真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「発情不倫妻」(1991/製作:国映株式会社/配給:新東宝映画/脚本・監督:佐野和宏/企画:朝倉大介/撮影:斉藤幸一/照明:アロンジ・アロンゾ/音楽:遠松孝剛/編集:酒井正次/助監督:山村淳史・小瀬智史/撮影助手:斉藤博・広瀬寛己/効果:協立音響/録音:ニューメグロスタジオ/美術:TOPPI/現像:東映化学/協力:スタジオ・TATOO、ついよし太、原稔、石川章/出演:岸加奈子・水鳥川彩・荒木太郎・上田耕造・伊藤清美《特別出演》・小林節彦《特別出演》・TOPPI・佐野健介・山村まりも・佐野和宏)。撮影部サードの寛巳でなく広瀬寛己は、本篇クレジットまゝ。
 陽が差してはゐるけれども、荒涼とした砂浜、油絵具による書き殴りでクレジット起動。クレジットの合間合間はここは8mmなのか粗い砂浜の画像に、同様の公害プロテスト的な雑多なカットが挿み込まれ続ける。クレジットを消化してなほ、公害カット集?が続くのに些か不安がらせた上で漸くタイトル・イン。最終的に公害の“こ”の字も掠らない物語につき、この点を思ひ返すと軽く煙に巻かれる。
 妻子の無理心中を機に―それなり以上に貰つてゐたらしき―サラリーマン生活をドロップアウト、今は画家の佐々木(佐野)が元同僚のヤマザキ(上田)と、佐々木行きつけの小林節彦がマスターのバーにて飲む。但し小林節彦はアテレコ、鼻声に特徴のある人ゆゑ、口を開くと怒涛の違和感が爆裂する。強く誘はれたのか、その夜ヤマザキ家に泊まることになつた佐々木を、ヤマザキの妻・佐知子(岸)は努めて平静に迎へる。佐々木と佐知子は、佐々木妻子の事件以前より不倫関係にあつた。
 配役残り伊藤清美と佐野実子の佐野健介は、寝てゐる一人息子を殺害したのち、風呂場で自害した佐々木の妻とだから息子。手首をカッ切つた血で、ウィリアム・ブレイクの詩の一節を浴室の壁に遺す辺りの面倒臭さが、何となく、もしくはイメージとしての伊藤清美。水鳥川彩は、佐知子の美大を出た妹・ゆかり、何れ菖蒲か杜若の美人姉妹。荒木太郎は同棲してゐるぽいゆかりの彼氏・コージ、目下関係を拗らせてゐる。TOPPIと性別不詳の山村まりもは不完全消去法で、コージに雇はれ―姉に続き―ゆかりを寝取つた佐々木を半殺しにする二人組。その件、録音の問題かも知れないけれどヒャッハーの度が過ぎて、二人組の台詞が殆どどころでなく全く聞き取れないのは間抜けなツッコミ処。それと山村まりもといふのは、現:T-REX FILM代表取締役である山村淳史の変名?
 国映大戦第三戦は「Don't Let It Bring You Down」に惚れ込み早速ランダムチョイスを放棄し佐野二連戦に挑んだ、佐野和宏1991年第三作。ところがこれが、主役は身勝手な男と女が能書と我儘を捏ね繰り回しながらクサクサするばかり。周囲も俗物か声のおかしな小林節彦―とアレな伊藤清美に多分次男―と、何とも似ても焼いても喰へない一作。ある意味、小屋に毛嫌ひされても仕方のない、如何にも国映作といへば如何にもな国映作。反面、何処ロケなのか引いた砂丘の画に矢鱈と固執する辺りは安普請のアート映画―あと佐々木アトリエの、恐らくTOPPIのスタジオ・TATOOは手作りサイバーパンク―じみてゐなくもないものの、要は砂漠をイメージしたにさうゐない佐野とキシカナによる正常位はもう少し寄れよ!といふフラストレーションさへさて措けば、濡れ場は質量とも遜色ない。頭数が足らない分も補つて余りある、超絶の女優部が美麗に咲き誇る足を引くでなく、裸映画的には案外安定する。さうは、いへ。ヤマザキ家泊の翌日、帰宅した佐々木を追ひアトリエを訪ねた佐知子がドヤァと脱ぎ始めて膳を据ゑ、遂に開戦。するや劇伴がズンチャカ鳴り始めたかと思ふと、キシカナの裸身にヌチャーラヌチャーラ絵具を塗りたくり、汚い絡みに突入する煌びやかなまでのダサさには、改めて流石佐野だと感心した。

 とこ、ろで。柳田“大先生”友貴もビックリの驚愕のラストが、砂丘に体育座りでへたり込む佐々木の下に、佐知子が歩み寄る。高さ的に佐知子の太股辺りに佐々木が顔を体ごと預けるロングから、砂と空しかない空間を、何と実に二十秒正パンしてそのまゝ終り。特にこれといはなくとも何もないところにスーッとパンして、何事もなかつたかのやうにまた元のカメラ位置にスーッと戻る。当サイト命名の柳田パンも大概な荒技だが、三分の一分虚空パンにはそれ以上の衝撃を受けた。といふか、異常、もとい以上なのか以下なのか最早よく判らない。但し、あるいは更に。原題インがなかつた点をみるに、もしかすると配信動画には、オーラスまで全部は入つてゐない可能性も残されなくはない。


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 「変態テレフォン☎ O・N・A・N・I・E」(1993/製作:国映株式会社/配給:新東宝映画/監督・脚本:佐野和宏/企画:朝倉大介/撮影:斎藤幸一/照明:本吃度陽典/編集:酒井正次/助監督:梶野考/演出助手:山田菜苗/撮影助手:斎藤博/効果:協立音響/現像:東映化学工業/録音:ニューメグロスタジオ/協力:水上荘・アウトグロウ・福島清和・青木宏将・吉本直人/出演:岸加奈子、高木杏子、梶野考、佐野和宏、上田耕造、セニョール・ヨネ、今泉浩一、佐野竜馬、佐野健介、津崎公平)。
 風音に“この物語はフィクションである”開巻、「Don't Let It Bring You Down、Don't Let It Bring You Down・・・・」と原題を性急に呟きつつ、ボコられた梶野考が駆けて来てタイトル・イン。この期にぽく改めて感嘆すると、佐野は本当にニール・ヤングが好きなんだな。
 私的に飛行機を飛ばした不祥事に絡み、副操縦士から地上勤務に降格された航空自衛官・沢野か澤野(佐野)が、妻の美奈子(岸)を連れ線路を走つて逃げる。後をある意味判り易く黒尽くめの、進藤か新藤(上田)と部下のセニョール・ヨネが追ふ。何某かの機密書類を握る沢野を見失ふも、進藤は十六年同じ釜の飯を食つた余裕を窺はせる。進藤と沢野が二人ともチェリーの煙草―ただ進藤がのちに自販機で買ふのは、ハイライトぢやないか?―を繋いで、森の中の沢野と美奈子。逡巡する沢野に対し美奈子が恐怖を訴へると、逆パンして棒立ちの不自然な体勢での青姦突入。したかと思ふや即座に今度は正パンするゆゑ、何事かと目を疑ふが単にカットを無駄に跨いだだけ。濡れ場をよしとしない、業態的には不誠実と変らぬ青臭さがなせる業なのかも知れないけれど、“大先生”柳田友貴スレッスレの唐変木なカメラの動きには苦笑する。一方、一息ついてヨネと瓶ジュースを飲んでゐたところ通りすがりの女(山田菜苗?)とミーツした進藤は、女物のパンティで口を塞ぎ女を殺す。
 沢野と美奈子が目指すのは、二度目の発作に見舞はれた義父(津崎)がいよいよチェックメイト寸前の美奈子実家。因みに美奈子実家の、内部が御馴染水上荘、外観は別ロケ。俳優部残り、津崎公平の顔見せ―終始掛け布団に覆はれない顔しか覗かせないが―と、野球のボールがスローモーションで放物線を描く8mm映像を挿んで、「う・ひ・は、へんてこりん」と「トリオ・ザ・3バカ」の日本版限定テーマ曲を歌ひ歌ひハンドルを握る梶野考は、自作8mm映画の上映会で津々浦々を旅する一人キャラバン野郎・タカヒロ、以後うひは。高木杏子は津崎公平の枕元で大好きなニール・ヤングを聴きながら、電話をかけて来た彼氏・ター坊(声の主不明)の求めに応じテレフォンセックスに興じる、美奈子の妹・エリコ。そしてうひはもエリコ彼氏の線も潰へたとなると、いよいよ配役が読めなくなつた今泉浩一が、沢野の監視をヨネに任せ宿に入つた進藤が呼ぶ、馴染の女装男娼。ヘテロの組み合はせ以上に情熱的な、上田耕造と今泉浩一による薔薇の花香る一戦。爆撃的な音効と挿み込み続ける雑多な映像で闇雲に盛り上げた挙句の果て、完遂に至る〆にはボガーンとポップな爆発音を入れてのける、最新作に於いても健在―娘がカラオケで荒れる件―な破壊的センスが実に佐野。正しく佐野、佐野・オブ・佐野。そして、あるいはそんな佐野実子の竜馬・健介兄弟は、劇中設定では沢野の姉に預けて来た、沢野と美奈子の息子・ゼムセルフ。
 国映大戦第二戦は、前年の「痴漢電車 いけない妻たち」(脚本・監督:瀬々敬久/主演:岸加奈子・伊藤猛)に続きPG誌主催ピンク映画ベストテンの第四位を受賞した、佐野和宏1993年第一作。お断りといふほどでなく正直にいふが、都度都度何を見るかは、ど・れ・に・し・よ・う・か・なレベルのその時気分で完全適当に選んでゐる。
 まさかの三分残り尺を余してクレジットに突入した際には軽く度肝を抜かれかけたが、後述するクライマックスから完奏する、友部正人の日本語詞「ラブミーテンダー」―全体何故この選曲なのか―に乗せ、8mmで撮影した佐野親子三人のキャッチボール風景と、わざわざ原詞と日本語訳とで「Don't Let It Bring You Down」のサビ部分を各一枚クレジットで打つに及んでは、グルッと一周して呆気にとられた。この頃佐野は離婚してゐたらしく、ほんなら何か?“へこたれてしまつちやだめだよ”。いやしくも量産型娯楽映画のフィールドで、佐野和宏は己を慰めるか百歩譲つて鼓舞するために映画を撮つてゐたのか。実に佐野、正しく佐野、佐野・オブ・佐野。
 「いけ妻」の影響下にあると看做されても仕方のない、自衛官が追ふか追はれるポリティカルな物語は、「いけ妻」よりも更に一層実も蓋もない形で、個人が組織なり体制に力なく抹殺されて終る。そもそも所詮は演出部な梶野考のうひは造形は画期的に鬱陶しく、頭数から不足した女の裸は正真正銘言ひ訳程度で、当サイトも五年前なら「てめえ、裸映画虚仮にしてんのか!」と脊髄どころかチンコで折り返して激昂してゐたやうな、気もすれど。
 うひはのライトバンをヒッチハイクして早々、沢野は実機かレプリカなのかまでは兎も角、航空機が露天展示される博物館に車を止めさせる。傑作練習機T-34メンター、日本名「はつかぜ」を愛でる形でその時点では正体不明の外堀を幾分か埋めた上で、沢野は美奈子の肩を抱き「お前を乗せて、音よりも速く飛んでみたかつたんだ」。そもそもメンターは音速出ないよ、さういふ無粋な輩の口は進藤にパンティで塞いで貰ふとして、「お前を乗せて、音よりも速く飛んでみたかつたんだ」。こんなダサい台詞、カッコよく撃ち抜けるのなんて佐野しかゐまい。全ッ力で感動した、小屋で観てゐたら多分ボロ泣きしてゐたにさうゐない。「お前を乗せて、音よりも速く飛んでみたかつたんだ」。なんてダサくて、そしてそれを撃ち抜く佐野はカッコいいんだ。うひはの8mm映画を、「それにしても酷い映画だな」と匙を投げる沢野に対し、美奈子が「でも時々映る空はとつても綺麗よ」とクソの足しにもならないが擁護する一幕も噛ませての、超絶怒涛のエモーションが爆裂するクライマックス、本来ならば。キチンとした画を作る能力も兎も角袖がなかつた節ならば当然酌めぬではないにせよ、如何せん暗くて近くて、判り辛さは否めない。沢野がプリミティブ極まりなく記録した“証拠”も、結局起動さへしない。限りなく零点に近い裸映画以前に、素の劇映画的にも至らない点ばかり多々見当たらなくもない、にせよ。偶さか俺が万事にくたびれてゐる年頃につき、といつてしまへばそれまでかそれだけの話でもあるものの、佐野が自分で自分の背中を押した今作に、背中を押されるサムシングを感じたことも認めざるを得ない。たとへそれがバッピに劣るとも勝らない棒球であつたとて、ど直球の“へこたれてしまつちやだめだよ”。ピンクとしては明白に駄目で、いい映画では必ずしもないとしても、憚らずにいふが大好きな一作。ランダム縛りを早速放棄して、次も佐野見るかな?


