真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「吉村すもも 奴隷人形」(2001/製作:フリーク・アウト/提供:オーピー映画/監督:国沢☆実/脚本:樫原辰郎/撮影:鍋島淳裕/ネガ編集:フィルムクラフト/助監督:城定秀夫/監督助手:伊藤一平/撮影助手:澤井貴善・鶴崎直樹/ドラッグメイク:新井純子/スチール:佐藤初太郎/録音:シネキャビン/効果:東京スクリーンサービス/現像:東映化学/出演:吉村すもも・黒木利徳・石阪稔朗・中山嵐々)。
 机下の足元から舐めて、ブスッとした主演女優がトーストを摘む。主演女優といつて、主演に間違ひはないが助演のゐない一人きりの女優部ではある。忙しく出支度を済ませた夫の甲斐トシロー(石阪)は、妻・秋(吉村)の帰りを訊ねる問ひかけにもそこそこに出撃。浴室での無駄毛の処理で裸を一頻り見せ、風呂上りの牛乳。秋がコップの底を覗いてみると、長いことしてないねと甲斐が現れる。夫婦生活に突入しかけたのは、秋の他愛ない白日夢、秋はコップを投げつける。ポロンポロン秋がシンセを叩いてゐると、酔つた甲斐が帰宅、バタバタ寝室に直行する。秋の弾く曲が猫踏んぢやつたに移行してタイトル・イン、アバンは物憂げな日常に十全に尺を割く。
 ほかにすることがないのか、相変らず秋がテレンテレン鍵盤を触つてゐると、貴女の体をオークションにかけてみませんか?なるビーナスクラブとやらからの謎メールを着弾する。この件、動画再生を一時停止した上でガン見して漸く判読した―秋は読み上げない―次第なのだが、液晶画面が結構暗く、これで小屋で見えたのか疑問が残らぬでもない。電話をかけてみた秋があちこち電話越しに連れ回された挙句辿り着いた先は、廃墟?のHOTEL石川。バッキバキのメイクを決めたドラッグクイーン(中山)が秋を出迎へ、ザクザク競売開始。国沢実らが暗がりの向かうでガヤる競りを経て、秋は半年五千万の高値で、Kとしか名乗らない男に落札される。因みにオークションだ落札だといつて、ビーナス個人のそれまでの生活は、あくまで壊さないシステム。
 配役残り、劇団主宰であつたりベテランエキストラであつたりするらしい黒木利徳は、終始映像と音声を通したプレイのみで奴隷人形と接するKが、秋に差し向けるいはく“忠実な部下”。ファースト・カットでは、そこに居る黒木利徳と黒木利徳を秋に紹介するKの天の声とが、確かに並行してゐる。
 最低二度は観てゐる筈が、中身がサッパリ思ひだせなかつた国沢実2001年第三作。因みにこの時前作の「三浦あいか 痴漢電車エクスタシー」と、二作主演女優の冠公開題が続いてゐるのは非常に珍しいケース。m@stervision大哥はケチョンケチョンだが、そこまで木端微塵といふ訳でもない。小生の目が馬鹿になつてゐる可能性も、勿論否定しない。吉村すももは首から上は顎周りのラインに難があるゆゑ、顎は引き気味に上から捉へる―ただし意識的に追及されはしない―奇跡のアングル頼みのきらひは否めないものの、首から下が幼児体型といふのは明らかに言ひ過ぎ。手足は十分に長く、そこそこ以上に綺麗な体をしてゐる、オッパイのタトゥーは要らんけど。尤も、決戦兵器たるべきモノローグを豆鉄砲と化す、たどたどしい口跡は日本語を解さない人間に聞かせない限り、どうスッ転んだところで壊滅的。何時もかういふ時に思ふのが、潔くアテレコを乞ふ選択は採れなかつたものであらうか。
 ミニマムを更に抉り込んだ俳優部の布陣と、ビーナスクラブにその身を投じた所以を“夫を愛してゐることを確かめたかつただけかも知れない”だなどとヌカす秋の方便は心許なくしかない割に、何となく見させる不思議な始終は、最終的には流石に力尽きる。締めの一言が気が利いてゐなくもないKの正体に関しては脆弱な男優部に足を引かれ、結局夜の営み込みで秋と甲斐の関係自体は一欠片たりとて微動だにしないまゝに、勝手にクレジットが流れ始めるラストには軽く吃驚した。倦怠の本丸は何ら解決されずとも、半年間の火遊びと五千万を得たヒロインは、何となく御機嫌。人間の姿としてはある意味リアルなのかも知れないが、一時間とはいへ客に付き合はせた、劇映画の結末にしては随分だらう。


