真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「夜の手ほどき 未亡人は19才」(昭和62『新・未亡人下宿 夜の手ほどき』の2010年旧作改題版/製作・配給:新東宝映画/監督:渡辺元嗣/脚本:平柳益実/製作:伊能竜/撮影:志賀葉一/照明:守田芳彦/編集:酒井正次/助監督:笠井雅裕/監督助手:瀬々敬久/撮影助手:稲吉雅志・中松敏裕/照明助手:田端一/スチール:津田一郎/車輌:横田修一/録音:銀座サウンド/現像:東映化学/出演:新田恵美・橋本杏子・秋本ちえみ・水野さおり・ジミー土田・池島ゆたか・山本竜二・平賀勘一・久保新二)。監督の渡辺元嗣と撮影の志賀葉一は、いふまでもない現:渡邊元嗣と現:清水正二。製作の伊能竜は、向井寛の変名。
 都会の遠景が右から左に軽くパンしてグーッと寄ると、下町の商店街に地図を片手に大きなトランクを引く、初めての目的地を目指す風情の新田恵美。カット変りカメラが新田恵美の正面に回るや、新田恵利の2ndシングル「恋のロープをほどかないで」が堂々と火を噴く、何と大らかな時代よ。新田恵美と新田恵利の比較に関しては、ど真ん中中のど真ん中世代―公開当時十五才―の割に全く興味がなかつたゆゑ、一切通り過ぎる。一方、恐らくサドルに提げたトランジスタ・ラジオで「恋のロープをほどかないで」を流してゐるといふ方便と思しき、クリーニング屋「ランドリーランド」店員の陣内松太郎(ジミー土田)が配達中。イイ感じでチャリンコを転がす松太郎と、地図片手の新田恵美が衝突。倒れた弾みで新田恵美の股間に顔を突つ込んだ状態の松太郎が、「キャー☆」といふ悲鳴とともにビンタを張られるオープニング・シークエンスは、クリシェを微塵も恐れぬ覚悟まで含めあまりにも鉄板、地味に手間もかゝつてゐる。一体新田恵美の地図は、どんな遠くから経路を辿るのかといふ疑問を持つのは禁止だ。新田恵美の目的地は、古アパート「黄昏荘」。すると建物はお化け屋敷だ住人はプッツンと変態揃ひ、おまけに地上げに狙はれてゐると黄昏荘を悪し様にいふ松太郎に、新田恵美は顔色を変へる。吉永杏子(新田)が自分が黄昏荘の新管理人となることと、19才の未亡人である旨を自己紹介、「未亡人は、19才!?」と松太郎が驚喜したところでタイトル・イン。となると、新題の方が実はテンポなりフィット感がいいといへなくもない。AV感覚で適当に文字を被せただけの、タイトル処理自体は実に御座なりなものなのだが。
 山本竜二は、杏子にいはゆる手荒い洗礼を本当に浴びせかける、黄昏荘の住人で京帝大学大学院生の大崎ワタル。頭はいいらしいが、病的を通り越したオナニー魔人。おしやぶり付きの笛を常用し、笛に合はせて腰を振るメソッドが爆発的に笑かせる。久保新二が、結婚後病死、かどうかは兎も角秒死した杏子の亡夫・吉永先生、高校時代の恩師である。松太郎が黄昏荘に転がり込まうとする騒動の中登場する橋本杏子は、黄昏荘の良心的ポジションを担ふホステスの国分未来、松太郎とは腐れ縁。そんなある日、配達中の松太郎が、パパさんに三ヶ月放たらかしにされた愛人業・純(水野)に文字通り捕獲される。パンティ投網で本当に捕まへた松太郎の前に、際どいレオタードでプリップリのオッパイを殆ど隠しもせずに現れる、水野さおりが実に素晴らしい。陽性のキャラクターとそつない台詞回しも相俟ち、磐石の裸要員ぶりを披露する。そこに現れる池島ゆたかが純のパパさんで、何かと噂の黄昏荘を狙ふ「黒沢ハウジング」社長の黒沢。冷凍庫ばりに冷やす冷蔵庫に押し込まれた松太郎が潜んでゐると、杏子の遠い親戚でもある急死した前管理人は、どうやら黒沢が用心棒の鎌田(平賀)に始末させたらしき風情と、前管理人に作成させた嘘借用書が存在する姦計とが明らかとなる。そして秋本ちえみは、大崎の斜め前の部屋に住む三原加世。美人ではありつつ、自分を魔女だと思ひ込んでゐる完全にイッちやつてる人。但し夜這ひを仕掛けた松太郎に対し、念動力風に体の自由を奪ふ怪現象もどさくさに紛れて起こす。
 新田恵美と新田恵利の近似―度合―については無関心につき等閑視するとして、若き未亡人の響子ならぬ杏子が文化財的なおんぼろアパートの管理人といふと、いはずと知れた『めぞん一刻』パロディといふ格好になる。尤も、パロディはあくまで格好まで。未来と松太郎の恋路が何時の間にか進行する反面、杏子は吉永先生を中途半端―あるいは生殺し―に回想するばかりで、五代君ポジションの登場人物は影すら出て来ない。本筋が杏子・未来・松太郎トリオV.S.黒沢&鎌田コンビの、鎌田が常備するバービー人形の中に隠された嘘借用書の争奪戦とあつては、これで『めぞん一刻』といふのは―何処まで本気だつたのかも判らない―気持ちは酌めるにせよ実質的には無理だ。とはいへ、加世が清々しく木に竹を接ぐほかはサクサク進行する嘘借用書争奪戦は、カラッと面白い。誰だ、“ポ”を忘れてるとかいつてやがるのは。娯楽映画には、尺の束の間をホケーッと楽しませて、エンド・ロールが流れ終る頃には中身を全部忘れてる。そのくらゐがちやうどいいといふ匙加減も、時にあるのではないか。とりわけ、兎に角借用書を奪取、自転車で逃げる未来と自転車に乗れない杏子をランドリーランドの荷篭に無理矢理突つ込んだ松太郎を、車は煙を吹くボンネットがアボーンしたゆゑ、何と鎌田の原チャリが黒沢が乗る玩具の車を引き猛追跡する、ハチャメチャなチェイスが異常に面白い。編集の奇跡とでもしかいひやうのない、絶妙な早送りが醸し出す正体不明のスピード感と予想外の活劇性。ともに白痴と強面の設定を忘れたかのやうに、鎌田と黒沢が手放しのノリノリで飛び込んで来るファースト・カットにも腹を抱へたが、河原に突入しては、黒沢がダイナマイト―的な何か―をも乱投する羽目外しにはストレートに大笑した。実は、杏子と吉永先生なり未来と松太郎なり、然るべき相手と完遂される濡れ場が終に存在しない点はピンク映画として地味に致命傷かと思へなくもないものの、細けえ些末はドント・マインド。よくよく冷静に検討してみると、男優部が全員飛び道具担当といふのが何気に恐ろしい、少し奇怪で愉快痛快なスラップスティック・ピンク。うん、矢張りどう転んでも、『めぞん一刻』ではないはな。


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 「おねだり狂艶 色情いうれい」(2012/製作:ナベシネマ/提供:オーピー映画/監督:渡邊元嗣/脚本:山崎浩治/撮影照明:飯岡聖英/編集:酒井正次/助監督:永井卓爾/監督助手:広瀬寛巳/撮影助手:下垣外純・佐藤光・竹野智彦/編集助手:鷹野朋子/スチール:津田一郎/タイミング:安斎公一/効果:梅沢身知子/録音:シネ・キャビン/現像:東映ラボ・テック/協賛:ウィズコレクション/出演:大槻ひびき・小滝みい菜・川瀬陽太・西藤尚・山口真里・眞木あずさ)。
 長い髪を束ねた、女の後姿で開巻。自身の経営する会社を潰し、借金取りにも追はれる須藤和也(川瀬)が滅法安いらしい賃料に釣られ転がり込んだ、幽霊屋敷と噂される外見はボロい一軒家―もしかして、意外に新しい家内の撮影は別物件?―を、モバイルサイト「OPクリエイティブ」ディレクターの田村麻里子(大槻ひびきの二役)が心霊番組の取材依頼に訪れる。初めは借金取りかと開き直つた和也は、麻里子を見るなり「未玖!?」と見紛ひ絶句する。すぐに気を取り直した和也が、「あんた誰だ」と放り投げた台詞に合はせてタイトル・イン。和也と、病没した妻・未玖(大槻ひびきの本役)との在りし日挿んで、続々と投入される小滝みい菜と山口真里と眞木あずさは、全員此岸の存在ではなく、且つ和也による命名で、幽霊の幽子と幽霊の霊子に浮遊霊のふゆ子。オーソドックスに化けて出て来たにも関らず、川瀬陽太一流のフットワークの軽さを発揮した和也に、次々と要は喰はれる。幽子に至つては霊子の出番にも割り込み、巴戦に持ち込む。グッと落ち着いた風情が抜群に素晴らしく、演出と展開の下駄を履く主演女優をも押さへかねない女優部随一の存在感を輝かせる眞木あずさは、真相の鍵を半分握る。
 八幡の前田有楽劇場と小倉の小倉名画座、早いことは確かに早い―最速驚愕の封切り三ヶ月―にしても、両館仲良くオーピー新作が飛び込んで来る順番が木端微塵に混乱する中、漸く小倉に着弾した渡邊元嗣2012年第三作。但し一年弱落ちとなると、結局は従来通りのラグであつたりもする。今回、今作を観たのは小倉。実は再来月初頭に八幡にも来るのが直前に確認出来てゐたのだが、それでも弱音と悲鳴を吐き続ける体の無理を押し八幡から流しての二段遠征を敢行したのは、有楽で二回、故天珍と地元駅前ロマンに続いて、小倉でも「老人とラブドール 私が初潮になつた時…」(2009/監督:友松直之/脚本:大河原ちさと/主演:吉沢明歩・野上正義)を観ておきたかつたからである。結論を先走るが、二本揃つて力強く泣かせる、この週が今年の小倉の、年間最高番組最右翼であるやうに思へる。話を映画本体に戻すと、半分以上人生を諦めた男が、女の霊との情交を満喫する怖くない幽霊譚。豪華四女優を川瀬陽太が一人で迎へ撃つ贅肉を削ぎ落とした強靭な布陣を据ゑ、質・量とも、煽情性のみに囚はれぬ情感豊かな濡れ場を積み重ねた末に、よくあるどんでん返しを半分捻つた上で、満を持した渡邊元嗣が渾身で撃ち抜くのは、在り来りこの上ない、お節介甚だしいメッセージ。

