真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「痴漢電車 発射オーライ」(昭和56/製作:幻児プロダクション '81 6.作品/配給:新東宝映画/監督:中村幻児/脚本:佐伯京介・才賀忍/企画:才賀忍/撮影:遠藤政史/照明:出雲静二/編集:竹村編集室/助監督:広木隆一/監督助手:石川均・高原賢一/制作進行:柏田憲一/色測:黒沢時雄/撮影助手:下元哲/照明助手:佐藤才輔/音楽:PINK BOX/挿入歌:岩瀬厚一郎/録音:銀座サウンド/効果:内田音響企画/現像:東映化工《株》/出演:青木三枝子・沢田多絵・五月マリア・梨沙ゆり・高井戸欣太・沢木毅彦・岩瀬厚一郎・今泉厚・野上正義)。共同脚本と企画の才賀忍は、中村幻児の変名。それと、高原賢一は元々演出部だつたのか?
 派出所勤務の巡査・山下ツトム(今泉)が運転し、助手席にはツトムの彼女で、交通課のミユキ(潔く女優部には白旗を揚げる)が座るミニパトが麻薬の取引現場に急行する。のは、ツトムの狂言。人気がなく警察の巡回コースからも外れた場所に車を停めたツトムは、挙句に銃まで抜きノー規制で“パトカーの中でオマンコやりたかつたんだ”とミユキに迫る。本当かどうかはさて措き、アンネにつきミユキは尺八。自ら作つた童貞喪失の好機を逃しつつも喜悦するツトムが三発空に発砲、点灯・回転するパトランプ挿んで、電車の車窓から見える高速高架にタイトル・イン。自由過ぎるだろ、昭和。
 クレジット跨いで本篇突入、依然昭和は自由。勤務中なのに電車で女に痴漢したツトムは、降車後上司には電話で適当に不在証明を言ひ包めた上で私服に着替へ、こちらは非番と思しきミユキと目黒エンペラーに直行する。ところが、開巻の一件を入れずとも二人がホテルに入るのは四度目にして相変らず、土壇場になるとどうしてもツトムは勃たなかつた。一方、意を決した様子のハクい女。エツコ(ビリング推定で青木三枝子か)は亭主(野上)の勤務先に乗り込むと、浮気写真と離婚届とを叩きつける。余程腹に据ゑかねたのか、無茶しやがる。ヒット・アンド・アウェイで離脱したエツコと、女房を追ふ亭主が揉み合ふ場に、ミユキとは別れたツトムが通りがかる。その場の勢ひで、ツトムはエツコとタクシーで逃げる格好に。
 配役残りヒムセルフの岩瀬厚一郎は、ツトムとエツコが飲みに行く店の歌手。岩瀬厚一郎は吉本昌弘の下(もと)自主畑、今泉厚は何とサンミュージックのタレント養成所での講師業。今回見知らぬ俳優部の名前を一通りググッてみたところ、この二人が今なほ現役である点には軽く驚いた。ツトム宅に転がり込んだか担ぎ込まれたエツコは、完全に酔ひ潰れる。“今なら出来るかも知れない”とツトムが固唾を呑むタイミングで訪ねて来る高井戸欣太は、ツトムの幼馴染・アキラ。親同士が二年前に再婚したとのことで、ツトムは知らない義妹・ヒロミを伴ふ。実は駆け落ちして来てゐたアキラとヒロミも絡むゆゑ、女優部四人は全員脱ぐ。沢木毅彦は、ツトムが保護するほどでもなく適当にその場を離れさせる泥酔者。
 幾ら好きとはいへ関根和美―は、もう弾がなくなつてしまつたが―や旦々舎、特に好きといふ訳ではないにしても大御大・小林悟や珠瑠美ばかり何時も何時も見てゐるのも我ながらどうかと思はぬでもないので、時には正統派のクラシック。中村幻児でも見てみるべえかと辿り着いたのが昭和56年第六作、DMMのピンク映画chにピンクが三本―とロマポが二本―入つてゐる中で、ピンクと来れば大定番・オブ・大定番の痴漢電車をまづいの一番に選んで見てみた。中村幻児といふと、憚りながら観てゐるのは一本きり。その一作、昭和59年―この年を最後に中村幻児は裸映画から足を洗ふ―第二作「ザ・SM 緊縛遊戯」(脚本:吉本昌弘)がブッちぎりに面白かつただけに期待してゐたものなのだが、これが蓋を開けてみると甚だ平板な出来。唯一冴えが感じられるのは、寝たまゝ起きないエツコをアキラはツトムの嫁かと勝手に思ひ込んだ翌朝。何気ない会話を通してアキラの誤解が解け、関係性が整理される件くらゐか。そもそも、痴漢電車は単なるツトムが女とミーツする純然たる一ロケーションでしかなく、電車痴漢といふシークエンス自体は物語の進行にとつて必ずしも必要ではない。あるいは、電車痴漢を物語の進行に織り込む論理的な労は初めから端折つてゐる。器が痴漢電車である以上、約束事として電車の中で痴漢してみせてゐるに過ぎない。一応ツトムのロスト・チェリーといふ軸があるものの、エツコやヒロミの濡れ場の要込みで暫し右往左往に終始する展開は、一言で片付けると漫然。狭い劇中世間は器用に繋がり、最終盤に至つて漸く、ツトムが童貞を拗らせるのは俄然弾んで来たやうに一見思はせなくもないにせよ、粒の小さな修羅場の果ての、インスタントなドミノ倒しにはちぐはぐ且つ粗雑な印象が強い。二戦目にして早くもといふか何といふか、ある意味至極当然ともいへ、中村幻児にも当たり外れはあるんだなといふのが唯一の収穫。
 女優部配役<ミユキ(五月)・エツコは梨沙ゆり・高井戸欣太=石川均・ヒロミ(沢田)・ツトムが痴漢した女=ガミさん浮気相手が青木三枝子=織田倭歌