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 「花芯の刺青 熟れた壺」(昭和51/製作:日活株式会社/監督:小沼勝/脚本:松岡清治/プロデューサー:伊藤亮爾/企画:奥村幸士/撮影:森勝/照明:川島晴雄/録音:福島信雅/美術:土屋伊豆夫/編集:西村豊治/音楽:新谷武治/助監督:高橋芳郎/色彩計測:森島章雄/踊り・振付:花柳幻舟/刺青:凡天太郎・河野光揚/現像:東洋現像所/製作担当者:田中雅夫/出演:谷ナオミ・北川たか子・蟹江敬三・中丸信・花柳幻舟・長弘・結城マミ・谷文太・宮崎あすか)。出演者中、谷文太と宮崎あすかは本篇クレジットのみ。配給に関しては事実上“提供:Xces Film”、なのか?
 右オッパイから舐めた、歌舞伎役者の彫物を背負つた背中にタイトル・イン。京都での卒業制作の写真撮影から吉野たか子(北川)が帰京、クレジットと連動して帰宅。饒舌なメイン・テーマ―実際には樋口康雄によるものらしい―が鳴り止むのを待ち、たか子は人形作りに没頭する義母・みち代(谷)にカメラを向ける。後妻として結婚後、半年で一切登場しない夫とは死別したみち代は、以来十年歌舞伎ものの人形師として女手ひとつでたか子を育て上げたものだつた。人形問屋の貝島(長)が、料亭にて一服盛つたみち代を手籠めにする。朦朧とする意識の中、歌舞伎座出入りの鬘職人の娘であつたみち代は、娘道成寺を十八番とする歌舞伎役者・尾形珠三郎(花柳)に女にされた過去を想起する。家にまで押しかけた貝島をたか子は撃退するも、その場を目撃しショックで飛び出してゐたたか子が交通事故に遭ふ。病院に駆けつけたみち代の前に現れた、飛び出したたか子を撥ねた男・尾形ヒデオ(中丸)は珠三郎の名も襲名する、珠三郎の忘れ形見であつた。
 配役残り結城マミは、貝島のファースト・カット、みち代の来社を伝へる社長室で抱かれてゐたエプロン姿の女・芳子。満足に造形の語られることもなく、後にも先にもそこにしか出て来ない清々しいまでの裸要員。中丸信よりもビリング上位の蟹江敬三は、料亭を離脱後みち代が急な雨を逃れた軒下で最初にミーツする、彫師・辰。みち代の友人で歌舞伎の造詣も深い飲み屋のママ・冬子は、花柳幻舟の二役目。谷文太と宮崎あすかには、手も足も出ない。
 エクセスが進んで回してゐるのか、小屋が好んで呼んでゐるのか、兎も角小沼勝昭和51年第四作。運命的に出会つた色男を巡る、母娘の大雑把な愛憎劇。花柳幻舟が絢爛に舞ふ尾形珠三郎のイメージ・ショットは確かに昨今には逆立ちしようが何しようが撮れまいが、それと一本の映画としての面白さなり出来といふのはまた別の問題。乞はれて自ら彫つた“花芯の刺青”に、辰がホラー映画感覚で恐れ慄くのは振りきれたシークエンスともいへ、偶像崇拝を禁じたイスラム法でもなからうに、観音様を映すことを禁ずる律に無策な正面戦を挑み、むざむざ完敗を喫した画には間抜けさも禁じ難い。ラスト二十分で猛どころか超加速するみち代のエモーションには正直理解に遠いまゝに、どんなに無理から拡げた風呂敷とて、主人公が死ねば畳めるとでもいはんばかりの、どさくさ紛れスレスレの唐突なラストまで一直線どころか垂直落下。輝かしいほどのクリシェぶりを爆裂させ、泣き崩れるヒデオが笑かせる。とかくロマポだ、やれ小沼勝だやれ谷ナオミだやれ蟹江敬三だと、やれやれとでもいつたところだ。ブランドなり名前に囚はれぬ付き合ひの悪いピンクスにとつては、ワーキャー持て囃すに足る一作ではない。


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 「小林ひとみ 男狂ひ有閑マダム」(1997/製作・配給:大蔵映画/監督:小林悟/脚本:如月吹雪/撮影:柳田友貴/照明:渡部和成/編集:フィルム・クラフト/助監督:佐藤吏/スチール:佐藤初太郎/タイトル:ハセガワプロ/監督助手:堀禎一/録音:シネキャビン/現像:東映科学㈱/出演:小林ひとみ・青木こずえ・風間晶・田口あゆみ・白都翔一・真央はじめ・坂入正三・久須美欣一)。チーフが佐藤吏で、セカンドが堀禎一の序列もアリなのか。
 青く綺麗に輝くミサトのプールから、カメラがグーッとパンするとプールサイドで絵のモデルになつてゐる小林ひとみのロングにタイトル・イン、簡潔な開巻の強度が何気に堪らない。くたびれたのか大欠伸をした恵美(小林)が自ら裾を割ると、ヘタウマどころか端的に下手糞な絵筆を走らせるケンちやん(としか劇中呼称されない/坂入正三)は生唾を呑む。サカショーの画家アイコンとしての丸眼鏡が、賞味期限を通過したポップさが今の目からするとグルッと一周して新鮮に見えなくもない。実はケンちやんの恋人で、いい絵が描けるやうにと恵美に紹介した、お手伝ひのユキ(風間)が来客が一時間後に到着する旨の電話の要件を伝へに来る。するとセクシャルな気分を削がれた恵美は、クズ呼ばはりまでして仕事中だとユキを叱責する。恵美は何時の間にかオッパイも披露、ユキより私が好き?と誘惑したケンちやんを喰ふ。
 配役残り、俯瞰のミサト応接間に四人纏めて登場する青木こずえと真央はじめと田口あゆみと白都翔一は、順に恵美の姪・薫、薫の婚約者・聡。この人も恵美と同じく薫からは伯母か叔母に当たる陽子に、世界中の放浪生活から帰国した薫の兄・信也。ところで恵美の造形は、ホステス上がりで玉の輿に乗つた資産家の遺産を上手いこと継いだ有閑マダム。ゲストを待たせシャワーを浴びる―即ち裸映画的には文字通り一肌脱ぐ―恵美に対し信也が“噂通りの成り上がり女だぜ”と悪態をつく一方、恵美も恵美で病気療養を建前にミサトを訪ねた陽子に対しては“旦那に愛人が出来て家出して来た癖に”、陽子も負けてはをらず聡を捕まへて“こんな我儘娘貰ふなんて本当間抜けな男”と全方位的に悪意が交錯する心の声を絶好調に走らせる。とりあへず陽子に関しては、それ以前にどう見ても健康そのものにしか見えないんだけれど。そして久須美欣一が、それなりのすつたもんだの一段落を見計らつたかのやうに、家を出た陽子を迎へに来る椎名製薬社長。
 小林悟1996年全十一作中第七作―ピンク限定だと九の六―は、大御大V.S.小林ひとみ第一戦。有閑マダムが使用人の男に手を出す格好の、恵美×ケンちやん×ユキの三角関係。片や、聡は薫も余所に何故か陽子に執心。ピンク映画らしく麗しく絡みに直結するモチーフを積み重ねた末に、正しく取つてつけられたラストが何となくムーディーに締め括る。ビリング頭に愛染“塾長”恭子・神代“イヴ”弓子と並ぶ、終に女優として開眼することはなかつた三巨頭の一角・小林ひとみを擁してなほ、要所を田口あゆみと久須美欣一が締める布陣にも支へられ、悟がひとみに畏まつた訳でもなからうが、個々のシークエンスは一見案外小奇麗に纏まつてゐなくもない。反面、全体的な話の繋がりはフリーダムなまでにへべれけ。女の裸をつらつら愉しんだ末に、確かに締めの濡れ場的な風情は感じられるものの、それにしても唐突に叩き込まれる“完”。とはいへ全体何が完結したのだか全く判らない、といふと、最終的には通常運行安定の大御大仕事である。