 “生きろ”なる「もののけ姫」のポスター惹句に激怒し、当時自身が携はつてゐた「ブレンパワード」のキャッチに際して、“頼まれなくたつて生きてやる”と咆えた富野由悠季の気骨に俺は賛同する、「ブレンパワード」自体は見てないので中身は知らんけど。元来、死ないしは夜の夢の誠を希求する主人公に対し、生あるいは現し世への帰還を説くやうな物語を、私は激しく憎悪する。何がビューティフル・ワールドか、何がワンダフル・ライフか。この世界の何処が美しいのか、人生の何が素晴らしいのか。唾棄すべき誤謬、厚顔な錯覚。虫唾が走る、そんなに寝言を垂れるのが楽しいならば眠らせてやらうか、私はさう歪む。そんな捻じ曲がつた臍の持ち主ですら、“生きて”といふ未来もとい―それは“ミキ”もしくは“ミライ”だろ―未玖の願ひに撃ち抜いた通りに胸を撃ち抜かれた所以は。渡邊元嗣の長いキャリアと、案外以上に伊達ではない論理と技術、が最たる理由では必ずしもない。一貫するアイドル映画志向と縦横無尽なファンタ風味、でもない。無条件未検証な生の肯定を断じて肯んじない小生さへも、“生きて”といふ未玖の願ひに素直に胸を撃ち抜かれた所以は、映画監督・渡邊元嗣がフと気がつけば今年でデビュー三十周年となる今なほ、他の追随を許さぬ真の主力装備。それはナベの、激安を通り越した原価割れの物言ひも憚らずにいふが、それはナベの真心なのではなからうか。映画を多分本気で信じた、ナベの真心なのではなからうか。好き嫌ひでいふと勿論好きであるに止(とど)まらず、私は渡邊元嗣の映画を信ずる。フルスイングのエモーションを叩き込んだ上で、カメラを担いだ永井卓爾とマイクを構へる広瀬寛巳を従へ改めて本題に取りかゝる西藤尚が、照れを隠すかのやうにガッチャガチャに騒ぎ倒す緩やかに愉快なラストまで含めての、正しくナベシネマ。あれ、キミらまだ成仏してないの?さういふ瑣末な疑問は、半券と一緒に失くしてしまへ。そもそも、幽霊の幽子・霊子と、ふゆ子は浮遊霊といふカテゴリーの違ひを、和也が看破し得た謎スペック。それ以前に、それではかつて当地で女学生二人と寮母が空襲で命を落としたとする因縁と、絶妙に齟齬を来たしはしまいか。上野オークラ病院からの郵便物に、麻里子が驚いてみせるカット。彼岸から届いた新たなる形見としては兎も角、実質的には別に機能してゐない御守。脇と詰めの甘さがある意味らしいツッコミ処にも事欠かないにせよ、だからこの場合神が宿りはしない細部など気にするな。女の裸よりも優しいナベの真心が観る者の心を包む、美しい美しい一作。三社の新作を並べた最終番組の残り二本が残念ながら、「夏の愛人 おいしい男の作り方」(2011/エクセス/監督・脚本:工藤雅典/主演:星野あかり)と「をんな浮世絵師」(2012/新東宝/監督・脚本:藤原健一/主演:織田真子)である点は最早さて措き、惜しまれつつ今作公開の翌月に閉館した浅草世界館の棹尾を飾るに相応しい感動作。これは全く局地的な事情に過ぎないが、大概待たされた甲斐もあつたといふものだ。


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 「朝まで生いぢり」(1991/企画・製作:NTP/配給:大蔵映画/監督:西川卓/脚本:北町一平/撮影:小林啓次/照明:N・K・Fグループ/編集:酒井正次/助監督:夏季忍/音楽:ド・ビンボ/撮影助手:福島香/監督助手:調布太郎/録音:銀座サウンド/効果:東京スクリーンサービス/現像:東映化学/出演:伊藤舞・工藤正人・小川英実・牧村耕治・大川忍・木下雅之・朝田淳次・小港雄三・堀田徹)。助監督の夏季忍は、久須美欽一の変名。
 画と劇伴はアーバンな雰囲気なのに、フォントが思ひきりへべれけなタイトル・イン開巻。何処ぞの駅のガード下通路、背広姿でくたびれた風情の工藤正人が立ち止まりタバコを銜へ、ライターを探してゐると素晴らしい自然さで鞄を落す。「ついてねえな」とこぼしたところで、牧村耕治による実も蓋もないナレーション「“ついてない”、が口癖のこの男、会社員・黒川公平」、「退屈な一日の仕事を終へ公平は老人のやうな足取りで盛り場に向かふ、ツキを探して」。再びタバコを銜へた公平に、火を借りる体を装ひ立ちんぼ(伊藤)が接触、忽ち交渉は成立する。体毛をフィーチャーする返す刀か、伊藤舞の腋毛を執拗に押さへ続ける一戦経て、自らをついてない男のサンプルと自嘲する公平に対し、伊藤舞は「ね、ツキあげよつか?」と数本の陰毛をプレゼントする。翌日は、平日ぽいが何故か公平は休み。神札風に包んだ伊藤舞の陰毛を下の毛大明神と称して有難く拝む公平は、まづ近所のタバコの自販機で足下の千円札を拾ひ、当てもなく出てみた新宿。ピンクチラシを漁りつつ二つ目に入つた電話ボックスにて、札束の詰まつたアタッシュケースを発見する。帰宅して調べてみると、中身は一千万の現金と、袋詰めのよく判らない粉。すつかり気分が大きくなり、会社を退職することにした公平は、自宅にホテトル嬢(小川)を招く。ここで小川英実とは、突発的な小川真実の別名義。まさか、単なる―クレジット上の―派手な誤字だとかいふまいな。気前のよさ込みで公平に好感を持つた真実ならぬ小川英実は、次回は職場友達のレイコ(大川)も呼ぶやう提案する。
 配役残り、木下雅之は、レイコも加はつた一夜明けに飛び込んで来る、時代を偲ばせるデカさがダサいサングラスの強面。牧村耕治は、小川英実が公平の部屋で手に入れたヤクを捌かうとする、別の強面。女を責める際にバイブを取り出すや、オネエに豹変する奇妙で魅力的なキャラクターが素敵に映画的。朝田淳次はある意味一件の発端、アタッシュケースを電話ボックスに置き忘れた役立たずの運び屋。小港雄三と堀田徹が、全く判らない。片方は瞬間的にしか見切れないにせよ牧村耕治の運転手にしても、これといつた面子がもう他には見当たらない、新宿で清々しく意味不明に―しか見えない―抜かれるヨッパライ?
 何となく開催した西川卓映画祭、最後に辿り着いたのは1991年第一作。DMMのピンク映画chで視聴可能な五本の内では最も新しく、因みにjmdb的には監督作が三十七記載される中での、第三十六作に当たる。としたところが、為にする方便では決してなく、掛け値なしの衝撃の問題作。売春婦から陰毛―ところで、処女でなくとも御利益はあるものなのか?―を譲り受けたツキのない平凡な男が、忽ち小金に毛を生やした程度の大金を手に入れる。公平の、高々一千万を拾つたくらゐで仕事を辞める軽率と、今でいふとフラグも通り越し地表に露出した起爆装置、如何にも怪しげな粉袋を事もなげに無視してします不自然な粗忽は、とりあへず一旦さて措く。小川英実との朝まで生いぢり―いよいよ事に及ぶ直前、何故か工藤正人にカメラ目線で「朝まで、生いぢり」と見得を切らせる、木に竹も接がないカットが設けられる―と、レイコも交へた、赤い照明でトリップ感を表現する巴戦まで、どうにもかうにもモッサリモッサリする展開も、四本西川卓を経た上では経験則の範疇に納まりもする。ところが、二人の強面登場後漸く物語が本格的に動き出した途端、暫し主人公が退場したままになつてしまふ間抜けさは、それでもまだ驚くには当たらない。そもそも、申し訳程度のイメージも差し挿まれるとはいへ、主演女優が公平と別れて以来オーラスまで出て来ない。銃声とシークエンス自体もプリミティブな、皆殺しの銃撃戦も大概ではあるがギリギリ通常の詰まらなさの枠内として、ラストを飾るか整へるべく伊藤舞が再登場を果たしたかと思へば、無造作に放り込まれるピンク映画史上最悪のバッド・エンドには本当に度肝を抜かれた。大蔵も大蔵だ、こんなの通してええんかいな。悪びれる風もないケロッとした無神経さが却つて罪深い、暴力的な一作。良くも悪くもといふか当然凶悪なのだが、絶対値のデカさだけならば途轍もない。最終的に西川卓に関しては、あまり器用ではない以外には特に捉へ処がない、我ながら甚だ覚束ない印象に固まりかけてもゐたものの、とてもではないがそれどころではなくなつた。


