うなぎややけたかな

2007-03-22 00:00:56 | あじ
取引先の中間管理職の方が、転勤になる。2年前にアジアA国から帰ってきたばかりだが、その前もアジアB国、その前もアジアC国。米国に行っていたこともあるそうだ。要するに、細かなインターバルで日本と外国の間を動く。今度はロンドンだそうだ。英転。本人にはまったく悪いが、ピンボール人生というか、ビリヤードのナインボールのような感じだ。9番目のボールのことなどは、ゲームの最初はどこにあるのか意識しない(下手だからかもしれないが)。そのうち。攻守交替になって、9番目のボールは、あちらこちらに転がっていって、たいてい邪魔者扱い。下手同士で球を撞いていると、そのうち時間切れで、「じゃあ、飲みに行くか」とか穴に落ちる前に放置される。そこで、送別ランチをセッティング。

葉一郎:「殿。和洋中、何が、よろしゅうございましょうか?。」
9球氏:「そりゃ、昼めしは、うなぎに限るのじゃ・・」

(確かに、「美味いうなぎ」というのは、海外で口にするには苦労するだろうが、逆に、そんなものを食べてから渡英すると、さらに逆苦労するような気もする。ペルー大使館で人質になった青木駐ペルー大使は、「寿司とうなぎと蕎麦が食べたくて」思わず人質解放の時に脱出順位の前の方に並んでしまった。)

adf0f35f.jpgということで、赤坂の鰻屋に行くことにしたのだが、赤坂の鰻屋といえば、二つの有名店がある。一つは、「重箱」。江戸時代の「うなぎ番付」にも幕内力士として記載されている。滅び行く江戸老舗食処の中で、大きく輝く超高級店。自民党のある派閥では「重箱会」なる集まりにも使われている。賄賂関係の公判記録に数々登場することでも有名だ。一人当たり2、3万円は必要だ。自分がロンドンに遊びに行った時に臨時無料市内ガイドに頼もうという下心があるとしても、やり過ぎ感がある。

そして、もう一つの有名店である「ふきぬき」にする。以前から、時々行っている。価格帯は「重箱」の1/4。ランチタイムはさらに安い。もっとも「重箱」のことを知らないゲストには、この辺の計算は関係ない。ぐるなびなどで見ると、「ふきぬき」は”大正12年創業”と誇らしげに書かれている。

ところが、ここで気付いた方もいるだろうが、東京で「大正12年」というのは特別な意味を持つわけだ。

「関東大震災」 大正12年9月1日。

創業は、関東大震災の前なのか、あるいは後なのか。この店の社史を書くなら、まずそこからだ。新規開店のピカピカの店が、一瞬で壊滅し、「愛と涙の再建物語」となるのか、焼け跡の廃墟を格安で入手して、火事場からの「成り上がりストーリー」なのか。まあ、そこまで考えることはないかな・・

そして、江戸のうなぎならば、うな重かうな丼かなのだが、あえて、「東京で一番(本場名古屋の味とそっくりという意味)の”ひつまぶし”」にする。ナインボール人生のゲスト氏は、”ひつまぶし”をよく知らないそうだ。昼食はランチメニューから選ぶので貧富の差なし。夜になると、大富豪用から大貧民用まで階級性メニューが登場するが。

さて、ひつまぶしの場合、うなぎと飯とその他のトッピングをそのまま食べたり、ダシ汁をお茶漬け風にかけて食べるか、各人好き好きにすることができる。トッピングなし、きざみ海苔、ねぎ、わさび、それらの組み合わせ、ダシ汁かけ、なし。

adf0f35f.jpg遠慮がちに飯のお代わりはできるようだが、トッピングとダシ汁のすべての組み合わせを作ると16通りになるので、すべてを一度にトライすると、胃袋が破裂して病院送りになるから注意が必要。

個人的には、きざみ海苔にわざびというのが好きだが、あまりひつまぶしにハマるとビジネスの発想が名古屋風になりそうでこわい。

彼が、次に日本に帰ってくるときには、飲めないかもしれないということでサッポロビールのグラスを重ねる。デパートの閉店セールみたいだ。飲めばうまいじゃないか。

うな重とは異なり、ひつまぶしの鰻は名古屋流らしく深く蒸していない。名古屋以西では鰻の焼き方は店によって千差万別。うなぎの焼き方、さばき方で、「東国の均一性と西国の多様性」という東西文化論でも書けるかもしれないが、取材費が高そうで実現しないだろうし、そもそも鰻を毎日食べると口が飽きてしまうだろうなと思ってしまう。


彼の赴任地のロンドンでは、某商社の金庫に、適当に買い集めている「金」を保管しているのだが、「そのうち磨きにいくから」と軽い冗談がまったく通じなかった。ロンドンで買うと日本への輸送費と消費税がゼロになるのだが、まあ、彼にとって「知らない方が幸せなこと」の一つかもしれない。また、新装なったウェンブリー競技場の法人向けボックスシートはまだ売れ残っていることや、セント・アンドリュースの位置情報まで親切に教えてあげたのだ。


そして、うなぎ店を後にし、すぐそばにある、旧勝海舟邸跡を案内する。要するに、その住居跡の敷地の真ん中にあるのがドトール・コーヒー店であり、酔い覚ましコーヒーを一杯というわけだ。勝海舟の話は、次回・・