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 「痴漢電車 いけない妻たち」(1992/製作:国映株式会社/配給:新東宝映画/脚本・監督:瀬々敬久/企画:朝倉大介/撮影:斉藤幸一/照明:笹塚ライト兄弟/編集:酒井正次/助監督:田尻裕司/監督助手:原田兼一郎/撮影助手:斉藤博/応援:山田菜苗/録音:銀座サウンド/現像:東映化学/出演:岸加奈子・伊東ゆう子・伊藤猛・蒲田市子・佐野和宏・宵待闇四郎・外波山文明)。
 田圃が続く車窓、寝てゐる岸加奈子が目を覚ますと、対面には不遜なグラサンの伊藤猛が座つてゐて、なほかつリーチのある左足はスカートの中に潜り込んでゐた。暫しグリグリだかモゾモゾ、キシカナが密やかに喜悦した上で、ホームに入る電車にタイトル・イン。クレジットと並走して、風の強い物陰―といふほど隠れられてもゐない―でキシカナと伊藤猛が情を交す。中途で事後の渡船船着場、目的地が一応あるらしきキシカナに対し、体躯を持て余すかのやうにボサッとした伊藤猛は、キシカナが別れを告げたにも関らず、ボサッとしたまゝ後をついて来る。その内に倒れたキシカナを、伊藤猛は兄で漁師の外波山文明が嫁の伊東ゆう子と民宿も営む?実家に担ぎ込む。自衛隊は除隊した体の掴み処のない弟に、外波文が匙を投げる一方、無闇な色気のある兄嫁は色気づく。
 配役残り佐野和宏は妹とのラジオ体操が日課な、近隣で進むマリンリゾート開発の人夫。脱ぐと案外いいオッパイの蒲田市子が佐野の妹かと思ひきや、当人曰く佐野はお父さん。お父さんだとすると、お母さんは誰なんや。キシカナに執心したり、佐野の周囲に出没したり、兄嫁には言ひ寄られてもみたり。宵待闇四郎は油を売るに終始する伊藤猛の前に辛抱きらして現れる、同僚を通り越した同士。元版のVHSがどうなつてゐるのかは知らないが、正直下手なロングにもなるとそこに誰が映つてゐるのかてんで判らなくなるくらゐ配信動画の画質が派手に悪く、伊藤猛に見劣りしないタッパもある角刈りの男前である、見るから変名臭い宵待闇四郎の正体には辿り着けなかつた。
 “系”ならばある程度まだしも、狭義の国映作が月額のピンク映画chには殆ど全く入つてゐない―もしかしてガチで「未来H日記」だけ?―癖に、ex.DMMのFANZAですらない、今でも素のDMMバラ売り動画の方には結構ゴロッゴロ入つてゐる事実に気づき、上等だと国映大戦をオッ始めることにした瀬々敬久1992年第二作。商業限定で、通算第七作。平成元年のデビュー後―デビュー作もある―も続けてゐた助監督稼業からは、流石に90年で足を洗つてゐる。話を戻して、結構ゴロッゴロといふのが、ザッと見渡してみて二三十本は下らない。ex.DMMは回避しておきながらといふ辺りの、如何にもお高くとまつたスカし具合が矢張り癪に障らなくもないにせよ、ワン・ノブ・フロンティアスとして足元見られる、もとい突入する所存である。未見のもの、あるいは過去に観てはゐるけれども素通りしてしまつてゐるものは、何でも、あるいは誰のでも見るなり観たい。
 「何時かやるなんていふ奴の“何時か”なんて一生来ない、やるなら今しかないんだよ!」。エモい予告篇に琴線を激弾きされ観に行つた「菊とギロチン」は、途方もない映画だつた、尺が。若い頃強ひられた窮屈な映画作りの反動あるいはトラウマか、瀬々敬久は自分の企画ともなると際限を見失ふ傾向だか性向にあるやうだが、そもそも対比で論じる筋合のものなのかといふ、至極全うなツッコミに関しては聞こえないプリテンドでさて措くと、上映時間は菊ギロの三分の一にも満たない今作が、どう控へめに見積もつたとて少なくとも三倍は面白い。何気ない会話の端々で何となく外堀を埋めつつ、満を持しての宵待闇四郎投入で漸く全貌をほぼほぼ露にした物語が、俄然唸りをあげ走り始める強靭な作劇。伊藤猛が度外れたストライドで走り、佐野は観念的に彷徨ひ、そして重たい想ひを引き摺るキシカナが、姿を消した男を追ふ。結構な面子を大勢揃へた一般映画にも、引けをとらないどころか俳優部、おまけに画面の強度も勝つてはゐまいか。菊ギロにも和田光沙のサービス・ショットがなくもないけれど、加へてピンクにあるのは、いふまでもなく女の裸。廃屋の窓越しの伊藤猛と伊東ゆう子の後背位は映画的な詩情のみならず、通俗的な煽情性をも十二分に兼ね備へた良濡れ場で、キシカナと佐野が熱戦を大完遂したのち、カット跨いでグン!と引くカメラには度肝を抜かれた。終盤大概差し迫つての三番手は如何せん些か無理筋で、佐野の素性にあへて余白を残した以上、伊藤猛と佐野を繋ぐ線が、必ずしも満足に繋がつてゐるともいひ難い。バキューンバキューン銃声の音効は牧歌的で、エンド・マーク代りの、“一九九二、二、二七”は流石にダサも否めない。詰めの段階で幾分力尽きたきらひもなくはないにせよ、色彩―ないしは色調―と表情豊かな海を背景に、性と政治が滾るドラマはガツンと見応へがある。といふか、蒸し返すと結局三時間もかけて、菊ギロは性も政治も燻り仕舞ひだつたな。


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 「馬小舎の令嬢」(1991/製作:獅子プロダクション/配給:新東宝映画/監督:佐藤寿保/脚本:夢野史郎/企画:田中岩夫/撮影:稲吉雅志/照明:小川満/音楽:WAVE/編集:酒井正次/助監督:梶野考/監督助手:田尻裕司/照明助手:広瀬寛巳/スチール:佐藤初太郎・大木寛/録音:銀座サウンド/現像:東映化学/出演:雪之丞・浅井理恵・水鳥川彩・仲原美樹・小林節彦・今泉浩一・杉浦峰夫)。依然所々屈しつつ、写真部セカンドの大木寛は、夢野史郎の本名。
 今度はNFAJ国立映画アーカイブ開巻、馬小舎に御馬様とセーラー服の雪之丞。闖入したゴーグル装着の杉浦峰夫(あくまで別役/紀野真人がex.杉浦峰夫)が、雪之丞を犯す。流星と名を呼ばれた、馬は勃つてゐた。一転東京、のプロジェクターがあつらへられた小室。頭の中に馬の声を聞くとかいふ雪之丞を、東京音響研究所の沢田(杉浦)がカウンセリングする。砂嵐バックのタイトル・インに、色濃く漂ふ佐藤寿保の空気。マネキンを満載したキャンピングカーが、片田舎を目指す。主はアーティスト(笑)の浅井理恵で、助手の今泉浩一がカメラを触り、同じく小林節彦がハンドルを握る。実家の木崎か城崎牧場は廃業してなほ、流星を飼育する雪之丞は、虚空にガンマイクを向け、何もない音を録りに来たとかいふ沢田と再会。素頓狂な者同士ウマが合ふのか、男女の仲にならずとも行動をともにする。気持ちボーイッシュな雪之丞が、飄々と広げる大風呂敷。雪之丞はWAVEなる独自の方法で、馬のバイオリズムにアクセスし得るとしてゐた。
 配役残り水鳥川彩と仲原美樹は、当地に滞留する浅井理恵以下三名の前に現れる、ホクトスターの父親である流星を訪ねた競馬サークルの女子大生。正直純然たる濡れ場要員にしては、肝心の濡れ場を質量とも満足に見せないのは―演出部の―頂けない不誠実。
 「馬と女と犬」(1990/主演:岸加奈子・佐野和宏)の大ヒットを受け二匹目の泥鰌ならぬ馬を狙つた、佐藤寿保1991年第六作。「馬と女と犬」よりは全然マシではあるものの、全く飛ばないといふ訳でもない、プリントが。佐藤寿保の獣姦ものは都合この二本きり、一本も撮らない監督の方が、寧ろ大半を占めるとはいへ。幾分御祝儀製作費も出たのか、頭数から増えた割には三番手以降は殆ど仕事をさせて貰へず、年増が消えたにせよ女優部のデチューンは否めない。男優部は杉浦峰夫の役へのハマり具合もあり、佐野の大穴はあれ然程の瑕疵は感じさせない。尤も無視された雪之丞に、今泉浩一がトランシーバーで捨て台詞を投げるカットには、この人が出て来ると、元々線の細い叙情性と表裏一体にヌルい荒木太郎のみならず、どんな映画も途端にダサくなると改めてかこの期に苦笑した。爆走するWAVE奇想の陰で、まんまAKIRAなホルマリン漬けのホース・パーツと、馬の魂を吸ひ取つた鏡がひつそりとでもなく追走。ドミノ式に全員死んで行く無造作な修羅場は相変らずか性懲りもないながら、終に彼岸と此岸の境界が決壊するスペクタクルは、限りなくノーに近いローバジェットの美術を力技で捻じ伏せる、照明部決死の奮闘にも加速され圧巻。ラストの出し抜けな凶行があれよあれよと死体の山を築くのは、今も変らぬ佐藤寿保の十八番。主演女優の性的訴求力がそもそも高くなく、御馬様と致す売りの見せ場も申し訳程度。要は「馬と女と犬」に気をよくした新東宝を余所に、佐藤寿保×夢野史郎が好き勝手に自分達の映画を撮つたと思しき風情が清々しい。規定回数の絡み―と女優部の頭数―さへあればあとは自由、との口を開けば語られる割に、実質的な意味の如何は如何なものかなピンク映画らしさが、アイコニックに表れた一作ではある。


