真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「宇能鴻一郎原作 むれむれ夫人」(昭和53/製作:?/提供なり配給:?/監督:向井寛/脚本:田中陽造・山本晋也/企画:向江寛城/撮影:鈴木史郎/照明:斉藤正治/美術:田金一/編集:田中修/音楽:芥川隆/助監督:小椋正彦/監督助手:中山潔・一ノ倉二郎/撮影助手:林兆・小松原茂/照明助手:斉藤健一・井上和夫/記録:浅木志乃/効果:小島進/スチール:津田鉄夫/美容:内海響子/メーキャップ:瀨木みどり/製作主任:佐野日出夫/録音:東映撮影所/現像:東映化学/主題歌:唄・嵯峨美子 ピアノ・美野春樹/協力:銀座山岡毛皮店、新宿ハッピー・コーナー、オールアーツ、目黒エンペラー、ニュー・愛/出演:飛鳥裕子《ミス着物》・サロメ角田・桜マミ・茜ゆう子・牧伸二・大泉滉・笑福亭鶴光・ジャイアント吉田・松浦康・立川陳・石太郎・泉キヨシ・仲村和男・プリティ光・多多笑笑・川口朱里・北乃魔子・砂塚英夫・小松方正)。出演者中、立川陳から多多笑笑までと、飛鳥裕子のミス着物特記は本篇クレジットのみ。企画の向江寛城は、向井寛の変名。タイトルにも入るウノコー原作はポスターには謳はれる反面、本篇クレジットでは通り過ぎられる。
 本来の執事、ではなく。齢の凄く離れた社長夫人の元々召使であつたものが、そのまゝオプションで屋敷に入つた今泉(大泉)に、役名不詳の会社社長(小松)は昨晩の夫婦生活の絶倫ぶりを、清々しいほどのガッハッハ調で誇りつつ当然ハイヤーで出社する。改めてググッてみると、大泉滉が十九年、小松方正は十四年前―二人は大正末年生まれの小松方正が一つ下―に亡くなつてゐたんだ。さて措き、すると―性豪自慢は―嘘なんですと、仮名小松の夫人・アケミ(飛鳥)が開巻速攻、かつ実も蓋もなくウノコー節を爆裂させほくそ笑んでタイトル・イン。ところで全篇を通して受ける雑感としては、取つてつけた気味に“ミス着物”の称号を纏ひながら、劇中のむれむれ夫人は和装よりも寧ろ、銀座山岡から提供された今時ではあんま見ない豪奢な毛皮の印象の方が強い。
 アルバイトの学生が休みゆゑ、今泉の制止も聞かず愛犬・ラッシーの散歩に出たアケミは、社長に書類を届けるだ何だと屋敷に日参する、仮称小松製作所平社員の佐藤(牧)と交錯する。佐藤が落として行つた舶来もののエロ写真に、衝撃を受けたアケミが仮名小松邸に帰還してみると、あらうことかメイドのカズエ(茜)と佐藤は密通してゐた。フル勃起時で3cmの夫のモノ―ついでに持続時間は平均一分二十秒。短くて小さくて早過ぎるだろ、社長―しか知らなかつたアケミは、エロ写真に続き佐藤の精々人並な大きさに改めて衝撃を受け、男根探訪を思ひたつ。
 例によつて巨大な謎を孕む配役残り、砂塚秀夫の前名義といふ扱ひらしい砂塚英夫は、伝説のホストクラブ「ニュー・愛」に赴いたアケミの、巨根オーダーに従ひ宛がはれる西田。サロメ角田とパッと見裕也似のジャイアント吉田が、アケミを見初め一緒に遊ぶよう持ちかける「ゴールデン金融」の女社長・遠藤みちよと、みちよに買はれたホスト・古田、四人で目黒エンペラーに入る。大人二人入れるベビーベッド風の昇降機が、最終的には泡風呂の浴槽にパイルダー・オンするギミックには度肝を抜かれた、これぞ大人の遊園地だ。ex.岡田洋介の石太郎は、アケミを喰ふだか喰はれるだかするゴルフ練習場のレッスンプロ。笑福亭鶴光は、再び今泉の制止を振り切り満員電車に乗つたアケミに、文字通り接触する痴漢師。後に仮名小松が夫人を同伴させる、新工場予定地視察の際の、「東京エアーラインズ」ヘリコプター操縦士といふ形での超絶藪蛇な再登場を果たす。ミイラ状態で入院中、素性を隠したアケミに五十六にして筆卸された今泉が、院内で拉致る大騒動を繰り広げる看護婦は、茜ゆう子よりも高いのは解せないがビリング推定で桜マミか。となると、台詞もそこそこある「ニュー・愛」のウェイター始め、そこかしこで意識的に抜かれる頭数がなくもない、石太郎を除く本篇クレジットのみ部隊に手も足も出ないのは百歩譲つて仕方もないにせよ、男優部中、裸映画畑から唯一出撃し気を吐いて、ゐる筈の松浦康と、相ッ変らず川口朱里に北乃魔子が何処に出てゐたのかどうにも判らん。少なくとももう一度は観に行くが、本当に上映プリントに映つてゐるのか?
