一応最初で最後のエクセスで、性風俗ドキュメントシリーズ第二作「性風俗ドキュメントⅡ ザ・快楽」(1992/主演:大沢恵理加)以来八年ぶりの復帰を、飾れなかつた片岡修二ピンク映画最終作。八年間とエクセス双方片岡修二には「美里真理 教へ子の眼の前で」(1994)がなくもないが、これは封切り半年前に発売されたAVのキネコ再編集物件。ついでといつては何だが下元史朗の初エクセスは、同姓の下元哲の「料亭の若女将 汗ばむうなじ」(1998/脚本:吉行由実/主演:愛雅百子)。
 直截な話がm@ster大哥が完結された焼け野原に、この期にのこのこ付け足す余地も所詮残されてなどゐないのだが、甘木莞太郎―か片岡修二―はROGUEが嫌ひだつたんぢやねえかとすら思へるくらゐに、岩淵が徹頭徹尾役立たずでただでさへ脇がガバガバの物語に止めを刺す。そもそも、空港内で男と接触してゐるのは清美にも関らず、倫子をマークするところから意味が判らない。本筋とは実は全く一切清々しく無関係の不審者―しかも最終的には捕まへられもせず野に放たれる―が、超絶のタイミングで一件にバッティングする御都合にも鼻白む。不審者を方便に―矢鱈と広い―倫子宅に、岩淵と佐伯は一時住み込みで張り込む。ところが岩淵が覗き癖のある小物で、挙句まんまと着替へを覗いた倫子に見咎められるや、ポリポリと首筋を掻いてみせる苔生したメソッドは何だそりや。いやしくも“悪党”をその名に冠したロックバンドの―当時―元ヴォーカリストが、斯くも記号的な極小芝居を仕出かして恥づかしくないのか。大絶賛三番手ポジで夫婦不和を硬質に演出する林由美香の孤軍奮闘も、相手役が煮ても焼いても食へない大根だけに如何せん空回りも否めず。


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 「団鬼六 女秘書縄調教」(昭和56/製作・配給:株式会社にっかつ/監督:伊藤秀裕/脚本:松本清治/プロデューサー:八巻晶彦/原作:団鬼六『闇の色事師』桃園書房刊/撮影:米田実/照明:木村誠作/録音:伊藤晴康/美術:中沢克己/編集:川島章正/音楽:甲斐八郎/助監督:堀内靖博/色彩計測:青柳勝義/現像:東洋現像所/製作進行:櫻井潤一/出演:麻吹淳子・早川由美・高原リカ・中原潤・小池雄介・高橋明・明石勤・織田俊彦/刺青:河野光揚/緊縛指導:浦戸宏)。配給に関しては事実上“提供:Xces Film”、各種資料に見られる企画の奥村幸士が、例によつて本篇クレジットには見当たらず。
 オフィスビルに寄るカメラ、八階で止まつたエレベータから、サングラスをドス黒くキメた高橋明と、キマッた造形の高原リカが降り立つ。秘書の江口小夜(麻吹)を傍らに、部長の能勢(明石)が咥へ煙草で新作のデザイン画をチェックする、女性用下着メーカー「シルビア商事」商品開発部。情婦を連れたヤクザくらゐにしか見えなかつた高橋明はシルビア商事の会長・堂島修造で、姪の朱実(高原)を伴ひ商品開発部に顔を出す。うすらぼんやり仕事してゐる風でもない、同じ部の矢田夏子(早川)に嫌味のひとつも垂れつつ、小夜がタイプを打つ姿にタイトル・イン。明けて濡れ場を飛び込ませる王道、シルビア商事のライバル会社「グロリアス商会」の北山弘(中原)と秘かに交際する小夜は、北山の求めに応じ、新作デザイン画を漏洩する。といつて、勿論カラーのデザイン画の、白黒コピーをとつてゐるのが今目線にせよ地味にジワジワ来る。続けて生地見本を要求された小夜が無人の商品開発部でゴソゴソしてゐると、密告電話を受けた能勢が現れ、堂島邸に連れて行かれた小夜はそのまゝ囚はれる。痺れるやうな、ポルノな世界観。
 配役残り、織田俊彦は北山の背後で糸引く部長、上司がアイコン的に煙草を咥へてゐる時代が麗しい。小池雄介は、堂島邸に恐らく常駐する責め師・源二。何でまた屋敷に責め師が住み込んでゐるのかつて?知るか、電話帳でも読んでろ。ラスト新宿を闊歩する小夜に見惚れる、いまおかしんじ似は不明。源二に話を戻すと、朱実が“兄さん”と思慕する関係性の謎に関しては、一欠片たりとて顧みられるでなく終ぞ等閑視して済まされる。
