真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「温泉仲居妻 やらせつぱなし」(2000『いんらん旅館 女将の濡れ姿』の2012年旧作改題版/製作・配給:新東宝映画/監督:深町章/脚本:かわさきりぼん/企画:福俵満/撮影:清水正二/編集:酒井正次/助監督:佐藤吏/出演:水原かなえ・里見瑤子・小室芹奈・かわさきひろゆき・久保新二)。出演者中小室芹奈が、ポスターには小室芹菜。
 福代(水原)は噺家の夫・麺家春団子(かわさき)が、双子の妹・すもも(当然水原かなえの二役)と関係を持つてゐたことに激怒。家を捨て、住み込みの仲居の職を求め山間の温泉旅館、となると物件的には勿論御馴染み「水上荘」を訪ねる。庭を進む福代は、「宇宙人は帰れ!」とする仕掛け縄―近所の子供の悪戯と直後に説明される―に足を取られる。旅館を切り盛りするのは、女将の佐倉さくら(里見)と、板前は一人しか見当たらないのだが兎も角板長の木下哲男(かわさきひろゆきの二役)。スチャラカな春団子に対し寡黙でステレオタイプに昔気質な哲男と、印象は正反対なれど二人が瓜二つであることに、福代は驚く。迫るさくらの据膳を哲男は頑なに拒む一夜明け、まさか福代が居ようなどとは露知らず、春団子の師匠・麺家春雨(久保)が、愛人の新玉珠子(小室芹奈/a.k.a.東夕巳)を伴なひ宿に現れる。春雨は福代を見て一旦は踵を返しながらも、珠子のおねだりを受けると、久保新二一流のマシンガン・トークの合間に先代女将に娘なんて居たかな?と訝しみつつ、締めはアシャアシャアシャでひとまづ逗留することに。といふ訳で一頻り続く春雨V.S.珠子戦、春雨が珠子のパンティを鋏で丸く切り抜き、その穴を通してバイブで責めるのは、何回観ても本当に入つてゐるやうにしか見えない。一方、春団子に後ろ髪を引かれぬでもない福代をさくらが訪ね、哲男への想ひを相談する。恋のキューピッド役を買つて出ようとした福代に、哲男は―さくらは―宇宙人みたいな人だと何処かで聞いたやうな拒絶を示したどころか、まさかのカウンター告白を敢行。さくらを挟んだ哲男との三角関係と、微妙に忘れ難い春団子への思慕との間で、福代は揺れ動く。
 2000年年末公開の最終第六作、即ち明けて二十一世紀最初の正月映画は、一見弛緩した他愛ない艶笑譚に見せる穏やかな出来栄えまで含めて、如何にも深町章らしい工芸的な一品。力技の秘密を有した飛び道具が主人を務める温泉旅館を舞台に、交錯する二つの一人二役と、飛び込んで来るもう一つの飛び道具。ついでに飛び込んで来た方の飛び道具の同伴者は、見るも鮮やかな本物の入墨美女といふ視覚上の飛び道具。何れも正月映画にしては地味目にも思へて案外満更でもない、頑丈な構成と豪華な布陣が光る。苛烈な空中戦の末に、撃墜されるが如く飛び道具の片方は退場。倒した方も真実の主人公―と観客―への露呈に従ひ、それなりの方便とともに退場。残された二人で四人分の頭数が、順当極まりない落とし処に綺麗に収まる絶妙な結末は絶品。御都合的と悪し様に片付けるならばそれまでに過ぎないのかも知れないが、これぞソー・スマートな娯楽映画と、呑気に称へたい。初登場シーン、我等がアドリブの鬼・久保チンが、正しくどさくさ紛れに投げ込む伏線の超絶は、最早伝説級ではなからうか。


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 「団鬼六 蛇の穴」(昭和58/製作:鬼プロダクション/配給:株式会社にっかつ/監督:藤井克彦/脚本:佐伯俊道/原作:団鬼六『蛇の穴』《東京三世社刊》/企画:奥村幸士/撮影:鈴木耕一/照明:島田忠彦/編集:菊池純一/助監督:釜田千秋・高原秀和/選曲:白井多美雄/製作担当:川崎隆/緊縛指導:賀山茂/出演:志麻いづみ・中原潤・大杉漣・松井美世子・水木薫・花真衣・吉川遊土・荻原賢三・江藤漢)。出演者中、荻原賢三と江藤漢は本篇クレジットのみ。撮影部助手その他諸々力尽きる。配給に関しては事実上“提供:Xces Film”か。
 浴室にて、体内に放たれた男の精を執拗に洗ひ流す志麻いづみ。一方、吊るところから自らこなすダイナミックな自縛ショウを、花真衣が見事に繰り広げるクラブ。固唾を呑んで見守る、中原潤を押さへてタイトル・イン。
 鎌倉の旧家・立花家。家人は何代目かの鋭一(中原)とその妻・紫雨子(志麻)に、先代から立花家に仕へるお手伝ひの文江(吉川)。紫雨子は夫婦生活自体を拒みこそしないとはいへ、快楽を受け容れようとはせず、事後もこれ見よがしに風呂へと走つた。紫雨子の従姉妹・夏季(水木)の顔見せを挿んで、紫雨子の態度に業を煮やした鋭一は、花真衣のショウで見初めた縄師・上田武志(大杉)と情婦・真矢(松井)を立花家に招聘。真矢に対する調教・陵辱を紫雨子に見せつけ性的な開花を図る、冷静に考へてみると出鱈目にしか思へない正しく荒療治に出る。煌く劇中世間の狭さも爆裂し、過去に上田とその仲間に輪姦された夏季までもが立花家に参戦する中、フォーマットに忠実に紫雨子はあれよあれよと被虐に翻弄される。ところで、鋭一は筆卸もして貰つた文江との関係を現在も継続させ、しかも鋭一が紫雨子と結婚したのは、別に紫雨子の心なり体に惚れたからではなく、亡母似の長い髪に惹かれただけとのぞんざいな理由に過ぎなかつた。
 前年の「団鬼六 黒髪縄夫人」(昭和57/監督:渡辺護/脚本:団鬼六/主演:志麻いづみ/未見)に続く、鬼六先生率ゐる鬼プロ製作によるロマンポルノ第二弾。昭和40年代中盤には四捨五入して十本のピンク映画を製作した鬼プロではあるが、どうやら今作が最後の映画製作となるやうだ。鮮烈なアクロバットで花真衣が豪快に火蓋を切り、タイプの異なる松井美世子と水木薫に対し真矢はサドマゾ夏季はレイプ。趣向も違(たが)へた嬲りのバラエティで外堀を入念に埋めた上で、満を辞して責め場に志麻いづみ降臨、SM裸映画としての構成は文句ない。反面、そもそも一件の発端たる、立花夫妻の不仲の原因そのものは、蓋を開けてみれば呆気ないほどに変哲ない。ものの、吊り橋の上で志麻いづみの決定力が火を噴く名場面が、覚束なくも思へた展開を頑丈に固定する。主演女優の貫禄と演出の充実と分厚い撮影、なるほど当時の一戦級のロマンポルノに、生半可なピンク映画は太刀打ちし難い歴然は認めざるも得まい。そこから手の平を返してハッピー・エンドで畳み込んでもいいものを、強引に紫雨子に俗世を捨てさせるまでに至るフィナーレは、ある意味清々しい。