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 「隣のうづき若妻 ~スワッピング三昧~」(1995『ザ・夫婦交換 隣の若妻の味』の1998年旧作改題版/製作・関根プロダクション/配給・大蔵映画/監督:川井健二/脚本:森満康巳・川井健二/撮影・伊東英男/照明・秋山和夫/録音・ニューメグロスタジオ/編集・㈲フィルム・クラフト/助監督・森満康巳/音楽・平岡きみたけ/撮影助手・弁田アース/照明助手・瀬川英一/監督助手・江野将康/効果・協立音響/現像・東映化学㈱/スチール・津田一郎/出演:浅野桃里・吉行由美・如月じゆん・杉本まこと・樹かず・平岡きみたけ)。
 エッチラオッチラと、森島か森嶋恵美(浅野)と健太(平岡)が二人で仲良く荷物を運び込む引越し直後の新居。全部運び込んだつもりの健太に対し、だつたら一番最初に入れとけよといふツッコミはさて措き、恵美は一番大切なのがないと騒ぎだす。恵美の一番大切な荷物とは、下着を入れておいた箱。もつと大事なものはないのかよといふ疑問も兎も角、恵美が探しに出ると、アパートの階段下で管理人の一人息子・川上テツオ(キモい造形の樹かず)が、ニヘラニヘラ箱を開けてゐた。正直固まつた恵美の視線に気付いた川上は、パンティを一枚ポケットに突つ込み立ち去る。慌てて箱を回収した恵美が、階段を上がるロングにタイトル・イン。下着の一件と、新婚五日目にも関らず、翌日から健太は一週間の出張。恵美の機嫌は傾きつつ、兎にも角にも夜の営み。絶妙に恵美が未だ性に積極的ではない風情を投げながらも、エッサカホイサカ佳境に至つたところで、アックション!と隣室から馬鹿デカいくしやみ。結局そこで恵美が匙を投げ夫婦生活は中断、健太は臍を曲げる。翌日、出張前夜に致せなかつた健太は不機嫌なまゝ出発。川上が自分のパンティをスーハースーハーしてゐるのを目撃した恵美は、脊髄反射で110番、の途中に再びアーックション!に遮られる。恵美はキレるのを通り越し腹を固める、どうやらアタシ一人でやるしかないやうね。得体の知れない鬱陶しい状況に、立ち向かふことを恵美は決意する。
 配役残り無愛想な吉行由美と癪に障る造形の杉本まことは、隣家の平野夫婦。失業中の亭主がアックションの主、ある意味功を奏してゐるともいへ、杉本まことが連発するアックションが本当にウザい。尺の綺麗に折り返し点に飛び込んで来る如月じゆんは、恵美が頼る大学時代の親友・シズカ。因みに健太は女子憧れの先輩、画面(ゑづら)的には強力に無理がありはしまいか、寧ろ樹かずと平岡きみたけの役が逆でもいいやうな気がする。
 川井健二(=関根和美)1995年第二作、いよいよ本当に正真正銘絶体絶命のフロンティア・ロスト。DMMのピンク映画chに、薔薇族を除けば関根和美の未見作はもうなく、目下新しい弾が放り込まれる気配も感じられない。オーピーのデジタル新作が観られる目処が依然立たない中、加へてフィルム最終作も観てしまつた以上、下手をすると今作が最後に見るなり観る関根和美監督作になるのかも知れないと思へば、何気に絶望感に近いものがある。泣き言を垂れてゐても始まらないので先に進むと、薄気味悪い管理人の息子と、厄介な隣人、ついでに旦那は不在。恵美が置かれた四面楚歌の描写に、普通にストレスが溜まるのは、映画的にそれはそれとしてそれなりに正方向の充実。二番手・吉行由美の濡れ場を未だ温存した上で、出し抜けにオカルト方面に転ぶかに見せた三番手にはまた他愛もない木に竹の接ぎ方をと呆れかけたが、それどころかスコーンと突き抜け大輪の百合を咲かせる仰天展開には、グルッと一周して感動した。問題は、そんなこんなで尺も早終盤。新旧題がともに御丁寧に謳ふ夫婦交換は一体どうするのよと別の意味でハラハラさせられてゐると、予定を一日早めサプライズ帰宅した健太が強引に舵を切る急旋回展開には更に驚かされた、ところが。何だかんだで結構面白かつたのに、力技にせよ何にせよ、折角吉行由美が上手いこと始終を落とし込んだのに。一旦引つ繰り返したものをもう一度引つ繰り返し、かといつて元に戻るのかといふとさういふ訳でもなく、わざわざ後味を悪くするラストは逆の意味で流石とでもしか最早いひやうがない。蛇に足を描いたばかりに、雉が撃たれたが如き一作である。

 もう一度泣かせて呉れ、これでお別れなのか?


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 「不倫音楽教師 魅惑のゆび使ひ」(1999『女ピアノ教師 ゆび誘ひ乱されて』の2002年旧作改題版/製作:多呂プロ/提供:オーピー映画/監督:荒木太郎/脚本:岡輝男/撮影:清水正二・岡宮裕/編集:酒井正次/制作・録音協力:小林徹哉/スチール:木下篤弘/演出助手:田中康文/タイトル:内藤忠司/ピアノ指導:蓮見和美/出演:山崎瞳・篠原さゆり・岸加奈子・川瀬陽太・今泉浩一・野上正義)。“配給:大蔵映画”ではなくオーピー映画提供としたのは、白黒のOP開巻に従つた。
 女子高生・ことみ(山崎)の着替へを、ことみとは幼馴染の岩沢か岩澤厚治(川瀬)と、厚治の悪友・和彦(今泉)が覗く。ことみに気付かれた二人は逃げる、ことみなんかよりも年上が好みだといふ厚治の前を、ドンピシャの産休音楽教師・春代(篠原)が颯爽と自転車で通り過ぎタイトル・イン。旧題を山崎瞳が読み上げる―映倫番号は川瀬陽太らの合唱―ため、音とタイトル画面がちぐはぐなことになつとる。一手間かけて、抜けばいいのに。
 弾けもしないピアノが置かれた部屋、厚治が春代とのセックスをイマジンしてゐると母親にしてはいやに若い雪子(岸)が現れるのは、挿み込まれる厚治の老父(野上)が遺影を見やるカットで、雪子は幽霊である旨が語られる。ただ、この遺影岸加奈子か?悶々とした下心を爆発させ日課のジョギングがてら雪子宅の様子を窺ひに行つたところ、雪子に見付かつた厚治はピアノを習ひたいとその場しのぎで言ひ逃れるも、音大受験を目指すことみが既に実際にレッスンを受けてをり、二人で雪子宅に通ふ羽目になる。さりげなく配役残り、春代が町を去る際コートの後姿しか見せない同伴者は小林徹哉。
 昨今の大蔵旧作投入の流れに乗り着弾した、荒木太郎1999年第二作。確実に話題を呼べると思しき友松直之の「コギャル喰ひ ~大阪テレクラ篇~」(1977)をこの期に長く温存し続けてゐるのは、もしかすると上映権がオーピーの手許にないのかな?行間の無闇に広い薄味の物語を、当時は荒木調として―世間的には―神通力を失つてはゐなかつた小手先で埋める始終はよくいへば穏やかで、直截にいふと退屈。但し厚治が実は一番近くに居た大切な人と結ばれる、定番展開で漸く終盤に至つて求心力を取り戻す。そこから、締めの濡れ場が三番手なのは荒木太郎は三上紗恵子と出会ふ前からピンク映画の構成が出来てゐなかつたのかと呆れかけさせて、オーラスの厚治とガミさんの会話を通して厚治とことみの関係を、ガミさんと雪子の馴れ初めにリンクさせ綺麗に纏め上げる。未だ上り調子、この頃の映画を近作と並べられるのは、正直荒木太郎にとつて酷なのではなからうか。