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 「喪服妻 責めなぶり」(1996/企画:セメントマッチ/制作:オフィスバロウズ/提供:Xces Film/監督:池島ゆたか/脚本:岡輝男・五代暁子/撮影:千葉幸男/照明:渡波洋行/編集:酒井正次/メイク:古川マリ/スチール:本田あきら・佐藤初太郎/助監督:高田宝重/監督助手:瀧島弘義/撮影助手:嶋垣弘之/照明助手:那雲哉治/録音:シネキャビン/現像:東映化学/出演:水野さやか・田口あゆみ・林田ちなみ・稲田美紀・小山亜樹子・砂糖あやめ・怜怜・池島ゆたか・丘尚輝・荒木太郎・神戸顕一・杉本まこと)。
 アメリカ国家の鼻歌で、喪装の水野さやかがうどんの支度。傍らには、エルヴィス・プレスリーのポスターも見える。不用意に重低音のビートを刻む、シーンに全くそぐはない劇伴が鳴る中、坂を上つて来るこちらも喪服の田口あゆみにタイトル・イン。当然楽曲は使用出来ない―星条旗も回避策か―もののエルヴィスのLPに針を落とした上で、チョビ髭ギャングな扮装の池島ゆたかの遺影に、水野さやかがうどんを供へる。すると池島ゆたかのナレーション、「彼女は、うどんとエルヴィスが好きだつた私の供養をして呉れてゐる」。在りし日を偲ぶ情事の回想挿んで、水野さやか宅を田口あゆみが訪れる。オバサン呼ばはりされたことに腹を立て水野さやかの頬を張つた田口あゆみは、「初めまして、私、奥田の妻で御座います」。滋子(田口)の夫・奥田俊二(池島)は、風俗嬢の愛人・佐伯菊乃(水野)宅からの帰り、年甲斐のない四回戦の疲労による居眠り運転で命を落としてゐた。滋子は俊二形見のエルヴィス・グッズを強制回収して退場、菊乃が俊二の遺影にパイズリしてゐると、劇中二人目の来訪者。来た道を逆に戻る滋子とも擦れ違つてゐる、東西新聞の集金人(別人のアテレコなのが判り辛くさせる丘尚輝=岡輝男)が口にする喪服嗜好性に、菊乃は閃く。常識的には、無神経な遣り取りであることはいふまでもない、ヒロインの不謹慎はさて措く。
 配役残り、仲良く飛び込んで来る杉本まことと林田ちなみは、新聞集金人の伸ばした鼻に世の男性諸氏の喪服需要を看て取つた菊乃は、喪服妻売りのホテトル、その名も喪服サロン「ラブミーテンダー」を開業。杉本まことは開店準備に呼んだ広告屋の瀬戸洋輔、林田ちなみが洋輔を菊乃に紹介した、風俗仲間の大岡美和。正直不要なギミックではあれど洋輔もプレスリーのファンで、エルヴィス柄のネクタイと腕時計は、俊二のコレクションと同様、まづ間違ひなく池島ゆたかの私物であらう。ファースト・カットはヒッピーのやうなロン毛の荒木太郎は、元々喪服に憧れ出家した、筋金入りの生臭坊主・横川真顕、破戒の最中に鬘が取れる。二度目の登場に際しては袈裟も実装、妙に板についた坊主ぶりを披露する。稲田美紀から怜怜までは、求人に応じラブミーテンダーに加入する新人嬢の皆さん。特に何をするでもない純然たる頭数要員に止(とど)まりながら、一人七月もみじ似の美人が居る。腹だけだと高田宝重かと見紛ふエラい肥えた神戸顕一は、喪服よりも菊穴の方が好きなのではないかと思しき武田。ラブミーテンダーが順調に繁盛する中、思はぬ人物が面接に訪れる。
 この年エクセス・大蔵・新東宝、薔薇族のENKも含めると何と四冠を達成した池島ゆたかの、1996年第一作。因みに今年、友松直之がエクセス―に持ち込む金―をどうにか出来れば恐らくは歴史上最後の三冠を狙へる位置にあるのだが、四冠となると正しく夢のやうな記録である。今作本体に話を戻すと、一見、深い感銘を受けることもなければ、ギャースカギャースカ騒ぐほど猛烈に面白い訳でもない。とはいへ、合間合間の繋ぎの展開は最小限に、質的にも量的にも申し分ない濡れ場濡れ場がつらつら流れて行く、画期的に快調な裸映画。一時間の尺が、体感は三割減。エクセス的には上出来の部類に入るぼちぼちの主演女優を、姐御肌の田口あゆみとコケティッシュな林田ちなみがガッチリ補佐・補強する三本柱はさりげなく超絶。神戸顕一は賑やかし程度としても、荒木太郎と杉本まことは絡みを通してよりお話を膨らませるのではないかとさへ思はせ、池島ゆたかが自ら要の狂言回しに座る男優部も磐石。女の裸をタップリと愉しませつつ、山あり谷ありの何気に完璧な構成の起承転結がサクッと進行してピシャッと決ま、つたところで、安心した俊二が成仏して見事に映画を畳む。師匠・深町章の絶好調時にも匹敵する、抜群にスマートな一作。パッと見何てこともなく見えるのは、それこそがソー・スマートである所以だ。

 ところで、エクセス・大蔵・新東宝の三冠に話を戻すと、友松直之は2009年に、「闇のまにまに」は厳密にはピンク映画とはいへないにせよ、兎も角既に一度達成してゐる。現状、これが最新といふ意味でのラストに当たる。


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 「性戯の達人 女体壺さぐり」(1999~2000/製作:BAD FILM コネクション/配給:大蔵映画/監督・脚本:園子温/撮影:鈴木一博/編集:酒井正次/録音:シネキャビン/スチール:木下とくひろ/現像:東映化工/助監:西川裕・小原康宏/車両部:大久保ひろし/撮影助手:山本宙/衣装協力:山本凡子・チョコレートチワワたまき/出演:夢乃・鈴木敦子・桐生アゲハ・石川雄也・サンダー杉山・澤田由紀子・ささだるみ・谷内ひでき・松本健太郎・津留謙太郎・小林力・北村真吾・神崎優)。“車両部 大久保ひろし”の上にポカーンと載る及川信一は、音楽担当か?
 タイトル開巻、後ろでライト―あるんだ―が点灯すると、馬鹿デカいメガネを外した鈴木敦子のモノローグ「私が、ナミエ師匠のお世話になりだしてから一年が、経ちました」。何時も活気づく女流陶芸家・ナミエ(夢乃/a.k.a.桜居加奈)の工房では、ナミエが恍惚と轆轤(ろくろ)を回す傍ら、弟子の鈴木敦子(役名不肖)・ユウヤ(石川)・トモミ(桐生)が修行に励む。ナミエが十七歳の時に弟子入りし、現在は夫で病床に伏せるテツヤ(園)の訓へといふのが、「昼間は壺を、夜は肉を愛せ」。要は昼夜を問はず、肉壺を愛せば事済むのでは?といふ方向には話は膨らまない。テツヤが不能ゆゑ、「抱いて、そして心を鎮めて」。ストレート過ぎるモーションでオッ始まるナミエV.S.ユウヤ戦にアテられた鈴木敦子とトモミが、トッ捕まへたどう転んでも農夫には見えない二人連れ(演出部動員?)を相手にガンガン騎乗する序盤のエクストリームを経て、尺が中盤戦に差しかゝるや、「女流陶芸家フェスティバル」開催。グダグダの始終に忘れかねないものの、一時間を綺麗に三等分した序・中・終盤の三部構成は意外と手堅い。一旦はナミエの壺が集めた注目は、忽ち別の壺に移る。そこにシースルーを通り越した破廉恥衣装で飛び込んでは、最終的にはトップレスで踊り狂ふ神崎優が、その壺の作り主・ヒカル。ヒカルの殆ど白痴のやうな造形は、グルッと一周して清々しい。テツヤは病躯を押し、創作の秘密を探るべくヒカルの工房に潜入、今風にいふとスネークを敢行する。
 配役残り、澤田由紀子は、マイク片手に陶芸フェスをリポートする立ち位置のよく判らない人。谷内ひできから北村真吾までは、多分フェス審査員要員、女が一人含まれるのは衣装部?サンダー杉山はフェス審査員兼、ナミエを狙ふテツヤのお師匠。笹田留美の平仮名名義であるささだるみが、ナミエに弟子入りを志願しておいて、直ぐにヒカルに乗り換へる新人陶芸家のアミ。声がどうしても、相沢知美のアテレコに聞こえる。
 二年前に薔薇族「男痕 -THE MAN-」を一本置いて、今をときめく園子温ピンク唯一作。個人的には、園子温は確か「自殺サークル」(2002)しか観てゐない。目下一般映画とは殆ど完全に関係のない生活を送るにつき、今後とも観ることはまあなからう。JCVDやセガであるならば、本国ではDVDストレートの物件であつても自動的に出撃するが。そんなこんなで今作、園子温の名前に眼鏡に着色されることもなければ、その手法など知つたことではない節穴にとつては、殊更に何事か仕出かすでもなく、粒の小さなシンプルに至らない低予算裸映画に過ぎない。実は今作は一度故福岡オークラで観てゐるのだが、その際に唯一残つた印象が矢張り最大の大穴で、兎にも角にも屋内の画が絶望的に暗い。フェス会場の照明の欠如は暗いを通り越した最早闇で、恐らく物件的には同一の両工房に於いては、ヒカルの裸と、ナミエの表情が矢張り影に沈む。鈴木敦子以降、夢乃と石川雄也の後方でも随時点火するライトはどうした、壊れたのか?下手糞な芝居で無闇に前に出ては、濡れ場の恩恵にもチャッカリ与る園子温の我の強さは、かういふのが浮世で成功する人間の条件なのかと勘繰るに、微笑ましくなくもない。有象無象感が迸る自主映画臭が甚だしい、その他勢の貧しさも地味に響く。尤も、ヒカルのパイズリ壺にナミエはフェラ壺で対抗、ところが最終的にはアミがカッ浚つて行く馬鹿馬鹿しい流れ自体は、案外悪くない。いつそ脚本だけ関根和美にでも渡してゐれば、不必要な臭味の抜けた普通に温目のコメディとして、緩やかに成立し得たのではないかとも思へる。