 配役残り荻原賢三と江藤漢は、全裸緊縛された状態の紫雨子の前に飛び込んで来る、刑事二人組かとも推測したが、ウィキペディアによると江藤漢(現:江藤漢斉)は、父親が首吊り自殺したゆゑ縄の軋む音にトラウマを持つ紫雨子を文字通り立ち往生させる、滑車を用ゐ何か大きな荷物を窓から搬入中の一団の、トラックの運転手らしい。それにしても縄の軋む音にトラウマを持つとは、これまた画期的に穿つた鬼六映画のヒロイン像ではある。
 もう一点、今回発見したのが、順序からいふと逆だが吉川遊土はかなり酒井あずさにソックリである。


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 「人妻エロ風俗 そそる痴態」(1992『性感《秘》マッサージ 人妻愛撫』の2012年旧作改題版/製作・配給:新東宝映画/監督:深町章/脚本:周知安/製作:伊能竜/撮影:下元哲/照明:伊和手健/編集:酒井正次/助監督:広瀬寛己/監督助手:駒場三十郎/撮影助手:中尾正人/照明助手:小田求/スチール:津田一郎/録音:銀座サウンド/現像:東映化学/出演:石川恵美・橋本杏子・芳田正浩・荒木太郎・山本竜二・しのざきさとみ)。脚本の周知安は片岡修二の、製作の伊能竜が向井寛のそれぞれ変名。
 愛称エッちやんといふからにはまづ間違ひなく悦子であらう、岩崎悦子(石川)はコンピューター会社に勤務する優秀なプログラマーである夫(芳田)と、互ひにエッちやん・タッちやんと呼び合ふお熱い新婚生活を送る。夫以外に男を知らぬ悦子の性感帯は未開発で、くすぐつたがつてばかりの妻を相手に夫婦生活にあくせく悪戦苦闘するある日、岩崎は不意に勃たなくなる。仕事上のストレスに起因する一時的なものであるとする診断を下し、自宅療養を岩崎に勧める医師は、寛己でクレジットされる若き日の広瀬寛巳。若干細いが、殆ど変らないといへば変らない。長期休暇を貰つたはいいものの、その間は給料も減る。岩崎の不要な不安を払拭するためにも、悦子はパート探しに着手。『とらばーゆ』誌にさういふ案件が掲載されてゐるとは思ひ難いが、兎も角好条件に釣られて悦子が門を叩いた「さくらエステ」は、エステはエステでも性感出張エステ。女社長(しのざき)相手に御丁寧に攻守を交代する実地訓練を尺も潤沢に費やしこなした上で、その時電話をかけて来た、元町の証券マン・佐伯(荒木)宅に悦子は早速飛び込ませられる。この人もこの人で仕事上のストレスによる心因性のインポテンツで、挙句に彼女にも逃げられたといふ佐伯に、夫の姿も重ね合はせた悦子は俄然猛ハッスル。最終的には佐伯に促された前立腺を刺激することにより、男性機能の回復に成功する。見事初陣に勝利し喜び勇んで帰宅した悦子ではあつたが、佐伯には功を奏した前立腺攻略が、切れ痔持ちの岩崎には適用不可といふ中盤のオチは地味に気が利いてゐる。
 実は佐伯は岩崎の後輩であつたといふ事実が明らかとなり、ワン・クッション置くべく登場する山本竜二と橋本杏子は、劇中三人目の不能氏と、その細君。刺激を求めての、三人プレイを希望する。
 「若妻オイル性感 ぬめり汁」(1996)、「セックスドクター 奥さんはびしよ濡れ」(2001)、「若妻オイルマッサージ ぬめり汁」(2003)。何と今回で四度目の旧作改題となる、深町章1992年第二作。山本(仮名)家巴戦を経て、佐伯が同じくインポに悩む先輩に、いいエステを紹介しますよといふ塩梅で、以降はテンプレ通りの夫婦驚きの御対面にまで一直線。その場の勢ひで岩崎も復活し、何時しか悦子も性的に開花済み。万事目出度きハッピー・エンドといふ展開は他愛ないことこの上ないが、決して美人といふことはないものの、石川恵美の、人の好さも感じさせるエモーションが穏やかに全篇を包み込む様は、意外と素晴らしい。都合四度もの新版公開に案外堂々と耐え得る、幸福な娯楽映画の慎ましやかな佳作。個人的には、以後石川恵美といふ隠れた名女優に対して、評価を改める機運を成す一作となるやも知れぬ。


