松本城は「なんとなく」

2005-04-04 20:55:44 | The 城
2e91ddc8.jpg現存天守閣シリーズはこれで第8回目。自分でも意外な展開になっている。しかし、ちょっと疲れる。横浜線で八王子から中央線に乗り換える。首都圏以外の場所にでかけるのに、新幹線も飛行機も使わないのは珍しい。だからと言って、松本の市民が「新幹線誘致運動」をするのだけはやめたほうがいい。ライバルの長野市には、信越線方向からの新幹線はあるが、松本に直接新幹線を引き込もうとすると、東京=新宿=八王子=甲府=松本といった路線になるだろうが、たぶん国民的合意は得られないだろう。かけるコストに対して得られるメリットが少なすぎるし、既に途中駅の金丸先生はいない。

さて、現存12城のうち、4城だけが「国宝」、8城が「重要文化財」の指定を受けている。国宝は姫路、松本、彦根、犬山。国宝と重文では、なにか、良い子と悪い子のような差別を感じる。この差には若干の疑問を持っているが、まだ書かない。少なくても「国宝」松本城のせいではない。

まず、容姿だが、甲冑で武装した武士の立ち姿のようなスタイルだ。黒が基調色。DELLのパソコンファンにはたまらない。奇妙なのは、外から見ると5階建てのように見えるが、内部は6階建てなのだ。その秘密は3階にある。3階は窓がなく、天井が低い中二階的つくりになっている(金融工学でいうメザニンだ)。武器置き場だったらしい。そして、はしご状の階段は、一階ごとに場所が違い、まっすぐ上がっていけない。敵が侵入した時の防御用らしいが、果たして実戦で役に立ったかどうか。もちろん実戦には使われていない。

そして、明治の初めに老朽化が激しくなり、自然倒壊のおそれがでてきて、地元の寄付金で大修理が行われている。そのために、少しは観光しやすくなっている。さいわい明治時代には鉄筋コンクリートはなかったため、木造の修繕になっている。

ところで、建物はやや細身の長身だが、この城はまったくの平城だ。ほとんど平地に浅そうな水堀を切り、石垣はきわめて低い。考えてみると、沿海地の城でないため、巨石、大石を手に入れることが困難だったのだろう。したがって、1590年とまだまだ実戦の可能性の高い時期に築城されたにもかかわらず防御能力は低い。そして、比較的大きな天守閣であるのに、現在まで残っていること自体、いくつかの好運が重なったのだろう。

松本の市街は、この天守閣を中心とした観光地と商業都市の造りが混在としていて、なかなか文化的だ。確か多くの作家を輩出しているような記憶があり、現知事の田中氏も生涯最高の作品で芥川賞をとっている。現存12城の中でも多くの城は、非日常的な場所に存在し、「さあ、登るぞ」という決意(おおげさかもしれないが)が必要なのだが、松本城にはまったく決意が要らない。町の公園の中に普通に立っている。「なんとなくクリスタル」ならぬ「なんとなく松本城」。まあ、そういうのもいいかな。