「淫欲開花! 魅惑のラブハウス」(2016/製作:セメントマッチ/提供:オーピー映画/監督:池島ゆたか/脚本:五代暁子/撮影監督:海津真也/録音:大塚学/編集:山内大輔/音楽:大場一魅/撮影アドバイザー:清水正二/助監督:菊島稔章/撮影助手:矢澤直子/照明助手:広瀬寛巳/監督助手:野間清史/現場応援:小川兄弟/スチール:津田一郎・山口雅也/仕上げ:東映ラボ・テック/出演:川越ゆい・里見瑤子・松井理子・なかみつせいじ・野村貴浩・竹本泰志・橘秀樹・鶴見ゴロー・野間清史・沢村麻耶《特別出演》)。出演者中、カメオにしては絡みもある沢村麻耶は本篇クレジットのみ。
街中の歩道橋開巻、江戸時代に生まれ、生きた女と松井理子のモノローグ起動。並外れた性欲を当時は満たすことなく死んだおりこ(凄え仮名/松井理子)は、いはゆる肉食女子が闊歩する開放的な現代を言祝ぐ。頬張らうとした肉まんをおりこに奪はれた、菊島稔章が清々しい大根で目を白黒させるどうでもいい枝葉挿んで、JR東日本佐倉駅駅前。おりこの子孫の山下ミク(川越)と、彼氏の大竹(橘)が仲良く腰を下ろす。最低でも世紀を二つ跨いで今なほ未練を残す欲求不満をミクの肉体を通して解消したいおりこは、ミクをジャックする形で大竹に積極的なモーション。大家が不在の下宿にミクが大竹をザクザク連れ込むべく捌けると、スポイルぶりにもほどがあるタイトル・イン。おりこがミクをジャックする描写、デジタル時代の透明人間的シークエンスが軽く見られたのが琴線に触れる。
タイトル跨いでサクサク開戦、したはいいものの。やいのやいの松井理子が傍から姦しい演出に、女の裸を愉しむ邪魔だと荒木調ならぬ荒木臭に対するのと同様の嫌悪を覚える。兎も角いざといふ段になると、実は処女のミクが初挿入を痛がり事は頓挫、臍を曲げた大竹は出て行く。大竹で通算十一人と初体験を失敗したミクは、完全にセックスに匙を投げる。頭を抱へたおりこの次の矢は、夫婦生活の回想がてら交通事故で死別した亡妻にしてミクの叔母でもあるヨーコ(沢村)の遺影に手を合はせる、下宿の大家(なかみつ)。ヨーコの口を借りたおりこに唆された―声が違ふだろ、声が―大家は、昼寝するミクに夜もとい昼這ひを敢行。改めて挿入といふ段になつて漸く目を覚ましたミクが激しく抵抗、大家は階段の下にまで蹴り飛ばされるとピューピュー血も噴く大流血。驚き飛び出したミクは、道々に撒かれた入居者募集のチラシと、素頓狂な白ブリーフの雰囲気イケメン・タカシ(鶴見)に誘はれ、謎の館・ラブハウスに辿り着く。ミクを迎へ入れたラブハウスの女主人・小田切カムラ(里見)は、一週間での女の悦びの修行を課す。ところで、大病したと聞いてゐたけれど、回復されたのかな?と映画を観る前には面喰はされたタカシ役の鶴見ゴローは、池島ゆたかの2014年薔薇族「俺と彼氏と彼女の事情」にて松本渉・黒木歩と共同主演した鶴田雄大の変名。
配役残り野村貴浩は、十五年前AVの現場でカムラにスカウトされたラブハウス講師・滝沢リョウ。講師といへば聞こえもいいが要は、ラブハウスといふのは女用のソープならぬ逆売春宿である。野間清史は、ミクがリョウとミーツする際の噛ませ犬となる自転車のセコいひつたくり。好色な初老造形の竹本泰志は、挿入せずとも文字通りの手練手管だけで女を絶頂に導く、自らいはく“クンニと愛撫とバイブレーター、ラブハウスのクンニマン”こと五郎丸オトヤ。底の抜けた与太を自在に撃ち抜く竹本泰志の、気がつくと何時の間にか到達してゐた熟練が堪らない。若い頃は、ギスついた安ホストくらゐにしか見えなかつたのに。あと池島ゆたかが、「オープン・ザ・プライス」の声と百万円札の肖像。忘れてた、ミクのパーソナリティーに何気に大きな影響を及ぼす、おりことは対照的に性に抑圧的なミク祖母は松井理子の二役。
ODZに忙殺されたデジタル元年に対し、ローテーションに復帰した感のある池島ゆたか2016年第一作。古めかしい主演女優のと、口を開けば開いたで加速して素頓狂な鶴田雄大の口跡、ついでに随時カムラが詠む他愛なくすらない詰まらん川柳は御愛嬌に、晩熟なヒロインが、魅惑のラブハウスで淫欲を花開かせる展開は如何にもピンク的。オトヤとリョウの指南―その前にカムラも―を通して目覚めたミクが、当然といへば当然だが恨みを買つた大家―ミクを称してバイオレンス・バージンといふのが笑かせる―の撃退込みで、大竹とヨリを戻す結末は案外鉄板。結局傍観者のポジションに落ち着いたおりこが、正しくヤリ残した肉の飢ゑをミクを通して解消する話が何処かにケシ飛んでゐる点に関してはこの際さて措き、何はともあれ、ムッチムチにクッソエロい川越ゆいの肢体を、かなりエグく狙つた濡れ場が何より出色。恐らくは確信犯的に薄い物語は形だけ流した上で、十分嵩の増えた尺をひたすらに費やし女の乳尻―川越ゆいの場合は特に尻―を観客の股間に刻み込む。その、至誠とさへ讃へ得よう逆説的にストイックな姿勢は、ジャスティスの強度を以て麗しい。大蔵的には、あれでプラスまで踏まへた対一般層の弾としては企図通りに機能してゐるのか、榊英雄辺りの伊達で裸映画を撮る手合には今後も継戦するつもりならば、一度池島ゆたか―か浜野佐知―の現場に参加して叩きのめされる、もとい修行して来て欲しい。あるいは、選りにも選つて清水大敬のところに行き、とりあへずローションをヌルッヌルに塗りたくる斜め上のメソッドを覚えて来てしまふか。
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