 この年鬼六×マブジュン・ストリーム・アタックを敢行した伊藤秀裕の、昭和56年第一作。年間七本のロマポに出演、内五本で主演と大車輪の活躍を見せた麻吹淳子は、谷ナオミの跡目を継ぐ二代目SMの女王としてブレイク後二年、トータルでも四年と短い女優人生に、同年幕を閉ぢる。
 小夜が堂島の手に堕ちるところまででサクサク十五分、序盤に特段の冴えを感じさせなければ、以降も紛ふことなき純然たるフォーマット映画。一通り朱実と堂島であれやこれや小夜を責めたのちに、何故か源二が小夜を専有。適宜ブレイクを挿みながらも、延々延ッ々小夜が源二にここを彫られあそこを彫られするに終始する中盤は、意味だの展開だのといつた些末な概念は銀河の彼方に投棄。ここを彫られあそこを彫られが永遠に続くかのやうな、制止した時間の清々しさが眩く煌めく。彫物の完成した小夜が源二と情を交し、集められた一同の度肝を抜く頓珍漢なクライマックスに至る終盤は一息の電車道。藪蛇な重厚感をバクチクさせる高橋明改め堂島が、源二を「お前に出来ることなぞ何もありやしない」とさへ全否定するところの所以も、朱実の“兄さん”同様バックグラウンドを何某か匂はせるだけ匂はせておいて、矢張りスカーッと、といふかより直截にはスッカラカンと通り過ぎる。未だ存命の撮影所システムに裏打ちされ、確かに画面―だけ―は分厚いものの、反比例するかの如く物語なり中身は薄い、寧ろそれがどうした文句があるかといはんばかりの、潔さすら透けて見えなくもない裸映画。にしては、これは八十年代が悪いのだが、女優部のキッツキツにキツいメイクに、琴線を素直に奏でるのを妨げられた点も、個人的には大きい。見せるつもりであつたらうものが絶妙によく見えない、間の抜けたラスト・ショットがある意味完璧に全篇を象徴する一作である。


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 「ヤリ頃女子大生 強がりな乳房」(2017/制作:Blue Forest Film/提供:オーピー映画/監督:竹洞哲也/脚本:当方ボーカル/撮影監督:創優和/録音:山口勉・廣木邦人/編集:三田たけし/音楽:與語一平/整音:吉方淳二/助監督:江尻大/監督助手:平田圭一/撮影助手:酒村多緒・杉田陽介・木村風志郎・佐藤京郎/スチール:阿部真也/仕上げ:東映ラボ・テック/協力:恩田真弓/出演:若月まりあ・優梨まいな・石川優実・山口真里・森羅万象・吉田俊大・櫻井拓也・山本宗介・可児正光・津田篤・細川佳央・青山卓矢・那波隆史)。出演者中、細川佳央と青山卓矢は本篇クレジットのみ。逆に後述する後篇にしか出て来ない工藤巧馬が、ポスターには載る。
 ライン画面にタイトル開巻、デモ参加を促すラインと、女同士による主演女優の彼氏に関する遣り取り音声。何処そこ大学の政治サークル部室、部長の増宮春来(山本)と蔵野公正(可児)に、件のストーカー彼氏・中村修吾(櫻井)の顔見せ噛ませて、蔵野と寝た木本夏(若月)に、友人の藤野乃亜(優梨)は至極全うに異を唱へる。サークル活動にはてんで参加しない割に、夏が増宮とも寝る一方、乃亜はバイト先であるバーの常連客・岡田将也(津田)と付き合ひ始める。
