真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「愛人 悦楽の午後」(昭和60/制作:俥企画/配給:株式会社にっかつ/監督:薬師寺光幸/脚本:黒岩幻城/企画:奥村幸士/プロデューサー:照井公咲/撮影:志村敏夫/照明:斉藤政弘/録音:ニューメグロスタジオ/編集:田中修/音楽:PILLAKUN/助監督:東田真一/制作主任:松川充雄/現像:東洋現像所/効果:小針誠一/記録:竹本祐子/メイク:志川あずさ/出演:青木ひろみ・伊藤久美子・河田清志・上田幸輔・萩原賢三・大木祐司・沢田誠志・黒岩幻城・俵山栄子・水美翔・六本木舞・城源寺くるみ)。出演者中、黒岩幻城と俵山栄子は本篇クレジットのみ、配給に関しては事実上“提供:Xces Film”。あと、白井伸明とする資料も散見される、何か文字化けしたみたいな名前の照井公咲が、その他活動の痕跡はガイラ(=小水一男)のスプラッターVシネ「GUZOO 神に見捨てられしもの」(昭和61)の企画くらゐしか見当たらない。
 エレベーターが開いて、泡沫女優部の安斉ミカ(青木)が出て来る。楽屋に顔を出すも、水美翔の髪を作るのに忙しいスタイリスト(俵山)から、名無しホステス役のミカは無造作に扱はれる。一方、所属する斉田ボクシングジムの会長(萩原)と女トレーナー・桃代(伊藤)を左右に従へ、連続KOの日本タイ記録に並んだフェザー級ボクサーの北原暁(河田)が大勢の記者部(大木祐司・沢田誠志ほか沢山)に囲まれ通り過ぎ、た後に。次戦の激突が予想される日本王者・バズーカ三浦(上田)がシレッと通路の壁にもたれ、要は身を隠しもせず佇んでゐる間抜けなシークエンスはもう一手間どうにかならなかつたのか。自分で適当に見繕つた衣装にそれはそれとして御満悦のミカ挿んで、滲ませたネオンにクレジットが先行。何某かに乗つたか載せられた青木ひろみがスーッと平行移動するタイトルバック、細山智明が多用した印象も強いが、要は昭和末期に軽く流行つたと思しき香ばしいメソッドの、源は何処かにあるのか否や。
 例によつてのエキストラをバラされ、落胆してJOAK-TV局―これ実名使用してるの地味でなくヤバかねえか?―を後にするミカにバズーカが接触。芸能界に顔の効く親爺のコネをちらつかせ愛人にしたミカに、バズーカは斉田サイドに接近しての、試合前の北原に睡眠剤的な薬物を飲ませるミッションを強ひる。とこ、ろで。斉田ジム内の会話に於いては、バズーカ父は医者とされてゐる、脇の甘いちぐはぐさもどうにかならいものか。兎も角配役残り、六本木舞と城源寺くるみは水美翔同様、楽屋を飾る女優部。六本木舞に至つては一言の台詞も与へられない、脱ぐ脱がぬ以前の端役ぶり―水美翔も水美翔で満足に抜かれもしない―は勝手に騙された軽く詐欺。ミカをバラす助監督なり、北原陣営の男トレーナー等々、候補が複数見当たる黒岩幻城は特定出来ず。あとミカがバズーカと出会ふ、バイト先スナックのママさんもノンクレ。
 監督第二作「幕末純情伝」(1991/製作総指揮:角川春樹/製作者:奥山和由/主演:牧瀬里穂)が今なほ毀誉褒貶喧しい、以外、軽くググッてみたところで外堀の“そ”の字も埋まらない薬師寺光幸の第一作。確認し得る最古のキャリアが、「アイコ十六歳」(昭和58/監督・共同脚本:今関あきよし/主演:富田靖子)のサード助監督といふ辺りが更に謎、飛花落葉の彼方に出自が霞む。
