ウフィツィ美術館自画像コレクション

2010-09-26 00:00:46 | 美術館・博物館・工芸品
新宿の損保ジャパン東郷青児美術館で開催中の「ウフィツィ美術館自画像コレクション」へ行く。

フィレンチェにある世界最古クラスの美術館である。自画像コレクションがある回廊は事前予約制なので、なかなか見ることが難しいのだが、知る人ぞ知る自画像の大コレクションだそうだ。1700点もあるので、展示スペースの関係で全部が公開されているわけではないし。

その中からのピックアップが今回の展示会である。

もともと、トスカーナ大公の弟レオポルド・デ・メディチが、自画像コレクターになって、1664年からコレクションが始まったそうだ。思えば、自画像の良いところは、画家そのものが自分を描くわけだから、下手な絵になることはないわけだ。これが政治家や小説家や作曲家が自画像を描いたら、ただの祖大ゴミになるのだから、自画像は、名画であると同時に画家の肖像でもあるわけだから、一枚で二倍楽しめるわけだ。

そして、画家が自画像を描くというのも、そこには何らかの想いがある場合がほとんどであるが、たいして意味がない場合もあるようだ。モデル代節約とか。

さらに、この有名な自画像コレクション群も、20世紀の後半に、やや輝きを失っていたそうだが、そこに救世主があらわれる。



マルク・シャガール。

9年をかけて描いた自画像を、美術館に寄贈する。そして館長も急にやる気になって、あれこれとオークションでまとめ買いをしたり、有名な物故画家の親族を探して、自画像集めをしたりしている。

その中興の祖とも言えるシャガールの自画像だが80歳の顔には見えない。若い自分にパリのアパートに訪れた恋人ベラの思い出が描かれているわけだ。だから自身の30歳台を描いたのだろうか。

また、世界各国から自画像を集めるというのも館の方針だそうで、今回はレオナルド・フジタが登場。

ところで、この館が自画像を集めた方法が、それぞれいくつかのパターンがあるそうだ。サザビーのオークションで大枚つかう場合もあれば、画家のこどもから寄付されることもある。また、シャガールのように大家が寄付することもるのだが、エリザベート・シャプランの『緑の傘を手にした自画像』のように、無理やり画家が置いていったものもあるようだ。



また大家レンブラントは100枚もの自画像を描いたそうだが、そうなると何らかの芸術的意味というだけでは説明が付かなくなる。彼は別の事業もやっていて、その事業が破綻して破産してしまうのだが、そうなると、モデル代を節約しながら、絵画の大量生産で現金を得ようとしていたというのが、本当のところかもしれない。

案外、考えさせられる展覧会なのかもしれない。11月14日まで。