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 「奥様は18歳 超どきどき保健室」(2014/製作:関根プロダクション/提供:オーピー映画/監督:関根和美/脚本:金沢勇大/撮影:下元哲/照明:代田橋男/助監督:金沢勇大/編集:有馬潜/監督助手:篠崎周馬/撮影助手:浅倉茉里子/照明助手:榎本靖/選曲:山田案山子/効果:東京スクリーンサービス/出演:きみの歩美・桜木郁・円城ひとみ・竹本泰志・藤原徹・なかみつせいじ)。
 タイトル開巻、異常にペッラペラに見える「私立聖峰学園」―作中では呼称されず―保健室に、養護教諭の高橋龍之介(竹本)目当ての大友愛里(桜木)が何処が痛いあそこが痛いと大したどころですらなく何ともないのに通ひ詰める。女子高生が体操着を自らペローンと捲る据膳も龍之介は相手にしないところに、愛里とは親友の高橋桃子(きみの)が入つて来る。本当に親友なのか、桃子と愛里が龍之介を巡り何気にでもなく火花を散らす帰り道。ラブレターを手に、二人の姿を追ふ校内一の秀才で、愛里の元カレ・堀内大樹(藤原)を龍之介が急襲する。それが桃子に対するものかと思つた龍之介は、ラブレターを取り上げる。その夜の高橋家、実はといふか何時の間にかといふか、桃子と龍之介は夫婦で、桃子が通ふ高校に龍之介が転任して来てゐたものだつた。
 配役残り、少々肉は厚いがポスト小川真実に見えなくもない円城ひとみは、聖峰学園の新任教頭・土井久江。久江も久江で保健室戦、ところが今回は龍之介もノリノリでザクザク本戦に至るのが、今回珍しく男の側でなく久恵のイマジンといふ展開は加齢、もとい華麗なる関根和美の十八番。なかみつせいじは聖峰学園校長・阿部信太郎、桃子の叔父で、龍之介との夫婦関係を唯一知る人物。因みにバツ4、その経歴は役職の邪魔にはならないのか。
 流石に最後の輝きとまでいふつもりはないが、国沢☆実の「新婚性教育 制服の花嫁」(2006/樫原新辰郎=樫原辰郎と共同脚本/主演:星月まゆら・小峰由衣)も気がつくと結構昔。ありさうで案外見当たらない「おくさまは18歳」ものである旨を、大胆にも公開題にブチ込んだ関根和美2014年第三作。スリー・バイ・スリーの女優部と男優部が、全員上手いこと鞘に納まる構成自体には何の問題もない。安い普請も薄い物語も、この際大した問題ではない。・・・・ない?ええと、ひとまづない方向で。何が厳しいかといつて、森山翔悟・坂城君と同じ所属事務所シネマクトからピンク映画初陣、乳を揉む手も覚束ない藤原徹の濡れ場大根ならぬマグロぶり、では必ずしもない。ただ単に機嫌が悪さうにしか見えず、可愛げの全くないきみの歩美の仏頂面が最大のウイーク・ポイント。その為、一見ギャルギャルしてゐるかに見せて、一転健気な乙女心も感じさせる桜木郁の好演で綺麗に成立する愛里パートと、正直大概へべれけなシークエンスをも、なかみつせいじの突破力で無理からでも何でも押し込むなり捻じ伏せてみせる久江パートに比して、ヒロインのエモーションが一番弱いのが困りもの。二番と三番が繋げて作つた好機を、凡退した四番が潰したが如き一作。考へてみれば、風邪でも引いてゐたのか冒頭は声が少しおかしく聞こえる竹本泰志と、ここに来て俄然キレッキレのなかみつせいじ。きみの歩美円城ひとみはそれぞれ第二戦ともいへ、量産型娯楽映画の息吹を伝へる面子が1/3しか居ない布陣は、矢張り苦しいか。

 エンディング曲のスタップサイボーズ「きつとあるはずさ」はクレジットレスながら、桃子が龍之介に送つたメールの文面と、久恵の台詞中にスタップサイボーズの名前は登場する。スタップサイボーズでググッてみたところ、石川真平が、助監督からの“若い女の子に大人気のスカしててチャラチャラしてる感じの劇中バンド「スタップサイボーズ」が演奏する曲にしてほしい”とのオーダーに応へて制作したトラックとのこと。バンド名がスタップサイボーズで曲名が「きつとあるはずさ」とは素晴らしいセンスではありつつ、惜しむらくは、作中にそのポップなシニカル感が一欠片たりとて活かされてはゐない点。


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 「THE 巨乳レズ」(1990/企画:プロダクション鷹/配給:新東宝映画/脚本・監督:珠瑠美/撮影・伊東英男/照明・沖茂/音楽・MGC/美術・協立音響/編集・竹村峻司/助監督:近藤英総/録音:ニューメグロスタジオ/現像:東映化学/出演:加山なつ子・緑喬子・一の瀬まみ・牧村耕治・木下雅之・村田一郎・佐藤公男)。美術が協立音響だなどと明らかにおかしいクレジットは、本篇ママ。
 加山なつ子と一の瀬まみが、大輪の百合を咲き誇らせる開巻。例によつて空疎さに比例して勿体つけたモノローグは無視するとして、絡みの煽情性は全く申し分ない、寧ろここで観るなり見るのをやめてしまつてもいいくらゐだ。
 タイトルとクレジット経て、“ある会社のフリーデザイナー”と後述する明子に語る職種が、会社員なのか自営業なのかハッキリしない島田奈津子(加山)と、恋人兼同僚・良一(木下)の休日の昼下がりの情事。今回視聴したのがアダルトビデオ版なので、不必要に馬鹿デカいモザイクには苦笑させられる。事後、奈津子の父親・京介(牧村)から、これから行く旨の電話を着弾、奈津子は渋る良一を追ひ出す。ここまで、容貌から受ける印象よりは大分案外メリハリの利いた、加山なつこの訴求力の高い肢体は正方向に堪能させるのと、へんてこりんな刈り上げ方をした、木下雅之の髪型が生温い琴線に触れる。
 配役残り、木俣堯喬(珠瑠美夫)が育てた女優であるらしい、オッパイは小ぶりともいへショートカット超絶美人の緑喬子は、京介の妻であるけれども奈津子の母ではない雅子。本当に絶対的な美人なので、この人の出演作をもつともつと見てみたいとときめいたところが、DMMのピンク映画chには今作しか入つてゐなかつたのは重ね重ね残念無念。一の瀬まみは、何気に前々より奈津子が狙ひを定めてゐたと思しき、近所の喫茶店のアルバイト店員・相川明子。ピラフとコンソメの出前を届けに来た明子を、その時点では正体不明の羽振りのよさを発揮した奈津子が下着モデルとして面倒をみる話をつけ、ザクザク手もつける。特定不能な村田一郎か佐藤公男の何れかが、京介と飲み歩く男。ここで、京介の村田一郎か佐藤公男に対する、シレッと語つてはゐれど大概な内容の武勇伝―と後に奈津子が京介にかけた電話―を元に改めて島田家の家族構成を整理すると、雅子は奈津子の母親ではないが、京介も奈津子の実父ではない。後妻の連れ子である奈津子が十六の時、嫁―雅子を指すのか否かは不明―が生理中につきクサッてゐた京介は、オナニー中の義理の娘を犯す。因みに、四年前のこの時奈津子の実母は既に故人。その後も関係は継続、驚くことに奈津子が成人して職業を持つた今なほ、定期的な逢瀬の対価に月々のお小遣ひをと、近親相姦どころか愛人そのものの状態にあつた。
 関根和美が満足に見せて呉れなかつた、加山なつこの裸目当ての珠瑠美1990年第二作。ひとまづその限りでは、あくまで加山なつこの裸を見る限りに於いては当初の目的を兎も角十二分に達成出来たものの、まあ例によつてへべれけで、相変らず面白くも何ともない。本篇冒頭、叩き帰された良一は、奈津子の部屋に忘れ物をして来たことに気付く。良一いはく、忘れ物とは“大事な会社の機密書類の特殊コピー”だなどと何だそれ(´・ω・`)感が爆裂する代物で、日に当てると感光して駄目になるといふのが、“特殊コピー”の特殊たる所以、現像前の写真フィルムかよ。ところが、絶対に開けるなといはれたからには奈津子が布団を被つて開けてみると、中身は単なるエロ本といふある意味壮大な馬鹿馬鹿しさは、実は全然助走。そこから奈津子が明子を性急に口説き落とし且つ百合を開花させる一幕と、京介が佐藤公男か村田一郎ともう一軒もう一軒と痛飲する件を通過した上で、次のカットは何時の間にか翌日。だ・か・ら、京介が奈津子宅に来てセックスする流れは何処の並行宇宙に転移したんだよ!正体不明の繋ぎも随所で火を噴く、奈津子が自からがデザインした黒いパンティだけ身に着けさせた明子のオッパイに触るや暗転、明けると奈津子も脱いでゐて本格開戦。奈津子は明子を囲ふために、来宅の回数増加と引き換へにお小遣ひ50%アップを京介に要求。そんなこんなで劇中現在時制の奈津子V.S.京介戦、フェードして踏切の画を一拍挿み、再フェードすると一人眠る奈津子の傍らには50%分の封筒。その、暗転や踏切のインサートに一体何の意味があるのか全く判らない。ついでに、どうしても登場人物がほかに見当たらない以上、村田一郎と佐藤公男のどちらかは名前が余る。もしかして、奈津子の電話を島田部長に取り次ぐ声だけの部下?基本的に女優部の粒は揃へ―対照的に男優部には穴が開いてゐる不必要な平衡も多い―裸映画的には安定しこそすれ、珠瑠美作をそれなりの本数観るなり見て来たが、この人には素面で面白い映画といふものが一本ぐらゐないのであらうか。