 六本木舞に城源寺くるみ、往時如何にも訴求力の高さうな名前でポスターを賑やかしておきながら、蓋を開けてみると脱いで絡む女優は二人きり―桃代は北原と男女の仲―といふ一種の羊頭狗肉と、一時間にも満たないピンクばりの短尺。一見随分小粒の初陣にも見せ、バズーカ三浦V.S.北原暁のタイトルマッチに際して、ホールを借りてのける辺りは買取系とはいへ流石のロマポ。悪魔に魂を売つてでも栄華を狙ふでなく、案外惰弱に二の足を踏むミカに、桃代がゐるにも関らず、何故だか北原は都合よく入れ揚げる。最終的には全員破滅する非情か無常なラストまで含め、ありがちな物語は大袈裟に破綻すらするでなく、ツッコんで楽しむ訳にも行かない程度。に思はせかけておいて、多用するロングを効果的に利した、カットの繋ぎには所々切れ味を感じさせなくもない。大雑把に片付けるなら暗がりの中寝落ちる落ちないは、偶さかな体調に支配されようなかなか掴み処を欠いた一作。男顔と肉感的な肢体がより琴線に強く触れる、伊藤久美子をお留守に北原が青木ひろみに心を移す展開が、個人的には感情移入に甚だ難い。「あんたアタシが作り上げた最高のボクサーなんだよ」、「誰にも渡さない、渡さないんだからあ」とエモい一途さを爆裂させての、桃代から北原に覆ひ被さる濡れ場が火蓋は完璧に切る反面、カッコつけずに、照明当てろといふフラストレーションは否み難く、弟子がミカを抱くのを終ぞ堪へる傍ら、斉田会長はザクザク喰ふ一戦。さしたる演出上の企図を窺はせもせず、手持ちとフィックスとで安定しない撮影に、アダルトビデオの侵攻に揺れる当時の空気を感じ取つてみたりもするのは、為にする素人考へに過ぎないであらうか。


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )




 「怪談 回春荘 こんな私に入居して」(2020/制作:不写之射プロ/提供:オーピー映画/脚本・編集・監督:古澤健/撮影:山田達也/照明:玉川直人/録音:臼井勝/音響:川口陽一/音楽:宇波拓/ヘアメイク:堀たえこ/スチール:平野敬子/助監督:島崎真人・菊嶌稔章/撮影助手:髙嶋正人・及川玲音/制作協力:高杉孝宏/衣裳協力:纐纈春樹/協力:株式会社バイハート・クリッパーエンターテイメント株式会社・日本照明株式会社・サボロッカ・梅宮不動産・佐川絹子/仕上げ:東映ラボ・テック/出演:石川雄也・桜木優希音・加藤ツバキ・細川佳央・美園和花・古川博巳・古澤健・馬場誠・島崎真人・菊嶌稔章・及川玲音)。出演者中、古澤健が本篇クレジットのみ。
 黒バックのタイトル開巻、下水道をヘッドライトで探索する画に、クレジットが先行する。明けて矢張り地下の暗がりにて石川雄也と、ピンク映画的には意表を突く三番手が熱い一戦。歯痒さを感じさせるでなく、意外と的確にピンスポが美園和花の爆乳に当たり、寧ろ文字通り全体的に余つた肉を闇に隠す。事こゝに至る顛末を、石川雄也が語り始める、体裁を取りはする。とこ、ろで。石川雄也がダーリンから名義を元に戻したのも、佐々木浩久ピンク映画第三作「好色男女 セックスの季節」(2019/主演:栄川乃亜)から、廣田正興のどうせヒット・アンド・アウェイ作「魔性尻 おまへが欲しい」(2020/ベビーブーム・マサ名義/今奈良孝行と共同脚本/主演:知花みく)、山内大輔2020年第一作「はめ堕ち淫行 猥褻なきづな」(主演:佐倉絆)を経てかれこれ四本目。
 滞納した家賃の苛烈な催促を、村田吾郎(石川)が煙草を燻らしやり過ごす、やり過ごせてゐるとはいつてゐない。窓の下では、アパートの敷地内に村田が並べたゴミに、大家の桑山妙子(加藤)と店子の山田(古澤)が眉を顰める。村田は働きもせず、拾つて来たゴミを売りつけ日銭を稼がうとした結果、山田以外の住人は皆退去。重ねて村田宅にはDV夫から逃げて来た新山千尋(桜木)が居つき、挙句マッチングアプリで客を取り日々訳の判らない人間が出入りしてゐた。多分自分対策と思しき飛び道具的人物を、妙子が招聘する様子を村田は目撃。終に出て行つた山田の部屋に、品田徹(細川)と細川知絵(美園和花)のカップルが越して来る。