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 「馬と女と犬」(1990/製作:メディアトップ/配給:新東宝映画/監督:佐藤寿保/脚本:夢野史郎/撮影:稲吉雅志/照明:千鳥修司/編集:酒井正次/助監督:広瀬寛巳/監督助手:吉田国文、他一名/照明助手:岡野敏二/音楽:早川創/録音:銀座サウンド/現像:東映化学/出演:岸加奈子・佐野和宏・佐々木ゆり・上原絵美・小林節彦・高橋達也)。不得手な時代の情報量以前に、本当にザックザク駆け抜けるクレジットに憤死する。
 新東宝よりも先に、国立映画アーカイブの前身・東京国立近代美術館フィルムセンターのロゴで開巻。波打ち際、岸加奈子が打ち上げられる。そこに佐野和宏が現れ、背中から両足首を肩に担ぐ形で岸加奈子を運ぶ、既に水死したものとでも思つてゐるのか。雨風を凌ぐのも怪しいボッロボロの廃屋にて、佐野はキシカナをポラロイドで撮影する。馬の手綱を引いた、全裸の女の後姿にタイトル・イン。明けは双眼鏡を構へた、目元にスリリングな齢を感じさせる女。え、この女が脱ぐの?舞台は「馬を飼ふ人妻」(2001/脚本:石川欣/主演:朝吹ケイト)その他で下元哲がよく使つてゐた、コンドミニアム「グランド・ヴィュー・一宮」に見える。「グランド・ヴィュー・一宮」が、1990年当時既に完成してゐたのか否かは確認出来ず。女主人あるいは女王の矢野牧(佐々木)が、下僕の木島伸(小林)と津田晃久(高橋)に木山紀江(上原)を凌辱させる。改めて確認しておくと、ex.上原絵美が、当サイトが結婚したい女優第一位の石川恵美。今作のハードな扱ひでは、穏やかに朗らかな、石川恵美の持ち味は微塵も活かされないが。逆に、何時観ても小林節彦はヒャッハーな造形がサマになる。それとこの人は昔から老け顔につき、余程痩せてもゐないと驚かされるほどの若さは感じさせない。WAM的に何某かの食べ物で紀江の体を汚したかと思ふと、御犬様(犬種とか判らん)大登場、紀江は犬にも犯される。意識を取り戻した早川夕子(岸)の前に御馬様を連れ現れた厩務員の右田亮(佐野)は、馬が女王の所有物である旨を語る。自身に向けられた、右田の歪んだ欲望をウッスラ夢の形で認識しつつ、夕子は、過去の記憶を何も覚えてゐなかつた。
 配役は猫一匹残らないが、“人間と動物が絡み合ふ王国”だとか称して、自分よりも若い女にヒステリックな暴虐を振るふ牧を、テラスで木島と津田がアル中女と実も蓋もなく揶揄する件。遠目に車列が見えるのは、海に隔絶された異界といつた風情の、舞台設定的には何気にシリアスな粗相ではあるまいか。
 前年の「フィルマゲドンⅢ」に続く、カナザワ映画祭(2007~)の於小倉昭和館地方開催企画第二弾「死と禁忌」で着弾した、佐藤寿保1990年第三作。ペケ街では新東宝最大級のヒットを飛ばしたとか、半公式的に謳はれる一作。因みにこちらは公式のエクセス最大が、浜野佐知1995年第一作「犬とをばさん」(脚本:山崎邦紀/主演:辻真亜子)。市場がそんなに獣姦が好きならば、オーピーは今こそ討つて出るべきではないのか。プラスのR15に納まりきらず、元も子もなくなるのかしらん。
 兎にも角にも、上原絵美が御犬様で、御馬様は岸加奈子。ザラッと駆け抜けるカットの中女優部が半狂乱に泣き叫ぶ、獣姦シークエンスはよしんば所詮演技に過ぎなくとも、何れも物凄い迫力。当時の度肝を抜かれた観客席は、今なほ決して想像に遠くない。“吾、蒼褪めたる馬を見たり”、“その馬に跨る者の名を、死といふ”。お馬さんがゐないと始まらない話につき、ヨハネ黙示録第6章第8節を持ち出すペダンティックな飛び道具も効果的に、来し方を喪つた夕子を、左右から腕を引つ張り合ふかのやうに右田と牧が取り合ふ、越前不在の大岡裁きの如き展開は走る。正方向に面白い映画がなッかなか浮かばない色物中の色物企画、あるいは下手打ちの鉄砲が積もらせた塵のまゝの堆積物から、遂に佐藤寿保×夢野史郎が一撃必殺のマスターピースを撃ち抜いて、ゐたのこれ?今時35mmフィルム映写でピンクが見られるだけ有難い話にせよ、まあ全篇を通してプリントが坂上二郎ばりに飛び倒す飛び倒す。時計を見るに、ザッと三分は飛んでゐる。繋ぎの画なり百歩譲つて濡れ場はまだしも、台詞を中途で端折られては、ただでさへ雰囲気勝負の奇譚が、雲散霧消も通り越して木端微塵、さつぱり訳が判りやしねえ。通して観たとしても、やつぱり判らないかも知れないけれど。ついでに、プリミティブな修羅場、あるいは三年後も全く進歩してゐないドミノな死屍累々には頭を抱へた。刃傷沙汰を満足に描けぬ演出家か脚本家に、拳銃を渡すのはやめた方がいい、粗雑なギャグにしか見えない。右田は夕子と、二人して王国を離れようとする。何か思ひだすまでと二の足を踏む夕子に、右田は「思ひだすために出て行くんだ」。佐野和宏の青いエモーションが爆裂する遣り取りを先の尖つた頂点に、佐野とキシカナの絡みは乳尻があらうとなからうと画になる。ここはひとまづ、それでよしとしようぢやないか。より直截には、それでよしとでもしておかないとしやうがない。

 それにつけても、「馬と犬と女」。どストレートな公開題が、絵画的なタイトルバック込みで超絶カッコいい、ハードコアチョコレート辺りがTシャツ作らんかいな。


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 「昭和をんなみち 裸性門」(昭和48/製作:日活株式会社/監督:曾根中生/脚本:大和屋竺/企画:岡田裕/撮影:森勝/美術:徳田博/録音:神保小四郎/照明:川島晴雄/編集:辻井正則/音楽:奥沢散策/助監督:浅田真男/色彩計測:木野尾信正/現像:東洋現像所/製作担当者:高橋信宏/出演:梢ひとみ《新スター》・絵沢萠子・江角英明・葉月かおる・沢田情児・堀弘一・三川裕之・長弘・玉井謙介・小森道子・橘田良江・田畑善彦・衣笠真寿男・久松洪介・賀川修嗣・北上忠行・大谷木洋子・氷室政司・吉田朗太・庄司三郎・しまさより・佐藤了一・萩原実次郎・伊達真人/技斗:田畑善彦)。出演者中三川裕之と、玉井謙介以降は本篇クレジットのみ。逆にポスターには載る大山節子の名前が、本クレには見当たらない。実際どつちなのかといふと、多分出てはゐないやうな気がする。クレジットはスッ飛ばす配給に関しては、事実上“提供:Xces Film”。
 日傘を差した和装の女が、鳥居を潜るロングにタイトル・イン。個人の特定如きすて措けと、振り切れて思ひきり引いたカメラが清々しい。大正時代、本篇開巻はチャチい模型を用ゐての、まさかの口腔内から外を見た視点のショット。正直、この時点で嫌な予感はした。侯爵の桂川実篤(長)がナポレオンに扮する座長(堀)率ゐる一座を、屋敷に招いての観劇。石女―劇中いはゆる“不適切な表現”ママ―の妻・綾子(絵沢)が、ナポレオンと密通してゐるのを知る桂川は、自身も護衛役の藤堂貞之助(江角)の情人で女郎上がりの、戸田しの(梢ひとみの二役)を囲つてゐた。しのが二卵性の兄妹を出産、桂川が男児は綾子との間に生まれた子として育てる一方、しのと女児は放逐。桂川家執事(賀川)は藤堂に備前兼光を与へ、言外に母娘の始末を命じる。十九年後、の昭和七年。桂川の援助で今や道場も構へる藤堂に、今際の間際のしのから手紙が届く。何処ぞの田舎にSLで駆けつけ、しのの臨終を看取つた藤堂は、しのの娘・鏡子(梢)と出会ふ。
 ぎりぎり女優部はまだしも、膨大な男優部にぼろぼろ手も足も出ない辿り着ける限りの配役残り、しまさよりは綾子の侍女。陣痛に苦悶するしのから、平然と扇風機を奪ふカットの非情さよ。久松洪介が、兄妹を取り上げる医師。藤堂に連れられ上京、あるいは帰京した鏡子は、頑なに母と同じ娼婦の道に進むことに固執する。玉井謙介は、遊郭にて“お父さん”と呼ばれる人。a.k.a.森みどりの小森道子と橘田良江は、淫売要員のセーラー服と、矢張り劇中“不適切な表現”ママでめつかち。田畑善彦ともう二名が、藤堂が鏡子を連れ戻しに来た悶着に、介入する江崎組の衆。そんなにさうも見えないが老いてなほ腕の立つ藤堂に、チョロッと捻られる。遊郭に、三人の一高生が現れる。我等がロマポ脇役部の雄・庄司三郎はもう一人で、沢田情児が成長した京子の兄にして、苗字は桂川の浩義。最終的には菊江(葉月)と壮絶な東映―ばりの大を通り越した超失血―死を遂げる一高三羽烏のリーダー格と、藤堂の一番弟子・木村が固定出来ない大きい役。見れば判るつもりの佐藤了一も、見切れなかつた。
 初出演ではないが初主演の梢ひとみに、新人扱ひも何なので“新スター”と銘打つのが斬新に映る、曾根中生昭和48年第四作。ソネチューだ大和屋だとなるとシネフィル~な界隈での評価は概ね高いやうだが、直截にピンと来ない、しつくり来ない。何はともあれ、馬鹿みたいにデカいボカシは百歩譲つて兎も角にせよ、画を狙ふのは構はないが、女の裸は満足に見せろ。ロマポは専門外につきよく判らないがたとへばエクセスと国映を比べた際の如く、ピンクでは主に会社単位のカラーで異なる、実直に裸映画に徹するのと、ゲージュツに気触れてみせる。路線なり部署の相違が、日活単体の中で案外明確にあつたものなのであらうか。濡れ場も疎かに鏡子の激情は兎にも角にも激しくはあれ理解にも共感にも遠く、絶妙に間の抜けたハンサム止まりの江角英明と沢田情児、男メインの二人が二人とも弱い。無造作な大立回りは今となつては牧歌性の範疇を突破し得る類のものでもなく、何もかも置いてけぼりにした清々しい絶望感は鮮烈でなくもないものの、描写が足らないか端的に不手際でラスト木村が何者と刺し違へたのかがてんで判らない以上、出し抜けに浩義を左に振るのは木に竹も接ぎ損なふ。サブ以外唯一正方向に琴線に触れたのは、執事が藤堂に最後に言ひ放つ、「藤堂、お前は何時も自分を賭けるものを間違へてゐる」なる、殆ど唯一地に足の着いた、且つ見事に真実を撃ち抜いた地味な名台詞。