 エクセス提供東映ナウポルノ第六弾は、jmdbからも漏れてゐる謎の一作。といふか、異常に豪華な男優部の面子を見るに、厳密には東映ナウポルノではなく、東映本体製作のニューポルノなのかも知れない。笑福亭鶴光が自機に乗せてゐるのが電車で痴漢した令夫人であるのを知り、俄かに揺れ始めたヘリからまづ小松方正が配偶者も残して退散。再び飛び始めたヘリでの機内プレイを経てむれむれ夫人と鶴光は機外に投げ出され、たにしては怪我ひとつせず。無人で飛び去るJA7438を、「待つとくれーッ」と鶴光が間抜けに追ひ駆けるのが、どうでもいいクライマックス。といふと男性遍歴と称した要は濡れ場をつらつら連ねるに終始する、やつゝけた裸映画となりかねないところが、推定桜マミの出演直前、肛門科医(立川陳?)に華麗な人違ひで菊穴性交を仕込まれたむれむれ夫人が、超短小の亭主との夫婦生活に活路を見出す展開は、破綻する以前に満足に成立すらしかねなかつた物語を紙一重で救ふ。ヒロインの独白調の文体と、アヴァンギャルドな句読点の打ち方で知られるウノコーに関しても、過去に一度手に取つてみはしたものの、兎にも角にも文章が―たとへば煙草と同じ感覚で―合はず一行読めずに断念してゐたものだが、映画のモノローグとしては、全く何の痛痒もなく機能する。

 以下は再見に際しての付記< 松浦康と川口朱里と北乃魔子が、矢張りどうしても見つけられず


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 「内科室」(1992/製作・配給:大蔵映画/監督・脚本:小林悟/撮影:柳田友貴/照明:小野寺透/編集:フィルム・クラフト/助監督:青柳一夫・杜松蓉子/スチール:佐藤初太郎/録音:銀座サウンド/現像:東映化学/フィルム:AGFA/出演:松岡利江子・深田みき・白都翔一・朝田淳史・坂入正三・石神一・冴木直)。
 鳥が適当に鳴いてゐたりする湖畔のロング、カメラがグーッと寄るとヒロインが歩いてゐる、ダサいグラサンを外すとそこそこ美人。自死を期し当地を訪れた宇田川静(松岡)が、ああだかうだ自問自答した上で、凡そ“大先生”柳田友貴らしからぬ桜咲く川辺の超絶美麗なショットに、これまた大御大以前にピンクらしからぬ抑制的な公開題が静かに叩き込まれるタイトル・イン。「あの時あんなことしてなければ」、「あんな事故起きなかつたかも知れません」。元々腹痛持ちの静が、一切登場しない父親に紹介されたのが出会ひの内科医の婚約者・太田(朝田)を喪つた一ヶ月前の交通事故の回想。ドライブ中に軽く乳繰り合つてゐたところ、正面からハイエースに突つ込まれ、太田だけが死亡してゐた。「アンタが太田先生を殺したのよ」とどストレートに飛び込んで来る、宇田川が女中に産ませた静の異母妹・レイコ(冴木)の顔見せと、姉の男を寝取る気全開の据膳に対し、やめなさいとかいひつつ尻を撫でる導入がケッサクな冴木直と朝田淳史の絡み―ここまで三段構への大回想―を経て、結局松本城の赤橋で腹が痛くて昏倒した静は、別に救急指定病院にも見えない町医者の宮沢内科に担ぎ込まれる。
 配役残り白都翔一が、宮沢内科の宮沢先生。深田みきは、医院兼住居の風呂に宮沢が浸かつてゐると、入つてきたりする関係性のよく判らない看護婦・堀井。完遂後、浴槽に載せる爆乳のアンニュイな破壊力が凄まじい。宮沢に紹介された宿「千代之湯」から、静は性懲りもなく死地を求め未だ雪残る山に入る。坂入正三と石神一は、見るからスーサイドしさうな女を一旦は本当に助けようとしておきながら、頑なに死なうとする静の態度に臍を曲げるや、「ようし、そんなに死にたいんなら俺達が死なせてやるよ」と犯し始める二人組の登山者。冴木直V.S.朝田淳史戦に引き続き―別にこの二戦に限らないやうな根本的な疑問も残れど―入りこそへべれけとはいへ、雪の中で主演女優を裸に剝く濡れ場はそれなりのエクストリーム。
 正直DMMに残り弾も少なくなつて来た、小林悟1992年第九作、ピンク限定だと第八作。とか、思つてゐたら。月額動画には準新作と薔薇族ばかり新着させておいて、バラ売りの方には案外新たに―旧作が―入つてるのな。おいおいおいおい、市村譲まであんぢやねえか。クソッタレ、足元見やがつて。
 だなどとせんない悪口はさて措き、まるで一般映画みたいなタイトル・インに、もしもまさか万が一、遂に小林悟が四五本は撮つてゐても罰は当たるまい、百本に一本の一作に巡り会へたのかとときめきかけたのは、例によつて当サイト最大級の早とちり。元々は太田との思ひ出の地である筈の信州にて、静がケロッと宮沢と暮らす腹を固めるラストも、続篇が予定されてゐた訳でもなからうに、二人の前に現れたレイコが宮沢の略奪も誓ふ藪蛇な蛇足も、安定こそすれ信頼には値しない貫禄の大御大仕事。そんな中でも見所は、そもそも父親も内科医で、内科室にゐると安心するだとかいふ静の特殊性癖。腹部に自覚症状があるゆゑの大腸ファイバー検査と、後にサカショーと石神一にレイプされたゆゑの膣洗浄を、静が何故か全裸で受診する二幕は、松岡利江子の表情の硬さがものの弾みでソリッド方向に上手いこと転がり、素頓狂なシークエンスにも関らず妙にエロい。


