イラク派遣自衛官の選挙権は?

2005-02-02 21:36:42 | 市民A
愛読ブログの一つ「そして海の外日記、1月30日号」の中で、管理人Strong Mosquito氏が、イラク派遣の自衛隊員には投票権がないという、というマスコミ情報を紹介したところ、コメントの中で「楽音」さんから、ソースと引用を明示してほしいということになった。実は、私も新聞で軽く読んだことがあって、そのまま対して意識していなかったのだが(というのも、選挙もできないところに自衛隊を送るのが悪い、というような安直な記事はスルーだからだ)、ちょっと引っかかる気分になり、調査に割り込むことにした。

いわゆる、不在者投票のような制度がないのかと思ったのだが、不在者投票は、あくまでも住民票のある地元での投票なので、行くことができない。外国に行っている人の制度を調べると、「在外選挙人制度」があった。平成10年にできた制度で、あらかじめ海外に住所を移転する人が登録(家族が登録しても可)しておけば、海外転居前の住所に住んでいるようにみなし、国政選挙である衆議院議員選挙と参議院の比例区に限り、在外公館で投票できることになった。そして、16年度からは、郵便投票が認められることになった。したがって、自衛隊員がサマワに転居届を出しておけば、昨年の参議院議員選挙には投票できたはずだ。

しかし、イラクに転居届を出す自衛官がいるとは、思えない。転居すれば、住民税が安くなるかもしれないが、サマワの市役所に転入届を出すケースは絶対にないだろう。つまり不在者投票以外には方策はなかったわけだ。

そこで、少し考えてみる。自衛官はあくまでも国家公務員ということになるのだから、公務員の海外長期出張ということになる。自衛官に特例を認めるなら、民間企業で長期出張をしている人間にも特例が必要だ。また、バンコクやローマで長期にブラブラしている日本棄民たちにも権利が発生する。そう考えると、この問題は、「自衛隊のイラク派遣に係わる問題」ではなく、「海外へ一時的出国をしている邦人の選挙権の行使方法問題」ということになるわけだ。もう一つ付け加えると、自衛官の勤務体系からして、いざという時は365日24時間拘束状況になり、投票所なんかには行けなくなるということがある。普通の公務員とは勤務体系が違う時がある。要するにONとOFFの関係だ(話は飛んでしまうが、米軍兵の沖縄での蛮行は、彼らが沖縄にいる状況が「ON」の状態にあるという点も忘れるべきではない)。

問題を投票方法だけに限ると、IT先進国らしい方法にすべきだろう。わざわざ投票所にいかなくても、自宅でパソコンを使ったり、携帯電話から投票できるようなシステムを使えば、世界中から投票可能だ。あとは本人確認のテクニックだけだろう。

だいたい、前述の「在外選挙人制度」にしても、該当者の10%強の60,000人程度しか登録されていないし、さらに実際の投票率はその20%程度らしい。要は、徹底的に投票率を上げる方策をとる気になるかどうかだが、投票率の上下で有利になる政党や不利になる政党が入り混じっている状況では難しいような気もする。すべてIT化すると、選挙の締め切り後1分以内に直ぐに結果が判明するので、選挙速報を見ながら、日本の将来に一喜一憂しながら、結局、最後は眠り込んでしまう必要もなくなる。

ところで、私がこの辺を調べたあと、Strong Mosquitoさんがネット上の出典を見つけてきた。やはり、この社であった。私が紙面で読んだのも同一社だろう。問題の本質をゆがめて書くのはやめて欲しいと思うわけだ。もし、本気で自衛官の選挙権の確保を主張したいなら、昨年7月の参議院選挙の時にも同じ状況だったのにということだ。そして、地方選挙と「在外選挙人制度」とはやはりつながらないだろうとは思う。