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 「痴漢電車 ゆれ濡れる桜貝」(2011/制作:セメントマッチ・光の帝国/提供:オーピー映画/監督・脚本:後藤大輔/原題:『宇治抹茶ロール桜花添へ』/プロデューサー:池島ゆたか/撮影:飯岡聖英/音楽:大場一魅/編集:酒井正次/サウンド:シネキャビン/タイミング:安斎公一/助監督:永井卓爾/演出助手:畠中威明・壁井優太朗/撮影助手:宇野寛之・島秀樹・今村圭佑《電車応援》/編集助手:鷹野朋子/現場応援:広瀬寛巳/出演:桃井早苗・中森玲子《新人》・小滝正大《新人》・野村貴浩・佐々木麻由子・日高ゆりあ・竹本泰志・池島ゆたか・倖田李梨・一魅・ヒロセ寛巳・冨田じゅん・松井理子、他多数/特別感謝:良ちやん)。出演者中、倖田李梨以降は本篇クレジットのみ。
 潤沢な面子に混み合ふ電車の車中、スカートの下を中心に乗客の股間を潜る意欲的なカメラは、さりとて最終的には然程の意味を有してゐるやうにも見えない。女優養成所の講師で映画監督の加藤伸輔(野村)から、こつ酷くダメ出しされたことを苦く想起する女優の卵の杉内晴美(桃井)の前には、どうやら痴漢されてゐるらしき佐々木麻由子と、その背後では惚けた佇まひで上方を見やる竹本泰志と小滝正大。痴漢される女の後ろに男前と冴えない小男を並べる、含意の明確な文法が清々しい。何れが犯人かは兎も角、佐々木麻由子に対する痴漢行為を晴美が確信したタイミングで、電車は急停車、弾みで小滝正大は晴美の胸を鷲掴みにしてしまふ。別に構はないが、トーストを喰はへた美少女の転校生と、曲がり角で出会ひ頭に激突するが如きシークエンスではある。さて措き、急停車したのは、元来保守的といはれるオーピーがよくぞ通したともいふべきなのか、線路上に大量の糞尿が撒かれ、電車が立ち往生したからであつた。仕方なく乗客は悪臭に悶絶しつつその場で下車、晴美は足を洗ひに小川に入ると、そのまま川の流れに身を任せる。映画的に漂ふ晴美は、スマホ片手に―糞尿電車テロに関して2chに―スレを立てるだ立てないだと一人で喧しい小滝正大と再会する、プロ級に鬱陶しい男だ。所変り、晴美が働く、大場一魅がママのガールズ・バー。・・・・大場一魅がガ、ガール!?まあいいか、黙れ俺。同僚で養成所同期の山崎千秋(中森)は、店を退けた後“個人レッスン”とかいふ方便で加藤の自宅を訪ねると、加藤と寝る。業界の中で注目度の高い、卒制(卒業制作)の主演の座を、OLを辞めた後に幾つもの養成所を巡つた千秋は狙つてゐた。加藤はその直前に偶然出くはした、ゴミ出しに店の外に出た晴美にも、個人レッスンの誘ひをかけるやうな男なのだが。要は露出系のマニアさんといふ寸法なのか、佐々木麻由子と竹本泰志がへべれけな痴漢行為に燃える空いた車中、晴美と千秋は並んで卒制「宇治抹茶ロール桜花添へ」の台本に目を通す。佐々木麻由子と竹本泰志に呆れた千秋が退避すると、今度はそこでは倖田李梨が闇雲にビッシビシ得意のダンスを踊つてゐたりなんかする。宇治抹茶ロール桜花添へのレシピを求め本屋を訪れた晴美は店員といふ形で、痴漢オタク男・越智良則(小滝)と再々会。すると非現実的に二人は意気投合、日曜日にデートすることになる。
 その他配役登場順に冨田じゅんと松井理子は、車中の綺麗処。ヒロセ寛巳は寡黙なガールズ・バー客、火を噴く円熟のTシャツ芸は、今やこの人このギミックの一点突破で十二分に戦へよう。日高ゆりあは、越智の中古車ディーラー時代、酔ひの勢ひで筆卸してあげる当時の同僚・新井洋子。池島ゆたかは、越智が童貞であつたことを、当人が聞いてゐるとも当然知らず洋子と揶揄する、二人の共通の上司・池島(仮名)課長。よくよく思ひ返してみたところ、池島ゆたかは声はすれども姿は見えぬであつたやうな気もするのだが、他多数と同様に、乗客要員として文字通りの人海戦術に一役買つてゐたのか?ガールズ・バー店内にひろぽんの他にもう一名見切れる若い男は、純然たる山勘に過ぎないが、演出部動員のやうな気がする。
 狭義のピンク映画としては五年ぶり、新東宝からオーピーに越境しての電撃復帰作「となりの人妻 熟れた匂ひ」(主演:冨田じゅん・なかみつせいじ)、五ヶ月間を置いての前作「多淫な人妻 ねつとり蜜月の夜」(主演:桃井早苗)と来て、更に三ヶ月後といふ本格的に順調なペースによる後藤大輔2011年第三作は、明けて大蔵時代からの恒例正月痴漢電車。改めて後述するが、番組上特別な正月でなくとも、ヒロインが一本の映画を背負はせるには如何せん苦しいゆゑ、相手役の越智に視点を移すと、中年のオタク男にセックスも積極的にヤラせて呉れる若い彼女が出来る。ある意味も何も客層の一部に延髄斬りを叩き込むダイレクトな夢物語は、やがて千秋―と加藤―の姿を通して入念に地ならしした上で、竹本泰志―と佐々木麻由子―の決定力で人それぞれの人生賛歌へと穏やかに着地する。賑々しい布陣が煩瑣を感じさせる面もなくはないともいへ、さういふテーマと構成自体は、目出度い正月映画に際し全く鉄板、実に素晴らしい。さうはいふものの、基本的に目つきに難があるのか、髪をアップにするといよいよ逃げ場がなくなる、桃井早苗の垢抜けない華のなさはどうにもかうにも苦しくはなからうか。大根といふほどのことはないが野暮天の主演女優に作品世界の真の醸成を阻まれた、ピンク映画であることも踏まへればなほさら致命的に惜しい一作。単なる、個人的な嗜好ないしは性癖に起因する難癖であるやも知れないが、それでどうした文句があるか。ビリング・トップにピンとは来ないまゝにそれでも捻じ伏せるだけの強靭なエモーションまでには、些か遠いやうに思へる。
 逆にといふのは文脈がおかしいが、初陣ながら二番手の中森玲子には、銀幕のサイズに一層映えるダイナマイトな肢体といひ、芝居勘の良さを感じさせるやさぐれた風情といひ、非常な好印象を抱いた。電車の中で寝落ちた際の集団痴漢は、そこにその淫夢を置くドラマ的な必然性は特にも何も一欠片も見当たらない反面、なほのこと中森玲子ここにありを轟かせる一撃必殺の度迫力に溢れた名濡れ場。