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 「ピンクセーラー 私に火をつけて」(1993/BISTRO FILM Present/配給:大蔵映画/監督:小林悟/脚本:小林悟・ヤコブ プレスラー/翻訳:大蔵雅彦/プロデューサー:小林悟・ロン マルティネス/撮影:柳田友貴/照明:ジミー宮本/編集:フィルム・クラフト/マネージャー:タツヤ ヤマウチ/助監督:白土正一・ケイ カトウ/スチール:佐藤初太郎/メイク:斎藤秀子/録音:シネ キャビン・エリック ストラブル/現像:ウェスト ハリウッドLB・東映化学/出演:ナターシャ・ミオ・シェリーン・セントクレア・ジョリー スワンソン・叶順子・西野奈々美・アシュリー・早川誠)。助監督の白土正一といふのは、白都翔一の変名か?
 アルタ前開巻、ボサッとたむろする早川誠の画に、被さるモノローグ「これが、日本に居た頃の俺だ」、「女とイチャつくのもやめ、何処か外国でやり直さうと思ひアメリカにやつて来たんだ」。てな塩梅で渡米してのタイトル・イン、大蔵映画の出資比率が如何程なのかは映画を見てゐるだけでは当然判らないが、ほぼ全篇アメリカ・ロケを敢行した悪い冗談のやうな夢のピンク超大作である。
 それも兎も角、タイトル・インから一頻り、超有名なスクリーン・ミュージックを清々しく忠実にパクッてみせるのだが、どうしても何のメロディなのかが出て来ない。話を戻して、トシ(早川)は日本食レストラン「あさねぼう」で働きながら、一山当てるチャンスを待つ日々。一方、台詞は坂入正三が吹き替へる―女優部も全員誰かのアテレコ、劇中に英語は一切流れない―探偵のエド・トラヴィノ(アシュリー)に、深崎貿易の深崎一史(電話越しの声不明)から依頼が入る。サンディエゴ港に入る古い剣が、深崎貿易所有の品につき取り戻して欲しいといふのだ。エドが「あさねぼう」に貼り出したアシスタント募集の貼紙を、トシはすは好機だとその場で確保。空手の嗜みを偽るトシをエドがケロッとノック・アウトする、大体無駄な遣り取りを経て二人は行動を開始する。件のクルーザーは、何とクルーが全員女。一番デカい馬面のセリーナ(ミオかシェリーンかセントクレア)と、黒髪ショートの外人部一番の美人(シェリーンかセントクレアかミオ)。それに日本人コックのカナ(叶)に、カナを性的にも従へる河馬面の船長(ナターシャ)。陸に上がつた四人は、丘の上の屋敷に入る。エドとトシは女の園に、メイド服で女装した上で掃除婦を装ひ潜入。何といふか、まあ改めて後述する。
 配役残り、といふかそもそも残るのが問題なのだ。船長以下四人と、エドとトシ。となると計六人しか居ない筈の屋敷に、次から次に正体不明の新規女優部が追加投入される、掟破りの密室ミステリーか。まづはセリーナと共にトップレスで軽くプールサイド日に当たり、その後トシを垂涎させるシャワーの女(ジョリー スワンソン)。ニコラス・ケイジ似ではありつつ一応、外人部随一のプロポーションは誇る。続いて、カナが船長に無理強ひされる百合にアテられ、浴室に飛び込みオナニーする西野奈々美には、一体お前は誰なのかと本気で愕然とした。御役御免と西野奈々美退場、エド×セリーナ×トシの巴戦を経て、更にこちらは有色人種、驢馬面のキャンディ(セントクレアかミオかシェリーン)が多分ジョリー スワンソンを引きつれ登場。西野奈々美とキャンディは何者なのか、どうせ凶悪な疑問が解決されることはあるまいと諦めてゐたら、確かに本篇は通り過ぎて済ますものの、エンド・ロールがまさかの解答提示。それによると、何処から湧いて来たのかは知らないが、西野奈々美とキャンディも船員であるらしい。但しビリング順にセリーナ・キャンディ・カナ・エド・トシ、劇中判明する固有名詞は全てスルー、ナターシャは船長、ミオとシェリーンとセントクレアと、叶順子と西野奈々美は二括りでセーラー、アシュリーと早川誠は探偵としかクレジットされない。因みにジョリー スワンソンは、そのまんま“シャワーの女”。シンプルなやうでゐて、逆にシュールだ。
 そんなこんなでアメリカンな、大御大・小林悟の全十作中第五作。尤も、剣を巡る攻防戦―といふほどの展開は、勿論存在しない―は屋敷から半歩たりとて動かないゆゑ、スケール感が概ね皆無であるのは逆の意味で流石だ。ミサトに歌舞伎町の各国パブで掻き集めた面子で撮影するのと、殆ど変らない。空気感の違ひも、なくはないやうな気もせぬではないが。加へて、日本風にいふと大部屋の香り漂ふ外人部隊を大量投入した結果、個々のシークエンスと始終の推移だけでなく、最後の砦たる濡れ場すらもが大味なものになつてしまつた印象は拭ひ難い。個人的に白人属性を全く持ち合はせないからなのかも知れないが、結局最も訴求力の高い一戦は、締めの藪から棒に大時代的な叶順子と早川誠によるものではなからうか。馬面のセリーナと、河馬面の船長の裸は食傷気味に尺を貪る反面、肝心の黒髪ショートとジョリー スワンソンが絡みらしい絡みも見せない始末。とりあへず程度の外国の風景と、確かにてんこ盛りはてんこ盛りな外人の裸。一本の映画として面白いのかどうかはこの際兎も角、最早風情を味はふべきなのか。あれだ、松茸御飯のやうな一作、さういふことにでもしてしまへ、何だそれ。サンディエゴ・ロケの成果が、よもやの松茸御飯。これが、これぞピンク・ゴッド小林悟の仕事だ。自棄を起こしてゐる訳では、別にない。

 付記< jmdbをつらつら眺めてゐたところ、どうやら六月公開の今作と、翌月公開の薔薇族「サンタモニカの白い薔薇 とまどひ」に、更にお盆明け公開の「U.S.A.乱交体験」。広い太平洋を渡るだけのことはあり、この時三本撮りしてゐるやうだ。三本撮りて、口でいふのは簡単だけど。


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 「真夜中の桃色アパート」(1990/企画・製作:NTP/配給:大蔵映画/監督:西川卓/脚本:北町一平/撮影:小林啓次/照明:N・K・Fグループ/編集:酒井正次/助監督:夏季忍/撮影助手:福島香/音楽:ド・ビンボ/スチール:津田一郎/録音:銀座サウンド/効果:時田滋/現像:東映化学/出演:橋本杏子・秋本ちえみ・水月円・牧村耕治・朝田淳史・山科薫・久須美欽一)。助監督の夏季忍は、久須美欽一の変名。
 タイトル開巻、桃色には“ピンク”と読み仮名がふられる。「パチンコドラゴン」の表に、看板を手に立つこれは七福神のどちら様なのか?笑ひ男のマスクを被つた男。公園で休憩する男がマスクを取ると、中から出て来たのは牧村耕治。アパート「ハイツ苗代」の外景挿んで、201号室の住人・堀田夫妻(秋本ちえみと山科薫)の夫婦生活。秋本ちえみの裸まで一分半、ひとまづ全く順当な開巻ではある。隣の202号室では、山田隆次(牧村)が今月の給料を確認する。久須美欽一が、言葉の不自由な隆次を施設から引き受けた、宣伝社社長。隆次は、久須美欽一からピエロになる打診を受けてゐた。203号室に新しく入つた大沢杏子(橋本)が、隆次の部屋に手土産持参で挨拶に来る。アーウー唸ることしか出来ない隆次を気味悪がる杏子に対し、秋本ちえみは「隣はコレよ」と頭の横で人指差しをクルクル回し、パッと手の平を開く。正確には、隆次は発話がまゝならないだけで、相手のいふことはキチンと理解してゐるのだが。ところで、スケジュールが合はなかつたのか杏子の声はアテレコ、主は仲山みゆき?
 朝田淳史は、接触を隆次が目撃する杏子の不倫相手。難病の息子・リョウヘイ(名前が会話中に上るのみ)を抱へ、自身の設計事務所は傾く。関係を清算する腹の杏子に対し、一貫して身勝手に杏子との人生の再起を願ふ。百歩譲つてカミさんは兎も角、倅も放り出すつもりか。脱がない水月円は、最終的には杏子が偶々不在の203号室にも乗り込む、朝田淳史の妻・ヨシコ。
 西川卓1990年全五作中第三作、「SEXドリーム 24時」(主演:秋本ちえみ)の前作に当たる。裸映画としての体裁は、序盤・中盤・終盤の都合三度、適宜堀田夫妻が綺麗に整へる。その間を杏子の不倫騒動を軸に、隆次の不器用を通り越した不自由な純愛物語がモッサリモッサリと進行して行く構成。終にヨシコが衝動的に出刃を抜き、杏子と朝田淳史が不自然に棒立ちする狭間に、隆次が無理から飛び込んで来る粗雑なクライマックス。そこから先のフィニッシュを、堀田夫妻の第三戦で堂々と切り抜けてみせる作劇には逆の意味で度肝を抜かれた。ハイツ苗代を出て行つた以外には、杏子と、死にはしなかつたらしい隆次の去就は一切語られない。あの二人はどうなつたのかと触れた辺りでは一旦漂ひかけたセンチメントも、結局は雲散霧消。ランダムなハイライトを織り込むくらゐなら、二人にせよ一人と一人にせよ、杏子と隆次のその後を描けばいゝのにといふ疑問は拭ひ難い。残したつもりの余韻が、詰めの甘さに直結したやうにしか思へない一作。現状見られるのはあと一本なのだが、正直西川卓に未だ当たりなし。


