お彼岸の中日、春分の日の暖かい日ざしにさそわれて墓参りされる方が多い。何年ぶりかに出会う方もある。知ってる人にも知らない人にもみんな「こんにちわ」の言葉ですれ違う。墓地周辺は久しぶりに賑やか。
山肌の南斜面のこの墓地は昭和以前からあったと聞いている。子どものころは小高い丘のようなところで、周囲の畑に通じる細い坂道を1列に並んで歩いて上っていた。
地域開発の波はこうした不便だった周辺にも広がり、墓地のそばを通り抜ける広い道路が開通し、今は車で横付けできる。子どものころのきつかった墓参りは嘘のようだ。
それでも開通した道路周辺には自然のままに育ったたくさんの花が墓参りの人を迎えるように風に揺れている。なかでもこごめ桜、本当は雪柳と呼ぶそうだが、その白さがひときわまぶしい。
柿の実を収穫するときには1個残しておくそうだが、そんな柿木がぽつんと立っている。残された実は、鳥の餌になったのか大きな傷跡を残したまま律義にも守り神のように留まっている。
この姿は自然の意志ではあるが、自分にこのような真似が出来るかな、見習うところがあるなと思いながら撮っていると、近くでウグイスが鳴き始めた。
(写真:何かを教えてくれそうな律義な柿の実)