 配役残り、多分当たるビリング推定で馬場誠が、桜木優希音の初戦を介錯する劇中一人目の客。最中、チャチい相対性理論みたいな謎トラック―クレジットも素通りする―がしかも歌詞スーパーつきで起動したかと思ふと、桜木優希音と馬場誠が目線をカメラにビッシビシ送り始め腰遣ひより曲のリズムを尊重するPV風演出は、今は亡き荒木太郎に劣るとも勝らない超絶駄意匠。主演女優の絡みナメてんのか、下位番手でも許さんがといふ以前に死んでもゐねえ。つか復権させてやれよ、圧殺したまゝはあんまりだろ。表に出てゐない出せない、荒木太郎側の粗相でもあるのか。たとへばエクセスから逆襲するためのクラファンなら、十万くらゐであれば出す旨当サイトは公言する、リターンは赤いTシャツがいゝな。素で着られるTシャツのセンスを、荒木太郎に求め得るのか否かは知らん。閑話、休題。菊嶌稔章は千尋が家を空けておくやうメールしたにも関らず、村田がゐたため踵を返す二人目の客、当然千尋激おこ。古川博巳は万札を拾つた村田に、「あんたのか?」と下水道から尋ねかける紳士。消去法で及川玲音は千尋と品田が致してゐた筈なのに、玄関から出て来た男が細川佳央ではなかつた三人目の客。それゆゑ字面だけだと絶妙に不鮮明な、性別はエックスワイ。最後に島崎真人が恐々現金を差し出すと、得物の大ぶりなナイフを柄を向け渡して呉れる強盗の癖にジェントルな目出し帽、あるいはエクストリーム押し売り。
 のうのうと、もとい堂々と。“夏の怪談”なる文言で予告の幕が開ける古澤健ピンク映画第二作は、佐々木浩久の第二作「情欲怪談 呪ひの赤襦袢」(2018/主演:浜崎真緒)に続き外様に撮らせた恒例の大蔵怪談。当サイト調べの通算成績は、「変態怪談 し放題され放題」(2019/脚本・監督・編集:山内大輔/主演:星川凛々花)までで二分けがともに山内大輔の一勝五敗二分け。なかなかの死屍累々を晒す看板シリーズに加へ、2019年は角田恭弥の「淫美談 アノコノシタタリ」(主演:なつめ愛莉)と、塩出太志の「童貞幽霊 あの世の果てでイキまくれ!」(主演:戸田真琴)がお化け映画の渋滞を起こし、年を跨いで2020年も今作のみならず、竹洞哲也の「温泉情話 湯船で揉みがへり」(脚本:小松公典/主演:きみと歩実)なり佐藤周の「若妻ナマ配信 見せたがり」(主演:山岸逢花)が、ただでさへ僅かで少ない総制作数の割に目立ちもする。コロニャン禍にも火に油を注がれたこの期・オブ・この期に及んで、何の弾みか誰の因果か、幽霊譚ばかりが量産されてゐるのは何気なリアル怪異。
 さうは、いふものの。何が途轍もなく凄まじいといつて、ポスターでは常にも増して如何にもなドヤ顔をキメる桜木優希音が、何時この人本当は既に死んでゐました展開に突入するものかと思ひきや、思ひきやー。普通に荷物をまとめた千尋は、生きて回春荘(仮名)を離脱。その他人死にこそあれ一人も化けて出て来はしない、即ち、何処が怪談なのかサッパリ判らないのは当たり前、幽霊も妖怪も怪物も出て来ない、そもそも怪談でない盛大な羊頭狗肉には度肝を抜かれた。先に挙げた通算成績に追加するならば、斯様な、鉄道が敷設されてもゐない痴漢電車の如き代物ノーコンテストである。
 兎も角、もクソもない気も否み難いけれど渾身の強ひてで話を進めると、自らのこのこ出撃して映画を詰んだ、前作にしてピンク筆卸作「たわゝな気持ち 全部やつちやはう」(2019/主演:松本菜奈実)に於けるヒロイン同棲相手のモラハラ野郎同様、自身を万事の中心に都合よく操作した―没―道徳を滔々と捏ね繰り回し続ける、自堕落といふ概念を擬人化したかのやうな村田の感情移入に果てしなく遠い造形は、かういふ不快指数の高い―だけの―男が主人公か主要人物の映画を二本続けられては古澤健の娯楽作家としての資質―本人の自覚が仮にさうでなくとも、ピンクの本義は量産型娯楽映画にさうゐない―を疑ふほかないが、タイは巻いてゐたりゐなかつたりなワイシャツの上にツナギを着た更に上に、恐らくオーバーサイズのジャケットを羽織る。真似しようにも素人にはまづ無理な難易度の高いファッションを、石川雄也が流石の役者力で着こなしカッコいゝダメ人間をギリ成立させてのける。裸映画的には桜木優希音は腹は立たない程度、美園和花は乳の暴力で有無をいはさず些末を捻じ伏せる。