なりたい(畠中恵著 しゃばけシリーズ)

2020-11-30 00:00:00 | 書評
『なりたい』は、しゃばけシリーズ第14作。しゃばけシリーズは、江戸を舞台として、人間と妖(あやかし)と半人半妖の病弱な若旦那である一太郎の物語だが、第一作から読んでいると、登場するのが妖ばかりになっているような気がする。



本作は標題の『なりたい』が意味するのが、転身願望。ようするに「生まれ変わるなら何に」という感じだ。

一話目は「妖になりたい」。二話目が「人になりたい」。この中で道祖神の話が出てくる。長年にわたり、道中の安全のために道端で安全祈願をしていても、人間の都合で、住宅街の位置が変わったりして、ヒトのいない道で朽ち果てそうなのだ。悲しくなる。

そう、この第14作は悲しい話が多い。

「猫になりたい」「親になりたい」「りっぱになりたい」

生まれ変わった時に、人間になれる保証はないそうだ。

しかし、主人公の一太郎は、生まれ変わったらやはり若旦那になりたいという。理由は人間の数十倍の寿命を持つ、今の取り巻きの妖怪たちと再び会いたいからだそうだ。

もしかしたら、シリーズが行き詰まった場合、主人公をあの世送りにして、再び生き返らせて三太郎と改名してやりなおすのかもしれない、と妄想する。