 配役残り那波隆史が、非ステドの乃亜バイト先マスター・木村亘。森羅万象は、母親と折り合ひが悪く、滅多に家に帰らない夏を温かく見守る祖父・仁志。挨拶程度の松岡邦彦フィルム最終作「つはものどもの夢のあと 剥き出しセックス、そして…性愛」(2012/脚本:今西守・関谷和樹/主演:後藤リサ)、榊英雄ピンク映画第三作「裸の劇団 いきり立つ欲望」(2016/脚本:三輪江一/主演:水城りの)に続いてと地味にしぶとく戦績を積み重ねる―若月まりあは竹洞哲也2016年第二作「大人志願 恥ぢらひの発情」(脚本:小山侑子)以来のピンク第二戦で、二番手は初陣―石川優実は、増宮の実は厄介な彼女・矢沢絵里。不脱の山口真里が、娘に対し禁句中の禁句を平然と連呼する母親・節子。細川佳央は夜の繁華街、ビラを撒く増宮をボコるウェーイ、背格好がEJDには見えない連れは不明。青山卓矢は、絵里の輪をかけて厄介な兄貴。そしてビリングの高さが的確な吉田俊大が、双方媒介人を務める形で夏とミーツする添野一馬、職業は一般映画の助監督。オッサンに片足突つ込んだ演出部に女子大生の彼女が出来る、健気な夢物語を偶さか花咲かせる。
 三週間後封切りの「まぶしい情愛 抜かないで…」(深澤浩子との共同脚本/主演は優梨まいなにスライド?)と、二部作を成す竹洞哲也2017年第四作。今時年五本となると、エース格のナベ、さうでなくとも関根和美をもが本数を減らす中、相変らずの重用ぶりではある。何はともあれ裸映画的には、兎にも角にも夏が誰彼構はずヤッてヤッてヤリ倒す、ものの。何れも淡泊な上に最中もゴチャゴチャ余計な能書が多く、濡れ場は数こそ打てど当たらない。寧ろ、優梨まいなの着衣でも目を引くオッパイのジャスティスに下賤な琴線を激弾きされざるを得ないのは、哀しい男の性か、知らんがな(´・ω・`)。劇映画的にも昨今の異常な世相に居た堪れなくなる気持ちならば酌めぬではないにせよ、藪から棒な祭りの季節感に展開上の必然性は殆どなく、何かしたいのかも知れないが、何がしたいのかは判らない。絵里兄貴が夏を狙ふかが如き不穏なカットなんぞは、その癖以降に全く繋がりもせず―矢沢兄妹は後篇には出て来ない模様―となると、相ッ変らず小屋の客をナメたプラス路線の皺寄せか?だなどとついつい邪推のひとつもしてしまふ。例によつて漫然と茶も濁さないのかと、思ひきや。天候にも恵まれた空に抜ける格好のロケーションの下、岡田が毒を呷るショッキングを山といふか谷底に、ドミノ倒し式にほぼ全員不幸になつて行く終盤は猛加速。増宮との結婚を誇る絵里に、夏が据わつた視線を向ける辺りから若月まりあが漸く輝き始め、「ごめんねだと」と、仁志が娘の最期の言葉をザクッと投げる件では、森羅万象一撃必殺の重低音がバクチクする。依然前篇全篇に首を縦に振るには遠いまゝに、後篇で大化けした好例も胸を過らぬではなく、ロビーにポスターが貼られてゐたところを見るに、来月来る「まぶ純」を一旦待ちたい。ポップ・カルチャーの極北、あるいは一期一会を宗とする量産型娯楽映画にあつて、さういふ形を採ること自体、本来無条件に肯ずるものでもないのだけれど。


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 「若妻乱熟 スワップでいきまくり」(1990『熟れた若妻 ザ・スワッピング』の2017年旧作改題版/制作:メディア トップ/配給:新東宝映画/脚本・監督:片岡修二/製作:伊能竜/撮影:下元哲/照明:白石宏明/編集:酒井正次/助監督:カサイ雅弘/監督助手:松本憲人・青柳誠/撮影助手:片山浩/照明助手:林信一/録音:銀座サウンド/現像:東映化学/出演:大沢裕子・秋本ちえみ・千秋まこと・池島ゆたか・下元史朗)。助監督のカサイ雅弘が、ポスターにはカサイ昌弘、最終的に全然違ふ。
 走るカメラのシャッター音を、ピアノが一鳴りポロンと追ひ駆けてのタイトル開巻。胴体の真ん中が血塗られた、秋本ちえみの刺殺死体。三人の鑑識官(何れも識別不能)に交じつて、刑事の野沢俊介(下元)が現場に入る。人妻が自宅マンションで殺害され、なほかつ野沢はその女を知つてゐた。参考人として事情聴取を受ける、被害者・佐伯悦子(秋本)の夫・佐伯恭司(池島)と、野沢は取調室で再会する。二ヶ月前、野沢は鈴木の偽名で、佐伯改め吉田夫婦とスワッピングを行つてゐた。