オッパイは、ジャスティス。果たして本当に脱ぐのか結構本気でハラハラさせられた加藤ツバキは、確かに濡れ場は刹那的にせよ、妙子の海千山千なキャラクターにも増幅された、ただフレームの中にゐて呉れさへすれば濃厚に漂ふ、エッジの効いた色気は最後に今作を救ふ徳俵防衛線。表面的なテイストは全く異なれど、先に挙げた「温泉情話 湯船で揉みがへり」と大体似たやうな構図で飛び込んで来るのが絶好調のその先で驀進する細川佳央。村田のブルータルなふしだらさに、食傷どころで済まなくなりかける中盤。呼び寄せられた品田が、乾いた暴力で村田をやつゝけ始めるや煮詰まりかけてゐた映画が俄かに躍りだし、退散した村田の部屋に、今度は邪気もなくロケット花火を撃ち込む。ストレートに面白可笑しい、猛毒を以て毒を制する件が再加速、臆面もなく村田が助けを求めた妙子のベランダに、品田が現れ二人は軽く乳繰り合ひ始める。のを、村田家屋内の鏡に映り込ませる凝つた画に、昨今その手の手間を費やす本隊がおいそれとは見当たらないのもあり、貧しいといへば貧しい新鮮さを覚えた。再びさうは、いふてもだな。目撃者を捜す村田が大家の家から盗んだ鍵で、品田と知絵宅に忍び込んだ直後のカットで火蓋を切る、小出しされる真実、真実?矢継ぎ早に繰り出されるもしくは虚実で現実的な着地点を朧気に窺はせながらも、最終的にはオッ広げたかトッ散らかした支離滅裂を逆の意味で見事に畳みもせず、始終は虚空に消滅。根本的な牛頭馬肉の果てに、雪崩れ込んではみたサイコサスペンスも釈然としなさしか残さない壮絶な空中分解を遂げる。遂げた自作に関し古澤健はある意味それが一番恐ろしいほど自信満々で、曰く“映画の無意識が作らしめた傑作”につき、“次の20年も俺はいける!”と確信するに足るらしい。論理的ないし技術的な娯楽映画をピンクに求める当サイトの立ち位置からは、“映画の無意識”だとか高邁な理論、もしくは紙一重の独善を振り回されたところで呆れる気力も雲散し、霧消して屁も出ないがこれで腸を煮え繰り返らせもせず、案外ニュートラルな心持ちで小屋を後にしたのも、実は偽らざる感触である。正負のベクトルが上手いこと原点に収束してしまふ、これで稀有な平衡感覚を有した一作ともいへようか、まあゼロはゼロなんだがな。


コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )




 「薄毛の19才」(昭和61/製作:多分にっかつ撮影所/提供:にっかつ/監督:堀内靖博/脚本:村上修/プロデューサー:千葉好二/撮影:森島章雄/照明:高柳清一/録音:小野寺修/美術:沖山真保/編集:冨田功/作画:前田博子・むたこうじ/助監督:明石知幸/選曲:石井ますみ/色彩計測:佐藤徹/現像:IMAGICA/製作担当者:藤田義則/撮影協力:HOTEL エルアンドエル《柏インター際》/出演:杉原光輪子《新人》・志水季里子・橘雪子・坂西良太・金田明夫・小池雄介・夏樹かずみ・内藤忠司・小原孝士)。
 ジングルベ的な鈴の音が先行して着火音、炎をサングラスに映り込ませ、吸へない煙草を燻らせる少女が少女マンガ調の成年コミック(前田博子画)にペン入れする。結論を先走ると、逆に、むたこうじに描かせた―筈の―原稿は結局劇中で使用されない。手引きの凄まじいベタフラッシュかと思ひきや、男の陰毛だつたのは微笑ましい勘違ひ、自分でいふな。暗転カマして男の上になつた、夏樹かずみのボリューミーなオッパイが飛び込んで来る。エロマンガ家・白鳥雪彦の作画担当・鮫島雪彦(金田)が、恐らく編集辺りの香村(夏樹)を抱く。初陣では覚束なかつた、濡れ場の演出は夏樹かずみの肉感的な肢体をガツガツ能動的に捉へ、二年空いた間の成熟を早速窺はせる。鮫島と香村はヤリがてら、原作担当の白鳥や、白鳥雪彦の下に原稿を送つて来たNetscape、もとい根スケ女の噂に話を咲かせる。当の野本幸美(杉原)は群馬の浪人生で、鮫島と共同生活してゐる模様の白鳥平吉(坂西)はといふと二人の傍ら、のほゝんと寝こける。窓の外から抜いた幸美の影が暗転して翌朝、改めて幸美がカーテンを開けクレジット起動。何がしたいのか屋根に上がつた幸美が、棟に腰を下して監督クレジット、背中越しに広がる田園風景にタイトル・イン。天候にはスカーッと恵まれる反面、杉原光輪子の長い黒髪をざんばらに乱す、風が些か強いのは地味に否み難い玉に瑕。
