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真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「性器の大実験 発電しびれ腰」(2017/制作:旦々舎/提供:オーピー映画/脚本・監督:山﨑邦紀/撮影:小山田勝治/撮影助手:伊藤尚輝/照明:ガッツ/録音:山口勉・廣木邦人/助監督:小関裕次郎・江尻大/編集:有馬潜/音楽:中空龍/整音・音響効果:若林大記/録音スタジオ:シンクワイヤ/ポスター撮影:MAYA/仕上げ:東映ラボ・テック/協力:バイブ☆マイスター 桃子・pop life department m's・LOVE PIECE CLUB・SSI JAPAN・Sex Toys Wild One since 1991・VIBE BAR WILD ONE/出演:東凛・西内るな・酒井あずさ・山本宗介・永井聖二・細川佳央)。照明のガッツは、守利賢一の変名、しかしEJDがKSUの下につくのには軽く驚いた。
 抜けるやうな青空を背負つた送電鉄塔、からカメラが下パンすると、麓には赤い革のジャケットが映える東凛。海星(ひとで、ではなくしてうみほし/東凛)が鉄塔に向かつて「あなたは私のライバルよ」と宣言するや耳慣れぬテクノ起動、アカヒトデの画像にタイトル・イン。同じ主演女優が、前作では東京タワーと結婚してゐたにも関らず、鉄塔に“あなた”と呼びかけるのはまだしも今回は好敵手。擦れ合ふ連続と正反対の非連続とがパチパチ散らす火花に、観れば観るほど面白い、量産型娯楽映画の神髄を見ゆる。
 “さよなら、男根。チンコなんて、もう要らない”を謳ひバイブ☆マイスターとして活動する海星が、旗印を偽らず自らバイブでオナニー。首には安普請の銀のベルトが巻かれ、傍らには随時点灯する三基並んだプラズマボールと、電気ケトル。事後、海星は自力で淹れたコーヒーを愉しむ。“初めに睾丸ありき”なる形而上学を標榜するマスキュリズム団体、「睾丸系男子ボールズ本舗」。代表のボールズ(細川)の下に、結婚十年の配偶者から未だ夫婦生活でエクスタシーに達したことがない旨を告白され、ショックを受けた鮭尾(永井)が相談に訪れる。一方、鮭尾の妻である香魚子(西内)は香魚子で、海星のカウンセリングを受ける。男と女の腐れ縁的にドサ回りを続ける、海星の先輩で歌手の海月(酒井)と、そのマネージャーのメバル(山本)も海星の前に。最終的には獄死した、師匠からも嫌はれたフロイト一門異端の精神分析学者、ヴィルヘルム・ライヒ(1897~1957)。緊張→荷電→放出→弛緩のプロセスで、性的絶頂に際し体内で発生した電気が体外に放出される。ライヒが唱へた「オルガスムの法則」に基づいた、オナニーによる文字通りの自家発電で日常生活に使ふ電力を賄ひ、究極的には脱原発の大志をも目論む海星は、香魚子らとの出会ひなり再会を通して男女のセックスによる発電量にグルッと一周して注目、ボールズに接触を図る。ところでヒトデが正真正銘全篇を貫く主モチーフたる所以は、雌雄同体あるいは卵だけによる単為生殖、更には分離した分体の再生と、ひとつの個体だけで増殖し得るヒトデの特性に向けられた海星の羨望。さういふ芸当もヒトデくらゐだから出来るんだよといふ無粋なツッコミは、控へるべきだ。
 1995年第一作「痴漢電車 覗いて嗅ぐ!」(山崎邦紀名義/主演:石原ゆり)、翌1996年第一作「痴漢電車 痴女丸出し」(山崎邦紀名義/主演:白石奈津子/未見)に、1998年第一作「痴漢電車 おさはり多発恥帯」(主演:篠原さゆり)。年末封切りの次作「痴漢電車 変態の夢と現実」(主演:東凛)で二十年ぶり!四度目となる、大蔵伝統の栄えある正月痴漢電車を射止めた山﨑邦紀の2017年第一作。因みに山﨑邦紀は痴漢電車自体、「おさはり多発恥帯」以来。といふか山﨑邦紀どころか、実は浜野佐知も1996年ピンク第三作「痴漢電車 貝いぢり」(脚本:山崎邦紀/主演:永尾和生)を最後に痴漢電車から離れてゐるゆゑ、旦々舎単位で二十年ぶりの痴漢電車となる、松岡誠のデビュー作を等閑視するならば。