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 「美巨乳・はさみこむ」(1994/製作・関根プロダクション/配給・大蔵映画/監督:川井健二/脚本:乃武良/撮影:伊東英男/照明:秋山和夫/編集:㈲フィルム・クラフト/助監督:佐々木乃武良/音楽:藤本淳&リハビリテーションズ/撮影助手:弁田アース/録音:ニューメグロスタジオ/効果:協立音響/スチール:津田一郎/車輌:松代綾子/現像:東映化学㈱/出演:加山なつこ・木下雅之・小川真実・杉原みさお・久須美欽一・小竹林早雲・牧村耕次)。脚本の佐々木をオミットした乃武良表記は、“乃 武良”とスペースが入る。下の名前が“たけよし”はアリにせよ、苗字が“乃”て。城定夫の元ネタと思はれる   >超嘘
 高層ビル群を一拍抜いて、中堅製薬会社「和田製薬」東京本社の、何故か屋上。馬面の課長(小竹林)が、閉鎖された大阪支社から営業二課に配属された遣田か槍田万蔵(木下)を四人ばかりの一同に紹介する。コミカルなつもりで別に可笑しくもない万蔵の自己紹介に、イクヨ(杉原)は喰ひつく。するとつかつかイクヨに歩み寄るや、出し抜けに両肩を掴み迫る万蔵が、課長に引き離されるロングにタイトル・イン。お天道様が許す限り朝礼を屋上で行ふドメスティック・ルールと解釈すれば、必ずしもやつゝけともいへないのか。
 歓迎会後、ザクザク自宅に連れ込んだイクヨに、万蔵はあれよあれよといよいよ本格的に迫る。万蔵の男性自身に触つたイクヨは度肝を抜かれる、遣田家の遺伝的特質で、殆ど直角に近く曲つてゐたからだ。翌日、朝から給湯室にてイクヨと乳繰り合ふ万蔵は堅物の課長の怒りを買ひ、当分の間六時半に出社しての社長室掃除を命じられる。三日目、万蔵が勝手に座つた社長の椅子からずり落ちデスクの下で寝こけてゐると、何者(絶対に特定不能)かが社長室に侵入。続けて社長(牧村)と秘書のアイダジュンコ(小川)も現れ、賊は入れ替りに立ち去る。万蔵が恐々潜んでゐるのも知らずといふか気付かず、牧村社長は和田製薬が北祥産業に乗つ取られかけてゐる云々、対北祥産業の切札は新薬開発データであるかんぬんとベラベラ開陳、したかと思ふとその場でジュンコを抱く、段取りだらけの一幕がある意味堪らない。事後、ジュンコに見付かつた万蔵は居眠りを白状し、賊が忍び込んだ一件を報告。更に翌日、今度は万蔵とジュンコが二人で机下に潜り込む社長室。再び賊がやつて来たまでは狙ひ通りであつたのに、密着したジュンコの色香にレディ・トゥ・シュート状態の万蔵の珍棒が突つ張つて動けず、賊の逃走を許し、データもまんまと盗まれてしまふ。
 配役残り、あれ、誰か忘れてないか?万蔵は蛮勇にも、北祥産業に逆潜入しての新薬開発データ奪還を敢行。佐々木乃武良が役立たずの北祥産業守衛と、開巻の営業二課員計四名の、画面向かつて一番左―右端がイクヨ―を兼任、中二人の男女は全然判らん。尺の折り返し点で漸く登場する加山なつこは、北祥産業の多分社長秘書・真弓。絡みの恩恵に与ることなく一貫して憎々しげな悪役で通す久須美欽一が、北祥産業社長。
 四戦目にして初めてコメディに触れた、川井健二(=関根和美)1994年第七作。真弓にデータの返還を求めるも、そもそも北祥が盗んだ証拠からない以上当然相手にされぬ万蔵は、イクヨとジュンコを連破した文字通り伝家の宝刀を抜く。先祖代々の逸物を唯一の武器とした、スチャラカ社員の立身出世物語。量産型娯楽映画的な麗しさが爆裂する、真綿色したシクラメンよりも清しい馬鹿馬鹿しさはいいとして、残念ながら主人公が映画を支へきれない。現に関西人であるのか否か疑はしいのか、単に口跡が達者でないだけなのか大いに微妙な木下雅之がそもそもキャラクター的に甚だ魅力に乏しく、万蔵の強引グ・マイ・ウェイぶりも棚から葱を背負つた鴨が飛んで来るやうなハッピー・エンドも、観客なり視聴者を納得させるシークエンスとして成立してゐるとは認め難い。畢竟展開が弾む筈がなく、チンコが折れてゐるとしか思へないほど曲つてゐるといふ次第で、豪快に平仮名の“く”の字を描いて捻じ込む、トルネード挿入以外には特段面白いといふ訳でもない。別の意味で、あるいは本筋からは明後日だか一昨日に注目すべきなのが、前半戦は完全に本当に実際に加山なつこを温存。その後も別に笑へないすつたもんだで時間を潰した末に、濡れ場が始まるのは四十分過ぎ。挙句にその一戦が本来ならばそれ自体は量的にも内容的にも十二分であるものの問題が下手に暗い照明、結局主演女優の裸が満足に拝めるのは土壇場どころか今際の間際のラスト一分といふ出鱈目な匙加減が衝撃的。一見、堂々としたタラコ唇に乳も太いが腹周りも太い系の疑念が鎌首をもたげつつ、いざ脱いでみるとなかなかメリハリの利いたボディで助平心を撃ち抜く加山なつこが、よしんば劇映画的には少々詰まらなくとも一本の裸映画を背負ひ得る結構な逸材ながら、だから折角の決戦兵器を、何をエンド・ロールの直前まで出し惜しんでゐるのかといふ話だ。ところで加山なつこの名前に何となく既視感を覚え、別館検索にかけてみたところ、新田栄2006年第四作「熟妻交尾 下心のある老人」が出て来たのには驚いた。一旦引退後、カンバックした際に抜擢されたものだが、実はその活動第一期にもエクセスでの主演作が存在する「巨乳VS巨乳 こする!」(1990/監督:小林悟/脚本:横倉晶郎/激越に観たい)。恐らくそんなことなど忘却の遥か彼方、エクセス初出演のつもりで呼んで来たのではなからうか。


