『戦う将棋指し』

2008-10-25 00:00:59 | しょうぎ
本来は、経費4000万円をかけ、パリで行われた竜王戦第一局のことを書けばいいのだろうが、パリに行った意味がよくわからないというのが本当のところなので、あまり触れない。



フランスで将棋ブームを燃え上がらせようというなら、毎年、フランス各地でタイトル戦を開けばいいだろうが、読売新聞をフランスで拡販しようということではないだろうし、柔道のようにフランスの方が日本より競技人口が増え、フランス将棋連盟の方が隆盛を極めるのを容認しようということなのだろうか。まあ、公称1000万部の朝刊から言えば、1部あたり4円に過ぎない、と言うことなのだろう。

何か、竜王戦の契約料値上げの交渉のネタに使われるような気がする。

将棋の方は、渡辺竜王は、「羽生マジック」をくぐり抜けることができないような気がする。

4000万円の後に書きにくいのだが105円の話。ブックオフで購入した1冊の文庫本である。

「戦う将棋指し」

少し古い本である。1999年10月。別冊宝島編集部編となっているが、この文庫本の内容が、別冊宝島(MOOK)にまとめられたのはさらに遡り、1998年4月。新聞記者の方々やフリーライターの方々が、多くの棋士を対象に、さまざまなエピソードを書いている。そのうち、ある一人分だけを取り上げると、仮にこのエントリを見た方が、気を悪くする可能性があるし、さらに、将棋界の話と言うのは、実際より「話が大きくなっている」ことが多いので、大人気ないことは書かないことにする。

その中で、棋士へのインタビューというコーナーがあり、これはかなり本人の談に近いのだろうと思うので、そちらの方を触れてみる。

ただし、自分の経験でも、インタビューを受ける前にこちらの答えが期待されていて、まともに記者に対応していても、事実と違うことを話したような記事ができあがり、抗議をしても、なしのつぶて、ということもあるので、このインタビューをどこまで信じていいのか、まあ、そんなに硬い話でもないので気にしなくてもいいのかな。

そして、本書でインタビューを受けるのは、4人。時の名人の谷川浩司、中原誠、屋敷伸之、そして行方尚史。このうち、谷川・中原両氏の話は、あまり面白くもなく、「羽生さんにやられて、悔しい悔しい」ということばかりだ。中原氏の紳士ぶった発言は、すべてが発覚した今思えば、失笑ものであるが、薄氷に乗った状態だった、と考えれば、少し気の毒。行方氏の話は、当時、まだ若すぎて、面白くない。

それで。屋敷さんのインタビューだが、彼の考え方というか、「自分中心主義」が、読んで楽しいというか、1日1分しか勉強しないとか、競艇につぎこんでいる割に勝てない話とか。

どうも、奨励会の時には、朝から晩まで将棋の勉強をしていたそうだが、ある時、ぱたっと勉強をやめたそうだ。やめても勝率が変わらなければいいじゃないか。だいいちタイトル取ったのだから、ということだろう。

おそらく、屋敷氏は、もともとの将棋力が強いから、定跡からはずれたところでは凄く強いのだろう。つまり、定跡からはずれたところで勝負しようというのに、定跡研究してもしょうがないじゃないか、という実践主義なのだろう。大山名人もそうだったような。

そして、実際、彼は、ずっと高い勝率を続けているのに、なぜか順位戦はカメの歩みで、やっと今年B1級。おそらく3位、4位を何期か繰り返すのだろう、と予測。たぶん、今期は昇級枠2のうち、順位1位の久保八段は当確として、渡辺、杉本、山崎、屋敷の4人が、ラスト二局でぶつかることになっているので、一つの枠をトーナメント的に争うことになるのだろうと想像している。新聞で読みたい棋譜の代表なので、なんとかいつか上がってほしいところである。(羽生=屋敷戦も楽しみ)



さて、10月11日出題分の解答。

▲2二香 △同銀 ▲同歩成 △同金 ▲1一香成 △同玉 ▲2三桂 △2一玉 ▲1二銀 △同金 ▲同歩成 △同玉 ▲1一桂成 △同玉 ▲2二金まで15手詰。

「タバコ」という副題は、初型が漢字の「口」で、詰上り図が超ミニ「煙」詰(最終3枚)。「口から煙」ということ。

本当は、完全密集形を作っていたのだが、2手目が密集形になる。

こんな狭い場所でも、駒の種類を変えると詰まないか、余詰多発になる。



おまけ出題の偶数手詰の方は、元の作意は、

▲1七歩 △同玉 ▲1五と △同香 ▲2六銀 △1六香まで6手詰。だったのだが、4手目に△1二香という妙手があることを発見。あきらめようとしたが、無理やり詰ます筋を発見。

▲1七歩 △同玉 ▲1五と △1二香 ▲2四と △1六玉 ▲2五と △1七玉 ▲1五と △1三香 ▲2四と △1六玉 ▲2五と △1七玉 ▲1五と △同香 ▲2六銀 △1六香まで18手詰。

連続王手でないのがキズというか・・。

玉方は歩二枚を持つが、二歩で打てない。

8手目に△1三香は、▲2五と △1六玉 ▲3五と以下詰み。



今週の出題は、やや軽い手順の割りに盤面が重い感じ。実は、実戦的手筋である。最終2手はばらける。

わかった!、と思われた方は、コメント欄に最終手と手数と酷評をいただければ正誤判断。

実戦で、こういう場面で詰めて勝ったことがないという人もいるかもしれないが、私は、こういう場面で詰めて勝つことが、かなり多い。要するに、詰まないような場面でトン死で勝つということだが、それにはコツがある。

『遠い詰めろ』をかける。または、もうすぐ手に入る相手の駒を足すと、『遠い詰めろ』になる形。要するに「卑怯者」ということだ。「マジック」とか「光速」とは言わない。