 オーピーとの手打ち以降ノリッノリで快走する山﨑邦紀が、1996年ピンク第三作「性感治療 いぢり泣く」(山崎邦紀名義/主演:永尾和生)を原典に、大好きなライヒ大先生―今だとライヒ役に太三で、映画にも出せさうな気がする―のオルゴン理論を華麗に援用した脱原発ピンクに挑むとあつては、俄然期待も膨らむ、ところではあつたのだけれど。またしても肩に余計な力が入つてか、“当時”仕損じた2012年第一作の放射能ピンク「人妻の恥臭 ぬめる股ぐら」(坂口安吾『白痴』+『風博士』を翻案/主演:大城かえで)のリベンジはならず。オルガスム発電なる奇想中の奇想まではいいとして、問題がその奇想を十全に通さうとするあまり―ボー本のキン冷法に関しても―説明過多に陥り、これで尺がフィルム時代の60分であつたならば全体がキュッと締まる望みがまだ繋がれてゐたのかも知れないものの、如何せんテンポが悪い。原発の返す刀で、海星が改めてチンコに決別するラストは、東凛の爽快な突破力も借り形になつてゐなくもないにせよ、そもそも事そこに至る展開そのものも薄く、終始マッタリと間延びした印象が兎にも角にも禁じ難い。重ねて、あるいは加へて。序盤早々火に油を注いで露呈する致命傷が、野村貴浩の歯を治した代償に、華を地味な一般人レベルにまで抜いたが如き永井聖二。ただでさへ最小限の頭数に開いた大穴は否応なく、我等がナオヒーローこと平川直大がゐて呉れたらといふのは、ファン心理の牽強付会に止(とど)まるものでは必ずしもあるまい。そんな中でも見所は、多彩な提供元に支へられた、濡れ場を彩るジョイトイの数々。海星が香魚子に施す、Happyプッチンプリン大の容器を乳房に被せた上で、乳輪ごと吸ひ上げた乳首を四個の極小ローターで責める器具が、実際にスイッチを入れた途端アンアン大声で喘ぎ始めるほど気持ちいいのか否かは兎も角、画的に実にどエロくて素晴らしい。
 更にもう一吹き、蛇足気味の野暮を。海星が実用化にまで漕ぎつけたオルガスム発電について再度整理すると、性的絶頂の際放出された電気はそれだけでは微弱ゆゑ、日常生活に供するには“増幅器”―劇中用語ママ―でアンプする要があるのだが、ところでその増幅器とやらは、熱力第一法則には反してゐないのか?といふ脊髄で折り返した素人考へが、最大のネックではある。

 更に更にもう一吹き、今度は蛇足ではなく、2018年のピンク映画を左右しかねない重大特報である。二十九日公開の「痴漢電車 変態の夢と現実」に於いて、何と岡輝男が「露出願望 見られたい人妻」(2014/脚本・監督:国沢☆実/主演:あいださくら)以来の電撃大復帰を遂げる。横浜の映画館―ジャック&ベティ辺りか―で偶々ミーツした浜野佐知が声をかけ、出演が決定したとのこと。そんな・・・まるで、まるで映画のシークエンスみたいな話ぢやないか!


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 「うぶ肌の愛人」(2000/製作:小林プロダクション/配給:大蔵映画/監督:小林悟/脚本:山瀬よいこ/撮影:飯岡聖英/照明:ICE&T/編集:井上和夫/美術:飛鷹純/助監督:竹洞哲也/スチール:佐藤初太郎/監督助手:加藤義一/撮影助手:堂前徹之・板倉陽子/タイトル:長谷川プロ/録音:シネキャビン/現像:東映科学《株》/協力:新宿セーラーズ 03-5273-8799/撮影協力:劇団華/出演:吉沢綾・夏目麻美・須賀美ゆり・南けい子・根本ひろみ・宮本妙織・山田和美・小野有美・島貫孝子・小澤ひとみ・及川亜希子・松永由佳子・剣幸志・中村総司・柏原秀隆・高木信弘・坂入正三・港雄一)。出演者中吉沢綾がポスターには吉澤綾で、宮本妙織から高木信弘までは本篇クレジットのみ。
 机の下、男の足が女の和服の裾を乱してタイトル・イン。裸映画的に小洒落た開巻ではありつつ、悪くないのはここまで。そこまでなのかよ、勝負つくの早過ぎるだろ。渋く煙草を傾ける男は会社社長の横井ヨウジ(港)で、派手なネイルが和装に似合はない女は、十六年関係の続く愛人のサトミ(夏目)。横井の娘の菜香子が、実の母親よりもサトミに懐いてゐる外堀を埋めた上で、横井はサトミに、妻のユキエから離縁を切り出された本題をぶつける。明けた先はまさかの、多分加藤義一の選曲によるデスメタルが爆音で鳴るビアンバー。菜香子(吉沢)はカウンターから見初めたボックス席のキヨコ(須賀美)と、手洗ひにて情を交す。事後、菜香子とは懇意のバーテンダー(根本)に菜香子がバイである旨を聞いた、真性ビアンのキヨコは匙を投げる。ところで菜香子の両刀設定には、主演女優の絡みの回数を自然に、あるいは自堕落に増やす以外の意味は特にない。