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 「特務課の女豹 からみつく陰謀」(2014/製作:フリーク・アウト/提供:オーピー映画/監督・脚本:国沢☆実/撮影:下元哲/撮影助手:高田宝重/助監督:田口敬太・菊嶌稔章/録音:シネ・キャビン/現像:東映ラボ・テック/ネガ編集:有馬潜/フィルム:コダック株式会社/スチール:本田あきら/劇中歌:蓮沼ラビィ/協力:虹企画ミニミニシアター・マサトキムラ/出演:伊藤りな・美咲結衣・四ノ宮里莉・奈良京蔵・村田頼俊・三貝豪・前沢健太・世志男・山科薫)。新作のクレジットで高田宝重の名前を見るのは、「夏の愛人 おいしい男の作り方」(2011/監督・脚本:工藤雅典/主演:星野あかり)以来。劇中歌の蓮沼ラビィが、ポスターには蓮沼ラヴィ。
 左頬の赤痣が痛々しい、美咲結衣のアップで開巻。2019年、東京五輪前年。首相暗殺を企てたテロリスト集団統括・景山哲也の同士兼情婦・深町美希(美咲)を、山科薫が取り調べる。取調官は美希を鉄格子つきの窓近くまで引つ立てると、窓から逃走を図つたとガンガン強姦する。出鱈目だが、山科薫歴戦の突進力が少々の無理なら通す。他方、巨漢の刑務官(菊嶌稔章)に伊藤りなが連行されタイトル・イン。三森鏡子(伊藤)が、美希と同じ房に放り込まれる。美希が首に提げたペアリングに注意を留めた鏡子は、男に対する美希の強い絆を嘲笑する。主演女優の第一戦と込み込みで、エクスキューズ色の強い一幕。鏡子は実は公安局特務課の捜査官で、特務課課長の裏越(世志男/綿含んでる?)とは不倫関係にもあつた。一旦検挙後脱獄、但し検問を突破されてはゐない影山の潜伏先を突き止めるべく、鏡子は不倫相手殺害犯を偽装し美希に接触する任務を帯びてゐた。脱走した鏡子と美希の前に、影山(奈良)以下、ナイフ使ひの黒木(三貝)と、三叉の短刀使ひの井川(前沢)が現れる。え、三叉の短刀(´・ω・`)?鏡子の素性を疑ふ景山に対し、気前よく脱いだ鏡子は尺八も吹き、美希はジェラシーなのか落胆なのか複雑な表情を浮かべる。
 出演者残り四ノ宮里莉は、いい歳して―作中三十五、公称に辿り着けん―セーラ服姿でカーセックスに及ぶ人妻・弘美。村田頼俊がそのお相手、話を聞くに娘の担任と思しき村田先生。担当科目も古文と、最早貫禄のヒムセルフ配役。二人は黒木と井川に拉致られ、“こいつらにも餌が必要なんだ”と影山は黙認する中、当然の如くといはんばかりの勢ひで弘美は陵辱される。その前段、影山と美希の情事を覗き見た鏡子が手洗ひに入るのは、下元哲の作家性に寄り切られた排泄シークエンスに突入するものかと思ひきや、鏡子は膣の中に忍ばせてゐた、まんまといふか科特隊流星バッジそのものの通信機で裏越に連絡をとる。弘美を救はうとした鏡子は代りに井川に手篭めにされかけ、流星バッジを発見される。ピンバッチか何かの公式グッズかと思はれるが、そんなものそんなところに裸で入れたりして痛いだろといふ以前に、円谷に怒られても知らんからな。
 前作に引き続き自脚本で挑んだ、国沢実2014年第二作。女囚映画的な導入から、“負け犬”だ“捨て石”だと如何にも国沢実らしい自虐的なヒロイズムで彩ると同時に加速した上で、非現実的方面に越境しない場合日本映画史上最大級の大風呂敷を奥歯に物を挟みつつも―後述する―拡げてみせる、革命映画に展開する果敢な構成は案外形になつてゐる。とはいへ如何ともし難いのは、冒頭房の中での伊藤りなと美咲結衣の遣り取りから順調に頭を抱へた、それはそれとしてそれなりにキャリアを積んだ村田頼俊が格が違つてさへ見える、脆弱極まりない俳優部。ビリング頭二人は脱げばサマになる分まだしも、影山一派の全滅ぶりは最早グルッと一周して清々しいほど。タッパがヒョロッと高く、台詞回しは幾分達者とはいへ如何せん面構へが貧相な奈良京蔵はカリスマ性にもレンジャー部隊出身といふ設定に説得力を与へるに足る凄味にも完全に無縁、国沢実が自分で初老のテロリストにでも扮した方が絶対に画になる。三貝豪はゾンビみたいなヒャッハー造形が逆の意味で見事に空回り、前沢健太はその点散発的に三貝豪に引き摺られる中途半端さ以前に、ここは演出部の責やも知れぬが、わざわざ満足に扱へもしない三叉の短刀なんて頓珍漢な武器を持ち出すセンスから致命傷。鏡子の通信で官憲に潜伏先の位置情報が洩れてゐるにも関らず、影山は逃げるでも慌てるでもなく文字通り動じない。そもそも鏡子が美希に接近するミッションの意義に後足で砂をかける、どんでんを返すためだけのどんでん返しも果てしなく類型的。ついでに、絡みの最中で起動しては正直水を差す劇中歌は、出て来はしないけれど見た目はイルカで、音楽的には加藤登紀子の他愛ないエピゴーネン。但し、革命の機運にもテロルの季節にも全く遠い目下の状況下にあつて、斯様な、直截にいへば貧しい革命映画は逆説的なリアリティを有するに至らぬでもなく、何よりかうした一作が堂々と商業ベースで、加へて国沢実のフィルモグラフィーに於いて恐らく、といふかほぼ確実に最後のフィルム作として世に出た物の弾みか何かの間違ひにも似たラックには、形容のしやうのないエモーションを覚えた。面白い詰まらないの最も単純な二者択一を迫られるならば、少なくとも別の意味では面白い。
 裸映画的には、ザックリ三分割した終盤全ての長尺を、自慢の砲弾型オッパイを放り出すどころか、全裸で戦ひ抜いた伊藤りなの熱演は大称賛に値する。尤も、締めを濡れ場で振り抜く選択も酌めるものの、結局終始影山の潜伏先こと、小劇場である虹企画ミニミニシアターより半歩たりとて外に出でない出不精には、安普請に火に油を注いだ感を禁じ得ない。鏡子と美希が逃走する、異常に屋根の低いガード下なのか何なのかよく判らない通路や、二人が影山一派と合流する深い森の中。ロケーションには所々貪欲さを窺はせただけに、スカッと開けたラスト・ショットのひとつも設けてあれば、また全然印象が変つてゐたやうにも素人考へる。