 女手ひとつで幸美―と姉―を育てた母・房江(橘)が営む雑貨屋「野本商店」に、ノンクレの土木作業員三人を連れ現場監督ぽい、房江の情夫・大山大三(小池)が現れる。屋根の上から聞こえるのか、大山相手に油を売る房江が放たらかす電話に、軽くキレ気味で幸美が出てみるとよもやまさか憧れの白鳥先生からのお招き。幸美はバス停にダッシュ、一路東京に向かふ。ところで「野本商店」、房江の対大山で橘雪子も爆乳を豪快に披露。爆乳といふか、体全体爆体なんですが。
 配役残り志水季里子は、浮気した夫と別れるのは頑なに拒みつつ、実家に戻つて来る幸美の姉・文。小原孝士は文を連れ帰るといふよりも、離婚に首を縦に振らせるため群馬までやつて来た夫・赤江耕作。矢張りノンクレの観客要員が二名投入される、映画館での―今のところ―夫婦生活。劇伴聞くにロマポだらうといふ見当はつくものの、客席から抜く銀幕には黒人が映つてゐたりする上映作品には辿り着けず。まだまだ修行が足らぬと恥ぢるべきなのかも知れないが、こんなもの一々見切れてゐたらカルトQ出られるだろ、懐かしいなオイ。そして内藤忠司が、一仕事終へたと思しき白鳥が一時的に身を寄せる石田先輩、何か何処かのボイラーマン。
 正直木に竹を接ぎ気味の端役ながら、遂に、あるいは漸く。デビュー作ではクレジットに載りこそすれ、何処に出演してゐるのだか本当に皆目全然判らなかつた、内藤忠司の若き姿をフレームの中に確認出来る堀内靖博第二作。眼鏡外すと、案外男前。
 堀内靖博が三本目にして、依然ピンと来ず。そもそも、律に阻まれ、見せること能はざる“薄毛”を標題に戴く無防備か無造作な負け戦に関しては、この際さて措く、この際もどの際もないやうな気しかしないが。とまれ“19才”がいはゆる大人の階段を上る、的な物語であらう節ならば酌めるといふか、現にさういふ如何にもありがちなお話である割に、会話に於けるこそあどを意図的に詰めない掴み処を欠いた、寧ろ進んで削り取つたが如き遣り取りには終始もやもやを強ひられる。アバンの火蓋を切るサングラスが、実は軽く驚かされるほど重要な小道具。東京に忘れて来たのを、白鳥が届けに来て呉れた幸美いはく「これかけないとエッチになれないんです」。即ち、不似合ひなグラサンが、幸美にとつてマンガを描くのに不可欠なアイテムであるといふのは、それは流石に、最初でなくとも何れかのタイミングで明示しておくべきなのではアルカイダ、もといあるまいか。結局初体験は済ませた幸美が、マンガはどうするのか受験はどうするのか白鳥との関係は継続するのか。一件を経て、ヒロインの向かふ先がさつぱり覚束ないのは何気に壮絶な着地点。藤原竜也似の主演女優が、黙つてそこに立つてゐるだけでフレームを堂々と支へ得る逸材であるにも関らず、行間ばかりガッバガバ、外堀からてんで埋まらずにゐて、本丸に攻め込める訳がない最終的には漫然とした一作。尺的にはちやうど序盤と中盤の境目、幸美が泣きだし未遂に終つた連れ込みの浴室から、カットひとつで豪快に時空を超え夜の明けた波打ち際。藪から棒であれ何であれ、そこで二人が突入する青姦が締めの絡みに値する強度を偶さか備へてしまつてゐたのが、構成上激しく惜しいちぐはぐ。ついでで、決して神など宿しはしない些末。幸美が新たに持参した原稿を白鳥に見て貰ふのが、超絶適当なビルの屋上とかいふ横着か無作為が不条理にグルッと一周しかけるシークエンスには、「欽也かよ!」と液晶に向かつてツッコまずにはゐられなかつた。