 ところで、本篇クレジットに於ける小滝正大の“(新人)”特記に、頂けないものを感じてみるのは尻の穴のミクロさを自ら露呈するに過ぎまいか。小滝正太と微妙に名義は異なれど立派な主演作も兎も角、二本のエクセス仕事のことは等閑視してみせるおつもりか。


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 「激入 主人よりずつといゝ」(2002『赤い長襦袢 人妻乱れ床』の2012年旧作改題版/製作・配給:新東宝映画/監督:深町章/脚本:岡輝男/企画:福俵満/撮影:長谷川卓也/編集:酒井正次/助監督:佐藤吏/スチール:津田一郎/録音:シネキャビン/現像:東映化学/協力:星座/出演:若宮弥咲・相沢知美・水原香菜恵・岡田智宏・なかみつせいじ)。
 昭和二十二年、ロケ的には山梨県甲州市は塩山の、毎度御馴染み「水上荘」でありつつ、物語上は東京都文京区音羽の遊佐家。暇を貰ふ挨拶に現れた女中の速水るい(相沢)が、屋敷に一人残される女主人の遊佐田鶴子(若宮)に、今しがた届いた一通の封書を手渡す。鵜飼幸也といふ、全く知らない男からのものであつた。手紙の主いはく、田鶴子は自分を知らないであらうが、自分は田鶴子に関して何でも知つてゐる。与謝野晶子の愛読者であることと、煙草嫌ひであること。そして、稀代の完全犯罪者であることを。日本橋の扇子老舗「鵜飼」の次男坊・鵜飼幸也(岡田)は肺を患ひ、日陰の生活を送る。日がな一日蔵の中で過ごす幸也はある日遠眼鏡を発見、小日向の高台に立する蔵の窓から、音羽一帯を窺ふ愉しみに開眼する。やがて心を奪はれた田鶴子の日常を、心得のある読唇術の力も借り定点観測するやうに。出征した田鶴子の夫・静馬(なかみつせいじのゼロ役目)は戦火は潜り抜けたものの、復員船が沈没したとの報が入る。即座に遊佐家に乗り込んで来る水原香菜恵は、静馬の妹・神尾敦子。遺言を持ち出し、静馬が死亡した場合田鶴子でなく、家督を自身の夫が継ぐ旨を主張する。こゝが、色々ある中今作最大のツッコミ処。家督とは即ち家長権、どうしたら神尾家の人間である敦子の夫が、遊佐家の家督を継げるのか。実はるいが敦子と結託してゐたりもする一方、追ひ詰められた田鶴子の前に、異母弟にしては静馬と瓜二つの若林吾郎(なかみつ)が、当座の生活費の無心に訪れる。
 旧題・ビデオ題とも正式に冠されてゐないとはいへ、広義の“鍵穴5”ともいふべき深町章2002年第四作。前回深町章戦に引き続き、例によつてリアルタイムでm@stervision大哥が完結されたところに後追ひを挑むのも負け戦にすら値しないが、泣き言は垂れても逃げは許されない。何はともあれ、ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続けるのを唯一のポリシーとしてゐる次第。無為の言ひ訳の与太は兎も角、基本設定が自動的に有する立体性を、一切活用するでなく済ましてみせる清々しく平板な展開と、全般的な貧しさを禁じ得ない主演女優は確かに苦しい反面、見所も案外なくはない。限られた頭数の中で、水原香菜恵の濡れ場を相沢知美と咲かせる百合で二人纏めて消化する戦略は、素面の劇映画としては大概な力技でしかないのかも知れないが、裸映画的には結構秀逸。一方的な幸也の邪推ながら、不能もしくは男色疑惑を、性急な凶行に際しての二者択一に繋げる論理性も渋い。そしてラストの、今でいふと童貞ストーカー・ニートの幸也が自ら望む形で辿り着く、ときめきに死す恍惚が、岡田智宏から現在に於いても依然抜けきらぬ青さにいゝ具合に彩られ、案外形になる。満更でもないといふか、一歩間違へば秀作となつてゐた可能性を残す、ともいへるのではなからうか。

 そして、これは今作自体の手柄とは関りない十年後のファイン・プレー。一見ぞんざいに思はせ、巧みに内容に即した今回新題―2006年最初の新版公開時には「情痴妻 脱がされた長襦袢」、こちらは何の変哲もない―が地味に素晴らしい。