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 「近所のエロ妻 下品な性欲」(1996『激淫! スーパーの不倫妻』の2009年旧作改題版/企画・製作:フィルム・ハウス/提供:Xces Film/監督:坂本太/脚本:佐々木乃武良/プロデューサー:伍代俊介/撮影:創優和/照明:斉藤久晃/編集:フィルム・クラフト 金子尚樹/助監督:周富芳/制作担当:真弓学/監督助手:加藤義一/撮影助手:井深武石/照明助手:岩井一記/ヘア・メイク:大塚春江/スチール:本田あきら/音楽:花田音楽工房/録音:ニューメグロスタジオ/効果:協立音響/現像:東映化学/出演:野口由香・平賀勘一・麹町寅・小川真実・杉原みさを・久須美欽一)。出演者中、麹町寅杉原みさをが、ポスターには羽田勝博と杉原みさお。ところでこの時期の中点を挿むフィルム・ハウス表記は、珍しい気がする。
 下町の個人スーパー「鈴木スーパー」、商品を陳列する、亡き両親から店を継いだ鈴木京子(野口)を、婿養子の放蕩夫・靖夫(平賀)が倉庫に連れ込む。すると無人の店内に、黒のドレスと肘上までの手袋にサングラスをキメた、その扮装で仕事中なのかディベロッパーの加賀万里子(小川)がある意味華麗に見参。一本五十円の胡瓜を手に取ると、胸の谷間に忍ばせる。夫婦生活と、万里子の万引きが併走。万里子が店を出、一戦も終了したところでタイトル・イン。空いた道をスカーッと走る高級車、ハンドルを握る部下の安田大作(麹町)が、後部座席で脱ぎ始め盗んだ品々でオナニーを始める、万里子に苦言を呈する。万引きとそれに付随する欲情とが、万里子の悪癖だつた。大概なギミックではありつつ、敵が小川真実だと不思議としつくり来る量産型娯楽映画特有の安定性。納品した商品の支払にも窮する京子が、亡父とは昵懇の仲であつたとする町内会長・稲村大造(久須美)に借金を頼み込む一方、「相変らずチンケな町ね、アハッ☆」。定番の台詞を自分流にアレンジした上で、京子の姉・奈々子(杉原)登場。義父との関係を理由に二度目の離婚をした奈々子は、父親の死とともにスーパーを継ぐことを忌避し町を捨てたものの、元々は、実は奈々子と靖夫が付き合つてゐた。
 昨年、文字通りの急死が哀しみと驚きとを呼んだ、坂本太1996年全四作中最終作。今回今作を観たのは小倉、同じ週に新版が八幡に来てゐた「NEXT」ではないが、人は死んでも、映画は残る。親が遺した個人商店を孤軍奮闘健気に切り盛りするヒロインを取り巻くのは、勤労意欲を清々しく欠いたグータラ夫とお気楽で極楽な出戻り姉。地味に好色な町内会長に、お約束の地上げ屋。細腕繁盛ピンクとしての布陣は、全く以て磐石。加へて兎にも角にも特筆すべきは、エクセスライクが珍しく奇跡を生んだ主演女優。野口由香がストレートな男顔スレンダー美人で、強ひて難点をあげつらふとするならば、あまりに健康的かつ快活で、苦労感が馴染まない程度。展開的にも瀬戸際を豪快な力技で神回避する、ところまでは綺麗に順当であつた、のだけれど。狙ひ過ぎといふよりは寧ろ頓珍漢な卓袱台返しにしか思へない結末には、逆の意味で驚かされた。裸映画としての充実と引き換へに、劇映画を放棄してしまつた印象すら漂ふ、明らかに詰めに疑問を残す一作ではある。
 まさかの着地点< 店は靖夫と奈々子に万里子で維持、京子は安田パイセンとヤリ三昧


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 「ねつとり秘書 吸はれる快感」(2012/製作:オフィス吉行/提供:オーピー映画/脚本・監督:吉行由実/撮影:下元哲/編集:酒井正次/助監督:江尻大/撮影助手:他一名、榎本靖/監督助手:水元大志/出演:水希杏・さくら智弓・上加あむ・荒木太郎・樹カズ・野村貴浩・吉行由実・井尻鯛)。出演者中、井尻鯛は本篇クレジットのみ。
 タイトル開巻、アイスキャンディーを舐め舐め街を闊歩する水希杏に、リーマン二人連れ(井尻鯛=江尻大と、定石からいふと水元大志か)が見惚れる。フェラチオ自慢のデリヘル嬢・藤川和子(水希)を、その技に惚れ込んだ住宅メーカー「光ハウジング」社長の峯尾(荒木)が、何と社長秘書に招く。峯尾の妻で「光ハウジング」会長の貴子(吉行)は当然二人の仲を訝しみ、子飼ひの営業社員・塩崎剛(野村)に探らせる一方、峯尾の懐刀・山本(樹)も迎撃すべく起動する。峯尾の居ぬ間に、和子に十八番を一節吹かれた塩崎は忽ち意気投合。元カノ・麻子(上加)を山本に寝取られて以来意気消沈してゐた塩崎は、自信を取り戻す。
 さくら智弓は、関係が貴子に発覚し会社を放逐された、峯尾の前秘書・島谷直美。騎乗位で激しく腰を使ふカットでは、現代ピンクにしては結構珍しく、ボカシ越しながら派手に前貼りの存在を見せる。二番手・三番手は、仲良く濡れ場要員に止(とど)まる。実は机の下に潜り込んだ和子に吸はれる、不自然極まりない状況下で塩崎が住宅プランを精力的に提案する、顧客役は不明。
 軟弱な観客を惰弱に慰撫する第一作衝撃の第二作と、2012年は好調を維持した吉行由実の、最終第三作。荒木太郎が軽妙に好演する好色社長が招聘した尺八秘書を軸に、社長の妻で創業者一族の会長派と社長派がせめぎ合ふ中、翻弄される若き二人。清々しく手堅い枠組の中、貴子に社長の椅子に座らされた塩崎が、尻子玉を抜かれた無職の癖に俄にバリバリ再起動するラストには、何を箍を外してゐるのかと一旦呆れかけたが、地味に整へられた伏線も踏まへた上での、ファンタジックなオチには全力で心洗はれた。すつたもんだあつた末に温かなハッピー・エンドに辿り着く、綺麗な綺麗な娯楽映画。惜しむらくは、ポスターでは披露するメガネ武装を一貫して解除する主演女優が、如何せん華も前に出る圧力も欠きパッとしない点。ヒロインの馬力不足におとなしく連動して、始終が微妙に覚束ないきらひは否み難い。イフの話をすると、ショボい入墨を入れる前の薫桜子が和子役であつたならば。里帰り前の天使であれば、なほ超絶、歴史的な名作も狙へる。となると、塩崎役にも不満が残る。敵役が兄貴分の樹カズである以上、理想中の理想としては、千葉尚之ではないのかと思はれるのだが。詮ない繰言ばかりで面目ない。

 心許ない本篇をしばしば凌駕する、妙に意欲的な劇伴に注目ならぬ注聞してゐたものだが、音楽も選曲もクレジットは見当たらず。和子と出会ひ塩崎が一皮剥ける件で鳴る、堂々としたパワー・ポップには飛び込んで来た予想外の音に吃驚した。
 ドリーミングなオチ< 塩崎再起動の秘密は、机の中に潜り込んだ和子のシャクハチンヌ