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 「外人妻」(昭和48/製作:日活株式会社/監督:白井伸明/脚本:豊島耕次/プロデューサー:三浦朗/撮影:安藤庄平/美術:川原資三/録音:長橋正直/照明:高島利隆/編集:辻井正則/音楽:世田ノボル/助監督:上垣保朗/色彩計測:二村秀信/現像:東洋現像所/製作担当者:古川石也/出演:サラ・バーネット、丘奈保美、吉田潔、木夏衛、薊千露、堀弘一、堺美紀子、島村謙次、橘田良江、北上忠行、トニー・F・スコード)。出演者中、橘田良江とトニー・F・スコードは本篇クレジットのみ。クレジットはスッ飛ばす配給に関しては事実上“提供:Xces Film”。
 ジャンボ機の着陸ショットから、空港内をゆつくりとカメラを回す。足元と胸の谷間を抜いて、よく見ると五角形のグラサンをかけたアメリカ産の主演女優。ポーターにチップも寄こさずタクシーに乗り込んだマーサ・ジーン(サラ)が、セタガヤーと行き先を告げてタイトル・イン。クレジット明けは、「茶道教授 家元 三村玄斉」の表札が掲げられた結構なお屋敷。とはいへ、劇中欠片も出て来ない点を見るに、どうやら玄斉先生は故人の様子。呼鈴の音に、玄斉の多分未亡人・しげ(堺)に促された女中のサユリ(薊)が応対すると、現れたのは警察官(北上)。三村邸を訪ねたいやうだが、殆ど日本語が話せないマーサを苦労して連れて来たのだといふ。“若先生”ことしげの息子・久男が留学中にとつた弟子だらうとしげとサユリが適当に納得する一方、当の久男(吉田)はといふと、ノンアポのマーサ来日を当然知らず、弟子に手をつけた細川あけみ(丘)と裏口からこつそり忍び込まうとしてゐた。ところで若先生の気配を―無意識裏に―察知するや、サユリが脊髄で折り返して臭い屁を放(ひ)る正しくクソみたいな小ネタは、序盤執拗も通り越した勢ひで乱打される割に、中盤以降はスカッと等閑視される。正直なところ、サユリが屁を放り倒す時点で臍は曲がつた、あるいは匙を投げた。
 配役残り、庄司三郎の型式を仮にMS-06とすると、私見では06Rに相当する木夏衛は、久男があけみを連れてよく行つてゐた、レタリングに凝り過ぎて看板の店名が読めないバーのマスター・花田二郎、堀弘一がボーイの川本。今回見切つた木夏衛最大の弱点が、この人に介錯させると絡みがエロくならない。島村謙次はバーの常連客・黒木で、橘田良江は黒木が同伴する偽外人・エリザベス、何処からどう見ても単なるヅカメイクの日本人。ところで木夏衛と島村謙次の組み合はせとなると、今作の三週間後に封切られた「必殺色仕掛け」(監督:藤井克彦/脚本:高田純/主演:二條朱実)に登場する、棹で渡世を送る奥野三兄弟の次兄・慶次郎と長兄・沢太郎。更に薊千露は奥野三兄弟と激突する名器三人娘の一角・数の子天井のおぬきに、堺美紀子が女親分・血桜のお満。馴染の面子で大山を積もらせる、量産型娯楽映画らしさが清々しい。コミタマが出て来ないと画竜点睛を欠いた気がするのは、多分当サイトがどうかしてる。トニー・F・スコードは、マーサを追つて来日した、アメリカに置いて来た元カレのヘンリー・スミス。ヘンリーに抱かれたマーサは一旦三村邸を放逐、ある意味問題なのが、公園で消沈するマーサを慰めるピエロ?役で、ノンクレジットで飛び込んで来る高山千草。メソッドは辛うじてピエロぽいものの、化粧も所作もあまりにも奇怪に不安定で、道化師といふよりは、直截に気違ひにでもしか見えない。
 映画界を退いたのちは―講師業もしてゐたやうだが―和光市議会副議長にまで上り詰めた白井伸明(2014年没)の、昭和48年第二作。しかも家人が普段から和装の一家に、アメリカ娘が逆トラトラトラを仕掛けて来る。コッテコテのホームドラマを、実はビリング頭二人しか脱がない布陣による劇伴からベタな濡れ場で繋いだ上で、戯画的な悪役投入、後半は雑な悶着が巻き起こる。ロマポに触れてしばしば思ふのが、画面―だけ―は下手に分厚い分、物語なり展開が他愛ないと、端的にその他愛なさが露呈するやうな気がする。この期に及んで、白人娘の裸一点突破で腰から下に張られた琴線をウッハウハ激弾きされる訳でも別になく、それもそれでロマポなりの味なのであらうが、元来ロマポ如きシネフィルに喰はせてしまへといふ嘗めた態度の与太者につき、未だそれを嗜好するには至らず。尤も、コミタマに飛び込まれると途端に掌返すんだけどね。


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 「絶倫謝肉祭 奥まで突いて!」(2017/制作協力:映像集団マムス/提供:オーピー映画/脚本・監督:佐々木浩久/撮影:鏡早智/録音:臼井勝・大野裕之/ヘアメイク:山崎恵子/編集:大永昌弘/助監督:相原柊太・もがきかんと・原田涼/撮影助手:中島寛貴/スチール:阿部真也/音楽:ゲイリー芦屋/制作応援:植野亮/機材提供:鈴木昭彦/仕上げ:東映ラボ・テック《株》/協力:プロメイク舞台屋・おしもん・阿部友馬・黒沼優大・高橋かれん・多田日向子/企画協力:しじみ/出演:さくらみゆき・蓮実クレア・しじみ・小坂ほたる・木村友貴・もがきかんと・ジーコ内山・山田岬・滝本ゆに《特別出演》)。ヘアメイクと、音楽の位置に違和感を覚えなくもないクレジットではある。
 ウイルスの蠢動を想起させる、マムスのロゴ。朝の食卓、女子大生の新垣渚(さくら)が、多分同級生の彼氏・間宮光太郎(小坂)の粗野な無作法に眉をひそめる。ところで佐々木浩久は鯨党で知られるにしては、何故プロ入りはホークスで、一度きりのトレード先であるスワローズで引退した新垣渚。閑話休題、渚の父親(佐々木浩久)の海外赴任に母親(滝本)も同行、渚が一人で暮らす自宅マンションに、光太郎が転がり込んでの同棲生活。ところが渚は人が変つた光太郎の、噛んだり爪で傷つけたりと暴力的なセックスに悩んでゐた。渚が先輩で医師の高坂瑞希(しじみ)宅に相談に行つたところ、軽く診察がてら実は両刀の瑞希が点火したタイミングで、瑞希の恋人でこちらはex.刑事の弁護士・桜田健一(木村)が現れる。そのまゝ不自然極まりなく桜田がオッ始める、木村友貴が場数―かセンス―不足を派手に露呈する濡れ場に、笑ひを引き攣らせたやうな表情で渚が目を丸くしてタイトル・イン。帰途、渚は地球が狙はれてゐると警鐘を鳴らす小冊子を路上頒布する脳にチューナーを内蔵した人(もがきかんと/漢字で書くと茂垣歓人?)に、呪はれてゐると喝破される。渚が恐々帰宅すると、家には光太郎の姉と称する悦子(蓮実)が上がり込み、誰の金で頼んだのか出前の握り寿司を食つてゐた。その夜、相変らず光太郎の暴力的なセックスに苛まされる渚は、攻撃的なまでに煽情的な真紅のネグリジェで、寝室を覗く悦子に気づく。
 謎しか残らない配役残り、性別から不明の山田岬が、光太郎の実家がある長崎に辿り着く前に、熊本で姿を消したオリジナル悦子の写真出演だとしても、依然「豊丸の何回でも狂つちやふ」(1989/脚本・監督:細山智明/主演:豊丸)以来、凡そ三十年ぶりともなるピンク映画二戦目の筈の、a.k.a.さそり監督ことジーコ内山が何処に出て来たのかが全く以て皆目判らない。チューナー脳がその人かと一瞬見紛つたが、それらしき頭数すら見当たらない。例によつて、尺の長いOPP+版には光太郎の父親辺りで登場するとかいふ寸法なのか?だとしたら、小屋の観客を虚仮にするのも大概にせえよ。
 事の発端はしじみが話を振つたとの、佐々木浩久ピンク映画参入作。榊英雄のやうに、継戦するのか否か。あるいは、当人にその気があるのなら―オーピーが―させるのかどうかは知らん。性的に過激なストレンジャーの登場に、ヒロイン始め一同が巻き込まれて行く。と掻い摘むと定番のジャンルでいへば家庭教師ものといつた、如何にもそれらしき物語にも思へ、日常がバッド・テイスト満載にみるみる崩壊、遂には邪神をも召還と、物語は弥の明後日に大暴走。要は、女の裸を出汁に、佐々木浩久が何時も通りのやりたい企画を通した格好となる、ざつくばらけるにもほどがある。
 苛烈な連ケツの大技も繰り出しつつ、絡みは概ね等距離から捉へる単調なエッサカホイサカにほぼ終始。どうやらこの御仁には、乳尻に寄るといふ頭は一切ないらしい。山﨑邦紀の大蔵一旦離脱作「SEX実験室 あへぐ熟巨乳」(2013/主演:有奈めぐみ)から久し振りにピンクに参加した鏡早智も、蓮実クレアをエロくといふよりはPV風にカッコよく撮る方向に傾注。オッパイが画面に見切れる時間は、物理的時間自体は案外どころでなく長い割に、裸映画的な有難さはまるで感じさせない。一方今時のホラー的には、特撮に割く袖も当然ない上で、傷なり匂ひといつた定番のギミックでなく、生理的な嫌悪感を最も惹起するのは、小坂ほたるの不細工な中性性であつたりもする。道徳なり倫理を相対性の一撃で粉砕、欲望の普遍性の一点突破で暴れ抜く、セクシュアルな魔人・悦子の凄味は偶さか激しく煌めきかけるものの、対する絶対善、乃至は不屈の希望を担ふ渚の姿は蓮実クレアとさくらみゆき(現:みゆき菜々子)の役者の違ひから覚束なく、闇雲に広げてみせた大風呂敷が、軟―弱に―着陸する穏当なつもりの適当なラストには激しく拍子抜けした。いつそ、世界を終らせるまでに振り抜いてみせればと、終末思想にも似た不満は禁じ難い。大事な一点を忘れてた、妖しく輝く蓮実クレア(ex.安達亜美)の一人勝ちは許さんとばかりに、しじみ(ex.持田茜)が語尾を“だからあ!”と弾けさせる十八番をサラッと撃ち抜き気を吐くのは、数少ない見所のひとつ。改めていふと、もしくは保守的な与太を吹くやうだが、基本やりたいやうにやつたと思しき佐々木浩久が、今作の出来に満足してゐるのかゐないのかはさて措き、少なくともピンクとしては別に面白くも何ッともない。累々と量産型娯楽映画を長く支へて来た本隊の人間が斯様な、換骨奪胎なり牽強付会なり、我田引水といつた四文字熟語も浮かぶ托卵じみた一作を果たしてどのやうに捉へてゐるのか。おい荒木太郎、黙つてないで何かいつたらどうなんだ?ピンクで映画なピンク映画を、感得したのかそもそも感得するに足る資質を有してゐたかは兎も角、一番表立つて希求してゐたのはアンタだろ。