 配役残り、鑑識官とは異なり顔も普通に抜かれるにも関らず、事情聴取に同席する田中要次似の制服警官は不明。秋本ちえみの女優力に屈したか、ビリング頭の存在感は感じさせない大沢裕子が、俊介の妻・亜紀子。千秋まことは、夫婦交換のコーディネーター・立花梨沙。またこの女がムチャクチャで、あくまでここでは鈴木・吉田夫妻を適当に顔合はせさせてゐる場から一旦退席、したかと思ふと煽情的かつ藪から棒なボディスーツで大登場。四人を煽りつつ、勝手に手前がオナニーに燃える大暴れ。出鱈目な火蓋の切り具合の向かうに、恐らく苦心したのではなからうか力技の三番手起用法が透けて見えなくもないのが感興深い。
 DMMのサムネが何故か冴木直と一ノ瀬まみな、片岡修二1990年第一作。そもそも、この二人が共演した新東宝作なんてあんのかな?関根和美が思ひだしたやうに性懲りもなく仕出かす、土台が頭数から限られたどころではない負け戦上等のサスペンスを、片岡修二は凝つた設定と、濃厚な濡れ場の僅かな間隙を縫つて物語を少しづつ少しづつ繋ぐ手法で、スリリングに切り抜ける。銃声に野沢が振り返るショットがどう見ても遅い、ラストこそ幾分失速を感じさせなくもないにせよ、終始人を喰つた佐伯が覗かせる妙な余裕の源で袋小路を突破すると、一度は揃つたかに思はせた四人の人間に四つの偶然が、崩れる瞬間の煌めきにも似た衝撃には誇張でなく震へた。裸と映画の二兎を追ひ、見事得てみせた一作。兎にも角にも、抑へた造形からも迸る、下元史朗の色気が堪らない。かういふ物言ひは決して好むところではないものの、このクラスのタレントが、正直昨今見当たらない。柳東史が大成してゐればと死んだ子の齢を数へるか、それとも、平川直大がこれから大化けするに足る場数の存在を望んでみるか。いや、そこはその流れだと山宗だろ。


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 「異常性告白 私に毛を下さい」(1989/製作・配給:大蔵映画/監督:小林悟/脚本:松瀬直仁/撮影:柳田友貴/照明:小野寺透/編集:金子編集室/助監督:青柳一夫/スチール:大崎正浩/音楽:サウンドボックス/録音:銀座サウンド/現像:東映化工/出演:林葉なほ・一ノ瀬まみ・浅川美希・五十嵐ユキ・朝田淳史・工藤正人)。
 “倉庫”の札を抜くポップ開巻、倉庫だといつたら倉庫、有無をいはさぬ倉庫感が何か感動的ですらある。マネキン脇で岡本(朝田)と、ケイコ(不完全消去法で早乙女ルイ似の五十嵐ユキ?)が大絶賛真昼間から、勤務時間内の一戦。マネキンの股間に何となくタイトル・イン、クレジット間は、マネキンと手マンを適当に繋ぐ。明けて工藤正人が倉庫のドアノブをガチャガチャしながら、「おかしいなあ、何で鍵かゝつてるんだろ?」。異なる解釈の余地を欠片たりとて許さない、ブルータルなほどの判り易さが清々しい。特に仕事もないのを自任するグータラ社員・高野雄治(工藤)が、喫緊の課題でも全ッ然ない在庫の点検に訪れたのに、ケイコは当然の如く動じつつ、岡本パイセンは鍵をかけてゐると意に介さず事を続行。遂に高野も嬌声に気づく中、岡本パイセンの膣外射精が、傍らのマネキンの臍辺りに付着する。入れ違ふ格好で高野が倉庫に入ると、何と岡本の精を被弾したマネキンが生身の林葉なほに。またこの林葉なほが、普通に超絶可愛いくて何故か吃驚した。高野が騒いでゐるゆゑ岡本とケイコが倉庫に戻つて来るも、岡本命名によるマネキンだからマキちやん(林葉)は高野にしか見えない。「貴方のお家に連れてつて」と乞はれ、高野はマキを家に持つて帰ることに。手前に配した段ボールで遮つての、工藤正人が林葉なほの五体を分解してマネキンに戻す、昨今の山内大輔ならばまだしも、この時期の大蔵映画でまさかの切り株スプラッタ、血飛沫こそ飛ばないものの。