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 「猥褻事件簿 舌ざはりの女」(1995/制作:シネ・キャビン/配給:大蔵映画/脚本・監督:出馬康成/撮影:としおかたかお/照明:安部力/編集:田中修/音楽:黒木和雄/録音:田村亥次/撮影助手:鍋島淳裕・宮川幸三/照明助手:小林昌宏/ダビンク:シネ・キャビン/メイク:榊美奈子/助監督:村上宗義・登根嘉昭/タイトル:ハセガワ・プロ/現像:東映化学/リレコ:港リレコ/フィルム:AGFA/機材協力:映像サービス・ブライト/協力:墨田区の人々・森夫妻・中央シャッター・押上ベカ・市村組/出演:菊地奈央、港雄一、冴島奈緒、久保新二、M.金子、ブルック・ミールズ、野上正義、辻斬かりん、浅野潤一郎、神戸顕一、樹かず、守利みちえ、葛飾刻斎、花子ママ、藤田由美、磯崎千里、山科薫、森田朱里、中田晋代/キャスティング協力:グレート兄弟社)。オープニングの出演者クレジットは、菊地奈央、港雄一、冴島奈緒、久保新二、ブルック・ミールズ、M.金子、葛飾刻斎のみ。グレート兄弟社といふのは、阿佐ヶ谷兄弟舎と何か関係があるのか?阿佐ヶ谷兄弟舎にせよ、実体は全く知らないが。
 大槻ケンヂと佐々木恭輔を足して二で割つたやうな、ビリング推定で多分M.金子が、看板屋の表でガラクタの中からピンク色のカメラを見付け出す。動くか動かぬか怪しいカメラは生きてゐて、顔の方を向いたカメラが不意にシャッターを切り驚いたところでタイトル・イン。墨田の「藤吉看板店」、社長の藤吉清吉(港)を、旧知の刑事・葛西か笠井か香西(葛飾)が訪ねる。葛西曰く清吉は“日本一の一匹狼のスリ”であつたが、病に倒れた妻の死に目には、葛西に逮捕された清吉は会へなかつた。弟子のミジンコ(多分M.金子)を連れ、清吉は馴染みのスナック「ボン」―ぼんかBON辺りかも―に飲みに行く。色華昇子に酷似したブルック・ミールズが、ママのミツコ。清吉の右隣カウンター手前に見切れる酒場で本を読む男が山科薫で、ミジンコに因縁をつける樹かずは、清吉に絡む神戸顕一の子分。この二人がお揃ひの服を着てゐるのだが、よもや神戸軍団のユニフォームだとかいふまいな。帰りの夜道、神戸顕一の襲撃を受けながらも帰還した清吉に、五年前に家出したきりの一人娘・久美子(菊地)から電話が入る。何と結婚するとのことで、お相手も交へホテルのレストランで待ち合はせる。
 配役残り久保新二は、ミツコの元夫・大我。元芸人で、つい最近までは屋形船で天婦羅を揚げてゐた。辻斬かりんは、一人で清吉と大我の尺八を吹く風俗嬢。港雄一に久保新二と来ると、当然この人も黙つちやゐない野上正義は、喧しい鼻炎持ちのミジンコ父親で、「達磨理髪店」の大将・海老蔵、だるまかダルマかも。久美子との待ち合はせは、土曜の七時にスターホテルのレストラン「サベージュ」にて。達磨理髪店で男前にして貰ひ、ミツコには大我の背広を借りめかし込んで出撃した清吉は、見るからに男の方が悪い様子で諍ふカップル(両方とも不明)と遭遇。道を尋ねるふりをして、男の尻ポケットから財布を掏る。ここの、男を見咎めた清吉が尻の財布をロック・オンするのと、神業で財布を抜き取るカットが絶品。話を戻して、冴島奈緒大先生が清吉を現行犯逮捕する、べらんめえな女刑事・キリコ。名が体を表したのか、無闇矢鱈とキレ倒す。そして浅野潤一郎が久美子と結婚する、下北沢でケーキ屋を営むアイダマサキ。
 DMMのピンク映画chに新着として着弾したのが、目に留まつた出馬康成ピンク映画最終第四作。尤も、出馬康成といふ名前に心当たりは全くなく、ザッと洗つてみたところ、一旦自主映画でデビュー後ピンク映画の世界に入り、目下は沖縄御当地映画で名を馳せてゐる御仁のやうである。因みにjmdbを鵜呑みにすると全四作中後ろ三作が、シネ・キャビン制作。シネ・キャビンが映画を作つてゐたのか、といふのが、偽らざる眩い驚きでもある。ところで映画本体はといふと、一言で片付ければ大概毛色の変つたある意味問題作。まづは最初の絡みが清吉V.S.ミツコであること自体はひとまづいいとして、尺の四分の一弱を消化した十四分に至つて漸く、といふのは実に遅い、遅過ぎる。加へて、辻斬かりんの孤軍奮闘もあるにせよ三本柱の絡みはそれぞれ一度きりづつで、挙句に、久美子とアイダの婚前交渉は正体不明の演出により不用意な闇の中に沈み、菊地奈央の裸は結構見えない。大先生は一応、ミジンコ相手にガンガン腰を振る。更に、不自然に危なかしいロケーションで清吉が母娘(母親役も不明)のスナップを撮る回想もあるものの、「サベージュ」まで一切顔を見せない主演女優が初めて登場らしい登場をするのが、何と三十四分半。あの大蔵が相当に好き放題を許した、不可解な風情だけは透けて窺へるのではなく如実に看て取れる。葛西が木に接ぎかけた竹を、清吉が衝撃の力技で救済・固定したかに思へたのも束の間、大先生はガッチャガチャに卓袱台を引つ繰り返す。清吉と久美子の和解は秋祭りの風情を借り損なひ粗雑に片付けられ、ミツコのエドガー・ケイシー信奉と、知能には問題のあるミジンコの超能力!スピリチュアルな方面に予想外の結実を果たすのかと期待させたギミックも、最終的には清々しく放置。ついでに、不必要な不安感ばかり惹起する劇伴は、始終居心地の悪さのみを醸し出し続ける。先に挙げた清吉が男の尻から財布を掏る件のほかにも、大我に芸術家気取りの看板屋と罵られた清吉が血相を変へ、港雄一×久保新二の両雄が激突する場面。所々ではカットがキレつつ、全体的には漫然と生煮える一作。ノルマごなしでしかない濡れ場と、作家主義だか何だか知らないが、手前勝手なだけで面白くは決してない噴飯作劇。その癖、妙に豪華な布陣。となると要はといふか大雑把には、面子の毛色の違ふ国映作といふ印象が、最も強い。


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 「踊り子 ワイセツ隠舞」(昭和62/企画・製作:N・T・P/配給:大蔵映画/監督:西川卓/脚本:北町一平/撮影:小林啓次/照明:菊家酔扇/編集:酒井正次/効果:サウンド・ボックス/助監督:元屋吾郎/演出助手:犬神明/撮影助手:香川菊千代/照明助手:門前倒/音楽:ド・ビンボ/スチール:津田一郎/現像:東映化学/録音:銀座サウンド/出演:秋本ちえみ・炎上寺由羅・牧村耕次・清水大敬・久須美欽一・水月円)。各部セカンドの偽名揃ひぶりに草が生える。犬神明て、リアルか。
 電車が左から右に画面を横切り、少し左にパンしてタイトル・イン。大宮の街景を舐めた上で、まさかの前略おふくろ様開巻。長い便利屋稼業から足を洗ひ、夢と希望に溢れ花の芸能界で奮闘してゐる旨を健次(牧村)は母(声の主不明)への手紙にしたゝめつつ、その実働いてゐるのはストリップ小屋「SHOW-UP大宮劇場」であつたりもする。特に物語らしい物語があるでもないのでいきなり配役に突入すると、最初に舞台を披露する水月円が、二枚看板のミスダイアナ。客席に見切れる久須美欽一は、ダイアナのマネージャー、世間一般の用語でいふとヒモの阿佐田か麻田か浅田か朝田。観客要員は、演出部全員と撮影部セカンドを総動員したとしても、若干頭数が足りない、小屋調達も考へられるのか。如何にも変名臭いのはもしかすると本職かも、炎上寺由羅はもう一人の看板ストリッパー・マリリンユキ。ユキと楽屋でプレゼントを遣り取りする、男は不明。秋本ちえみは新人のステファニー奈々、マネージャーは未だ居ない。そしてファースト・カットはまんま寅さんのコスプレのやうな扮装の清水大敬が、マリリンのマネージャー・伊沢か井沢か伊澤か井澤。伊沢が吝嗇なマリリンから奈々に乗り換へての大阪行きを画策する中、奈々と健次は徐々に距離を近づける。
 西川卓昭和62年全七作中第五作、DMMのピンク映画chで見られる五本―jmdbには三十七作記載がある―の中では、最も古い。夢と希望を胸にストリップ小屋で働く青年を主人公に、主人公と恋に落ちる新人踊り子。先輩ダンサー二人と、それぞれのマネージャー。デフォルト通りの女優・男優各三人づつの体制で、布陣はひとまづ十全。闊達に日々を励む健次の青春に、ストリッパーの華やかさと寂しさ、そしてヒモの惨めたらしい蠢動と、始終も概ね正攻法に徹する。といふか、伊沢と阿佐田がベンベンを一節唸る出し抜けな件に、その癖妙に入念に尺も割いてみせるほかは、後述する一点を除けばこれといつて仕出かすこともない。とはいへ、元々そのつもりがないといふのかも知れないが、どうも西川卓といふ人は統一的な起承転結を編む能力に欠くらしく、展開の骨組みがどうにも覚束ない中では、オーソドックスであつてもおかしくはない一幕一幕が、如何せん類型的にしか見えないきらひは禁じ難い。挙句に締めの濡れ場前の見せ場で、辛抱しきらなくなつたのか終に仕出かしてしまふ。終演後の舞台で、伊沢が奈々を犯す。そこに健次が飛び込んで来たまではいいものの、呆気なく撃退。結局ダイアナ姐さんが助けに来る一頻りの間、ボコられた健次がフレーム内にすら見切れず暫し退場してゐるのは大概間抜けだ、何処に消えたのかと呆れた。二年後の「広子の本番 ベッドシーン」(主演:橋本杏子・牧村耕治)に於いてぬけぬけと自ら代表作として挙げる割には、別に漫然とした一作ではある。