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 「人妻漂流 静寂のあへぎ」(2016/制作:VOID FILMS/提供:オーピー映画/脚本・監督:山内大輔/撮影監督:田宮健彦/録音:大塚学/特殊メイク・造形:土肥良成/整音・効果:AKASAKA音効/助監督:江尻大/監督助手:増田秀郎/撮影助手:高嶋正人/スチール:本田あきら/協力:はきだめ造形・《株》TRIDOM・鈴木裕司/仕上げ:東映ラボ・テック《株》/出演:朝倉ことみ・岡田智宏・真木今日子・初芽里奈・ほたる・森羅万像・太三・マサトキムラ・小池琢也・和田光沙《友情出演》)。ポスターには記載されるものの、山内大輔の編集と音楽のProject T&Kが本篇クレジットには見当たらず。
 鮮血散るVOID FILMSロゴのなほ前ど頭中のど頭に、公開用として一部描写を削除・修正した旨の断りが入る。“公開用”なる文言の意味が判らない、OPP+にせよ劇場公開することには変りがない―寧ろレイティングを下げるゆゑ、スラッシャーに関してもハードルがより高くなるのでは?―以上、配信なり皿を焼く予定でもあるのかしらん。
 正直走り姿があまり宜しくはない朝倉ことみが和田光沙の制止を振り切ると、軽トラに愛娘が粉微塵に轢き殺されてゐた。吉川元樹(背中の主不明)と離婚届を完成させたユリ子(朝倉)が泣いてゐるとタイトル入つて、踏切音が鳴り始める。ほぼさそり的な黒尽くめの扮装に、形見の赤いランドセルを背負つたユリ子が降り立つたのは、ひたちなか海浜鉄道湊線の阿字ヶ浦駅。個人経営の弁当店「お弁当のよしむら」―実在する―のパート募集の貼紙に目を留めたユリ子は、一旦弁当を買つたのち、よしむらで働き始める。よしむらには、国沢実みたいな造形の岡田智宏が多分毎日、シャケ弁をふたつ買ひに来る。よしむらの大将だから恐らく吉村(森羅)の妻・和子(ほたる)は重度のアルコール依存症で、勉強は結構出来るぽい娘の杏子(初芽)は、家族関係に完全に匙を投げてゐた。街角には、武装組織「亜細亜の夜明け」メンバーの、山本宜弘(岡田)の指名手配書が貼られてあつた。ところでいはずと知れたex.葉月螢のほたるは、顔見せ程度の荒木太郎2016年第二作「溺れるふたり ふやけるほど愛して」(主演:神納花/ex.管野しずか)挿んで、加藤義一2014年第一作「制服日記 あどけない腰使ひ」(脚本:鎌田一利/主演:桜ここみ)以来の戦線本格復帰。何気に、濡れ場ありの女優部が四人の豪華態勢。
 配役残り小池琢也は、和子と関係も持つ、杏子の家庭教師・淳也。杏子がパンティ越しに秘裂をシャープペンシルでグリグリする自慰を家庭教師に見せつけるシークエンスが、後述する抑制的なスタイルにも加速され画期的にクッソエロい。山本の根城は、空き地に停めた“オンナ”の札の提げられたトラック。髪をアップにするとガイコツ感が露呈されてもしまふ真木今日子は、荷台で客を取るマキ。ピンク映画的にいふと、要は山内大輔版キャラバン野郎といふ寸法かと思ひかけたが、別に山本とマキがショーを見せる訳ではないか。太三はユリ子と山本と杏子の三人で入る、料理が旨いらしい―実際に旨さうに食つてゐるやうに見える―ドライブインの店主。マサトキムラは水戸ラドン温泉の表に移動し、ユリ子が客を取る“オンナ”トラックの客。地味に問題が、杏子の破瓜を散らす、強ひて誰といふならば久保和明かサバイバル飛田似のオッサンが判らない、鈴木裕司?
 山内大輔2016年第三作は、喘ぎ声や呻き声、その他嘔吐や嗚咽等―あと鼾―も普通に発せられる反面、太三の一言を除けば一切の台詞を廃した話題作。物音も普通に入るが、ドライブイン店内有線の、山内大輔前作「淫暴の夜 繰り返す正夢」に於ける里見瑤子の店でも流れてゐたトラック以外には一切の劇伴も使用されない。となると山内大輔の編集は兎も角、Project T&Kの音楽クレジットがないのはむべなるかな。無言劇といふ体裁を採用した必然性自体と、唯一の台詞の意義を問ふ向きもあるやうだが、前者については目新しい―耳かも―趣向といふ程度で別に十分で、後者は流石にあれは言葉にしないと伝はらまい。
 丹念な作りと、要所要所をほたると森羅万像が固める超重量級の俳優部―上手く切り取られたソリッドが、ただでさへ複雑なお年頃にジャスト・フィットする初芽里奈も初陣にして捨て難い―に支へられ、台詞に頼らずとも、始終の理解に躓くことはない。ユリ子が吉村に御霊前を手渡す件を一旦のピークに、超絶のロケーションが火を噴き倒すクソみたいな町でのクソ以下の日常を描いた物語は、グルッと一周した閉塞感が極大のエモーションに突き抜ける、予感を確かに感じさせた。何も変らず、誰も救はれない絶望的なロードムービーの果てで、ヒロインの心が世界を包む奇跡が起こる、私選2010年代依然最高傑作「あぶない美乳 悩殺ヒッチハイク」(2011/監督:森山茂雄/脚本:佐野和宏/主演:みづなれい)。森山茂雄を下した山内大輔がピンクの新たな歴史を刻む、目もなくはなかつたかに思へた。それ、だけに。無言劇であらうとなからうと、一言きりの台詞に意味があらうとなからうと、結局は何時もの手癖―ミイラパパなんて「スナック桃子 同衾の宿」(2013/主演:山吹瞳)まんまだ―に逃げたきらひは否めない終盤から結末に至る展開―と牧歌的な拳銃信仰―には少なからず落胆した。山内大輔を観るのが初めての人間であつたならば、累々死体の山を築いた末の、毒々しい極彩色のハッピー・エンドを激賞してゐたかも知れないけれど。