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 「帰れない三人 快感は終はらない」(2015/製作:いまおかプロ/提供:オーピー映画/監督:いまおかしんじ/脚本:佐藤稔/撮影:鈴木一博/音楽:ビト/録音:光地拓郎/編集:蛭田智子/助監督:永井卓爾/監督助手:鈴木啓太/応援:坂本礼/スチール:津田一郎/MA:シンクワイヤ/仕上げ:東映ラボ・テック/出演:涼川絢音・夏希みなみ・工藤翔子・櫻井拓也・守屋文雄・貴山侑哉・掛田誠・内藤忠司・倖田李梨・岡田智宏・中野太・佐藤宏・永井吾一・テルコ・生方哲・大池潤・鎌田一利・周摩要・中村勝則・伊藤一平・広瀬寛巳・佐久間栄一・和田光沙)。出演者中、永井吾一以降は本篇クレジットのみ。
 女・男・女・幼児と並んだイラストの添へられたタイトル開巻、幼児以外は登場人物のどれが誰に相当するのか案外判然としない。看護師の古川志保(涼川)と、彼氏・沢村健二(櫻井)がラブホテルにてセックス。当初ノリノリの二人ではあつたが、志保から望んだ肛門性行が上手く行かないとインスタントに衝突、健二は衣服を抱へ裸のまゝ部屋から出て行く、着てからにしろよ。一方、何時の間にか日も昇り、児童公園で多分OLの田山夕子(工藤)が、慣れぬ風情で泣き止まない乳児・テルコ(ハーセルフ/いまおかしんじ実子)に手を焼いてゐる。通りがかつた志保が見かねてミルクを飲ませる助け舟、テルコは夕子が不倫相手の子供を、連れ去つたものだつた。河原のススキ野で座りションを済ませたホステス・甘木智代(夏希)が、紅白の垂れ幕と万国旗とでデコレートされた根城に棲むホームレス・種田(掛田)に声をかけられる。死にかけた仲間に旨いものを食はせたいので、金を恵んで呉れといふ。種田がアマキと仲間の名を呼んだのに関心を惹かれた智子は、段ボールの中に臥せる男の顔をチラ見した上で、種田に一万円渡しそそくさその場を離れる。
 配役残り守屋文雄は、カラオケスナック「あみん」(実在はしないぽい)に於ける智代の常連客・段田五郎。佐藤宏は、店外の最中に説教臭い段田と喧嘩別れした智子を、街娼と勘違ひする坊主・珍念入道。珍念が経を唱へながら事に及ぶのは、いまおかしんじが荒木―太郎―病を罹患したのかと思ひきや、病気を患つた故郷の母親のために、百人斬りの願掛けをしてゐるとの方便。貴山侑哉が夕子の不倫相手でテルコの父親・近藤俊介、さりげなく紛れ込んで来る和田光沙は夕子と近藤がランデブーする喫茶店「マリエール」のウェイトレス。そして内藤忠司が、案の定死にかけてなどゐなかつた種田の仲間・甘木隆行。岡田智宏は、目的も失してなほ橋に立つ智代を買ふ、一見ジェントルマン・津崎。中野太は何だかんだで橋に立つ志保・智代・夕子の内、智代が最初に交渉成立する客・島野。倖田李梨は最後に残された志保の前に健二と現れる、新しい彼女だか浮気相手・タエコ、このビリングで脱ぐのには驚いた。事前のそこかしこにも見切れてゐた気がする永井吾一は、追ひ駆けた津崎を仕留めるラブホ従業員・串本。生方哲以降佐久間栄一までは、「あみん」店内と河原の葬儀要員か。「あみん」のいまおかしんじと、河原のひろぽんとビトくらゐしか確認出来なかつた。
 河童映画が小屋を素通りして単館に行つてしまつたゆゑ、いまおかしんじにとつては「獣の交はり 天使とやる」(2009/脚本:港岳彦/主演:吉沢美優)以来のピンク映画復帰となる、以前に、電撃大蔵初参戦が2015年まづ最初に我々の度肝を抜いた話題作。別に関係ないといへばないが、愛染“塾長”恭子と共同監督した「白日夢」(脚本:井土紀州/原作:谷崎潤一郎/主演:西条美咲・大坂俊介)のことは完全に忘れてた。
 映画本体に話を戻すとデジタル・オーピーの普請への弁へを欠いた、肝心要の濡れ場の舞台ともなる―中盤以降の―ラブホと、夜の河原周りの不用意な暗さには匙を投げつつ、無理からな共犯関係を二つ重ね、マイナスにマイナスを乗じてプラスに転じる強引さで女三人が一晩での百人斬りを目指す。掲げた目標の無茶さ加減も兎も角、城定秀夫は辟易する女三人が絡むデフォルトの要請に従つた物語の構築に、上手いこと成功してみせてゐる点には大いに感心した。とはいへ、初めて草鞋を脱ぐオーピーに気兼ねしてか、いまおかしんじにしては飛翔なり浮遊が然程高くない始終は、こぢんまり纏まるのが関の山かと、一旦は思へた。ともいへ守屋文雄が放つ逆転打、一件落着後の智代と段田の濡れ場に非ざる絡みは愚直な純情がストレートにグッと来させ、続く賑々しい河原葬儀は、脱力系の力技で捻じ込んだ穏やかにして確かな腹持ちのエモーションが、一撃必殺の大団円としての輝きを有してゐた。とはいへともいへ折角あれだけ長く回しておいて、最終的には俳優部に帰すべき責込みで三本柱中最もドラマの弱い志保と健二に下駄を預けた結果、冒頭を回収する締めの濡れ場が蛇の足に見えかねないのは裸映画的には明らかに不手際ではなからうか。豊作傾向の2015デジタル・オーピー元年戦線にあつて、予想外の名前が飛び込んで来たいまおかしんじに看板を持つて行かれるとは、行けさうで必ずしも行かなかつた一作である。