 闇雲に膨大な俳優部、配役残り宮本妙織から松永由佳子までがビアンバー要員。剣幸志から高木信弘までは、サトミが横井に持たせて貰つた居酒屋の客要員。特定出来たのは、サトミの店から最後に捌ける剣幸志のみ。南けい子が編集長の職につくユキエで、何か怪我でもしたのか左頬に大きな絆創膏の目立つ坂入正三が、ユキエの間男で出入りのカメラマン。
 どういつた縁なのかものの弾みか、前作薔薇族「炎馬の如く」に続いてライターの山瀬よいこを脚本に迎へたピンク限定で小林悟2000年第三作。謎の大量動員に面喰ふのは、ピンクの観方が卦体な当サイトの勝手にしても、展開自体もある意味順調に迷走、逆の意味だ。レース越しの被写体にソフトフォーカスかと見紛ふほどのハイキーな照明を当てるとなると、飯岡聖英がまるで坂本太と下元哲を足して二で割つたやうな画面で撮りあげる菜香子とサトミが出し抜けに大輪を咲き誇らせる百合が、普通に見てゐて完ッ全にクライマックスにしか見えないテンションにも関らず、尺をまだ二十分残しやがるんだな、これが。以降実はサトミの兄でもあつた予想外か藪蛇な劇中世間の狭さを炸裂させるサカショーに、何故か菜香子が籠絡される最早蛇だか百足だか判らなくなる一幕を経て、改めて締めを担ふのはサトミと松井。締りなんぞしないのは、この期にいふまでもあるまいが。ことここに至つて露呈する今作の致命傷は、恐らく山瀬よいこが少なくとも十全に表現出来てはゐない、父娘双方向に対するサトミの複雑な心境を、どうせといふか畢竟とでもいふか、小林悟も小林悟でてんで理解してをらず、となると当然、見るなり観てゐるこちらにも伝はる訳がない。ないまゝに、最終的には濡れ場で作劇を放り投げるのが何時もの大御大仕事。この時期の映画となると故福岡オークラで観てゐておかしくはない筈なのだが、欠片も残つてゐなかつたのか、全く以て初見の印象。それとも、素直に寝てたのか。


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 「ももいろ絵本 イッてみよう、ヤッてみよう!」(2017/制作:VOID FILMS/提供:オーピー映画/脚本・監督:山内大輔/撮影監督:田宮健彦/録音:大塚学/特殊メイク・造形:土肥良成/特殊メイク・造形助手:新井衣莉果・鈴木雪香/編集:山内大輔/音楽・効果:Project T&K・AKASAKA音効/助監督:江尻大/監督助手:小関裕次郎/撮影助手:秋山太郎・鎌田輝恵/スチール:本田あきら/協力:北町アーケード商店街/仕上げ:東映ラボ・テック《株》/出演:涼川絢音・川瀬陽太・加山なつこ・ほたる・森羅万象・津田篤・和田光沙・浅場万矢・太三・鎌田一利/エキストラ協力:他一名、川崎紀里恵・中野未穂・しじみ軍団、もう一名)。出演者中、浅場万矢と鎌田一利は本篇クレジットのみ、オープニングで飛び込んで来るクレジットに不意を突かれる。
 開巻はクレヨンで描かれた、泣いてゐるお姫様。以降全篇を貫く童話が起動、お城に帰る途中怪物に攫はれたお姫様は、以来怪物の館で暮らしてゐた。ペットショップの店先、兎の入れられた籠をガスマスクにロリータ・ファッションの、然れども少女ではなく成人の女が覗き込む。北町アーケードの表を横断したガスマスク・ロリータことミカヨ(涼川)は、一軒家に帰宅。玄関上つて左手の和室の障子には、“ユリ子が寝てゐます”の不穏な筆致の注意書きが。そこはミカヨにとつて、“入つちやダメな部屋”だつた。赤いランドセルも転がる、家畜のの如き見るからキナ臭い一室挿んで、一軒家の主・シズエ(ほたる)が、電話で伊藤和子の殺害を―和子の―姑から請け負ふ。買つて来た安コーラとスナック菓子を手に、ミカヨはシズエの息子・タカシ(津田)が引きこもる部屋に。異形の蛙を飼ふタカシはミカヨを犯し、その間もミカヨは、怪物に苛められるお姫様が助けに現れる王子様を待ち侘びる、クレヨンを走らせ続けた。和子(浅場)を三沢(森羅)とのコンビで無造作に殺した吉井知治(川瀬)は、血塗られた下着のまゝシズエの店・パブスナック「キャッスル」に。三沢相手には死ぬ死ぬとよがり狂つたシズエが、吉井に対してはさして燃えず。キャッスルのホステス・セツコ(加山)にも、ハゲでデブの三沢の方がモテるのに劣等感を拗らせた吉井は、カウンター席で三沢をメッタ刺す。