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )




 「若妻ナマ配信 見せたがり」(2020/制作:ノストロモ/提供:オーピー映画/監督・脚本・編集:佐藤周/撮影:橋本篤志/照明:鈴木馨悟/録音:山口勉/効果・整音:吉方淳二/メイク:坂口佳那恵/衣装:佐藤彩奈/造形:土肥良成/監督助手:川辺崇広・佐々木勝己/撮影助手:市来聖史/照明応援:高津健裕・鴨居玲央奈/メイク助手:川尻麻央/制作進行:木村直樹/スチール:富山龍太郎/仕上げ:東映ラボ・テック/編集協力:酒本悠資・秦敏樹/機材協力:山﨑玲・ミックビジョン・Kurosawa Film Studio/照明機材コーディネーター:藪野裕太郎/協力:小谷不充穂・谷口恒平・松野友貴・上野オークラ劇場・「東京でとつて食べる生活・ドキュメンタリー」/出演:山岸逢花・小梅えな・吉根ゆりあ・宮原尚之・木村直樹・梁瀬泰希・志藤佑輝・馬場眞桜華・古谷蓮・安藤昴・掛石智彦・吉田剛士・柴田一樹・石原絵美子・有希・毘真未・金丸真子・矢野まなみ・柘植美咲・松川千紘・東山康平)。出演者中、宮原尚之から松川千紘までは本篇クレジットのみ。
 ノストロモロゴ時から弾む女の息遣ひは開巻即の初戦、ではなくジョギング。走者視点が一回来た道を引き返し、再度振り返るとカメラを構へた男が不意に現れる。のは、動画サイト「WVideo」にて夫婦で「たちばなチャンネル」を配信する、橘圭介(東山)と妻・綾子(山岸)の撮影風景。何が面白いのかサッパリ判らない動画の撮影を圭介が続ける傍ら、御々足の汗を拭いてゐて、自らに近づかうとする何某かの気配に身を固くした綾子が、聞こえて来た「ごめんなさい」といふ女の声に戦慄して暗転タイトル・イン。アルファベット三文字でいふところのPOV“point of view shot”、カメラの視線と登場人物各々の視線が一致する一人称視点で全篇貫かれる。
 タイトル明けが騎乗位の要はハメ撮りといふのは、弁へた清々しさ。夫婦生活の最中にも、綾子は正体不明のけわいに戦く。時制は意図的に前後、料理動画の虚飾に溢れた撮影風景経て、圭介は十万人の登録者数を誇る「たちばなチャンネル」で売つた名前も営業職に利す、「WVideo」活動を公認する職場に出社。威圧的な爆乳を聳えさせる総務担当の内田優子(小梅)と、ラブホテルでの逢瀬を圭介が楽しんだ事後。その日無断欠勤した経理の早川沙織が、事故死してゐたとの急報が部長(後述)から入る。
 在りし日の沙織(吉根)はサトルと性別から偽り、口元をマスクで隠すエイコとのチャット―サトル側から送られるのは文字情報のみ―に、勤務中も周囲の目を盗みのめり込んでゐた。誰もアタシを見て呉れない、愛して呉れない。自身にも似たありふれた寂寥を拗らせるエイコに、沙織は侘しい汚部屋で入れ揚げる。ある日、沙織が一人でコーヒーを飲んでゐるパスタ店を、綾子と圭介が動画の撮影で訪れる。既に圭介に喰はれてゐた沙織は、綾子の指にエイコがしてゐたものと同じ柄物の絆創膏を発見。逆上し圭介に掴みかゝつた沙織が、飛び出した往来。昭和の時代から数十年一日で進歩しない無調法な繋ぎで、呆然自失と車道によろめいた沙織は車に撥ねられ絶命する。新しい手法で積年の課題をどうにか克服出来ないものかといふ以前に、轢かれた直後の沙織視点、車が後方から通り過ぎて行くのは位置関係が些かおかしかない?配役残り、何処にそんな見切れてゐたのか名前数の多い気も否めない、本クレのみ勢は部長の宮原尚之以下社内と、パスタ店要員、圭介と会話も交すエレベーター女がどうしても特定出来ず。あと、繰り出す零距離戦闘術が多分世界最速のアクションスター・坂口拓(a.k.a.TAK∴)も所属する、芸能事務所「ワーサル」の人間が多いのは佐藤周と何らかの関りがあるのかしら。