 然しくどいやうだがラブホと夜の河原周りは本当に暗い、腹が立つのも通り越し呆れ果てるくらゐに暗い。志保・智代・夕子と段田の四人で智代の親爺に会ひに行くカットに際して、やつと劇中夜が明けたかと清々しいまでにホッとしたのは、改めて考へてみるとよく判らない映画体験ではある。


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 「はみ出しスクール水着」(昭和61/製作:獅子プロダクション/配給:株式会社にっかつ/監督:滝田洋二郎/脚本:高木功/プロデューサー:半沢浩/アシスタント・プロデューサー:谷口公浩/撮影:志賀葉一/照明:岩崎豊/編集:酒井正次/助監督:笠井雅裕/監督助手:小原忠美・瀬々敬久/撮影助手:栢野直樹・片山浩/照明助手:森下徹・松隈信一/記録:高山秀子/美粧:庄司真由美/振付:土田一代志/スチール:西本敦夫/車輌:JET-RAG・金子&船橋/録音:銀座サウンド/現像:東映化学/出演:清里めぐみ・森田水絵・川上雅代・野川雪美・小林あい・野上祐二・外波山文明・ジミー土田・古田信幸・会田雄二・螢雪次朗・池島ゆたか)。出演者中、外波山文明と古田信幸は本篇クレジットのみ。
 シンクロをチャプチャプ泳ぐ主演女優に、クレジットが並走。水中での大股M字に監督クレジットと、追走してタイトル・イン。水の中に潜み勃つただ出ただと騒ぐ、馬鹿二人は不明。フィニッシュをニッコリ決めた青葉学院シンクロナイズド・スイミング部部員・秋野素良(清里)の演技を、顧問の角丸蔦子(川上)は行水かと思つたと一笑に付し見てなどゐなかつた。素良に代つて、仰々しく「白鳥の湖」も起動させプールに入るシンクロ部キャプテン・宗源寺蘭子(森田)と素良の差が、観客には甚だを通り越し全く判り辛い点に致命傷の起爆装置が水上に露出する。その先には五輪を見据ゑたアジア大会を目前に、ムチムチ肉感的な肢体から優雅さに欠けると、蘭子は―蔦子も―素良を歯牙にもかけなかつた。
 配役残り小林あいは、泳げない癖にシンクロ部員の村田波子。実は未だ処女の素良を尻目に、テレクラで奔放に男を漁る。螢雪次朗はパチンコ屋感覚の場内アナウンスをガンガン敢行する、素良の父親で銭湯「日の出湯」の大将・清七。ドラえもん・怪物くん・パーマンが躍る大らかさと、片隅にはエリマキトカゲも走る日の出湯女湯(客の裸要員は計四名)の壁絵が時代を感じさせる。古田信幸は波子の目を盗みくすねたテレクラ「HOT TOWN」のピンクチラシを手に、素良が耽るオナニーに登場する憧れの誰かさん。野川雪美は“剃毛と三日間の自宅謹慎”なる校内処分を喰らふほどの剛どころか爆毛が悩みの種の、シンクロ部員・松原繁子、繁子といふのも笑かせる。会田雄二は乞はれた剃毛あるいは刈毛を経て繁子と事に及ぶ、同級生の手島浩一。「ねえ剃つて」と露にした爆毛に度肝を抜かれた手島君が、窓からお隣に芝刈り機を借りに行かうとするのが捧腹絶倒な繁子V.S.手島戦。生ひ茂る陰毛越しを方便に、結構―模型だらうが―女陰描写に切れ込む。ジミー土田はシンクロ部員が口を利くことも禁じられる、水泳部員の清水隆夫、戯画的な大巨根の持ち主。出オチの外波山文明は意を決して「HOT TOWN」に電話をかけてみた素良を待ち合はせ場所にて閉口させる、脂ぎつた歯抜け男。そして電車痴漢されてゐるところを助けた素良と再会する男前ぶりを発揮する野上祐二が、蘭子のアジア大会優勝を目的にアメリカから招聘された、特別コーチの龍神俊一、名前からイケメンではある。最後に池島ゆたかが、蘭子の父親にして青葉学院理事長・宗源寺十郎、川上雅代の濡れ場はこの人が介錯。
 非人道的な繁忙期におとなしく屈し、小屋では辛抱せずに寝た滝田洋二郎昭和61年第三作とDMM再戦。この年の頭に「コミック雑誌なんかゐらない!」(共同脚本・主演:内田裕也)を発表した滝田洋二郎にとつては裸映画から離れる今際の間際、買取系ロマポに専念してゐた時期に当たる。
 物語的には下町生まれのヒロインが二枚目のコーチも挟んで高飛車な令嬢と対決する、定番中の大定番のスポ根もの。さうはいへ御題が無理難題といつてしまへばそれこそ元も子もないにせよ、肝心要のシンクロ・シークエンスが凡そ説得力を持ち得ないのが如何せん苦しい。結局クライマックスの一発大逆転はおろか、劇中所与のものとして蘭子が素良に誇る決定的なアドバンテージが認め難いとあつては、そもそも展開の骨組みが端から成立してゐない。名匠・滝田洋二郎の手によるものとはいへ、賑々しく女の裸は愉しませるに止(とど)まる、平板な裸映画に過ぎまい。