 削除か修正された描写―の少なくともひとつ―とは、元々薄暗い画面の明度が―どう見ても人為的に―更に下がる、二人組(相方は太三?)が父娘の亡骸を遺棄するカットか。
 ラストの備忘録< 最初は吉村ミイラがみつけた卵から生まれた緑ちやんをユリ子が抱いて、山本と二人トラックで何処か行く


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 「極楽昇天風呂 ‐カキ回して!‐」(2000/製作:サカエ企画/提供:Xces Film/監督:新田栄/脚本:夏季忍/企画:稲山悌二《エクセスフィルム》/撮影:千葉幸男/照明:高原賢一/編集:酒井正次/助監督:加藤義一/スチール:佐藤初太郎/音楽:レインボー・サウンド/監督助手:北村隆/撮影助手:池宮直弘/照明助手:大橋陽一郎/効果:中村半次郎/録音:シネキャビン/現像:東映化学/出演:麻木涼子・林由美香・佐々木基子・なかみつせいじ・熊谷孝文・久須美欽一)。脚本の夏季忍は、久須美欽一の変名。
 灯籠からカメラが適当に引くと、主演女優が浸かる露天風呂でサクッとタイトル・イン。クレジットが俳優部に差しかゝるところで女の裸に寄り、「さうだ」と始めたいい加減な腕立て伏せに、監督クレジット。ある意味順調に走る、メリハリのメリのみで構成された開巻が堪らない。
 本篇に突入しても依然、めりめり音を立てんばかりにメリ続ける。リチャード・クレイダーマン風の適当な劇伴鳴る中、温泉企画の取材で老神温泉を訪れた雑誌編集者の山瀬薫(麻木)がてれてれ写真を撮り撮りほつゝき歩く様子に、漫然と尺を費やす。全体何を狙つてゐるのだか甚だぼんやりしたロングから、わざわざ老神温泉の立て看をアップで抜いてみせる意味が判らない、別に見切れる程度でええぢやろ。薫が逆ナン的に声をかけた金城(なかみつ)は、大手旅行代理店の台湾支店長まで上り詰めたもののリストラされ、挙句女房にも逃げられてゐた。商用で来たにも関らず、宿を取つてゐなかつた薫は、金城に連れられ懇意の老神観光ホテル「観山荘」に。女将の郁代(佐々木)は金城を見るやすは商機と色めきたち、ついでに薫が入つてゐた露天風呂に遅れて現れた金城は、豪快なイマジンを膨らませる。郁代も交へ三人で痛飲したその夜、郁代がガンッガン膳を据ゑる金城の部屋に、頭痛薬でも求め訪ねた薫がアテられ自慰に耽つてゐると、何時の間にか薫の傍らには支配人の細井(久須美)が。「いいはこの際」と、薫は細井を喰ふ。抜いた底の数々でドミノ倒しを戯れるが如く、一昨日から明後日へと流れる展開は新田栄映画の真骨頂。褒めてゐるのか貶してゐるのだか我ながらよく判らないが、好き嫌ひならばさして迷ひもせずに好きだといはう。血迷ふたか?さうかもな。
 編集長の田辺に電話一本で企画をキャンセル(電話越しの声は少し声色を変へた久須りん)され、梯子を外されたか凧の糸の切れた薫は、二度目の「さうだ」でズンドコ仲居デビュー。何が「さうだ」なのか、細かいことは気にしないで。配役残り、薫の温泉卵を股の下で被弾する助平客は、中盤と終盤の順に新田栄と加藤義一。二幕共用される、連れの若い男は不明。林由美香が金城の逃げた女房かと思ひきや、観山荘で細井と再会する、細井東京時代の愛人・ユミ。この期にだが今は何処でどうされてゐるのか熊谷孝文は、ユミの人の好い婚約者・北野小路彦摩呂。
 都会暮らしに疲れたかどうかした女が、温泉宿にて仲居かコンパニオンに転身、破廉恥サービスで好評を博す。新田栄―と弟子の加藤義一―が果たして同じ話の中身の映画を全部で何本撮つたのか、わざわざ改めて数へてみる気にも別にならない2000年第五作。何時か凄く時間にゆとりがあつて、機嫌もいい日にでも恵まれれば。
 いい湯加減の幸福感が案外満更でもない、新田栄の温泉映画に対しては常々もう少し評価されても罰は当たらないのではあるまいかとも思ひつつ、今作の出来は決して芳しくない。そもそも幾ら派手に、あるいはそんざいにとはいへ、精々一回掌を返された程度の薫は何も完全にドロップアウトした訳ではなく、金城に関しては何気に心配な去就も姿を消した嫁も見事に等閑視。再会後は細井とヨリを戻す気満々のユミが、薫が仕掛けた小芝居にコロッと再び北野小路に乗り換へるのも粗雑に過ぎる。あれもこれもスッ飛ばしたスットコドッコイな裸映画ではあれど、ビリング頭が華麗にエクセスライクを回避した女優部は十二分に盤石で、首の皮一枚繋がる。


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 「巨乳vs巨根 ~倒錯した塔愛~」(2016/制作:旦々舎/提供:オーピー映画/脚本・監督:山﨑邦紀/撮影:小山田勝治/撮影助手:宮原かおり/照明:ガッツ/録音:山口勉/助監督:小関裕次郎/応援:武子政信/編集:有馬潜/音楽:中空龍/整音・音響効果:若林大記/録音スタジオ:シンクワイヤ/仕上げ:東映ラボ・テック/ポスター撮影:MAYA/出演:東凛・牧瀬茜・山口真里・津田篤・平川直大・荒木太郎)。照明のガッツは、守利賢一の変名。