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 「義父の求愛 やは肌を這ふ舌」(2012/製作:Blue Forest Film/提供:オーピー映画/監督:竹洞哲也/脚本:小松公典・山口大輔/監督補:山口大輔/撮影監督:創優和/助監督:永岡俊幸/編集:有馬潜/監督助手木村緩菜撮影助手:丸山秀人・酒村多緒/音楽:與語一平/出演:つるのゆう・かすみ果穂・星優乃・久保田泰也・倖田李梨・藤本栄孝・毘舎利敬・岩谷健司)。ポスターには、出演者に永岡俊幸が追加される。
 陽炎に揺らぐ渋谷の街、「夏の終りが来る度に、始まりの夏を思ひ出す」らしい、面倒臭い能書垂れの毘舎利敬に、女子高生といふには正直苦しいが、兎も角制服のかすみ果穂が微笑みを浮かべ接触する。寂れた海町、首から上の白さが逆説的な濃さを感じさせもする主演女優が、奇異も否めなくはないセーラ服姿で砂浜に立つ。少し距離を置いて対峙する二人の男、若い方の男がつるのゆうに近づきタイトル・イン。
 引き続き渋谷ではなく海町、下宿屋も兼ねるひもの屋。ひもの屋の店主、兼大家の団野猪子(星)と、亭主は居ないのか、下宿人で高校国語教師の滝山強(藤本)との、事実上猪子が滝山を喰ふ形での情事。扇風機を回しながら、如何にも暑さうな風情で事に及ぶのは別に構はないが、後ろの壁に見えるエアコンをつければいいのにといふ、プリミティブなツッコミの余地は残す、ほかのカメラ位置は選べなかつたのか。事後、物足りない猪子を残し、滝山は食傷気味に散歩に出る、贅沢極まりない男だ。咥へ煙草で釣り糸を垂れる男子生徒(永岡俊幸)からマッチまで取り上げた滝山に、永岡俊幸は「余所者が」と捨て台詞を吐く。そのまゝ仏頂面で煙草に火を点け、「マッチ擦るつかのま海に霧ふかし・・・」と寺山修司の短歌の一節を戯れに吟じた滝山に、今度は続く句はうろ覚えのつるのゆうが声をかける。つるのゆうのセーラ服は滝山が勤務する高校の制服ではなく、見覚えのないものだつた。つるのゆうは遠目に迎へるワイシャツの久保田泰也と消え、ホテルにて一戦交へる。一方東京、伊達直喜(毘舎利)と亜玖多津子(かすみ)もホテルに入る。猪子に尋ねてみたところが、どうも忌まはしげに言葉を濁すつるのゆうに心奪はれた滝山は、何時しか当てもなく探し歩くやうになる。訳の判らない夏の焦燥、確かに二十年ほど前には、オジサンにも身に覚えがなくもない。立小便中といふ絶妙なタイミングで、滝山は私服の伊達尚美(つるの)と再会する。名前以外には質問を概ねはぐらかす尚美は、滝山を自宅に招き、体を任せる。伊達家には、大量の本やCD、絵画道具が溢れてゐた。ただそれらは尚美のものではなく、亡母の持ち物であつた。後々ソフト・フォーカスの向かうに霞む倖田李梨が、在りし日の尚美母。二回戦を終へた滝山に、尚美は何と義父との相似を叩きつける。滝山は猪子の未練込みの制止も聞かず、次第にどころか一息に尚美に溺れて行く。
 岩谷健司は、猪子の入り婿・健児。健児との間に距離を感じた猪子は、売春婦である尚美を使ひ、夫の気持ちを試してみる。ところが健児はまんまと尚美に絡め取られ、最終的には家を捨て町から消える。
 魔性の女に狂はされる男達のいつかギラギラする夏を描いた、真冬公開の竹洞哲也2012年第一作。これで2011年次から四作続けて、身内だけで楽しむことの多い大人の映画で子供騙しの悪ふざけに終始するキャラクター劇を廃し、正攻法で挑んだ点はひとまづ評価出来るものの、かといつて満足に首を縦に振るには些かならず遠い。狂気を孕んだ愛欲のドラマにしては、小松公典―と、それを捨てきれぬ竹洞哲也双方―の悪癖といふほかはない饒舌さは結果個々の台詞を薄め、基本明る過ぎる画面も軽い。実勢はビリングに違(たが)ひ、つるのゆう×星優乃×かすみ果穂といふ、即ちミステリアス×ホット×クールの各ビューティー。何れ菖蒲か杜若、花がひとつ足らないが三者三様に咲き誇る三本柱の超絶を愉しむ眼福をも、作劇の中途半端さが微妙に妨げる仕方のない印象が強い。そもそも、渋谷と海町での直喜と滝山の併走自体が痒いところい手を届かせない思はせぶりとあつてはなほさら、かすみ果穂―の裸―の出し惜しみは甚だしい。少女と既に少なくない女との、美人と不美人との間に張らたタイト・ロープを、意外と危なげなく綱渡るつるのゆうと、綺麗に精悍な男前の藤本栄孝。下手な物言ひで恐縮ではあるが、二枚看板は何処に出しても遜色なく思へる反面、含みばかり持たせ意図的に途中で止めてしまふ語り口を採用するのであれば、繰り返すが言葉の軽さと画の薄さ、総合的あるいは全般的な軽薄さが如何せん苦しい。観客を煙に巻くのが何か高尚なことだとでも錯誤してゐるかのやうな、徒な謎を放り投げるラストには、商業娯楽映画としては不誠実と片意地で覚えるものである。


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 「親友の妻 密会の黒下着」(2008/制作:セメントマッチ/提供:オーピー映画/監督:池島ゆたか/脚本:五代暁子/撮影:清水正二/編集:酒井正次/音楽:大場一魅/助監督:中川大資/監督助手:竹田賢弘/撮影助手:海津真也・丸山秀人/照明応援:広瀬寛巳/編集助手:鷹野朋子/スチール:津田一郎/制作:永井卓爾/録音:シネ・キャビン/現像:東映ラボ・テック/協力:田中スタジオ・SWANP《西荻窪・バー》/出演:友田真希・倖田李梨・華沢レモン・なかみつせいじ・竹本泰志・牧村耕次・山ノ手ぐり子・アキラ《子役》/Special Thanks:野村貴浩・神戸顕一・三浦純也・和久井美里)。出演者中、山ノ手ぐり子がポスターには山の手ぐり子。
 野菜を水洗ひする主演女優、来訪者を告げる玄関チャイムの音と、その旨を確認する夫との遣り取り。「ハッピー・バースデー」、客の声に合はせてタイトル・イン。
 課長職のサラリーマンにしては妙にダダッ広い戸建に暮らす、高宮聡(なかみつ)の誕生日祝ひに、高宮とはともに駅伝に汗を流した大学時代の同級生で、建築事務所に勤務する建築士の森本和彦(竹本)と、妻で人気インテリアデザイナーの美樹(倖田)が訪れる。高宮の妻・マドカ(友田)と四人での恒例のホーム・パーティー、としたところに、高宮の十才の息子・つよし(アキラ/ex.つーくん)がランドセルを背負つて帰宅。おいおいおい、一体この人等は何時から飲み食ひしてゐるのか、大体高宮は―森本もだが―仕事はどうした。さて措き幾分時間は流れ、つよしと付き合ふ森本がプレステに興じる傍ら、美樹は聞こえよがしに不倫相手からと思しき携帯に出る。森本夫妻の帰宅後、美樹の放埓に苦言を呈する高宮の母・弥生(山ノ手ぐり子=五代暁子/アキラ実母)の顔見せ噛ませ、漸く絡み初戦、コッテリとした高宮とマドカの夫婦生活。心許ない素のお芝居から濡れ場に突入した途端、俄然輝き始める友田真希の本領発揮が力強い。馴染みの店「SWANP」で高宮と軽く飲んだ森本は、その足で後々の会話から推し量るに建築事務所の同僚、であるのかも知れない不倫相手・エリ(華沢)とホテルにて一戦。要はこの夫婦、お互ひ様といつた寸法である。そんなある日、待ち合はせの風情で歩道橋に佇む美樹は、高宮の姿を見かけるや猛ダッシュで先回り、とりあへず食事に誘ふ。続いて、実はその模様を―高宮は兎も角美樹の顔は見知る―エリに目撃されてゐるとも知らず、美樹は高宮を強引にホテルに連れ込む。倖田李梨が得意とするセクシー・ダンスで火蓋を切る、高宮にとつては初めての浮気。性癖らしく、首を絞めての行為を求められた高宮は、勢ひ余つて美樹を殺してしまふ。
 牧村耕次は、美樹の幻影に怯えるのも通り越し消耗する高宮を気遣ふ、牧村(仮名)部長。蛇足気味にそのシーンを補完する野村貴浩は、最近ミス続きの高宮を離れたところで揶揄する陰口男、連れは中川大資。全く見知らぬ名前の、残るSpecial Thanks隊は多分「SWANP」のマスターと、後姿しか見せない女の一人客か。
 二十年来の親友同士、片や家庭的な妻を持つ堅物男、片や夫婦それぞれ不倫に精を出すプレイボーイ。プレイボーイは堅物男の家庭的な妻に憧れを隠さない中、一夜の最初で結果的に最後の火遊びによろめいた堅物男は、あらうことか物の弾みながら親友の妻を絞殺。死人への恐怖と官憲には脅威、家人と親友とには行為自体に関する罪悪感と、告白を巡る逡巡。生真面目が小心と表裏一体の堅物男は、忽ち追ひ詰められて行く。美樹が死亡した時点で、一体この物語はこの先どのやうな展開を見せるのか、と一旦は胸を躍らされた池島ゆたか2008年第四作。尤も以降、これは二人揃つてのことなので、恐らくは明確な池島ゆたかの演出企図があつての演技プランではなからうかとも思ふが、なかみつせいじと竹本泰志の大仰と、一方こちらは単にプリミティブな友田真希の大根がある意味苛烈なカウンターをクロスさせる、なかなかに腰も砕ける駄劇もとい打撃戦に終始する。眠れぬ夜の睡眠薬と、自殺目的に購入したトリカブト。明々白々な小道具を二つ事前に落とした上で、自首前夜に睡眠薬を持つて来るやう願ふ、この上なく立てたフラグに重ねて、懇切丁寧に起爆装置を露出してみせる、幾ら量産型娯楽映画とはいへ地下にもめり込まんばかりの敷居の低さには、別の意味で度肝を抜かれた。ある意味凄い映画だと諦めかけたのも束の間、文字通りのフィニッシュ・ブローに鮮烈を叩き込む、本領を発揮した毒婦ぶりと相手役の受けが見事な、満を持して“親友の妻”が“密会の黒下着”を披露するラストには、まんまと油断の足を掬はれたと感心した。強度不足を最後の最後で取り戻す、終り良ければ全て良し、最終的な据わりの安定感が鮮やかな印象を残す一作である。

