贋金王・日本花街史など

2005-04-24 19:53:59 | 書評
21db64ad.jpg最近、ブログを書くための資料として、近くの図書館で借りてきた3冊をまとめてコメントしてみる。

「文化財保護法・文化庁」
要するに、現存12天守閣のうち、4つが国宝、8つが重要文化財となっている。戦前は、焼失した他の城もまとめてすべて国宝だったのに、この差はなんだろうかということを調べる目的だったのだが、実はよくわからなかった。この本は、重要文化財の下のレベルの登録文化財のことを詳しく書いてあるのであった。が、それはそれで、参考になっているのである。国の制度の他に、地方公共団体が「史跡」とか「特別史跡」とか名前をつけて、予算をつけていたりもしていて、そして、どのレベルであっても、妙な委員会があり、委員の選出段階から様々な問題があることが臭っている。

「日本花街史・明田鉄男」
この本、大著に近い。614ページ。実は、旧新橋停車場が汐留に建設され、東京駅方面まで伸びてこなかった理由は、新橋(現銀座八丁目)の遊郭が立ち退かなかったためではないかと仮説をたてて、書物にあたろうと思ったからなのだ。しかし、その件は不明。なにしろ、この本は大部分が京都の花街の歴史とそれにリンクした花街の実態を調べたものだったからだ。江戸の記載はほんの僅かだ。しかも、原文の引用が多く、大変な難儀をした。こういうのも、いつか役に立つのだろう。面白いのは、人口あたりの出店数や、その手の職業の女性数から見ると、京都は江戸の5倍も桃色だったそうだ。どこにでも風俗店がある歌舞伎町状態だったのだろう。
そして、参考になる話としては、幕末の京都の芸者物語ということかもしれない。まずは、長州の井上馨は君尾という芸者にはまってしまう。そして新撰組の襲撃を受け、瀕死の重傷を負ったのだが、とどめの一撃を受け止めたのが、君尾からもらって懐にしのばせていた手鏡であったということだ。同じ手鏡でも植草先生とは使い方が違ったわけだ。次に近藤勇だがこちらは深雪という芸者がお相手だったのだが、つい、手伝いのお孝に手を付けてしまい、一人の娘が生まれる。そして父の名にちなんで勇(ゆう)と名づけられ、後年は下関で芸者になるのだが、何とさっき登場したばかりの井上馨や伊藤博文が可愛がっていたそうである。

614ページの最後には花街年表が付くのだが、その最初はこうだ。
天平2年、大伴旅人筑紫の水城で遊女と和歌を交換。

そしてその最後の行はこうだ。
昭和末年、特殊浴場などの名で管理売春、飛躍的隆盛に。

「贋金王・佐藤清彦」
この本は、古今東西(といっても日本が多いが)のニセ札作りのエピソードをまとめた本だが、一口では言い難い奇妙さがある。内容を詳細に紹介するには問題があるのだ。

普通の人間なら、この本を読むと、「やはりニセ札作りは割に合わない」と思うだろう。しかし、ほんのちょっとだけ普通でない人が読むと、たぶん、「ニセ札を作ろうかな」って思うのではないだろうか。つまり本書は犯罪の手口と検挙された理由、迷宮入りした理由などを結構詳しく書いてあるのだ。
今、まさに贋金作りを決意した犯罪予備者はこの本を読んだほうがいいかもしれない。読んだ結果、犯行を止めるかもしれないし、逆に犯行に及んだ場合でも、少しは巧妙な作戦が立てられる。

しかし、さすがに世界の珍奇なニセ札事件集である。常識破りのいくつかの話を紹介してみる。

まず、自販機専用ニセ札。人間の目には一目でニセとわかるのであるが、銀行のCDの読取装置のみを騙せるように作り、大阪中心街の銀行で500万円奪った事件。

2日に1枚の割で100円札を手書きで作っていて捕まった後、全国からカンパが集まった極貧夫婦の事件。

1920年代のポルトガルの事件は手がこんでいる。正規の紙幣を印刷している印刷会社に対して、大蔵省から増刷要請の依頼書が届く。そして、印刷された本物と同じ「札束」を引き取った運送会社が途中で持ち逃げ(もちろん最初の発注書も引取り業者もニセモノだ)。その結果、通常の紙幣の20%もの大量の本物と同じ、見分けのつかない通貨が流通してしまった事件。

そして最後の事件には、考え込んでしまう。戦時中、日本国内で中華民国経済を破壊しようとニセ札を印刷したわけだ。印刷した場所は特殊任務の拠点なのだが、現在の明大生田校舎である。そして、中国の大都市で、少しずつばらまいて、インフレを起こそうとしたわけだ。ところが一方の蒋介石は、日本が持ち込むニセ札の情報をすでに掴んでいて、対策として、本物の札の発行枚数を減らしたのである。当時、蒋介石は紙の入手にも苦慮していて、日本の持ち込む偽札は渡りに舟になったのだ。つまりニセ札を本物の札として流通させてしまえということだ。こうなると、最大のニセ札作りは国家だ、という暴論もわかるような気がする。

また、日銀が印刷して流通させるやいなや、ババ抜きのジョーカーのようなスピードで流通をはじめる2000円札は、「逆ニセ札」とでもいうべきかな。

そして、登場したばかりの新券がニセ札攻撃を受けている。駅前の弁当屋にも妙な張り紙が現れた。

 お客様各位
ニセ札事件が急増しております。警察の指導により、お札を確認させていただく場合もございますので、ご理解のほど宜しくお願いいたします。 OOOO 店主

そして、たまたまそこで使ったのが樋口一葉さんだが、なんとなく図柄が少ないような気もしたが、気にしない。見つけた方が損だからだ。そして受け取った店員さんも、札をよく見たりしない。問題の先送りだ。
(この本を読んで、製法を研究し、自信をもって偽札作りに着手したとしても、犯罪者に対してもまた国家に対しても、何の責任も無いことを確認しておく)


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