 配役残り、マキをバラした状態のマネキンをバッグに詰め込み、汗を流す高野と交錯するのは小林悟。特に何するでない点に関しては、改めていふまでもあるまい。帰宅後マキを復元した高野のアパートを訪ねる一ノ瀬まみは、交際四年、未だ処女と童貞同士の高野彼女・ユリコ。また一ノ瀬まみが殆ど藪から棒に、全盛期を思はせる美しい色の白さを輝かせる。そして二回戦を戦ふビリング推定で浅川美希が、岡本パイセンが高野に宛がふ、ケイコ友人の童貞キラー・アサカワ。部屋でセーラー服を着てゐるのは、好きで着てるだけ方便。流石に不自然さを自覚したのか、そもそもセーラー服でなくて別に構やしないのに。
 公開十一月にしては、撮影は真夏と思しき小林悟1989年最終第十四作、ピンク限定だと第十一作。ユリコが部屋に入るや、マキは再々度マネキンに。ユリコが―自身の―母親に承諾を得ての、高野に純潔を捧げる中盤の見せ場を経た上で、マキが私もシタいと高野二連戦に突入。したところが、元々マネキンであるマキの足と足の間には、然るべき器官が何もなかつた。てな塩梅でマキが私に毛を下さい穴を下さいと高野に哀願するのが、奇想天外な公開題の真相。大蔵が提示した御題先行なのか松瀬直仁の脚本に追随した形なのか、企画の推移が物凄く気になる。普通に二枚目の割に振られる役は三の線も多い工藤正人の部屋に、マネキン人形が変化(へんげ)したアイドル級の美少女が転がり込む。さう掻い摘んでみると、ナベシネマばりにキラッキラ輝やかんばかりの夢物語、かと思ひきや。選りにも選つて頭の固いユリコの存在が、ある意味周到なミソのつき始め。結局、マキがマネキンでなく人間になつて見えてゐるのが徹頭徹尾高野だけ。といふ劇中最も根本的かつハードルの高い謎が終ぞ解消も何も半ば等閑視して済まされるまゝに、高野のみならず見るなり観た者の恐らく全てを奈落の奥底に叩き落す、よもやまさかの全てを失ふ正真正銘の絶望エンドには度肝を抜かれた。工藤正人がマネキン相手に腰を振るのが締めの濡れ場とかいふ、裸映画的にはなほさら阿鼻叫喚も大概なのだが、死の匂ひさへ濃厚に漂はせる空前絶後にダークなラスト・ショットは衝撃的。流石の大御大、何を仕出かすにしても絶対値のデカさが他を圧倒してゐる。


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 「絶倫謝肉祭 奥まで突いて!」(2017/制作協力:映像集団マムス/提供:オーピー映画/脚本・監督:佐々木浩久/撮影:鏡早智/録音:臼井勝・大野裕之/ヘアメイク:山崎恵子/編集:大永昌弘/助監督:相原柊太・もがきかんと・原田涼/撮影助手:中島寛貴/スチール:阿部真也/音楽:ゲイリー芦屋/制作応援:植野亮/機材提供:鈴木昭彦/仕上げ:東映ラボ・テック《株》/協力:プロメイク舞台屋・おしもん・阿部友馬・黒沼優大・高橋かれん・多田日向子/企画協力:しじみ/出演:さくらみゆき・蓮実クレア・しじみ・小坂ほたる・木村友貴・もがきかんと・ジーコ内山・山田岬・滝本ゆに《特別出演》)。ヘアメイクと、音楽の位置に違和感を覚えなくもないクレジットではある。
 ウイルスの蠢動を想起させる、マムスのロゴ。朝の食卓、女子大生の新垣渚(さくら)が、多分同級生の彼氏・間宮光太郎(小坂)の粗野な無作法に眉をひそめる。ところで佐々木浩久は鯨党で知られるにしては、何故プロ入りはホークスで、一度きりのトレード先であるスワローズで引退した新垣渚。閑話休題、渚の父親(佐々木浩久)の海外赴任に母親(滝本)も同行、渚が一人で暮らす自宅マンションに、光太郎が転がり込んでの同棲生活。ところが渚は人が変つた光太郎の、噛んだり爪で傷つけたりと暴力的なセックスに悩んでゐた。渚が先輩で医師の高坂瑞希(しじみ)宅に相談に行つたところ、軽く診察がてら実は両刀の瑞希が点火したタイミングで、瑞希の恋人でこちらはex.刑事の弁護士・桜田健一(木村)が現れる。そのまゝ不自然極まりなく桜田がオッ始める、木村友貴が場数―かセンス―不足を派手に露呈する濡れ場に、笑ひを引き攣らせたやうな表情で渚が目を丸くしてタイトル・イン。帰途、渚は地球が狙はれてゐると警鐘を鳴らす小冊子を路上頒布する脳にチューナーを内蔵した人(もがきかんと/漢字で書くと茂垣歓人?)に、呪はれてゐると喝破される。渚が恐々帰宅すると、家には光太郎の姉と称する悦子(蓮実)が上がり込み、誰の金で頼んだのか出前の握り寿司を食つてゐた。その夜、相変らず光太郎の暴力的なセックスに苛まされる渚は、攻撃的なまでに煽情的な真紅のネグリジェで、寝室を覗く悦子に気づく。