 それはそれでいいとして、残る問題は、変な物言ひだが映画本体を観るのにかまけ、神戸顕一が何処に如何なる形での見切れを果たしてゐたものやら完全に見落としてしまつた。池島ゆたか通算百三作目となる今作が、二人が男同士で約束した―池島ゆたか監督作―百本連続出演のちやうど百本目に当たるゆゑ、当然必ず絶対に登場してゐる筈なのだが。出現ポイント―ポケモンか―候補としては頻出小道具『AHERA』誌が、高宮家か「SWANP」店内にでも紛れ込んでゐたか、あるいは気づかなかつたが格闘色に染まつた、エリの携帯画面に表示される選手の画像?


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 「性獣三姉妹 百花淫乱」(1995『三匹の女猫』の2012年旧作改題版/企画・製作:フィルム・ハウス/提供:Xces Film/監督・脚本:上田良津/プロデューサー:伍代俊介/撮影:原田清一/照明:斉藤久晃/音楽:伊藤善行/編集:金子尚樹/助監督:田中正茂/ヘアメイク:大塚春江/製作担当:真弓学/監督助手:池上直隆・井戸田秀行/撮影助手:橋本彩子/照明助手:山崎満/出演:白石奈津子・細川しのぶ・吉川由貴・山本清彦・真央元・田原政人・太田始・久須美欽一)。
 三本柱が絡み合ふショットを、本当に瞬間的に噛ませてタイトル・イン。折角の揃ひ踏みが明らかに短過ぎる不自然さは、プリントが飛んでゐるのでなければ、改題作業に伴なふ不可避の所以か。仕事で紐育に滞在する両親は不在の篠原家、長女でOLの恭子(白石)、次女で美大生の真由美(細川)、三女は女子高生の美香(吉川)。三姉妹の慌ただしい朝の風景をそれなりに丁寧に通過すると、さあて挨拶はここまでだ。モノガタリ、何だそれ、頭に大きな鋏がついてる奴か。それはクワガタだ、“ガタ”しか合つてねえよ。テーマ?そんなもんパンに塗つて頓馬に喰はせろ、それは“ラーマ”とでもいひたいのか?以降は基本的に濡れ場一辺倒、濡れ場・ゴーズ・オン!美香と不良気味の先輩兼彼氏・木村弘(山本)との、人気の無い特別教育室での校内写生、勢ひに任せ筆を滑らせてみたが激しく懐かしいな。弘が年上の女から教はつたとの、女は目隠しすると十倍感じるだとかいふ、赤く塗装して角を生やすと三倍速くなる類のメソッドも持ち出しつつ、事後特別教育室の入り口には、美香の担任で理科系教師と思しき浜田光次(太田)が身を潜める。どうしても優評価が欲しい真由美は教授の山内邦彦(久須美)に色仕掛けを仕掛けるも、珍しく久須美欽一もとい山内がそれには応じず、ジャンプ・カットでバンドマンの彼氏・西田達也(真央)と練習スタジオにて情事。門限の九時―然し早えな―になつても真由美が帰宅しない篠原家と、翌日か同僚兼彼氏の野本秀夫(田原)からその夜のクラシック・コンサートの誘ひを受けるも、予定のある恭子が断る一幕を挿んで、弘と、カードといふ以外に理由は特に語られないが、借金がありアルバイトで家庭教師をする恭子のプライベート・レッスン。即ち、弘にろくでもない入れ知恵を施したのは、他でもない恭子といふ寸法である。今度は恭子の帰りが遅い夜に、美香の素行に関して浜田から呼び出しが入る。次の日、そんなこんなでかなり強引に言ひ寄る、淫具も変態的に駆使する太田V.S.恭子戦。その頃当の美香はといふと、万引き現場を達也に目撃。そのまま何となく事実上ナンパが成立するやうな形で、矢張りスタジオでのあくまで和姦。同時進行で一方真由美は、山内攻略に成功。そこまではいいとして、実は達也の弟分であつた弘がスタジオに現れ、美香の浮気は露呈。挙句に、妹に男を寝取られたことが真由美にも発覚してしまふ。一応、懲りた素振りも見せる真由美と美香が二人で帰宅すると、家の前には恭子を待ち侘びる野本が。妹二人は姉と野本の婚前交渉?をお膳立てした上で、その様子を見ながら各自自慰。アクティブといふか、無造作といふべきか。兎も角クライマックスに際し三姉妹の裸を並べるのだといふ、頑強な意思だけならば感じられる。ガイゼンセー、何だそれ、八卦ロボの一体か?だから与太を吹くにもネタが苔生してるんだよ。閑話休題、要はヤリ疲れたのか、キングサイズのベッドに仲良く川の字で眠る三姉妹の寝姿を押さへて“完”。
 上田良津第二作、因みに共に神戸顕一率ゐる神戸軍団の成員であつた山本清彦と真央元は、上田良津的には前年ではなく何と前月のデビュー作「昼下りの暴行魔 団地妻を狙へ!」(主演:江崎由美)に於いて、真央元のアテレコを山本清彦が務めた仲にもある。詰まるところは感動的に狭い世間の中で、性獣三姉妹が適当に男もしくは棹をシェアする。万事が女の裸を銀幕に載せることのみに奉仕する、裸映画の中の裸映画。量産性の枠内に作家性は埋没し、上田良津であらうと新田栄であらうと坂本太であらうと、こんなもの誰が撮つても同じだと乱暴に片付ければそれまでに過ぎないやうな気もしないではないが、無駄を一切排した潔さはそれはそれとしてひとつの完成形。正直三女の面相は些か残念でもあるものの、細かいことは気にするな。乳を見ろ尻を見ろ、嬌声に身を浸せ。上映中はそれなりに楽しませ、後にはケロッと一欠片も何も残らない。嗚呼腹一杯に裸を堪能した、話の中身はサッパリ覚えてないけど。初めから存在しないものを、覚えてゐるもゐないも土台はあつたものではない。とりあへずの満足感だけ残し、さあて家に帰つて寝るか。意外とそんな辺りが、娯楽映画の到達点といへるのではあるまいか。これは断じて一時的な気の迷ひなどではない、常々結構本気でさう思つてゐる。