 劇中、自衛隊ではなく“国防軍”だなどと奥歯に物が挟まつたやうな用語で茶を濁すのは、国沢実がかつての所属組織を慮つたか、怖気づいたか事なかれなオーピーの横槍が入つたのか。何れにせよ、小賢しくすらないことはいふまでもなからう。右傾化がエクスプロードした近未来を描いた、ディストピア描写といふ訳でもあるまい。


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 「淫乱女房 下半身の甘い香り」(2001/製作:小林プロダクション/提供:オーピー映画/監督・脚本:小林悟/撮影:小山田勝治/照明:ICE&T/編集:田中治/スチール:佐藤初太郎/助監督:竹洞哲也/監督助手:金基正/撮影助手:邊母木伸治/タイトル:ハセガワタイトル/録音:シネキャビン/現像:東映科学《株》/協力:『夜の公園』 新宿二丁目 3350-6925/出演:藤崎玲央奈・椎名みなみ・小室優奈・洞沢研二・今井正史朗・真央はじめ・坂入正三・田口ゆかり)。
 アパートか下宿なのか、「神山荘」の表札を一拍。表を大家さんの奥さん(後述/大家当人は一切登場しない)が掃き掃除してゐると、慌ただしく飛び出して来た店子で会社員の沖田伸二(真央)が、不自然に積まれたダンボールの山に突つ込む。だから掃ばく前に、そのダンボールを片付けろといふ話だ。後々回収されるでなく、どぎまぎとまるで恋心を懐いてゐるかのやうな沖田を、神山夫人が大丈夫かと送り出しタイトル・イン。クレジットと連動して、沖田の妻・公恵(藤崎)がジャージ姿でてれんこてれんこ洗ひ物を片付ける。布団に残る夫の体臭に欲情した公恵は、この一年殆ど御無沙汰の夫婦生活をイマジンしつつ、起きたばかりだといふのにもう一度寝る。何て幸福な日常なんだ、セックスレス程度で不平を垂れるのが間違つてゐる。そこに勝手に上がり込み―神山荘の住人は鍵をかけないのか―茶を飲む神山夫人は、夫婦の疎遠の所以は公恵にあると、色気のないジャージ常用や口数の多さをまるで姑のやうに説教する。ともあれ忠告を聞き容れた公恵はそれなりに普通の格好で夕食には―本当に美味しさうな―ビフテキを出してみるも、沖田のリアクションは今日は寝巻きぢやないんだ程度で、結局夜の営みのおねだりも不発に終る。
 その他出演者、自ら出陣する小林悟は、ゲームソフト会社「EYE CORP」本社勤務の沖田から、二日後の締め切りを被弾する同社プログラマー・森本。その場で携帯にかけて来たテレクラで捕まへたセフレに、沖田を紹介する。自分の名前が出て来る電話の遣り取りを傍で聞き、「何ですか?」と尋ねた沖田に対し、「テレクラの女だよ」と答へるドライな会話が堪らない。金基正の変名とみてまづ間違ひあるまい今井正史朗は、ドレスアップして出撃する公恵に、神山荘の玄関で見惚れる男。椎名みなみは、落とした紙バッグを公恵が拾つた縁で仲良くなる友人・由希。そして小室優奈(現:若林美保)が、森本から沖田に宛がはれた小百合。純然たる三番手濡れ場要員ともいへ、天井に張られた鏡を抜いた、凝つた画で飛び込んで来る。シングルマザーである由希は、昼は保険の外交員、夜はスナックで働く。坂入正三が由希の勤め先「夜の公園」マスター、竹洞哲也の変名の洞沢研二は、由希が公恵に紹介すると称して要は売る助平客。ほかに、夜の公園カウンターにもう三人見切れる。
 大御大・小林悟、七月終盤公開の2001年第三作。この時は一見普通に元気な内トラぶりを披露しこそすれ、大体半年後の新作撮影中に卒倒、そのまゝ死去。文字通り戦つて死ぬ、壮絶な戦死を小林悟は遂げることとなる。今作単体に話を戻すと、神山夫人のアドバイスに従ひおめかしして新宿に繰り出す公恵と、仕事場が新宿の沖田は度々、といふかその都度遭遇しながら、沖田はあまりの変貌ぶりに妻と判らない。といふ画面(ゑづら)的には甚だ説得力を欠いた機軸を唯一の方便に、冷めた夫婦がヨリを戻すまでを一応一通り描く。霧消するでも爆裂するでもなく、起承転結が何となくでさへ最後まで進行する分、我々が知る小林悟にしてはまだしも良心的な一作。尤も、限りなくフリーダムな大御大仕事は所々で健在。由希が落とした紙バッグの中身は、子供用のブリーフ。それを公恵には“子供のパンツ”と説明しておいて、後程より詳しく境遇を語る件に際しては、由希の子供は娘、女の子にブリーフを穿かせてゐるのかよ。例によつて沖田家に普通に上がり込んだ神山夫人は、出し抜けに公恵から借りたらしいムック本『テレビ水戸黄門のすべて』をドーンと画面一杯に提示し「この本面白かつたは」。出版社から小銭でも掴まされたのか、実際に小林悟が読んで気に入つたのか。何れにせよ、清々しく木に竹すら接がないシークエンスでしかない。最終的に、ひとまづ始終をマッタリ消化した上で、ひとつの謎が残される。神山夫人役には田口ゆかりしか名前が残らないが、顎が首に融解した肥えやうも兎も角、目口鼻の造作が整形でもしたのかといふレベルで田口ゆかりとは全面的に違ふ、因みに声は多分佐々木基子のアテレコ。当日都合がつかなかつたとでもいふならばまだしも、当然田口ゆかりにアフレコを別人にアテさせる必要はない。一体、この女は誰なんだ?・・・・と一旦書いてみたものの、何度か目を通す内に田口ゆかりと田口あゆみを混同してゐるプリミティブな粗忽に気付いた。誰だもへつたくれもない、裏本・裏ビデオの女王としてその名を轟かせた時代を知らぬのは単なる小生の若輩ゆゑの無知。この時何が如何に弾んだものか、神山夫人役は十二年ぶりの銀幕復帰を果たした田口ゆかりである。