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 「宏岡みらい したがり女医の湿毛」(1995『美尻診療台 締めて開いて』の2003年旧作改題版/企画・製作:オフィス・コウワ/提供:Xces Film/監督:坂本太/脚本:坂本太/プロデューサー:高橋講和/撮影:紀野正人/照明:三浦方雄/音楽:伊東義行/編集:フィルムクラフト/助監督:高田宝重/監督助手:堀田学/撮影助手:塚園直樹/製作担当:真弓学/メイク:大塚春江/スチール:小島ひろし/録音:ニューメグロスタジオ/現像:東映化学/出演:宏岡みらい・摩子・浅野桃里・杉本まこと・平賀勘一・久須美欽一)。監督と脚本を別立てするのは、本篇に従つた。
 ビル群のロングに、高橋講和からクレジット起動。雑踏噛ませて電話口では奥山メンタルクリニックの、看板「奥山クリニック」。尻を向けた女医が患者の股間に顔を埋める画に坂本太の監督クレジット、タイトル・イン。出社恐怖症の筒井(平賀)に奥山レイコ(宏岡)が身を任せ、受付のハルミ(浅野)がその様子を窺ひながらオナる。診察後、もしくは単なる事後。男の悩みなんて下半身をスッキリさせれば解消される、と即物的なジャスティスに到達してのけたレイコがハルミに曰く、男の悩みが、女を愉しませる。早速振り抜かれる劇中世界観の根底を成す、底の抜けた方便が清々しい。摩子と杉本まことことマコマコの、摩子が欲求不満の風情残す夫婦生活挿んで、机に向かふレイコと、ションボリ膝を抱へる久須美欽一が背中合はせの奥クリ診察室。娘の反抗期に過敏に打ちひしがれる平沢(久須美)にレイコが持つて来させたブツが、何と娘の制服。それを着させたハルミを娘・ナオコに模し、平沢大ハッスル、何てフリーダムなんだ。平沢相手に午前の診療からトバし過ぎるハルミの様子に、レイコが女手の追加も考へない中、帰り支度夕暮れ時の奥クリに、レイコの姉・ミサコ(摩子)から取留めのない電話がかゝつて来る。
 サクサク配役も残らない、DMMスルーの坂本太1995年第一作。レイコの増員希望が、摩子に着弾するタイミングが些かでなく早いのではとも思ひつつ、正確な顛末は案外豪快に割愛して済ます、元々レイコが杉まこと持つてゐた爛れた関係を軸に、後半は絡みのグルーブ感が再どころか更に一層の猛加速。ナオコ役に今日はレイコが扮する平沢の治療に目を丸くしたミサコは、軽く姉妹百合を咲かせがてら、モラルなり理性の殻を破れだ、本当の自分云々だと煽られる。この辺りは坂本太が何処まで本気なのかは兎も角、夫に、ミサコが妹のクリニックを手伝ふ旨だけのお伺ひをたてる寝室。ミサコが尺八を吹く引きから杉まこを抜いたバスト・ショットが一旦フェード・アウト、再フェードで今度はレイコの尺八に繋げるカットが鮮烈にして、映画の起爆装置に完全に点火。ロケーションなり時制といつた仔細は軽やかに等閑視した上で、宏岡みらいV.S.杉本まこと×摩子V.S.久須美欽一×浅野桃里V.S.平賀勘一、濡れ場・ストリーム・アタックが苛烈に火を噴くクライマックスが圧巻。屈強位にしても腹に段が発生しないスレンダーな肢体から、オッパイだけ悩ましく膨らんだ美巨乳を誇る宏岡みらいをビリング頭に擁し、脇を固めるのが絶対美人の摩子に、別に主演を張つて全然おかしくない浅野桃里をもが三番手に控へる超攻撃的な三本柱を得た坂本太は、脇目もふらずにアクセル全開。物語なり起承転結如き、犬にでも喰はせてしまへといはんばかりに、女の裸だけで観客を圧倒する、しなやかな裸映画の力作である。


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 「美少女剣士 月に向かつておシゴキよ!」(2017/制作:《有》大敬オフィス/提供:オーピー映画/音楽・脚本・監督:清水大敬/撮影:井上明/照明:ジョニー行方/録音:荒木俊一/助監督:森重久彌/スチール:田中幹雄/殺陣:上岡敬助・清水大敬/撮影助手:宮原かおり・亀山大和/照明助手:葉山昌堤/着付け:戸山文代/制作進行:花椿桜子/仕上げ:東映ラボ・テック/出演:さとう愛理・円城ひとみ・松井理子・白咲ゆず・三沢亜也・里見瑤子・なかみつせいじ・森羅万象・野村貴浩・橘秀樹・永川聖二・太三・上岡敬助・三島幸雄・土門丈・萬歳翁・永井義政)。クレジットの無慈悲な無造作さに爆砕される。
 「やー」、道場にてさとう愛理が木刀を二閃振りタイトル・イン。映画の世界から身を退いたアクション監督・千葉勇(野村)が開いた千葉道場、アクション女優志望の居酒屋アルバイト・山口裕子(さとう)、裕子の彼氏・大石健児(橘)、その他塾生要員(太三と、国沢組からピンク初外征の永川聖二)が稽古に汗を流す。後片付けを任された道場での、裕子と大石の絡み初戦噛ませて、開店前の裕子バイト先居酒屋。ex.チンドン屋の雇はれ大将・大山武男(なかみつ)と、嫁・美由紀(松井)の夫婦生活。てな塩梅でここまでは、頗る快調であつたのに。鎌田一利と中村勝則がゐるのは見切つた、東京JOEに周磨ッ波もゐたやうな気がする居酒屋店内。第一声で客ではないと明言する無粋な山口弘美(円城)が、裕子を訪ね来店する。杉本哲太似の裕子亡父(不明)と、明らかに“抜かれない”亡母(マサちやん?)のスナップ飾られた山口家。出し抜けに生き別れの姉を名乗る弘美を、ガチ家族しか知り得ない情報を持つてゐるゆゑ裕子はサクッと受け容れる。
 配役残り、空気の重い映画制作「アクション・カンパニー」(株)。里見瑤子が女社長の島淳子で、森羅万象がアクカンに出資した香港の映画プロデューサー、リー・チャンゴン、白咲ゆずはリー秘書のアンジェラ真紀。制作中映画の主演・鵬亜季沙(円城ひとみの二役)に失踪され、三人で頭を抱へる。清水大敬2013年第一作「巨乳マッサージ しびれて絶頂」(主演:青山菜々)以来、予告ではヤクザの大姐御か何かに見えた三沢亜也(a.k.a.しのざきさとみ)は、弘美が山口家に呼び寄せる引退した先輩女優・吉沢萌。その他辿り着けるのは、千葉が信頼する殺陣師二人の内、試写会会場の満映シネマにも顔を出すロン毛が、ビリング推定で上岡敬助か。
 デビュー三年目となる1998年、デジエク元年の2013年に並ぶキャリアハイの本数を叩き出した、清水大敬2017年第三作。要は平成丸ごと失つたに等しい、依然展望が開く、兆しの欠片さへ見当たらないどうしやうもない状況下に於いて、清大近年の底抜けに陽性な王道娯楽映画路線をそれはそれとしてそれなりに評価するものではあれ、流石に今回は頂けないといふか、より直截にいふとくたびれた、映画の感想が“くたびれる”とは何事か。
 新田栄の流麗と比較するとなほさら際立つ、ザックザク体位移動する濡れ場の繋ぎは、その限りでは乳尻の見せ方の目新しさと捉へれば呑み込めなくもないにせよ、結局その雑さは全篇を支配。裕子の夢物語が実は拍子抜けするほど呆気なく一方通行で直進する割に、下手に俳優部全員に見せ場を持たせようとした結果の、エピソードの節度を欠いた羅列が積もつて山を成す始終には正直消耗した。しのざきさとみの健在な近影が拝めるのは嬉しいし有難いけれど、一回チラッと拝ませて呉れるだけでいい。杉本哲太が、裕子を育てるのにほかの女と家庭を構へる意味が判らない。個々の一幕は清水大敬らしい入念、ないしは執拗さでコッテリ愉しませるものの、総量としての女の裸に不足を感じさせるのは大いに考へもの。里見瑤子が脱ぐ訳でもない千葉と淳子の絡みはまだしも、大山までもがアルトサックスを吹かす件なんぞは清々しく無用で、劇中同題で完成した美少女剣士を長々と見させる尺があるならば、さとう愛理のプリップリに悩ましいオッパイに割くべきではなからうかと声を大にして訴へたい。ナベもが登板回数を減らす中、重用される清水大敬の好調さが空回つた感も否めなくはない一作。とりあへず、オーピーはいい加減この人にカサブランカを禁止に出来ないものかと一旦匙を投げかけて、いや、あるいは否。高見沢のギターに生えた翼と同様、カサブランカ愛がなくなると清大の映画でなくなるのかな。

 2012年第一作「巨乳理髪店 乱れ揉みくちや」(主演:中居ちはる)ぶりの久々に、極大クレジットで木に竹も接がないメッセージを暴発させる清水大敬病再発。“受け入れ 許し そして、愛せよ・・・”なる何処かで見たやうで何処にも見当たらない文言は、色んなものをハイブリッドした清大オリジナルぽい、混濁させたともいふ。
 備忘録< 弘美はアルト吹きとの間に裕子を産み捨てた実母、しのざきさとみが祖母で、杉本哲太は祖父