 東京タワーの鉄骨越しの遠景と、歩道橋を上るタイトスカートの女の尻。尻の主である主演女優から東京タワーを遠くに望んだ上で、一方、マネキンに大人が漸く抱へられる大きさの風船、前輪の巨大な自転車が配された不思議な空間。二番手が、車輪にグリグリ観音様を押し当てる。背後―といふかより直截には尻後―に荒木太郎がベッタリ尾けて来てゐるのにも気づかず、東凛は恍惚とといふか、あるいはあらうことか東京タワーとのセックスを妄想。我に帰り、様子を案じた荒木太郎に声をかけられた東凛は、出し抜けかつ真綿色したシクラメンよりも清しい明朗さで東京タワーと結婚すると宣言。「ワタシの彼氏身長333メートル、1958年生まれ☆」とキラッキラに弾ける東凛が東京タワーを森高千里ばりに指さすと、走り始めるギターリフを追ふカメラが東京タワーを下から上に空まで舐めてタイトル・イン。らしからぬほど溌剌とした開巻に於いて既に顕著な今作の特徴として、劇伴が、耳慣れぬものばかり使用してゐる。
 タイトル明けは先刻の謎部屋、車輪をこよなく愛する車輪女(牧瀬)に、サドルになりたいサドル男(津田)がいはゆる顔面騎乗を求める。片や幼少期より尖つたもの、空に聳えるものに心奪はれる鉄塔女(東)―スカイツリーは、武骨でなくセクシーさが足りないとお気に召さぬらしい―と、階段を上る女の人のお尻を見上げる瞬間が最高で、自ら階段に取り憑かれた男と称する階段男(荒木)が自己紹介。後述する山口真里とナオヒーローの濡れ場を経て、階段男は車輪女とサドル男が待つ、物体に対する愛を共有する同士が集ふ―田中―スタジオに、鉄塔女を招く。
 配役残り、改めて調べてみると意外にも、山﨑邦紀2013年第一作「淫行フェチ 変態うねり尻」(主演:美月)以来旦々舎参戦は僅か二度目の山口真里と、ピンク映画フィルム最終作「女子大生レズ 暴姦の罠」(2014/監督:小川欽也/脚本:水谷一二三=小川欽也/主演:きみの歩美)で復活後快進撃を続ける平川直大は、ガンッガン性交してガッツガツ肉を喰ふ、その名もマダム肉欲とミスター珍棒。最早一種の貫禄をも漂はせかねない、ヤマザキ節がスパークする。二人は女陰と陽根の結合を根本と看做す「新 陰陽道」を唱へ、マダム肉欲とは旧知でもある階段男らの物体愛に、矯正して呉れると上から目線の対抗心を燃やす。
 のちに正月薔薇族が控へる、山﨑邦紀2016年第二作。三作前の肛門探偵で華麗なる戦線復帰を遂げて以降、以前にも増して種々雑多、突拍子もないモチーフを飛び道具に嬉々と孤高―といふと、高くはないと卑下なさるかも知れないが―の地平を快走する山﨑邦紀が、今回この期に及んでのキャリアハイを叩き出さんばかりの勢ひで絶好調。「新 陰陽道」から売られた喧嘩を鉄塔女が華麗に買ひ、激闘の末ミスター珍棒を撃破する終盤の本筋も普通に見所あるが、今作の白眉は中盤を支配する、車輪女いはく自身等の物体愛が人間同士のセックスに結びつくのか否かを検証するとする、よくよく考へてみれば「新 陰陽道」の横槍は織り込み済みでもある“実験”の数々。色彩豊かな実景に長けた小山田勝治が鮮やかに捉へる、東京タワーの荘厳な威容を適宜挿み込むアクセントに、大傑作「《秘》盗撮 素人穴場さぐり」(1995/主演:白石奈津子、ではなく荒木太郎)で火を噴いた無限編集こそ火を噴かないものの、諸々衣装も替へ階段を上がる女の淫靡な尻と、スタジオでの様々なプレイを延々と一頻り連ねる件はかつてないかもとすら思へるくらゐに漲る英気を感じさせる、煽情的かつ幻想的なショットがひたッすらに乱打され倒す究極の映画体験。本気で震へて、全力で勃てた。押しつけたオッパイを風船を通して抜くのはここに来ての地味に偉大なる発明かも知れず、車輪女の指揮の下、各人が石になるワークショップ風の一幕。女優部の傍ら、五体が分岐しない全身タイツ―全体何の目的で商品化されたアイテムなのか―に身を潜めた男優部が、一見誰もゐないかに思はせていきなり動き出したのには素面で意表を突かれた。重ねて驚かされたのは、「新 陰陽道」に勝利後の鉄塔女が車輪女の助言に従ひ辿り着く、純粋無垢なるハッピーエンド。東凛初陣でもある前作では、よもやまさかの卓袱台を原子に還すまで粉砕する荒業を仕出かしてゐるだけに、メンデルスゾーンのパパパパーン鳴る中、ウェディングドレスの鉄塔女が愛する東京タワー目指して颯爽と駆ける画の圧倒的な幸福感には、薄―くでなく―汚れた卑しい心性を隅々まで洗はれた。山﨑邦紀映画のヒロインにしてなほ、案外内向しない東凛の溌剌さは万事行き詰まつた時代に対する清涼剤ないしはカウンターとして、最終的には見事に南風薫る観後感に帰結。どエロい奇想天外の極みが、最後は量産型娯楽映画の本道らしくスカッとさせる離れ業をやつてのける。一々拾ひ始めるとキリがないキレの伴つた情報量も比類なく、これ、相当面白くないか?第29回ピンク大賞には東凛の新人賞さへ掠りもせなんだけれど、別に城定秀夫や山内大輔ばかりが、ピンクといふ訳でもあるまいに。ピンク大賞自体に関しては、上野オークラ集客イベントの一環といふ側面を重視するならば、よしんばAVアイドルの人気投票であらうとなからうと、公開ラグに屈しざるを得ない津々浦々ピンクスを切り捨てようと、あれはあれで全然無問題とも同時に思ふけれど。