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 「小悪魔メイド 後ろからお願ひします」(2014/制作:セメントマッチ・光の帝国/脚本・監督:後藤大輔/プロデューサー:池島ゆたか/原題:『宝はここに』/撮影:飯岡聖英/音楽:大場一魅/編集:酒井正次/サウンド:シネキャビン/タイミング:安斎公一/助監督:永井卓爾/監督助手:小関裕次郎/撮影助手:浅倉茉里子・末松祐紀・梅田裕多/現場応援:小山悟・中川大資/現像:東映ラボ・テック/スティル:津田一郎/カメラ:アリフレックス35Ⅲ《Assist》/フィルム:コダック VISION3 500T 5219/出演:早乙女らぶ・なかみつせいじ・里見瑤子・野村貴浩・松井理子・永井卓爾)。出演者中、永井卓爾は本篇クレジットのみ。ポスターの迷惹句“ご奉仕一図 何からナニまでお申し付けください!”といふのは、それ“一途”ぢやね?(´・ω・`)
 千切れ雲の浮かぶ空、波打ち際。引いた画で元漁師の野々村作造(なかみつ)が砂浜に多分金属探知機を向けながらソロリソロリと何かを探してゐる風情で歩き、その少し後ろを、下着を着けてゐるとはいへ、限りなく裸エプロンのメイド兼助手・純(早乙女)がついて行く。ガイガーカウンターのやうな作動音で探知機が反応、二人でここ掘れしてタイトル・イン。作造の息子・薫(野村)が、婚約者・高梨晴美(松井)を父親に紹介すべく天草の実家を目指しベンツの軽自動車を走らせる。といつて、ベンツ社が軽を出してゐる筈もなく、翌朝実家の表に車を停めた、画面手前のピンボケエリアにスズキのエンブレムが霞んで見える、カミングアウト気味のカットも設けられる。ついでに天草といふのも長崎ロケを敢行する訳がなく、実家物件は毎度御馴染みの南酒々井。閑話休題、今作最大の衝撃は、催した晴美に応へての、一旦駐車しての車中婚前交渉。まるで自爆ギャグかの如く、オッソロシイ勢ひでサイドミラーに映り込むスタッフには度肝を抜かれた。最早俺達を見て呉れといはんばかりの堂々とすらした見切れぶりには、後々メタ方面に展開するのかと余計に勘繰つてしまつた、あれは一体何だつたんだ。一方、掘つた穴から出て来たのは何故かバイブ。作造が漁師を辞めトレジャーハンティングに現を抜かすやうになつたのは、たまたま見付けた天草四郎の遺品がマニアに五百万で売れてから。純とは、お宝探しの最中浜に打ち上げられたのを助けた形で出会つてゐた。早速バイブ戦、本戦に移行するも中折れした作造が、通販で注文したバイアグラが届いてはゐないかと全裸で郵便受けを覘きに出たへべれけなタイミングで、到着した薫・晴美と鉢合はせる。
 陰々滅々、死屍累々の問題作「家庭教師 いんび誘惑レッスン」(2013/監督:国沢☆実/脚本:内藤忠司)以来まさかのピンク映画第二作となるも、髪型が長さから全く異なるのもあり個人的には限りなく初見の印象の早乙女らぶを主演に擁した、後藤大輔2014年第二作。グジャグジャ腰の重い晴美を残し、一人で没母―の筈の―照子(里見)の墓を参る薫に、買物途中の純が出くはす件では、この女目がトンでねえかと軽くでもなくハラハラさせられるものの、穿ち過ぎた杞憂であつたのか辛くもであつたのか、兎も角始終は無事乗り切る。里見瑤子は落ち着いて澄ましてゐる反面、終始キレッキレに弾け倒すなかみつせいじと、スチャラカな親爺に対照的にクールに匙を投げる野村貴浩の掛け合ひは出色。とはいへ粒の小ささは否めない物語が、文字通り二転三転、ついでにもう一転してみせる終盤の正しく急展開には驚かされた。エクスキューズ頼みの芸を欠いた作劇ともいへ、純が啖呵でも切るかの如くいはゆる“衝撃の真実”を開陳する一幕には、素直にハイライトたる強度が漲る。二番手三番手は申し訳程度に済ませた反面早乙女らぶの蕩けるやうな濡れ場はてんこ盛りに、一撃必殺のエモーションを撃ち抜いた前作「巨乳事務員 しやぶれ!」(主演:麻宮ももえ)同様、全体的にはギャースカギャースカ騒ぐほどではないにせよ、主演女優の見せ場はしつかり見させる、女優映画としては綺麗に成立してゐる。だから後藤大輔は主人公夫婦どちらかの生殖機能に問題を生じさせないとドラマを書けないのか、などといふ邪推はさて措けさて措け。

 配役残り、ラストに紛れ込む幾分痩せたかも知れない永井卓爾は、享年十七の天草四郎時貞。天草四郎といへばジュリーだろ、と声高に主張するつもりはないが、それ以前に純然たる蛇の足。