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 「褌熟女 私の秘密、見て下さい。」(2005『未亡人と褌 -悦子の秘密-』の2017年旧作改題版/製作:フィルム・ハウス/提供:Xces Film/監督:坂本太/脚本:有田琉人/企画:稲山悌二/プロデューサー:伍代俊介/撮影:鏡早智/照明:野田友行/編集:フィルム・クラフト/録音:シネキャビン/助監督:竹洞♀哲也/撮影助手:矢頭知美/照明助手:吉田雄三/監督助手:白石真弓・伊藤祐太・小山悟/スチール:阿部真也/撮影協力:カプリ/タイトル:高橋タイトル/現像:東映ラボテック/出演:美月ゆう子・林田ちなみ・瀬戸恵子・柳之内たくま・岡田智宏・小林三四郎)。
 寺の正門ショット、喪装ではないが手に線香の束を携へた和服の女が、墓参に訪れる。墓に手を合はせた瀬川悦子(美月)が、遺影も終ぞスルーされる夫の死後、羞恥と屈辱の日々をもう一年、まだ一年と振り返つてタイトル・イン。明けて一年前、亡夫・ユータローかリュータロー弟の惣一(小林)・愛美(瀬戸)夫婦も交へ、顧問弁護士の佳山薫(フォクシーな眼鏡が不思議と全然そゝらない林田ちなみ)が、遺言状の中身を公開する。財産は全て悦子が相続、但しその条件として悦子はユーかリュータロー遺品の褌を常時着用し、なほかつ生涯貞操を守り通すことを義務づけられる。そして月に一度、履行を確認する検査を実施するとする仰天遺言。悦子が開く活花教室にも通ひ、義姉と距離の近い愛美は抗弁を唱へつつ、有無もいはさぬその場の勢ひで、悦子は下着も着けない裸の下半身を露に白フン着用。月一の貞操検査といふのも、惣一同席の下、薫が悦子を要は手マンする。それで何が確かめられるのか煌びやかに不明な、徹頭徹尾ポルノな方便シークエンス。とか何とかいふのがアバンで悦子が嘆いた、羞恥と屈辱の日々といふ次第。下らないと無下に難じるのは容易いが、これはこれで、ある意味想像力の限界に挑んでゐるやうな気がしなくもない。未亡人と褌、果敢に新たな機軸を拓かうとした、気概は買へるのではなからうか、俺は何をいつてゐるのだ
 配役残り隈がドス黒い柳之内たくまは親爺の墓には参る、ユーかリュータローが外で産ませた息子・水上孝史。妾の子と直截な蔑視を露にする悦子を、当然激しく敵視する。朴訥とした突進力で一幕限りの男優部濡れ場要員を駆け抜ける岡田智宏は、なかなか馬脚を現さない悦子の陥落を目し薫が放つ秘密兵器、手戯に長けた助手・寺本祐司。
 以前に書いた感想が、正直手を入れるよりも一から書き直した方が早い我ながら酷い代物であつたゆゑ、2017年新版に際し潔く破棄した上での再戦を挑んだ坂本太2005年第二作。坂本太が五十の若さで急逝して再来月で早六年、大杉漣も兎も角、ジミー土田を追悼する番組も組んでやれよ。外堀の最後に訂正して謝罪したいのは、節穴が何をトチ狂ふたか、今作はキネコではない。
 閑話休題、褌未亡人が、月々の恥辱と肉の飢ゑとに苛まされる。エクセスから与へられた御題か坂本太の脳が自発的に湧いた―どうせ前者―のか、法廷では到底勝ち目も望めない豪快な故人の遺志を軸に、銘々が滾らせる欲なり憎悪がヒロインを翻弄する。展開の逐一をひたすらに絡みで語る姿勢は天晴ともいへ、そもそも出発点から底の抜けた物語が、面白い訳では特にも何も別にない。当時は客を呼べる名前であつたのか、束の間の実働帰還と僅か五本の戦績にしてはオーピー・新東宝含めた三社三冠も達成する美月ゆう子は、今回がエクセスのみならずピンク初陣。佇まひのエロさは買へるものの、素の表情は乏しく、口跡も白々しく覚束ない。劇映画は諦めて裸映画に特化するにせよ、平均年齢が明確に高めな女優部が、訴求力の有無に関しては正直人を選ぶといつたところか。さういふ微妙な中でも一点明確に頂けないのが、惣一が今月の検査に寺本を寄こす旨を車内からの携帯で悦子に寄こした上で、改めて何時ものホテル―のつもりのカプリ一室―にて薫との二回戦に突入する件。ちぐはぐな繋ぎ、あるいは好意的に解釈するならば頑強に絡みの回数を増やさうとした貪欲が、二人の位置情報と観客を徒に困惑させる。どうせなら愛美が惣一を追ひ抜く姦計が何の捻りもなく功を奏し、悦子が全てを失ふ無体な結末の方が寧ろプリミティブな破壊力に富んでゐたやうにも思へ、電話一本で再逆転するラストは、木に接いだ竹も厭はない鉄の信念が清々しい。最終的に柳之内たくまが美月ゆう子に籠絡される変心に血肉を通はせられなかつたのが、強ひて致命傷といへば致命傷。一旦発効した遺言状を孝史が改変する法律行為の、根本的なのか初歩的なのかよく判らない是非に立ち止まるのは、野暮は問はぬが花といふ奴だ。


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 「過激!本番ショー 異常者たちの夜」(1990/提供:アウトキャストプロデュース/配給:新東宝映画/カントク:サトウトシキ/キャクホン:小林宏一/キカク:田中岩夫/プロデューサー:岩田治樹/サツエイ:西川卓/ショウメイ:高田賢/オンガク:ISAO YAMADA/ヘンシュウ:金子尚樹/ジョカントク:上野俊哉/エンシュツジョシュ:中野貴雄/サツエイジョシュ:福島佳紀/ショウメイジョシュ:島田良一/トクシュコウカ:城沢源太郎/スチール:福島写真館/オンキョウコウカ:高野藤次/ロクオンスタジオ:ニューメグロスタジオ/ゲンゾウ:東映化学工業/キョウリョク:城沢靖・西山秀明・勝山茂雄・大倉琢夫・及川清夫・チキンシャック《福生》・《株》サンアイ・スノビッシュプロダクツ・エグザエル/シツエン:吉田春兎・芹沢里緒・神山洋子・清水大敬・梅垣義明・中根徹・中野貴雄・石井基正・世良福助・加納妖子)。キャクホンの小林宏一は、小林政広の前名義。クレジット含め印象的な筆致の割に、タイトル担当はクレジットされない。
 喪はれ行く風景を切り取る方便か、にしても執拗も通り越して些かくどく全篇を通して繰り返し繰り返し繰り返し挿入され続ける、今は亡きコマ劇場を皮切りに新宿の映画街と歓楽街の画を連ね、幕の内弁当をビニール袋に提げたワタナベ(吉田)が、風俗情報誌を発行する「歌舞伎町タイムス」に帰社する。ここで吉田春兎といふのが、案外色んな名義を多用してゐる現在の本多菊次朗。凡そ三十年前ともなると当たり前でしかなからうが若く細く、軽い。入れ違ひに社を出た編集長の宇野(清水)が都庁新築に伴ふいはゆる浄化による、界隈の斜陽も予想される世相に触れた上で、建設中の新都庁舎の画も連ねてタイトル・イン。神山洋子と中根徹の絡みが家中を移動する傍ら、駅から歩いて三十分かゝる―チャリンコ乗れよ(´・ω・`)―自宅にワタナベがてくてく帰宅すると、妻の恐らくユミコ(神山)は、実はワタナベとも面識がある旨後々語られる、間男の古賀か古河か古閑辺り(中根)を連れ込んでの情事の真最中であつた。ユミコの父親名義の家を出たワタナベが、暫く寝泊りすることにした歌舞伎町タイムスに、電話番を募集する求人広告を見た梓ユウコ(芹沢)が現れる。
 配役残り、薔薇族映画畑では翌年の「奴隷調教 ドラゴンファクトリーの男たち」(ENK/監督:浜野佐知/脚本:山崎邦紀)がデビュー作と謳はれてゐるものの、当然こちらの方が早い石井基正と、世良福助は宇野が取材する本番ショーの男達。あのワハハの梅垣義明の梅垣義明は、石井基正と世良福助のショーで女性客の動員を目論む、売りのショーの中身をコロコロ変へるショーパブ、十足した「第十七天国」店主、多分この人も今回が銀幕初陣。加納妖子は、宇野に記事を書かせておいて薔薇族本番ショーには早々と見切りをつけた第十七天国の、SMショーの女王様、責められる奴隷は世良福助の二役か。中野貴雄はラストの第十七天国にてステージ上尺八を吹いて貰ふギャラリー、もう二人、後頭部くらゐしか見切れない客要員は流石に判らん。ところで第十七天国が、物件的には現存する老舗ライブハウスの「チキンシャック」。老舗も老舗、何と創業昭和49年!
 全体リリース当時如何様にセレクトしてゐたのか、何が飛び出すか予測不能な雑多ぶりが堪らない「Viva Pinks!」殲滅戦。第七戦は福岡芳穂単独第一作に続いて、とかいふザックリした括りでいいのか、生かキナ臭い火種を抱へなくもないノンフィクション『名前のない女たち』の映画化第二作―第一作は佐藤寿保―「名前のない女たち うそつき女」(脚本:加瀬仁美/原作:中村淳彦/主演:吹越満)が、六年ぶりの新作として公開間近のサトウトシキ1990年最終第三作。
 今作の公開は十二月、即ち厳密な前後は不明ながら、最早“新”ともとうにいはない現都庁舎の竣工に、フルコンタクトで当てに行つた格好となる。といふか、封切りをぶつけるどころかなラストを見るか観るに、サトウトシキは明らかに都庁を撃ちに行つてゐる、現に撃つた。尤も、あの頃サトウトシキなり小林宏一らが感じてゐたにさうゐない、やがて明けるやうに暮れる白々しき夜に対する悪寒にも似た予感は、時間と距離の隔絶か単なる知性ないし想像力の欠如か、個人的に共有可能な類のものではなく、あるいはさういふ者にも体感させるだけの、時代を易々と飛び越える跳躍力をこの映画が有してゐる訳では必ずしもない。吉田春兎のみならず、あの狂騒的なエキセントリックの大家・清水大敬にまで強ひる、含みを持たせたばかりで大して中身もない台詞を、坦々と妙な間で発せさせる演出は古臭さとまどろこしさとにモジモジ身悶えしてしまふのを禁じ得ず、遂に鳴るアタック音には頭を抱へる。確かに過激な本番ショーとはいへ、“異常者たちの夜”の多様性を第十七天国店主の移り気に頼りきりな展開は面白味に乏しく、寧ろ古賀に飯の最中肛門性行を求める、ユミコの方が余程箍が外れてゐる。二番手たる神山洋子が快調にカッ飛ばす反面、主演の筈の芹沢里緒の濡れ場の比重は清々しく小さい。ところが漫然と終始するかに思へた始終が、文字通りの飛び道具で以てとんでもない急加速で弾ける。表面的には「タクシードライバー」との類似も窺はせつつ、アイリスをも殺める点を決定的な差異に一線跨いだその先で更にもう一線跨いでみせるワタナベの凶行は、ピンク離れした本格的な特効と超絶の繋ぎとで一息に引き込ませて見させる、梅垣義明の後頭部が吹き飛ぶショットには吃驚した。人より生命力の強いと思しき清水大敬には二発を費やす心配りも心憎く、ただそれだけに、ワタナベがリボルバーの撃鉄も起こさず続け様に撃つ、今となつては考へられない初歩的なボーンヘッドは地味にでなく目立ち、見事な弾着と比すればなほ一層、ラストの銃創のショボさが際立つのはグルッグルッと二周した致命傷。突発的に煌めき、損なふ一作に止めを刺すのは、“オワリ 1990アクトキャストプロデュース作品”なる間抜けなエンド・クレジット。“アクトキャスト”て何だ、“アクト”て。何か明後日だか一昨日な、変な方向に完成してゐる。


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 「ほくろの女は夜濡れる」(2017/制作:ファミリーツリー/提供:オーピー映画/監督:榊英雄/脚本・助監督:三輪江一/音楽:雷鳥/撮影:早坂伸《JSC》/照明:大場郭基/録音・効果・仕上げ:丹雄二/編集:清野英樹/ヘアメイク:堀川貴世/スチール:富山龍太郎/特別協力:小沼秀剛・氏家英樹/監督助手:光平哲也・市川浩気/撮影助手:岡崎孝行・永仮彩香/照明助手:永川千歳/撮影協力:キアロスクーロ撮影事務所/仕上げ:東映ラボ・テック/特別協力:FAITH entertainment/出演:戸田真琴・可児正光・とみやまあゆみ・高橋美津子・山本宗介・木村保・羽柴裕吾・三輪江一・藤倉さな子・藤原絵里・松本高行・榊英雄・和田光沙・森本のぶ・川瀬陽太)。出演者中三輪江一と、藤原絵里から榊英雄までは本篇クレジットのみ。
 指で紅を刷き、右目下の泣きぼくろに触れた戸田真琴が、髪を解きエレベーターに乗る。外回りと称して出撃した、多分求人誌か情報誌制作会社「ワーキングコーポレーション」営業の工藤朋美(戸田)を、気合の入つた遠い俯瞰で追ふ。比較的猥雑な一角にて、朋美は大学時代の一年先輩・成田潤(可児)とバッタリ再会。成田が満更でもない以上の風情を窺はせる一方、そゝくさかはした朋美がランデブーしたのは、フリーで営む売春の常連客・市川。体躯はダブつくものの、量産型裸映画的にも見劣りしない絡みを羽柴裕吾が務める一幕明け、朋美は市川に、サインペンで自身の体の好きなところに黒子を描くやう求める。不思議がる市川をポイントカードと誤魔化した朋美が、何が貰へるのといふ問ひに対し投げた答へは“新しい私”。市川が捌けた後(のち)、朋美は市川が描いた左腕の黒子に血が流れるまでボールペンを押し当て、実際の黒子に固定する。兎も角朋美帰社、市川に釦を引き千切られ実は前の肌蹴たブラウスに、社内でも社長を“パパ”と呼ぶクソ倅の平林正彦(山本)が目を留めるや、派遣社員の手塚結衣(とみやま)が朋美を別室に救出。仔細はマルッと割愛すれど、結衣は朋美の裏稼業を把握してゐた。
 配役残り藤倉さな子と藤原絵里は、ワーキングコーポレーション女子社員AとB、ビリング下位の藤原絵里の方が映える。榊英雄は、成田が朋美とのデートに使ふバー「WOKINI」のマスター。森本のぶは朋美に―仕事で―付き纏ふ、金融会社「Mキャッシュローン」の取立・白井で、三輪江一は朋美を買ふ男・二ノ宮。そして高橋美津子が、リアル泣きぼくろを娘に羨ましがられる、朋美の源氏名と同じ名の母・沙耶佳、川瀬陽太は朋美の継父・幸雄。夫婦生活の最中に朋美が帰宅する件と正真正銘即座の二連戦で、幸雄が朋美の破瓜を無理矢理散らせた事後、カメラがパンした先が沙耶佳の遺影とかいふザクついた展開には軽く度肝を抜かれ、白井への完済時、朋美が体を売つて返した借金が、実は幸雄のものであつた旨が暗示される。木村保は、成田とは同級の大学時代からの―更に以前からかも知れんけど―友人・原島亮太。高橋美津子が本格的な対面座位を披露しながらも、乳尻は頑として死守する穴埋めか、刹那的に飛び込んで来る和田光沙は、朋美を失つた成田が呼ぶデリ嬢・アヤカ。最後に松本高行が特定不能、同名の編集マンだとすると、年齢的に正彦親爺のワーキングコーポレーション社長。でなければ、カンニング竹山似の売春客要員か。
 今年どうするのかは当然知らないけれど、個人的かつ勝手な印象では案外継戦してゐる榊英雄ピンク映画第四作、OPP+題が「コクウ」。誰一人幸せになどするものかといはんばかりに、一欠片の救ひもなく振り抜かれるドス黒いドラマは、煙草でいふガツンと来る重さを以て見応へがある。尤も、ピンクに於ける榊英雄の初日を認めると同時に、時代認識と称した単なる嗜好としては、決してその貫徹された暗さに、必ずしも首を縦には振り難い。もう北風には、吹かれ厭いた。冴えないオッサン主人公に、何故かカワイコちやんが次々と膳を据ゑて呉れる。よしんば最も通俗的で低劣なファンタジーの類であつたとて、せめて小屋の暗がりに身を潜める時くらゐは、憂世のどうしやうもない酷さ醜さ、冷たさを忘れさせて欲しい。さういふ心的態度を惰弱なり逃避と断ずる潤ひや器量を欠いた人間観なり映画観に、当サイトは断じて与するものではない。清水大敬近年のそれはそれでそれなりに王道娯楽路線を、頑なに支持するのもその所以である。裸映画的には平林が立場の弱い結衣の足元を見る形での、二年間でグッと色気を増したとみやまあゆみの濡れ場をもつと観たかつた心は大きく残す反面、肌から綺麗な戸田真琴の裸は、思ふ存分目一杯堪能させて呉れる。山宗と川瀬陽太が要所を頑丈に締める以上、場数の足らない男優部の逆マグロぶりに興を殺がれる、昨今まゝ散見される悪弊に匙を投げさせられることもない。ところが、それもそれで朋美―の裸―に費やした尺が、諸刃の剣的に徒をなしたのか。成田と幸せを掴み、損ねるにせよ、要はヒロインが一目散に奈落の底に落ちる一直線の物語にしては、既に随所で触れた、殆ど完全に放置される結衣周りの外堀にとりわけ顕著な清々しくスッ飛ばされる諸々に加へ、後述するラスト間際の性急といふか何といふか、ザックザクも通り越したズッタズタの繋ぎには、七十分でもまだ足らぬのかとの呆れに似た疑問も禁じ得ない。仮に幾分更に長いOPP+版ではその辺りの不足も解消されるにせよ、山﨑邦紀が好き勝手し倒した結果の一般映画版を、アタシの映画ではないとまで言ひ放つた浜野佐知の逆説的なジャスティスを持ち出すまでもなく、ピンクと一般映画を秤にかけて、一般を取るのだとしたらそれこそ正しく本末転倒の極み。言語道断と難じるほかなく、OPP+なんぞやめてしまふに如くはない。文字通り何時も何時も繰り返す繰言もさて措き、てつきり“コクウ”が“虚空”かと思ひきや、アクセントが後ろにずれる“黒雨”であつた旨が判明するど鮮烈なラスト―この点に関しては、タイトル・インがオーラスにつき、一般映画題の方がなほ一層衝撃的にさうゐない―は激しく胸を撃ちかけつつ、ただその戦法で攻めるには、如何せん主演女優の発声が心許ないのは返す返すも残念無念。

 もう一点疑念が過つたのが、債務を清算した返す刀で全身の黒子除去手術を受けた朋美が、成田に初めて肌を晒、さうとした直後に、カメラが可児正光と正対する位置に回り込む無駄なカット割り、あれは一般映画の文法ではあるまいか。既に戸田真琴の裸身を出し惜しむ段にはとうにない以上、一息のエモーションに突撃すべきではなかつたかに映る。


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 「ハミ尻ダンプ姐さん キンタマ汁、積荷違反」(2017/制作:《有》大敬オフィス/提供:オーピー映画/脚本・監督:清水大敬/撮影:中尾正人/照明:大久保礼司・清水領/録音:小林研也/編集:高円寺スタジオ/助監督:阿蘭純司/スチール:田中幹雄/殺陣:永井裕久/撮影助手:坂元啓二/照明助手:葉山昌堤/演出助手:御殿場太郎/着付け:板橋よね/メイク:笹本義雄/装飾:青野装飾/衣装:Mikiレンタル衣装/制作進行:狛江義雄/小道具:劇団カジノ・フォーリー、劇団スラップスティック/脚本協力:中村勝則/仕上げ:東映ラボ・テック/撮影協力:藤ヶ谷建設/トラック協力:阿修羅グループ/出演:円城ひとみ・藍沢ましろ・しじみ・あやなれい・なかみつせいじ・森羅万象・GAICHI・田山みきお・橘秀樹・太三・生方哲、もう二名・中江大珍・中野剣友会/友情出演:池島ゆたか・国沢実/特別出演:篠原ゆきの・里見瑤子・松井理子)。出演者中、生方哲以下四名は本篇クレジットのみ。特別出演組の正確なビリングは、あやなれいとなかみつせいじの間に入る。クレジットに関しては情報量に比して、無慈悲に流れる速度に屈する。
 自ら駆るダンプで山口建設(株)に帰還した社長夫人の裕子(円城)が、ホットパンツからプリップリ弾けるハミ尻で三羽烏的従業員の田原(田山)×佐々木(橘)×森山(太三)を悩殺した返す刀で、再び出撃してタイトル・イン。何しに帰つて来たのかとツッコむのは禁止だ、ハミ尻―とダンプ―を見せに帰つて来たに決まつてるぢやないか!
 タイトル明けてラブホテル、といふ麗しき場面転換はいいにせよ、問題が裕子の女と博打にうつゝを抜かすダメ亭主にして、山口建設社長・山口米造(清水)の、援交相手・美由紀役の藍沢ましろ。平成も強制終了間近の昨今に、全体こんな女何処から連れて来たんだな昭和スメルを爆裂させる、不完全無欠なデ〇スぶりに直截に目を覆ふ、直截にもほどがある。兎も角、凹凸のない肉塊との事後米造はある意味鮮やかに文字通りの腹上死、戦死の悲壮感さへ漂ふ。葬儀を済ませた山建一同が盛大に飲み食ひしたのち爆睡するところに、兄貴とは対照的に実直な弟の武造(なかみつ)が駆けつける。実は米造よりも武造が好きであつた裕子は、武造との情事を遺影に見せつける。
 配役残りあやなれいは、ホステス時代金蔓とロック・オンした米造を、当時同僚の裕子に奪はれた過去を未だ根に持つ現職泡姫・明美。そしてGAICHIこと、森山茂雄ピンク第十一作かつ、2010年代依然最強傑作「あぶない美乳 悩殺ヒッチハイク」(2011/脚本:佐野和宏/主演:みづなれい)以来の電撃超復帰を遂げた幸野賀一が、ソープの社長・鮫島。六年周期の幸野賀一大復活の興奮はさて措き、歌舞伎町一番街のアーケード挿んで、まづあやなれいの爆乳が画面一杯に飛び込んで来る繋ぎはジャスティス。森羅万象はスピリチュアル詐欺師・ヤマタイのツクネで、しじみがツクネに心酔するメンヘラヤンキー・博子。明美とは煌びやかにダサい上に一欠片の意味もない名乗りで、「まむしの兄弟」を組む兄弟分。国沢実は、太鼓担当のツクネ一番弟子・前田。随時着弾する特別出演部隊、一の矢・篠原ゆきのは、米造が遺した借金を返済させるべく、山建にマンション建設を斡旋する街金・瞳麗子。脱ぎはしないが、これ見よがしに繰り返し組み換へる美脚を、頑ななローアングルで追ふ。生方哲は、ツクネが博子を二穴責めする際前門を担当する二番弟子の宮口。利子だけは月中に払はねばならぬ要に迫られ、裕子が博子がママを務めるクラブの面接を受け、結果何だかんだ博子も撃破した流れで、明美と博子が対裕子の連合軍を組む格好に。特出隊二の矢の松井理子は鮫島が招聘した、山建への殴り込み要員に自身の店の従業員(中野剣友会)を提供する、軍隊クラブ「満州國」ママ・大和撫子。いはゆる「愛の嵐」的な露出過多の衣装を、帝国陸軍風味で披露する。特出隊トリの里見瑤子は棚から牡丹餅を降り頻らせる、米造がかけてゐた死亡保険金の件で裕子を訪ねる保険外交員・鵬亜里沙、里見瑤子に特段のサービスはなし。池島ゆたかはヤマタイのツクネ改め本名:猪鍋吉を検挙する池山刑事、地味な謎が、あと三つ残る名前。明美を呼びに来る鮫島の店のボーイに池山の連れと、頭数は二人くらゐしか見当たらないのだが。
 近年の―それはそれでそれなりに―王道娯楽映画路線が大蔵に評価されてか、2017年は三作を発表した清水大敬の第二作。羽勝が主演女優を、「ジョン・カサベテスを一本も観てねえやうな女はクソだ」と滅茶苦茶な因縁をつけ強姦してゐた頃のカオスが、今となつては懐かしい。懐かしいだけで、観るなり見たいとか再評価されるべきとは、別にでなく断じていつてはゐない。一見どうでもいいか超絶後付け臭しかしないが、監督20周年記念作品「巨乳水着未亡人 悩殺熟女の秘密の痴態」(2016/脚本協力:中村勝則/主演:一条綺美香)と前作「未亡人下宿? 谷間も貸します」(企画・原案:中村勝則/主演:円城ひとみ)に今作の三本で、未亡人トリロジーを成すらしい。ここは木に竹を接ぐ云々とはいはず、量産型娯楽映画に於ける量産性をこの期に及んで健気に希求する、決して純然たる無為に過ぎるものではない酔狂な方便と、案外好意的に生温かく評価するところである。それと、事前には「痴漢トラック 淫女乗りつぱなし」(2000/二作とも小松公典と共同脚本/主演:池谷早苗・町田政則)と、「馬を愛した牧場娘」(2003/主演:秋津薫・町田政則)。関根和美全二作の「デコトラ漫遊記」以来―その前に何かあるのか何になるのかは知らん―のピンク版「トラック野郎」かともときめきかけたものの、よくよく考へてみるまでもなく、公開題に謳ふ通りデコトラではなくダンプである上に、正味な話精々山建に出入りする程度で、ダンプが爆走するシークエンスは設けられない。
 物語的には深遠な含意あるいは殊更な面白さは欠片もないながらに、如何様な白痴でも一回観れば全てのカットを300%理解可能にさうゐない強靭な判り易さは、敷居の低さがプログラム・ピクチャーとして矢張り清々しい。天候にも恵まれた、藤ヶ谷建設敷地内に敷物一枚敷いた長テーブルを置き、豪快なロングで狙ふ意欲も見せる青姦に、ハネムーンにダンプで出発した助手席にて、裕子が武造相手に一節吹く尺八戦。突飛なシチュエーションも適宜盛り込みつつ全篇を通して釣瓶撃たれ続ける濡れ場の数々が、実はことごとくフィニッシュまで完遂に至つてゐる執拗な至誠は、何気に天晴。

 ついでといつては何だが、あるいは久し振りに。2010年代が「あぶ悩」で、それならゼロ年代はといふと。私選ピンク映画最高傑作、そんな―どんなだ―関根和美が叩き出した渾身超絶永遠不滅のマスターピース、「淫行タクシー ひわいな女たち」(2000/脚本:金泥駒=小松公典/主演:佐々木基子・町田政則)である。


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 「未亡人下宿? 谷間も貸します」(2017/制作:《有》大敬オフィス/提供:オーピー映画/脚本・監督:清水大敬/撮影:田宮健彦/照明:大久保礼司/録音:小林研也/助監督:阿蘭純司/スチール:中江大助/殺陣師:永野秀行/撮影助手:島崎真人・高島正人/照明助手:葉山昌堤/演出助手:狛江太郎/着付け師:板橋よね/企画・原案:中村勝則/仕上げ:東映ラボ・テック/出演:円城ひとみ・京野美麗・橘メアリー・角田清美・あやなれい・扇まや・森羅万象・山科薫・野村貴浩・橘秀樹・佐々木共輔・田山みきお、他一名・鎌田金太郎・本田裕子・米山敬子・末田スエ子・石部金吉・生方哲、他もう一名・中野剣友会)。出演者中、田山みきお・鎌田金太郎・生方哲に石部金吉(=清水大敬)と、ロストした二名は本篇クレジットのみ。あと中野剣友会に、ポスターではアクション・チーム特記。絶妙な情報量に力尽きる、確か編集―と音楽―クレジットが見当たらなかつた。
 波紋広がる大敬オフィスのロゴ、こんなだつたつけ?ズンチャカ劇伴が起動して、“下宿 貸間あり”のみの表札の一軒家。縁側を雑巾がけする未亡人大家の山城由美(円城)を、執拗にローアングルで狙ひ倒してタイトル・イン。以後、今作の明確な特徴として、円城ひとみが家事をするに際しては逐一ローアングルにこだはり抜く。それとタイトルに関しては、はてなマークの意味が判らない。何処からどう見るまでもなく何の疑問もなく未亡人下宿でしかないのだが、大蔵から未亡人下宿の看板で出すことに、気兼ねなり気後れしたりする業界的な何某かでもあるのであらうか。
 支度も下から抜いて、朝からワーワー騒がしい朝食。下宿の店子は十浪生!の大崎(野村)に、ex.ヤクザの山口(石部)と米田(佐々木)。二人の現職は建設業で、米田にとつて、山口は叔父貴と呼ぶ間柄。ところで新作では久ッし振りに見た佐々共は、山﨑邦紀の「ハレンチ牝 ひわい変態覗き」(2009/主演:朝倉麗)以来のピンク復帰。その更に前が池島ゆたかの「デリヘル嬢 絹肌のうるほひ」(2002/脚本:五代暁子/主演:真咲紀子)につき、何か、この人は七八年周期の彗星か。そこに近所のトキワ大学に通ふ由美の娘・美由紀(橘メアリー)も加はり、食卓はますます賑やかに。一同を送り出した由美に、麻矢(扇)をリーダー格とする近所の主婦連・裕子×敬子×末子(本田裕子・米山敬子・末田スエ子の要は四人とも大体ハーセルフ)が出て行けだ何だと、狂つたやうに騒々しく、文字通り狂騒的に詰め寄る。a.k.a.空想科学少女の米山敬子は兎も角、本田裕子と末田スエ子の特定がどうにも不可能。
 配役残り何のクレジットもないまゝになかみつせいじが、六年前に死別した由美亡夫遺影。橘秀樹は、下宿巣立ち時恒例らしい由美に筆卸して貰つた元店子・野島。後述するが、ある意味最大の功労者か被害者の京野美麗は、ホステスあがりの情婦の割に事務所まで宛がはれる、トキワ大学学生部長・鮫島権造(森羅)の懐刀・金城明美。鮫島は山城家の土地に裏金塗れのトキワ大新学生寮建築を目論み、そのために、明美が麻矢らを使つて未亡人下宿を立ち退かせようとしてゐるとかいふ構図。山科薫は、鮫島の腰巾着・山岡薫。明美を貫く鮫島に大声で名前を呼ばれた山岡が、カメラ前にワセリンを差し出し大映しにした上での、連ケツは俳優部の顔ぶれも見事な名チン場面。京野美麗のバタ臭さが、清水組の空気に上手く馴染む。藪から木に竹を接ぐ不脱のあやなれいは、元ヤンで喧嘩上等の野島姉。大蔵初上陸の角田清美と生方哲、他もう一名に中野剣友会は、未亡人下宿に乗り込む鮫島子飼ひのトキワ大顧問弁護士(が角田清美)と、謎の武闘集団(残り)、中野剣友会の皆さんは迷彩服で登場。田山みきお、他一名と鎌田金太郎は、明美の事務所に踏み込む刑事。
 好評なのか今年は現時点で既に二作を発表する、清水大敬2017年第一作。監督業二十一年目にして遂に、自身初痴漢電車で新年番組新作の栄誉なるか。未亡人下宿地上げの流れが明らかとなつた時点で、予想し得る始終を1mmたりとて裏切りはしない正調娯楽映画路線と、橘メアリーの大味な体躯がスクリーンに映える由美V.S.大崎戦を筆頭に、ゴリッゴリに押して来る濡れ場は近年従来通り、濡れ場がゴリゴリしてるのは昔からか。加へて今回最も特筆すべきは、デジエク頭二本から久々に完全復活を遂げた、遂げてしまつた必ずしも清水大敬と同等の熱量を有しない者―そもそもそれだけの人間が、どれだけゐるのかといふ話ではある―にも、自らと同じテンションで猛進の“猛”が“盲”かも知れない、ワーギャー猪突猛進する芝居を要求。地力か場数で乗り越えてみせる森羅万象と山科薫に対し、二番手と主婦連女優部はある意味見事に被弾する、エキセントリックを更にどぎつくしたエギゼンドリッグ演出。とりわけ京野美麗のヒステリックぶりは無惨なのも通り越してスッ飛んだギャグの領域に突入、折角の濡れ場に至つても本来乳尻に向けられる筈の興味なんぞとうに霧消してゐる始末。ともいへそれは、あくまで枝葉のチャームポイント。拉致監禁された美由紀がコッ酷く輪姦されるシークエンスくらゐしか不足を感じさせない、全てが既成のフォーマットから逸脱しない王道展開はそれはそれとしてそれなりに矢張り鉄板。プライベートなものでも、概ね清水大敬が自分で繰り出す取つてつけてもゐない、何れにせよ余計なメッセージの不存在は全体的なスマートさを地味に増し、オーラスには主演女優から観客へ年始の挨拶まで披露してのける、いはゆる第二弾封切りの綺麗な綺麗な準正月映画である。

 追記< とか何とか与太を吹き散らかして、ゐたところ。嘘を書いては、読者諸賢に御指摘賜る当サイトの家芸発動。佐々木共輔のピンク出演を、2009年の「ハレンチ牝 ひわい変態覗き」以来としたものだが、翌年の「色恋沙汰貞子の冒険 私の愛した性具たちよ…」(脚本・監督:山内大輔/主演:北谷静香)がある旨のコメントをキルゴア二等兵殿より頂戴した。いはれてみれば、恭輔のセンを完全に失念してゐた、粗忽の限りで面目ない。


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