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 「泡姫極楽昇天」(1995『最新ソープテクニック ねつとりご奉仕』の1998年旧作改題版/製作:小川企画プロダクション/協力:吉原『ファーストクラス』/配給:大蔵映画/監督:小川和久/撮影:伊東英男/照明:内田清/助監督:井戸田秀行/編集:《有》フィルム・クラフト/脚本:水谷一二三/監督助手:加藤義一/撮影助手:倉田昇/照明助手:佐野良介/スチール:津田一郎/音楽:OK企画/録音:ニューメグロスタジオ/効果:協立音響/現像:東映化学《株》/出演:早川優美・司レイ・風間晶・杉本まこと・真央元・久須美欽一・青木和彦・山本清彦・神戸顕一・姿良三・林田義之・万波成夫・野上正義)。脚本の水谷一二三と出演者中姿良三は、小川和久の変名。協力が製作と配給の間に割り込むクレジット順と、脚本が編集の次に来る謎位置は本篇ママ。
 頼りに上京した高校時代の同級生は、公式勤務先には勤めてゐなかつた。途方に暮れる久保田秋子(早川)が辿り着いたのは、アパートの大家が教へて呉れた吉原大門。秋子が店の前で立ち止まつたところでタイトル・イン、タイトルがインしたまゝカット跨いで吉原のソープランド「ファーストクラス」の看板と表を抜いて、以降クレジット間は店内をツラツラッと舐める。村長息子との縁談を忌避し家出して来た秋子は、男で作つた二百万の借金が泡の道に入るきつかけの、吉川美保(司レイ/多分伊藤清美のアテレコ)の家に転がり込む。ところが、美保には男の同居人が。“ウチの人”と語る点を聞くに、「ファーストクラス」店長にして内縁の夫(杉本)との半夫婦生活にさんざアテられ閉口した秋子は、居候から独立すべく「ファーストクラス」で働くことを決意する。
 配役残り出番の僅少はおろか殆ど脱がない風間晶は、風間晶も「ファーストクラス」の嬢・トモコ。jmdbによると小川組専属で五年間といふ割に数本しかないキャリア―記載漏れの可能性は、大いに留保出来る―の、初見にして謎の男優部・青木和彦は、美保が一通りの実地を秋子に見学させる、常連客の小山。久須美欽一は初体験の風俗で出会つたこちらも初陣の明子に、箍外れに入れ揚げる鳴瀬一郎。神戸顕一は、トモコにエマージェンシーを鳴らさせる性質の悪い客。何時の間にかか何が何やら、秋子は売れつ子に。山本清彦も秋子に執心する常連客、フロント付近に見切れるのみの姿良三は、元々はトモコが贔屓の常連客・杉浦。そして真央元が、出勤前の秋子をナンパする吉田ヨーイチ。秋子はその日はそのまゝ無断欠勤、待合室で待ち惚けを喰らはされる、画面左から順に小山・やまきよ、一人飛ばして鳴瀬の並びの、三人目に林田義之。野上正義は、何だかんだの末、銀座に秋子の店を持たせるパパさん、ついでといつては何だがバーテンは加藤義一。最後に、変名かと思ひきや、高嶺剛の「夢幻琉球 つるヘンリー」(1999/仲里効との共同脚本/編集:鵜飼邦彦)に市民プロデューサーシステムとやらで参加してゐる実在する個人の万波成夫は、鳴瀬のファースト・カットに於いて、待合室にもう一人ゐる客。この時この人は如何なる縁で、量産型裸映画のしかも爆心地に足を踏み入れたのか。
 小川和久(=小川欽也)1995年全九作中第七作は、鈴木敬晴(ex.鈴木ハル)映画祭の最終戦として「高級ソープテクニック3 快感天国」(1993/主演:岡本亜衣)を見た過程で出会つた、新東宝が全七作配給した各種ソープテクニック映画を打ち止めた後に、大蔵が拝借した仁義なき一作。
 当時的にはこれで最新感もあつたのか、定番のプレイで濡れ場の尺もそれなりに喰はなくはないものの、中盤から終盤に至る大半は、鳴瀬に寄つて来られたり吉田にうつゝを抜かしてみたり、秋子の在り来たりな物語に終始する。ところが、鳴瀬があれこれ派手に憤死する、量産型娯楽映画のある意味神髄を感じさせなくもない無造作な超展開に、度肝を抜かれるのはまだ早い。ザギンに仮称「摩天楼」を持たせて貰つた秋子が更なる飛躍を誓ふ、藪から棒にポジティブな結末は、眩いばかりにフリーダムなドラマツルギーにクラクラ来る。ソープテクニック映画仁義なき一作といふよりは、寧ろ止めを刺したといふべきなのか、心なんて、込めた方が負けだ。我々はさういふ地平で、戦つてゐるのかも知れない。


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 「特務課の星 蜜乳コスプレ大作戦!」(2016/制作:ナベシネマ/提供:オーピー映画/監督:渡邊元嗣/脚本:増田貴彦/撮影・照明:飯岡聖英/編集:酒井正次/助監督:永井卓爾/監督助手:小関裕次郎/撮影助手:宮原かおり・榮穰/照明助手:広瀬寛巳/画面作成:植田浩行/スチール:津田一郎/効果:梅沢身知子/録音:シネキャビン/仕上げ:東映ラボ・テック/衣装協賛:GARAKU/小道具協力:中野貴雄/出演:星美りか・横山みれい・藤宮櫻花・ケイチャン・なかみつせいじ・竹本泰志)。