 それにしても、繚乱ならぬ“百花淫乱”とは洒落てゐる、これはエクセスのスマッシュ・ヒットだ。


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 「現代猟奇事件 痴情」(1992/製作・配給:新東宝映画/脚本・監督:鈴木敬晴/企画・製作:田中岩夫/撮影:稲吉雅志/照明:和泉洋明/音楽:フィス・ミュージック/編集:竹村編集室/助監督:青柳一夫/撮影助手:片山浩、他二名/監督助手:高田宝重/挿入歌:KINYA『エンドレス』/効果:協立音響/出演:浅野桃里・清水大敬・KINYA《友情出演》・牧村耕次・平岡きみたけ・栗原早記)。照明助手三名に全敗する。
 亡夫への慕情から死に急ぐらしい栗原早記と、訳の判らない観念を捏ね繰り回しながら歩く女装子。一応お断りするが、山﨑邦紀の映画ではない。殺すつもりはなかつたと狼狽し逃走する平岡きみたけと、女装子が擦れ違つたその先には、右足を始め体のそこかしこを拘束した作業用ロープを、首にまで巻かれた半裸の栗原早記が。既に半死といふのに、女装子に首を絞められた栗原早記が見せる、まるで欲情に潤むが如き表情を押さへてタイトル・イン。一筋縄では行かぬであらう気配だけは、この時点でひとまづ明らかとなる。
 港湾地域にて、OLの栗田幸子(栗原)が精神分析学の元東大臨時講師・小菅リュウイチ(これが女装子/KINYA)に強姦殺害される事件が起こる。編集長、兼不倫相手(清水)から女の視点での原稿を依頼された、ルポライターの森下カズミ(浅野)は行動開始。現場を取材するカズミの周囲に、付近で自虐的なトレーニングに体を痛めつける平岡きみたけが出没する一方、幸子がレイプされたのは実は二度目で、最初に幸子を犯した単純な常習犯・田中(牧村耕次/テレビの中の平キャスターの声も兼務)に接触した清水編集長は、幸子を強姦したのと、殺害したのは別々の犯人であるのではないかとする仮説を立てる。カズミが次第に幸子に自身を重ね合はせる、のも通り越し何故か同じタナトスに囚はれる最中、精神鑑定の際に病院から脱走した小菅は行方を眩ませる。
 七月の名作特選(緊縛特集)、八月の「新東宝名作痴漢特集」に引き続き、地元駅前ロマン九月の新東宝クラシック・ピンク枠(仮称)は、三本立ては組むことなく単騎で飛び込んで来た鈴木敬晴1992年第二作。尤も、本式の新版公開がガンガン昭和に突入する昨今、正直二十年前とはいへ最早然程古くもないが。実際に小屋で挑む前に、事前予習でもしておくかとグーグル先生に尋ねてみたところが殆ど全く何も出て来はしなかつたものの、日本ビデオ販売から発売されたVHSのジャケに踊る、“サイキック・ピンク!”なる恐ろしい文言には期待とは別の意味で胸を騒がさせられた。より直截には、大丈夫か?と悪い予感が鎌首をもたげた。さて蓋を開けてみると不安的中、“サイキック”要素の皆無などは可愛い瑣末。“サイキック”どころか、空理空論といふ意味合ないしは俗流用法での、観念論ピンクであつた。幸子の真実を追ふカズミが、何時しかミイラ取りがミイラになる展開は、濡れ場込みで尺がタップリと費やされるのもあり、過程単体は形を成さぬでもない。但し、肝心の幸子のエモーション自体の中身が、蒸し返されるくらゐでほぼ一切深化が図られることもないゆゑ、あれよあれよとカズミも死にたがる程度で物語にギリギリ血肉は通ふかも知れないが背骨は通らず、観てゐるこちらの気持ちとしては狐に抓まれるばかり。挙句に、独善的な魔人・小菅を野に放つておきながら、結局は姿を消したまゝカズミと遭遇を果たすでもなく、中途中の中途で尺が尽きてしまふ非感動的に唐突な結末には、仕出かされた!と逆の意味で万歳した、それはホールド・アップといふのだ。意図的に仔細を語ることなく、痒いところに手を届かせずに雰囲気だけで観させる、あるいは魅させる戦法も決してなくはないが、その場合にも今作の致命傷は、全篇を間断なく貫く画的な弱さもしくは貧しさはどうにもかうにも厳しい。菩薩の心を以て接する限りに於いては初めて微笑ましい、正逆をさて措けば破壊力の絶対値だけならば確かに小さくはない、クラクラ来ることは来る一作である。鈴木ハル名義も含めて、これで鈴木敬晴の映画を観るのは四本目になる。さうはいへども、各作の振り幅が大き過ぎ、なかなかその遣り口を未だ自分なりに固定出来ない。