 改めて川上雅代はex.織本かおる。五年後に再び織本かおるでの活動歴が見受けられるのは、ブランクを邪推するに一旦引退を経ての復帰期間か。


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 平成28年映画鑑賞実績:175本 一般映画:9 ピンク:156 再見作:10 杉本ナンバー:38 ミサトナンバー:2 花宴ナンバー:2 水上荘ナンバー:5

 平成27年映画鑑賞実績:219本 一般映画:18 ピンク:185 再見作:16 杉本ナンバー:56 ミサトナンバー:9 花宴ナンバー:4 水上荘ナンバー:9

 再見作に関しては一年毎にリセットしてゐる。そのため、たとへば三年前に観たピンクを旧作改題で新たに観た場合、再見作にはカウントしない。あくまでその一年間の中で、二度以上観た映画の本数、あるいは回数である。二度観た映画が八本で三度観た映画が一本ある場合、その年の再見作は10本となる。それと一々別立てするのも煩はしいので、ロマポも一緒くたにしてある。

 因みに“杉本ナンバー”とは。ピンクの内、杉本まこと(現:なかみつせいじ)出演作の本数である。改めてなかみつせいじの芸名の変遷に関しては。1987年に中満誠治名義でデビュー。1990年に杉本まことに改名。2000年に更に、現在のなかみつせいじに改名してゐる。改名後も、旧芸名をランダムに使用することもある。ピンクの畑にはかういふことを好む(?)傾向がまゝあるので、なかなか一筋縄には行かぬところでもある。
 加へて、戯れにカウントする“ミサトナンバー”とは。いふまでもなく、ピンク映画で御馴染みプールのある白亜の洋館、撮影をミサトスタジオで行つてゐる新旧問はずピンクの本数である。もしもミサトで撮影してゐる一般映画にお目にかゝれば、当然に加算する。
 同様に“花宴ナンバー”は、主に小川(欽也)組や深町(章)組の映画に頻出する、伊豆のペンション「花宴」が、“水上荘ナンバー”は御馴染み「水上荘」が、劇中に登場する映画の本数である。


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 「獣 ‐けだもの‐」(1989/製作:バーストブレイン・プロダクツ/配給:新東宝映画/監督:佐藤俊喜/脚本:小林宏一/プロデューサー:佐藤靖/撮影:下元哲/照明:白石宏明/録音:ナガシマヨシヒロ/撮影助手:片山浩/照明助手:林信一/録音助手:田村亥次/編集:金子尚樹/音楽:ISAO YAMADA/助監督:上野俊也/演出助手:中野貴雄/メイク:田中ミキ/?:オオクラヨシオ/出演:朝吹摩耶・井上あんり・中村京子・伊藤清美・清水大敬・中根徹)。実際のクレジットは人名ローマ字のフランス語、洒落臭いことしやがつて。人名の片仮名は漢字に辿り着けないのと、オオクラヨシオの担当はフォントが小さくて判読不能。脚本の小林宏一は、小林政広の前名義。
 “Les Films BURST BRAIN PRODUCTS Presentent”、とフランス映画気取りの開巻、鼻を摘む。“MAYA ASABUKI et”とクレジットが続いて、キャップの脇からロン毛を覗かせた―ウィッグかエクステかも―中根徹。“幸運て奴は思ひがけない時にやつて来るものだ”、“あの時の俺は正にさうだつた”、“尤もそれも幸運だとしての話だが”と、早速暗雲の立ち込めるモノローグを連ねてタイトル・イン。中小広告代理店「朝日エージェンシー」に勤務する高木洋一(中根)が、喫茶店で行儀悪くランチを掻き込む。相席を要求された、赤いボディコンの女・紗耶(朝吹)に心奪はれた高木は、一応明日の再会を約し一旦は店を出ておいて、踵を返し最終的にはサクサク紗耶とホテルに入る。紗耶と逢瀬を重ねる高木は紗耶は何でも自分の求めに応じ、そのことを自ら望んでゐるやうだと勝手に解した。
 配役残り中村京子は、高木V.S.紗耶第一戦に入る直前に、別室の回転ベッドの上で乱れる女。映るのは正真正銘本当に一瞬だけの、凄まじい裸要員、因みにお相手の男は布団の中。伊藤清美は、高木の妻・明子。高木V.S.紗耶第二戦の中途で飛び込んで来る清水大敬と井上あんりは、高木先輩のカワシマと、同僚のミチコ。但しその間柄は、会社の応接室で仕出かしてゐた高木―とミチコ―が、ホテルから帰社した高木と鉢合はせるまで語られないゆゑ、あくまで飛び込んだ時点では、木に濡れ場を接いだ感も強い。ミチコがカワシマとの関係を理由に婚約を解消する一方、カワシマは元来の独身主義を決め込んでゐた。高木・ミーツ・紗耶の件に話を戻すと、高木後方の席に見切れてゐるのが、どう見ても平勘に見えて仕方ないのだが。
 演出意図もあらうが、平素の凡そ目の焦点も合はない心許なさとは正しく対照的に、絡みに入るやズボズボだグイグイだグニョグニョだビラビラだと無闇にオノマトペを乱打する、いはゆる淫乱系へと変貌。芸としての成立具合から察するに、恐らく後者が本来の持ち味なのではなからうかと推測する主演女優を擁した、佐藤俊喜(現:サトウトシキ)デビュー作。カワシマが結局叶へられなかつた人生の理想は、女を気儘に抱いて一緒にゐたい時はゐて嫌になつたら別れる。カワシマ曰くさういふ男女の付き合ひ方が犬猫には出来て人間には出来ないといふのが、ピンク映画らしからぬ公開題のこゝろ。単なるセフレぢやねえか何を大仰な、とザックリしたツッコミは兎も角、片や、実は“僅かなホテル代と喫茶店代で思ひのまゝになる女を所有して”ゐた、といふのが高木いふところのラック。今作面白いのが、フランスかぶれと全篇を通して臆面もなく垂れ流され続ける、勿体ぶつた割に中身の殆どない中根徹のモノローグ。あと生活感の欠片もない高木家の描写―階段の踊り場に電話が置いてある、訳の判らないロケーションは何なんだ?―と、取つてつけたやうな開巻に繋がるラストさへさて措けば、終盤カワシマが身から出た錆で文字通り痛い目に遭ふまでは物語らしい物語が起動するでもなく、各々キッチリ撮り上げた濡れ場濡れ場を淡々と積み重ねるに終始する。案外裸映画として順当に仕上がつてゐる点に関しては、後に四天王の一角としてシネフィルに持て囃される浅いパブリック・イメージからすると意外にも思へた。結局見通した末の、フランス語クレジットには改めて腹が立つのだけれど。