 赤いチャイナドレスの主演女優、開巻即火を噴くGARAKU(ex.ウィズ)魂。後を追ふ竹本泰志を一旦は早変りしたオレンジのジョギングパンツ姿で翻弄しつつ、続くザ・シークみたいな頭巾に巫女装束といふ正体不明の変装―占者らしい―は、貸衣装のタグがついてゐたりそもそも巫女装束が後ろ前であつたりとボロボロに見破られる。られながらも、警視庁特務課に配属された新米刑事・木更津真美(星美)に教官の浜口健吾(竹本)はコスプレ審査の第一次試験合格を与へ、続く第二次試験はハニートラップ実技。“必殺五段締め”を真美に伝授すると称し、浜口が五段階に突いてゐるやうにしか見えない絡みを経て、何が何だかか何が何でもな勢ひで二次試験も合格。真美は常識を超えた未知なる犯罪者に変装と寝技とで対抗する、特務課刑事に任命される。正義ならぬ“性戯必勝”、真美が特務課の課訓である「性戯は必ず勝つ!」を三回連呼したところで、突如浜口は自身が誰なのかも失したオネエに変貌。ポップに真美が閉口してタイトル・イン、マンガマンガしたアバンが、座付脚本家変更?の不安も吹き飛ばし絶快調に走る。
 警視庁別館の特務課、クリシェにも満たない帰国子女造形が藪蛇な特務課課長の陣内さくら(横山)は、真美に頻発する浜口同様男がオネエ化する怪事件を説明。浜口がマークしてゐた、ジョイトイ会社「OPエレクト」のセールスマン・沼田陽一(なかみつ)の捜査を命じる。ところで回数・分量とも三番手相当の横山みれいの濡れ場は、真美を奔走させてゐる間に、浜口のオネエを色仕掛けで治さうとして果たせずといふ形で処理される。
 配役残り、風間今日子が山﨑邦紀2007年第三作「変態穴覗き 草むらを嗅げ」(主演:香咲美央)以来の超復活―小川隆史の最初で最後作「社宅妻 ねつとり不倫漬け」(2009/主演:小池絵美子)に映り込んでゐるかも知れないが―を遂げたのかと本気で見紛つたex.眞雪ゆんとかいふ藤宮櫻花は、旦那がオネエ化した隙間を沼田の訪問販売につけ込まれる内藤聡子。新宿二丁目に消えた旦那のスナップが、何故か菊嶌稔章。沼田×聡子戦はマンション管理会社委託の掃除婦コスで覗いてもとい監視した真実は、沼田が事後帰還した万保母病院―院内には永井卓爾やひろぽんがさりげなく見切れる―に今度は看護婦として潜入。ケイチャンは、元々は違法ドラッグのプッシャーであつたものが、沼田との秘薬を求めてのアフリカ放浪後、万保母病院を牛耳るマイク前島。何か獣の頭蓋骨が被りもの、大蛇を巻いた首から下は豹柄の全身タイツと、少なくとも頭蓋は中野貴雄に借りて来たに違ひないカッ飛び過ぎた扮装の怪人物。全体、この人にアフリカで何があつたのか。
 渡邊元嗣2016年第三作は、「特務課の女豹 からみつく陰謀」(2014/監督・脚本:国沢☆実/主演:伊藤りな)に、「特務課の罠 いたぶり牝囚人」(2015/脚本・監督:関根和美/主演:きみと歩実)。今のところ一年に一作づつ続いてゐる特務課シリーズ第三作にして、約二十年続いた山崎浩治とのコンビは解消したのか!?アニメ・特撮畑を主戦場とする増田貴彦が、「未来H日記 いつぱいしようよ」(2001/監督の田尻裕司と共同脚本/主演:川瀬陽太・高梨ゆきえ)以来のピンク電撃復帰を遂げた話題作。因みに増田貴彦は、渡邊元嗣次作の脚本も担当してゐる。
 男をオカマキナ~ゼ―解毒剤はノンケナ~ゼ!―でオネエ化させ、空いた女にジョイトイを売りつける。風を吹かせて桶屋を儲けさせるが如く暗躍する沼田の目的は、最終的にはジョイトイに仕込んだ高濃縮ガス爆弾を時限爆破させ女々を劇中用語ママでエマニエル化、マイク前島が酒池肉林の王国を築かうと目論むその名も東京ハーレム計画。一方、こちらも劇中用語ママで変身刑事たる真美は、観音様に蓄電したバイブの電力を放電するマミー・エレクロト・バイブレーション。何かよく判らんけど、兎にも角にもオッパイからビームを出すハニーならぬマミーフラッシュ。そして、浜口から授けられた必殺五段締めと、必勝の性戯を駆使して悪に立ち向かふ。と、なると。旦々舎よりも安定した、ナベシネマが崩れるのではなからうか。外野の至らん心配も余所に、うん、全ッ然変らないどころか更に加速してるね。デジタルの果実も嬉々と享受する、真美とマイク前島の最終決戦は星美りかの偉大なるオッパイをも超えるスペクタクルの大輪―スライド乱舞するサバンナが、光の彼方に消えるカットのカタルシスも捨て難い―を咲き誇らせ、チンコ型レバーの珍ガジェットは改めて盟友・中野貴雄とともに、ナベが娯楽映画に込めた下らなさがグルッと一周する熱く固いポリシーを叩き込む。締めの一戦は一旦コッテリと真面目に見させるか勃たせた上で、ガビーン★といふSEが聞こえて来さうなオチが軽やかに駆け抜ける。エモーション要素の絶無はひとつだけ気懸りでなくもないものの、素人のチョロい杞憂なんぞ何処吹く風、何時ものナベシネマ以上のナベシネマであつた。と同時に、逆説的にリアルな革命映画で火蓋を切り水のやうな女囚映画が続いて、今回が普段のナベシネマよりもナベシネマ。特務課シリーズが、各作バラエティに富んでゐて案外面白い。何時か特務課が、慰安旅行で伊豆に行かねえかな。清水大敬に任せると、特務課が鮫島組を壊滅させる頂上作戦か、他愛ない与太が尽きない。