 ところで、問題といふ訳でもないがひとつ注目は、画面の小ささに屈し確証を得たものではないのだが、健次が暮らす安アパート「増戸荘」の郵便受けが抜かれるカットから窺ふに、どうも健次の苗字が澤田臭い点。澤田健次・・・サワダケンジ・・・沢田研二、

 ジュリー大好き

 といふのは全人類に共通する普遍的な真実ゆゑ、改めて触れるまでもあるまい、ここは一旦通り過ぎる。健次の前職が便利屋であることと、美奈に語る将来の夢が、舞台監督や演出家。これはもしかすると、「便利屋ケンちやん」(昭和59・60)と今作と「広子の本番 ベッドシーン」は、健次の人生を順々に追つた連作なのであらうか。因みに「女の復讐」を監督するサワダを沢田とする表記は、ピンク映画chのストーリー紹介に従つた。


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 「痴漢電車 引き剥がせ」(1993『新痴漢電車 指師で開きます!』の2013年旧作改題版/企画:セメントマッチ/制作:オフィスバロウズ/提供:Xces Film/監督:池島ゆたか/脚本:切通理作・五代響子/撮影:稲吉雅志/照明:小川満/編集:酒井正次/スチール:津田一郎/助監督:高田宝重/監督助手:梶野考・広瀬寛巳/撮影助手:小山田勝治/照明助手:江口和人/録音:シネキャビン/現像:東映化学/出演:木戸原留美・しのざきさとみ・井上あんり・杉原みさお・扇まや・杉本まこと・山本竜二・神戸顕一・池島ゆたか・山ノ手ぐり子・的場研磨・林田義行・太田始・真央元・佐々木恭輔、他・小林一三)。出演者中、山ノ手ぐり子から佐々木恭輔、他までは本篇クレジットのみ。
 電車を抜いてタイトル・イン、女子大生の笹井奈津子(木戸原)が、山本竜二の電車痴漢に苦悶する。電車カットを二つ挿んで再び車中、異常に本格的に出来てゐる、架空の特撮番組「ウルトラマイティ」の放映リストに目を落とす今村文人(小林一三=樹かず/現:樹カズ)が、女A(井上)に痴漢する。奈津子とは対照的に、井上あんりは満更でもない御様子。我々は痴漢するに際しても、二枚目と差別されなければならないのか。今村が作成した「ウルトラマイティ」のリストを、依頼した編集者の田中(神戸)が褒める。今村と奈津子は交際関係にあり、立ち居地が絶妙に不鮮明な今村は公務員試験に合格し、奈津子は明確に結婚を見据ゑてゐた。とはいへ、今村は田中から勧められたライターへの道に心が揺らぎ、そもそも、交際も五年になるといふのに今村が手を出して来ないゆゑ、未だ処女の奈津子は劇中終始白衣で通す先輩女史(山ノ手)に相談する。
 配役残り、裸映画に於いて裸も映画も支配するしのざきさとみは、ベランダで致してゐるところを奈津子に目撃される、今村の隣人・京子。池島ゆたかが、そのお相手・池田康男、旦那なのかそれ以外なのかは語られない。扇まやは、今村が痴漢する女B。登場順からすると、乗客部隊を除けばこの人まで山ノ手ぐり子(=五代響子/現:五代暁子)よりも先の杉本まことは、福祉関係の学部に通ふ奈津子がボランティアでお世話する、足を骨折した入院患者・加藤。どちらでオトすのか注目した奈津子と加藤の一戦は、奈津子の―電―車中の夢オチ。山ノ手センパイの示唆から飛び込んで来るタイミングが超絶に完璧な杉原みさおは、今村が痴漢する女C。何気に、今村はディスコミュニケーションが服を着たオタクの癖に彼女はゐるは痴漢で狙ふ女はアシッドな女ばかりだと、高いのか低いのかよく判らない対異性スペックを誇る。的場研磨以降佐々木恭輔、他までは、男女込み込みで潤沢な乗客要員、但し太田始しか確認出来なかつた。見るからに変名臭的場研磨が、誰あるいは何者を指すのかは不明。
 池島ゆたか1993年第四作―薔薇族入れると第五作―は、今村のモラトリアムを元凶に、袋小路に陥つた若き二人をイイ感じに捌けた大人達が時にさりげなく時に無造作に時に力技でサポートする、案外綺麗な青春映画。共同脚本に切通理作を迎へたのが当然功を奏したのであらう、今村のオタク造形の充実にも、目を見張るものがある。唯一ないし最大の疑問は、純然たる枝葉の山竜と奈津子は頑なに回避する今村の性欲の―しかも双方向になることは拒む―発散として以外には、電車痴漢が始終の帰結に一切関らない点。確かにいい映画なんだけど、痴漢電車である必要は別にないよな。と、呆れかけるのは早とちり。成長し安定した今村の姿を、強引に痴漢電車に捻じ込むラストには感心しかけたが、それでもなほ早とちり。今村にオタク文化への未練を滲ませる、人目も憚らず少女マンガを読み耽るデブに満を持して高田宝重を投入するオーラスには、杉原みさお登場時を上回る鮮やかなインパクトに度肝を抜かれた。骨組みのしつかりした物語を、杉原みさおと高田宝重、二人の飛び道具が更に頑丈に補強する痴漢電車の佳品。贅沢をいふと、ぎこちない美少女の木戸原留美がもう少し手放しで可愛ければ、御当人含めもう少し人々の記憶なり歴史にも残り得たのかも知れないのに。

 付記< 後々判明した的場研磨の正体は、高田宝重の変名


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 「悩殺セールス 癒しのエロ下着」(2012/製作:ナベシネマ/提供:オーピー映画/監督:渡邊元嗣/脚本:山崎浩治/撮影照明:飯岡聖英/編集:酒井正次/助監督:永井卓爾/監督助手:広瀬寛巳・江尻大/撮影助手:宇野寛之・宮原かおり/編集助手:鷹野朋子/効果:梅沢身知子/協賛:ウィズコレクション/タイミング:安斎公一/出演:大槻ひびき・杉菜づくし・堀本能礼・野村貴浩・津田篤・久保田泰也・西藤尚・山口真里)。
 下着メーカー「オーピー下着」の営業ウーマン・内田可南子(大槻)が自慰と本戦を巧みに併走させる淫夢から目覚めると、部屋には元カレの日高修二(久保田)が忍び込み、野菜主体の朝御飯を勝手に作つてゐた。軽くすつたもんだして、可南子が脩二を追ひ出したところでタイトル・イン。主演女優の裸含め、全く以て順当な開巻、と行きたいところではあつたのだが。
 可南子が出社するも、その日は大切な人と過ごす為に制定された休日「結“ゆい”の日」で、社内には五年前に妻に先立たれた社長の大村肇(堀本)と、会社が恋人と公言するお局気味の社長秘書・奥田志津枝(山口)の計三人のみ。セフレの頭数には事欠かないが恋人は居ない可南子は、とりあへず外回りに出る。手帳に顔写真入りでリストした―その中に紛れ込んでゐる広瀬寛巳だけは確認出来た―セフレの皆さんがことごとく捕まらない中、可南子は下着専門店「JACK POT」に、バツイチの店長・寺岡達也(野村)を訪ねる。人気のない駐車場で一戦交へ、「結の日」を寺岡と過ごす方向に話が纏まりかけたタイミングで、寺岡に元妻から電話が入る。一人娘・エリカ(声すら聞かせず)の希望で親子三人が集まることになつた寺岡は、ヤるだけヤッておいて可南子はその場に放置し姿を消す。さうかうしつつ、可南子の出先出先に、脩二が野菜主体のお弁当だおやつだと神出鬼没に現れる。元々脩二も可南子にとつては営業相手で、最初に会つた―この時に、可南子は何故一般職の制服なのか―のは「結の日」が制定されたのと同じ二年前。その後脩二は仕事を辞めた上で可南子に求婚するも、見事に断られる。一旦失踪した脩二は一年前可南子の周囲に呼ばれてもゐないのに舞ひ戻り、それからといふもの簡単にいふと付き纏つてゐた。
 配役残り、大槻ひびきとパッと見が被るのが地味に厳しい杉菜づくしは、ヤクザに追はれてゐると脩二に助けを求める、高校の同級生・小西陽菜。バイク事故で重傷を負つた足が完治してゐない津田篤は、そんな訳でのオッカナイお兄さん・工藤洋、この人も脩二の同級生。声しか聞かせない西藤尚は、ニュースを読む女性アナウンサー。堀本能礼にも話を戻すと、荒木組込みで地味に息が長い西藤尚はナベシネマ2012年第一作「いんび巫女 快感エロ修行」(主演:眞木あずさ)以来三作ぶり、一方堀本能礼は、2010年第四作「いひなり未亡人 後ろ狂ひ」(主演:星優乃)以来二年ぶり。今回堀本能礼が、一切のギミックを廃して意外としつとりとした正攻法を披露。山口真里との必ずしも濡れ場に限定されない絡みは、作中唯一無傷で光る。
 「おねだり狂艶 色情いうれい」をしつこく飛ばしてゐる点は三週後の小倉に来るのでここは等閑視するとして、封切りが十月初頭といふと少し早めの渡邊元嗣2012年最終第四作。人と人とが結び結ばれる、最もプリミティブなエモーションを軸に据ゑた、一撃必殺エクストリームな感動作。を企図したにさうゐない、狙ひはひとまづ窺へる。「結の日」のディテールを絶妙に詰めずに放置したまま話を進める、諸刃の剣スレスレの作劇も酌める。終に明かされるセフレ帳の絶望的な真実は素面の映画的衝撃に溢れ、可南子と出会つた当時の脩二と同様に、三番手の造形を意図的に伏せられた核心に収斂させる論理は、ピンク映画的に実に秀逸。但し、如何せん、どうにもかうにも。冒頭から木端微塵に映画を詰んでしまふのは、軽くて薄くて見苦しく腹立たしいことこの上―下だ―ない、空つぽでチャラい久保田泰也の空騒ぎならぬチャラ騒ぎ。げんなりとうんざりついでに筆を荒げると、ダメダメダメ、全然ダメ、こんなものが形にも話にもなるか。薮蛇極まりないことは百兆も承知ながら、このザマでは「セカンドバージン」墜とすなんて絶対無理、広島が五割維持してシーズンを終へるのより無理。それ、本当に絶対無理だな。昨今の潮流なのか、周防ゆきこを髣髴とさせる大槻ひびきの声優芝居も、小生の如き保守的なオジサンには些か辛い。期待がデカかつただけに、落胆を通り越した激しい怒りの収まらぬ一作。今作を観たことは、忘れることにする。

