真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「ドキュメントポルノ 発情族を剥ぐ」(昭和48/製作:プリマ企画株式会社/監督:代々木忠/制作:藤村政治/企画:渡辺忠/構成:池田正一/撮影監督:久我剛/撮影班:佐藤清吉・石渡吾蔵/照明:近藤兼太郎/編集:中島照雄/音楽:多摩住人/効果:秋山サウンド・プロ/録音班:大久保スタジオ・グループ/制作主任:大西良夫/助監督:城英夫/録音所:大久保スタジオ/現像所:東洋現像所/インタビュアー:五十嵐のり子/ナレーター:都健二)。企画の渡辺忠は、代々木忠の変名。構成名目で池田正一の名前があるゆゑ脚本は兎も角、俳優部のクレジットがないのは本篇ママ。
 何処ぞの海水浴場のカットを適当に連ねて、五十嵐のり子がそこかしこの誰かしらに矢張り漫然とマイクを向ける。テッテケテッテケ尻のアップにゴーゴー点火、黒いビキニの女が三人組の全員貧相な体格の男に輪姦されるスローモーションなんて挿み込んだりしながら、日光浴の画に“実に穏やかだ、人々は何の屈託もなく見える”とナレーション起動。ここで、直截にいふと唯一の収穫ないし注目すべき点が張りと渋みのある、都健二の声がこれまで謎であつたプロ鷹ナレーションの主と遂に合致。珠瑠美についてはよく判らないものの、都健二が木俣堯喬(a.k.a.木南兵介)とは少なくとも俳優部として共演する形で繋がりのあつた模様。既に臆面もなく若輩者を気取るのは些か憚られる齢にせよ、正直昭和48年ともなると、愚生にとつて出生間近。歴戦の諸兄に当たられては当然に既知の事柄であつたものやも知れないが、昭和どころか平成も終つたこの期に及んで漸く辿り着けた、極私的な感慨がとりあへず深い。辿り着いて、何がどうなるのかとかさういふのは、だからさういふこつちやねえんだよ。
 兎も角、海に泳ぎにではなく要はヤリに来た、“発情族”の生態に五十嵐のり子が迫るといふ体裁で、六十八分の尺が淡々と進行して行く。もしかすると、一人二人知つた顔―の凄く若い頃―に出くはせるかとも期待しかけたが、それも全く能はず。
 ex.DMMのピンク映画chに於いて基本出来るのに、ストリーミングさせて呉れないのが激しく面倒臭い、代々木忠昭和48年第五作。本隊作含め、この頃配給に関して何故か本クレはスルーしつつ、買取系ロマポである。
 ドキュメンタリーを体のいい方便に、一応覗き的な視点の殆ど動かないカメラで女の裸を延々と見せるのが、最大の売りといふか精々関の山。三人で海に来たデパート・ガールの奥沢圭子・三島初江・中井亜紀―但し亜紀が残りの何れかに対し、エリと呼称してゐたりする―に、五十嵐のり子が比較的長い時間を一緒に過ごす、藪蛇に精悍な監視員。五十嵐のり子含め、鍵を握つてゐておかしくはない配役が幾つかなくもない反面、その場限りの展開を超えた物語らしい物語はおろか、絡みといふほどでもない絡みをたらッたら羅列するのに専ら終始、大したディレクションの存在さへ凡そ感じさせない。一見如何にもそれらしくかありがちに思はせて、そもそも“発情族”といふ用語自体が、今作発の新ならぬ珍機軸。勝手に捏ち上げた風俗の実情である以上、最早火の気があらうがなからうが煙をたて放題。これで嘘でも与太でも面白ければまだしも、うんともすんとも、何ともかんとも。詰まらなくすらないんだな、これが。演出部と撮影部に俳優部、総崩れで何処に何に喰ひつけばよいのかそして僕は途方に暮れる画面よりも、イカした劇伴に身を委ねてゐる方が寧ろ楽しめる―やうな気がする―始末。また随分と手間のかゝつたか遠回りを強ひられる、軽くエッジも効き気味のイージー・リスニングではある。結局、誰も何も変らない以前に満足に語つてもゐないまゝに、“長く暑い夏が終らうとしてゐる”とミヤコレーションが最後の起動。中略して“人々は夏の思ひでを何時しか忘れ去るに違ひない”、“それは陽炎ほどの残影も残さず、幻よりも儚いことを知つてゐるからである”。だなどと一聴高尚か荘重ぶつて、その癖中身は霞よりも薄いのが何故かプロ鷹ナレと完全に一致するある意味ミラクルには軽い戦慄も禁じ得ない、清々しい空念仏に続いて闇雲な高さにまでカメラがドカーンと引く出し抜けにして盛大なロングが、締め括るだけの顛末も端から存在しない空疎な一作を、豪快な力技で捻じ伏せる。木戸銭を落とした小屋にて斯様な掴み処のない代物をロマポの併映で見せられた、当時の観客は果たしてどんな心持ちであつたらう。といふのが、それ以外にグウの音も出ない率直な感想である。


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