 謎しか残らない配役残り、性別から不明の山田岬が、光太郎の実家がある長崎に辿り着く前に、熊本で姿を消したオリジナル悦子の写真出演だとしても、依然「豊丸の何回でも狂つちやふ」(1989/脚本・監督:細山智明/主演:豊丸)以来、凡そ三十年ぶりともなるピンク映画二戦目の筈の、a.k.a.さそり監督ことジーコ内山が何処に出て来たのかが全く以て皆目判らない。チューナー脳がその人かと一瞬見紛つたが、それらしき頭数すら見当たらない。例によつて、尺の長いOPP+版には光太郎の父親辺りで登場するとかいふ寸法なのか?だとしたら、小屋の観客を虚仮にするのも大概にせえよ。
 事の発端はしじみが話を振つたとの、佐々木浩久ピンク映画参入作。榊英雄のやうに、継戦するのか否か。あるいは、当人にその気があるのなら―オーピーが―させるのかどうかは知らん。性的に過激なストレンジャーの登場に、ヒロイン始め一同が巻き込まれて行く。と掻い摘むと定番のジャンルでいへば家庭教師ものといつた、如何にもそれらしき物語にも思へ、日常がバッド・テイスト満載にみるみる崩壊、遂には邪神をも召還と、物語は弥の明後日に大暴走。要は、女の裸を出汁に、佐々木浩久が何時も通りのやりたい企画を通した格好となる、ざつくばらけるにもほどがある。
 苛烈な連ケツの大技も繰り出しつつ、絡みは概ね等距離から捉へる単調なエッサカホイサカにほぼ終始。どうやらこの御仁には、乳尻に寄るといふ頭は一切ないらしい。山﨑邦紀の大蔵一旦離脱作「SEX実験室 あへぐ熟巨乳」(2013/主演:有奈めぐみ)から久し振りにピンクに参加した鏡早智も、蓮実クレアをエロくといふよりはPV風にカッコよく撮る方向に傾注。オッパイが画面に見切れる時間は、物理的時間自体は案外どころでなく長い割に、裸映画的な有難さはまるで感じさせない。一方今時のホラー的には、特撮に割く袖も当然ない上で、傷なり匂ひといつた定番のギミックでなく、生理的な嫌悪感を最も惹起するのは、小坂ほたるの不細工な中性性であつたりもする。道徳なり倫理を相対性の一撃で粉砕、欲望の普遍性の一点突破で暴れ抜く、セクシュアルな魔人・悦子の凄味は偶さか激しく煌めきかけるものの、対する絶対善、乃至は不屈の希望を担ふ渚の姿は蓮実クレアとさくらみゆき(現:みゆき菜々子)の役者の違ひから覚束なく、闇雲に広げてみせた大風呂敷が、軟―弱に―着陸する穏当なつもりの適当なラストには激しく拍子抜けした。いつそ、世界を終らせるまでに振り抜いてみせればと、終末思想にも似た不満は禁じ難い。大事な一点を忘れてた、妖しく輝く蓮実クレア(ex.安達亜美)の一人勝ちは許さんとばかりに、しじみ(ex.持田茜)が語尾を“だからあ!”と弾けさせる十八番をサラッと撃ち抜き気を吐くのは、数少ない見所のひとつ。改めていふと、もしくは保守的な与太を吹くやうだが、基本やりたいやうにやつたと思しき佐々木浩久が、今作の出来に満足してゐるのかゐないのかはさて措き、少なくともピンクとしては別に面白くも何ッともない。累々と量産型娯楽映画を長く支へて来た本隊の人間が斯様な、換骨奪胎なり牽強付会なり、我田引水といつた四文字熟語も浮かぶ托卵じみた一作を果たしてどのやうに捉へてゐるのか。おい荒木太郎、黙つてないで何かいつたらどうなんだ?ピンクで映画なピンク映画を、感得したのかそもそも感得するに足る資質を有してゐたかは兎も角、一番表立つて希求してゐたのはアンタだろ。


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