羽生名人の100年インタビュー

2008-10-04 00:00:51 | しょうぎ
fddb21e7.jpg現在、一見絶好調の(実は、毎年、あまり勝率は変わっていない)羽生名人が10月2日午後8時放送のNHK、BShi「100年インタビュー」に登場した。多くの録画ミスと同様、番組の最後の部分をミッシングしてしまったのだが、一応大部分はカバー。

各界のスーパースターのインタビューの一環だが、正直にいって、「ハイビジョン」向きじゃなく、ラジオ番組でよかったのではないだろうか。インタビュー番組なのだから。

かなり残念だったのは、インタビューといっても聞き手(坪倉アナ)が尋問しているように聞こえて、羽生名人が、いつものように、質問に対して、「えー、まー、そうですね」と定型的に各5秒間ずつ考慮して、回答するというパターンになる。この「えー、まー、そうですね」というのは、彼の癖になっているのではあるが、もしかすると、この5秒ずつ考えるというのが、1分将棋での秘訣かもしれない、とちょっと感じたのである。あるまとまった筋を5秒読んで、次に別の筋を5秒読んで、またもとの筋を5秒深く読んでとか。

聞き手の方は、名人の強さの秘密を解き明かそうと、さまざまな角度で質問するのだが、どうも、ごく普通の答えが返っているようで、大部分は、その繰り返しになっていたような気がする。

いくつか思い出すと、

もう一人の巨人だった大山名人のことについては、若い時に10局程度、指した(教えてもらった、と表現)時に、『あまり深く読んでいるようには見えなかった』として、『相手の動作をよく観察しているようだった』とか『筋を読むのではなく、盤面の大局観で指しているように思えた』という感想だった。

意外だったのは、『実戦では、いくら読んでも、読み通りにならないことばかりなので、対応力が重要』とのこと。それをつきつめれば、大山流になってしまうのかもしれない。

『最大の休息は、ぼーっとしていること』というのは彼のように売れっ子だからで、月に1局しか指さない棋士がボーっとしていたら、ボケてしまうだろう。

七冠王になったあと、タイトルを次々に失って一冠にまでなった時の気持ち、という大変失礼な質問には、『マラソンと同じで、トップ集団に入っていればいい、と思っていた』と答えていたのだが、明らかに声質が半音高くなっていたので、本音ではなくインタビュー用の答えなのだろう。

対局中に手が震える話では、『ゴルフと同じで、残り1メートルのパットのように3手詰あたりになって、どちらが優勢かよくわからないことがある』というような答えだったが、これは二重の意味があって、手が震えたので有名なのは、羽生・渡辺で最初に争った王座戦の最終第五局で、粘る渡辺玉を最後に頭金でしとめた時のこと。この時は、怒りの一手だったように思う。そして、3手詰が難しいというのはたぶん視聴者向けに「詰み」と言ったのだろうが、たぶん「三手必死」のことだろうか。確かに、一手を争う実戦では、安易に必死をかけると負けることも多い。それに、彼はゴルフをしているのだろうか。「OK」とかしないゴルフというのは、メンバー用の月例会か巨額のベットか。まあ、30センチでも難しいと言ったわけじゃないから。

どちらがいいのかわからない場合は、『運』と言って、『自然といい方の手を指すことが多い』とのことだが、たぶんどちらがいいのかわからないところから指せば、「強いほうが勝つ」という一般的真実と思うわけだ。

あとは、『ごく序盤からの新戦法が増えてきた』、という棋界の現状を紹介していたが、そういう「広く浅く」という世界になると、ますます羽生名人に有利な状況になるのだろう、と思えるのである。つまり、前例に頼らずに盤上の最善手を探すということ。


若干気になったのは、七冠を取った頃(1996年)の時の写真と比べると、まだ38歳なのに若干頭髪の生え際が「M型」に進行しているような気がする。15年後には大山流になっているのだろうか。黒縁の丸メガネでもかければ、ますます強そうに見えるではないか。


fddb21e7.jpgさて、9月20日出題の回答。

▲4二飛 △3一玉 ▲4三飛成 △2一玉 ▲3一角成 △同銀 ▲2三竜 △2二銀 ▲3三桂 △3一玉 ▲3二銀 △4二玉 ▲4一桂成まで13手詰

初めから徐々に不詰感の中を、「これしかないなあ」と進んでいく方式の問題。

最後の手が見えた瞬間に、全貌が見えてスッキリするはずだが、一秒で最後まで読みきる人には退屈かもしれないが、それは簡素型詰将棋の宿命なのだろう。

動く将棋盤は、こちら

fddb21e7.jpg今週の問題は、一体、どういう構想なのか、というところに意外性があるのかないのか。まあ、一目でわかる人には相変わらずつまらないかもしれない。最終手は、頭に銀を打つというような手ではない。

念のため、合駒は登場しない(読みの中には登場)。

わかった、と思われた方は、コメント欄に最終手と手数と酷評をいただければ、正誤判断。