 三回目となる「OP PICTURES 新人監督発掘プロジェクト 2019」で優秀賞受賞、ホラー畑を主戦場とする佐藤周の恐らく、もしくはどうせ最初で最後の賑やかし作。
 POV案件に関しては場数を然程ですらなく踏んでゐないのもあり、優劣を論じる能力を当サイトは有しない。乳舐めは兎も角、尺八なりハモニカを何故吹かせんかといふ根源的な疑問ないし不満、より直截には原初的なジャスティスに基づく義憤さへさて措けば、女視点による自分のオッパイは、なかなか新鮮な破壊力。さうはいへそもそも大きなロングをさうさう抜けもしない以上、カットを適宜割れる程度で、「天使のはらわた 赤い淫画」(昭和56//監督:池田敏春/原作・脚本:石井隆/主演:泉じゅん・阿部雅彦)を彷彿させる鮮烈なラスト・ショットを除けば、特筆するほど見応への煌めく画は別段見当たらない。終に沙織の霊が本格起動しての橘家浴室と、逃げ込んだ圭介が優子を呼び出したラブホの、矢張りバスルーム。沙織が手を伸ばす綾子に、当然裕子と圭介。うつてつけに並走するシークエンスをあつらへておきながら、本来であれば激しく応酬して然るべき筈の、クロスカッティングが手数も尺自体も攻めが甚だ甘いのは大いに惜しい。何より、終に心通はせた綾子と沙織が絢爛と狂ひ咲かせる、極大輪の百合の花。たとへば我等がナベならば全力のその先で轟然と突つ込んで行つたにさうゐない、一撃必殺も必殺、大必殺にして格好の大魚を事もなげに釣り逃がしての、締めの濡れ場の欠如が裸映画的には筆舌に尽くし難く勿体ない。さうは、いへ。全員映画初陣のエクセスライクな三本柱に、僅かな綻びにも観てゐて躓かない少なくとも最低限十全なお芝居をさせた上で、綺麗に且つ十二分にどエロく撮る。東山康平も、終始尊大にドヤる圭介の綾子に対する傲岸不遜としたモラハラぶりは、往年の松原正隆にも匹敵する劇中この男が死なずには気の済まない大概な憎々しさ、目出度く死んだけど。佐藤周の着実な演出力の高さは、案外不安定な外様部の中群を抜いてゐる。それ、だけに。その後現在に至る状況を眺めるに、ヒット・アンド・アウェイで佐藤周が終りさうな空気が改めて重ね重ね惜しい。腕を見込んでの、覚悟を極めたピンクを言葉巧みにでも何でも兎に角連れて来た人間に撮らせられる、辣腕が大蔵にはゐないのであらうか。


コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )




 「主婦と性生活」(昭和59/製作・配給:株式会社にっかつ/監督:堀内靖博《第一回監督作品》/脚本:一色伸幸・村上修/プロデューサー:桜井潤一/企画:栗原いそみ/撮影:水野尾信正/照明:内田勝成/録音:小野寺修/美術:金田克美/編集:冨田功/助監督:村上修/選曲:杉山篤/色彩計測:福沢正典/現像:東映化学/製作担当:三浦増博/出演:泉じゅん・水木薫・山路和弘・中丸新将・伊藤公子・大滝かつ美《新人》・花上晃・阿部雅彦・内藤忠司・高瀬将嗣)。出演者中、内藤忠司は本篇クレジットのみ。わざわざ、本篇にのみクレジットしたのに。
 チャックを閉めて貰ふ背中から、泉じゅんが花嫁衣装の身支度。亡姉の婚約者であつた男との結婚に戸惑ひも隠せない、旧姓木下裕子(泉)を友人・幸子(伊東)の声が励ます。「ピッカピカの花嫁になつていゝの」、は軽やかなポジティブ弾ける名台詞。覚悟を極めた裕子がコクンと頷く、ところでは入れずに、裕子と新郎・高野博(山路)がライスシャワーで送り出されての白転タイトル・イン。若干名背景を賑はす参列者の中に、内藤忠司は紛れ込まない。
 仕事ぶりの描写を窺ふに、恐らく建築士辺りと思しき高野が兼仕事場の自宅を構へたのが、都から十万億彼方の埼玉は川越。東武鉄道川越市駅から、歩いてみると更に随分あつた帰途がタイトルバック。トリマーの職を持つ裕子は木金土の三日間、元々東京で開いてゐた「犬の美容室 YOU子の部屋」に通勤、屋号に関しては勘弁してやれ。週三日の営業で、お家賃払へるのといふ素朴な疑問もさて措き、何のプレゼントなのかは通り過ぎる、バークレーのセーターを夫に買つた裕子が東京から帰宅すると、当の高野は酔ひ潰れ轟沈。遊びに来てゐた、高野と亡姉・優美の同級生・田辺文枝(水木)は如何にも事後ぽい風情を窺はせつつ、優美の名を呼びながら、高野が自らを抱いてゐた旨裕子に吹く。