 ところで、更に残る疑問が小菅役のKINYAは一体どのKINYA?コタニでもオカマでもなければ、無論小川でもない。当然、ジョナサンもな。


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 「女子大生の揺れ乳 揉んでいかせる」(1991『巨乳なぶり』の2012年旧作改題版/製作:プロダクション鷹/配給:新東宝映画/脚本・監督:珠瑠美/撮影:伊東英男/照明:隅田浩行/音楽:新映像音楽/美術:衣恭介/編集:井上編集室/助監督:小林豊/効果:協立音響/出演:一の樹愛・朝比奈樹里・広瀬未希・野沢明弘・杉本まこと・十辺伸)。出演者中、十辺伸がポスターには十返伸、惜しい。
 ズンドコ一応サスペンス調の劇伴が鳴り、後にも一度だけ使用されるものの何の含意があるのかはサッパリ判らない、上から降る火花のイメージに被さるタイトル・イン。先走ると、感動的なまでに直球勝負な即物性が、グルッと一周して秀逸な新題ではある。
 お嬢様なのか、女子大生の一人暮らしにしては不自然にダダッ広い部屋。先に起きた部屋の主の真紀子(一の樹)は未だ自堕落に眠る、ホステスで父親の後妻の娘、即ち腹違ひの妹に当たるユミ(朝比奈)に起きることを促す。姉妹どちらの台詞かは忘れたが、二人の関係を称して義理の姉妹といふのは初歩的な誤りだ、母親は違へど父親が同一である以上、半分だけでも血は繋がつてゐる。シャワーを浴び一の樹愛のアグレッシブな肢体を軽く拝ませておいて、改めて真紀子は素行に問題のあるユミにあれやこれやお説教。ユミがボックスの赤マルに苛立ちながら火を点ける、ダンヒルのライターに真紀子が目を留めたところで、珠瑠美映画定番、異常に尺を取るフェード・アウト。何時の間にか、午前中の講義に急ぐ筈の姉よりもユミが先に一旦退場、そこに呼ばれもせぬのに現れた腐れ縁の彼氏?幸男(杉本)が、真紀子を無理気味に抱く絡み初戦。ここで注目は、別に狙つたやうにも見えないが、正常位を真紀子の頭越しに抜くアングル、一の樹愛の爆乳が結合部を隠すショットには驚いた。事後早くも劇中二度目の風呂―だから早く大学行けよ―を浴びる真紀子は、ユミが働く店で羽目を外し泥酔した夜、送り狼の幸男に犯された過去を振り返る。所ガラッと変つて夜の繁華街、スティービー・ワンダーの「パート・タイム・ラバー」が堂々とフル使用される中、覗き部屋の女・ケイコ(広瀬)がてれんこてれんことストリップ。続けて野沢明弘が、超攻撃型凶悪スケコマシ役で登場。ラブホテル「渋谷の街の物語」にて、客の男(十辺)がケイコを買ふ。その頃野沢明弘は、ケイコのSMショウの男役として幸男に声をかける。一方、幸男はポーカー賭博でヤバい筋に借金を作つてしまつてゐた。実は姉との前後は不明ながら幸男と付き合つてゐるユミは、その金を―当然用途は濁さうが―真紀子に無心するも拒絶される。実は実は、ユミが不用意に使ふダンヒルは元々真紀子が幸男に贈つたもので、そのことに真紀子は秘かに気付いてゐた。
 大巨乳・一の樹愛を主演に擁した珠瑠美1991年第八作は、最早清らかなまでに無体極まりない物語。男優部濡れ場要員の十辺伸のことは無視すると、ヒロインを除けば残り僅か四人ぽつちともいへ、まあどいつもこいつも全員ろくでもない人間か極悪人しか出て来ない。珠瑠美版『美徳の不幸』とまでいふのは為にする筆の戯れにしても、詰まるところは悪意と邪欲に翻弄されるばかりの真紀子に代り、劇中を概ね支配するのは欲望の赴くまゝに暴れ倒す野沢明弘、ネオンの似合ふギラついた格好良さは尋常ではない。一の樹愛のオッパイは勿論お腹一杯に見せて呉れるが、それも兎も角野沢明弘ファンは是が非とも必見の一作。結局クライマックスもユミと幸男の他愛ない姦計を、飛び込んだ野沢明弘が美味しいところをほぼ根こそぎ持つて行く。力なく排除された幸男が、幸男の回想内で真紀子に抜いた、日本刀でも持ち出すのかと思ひきや、普通に呼んだパトカーのサイレン音に、ユミと野沢明弘と真紀子が順繰りに気付いて終り、といふドラマ性皆無のラストが、呆気なく六十分を締め括る。単なる偶然かも知れないが、これで「倒錯縄責め」(昭和61/監督:珠瑠美/脚本・プロデューサー:木俣堯喬/主演:観世彩)、「ダブルレイプ 変態調教」(1990/脚本・監督:珠瑠美/主演:林由美香)と、三作続けて通報エンドの珠瑠美映画を観た格好となる。これで案外、権威主義的な人なのか。

 エンド・マークはフレーム外から“完”がソロソロソロッと迫り上がり、画面中央で停止する。間抜け感も堪らないがその際に、わざわざ主演女優の顔を綺麗に隠してみせる辺りは、フィニッシュのへべれけさを完成させるかのやうで逆の意味で完璧だ。


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