 大オチの前に中盤、西藤尚がもう一つ読むニュースが、中東で停戦協定が締結され、地球上から全ての戦争と紛争が消滅したといふもの・・・・

 ジョン・レノンか。

 その寝言じみた夢想の牧歌性ないしは愚直さを、若い頃は馬鹿だつたのでバカにしてゐたが、今は違ふ。決して治つた訳ではなく、馬鹿は更に拗らせたけれど、今は違ふ。どんなに寝言じみた夢想であれ底の抜けた戯言であれ、ジョン・レノンは本気で信じてゐた。人間を分け隔てる様々な障壁なり悲劇の全て解消された世界と、音楽によるその世界の到来とを、ジョン・レノンは本域の本気で信じてゐた。田恆存は大意でかう述べた、どんなに馬鹿げた夢想や戯言であつたとて、吐いた当人が本気で信じてゐない思想に、どうして他人がついて来るものか。だから本域の大本気の「イマジン」は人々の心を捉へ、時代も超えた、今はさう思ふ。渡邊元嗣がジョン・レノンと同じレベルの、紙一重を本気の力で突破した偉大なる馬鹿かどうかは兎も角、時にメッセージといふ奴は、バカげてゐるくらゐでちやうどいい。潤ひも救ひも美しさもない今既にある現し世を撃つには、時に映画はバカげてゐるくらゐでちやうどいい。愚直を恐れぬ覚悟の持ち主であらうとは、一ファンとして信じてゐる。
 ナベ的な始終の落とし処< 日本が秘密裏に建造した宇宙戦艦ムサシが波動ビームで彗星を消滅、地球滅亡は回避


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 「広子の本番 ベッドシーン」(1989/企画:夢眠舎/配給:大蔵映画/監督:西川卓/脚本:北町一平/製作:夏季忍/撮影:小林啓次/照明:N・K・Fグループ/編集:酒井正次/音楽:ド・ビンボ/助監督:高島平/撮影助手:福島香/監督助手:南砂町子/スチール:津田一郎/録音:銀座サウンド/効果:サウンド・ボックス/現像:東映化工/出演:橋本杏子・牧村耕治・一の瀬まみ・芳村さおり・久須美欽一・朝田淳史・工藤正人)。製作の夏季忍は、久須美欽一の変名。
 タイトルからイン、ドラマチックな劇伴と都会の風景に被せられる、牧村耕治のナレーション。“都会の片隅によく見られる、創作好きな若者達”、“この映画はそんな君達に贈ります”。今風にいへば、いはゆるフラグを立てたといふ奴か。賞金二百万のアマチュア・グランプリを目指して、自主映画「女の復讐」の撮影に入るグループ。面々は監督の沢田(牧村)以下、沢田と同様、プロの女優志願の広子(橋本)と、相手役の野村(工藤)。最後まで固有名詞が呼称されない、メイク兼助監督?一部出演もする一の瀬まみと、カメラを回す大原(朝田)。何はともあれクランク・イン、野村がどうにも固いまま初日は終了。沢田宅にて、沢田とは同輩らしき大原が酒盛り。予定されるベッド・シーンの撮影に、初めてのことだと不安を滲ませる大原に対し、沢田が成人映画見習へよと向けた流れに乗り、まさかのピンク映画談義。巨匠として向井寛・梅沢薫・小林悟―大御大の名を口にする際の、牧村耕治の目の芝居が絶品―の名前を挙げ、大原が好きな渡辺護の本数が減つたことの要因は新しい監督が出て来たからであるとして、サトウトシキ(当時は佐藤俊喜)・上野(俊哉で間違ひあるまい/デビュー前)にも触れる。挙句に、西川組で勉強して来たらどうだと自身も作中に登場させる大した度胸は御愛嬌の範疇にしても、あの組は酒ばつか飲んでアル中揃ひらしいといふ大原当人の、呂律が回つてゐない―朝田淳史の口跡がへべれけになる箇所は、以降も散見される―のはどうしたものか。兎も角、大原のアパートで広子と野村のベッド・シーン撮影開始。そこにヒョッコリ顔を出す芳村さおりは、大原の―多分―彼女・ヨシエ、映画作りには参加しない。脱ぐとさうでもないのだが、首から上はギャグマンガ的に丸々と福々しい。そんな面相に応じてか、猛烈に臭い屁を放つ下らないことこの上ないギミックを都合二度与へられる。好意的に評価すれば、絡み要員兼コミック・リリーフとでもいつたところか。テストを経て、一旦本番。実はここまで僅かなお色気のサービスもなく、二十分前にして初裸。大蔵にしては大したストイックぶりであるといふよりは、単に西川卓のペース配分を問ふのが正解であらう。ともあれ、ぎこちない二人に匙を投げた沢田は、演技ではなく実際に致させた性行為を撮影する、踏み込んだ意味合での“本番”を指令。一同の度肝を抜くと同時に、実は沢田に想ひを寄せる広子は、映画の為とはいへ野村に身を任せることに逡巡する。
 配役残り、「女の復讐」の撮影が佳境に入る中、ファースト・カットは如何にも含みを持たせる久須美欽一は、沢田と広子を青田買ひしようとする、大原いはく業界の若手大物プロデューサー・黒川ケイタ。ところで沢田組にはもう一人、レフ板を持つた勝山と沢田に呼ばれる男が見切れるのは勝山茂雄?
 DMMのピンク映画chをブラブラしてゐて辿り着いた、全く未知なる監督・西川卓の1989年全五作中第五作。当てもなければ果てもない回想の大海原に沈没することこそないものの、話の進行は矢張り清々しく遅い。それとこの人はカメラマン・ディレクターと思しき割には、凡そ画的なこだはりを感じさせない。量産型娯楽映画として全く安定してゐる、といふ評価のしやうならば相当するのかも知れないが。結局は、本番を強ひられた末に沢田への恋と女優への夢を捨て姿を消さうとする広子を、黒川に促された皆が追ひ駆ける。間抜けなラストに及んで、しかも二分強残した尺をハイライトと、“私は広子の嘘の裏にある重い殉教の十字架を知り”、“広子は漂流するボヘミアンとして私を見詰め続ける”云々と頓珍漢なモノローグで埋め損なふ始末。そもそもが、下手に大事に扱つた結果、広子は中盤の別に然程盛り上がりはしない山場の野村戦のみ。一の瀬まみも、相手すら居ない一人遊びの一度きり。にも関らず、何故かヨシエが大原と日を改め再戦。即ち、共に一回づつの主演女優と二番手をさし措いて、三番手が二開戦まで戦ふ濡れ場の珍配分も大概どうかしてゐる。映画に情熱を傾ける若者達を真正面から描かうとした、節ならば窺へる反面素面の劇映画としては展開的には薄く小慣れず、人物造形の面に関しても概ね類型的な割に、アクセルを踏み込むや正体不明の詩情を振り回してみたりもする。おまけに橋本杏子と一の瀬まみを擁しておきながら裸映画としても仕出かした出来栄えとあつては、降伏の意に於いて諸手を挙げるほかはない。とりあへず二作見てみて、西川卓といふ映画監督は恐らく御当人は至つて大真面目であるのと同時に、途轍もなく不器用といふ印象を受けた、もう少し見てみよう。

 今作最大の謎は、業を煮やした沢田の非道演出で、広子と野村が本番撮影に突入する件。沢田も息を呑む事の最中、ヨシエが“64-1-7”と書かれたカチンコをカメラに向けて示し、「ロク・ヨン・イチ・ナナ、挿れてなさそで挿れてます、ヨロシク!」とおどけてみせる。それは何か?橋本杏子がえええ、えええ!?


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