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 「女優志願 レイプ調教」(1994/製作:関根プロダクション/配給:大蔵映画/監督:川井健二/脚本:佐々木乃武良・川井健二/撮影:南一/照明:秋山和夫/編集:㈲フィルム・クラフト/音楽:藤本淳&ザ・リハビリテーションズ/録音:ニューメグロスタジオ/助監督:上田耕司/撮影助手:阿部宏之/照明助手:尾崎俊弘/監督助手:佐々木乃武良/効果:協立音響/現像:東映化学㈱/車輌:松代涼子/出演:林由美香・風見怜香・吉行由美・小竹林早雲・森純・牧村耕次)。
 ベッドの上にまで仕事を持ち込む婿養子の晴彦(牧村)に、村上頼子(風見)が嫌味を垂れる。注文の多い夫婦生活、外に出した晴彦は今は子供を欲しくないと誤魔化すが、頼子には浮気がバレてゐた、三階建ての社屋外景にタイトル・イン。晴彦が社長の、男女各一名づつが見切れるのみの適当な社内。男は上田耕司にしても、女は全く判らない。ここで注目は、仕事もせずに大つぴらに愛人との電話に油を売る晴彦の肩を叩く、来訪した東西銀行の佐々木支店長役。この下川オサムと町田政則を足して二で割つたやうな2.5枚目が、佐々木乃武良らしい。先月分の月々のお手当から未納の愛人・川上妙子(吉行)に晴彦が冷遇される濡れ場明け、夜道を歩く晴彦は、客商売にしては矢鱈と高圧的な白タク運転手・宮部薫(林)に拾はれる。秋田の同郷といふことで勝手に盛り上がつた晴彦に、薫はアタシに乗んない?と売春を提示。オケラを棚に上げ、ガキは買はない主義だと晴彦は薫に説教してみせる。観客―厳密には今回視聴者なのだが―の神経を逆撫でし続ける晴彦に大金持ちらしい頼子の父親も匙を投げ、手を引かれた晴彦の会社は倒産する。家を出た末当然妙子にも見限られた晴彦は、徘徊程度に放浪後無人の薫の白タクを発見する。
 配役残り森純は、その時の薫の客。絡みの前段、シャワーを浴びてゐる隙に財布から札を抜いた薫を、車まで追つて来る。その場の流れで薫と晴彦が二人で車で逃げる、ちやうど尺の折り返し点で再会した二人が行動を共にする羽目になる構成と、その更に更に前段、やさぐれた晴彦が街を彷徨ふロングだけが僅かに出色。当時は劇団夢現舎を興す前の演出家の小竹林早雲は、オーディションの最終審査と上京させた薫を、手篭めにする東洋映画プロデューサー・宮沢浩。一体どういふ付き合ひなのか、小竹林早雲の映画出演は川井健二時代には数作以上あるやうだが、関根和美名義の出演作は、恐らく2005年第一作「女探偵 おねだり七変化」(脚本:吉行良介/主演:出雲ちひろ)の一本のみなのではなからうか。
 関根和美が1993年から三年間使用してゐた変名である川井健二の、1994年第二作。因みにこの年はピンク八本に更に薔薇族が一本と、結構な量産態勢ではある。一旗上げると出て来た秋田に、おめおめ帰る訳には行かなかつた。晴彦が薫に見出す似た者同士感にはそもそも佐々木乃武良自身の境遇なり胸中も透けて見えるのか、都会の片隅で行(ゆ)きつ逸れた男と女が出会ふ、といふ趣向ならば酌めぬではないものの。依然女優の夢を諦めてはゐない薫が選んだ稼業が、選りにも選つて売春白タクだなどといふのは、確かに映画的に凝つた設定とはいへ更に敵がピンクであることを考へるとなほさら親和性が高いともいへ、幾ら何でも飛躍が高くて遠過ぎる。この時期の、垢抜ける以前の林由美香に、その無理を捻じ伏せる決定力は未だあるまい。それ以前に、手前は女に現を抜かし義理の父頼みの会社を潰しておいて、堂々と薫に上から目線の晴彦の自堕落な造形が致命傷。片翼ならばまだしも、ミーツの両側が機能不全とあつては流石に厳しい。コッソリ晴彦が送つた書類が、再び東洋映画新人女優オーディションの一時審査に通るといふのもへべれけな話で、不用意に演出したラストも気味ですらなく不発。所々会話の端々に切れが窺へなくもないのは佐々木乃武良の若かりし感性なのかも知れないが、全体的には取りつく島もない一作である。


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 「ナターシャの愛欲 寒い国から来た未亡人」(2004『白い肌の誘惑 ロシア未亡人』の2014年旧作改題版/製作:フィルム・ハウス/提供:Xces Film/監督:坂本太/脚本:有田琉人/企画:稲山悌二/プロデューサー:伍代俊介/撮影:創優和/照明:野田友行/編集:フィルムクラフト/助監督:白石真弓/監督助手:南部智則/撮影助手:原伸也/照明助手:吉田雄三/小道具協力:アウトローカンパニー/スタジオ協力:カプリ/タイトル:高橋タイトル/現像:東映ラボテック/出演:ナターシャ タギロワ・瀬戸恵子・風間今日子・岡田智宏・兵頭未来洋・たんぽぽおさむ)。
 プーチンを美女にしたやうな―和服の―喪装のロシア未亡人が墓参り、墓石に語りかけタイトル・イン。一応映画的叙情豊かな開巻からタイトル明けると空気一変、資金繰りに窮する会社社長の風見隆司(岡田)と、妻利恵(風間)が仲良くなくグチャグチャ喧嘩した上で夫婦生活。隆司の会社が躓いた原因は、半年前に利恵の弟(遺影も何も一切登場しない)が事故死し、妻でロシア人のナターシャ・稲山(ハーセルフ)に代つて隆司が用立てた葬式代。どれだけ盛大な葬式を出したのだといふ疑問なりツッコミ処は兎も角、以来風見家で面倒も見てゐるナターシャを利恵は冷遇する反面、隆司は如何にも岡田智宏ぽい煮え切らない態度で擁護する。当のナターシャはといふと、聞こえよがしな利恵の嬌声に、日本語の勉強もまゝならぬ日々。早く仕事を見付けて隆司に借金を返さねばとは思ふものの、ナターシャの職探しは中々上手くは行かなかつた。
 配役残り瀬戸恵子は、女の子に辞められ落ちた売上に悩む、未亡人パブ「Sweet Widow」のママ・瀬川可南子。可南子宅を訪ねる兵頭未来洋は、全国組織ではなく関東未亡人互助会の職員・東山琢巳、来宅の目的は互助会が可南子に貸した融資の取立て。可南子に泣きつかれただか誑し込まれた東山の紹介で、ナターシャは「Sweet Widow」で働き始めることに。たんぽぽおさむは、「Sweet Widow」の常連客・坂井悠一、何処そこ銀行支店長。
 坂本太2004年第一作は、第二弾のポスターによると好評を博したらしい<ロシアの女>シリーズ第一弾。因みに国産白人女裸映画史上屈指の別嬪を主演に擁した、「和風旅館のロシア女将 女体盛り」(監督:勝利一/脚本:国見岳士=勝利一/主演:グロリア)が第二弾。年を跨いで恐らく第三弾「ロシア義母 湯上り浴衣美人」(監督・脚本:佐々木乃武良/主演:ニーナ・ユルサコフ)に関しては、記憶を操作して忘れたふりをする。未亡人・女将と来て義母と連なるシリーズ展開自体は磐石として、「ロシア義母 湯上り浴衣美人」を“恐らく”第三弾としたのは、<ロシアの女>シリーズ云々といふのは実は「和風旅館のロシア女将 女体盛り」のポスターでしか謳はれてゐない。
 ところで映画の中身はといふと、ところがこれが清々しく中身もへつたくれもない。ナターシャが「Sweet Widow」に入るまでは辛うじて体裁程度は整へてゐなくもなかつた物語は、以降開き直つたかの如く漫然と終始する、濡れ場の釣瓶打ちの中で完全に霧消する。「Sweet Widow」は設定上は未亡人パブとはいへ、別室ですらなく店内でガンガンいはゆる本番行為に及ぶ点をみるに、要は単なるフルコンタクト系のピンサロ。可南子のパトロン的ポジションの坂井も予約を取れないほどの、忽ち売れつ子になつたナターシャは隆司に借りた金をサクサク完済。劇中三度目の墓参で左手薬指の指輪を外したナターシャが、稲山悌二に別れを告げるのがラスト。喪服を着たロシア美人が、日本の寺で墓に参る。爆裂する異国情緒を美しく捉へた墓参り回りの画は無駄な決定力を散発的に撃ち抜きつつ、本筋がへべれけでは流石に面白くも何ともない。脇に瀬戸恵子・風間今日子と絶好の突破力を誇る攻撃的な布陣を敷きながら、硬質の美貌といへば聞こえがいいものの、直截にいへば大根どころか石かと見紛ふまでのナターシャ タギロワの硬さに然しもの坂本太も手を焼いたか。ハクい白人の喪服姿さへあれば御飯何杯でもイケる、特殊な琴線をピンポイントで直撃する分には心の名作たり得るかも知れない一作。野暮をいふやうだが、本当に<ロシアの女>シリーズは好評を博したのか?


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