暖かく明るくおだやかな日より、橋の上から川面を眺めているとつい口ずさみそうな歌、
春のうららの 隅田川、 のぼりくだりの 船人が
櫂(かひ)のしづくも 花と散る ながめを何に たとふべき
これは滝廉太郎の歌曲「花」の歌い出しで歌曲集『四季』の第1曲だそうだ。春の隅田川を櫂をこいで進む船の情景が浮ぶ。歌詞の中には桜や青柳なども歌われ、隅田川を錦川に置き換えても歌えると思いついた。
博識の知人が錦川沿いの国道を上流へ向う車中で教えてくれた錦川のことを思い出した。
日本に「川」の名前は万とあるが「にしきがわ」という川の名前は他に無い。また「錦」という1字を使った川の名前はここだけ、日本で1箇所だから自慢して良いと。
その知人は、錦という意味は、金糸銀糸を使って華麗に織りなした織物という意味がある。錦川沿いの四季の風景は金糸銀糸の織物にまけない上品な美しさがある、と続けた。彼は写真好きでカメラを離したことはない。
錦川の錦が錦帯橋の命名になったのか、その逆なのかなどはどちらでもいい。金糸銀糸の織物に並ぶ美しさを備えた「錦」がつく日本一が二つもある故郷、大事に守って繋いでいかなければ、そんなことを思っているとき戦闘機の轟音で我に返った。
岩国基地の騒音訴訟が今日から始まった。
(写真:春うららの錦川、遠景は錦帯橋)