「悶絶スワップ すけべまみれ」(1995『ぐしよ濡れスワップ 《生》相互鑑賞』の2004年旧作改題版/製作・配給:新東宝映画/監督:深町章/脚本:双美零/企画:中田新太郎/撮影:稲吉雅志/照明:伊和手健/編集:酒井正次/助監督:榎本敏郎/演出助手:菅沼隆/撮影助手:片山浩/録音:シネ・キャビン/現像:東映化学/出演:青木こずえ・風間晶・杉原みさお・井上亜理奈・杉本まこと・平岡きみたけ・池島ゆたか)。
津田スタ夜景にタイトル・イン、既にオッ始まつてゐる、アイダサヨ(青木)と夫(杉本)の夫婦生活で麗しく開巻。ハモニカを吹かれてゐる最中、サヨは池島ゆたかの声が自らの名を呼ぶ幻聴を聞く。片方向にサヨのみが達した事後、妻から申し出た尺八も固辞する、夫の配偶者第一主義にサヨは感激する。一方、玄関口をサヨがごそごそ掃除してゐると謎の大判封筒が、中身は何とスワップ誌。こゝで、誌名がサヨの―説明―台詞の中ではスワップビートとされる反面、のちに表紙が見切れる実物はモア出版の『スウィンギング』。いはゆる日本でいふところのスワッピング“swapping”の、英語圏に於ける一般的名称がスウィンギング“swinging”である。
配役残り、サヨがスワップビートに目を丸くする件の、カット尻も乾かぬうちに飛び込んで来る杉原みさおは杉まこの部下、兼浮気相手のキョーコ。後述する江藤夫婦各々の登場と同様、実際へべれけな展開を、俳優部投入のスピード感で何となく固定させる力技。キョーコと杉まこの会話を通して、サヨが二人が勤務する、会社の社長令嬢である逆玉が明かされる。なので杉まこは、もしかすると入婿かも。居間でサヨがスワップビートを読み耽つてゐると、縁側から上がり込んで来る風間晶は隣家の江藤夫人。但し下の名前が大本命の倫子、でなく今回は妙子。ゴッリゴリのスウィンガーで、サヨがスワップに興味を持つてゐるらしきと知るや俄然時めく、猛然と時めく。井上亜理奈と平岡きみたけは、杉まこがキョーコを妻と偽りスワッピングする、内山スミエと連れのコーイチ。但しこの二人も、実はブティック経営者とアパレル勤務。即ち、要はコーイチにとつてスミエは顧客といふ事実上の上下関係にある偽夫婦。そして池島ゆたかが、妙子の夫。とりあへずは見られてゐるだけで十分と、アイダ家床の間で妙子と致す筋金入りの御仁。
未見未配信の深町章旧作が地元駅前ロマンに着弾した、1995年第二作、新作があるのかといふ話ではある。久々に持論を蒸し返すが、当サイトにとつて、未知の新作と未見の旧作との間に、本質的な差異は概ね存在しない。さういふ意図的に見境を何処かに忘れて来た視座が、それもまた厳密には大いに疑問と我ながら首を傾げなくもないのと同時に、尤ももしも仮に万が一、新作を撮つて呉れるなら撮つて呉れたで、無論勿論畢竟絶対、反応反射音速光速で観に行くのはいふまでもない。
夫婦交換の異様にカジュアルな、確信犯的に底を抜いた世界観といふか世間観を舞台に、全ての登場人物をスワップの経糸で巧みにか無理から紡いでは、実直な濡れ場のひたすらな連打に終始する、覚悟完了した裸映画。さうは、いへ。済し崩し的に絆を深めるアイダ夫婦の姿には、流石に如何なものよと自堕落も否み難い落とし処を、ESPな飛びギミックで遮二無二補完。一見、未だ尺を余す以降は蛇の足かと、思ひきや。蚊帳の外に追ひやられた四番手―と平きみ―の不憫さに、溢れる涙が止まらない大団円へと至る道程を、堂々と辿り着くと評するか、勢ひ任せに雪崩れ込むと解するのかに関しては、統一的な評価を求める類の議論ではそもそもなく、折々の体調機嫌その他諸々、銘々の気紛れなコンディションに寧ろ支配される、偶さかさに属する事柄にさうゐない。それをいつては、実も蓋もないやうな気もしつつ。
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