 配役残り、高瀬将嗣は「YOU子の部屋」常連のオカマ、飼ひ犬はステレオタイプな愛玩犬。中丸新将は幸子が裕子を連れて行く、レストラン(屋号不明)の三代目店主・小野寺忠夫、ゾイド好き。レストランにもその後三人で遊びに行くディスコにも、内藤忠司の姿はない。花上晃は文枝の不倫相手、唯一の名無し配役。ナベが心底惚れ込んだ所以が当サイトの節穴には未だ理解に遠い、野暮つたくしかない大滝かつ美は別れたての小野寺前妻・サキ。但しこの辺りが絶妙に不鮮明、既に過去形と思はせる小野寺と幸子なり裕子との遣り取りに対し、小野寺が致してゐるサキ宅に現れるマコト(阿部)の口ぶりによれば、必ずしも離婚は成立してゐない模様。その他在りし日のスナップに加へ、同窓会名簿の物故を記した頁まで博が焼却する件、瞬間的に見切れる優美役は流石に識別能はず。
 小川真実デビュー作でもある第三作「看護女子寮 凌された天使」(昭和62/脚本:加藤正人/主演:瀬川智美)が地元駅前に来た流れで、残り四作全てex.DMMで見られるのを潰して行くか、としたところ。俳優部初仕事の推定ないし可能性が早速潰え、かけたものの、何処に内藤忠司が出てゐたのだかてんで判らない堀内靖博第一回監督作品、日活入社は多分昭和51年。公園のブランコに一人揺られる裕子が見やる、離れたベンチに矢張り一人佇む初老?の男。とかいふ、何がしたかつたのか全く不明な謎のカットがあるにはあれ、背格好が内藤忠司とは異なる、筈。
 折角優美が死んだかと思ひきや、好きな高野君を今度は妹の裕子にカッ浚はれる。執拗に横恋慕を拗らせる文枝の讒言に、振り回される新婚夫婦。捏ね繰り回し続けるアンニュイは泉じゅんの硬質な美貌で最低限形になりはする程度で、最終的には表面的。案外シンプルな物語は終ぞ1mmたりとて悪びれない文枝の清々しさ以外、どうかういふほどのドラマチックにも欠く。火蓋のキスまでで七分と、結構のんびりした初戦の夫婦生活に際してなほ、オッパイを影に沈めてみたりと「凌された天使」では力強く花開いた、裸映画的な馬力は甚だ未成熟。二番手の本格的濡れ場を、木に接ぐ竹も厭はず飛び込んで来ては、一幕限りで潔く駆け抜けて行く。即ち男優部に於ける絡み要員(花上晃)に介錯させる、新人離れした奇襲戦法には軽く吃驚したけれど。出奔した家に裕子が戻つて来たかに見せ、カメラが引くと往来から窓ガラスに映り込ませてゐた!演出上の企図は特段見当たらない、穿つた画作りを唸らせる反面、歩道橋にて黄昏る裕子に、三回反復して寄つてのロングは教科書的な微笑ましさ。日比谷野音に土砂降りを降らせる、特機を何台並べたんだといふ御祝儀的な豪勢さは兎も角、敢てしなかつたか要は直截に叶はなかつたのか、二人ぼつちのマジカル・ラバーズ・コンサートを画として提示出来てゐれば起死回生の一撃たり得たのかも知れない、ある意味含みを残す一作ではある。
 邪気のないミソジニー以前にロマポを見るか観てゐてしばしば躓くのが、兎にも角にも八十年代の迸るダサさが当サイトには暴力的にしんどい。水木薫を台無しにする、壮絶なパーマ頭には悶絶した、ナンシー・アレンかよ。

 付記< 第三作で初めて堀内靖博に触れた際、この人がサラブレッドにしては買取系を撮つてゐる点に関し、間抜けな疑問を呈してゐた、ところが。ロマポ末期の日活では、折角叩き上げた生え抜きが、いざデビューするや社外に放逐されてゐたとのこと。凄まじく周知のやうな気もして羞恥を禁じ得ない


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )