真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「痴漢電車 後ろからも愛して」(1989/製作・配給:新東宝映画/監督:深町章/脚本:周知安/製作:伊能竜/撮影:稲吉雅志/照明:守田芳彦/編集:酒井正次/助監督:小原忠美/録音:銀座サウンド/現像:東映化学/スチール:津田一郎/撮影助手:鈴木一博/照明助手:京応泉/監督助手:佐藤俊宏/車輌:元井祐司・嶋中聡/出演:橋本杏子・山本竜二・芳本愛子・風見怜香・池島ゆたか・清水大敬)。脚本の周知安と製作の伊能竜は、それぞれ片岡修二と向井寛の変名。
 高架を正面に据ゑたロングにタイトル開巻、超絶そこら辺の生活道路から電車を見上げる、適当な仰角の画にクレジット起動。車内に繋いで、乗客が読む87分署シリーズ『キングの身代金』(ハヤカワ・ミステリ文庫)と、名無しの探偵シリーズ『誘拐』(新潮文庫)を抜く。これは以降元ネタにでも絡められたら―何れも未読につき―厄介だぞと身構へかけたが、どうやら、誘拐して身代金を要求するといふだけのモチーフに過ぎない模様、プリミティブにもほどがある。『誘拐』を読んでゐた橋口タカコ(橋本)の背後に、笠井元嗣(山本)が迫る。いや本当に、劇中さういふ名前なんだつてば。笠井の案外巧みな指戯に、『誘拐』が床に落ちる。降車後笠井を捕獲したタカコは、何をトチ狂つたか痴漢の腕を見込んでの相談を持ちかけ、笠井が役者で警官役―のエキストラ―の経験もあると知るや、なほ好都合と美貌を輝かせる。津田スタ改めタカコ宅、「アタシね、一遍レイプされてみたかつたの」だの大概ぞんざいな切り口でAV歴もある笠井相手に一動画撮影したタカコが、漸く切り出す本題。「何をやるんスか?」と未だ雲を掴む―我々も掴む―笠井の問ひに対し、脊髄で折り返したタカコの即答は「誘拐」。山本竜二が仰天するメソッドは、容易に御想像頂けよう。ところで絡み初戦、タカコが据ゑたビデオカメラ越しに二人を狙つた結果、カメラが邪魔でハシキョンの裸がよく見えない馬鹿画角はどうにかならなかつたのか。
 俳優部残り、ミサトスタジオに居を構へる清水大敬は、地上げで財を成した不動産屋・黒沢年男。トシオは年雄か俊夫とかかも知れないが、兎に角何でか知らんけどクロサワトシオなんだつてば。風見怜香が後妻のアキコで、芳本愛子は前妻との間に生まれた実の娘であるランコ。途中で配役が読める池島ゆたかは、黒沢の財産目当てで結婚したアキコの情夫、固有名詞不詳。
 ある意味順当に深町章が積み上がつて行く、ex.DMM新東宝痴漢電車虱潰し戦、第八戦で1989年第一作。タカコが画策する、“完全犯罪”とやらの正体は。元々黒沢の愛人であつたタカコは、中盤の大いなるハイライトを担ふ濃密な夫婦生活を窺ふに、滅法床上手のアキコに黒沢をカッ浚はれた挙句、手切れ金すらビタ一文貰へずじまひ。てんでランコを誘拐しての、身代金五千万奪取。画期的に秀逸なのが、その計画に笠井の電車痴漢スキルが必要となるところのこゝろ。タカコが描いた絵図が電車で笠井がランコのマンコに―そのまゝ書くな、そのまゝ―ローターを捻じ込み、起動させお前のアソコに時限爆弾を仕掛けた云々と拉致するといふアイデアには痺れた。ハシキョンの絡みは些か軽さも否めなくはないものの、とろんとろんにタップンタプンの風見怜香のオッパイ爆弾は大炸裂。息するのやめればいいのにな、俺。電車の車中、ズッブズブ指を挿入するショットに際しては結構アグレッシブに攻め込む。正直女子高生らしくは清々しく見えない点はさて措き、油断してゐると不意すら討たれるど美人の二番手が、一見脱ぎ処が設けやうなくも思へた始終から、事実上締めの濡れ場に飛び込んで来る急展開は裸と映画の二兎を鮮やかに仕留めてのける。さうは、いへ。山竜は何時も通りアチャラカで、結局風見怜香の二戦目を介錯する以外には、一欠片たりとて何の役にも立ちはしない池島ゆたかの機能不全には逆の意味で吃驚させられる。痴漢電車ならではさが折角のサスペンスが、エッジの緩い作劇―と、ちぐはぐなくらゐ長閑な選曲―で最終的に弛緩した印象は否み難く、いつそ下元史朗を笠井役に、片岡修二が自分で撮ればよかつたとか、適当な素人考へが過(よぎ)らなくもない。


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