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 「湯けむり温泉芸者 お座敷で枕芸」(2015/制作:Blue Forest Film/提供:オーピー映画/監督:竹洞哲也/脚本:当方ボーカル/撮影監督:創優和/録音・整音:高島良太/編集:有馬潜/音楽:與語一平/助監督:小関裕次郎/監督助手:鈴木啓太/撮影助手:酒村多緒・清水えりか/スチール:阿部真也/仕上げ:東映ラボ・テック/協力:小林悟桃悟会・東中野リズ子/出演:友田彩也香・みおり舞・倖田李梨・和田光沙・森羅万象・イワヤケンジ・ダーリン石川・山本宗介・近藤力・森繁琢也・青森次郎・なかみつせいじ・東中野リズ子)。出演者中、近藤力からなかみつせいじまでは本篇クレジットのみ。いはずもがなを久し振りに、脚本の当方ボーカルは、小松公典の変名。
 海からの遠景に、“♨ようこそ熱海!♨”のテロップ。置屋「和久田屋」に在籍する芸者の柳田しずく(友田)と花田珠美(みおり)が、観光課PR番組の収録中。片やいはゆる枕営業も辞さないしずくと、片や芸事一本勝負の珠美とは日頃から反目し合ひ、今日も今日とてカメラの前にて大喧嘩、倒れたカメラが壊れたところでタイトル・イン。明けて和久田屋、寄こされた請求書を手に、女将の和久田鈴(東中野)が二人をたしなめる背景に、在りし日の大御大・小林悟(2001年没)のスナップが見切れる。私服で食事を済ませたしずくは、カメラを壊したどころかとばつちりで半殺しにしたディレクター(グルグル巻きの包帯でイケメンも殆ど窺へない山本宗介)と再会。今後も見据ゑ膳を据ゑた事後、珠美を“可愛い方”と口を滑らせたDを改めてシメる。
 配役残り、御座敷遊び「金毘羅舟舟」の紹介とともに登場する森羅万象は、芸者遊びに現を抜かす生臭坊主・茂田万蔵。矢継ぎ早に飛び込んで来る和田光沙が、万蔵の文字通り狂騒的な妻・百舌恵。軽く絡みもこなすなかみつせいじは、こちらは「虎拳」の紹介とともに登場する芸者を呼んだ旅館客。ダーリン石川と倖田李梨は、二人で旅館「葵旅館」に現れる詐欺師の山田一喜と、その妻・由奈。一喜が口にする“三年前”に、竹洞組らしく何某かのリンクがあるものかと旧作に当たつてみたが、どうやら別に意味はないやうだ。近藤力(=小松公典)と森繁琢也(=加藤義一)は、しずくと珠美の「おひらきさん」を楽しむ芸者を呼んだ旅館客。そしてアイコンばりのテンガロンを頭に載せたイワヤケンジ(当然岩谷健司)が、葵旅館に逗留する、見るからなアメリカから来た五輪イベントのプロデューサーと称したケンゾー・シゲタ。またしても、青森次郎(=竹洞哲也)をロストする。支配人の癖にジーパン穿きな、葵の支配人は確か小関裕次郎だよね?
 何と本篇とエンドロールの間に“小林悟監督に捧げる”なるクレジットが差し挿まれる、竹洞哲也2015年第三作。これが小林組兄弟子の堀禎一と、師匠に捧げた映画が爆死する頓珍漢な伝統を作らうとした次第でもなからうが、「色情団地妻 ダブル失神」(2006/脚本:尾上史高・堀禎一/主演:葉月螢・冴島奈緒)ほどではないにせよ、今回もどうにもかうにも芳しくない。何はともあれ、とりあへず出て来る夫婦が二組揃つて機能不全。ワーギャー姦しいばかりの和田光沙のキレ芸は無論芸になどなつてをらず、誘爆した森羅万象までもが割を喰ふ始末。あの森羅万象を巻き込むに足る、破壊力といふ言ひ方が出来るのかも知れないが。山田夫婦も山田夫婦で、わざわざ詐欺師をクロスさせておいてさしてどころかまるで展開が転がらないとあつては、残されるのは尺こそ妙に潰した癖に、あんまり脱ぎもしない三番手、ついでに二番手も殆ど脱がないけれど。こんなザマならば本筋に下手に首を突つ込んでみせたりせずに、夫婦生活だけこなして捌けて行く方がピンク的には余程誠実なのではなからうか。小林悟―なり温泉映画といへば新田栄―の逆説的にストイックな仕事を想起するに、さういふ感は強い。ベタな手口に皆が皆コロッとチョロ負かされる内に、しずくと珠美の相克―といへるほどの代物でもない―は七十分間結局半歩たりとて前にも後ろにも進まず。回数のみ捕まへれば三戦―+風呂―とその限りに於いては順当ともいへ、友田彩也香の濡れ場は何れも短く、腰から下の琴線を激弾きする決定力にはほど遠い。そもそも、枕上等といふ造形にしてゐるからには、しずくの当該シークエンスは潤沢に設けて貰はぬでは話が始まらない。始まりもしないものが、満足に終る訳もなく。物語が盛り上がりも深まりもしない上に、女の裸さへ物足りないと来れば八方塞がるほかになし。思はせぶりなだけの友田彩也香と、喚き散らすだけの和田光沙のカットを除けば、後に残るはビリングの上昇に素直に呼応し、若干前に出た印象もなくはないみおり舞の存在感と、自身も地方として出撃する、鈴姐さんのサマになりつぷりくらゐか。因みにこれ見よがしな名義の東中野リズ子の正体とは、小林悟夫人の初枝さん(a.k.a.隆見夏子)。現に三味線の師匠でもあるらしく、サマになるのも納得であるのはさて措き、伊達でなく戦つて死んだ最終作も介錯した竹洞哲也に、斯様な裸映画はおろか裸の劇映画にすらなり損ねた一作を捧げられた、泉下の大御大の御心や果たして如何に。


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 「未亡人女将 じゆつぽり咥へて」(2015/製作:多呂プロ/提供:オーピー映画/監督・脚本・出演:荒木太郎/撮影・照明:飯岡聖英/編集:酒井正次/音楽:宮川透/助監督:三上紗恵子、他一名/撮影助手:宇野寛之・宮原かおり、他一名/応援:小川隆史/制作進行:小林徹哉・佐藤選人/スチール:本田あきら/録音:シネキャビン/仕上げ:東映ラボテック/タイミング:安斎公一・小荷田康利/出演:谷原ゆき・星野ゆず・白音幸子・那波隆史・津田篤・冨田訓広・野村貴浩・縄文人・春風亭傳枝・西村晋也・函南会の皆さん)。全く綺麗な見易いものであつたにも関らず、大容量かつ高速のクレジットに惨敗する。出演者中春風亭傳枝が、ポスターには春風亭伝枝、函南会の皆さんは本篇クレジットのみ。
 前作初御目見えの立体ロゴ開巻、現状ブッ千切り、歴史的にも出来が群を抜いてゐるのではなからうか。
 “てはじめにお通しをどうぞ。”と、尺八を吹く谷原ゆきを、臍辺り視点で見せてタイトル・イン。開店一周年に沸く割烹飲み屋「せんらく」(鮎楽とも/所在地:静岡県田方郡函南町)が、一転凍りつく。女将の徳永和子(谷原)の夫(津田)が「せんらく」に駆けつける道すがら、車に轢かれ急死したといふのだ。津田篤含め医者の家系で、元々水商売の女との結婚に難色を示してゐた徳永家から和子が無下に籍を抜かれる一方、津田篤に重過失が認められ、刑事責任は問はれなかつた交通事故の加害者・水島(那波)は謝罪だか贖罪の意思を示し、招かれざる「せんらく」に通ひ詰める。
 出演者残り、プーッ☆とむくれた膨れつ面が芸になる星野ゆずは、「せんらく」の看板娘・あやか。二戦目となる冨田訓広が、あやかの彼氏・稔。野村貴浩・春風亭傳枝・西村晋也は「せんらく」常連客要員メインのカウンターに陣取る三馬鹿、函南会の皆さんがその他頭数。2009年第一作「人妻悲恋 巨乳みだれ泣く」(脚本:荒木太郎・三上紗恵子/主演:はるか悠)以来の御無沙汰登板よりも、十一月末飛び込んで来た死去の報になほ一層驚かされた縄文人は、津田篤の父・才蔵、荒木太郎が兄の英俊。縄文人に話を戻すと、死期が迫つてゐたやうには特に見えない。因みに縄文人に加へ、春風亭傳枝といふのも真打昇進を機に改名した、2006年第二作「桃色仁義 姐御の白い肌」(脚本:三上紗恵子・荒木太郎/主演:美咲ゆりあ)以来となるex.滝川鯉之助。そして薄味にリファインした美波輝海(a.k.a.大貫あずさ・小山てるみ)のやうな白音幸子が、事件後解消した水島の婚約者・エリカ。
 荒木太郎の2015年第二作は、三作続いた闇雲突破感路線から派手に旧態に後退した、ネガティブな意味での問題作。エクセスライクな主演女優も兎も角、那波隆史を男優メインに据ゑた配役が素直に災ひし、演出部・俳優部が共倒れる非力に、主眼たる筈の和子と水島のメロドラマが全く以て形を成さない。それ以前に、あやかと稔の濡れ場に傍らから春風亭傳枝が活動弁士としてべんべん邪魔臭いことこの上ない口上をつける、いはゆる荒木調ならぬ荒木臭の完全復活が年間最大級の大悪手。この男は女の裸を愉しむのに些末な意匠は不要でしかないことを、終に理解せぬまゝ死ぬものと見える。三馬鹿がポップに膨らませる、未亡人女将がじゆつぽり咥へて呉れるエロ妄想はそれなりに扇情的ではあるものの、当の三馬鹿が貧相で画にならず、和子と水島が逢瀬を重ねる、コーヒーハウス「ルパン」(所在地:静岡県沼津市双葉町)の画期的に魅力的なロケーションのほかには、見所を探すにも苦労を覚える寂しい始末。

 ショッパイ映画本篇はこの際さて措き、残る、どころか最も重大な問題は。予告を偽り脱いで絡むはおろか、西藤尚が賑やかしに出て来すらしない点。

 嘘ついたね、

 僕達を騙したね><


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、「肌の隙間」(2004/製作・配給:国映・新東宝映画/製作協力:Vシアター/監督:瀬々敬久/脚本:佐藤有記/企画:朝倉大介/プロデューサー:衣川仲人・森田一人・増子恭一/音楽:安川午朗/撮影:斉藤幸一/録音:山口勉/編集:酒井正次/助監督:坂本礼/監督助手:伊藤一平・菊池健雄/撮影助手:鏡早智・柴田潤・花村也寸志/録音助手:黄永昌/編集助手:今井俊裕・矢吹英理香/スチール:夏野苺/制作:永井卓爾/メイク:島田万貴子/衣裳:半田さち子/特殊メイク:西村喜廣/キャスティング:小川真司/タイトル:道川昭/タイミング:安斎公一/整音:福島音響/現像:東映ラボ・テック/協力:田尻裕司・榎本敏郎・堀禎一・松本唯史・清水雅美・田山雅也、他/出演:不二子・小谷健仁・伊藤洋三郎・飯島大介・三浦誠己・佐々木ユメカ・須合将太・岩田治樹・原尚子・吉村実子)。出演者中、三浦誠己から原尚子までは本篇クレジットのみ。
 ヘルメットもワンピースも赤い女が危なつかしく蛇行運転で転がす、ぐつたりとしたタンクトップの少年と二尻の赤い原チャリ。改めて観てみると、バックミラー越しとはいへ佐々木ユメカが案外明確に見切れる車が、苛立ちながら原チャを追ひ抜く。須合将太が、車の中から振り返り二人を目で追ふ男児か。どうやら失神してゐる、少年の腕は女の腰の前で縛りつけられてゐた。女はダウン症の平井妙子(不二子)で、少年は妙子の甥の秀則(小谷)。二度の転倒を経て、妙子は原チャリを無体に放棄。秀則は初めて会ふ祖母にして、妙子と秀則の母である姉・ユキコ(一切登場せず)の母親(吉村実子/苗字は多分鈴木)宅に辿り着く。鈴木家のテレビは、ユキコが殺害された事件を伝へてゐた。世間が事件の犯人を、秀則を連れ失踪した妙子と目してゐる一方、実際にユキコを殺めたのは、息子である秀則であつた。
 配役残り伊藤洋三郎は、理容鈴木を後にした妙子と秀則を拾ふ、自動車を使つての移動アイスクリーム売り、三浦誠己は一行が立ち寄るガソリンスタンドの店員。伊藤洋三郎も通過、二人は無人の山荘に転がり込む。ほかにそれらしき人影も見当たらないゆゑ恐らく、原尚子は里に下りた秀則が足を踏み入れた民家に、帰宅する女学生か。山荘にて自害を図つた秀則を抱へ、妙子はニューシネマ感覚でトラックの荷台に忍び込み東京―か横浜かその辺り―に舞ひ戻るだか流れ着く。飯島大介はいはゆるテント村にて二人を匿ふ、秀則の腹の傷を縫合するスペックも持つ妙に逞しい浮浪者、岩田治樹もホームレス要員か。
 公開当時故福岡オークラで観て以来初めて再見した、問題作「トーキョー×エロティカ 痺れる快楽」(2001)から更に三年の時を隔ててのゼゼ・ラスト・ピンク。リアルタイム以降―ピンクの―小屋で再映した話も聞かない今作が、何でまたこの期に地元駅前ロマンに着弾したのかは清々しく計りかねる。
 瀬々敬久ピンク映画最終作といつて、より直截には「ピンク映画か、これ?」といつた感触。不二子の濡れ場は思ひのほかそれなり以上に設けられはするものの、女の裸に脊髄反射で棹を立てられるほどピュアでなければ、ヒリヒリとしかしてをらず扇情的な代物では凡そない。裸映画であることを初めから否定した態度に関しては矢張り不誠実の誹りも免れ得まい上で、素面の劇映画としての主眼はダウン症の叔母と母殺しの少年の、絶対的な喪失感がグルッと一周しかねない逃避行。ビリング頭二人のギリギリした芝居には圧倒されつつ、映画のパンチを喰らひ、銀幕のマットに沈むまでには至らなかつた。吉村実子―と伊藤洋三郎―の退場のぞんざいさ加減以上だか以下に今回観返してみて首を傾げたのが、妙子が頑なに目指す“がいこく”感を漂はせなくもない、何処でもなさぶりが逆にサマになる片田舎から、妙子と秀則が最終的にそこいらの東京近郊に帰つて来てしまふ、突き抜きかけたロード・ムービーの、進路を安んじて塞ぐ謎行程。繁華街の真ん中で叫んだ絶望が画になるのは、世界が滅んだSF映画か人類が―ほぼ―絶滅したゾンビ映画くらゐなのではなからうか。

 それから、何度観ようと相変らず、安川午朗が何の仕事をしてゐたのか俺の耳にはチンプンカンプン、馬鹿には聞こえない音らしい。


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