 配役残り和田光沙は、十八年前に起こつた当時小学一年生の佐藤ミカヨちやん行方不明事件を伝へるTVレポーター。とかく物騒なネタばかり担当した挙句、恐らく殉職する、一旦。鎌田一利は、太三ファースト・カットの露払ひを務める白杖の男で、太三が、三沢の代りにシズエが連れて来た、吉井の新しい相方・小金井太郎。五歳の子供も含めての、一家殺しで十五年服役しての社会復帰、裏だけど。流石に子供は殺せないとする吉井に対し、小金井曰く“命は皆平等だ”。高橋がクライアントの白プッシャー始末に、二人で高架下に向かふ。その他エキストラ部隊はほかにそれらしき人影も見当たらないゆゑ、概ねキャッスル店内要員か。吉井が三沢を完全にコロさうとする惨状を、悲し気に見やる姿がピンで抜かれるホステスは川崎紀里恵。暗い画に弱い前田有楽の映写では、しじみを確認出来ず。それとこれキャッスルは、物件的にはステドだよね?エキストラ隊女優部は誰か一人、後ろに回つたタイトル・イン直後のオーラス、バラシ部屋の片隅にてライズする怪人物、のライズ前を兼務してゐるやも、涼川絢音でなければ。またこの多義的に色恋沙汰貞子も彷彿とさせるオーラス・ライズ(大絶賛仮名)がよく判らん、ユリ子は部屋の外に出られる状態にはないのでは、シズエが和子をバラす際には既にそこにゐるし。改めて後述するが山内大輔はどうして斯くも、狐につまゝれるやうな映画の撮り方しか出来ないのか。
 前作「ぐしよ濡れ女神は今日もイク!」(朝倉ことみ引退記念作品)でひとつのピリオドを打つた、山内大輔2017年第二作。吉行由実が周年記念作「恋するプリンセス ぷりんぷりんなお尻」(2016/北京八と共同脚本/主演:羽月希)を漫然と持て余すのを尻目に、囚はれの姫君を、白馬に跨りこそしないものの王子様が救ひだす物語をまんまと編んでのけた。といふのは、為に吹く与太として。
 外出時にはガスマスクを装着する、心が少女どころか幼女のヒロイン。尋常でないおどろおどろしいスメルを爆裂させ続ける、開かずの間のマクガフィン。ピンク離れした死体処理描写も撃ち抜いての、人の命を喰ひものにする者共。女の裸に鼻の下を伸ばして垂涎しようだなどと、邪気のない下心は陰惨な世界観の前に、無惨に粉と砕かれる。ピンク映画的にはある意味ストイックなのも通り越した一種のダンディズム、あるいはより直截には不誠実に関しては、この期に難じるだけ野暮といふもの、初めからその手の映画ではない。その上で、プリミティブな生命力と殆ど同義の、吉井の粗野な戦闘力は案外痛快で、シズエと三沢が偶さか心を通はせる一幕は、高い空に抜ける効果的なロケーションの力も借り、クレヨン臭さと血の匂ひの濃厚な地獄絵図に一筋の風を通す。既にそこそこ以上の、映画的興奮も兎も角。無体な非業の死を遂げたミカヨの怨念が、宇宙光線となつて降り注ぐ。レス・ザン・ミニマムなバジェットを技術と気概とで華麗に覆す、ピンク史上最大級の超風呂敷をカッ広げた世界破滅エンドには、途轍もない映画を観たと小屋の椅子の上で引つ繰り返るほどの衝撃を受けた。かと、思つたのに。前作で引退記念作といふジャンルを感動的に完成させたのも束の間、折角仕損じた大蔵上陸作「欲望に狂つた愛獣たち」(2014/主演:みづなれい)を挽回する絶好の好機であつたにも関らず、どうしても山内大輔は、真直ぐな作劇が嫌で嫌で仕方がないらしい。些末な作家性とやらに拘泥するあまり、エモーションの大魚をみすみす釣り逃がしてゐるやうにしか映らないのだが。あるいは寧ろ、前作に関しては朝倉ことみの花道を飾る前提が、一種の効果的な制約として機能したとでもいふ寸法なのであらうか。前作でひとつのピリオドを打つたと口火を切つておいて、我ながら筆の根も乾かぬ内にこの御仁全然変つてない、ビリングの頭が別の名前になつただけだ。