 断じて忘れてならないのは、必殺五段締めを被弾、一段締め毎に悶絶する、ケイチャン(ex.けーすけ)のパ行を多用する愉快奇怪な悲鳴込みのエクストリーム顔芸。五段締めよりも、寧ろこのメソッドが必殺に思へる。


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 「聖女地獄絵図」(昭和55/製作:獅子プロダクション/提供:東映セントラルフィルム株式会社/監督:佐野日出夫/脚本:梅沢薫・佐野日出夫/製作:大井武士/撮影:志村敏夫/照明:斉藤正明/音楽:新井明美/編集:酒井正次/記録:星明子/助監督:滝田洋二郎/監督助手:鈴木隆・井上愉斗志・渡辺基次/撮影助手:邪苦牝理犬/照明助手:佐野哲男/録音:東映録音部/現像:東映化工/製作進行:坂田勝平/出演:吉田さより・国分二郎・風間舞子・川口朱里・あおい恵・Bペギラ・小坂まさる・杉田一夫・大串亘・阿部里香子《子役》・津崎公平)。製作の獅子プロダクションが、本篇クレジットにはなし。逆に阿部里香子の子役特記は、本篇クレジットのみ。フォース助監督の渡辺基次は、渡邊元嗣の変名。提供の東映セントラルフィルムに関しては、実際にはエクセス。
 海の近い邸宅、花嫁衣装を前に娘と父親、母親はゐない。一週間後に結婚を控へた娘の京子(吉田さより/風祭ゆき旧姓本名の前名義)に、私財を投げ打ち福祉事業に尽力する篤志家の市川宗一郎(津崎)は目を細める。子供の頃京子が愛用した風車を懐かしんだ流れで、幼き京子(阿部)を負ふた宗一郎が、「どんぐりころころ」を歌ふ砂浜の回想にタイトル・イン。回想中には、京子の母親・康子(吉田さよりの二役)も登場する。京子が母の不在を惜しむと宗一郎が語気を荒げる件を噛ませて、停電の如く暗転したかと思ふと、出し抜けに何故か屋内なのに嵐が吹き荒れ、侵入した二人組の暴漢(プレスシートによると一人は大串亘らしい)に、京子は凌辱される。文字通り嵐の過ぎ去つたのち、無惨な娘の姿に衝撃を受け過ぎた宗一郎は、識別不能の間男を作つた康子が家を出て行つた過去を想起、意識を取り戻した京子を、康子と誤認し犯す。二度目の事後、一旦入水しかけて出刃を手に宗一郎を殺さうとした京子は、退行さへする完全にブッ壊れた父親を憐み、相変らず康子康子と求めて来る宗一郎を、康子として受け容れる。
 到底表には出せぬ状態ゆゑ、京子は宗一郎に代り市川福祉事務所を切り盛りする。出演者残り杉田一夫は髭面の事務員・杉田で、溌剌と見切れる長身の渡辺クンが、当然若き日のナベ。国分二郎は藪から棒に土壇場の婚約を反故にされ、京子に詰め寄る大野文彦。風間舞子は、詳細も知らされず事態を受け止めきれない大野を慰める、懇意のホステス・マリ。あくまで登場順で、何時しか“聖女”と時代に持て囃されるやうになる京子にインタビューするインタビュアーは、クレジット中に本名も変名の周知安も見当たらないけれど片岡修二。あおい恵と小坂まさるは、徘徊中青姦を覗いてゐた宗一郎を、とつちめるマミとまさる。絡む二人の後方少し小高いところに、津崎公平がポケーッと体育座りしてゐる牧歌的な画は笑かせる。問題は、少し―でもないが―古い映画となると途端に現す馬脚が甚だ面目ないが、風間舞子ファースト・カットの手前に映り込むその他ホステス(相手の男は更に不明)でないとしたら、川口朱里が何処に出てゐたのか本ッ格的に判らん。それと市川福祉事務所の年配の女でないとしたら、再びプレスシートによると敬子役とされるBペギラも判らない。そもそも読み方から判らない、何者なんだBペギラ。
 年を跨いで第六弾の「宇能鴻一郎原作 むれむれ夫人」(昭和53/監督:向井寛/脚本:田中陽造・山本晋也/主演:飛鳥裕子)までは今のところ続いてゐる、エクセス提供東映ナウポルノ第四弾。監督最終作の「普通の女の子 性愛日記」(昭和60/脚本:白鳥洋一・佐野日出夫/主演:渡瀬ミク)がクソ画質以下の散々な代物であつただけに、危惧してゐたよりはといふかほどは悪くない、程度。脱ぎ仕事初陣の風祭ゆきが配役上も展開の上でも娘母を兼任する構成は確かに面白いものの、徒に大仰な演出は最終的には失笑を買ふ類のギャグの領域に突入し、思考停止で無条件に肯定するのでなく、恐るべきものとしての生命観には辿り着きながらも、手数に欠いたか詰めに窮し豪快に尺を持て余すラストは逆の意味で見事に不時着する。これで画作りが情けなければ、何処まで箸にも棒にもかゝらなかつたものかと直截には思へる出来で、かうして見るとこの時代の裸映画にしかも小屋で巡り会へるのはマキシマムに有り難いにせよ、いざ蓋を開けてみればみたで、この企画、引つ繰り返るくらゐ決定的な一作には、未だ当たつてゐない。


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