 備忘録< 三沢は実はシズエ元夫。宇宙光線で死者がゾンビ化する世界破滅エンドを引つ繰り返して、ミカヨと吉井でキャッスル営業中。オーラス・ライズは(確か)左目に眼帯を当てた涼川絢音


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 「いんらん家族 花嫁は発情期」(1992/製作・配給:新東宝映画/監督:深町章/脚本:周知安/企画:伊能竜/撮影:稲吉雅志/照明:伊和手健/編集:酒井正次/助監督:田尻裕司/監督助手:本多英生/撮影助手:斉藤博/照明助手:小田求/現像:東映化学/録音:銀座サウンド/スチール:津田一郎/出演:桜井あつみ・摩子・しのざきさとみ・神戸顕一・荒木太郎・池島ゆたか)。脚本の周知安と企画の伊能竜は、それぞれ片岡修二と向井寛の変名。
 タイトル開巻、住宅街のロングにプップカプーとコンバット風な劇伴。巫女装束におどろおどろしい白塗りの霊媒師・愛子(摩子)が、こんちこれまた津田一郎の自宅に到着する。愛子を出迎へたといふか招いたのは、当家・園山家に半年前に入つた明子(桜井)。家内をムームー唸りつつ見回した愛子が、やをら奇声を発し大麻(おほあさ)を乱舞した上での一言が、「間違ひない!」。まあ、それは間違ひないんだろねと思はせるに足る妙な説得力はさて措き、明子が訴へた通り、園山家には淫乱の霊が取り憑いてゐるといふのだ。上司の薦める縁談で異性との交際経験すらないまゝ見合結婚した明子に、夫の渉(神戸)は諸々の過剰な性交渉を強要。同居する義父の高志(池島)に窮状を訴へてはみたものの、高志にも犯されるに及んで、明子は週刊誌で知つた愛子を頼つたものだつた。既視感?少し待つててね。
 配役残りしのざきさとみは、明子がゐるにも関らず、渉が家に連れ込むホステス・悦子。荒木太郎は愛子の除霊の過程で現れた、既に故人である高志の母の、祝言直後に出征し戦死した前夫。何処かで聞いた話?だからもう少し待つててね。
 深町章1992年第七作は、十三年間に全七作が製作された「いんらん家族」シリーズの第三作。改題後の偽「いんらん家族」に関しては、あるとしても知らん。改めて沿革をまとめておくと、1991年第一作「いんらん家族 義母の寝室」(脚本:周知安/主演:井上真愉見)と第七作の「いんらん家族 姉さんの下着」(脚本:周知安/主演:浅野桃里)が、「いんらん家族」シリーズ第一作と第二作。今作挿んで、第四作が1993年第五作の「いんらん家族 若妻・絶倫・熟女」(脚本:深町章/主演:石川恵美)、第五作の1994年第五作「超いんらん家族 性欲全開」(脚本:双美零/主演:林田ちなみ)は未見であるが、DMMの中にあるのでその内見る。第六作が少し間を空けて、1997年第八作「いんらん家族 好色不倫未亡人」(脚本:深町章/主演:槇原めぐみ)。正直、2003年第五作「いんらん家族計画 発情母娘」(脚本:岡輝男/主演:麻白)をシリーズ最終第七作にカウントするのは、我ながら些か無理があるやも。
 初心な新妻が見舞はれた桃色の悲劇は悲しい真実を経て、ケロッと喉元過ぎた喜劇に帰結する。幼さも残す容貌と、可憐さと絶妙な肉感性とを併せ持つ肢体とのスレッスレの隔離が堪らない桜井あつみを主演に据ゑ、脇を固めるのも全盛期のしのざきさとみに、いはずと知れた絶対美人の摩子。一級の三本柱を擁し何れも訴求力の高い濡れ場の連打が、尺自体五十三分チョイと一目散に大オチ目指して駆け抜ける。手堅く仕上げられた佳品寄りの小品と、手放しで褒め称へて済まされたならどんなによかつたらうに。
 日本ビデオ販売の「Viva Pinks!」レーベルを、見られるだけ網羅すべく展開中の殲滅戦。初戦で見た1991年第二作「ザ・夫婦交換 欲しがる妻たち」(脚本:周知安/主演:川奈忍)が、1998年第七作「隣の女房 濡れた白い太股」(1998/主演:久保新二)と全く同じ映画。より直截には、深町章が周知安(=片岡修二)に書かせた脚本を自脚本と称して再利用してゐる事実に、ブチ当たつた己の妙な引きの強さに感心しかけたのは、引きの強さどころか、単なる確率の高さに過ぎなかつた。今回も今回で、2005年第五作「変態家族 新妻淫乱責め」(主演:山口玲子)が、差異の方が余程少ないリサイクル映画。差異といふか、殆ど誤差だ。苗字が違ふだけで役名まで同じ、ウーヨーキーゲンレーホーウーヨーミナーと、要は南無妙法蓮華経を引つ繰り返した愛子が唱へる呪文も同じ。明子が訴へる園山家の異常度を、段々と度を越すに従つて相撲の番付に譬へるのも一緒。何より悔しかつたのが、先に「変態家族 新妻淫乱責め」を観て佐々木ユメカにアテ書きしたかのやうな名台詞だと感動した、「アタシとヤッていいつて誰が決めたのよ?」が前後の遣り取りまで含めそのまんま。何がアテ書きか、アホか、俺は道化か。異なるのは舞台が津田スタから今をときめく伊豆映画の聖地・花宴に移つてゐるのと、渉と高志のアドリブ気味の舌先三寸に、大きくは渉が高志の眼前で明子を嬲るシチュエーションくらゐ。あ、あと愛子が明子の話を聞くのが、「新妻淫乱責め」ではパイプ椅子を置いただけの海岸といふ画面(ゑづら)がシュールな安普請。唯一の救ひは元映画に挙句派手に劣るトナマタに対し、「新妻淫乱責め」は互角に戦へはする点か。何れにせよ、一言で片付けるならば、随分だな、深町とでもいつたところである。とかくこの調子だと、誰も気づいてゐないことはあるまいが又か程度に騒ぎだてしないだけで、まだまだ出て来る気がする。


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 「揉んで揉乳《もにゆ》~む 萌えつ娘魔界へ行く」(2017/制作:ナベシネマ/提供:オーピー映画/監督:渡邊元嗣/脚本:増田貴彦/撮影・照明:飯岡聖英/編集:酒井正次/助監督:永井卓爾/監督助手:小関裕次郎/撮影助手:西村翔・岡村浩代/照明助手:広瀬寛巳/スチール:津田一郎/録音:シネキャビン/効果:梅沢身知子/仕上げ:東映ラボ・テック/カラリスト:石井良太/出演:佐倉絆・里美まゆ・桜ちなみ・ケイチャン・小滝正大・津田篤)。クレジットにもポスターにもないものの、中野貴雄が小道具協力してゐる筈。
 ファンタジー系のエロ漫画でレディースコミック作家を目指す女子大生の和智みくる(佐倉)が、“ぴいういず”とプリントされた謎のジャージの上に、どてらを羽織つてマンガの制作中。顔自体小さいのもあらうが、馬鹿みたいにデカいいはゆるアラレちやんメガネも装着し見るから地味な造形ながら、後にその件を揶揄されると、「ジャージは私の戦闘服よ」といつてのける姿勢は清々しい。俺も二十代までは、ジージャンがダメ人間の戦闘服だと思つてた。作業の手を止めたみくるは、自らの原点たる原典ともいふべき、祖母の代より伝はる飛び出す絵本「まほふ王子の花よめ」を取り出す。王子と花よめの小指が赤い糸で結ばれた絵が飛び出したタイミングで、目覚まし時計が。「行かなくちや」と、慌ててみくるが出撃してタイトル・イン。みくるが向かつた先は、丑三つ時、には見えない薄明るさのカラスノ公園。その時間大きな木の鳥の巣箱に白い花を入れると、魔法講座の通信教育を受けられるとかいふ都市伝説がネット上に流れ、現にみくるは添削を受講中であつた。その日も百点をゲットしたみくるの前に、白馬は潔くオミットしたタキシードに仮面の津田篤が現れる、コスプレか。魔法界「マジカルワールド」の王位継承者を名乗るディラン(津田)は、みくるに「魔法使ひにならないか?」と最短距離の内側を抉る素頓狂さで持ちかける。マジカルワールドから人間界を観察、みくるの左尻にある星型の黒子に注目してゐたディランと、みくるがいい雰囲気になりかけたところに、ディランに要はヤリ逃げされた魔女・アザリア(里美)が来襲。魔法でディランを先つぽに張形のついたバトンに変へ、持ち去つてしまふ。夢オチ風に目覚めたみくるの前に、今度は魔法学校の教師・キャサリン(桜)が現れる。ディランの筆も卸したキャサリンは、チンコに星型の黒子のあるディランに、“星型の黒子を持つ者同士は最高に具合がいい”との伝承を吹き込む。一見節操のないディランの女漁りは、運命の人捜しでもあつた。ディランを元に戻すにしても、キャサリンは魔力が衰へる齢につき、みくるがアザリアと対決する格好となる。ところで中野貴雄が協力してゐる筈の小道具といふのは、ディランが星黒子の伝承を知る、キャサリンに見せられた多分魔法大辞典的なハードカバーが、ピンサロ病院シリーズ第三弾「ピンサロ病院3 ノーパン診察室」(2000/脚本:中野貴雄/主演:黒田詩織)で登場したマグレアのベアトリス写本、物持ちいいな。
 キャサリン曰く魔力を得るには男の性的エネルギーを取り込む必要があるとの如何にも、狂ほしく如何にもピンク映画的な方便で、みくるに三つの課題を課す。配役残りケイチャンは、みくるが一つめの課題で飛ばされた山中の修験場にて修行中の、真言ならぬチン言宗(大絶賛仮称)僧侶・珍念、性的エネルギーを抑へ込んでゐる人。小滝正大はみくるが続いて自宅に飛ばされる、今世紀このかたインポの引きこもり・新保俊春、こつちは性的エネルギーを溜め込んでゐる人。
 確かにGARAKU(exウィズ)の名前が何処にも見当たらない、渡邊元嗣2017年第一作。もしかしたら、ぴいういずジャージは昔何かで観てたかな?凡そ二十年続いた山崎浩治とのコンビは残念ながら解消したのか、脚本は前作に引き続き、「未来H日記 いつぱいしようよ」(2001/監督の田尻裕司と共同脚本/主演:川瀬陽太・高梨ゆきえ)以来の超復帰を果たした増田貴彦。尤も更に次作の脚本はといふと、平柳益実の変名ともこの期には何となく思ひ難い、波路遥であつたりもする。
 混同するほどではないにせよ、髪型も体型も似通つた二三番手のキャラが被る点にはバラエティ面での不足も軽く覚えつつ、デジタルの果実もふんだんに享受した愉快な濡れ場の乱打は楽しく見させる。殊に、全盛期、もとい暗黒面に頭頂部まで沈んでゐた時期の清原和博ばりの顔面圧力で、チープか陳腐なギャグも底の抜けたシークエンスをも、異様な説得力で圧着せしめるケイチャン(ex.けーすけ)の働きは出色。古くはジミー土田なり十日市秀悦といつた、三枚目の不器用な純情を感動的に放ち得るタレントの不在は地味でなく厳しいとしても、飛び道具としては捨て難い。一欠片の中身もない展開から、今時二人の小指を結ぶ運命の赤い糸だなどと、苔生したモチーフを臆することなく撃ち込んで来ての、無理から捻じ込むナベモーションにはそれでもグッと来る。さうはいへ、ナベシネマは一見何時も通りのナベシネマなのだが、軽いといふか薄いといふか、些か雑な印象はなくもない。エクストリームに撮りあげた締めの絡みを経ての、チョロいオチに突つ込みを入れて終る軽妙なラストには、師匠である深町章のテイストも透けて見える。ここいらの円熟の境地でファンタ要素を一切排した、コッテコテの艶笑譚も見てみたい気持ちも過りかけたが、ところがさうなると流石に、今時の七十分は幾分長過ぎる。


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 「レイプ秘書 監禁飼育」(1993『白昼レイプ 監禁秘書室』の1998年旧作改題版/製作:プロダクション鷹/提供:Xces Film/脚本・監督:珠瑠美/撮影:伊東英男/照明:石部肇/音楽:新映像音楽/効果:協立音響/編集:井上和夫/助監督:近藤英総/現像:東映化学/録音:ニューメグロスタジオ/出演:幸あすか・佐伯麗子・朝比奈樹里・牧村耕二・木下雅之・羽田勝博)。出演者中牧村耕二が、ポスターには牧村耕治。
 走るスティックを適宜ギターが追ふ、矢鱈とカッコいい劇伴鳴る中、カレンダー的には三連休中の理研南販秘書室に悲鳴が木霊する。営業所所長の杉田(牧村)が、秘書の西條るり子(幸)をレイプする。派手に飛ぶカットに目を疑つてみたりもしつつ、あれを見ろと杉田がるり子に促すモニターに映し出されたのは、パケ写的な幸あすかのヌード写真に続いて、今し方の映像が流れる本篇ママで“西條るり子犯しの淫らな痴態全記録”。1993年当時に、杉田は会社にどんなシステムを構築してやがつたんだよ!といふツッコミ処も兎も角、木に接いだ竹を微塵も厭はぬ唐突か闇雲なモチーフの放り込みやうは、如何にもタマルミックではある。要は、単なる旦那譲りに過ぎぬのかも知れないが。杉田はるり子を三日間犯し倒す腹で、幸あすかの右肩に実際に彫られてゐる蝶の刺青は、愛人関係にある御曹司の常務に入れられたとかいふ設定。杉田が半身のるり子をグイと正対させるのに合はせて、花冠が何かよく判らん書類の上に飛んでタイトル・イン。闇雲なものは下手にしつかり見せる癖に、枝葉ともいへ状況の描写に必要な小道具をどうしてちやんと映さないのか。
 配役残り、事の中途で杉田が移行した手マンの、更に中途で適当に画を繋いで渋谷駅。佐伯麗子と、革のジャケットがカッチョいい羽田勝博が落ち合ふ。ハチ公の足の間から遠くの全然何でもない雑踏にピントを送るカットは、全体何がしたかつたのか。タマルミの巨大な不条理に、撮影部も呑み込まれてしまつたのであらうか。朝比奈樹里は杉田の細君・アイコ?で、木下雅之が、件の御曹司常務。都合二度濡れ場を展開しながら、何処の誰だか欠片たりとて説明しないまゝ尺は勝手に進む佐伯麗子と羽勝が、営業所の事務員多分河合と、その彼氏で元社員の青木と判明するのは、差しかゝるどころか終盤に首まで浸かつた五十分前。仮に、純粋に全篇マクガフィンのみで映画を撮り上げたならば、こんな感じになるのかな。
 日々の糧を食む為の雑業の多忙ぶりに癇癪を起こし、オッ始めてみた珠瑠美殲滅戦も、DMMに残す弾はあと三本となつた1993年第一作。小屋に未見のタマキューが飛び込んで来る奇跡が、今後再び起こることがあるものやらないものやら、やらやら。
 るり子を監禁飼育―何と瞬着で手の平をソファーに固定!―する一方、「一応女房の方にも乗つてやるか」とド外道の杉田が一時帰宅。アイコもアイコで夫婦交換に味を占めるやうな女で、一筋縄では行かない夫婦生活を繰り広げるのを、羽勝と佐伯麗子の第二戦挿んで何と二往復する中盤、映画の底は見事なまでに完全に抜ける。何がしたいのかとかどうする気なんだといつた、疑問を持つた方が負け。珠瑠美の絶対不敗ぶりに改めて圧倒されながらも、超絶の三本柱に支へられ、裸映画としては文句なく安定する。といふか、どうせ物語らしい物語も存在しないのだから、タマキューこそ三十分に短縮してリリースするに最適な素材にも思へる、何時の時代の話してるんだよ。如何にザックザク切つたとて、恐らくでさへなく、出来栄えが対して変りはしまい。プリミティブな意味で予測不能な展開は、理不尽な終盤に突入。のうのうとバレてのけるが、拘束を“劇薬角化皮質溶液ケラチナミン”で強制解除したるり子を、よもやまさか自宅に招いた杉田曰く、ビデオを返して欲しくば、巴戦で嫁を満足させろ。どうすれば斯様な途方もない方便が成立し得るのか、何か人智を超えた大いなる存在に、到底辿り着き難い深遠な謎を投げかけられでもしてゐるかのやうな気がして来た。この亭主にして、この女房あり。“世界一の動物ショー”と称して金魚をるり子の蛤に捻じ込むアイコも、「これは熱帯魚ぢやないのよ、さぞ中で苦しがつて暴れるでせうよ」、熱帯魚ぢやなくても暴れる。便意を訴へたゆゑ仕方なく手洗ひに入れたるり子が、なッかなか出て来ないのにしびれを切らせ、杉田夫婦は不自然か無防備極まりなくも劇中三度目の夫婦生活。この二人、何だかんだ普通にお盛んではある。それはさて措き、その隙に手洗ひから脱け出したるり子は、杉田のビデオで杉田夫婦の営みを撮影しての、ヒットならぬショット・アンド・アウェイ。待てよと不意を突かれた牧村耕二のストップモーションに叩き込まれるENDには、この際完敗を認めるほかはない。完璧、何かもう完璧、タマキューはこれで完璧。正確にいふと、タマキューはこれでカ・ン・ペ・キ、錯乱してんのか。

 一点―だけ―もしかすると正方向に興味深いのが、瞬着で手の平を固定したるり子を、杉田は剃毛、したかと思へば。剃つたばかりの、本当に剃つた即座の土手に付け髭を貼り悦に入る屈折した倒錯性は、性転換した末のパートナーが、男かと思へばビアンの女だなどといふ、アニキとアネキの間を取つてアヌキ・ウォシャウスキーにも通ずるものがあると思ふ。正しくな、グルッと一周した感。


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