ジャーナリズムと上場の関係は?

2005-02-14 20:21:41 | 市民A
ライブドアのホリエモンのニッポン放送への奇襲(敵対的買収)は着々と進行している。愛読ブログである磯崎哲也氏のisologueはその資金的背景の手法を度々詳しく説明されているが、時々、ちょっと方向がずれたりして解説に苦労されている。なにより堀江社長の目的がよく見えない点に説明が困難な理由がある。ただし、フジサンケイ側の捨て身の反撃である、「株の25%取得後の上場廃止」というのも「予想のうち」という言い方をしているところから、様々な展開を考慮してその投資リスクを算定しているとは想像できる。いくつかの予想されるファクターによる結果と確率を数値化したものだ(というと難しいが、要はゴルフで一打目を林に打ち込んで、単に近くに出すべきか、ハイリスクでも一気に木の間からグリーンを狙うべきかを考えるようなものだ)。

また将棋の新竜王、20歳の渡辺明氏も日記の中で、堀江社長が「詰んでいる王様を穴熊に囲っている」とのくだりを紹介している。将棋的に言えば、もう負けるのだから,早く投了しろといているようなものなのだが、実は、堀江氏は将棋で言えば、「見落としのポカ」が多いともいえる。ご存知の仙台新球団を楽天にさらわれたのは記憶に新しい。少し前には、ネット銀行のイーバンクの買収を途中で断念している。事実まだ取得株は50%には届いていない(ただ、14日の月曜には一気に決着がつくかもしれない)。村上ファンドとの関係が明確ではないが、同じ六本木ヒルズ同士、綿密に打ち合わせは終わっているという線が臭う。

ただし、最大の問題は、堀江氏の真の狙いは何かということである。ジャーナリズムそのものを経営したいのか、あるいはメディアとして利用したいのか、それとも単に、株式の買戻しを要求して、売買差益を得たいのか、あるいはその他の理由なのか?まったくわからない。ただし、フジサンケイグループを狙ったのは、自分のポリシーに近い(あるいは遠い)からということではなく、買収しやすい構造だったからだろう。大きな会社を支配しているのが小さな会社であるのは西武鉄道-コクドの関係と同じだが、その小さな会社が上場しているというのでは、買収を待っていたようなものだ。

もちろんフジサンケイグループは危険を察知していて自分で買取株価を設定し51%の取得を目指していたところだったのだから、撒き餌をしたところ、集まった魚を横から網ですくわれたようなものだ。一旦、買取の株価と目標を公示したあと、株価を引き上げたり、目標比率を引き下げることは株主利益に影響がでるため、やりにくく、こうした構造的不備をつかれたわけだ。実は、昨年7月19日の弊ブログでも紹介したのだが、中国ハルビンビールで同様な事件があった。もともと3香港ドルだったハルビンビール株をすでに30%超のサブミラー社(英)が100%子会社化しようと4.3ドルで集めようとしたところ、バドワイザーのアンホイザーブッシュ社(米)が5.5ドルに上積し、全部買い取ってしまった(長期保有しようとしていた私の株は、特殊ルールで全部5.5ドルで買い取られて、ちょとだけ儲かったのだが)。

話を元へ戻すと、今、日本のマスコミはNHK、朝日系、読売系、フジサンケイ系、毎日-TBS系、日経ーテレビ東京系と6系統になっている。NHK以外は新聞がテレビをHOLDしている。ところが、その会社の経営について、どこまで公表されているかというと、ほとんど公表されていない。この公表されているとかいないということを分類すると、
A.一見公表しているが、内容がおおざっぱで不明瞭・・・NHK、朝日
B.テレビ会社は上場・・・TBS、日テレ、テレビ東京、テレビ朝日
C.親子とも上場・・・フジテレビジョン、ニッポン放送(ただしサンケイ新聞は非上場)
結局、新聞社は1社も上場していない。ただし、朝日新聞は決算を公開しているのだが、特にインターネット上で広く公開しているわけではない。数年前に朝日の企画関係の方に「どうしてネット上に開示しないのか」と聞いたところ、「上場していないし、決算のプロではないから」とよくわからない説明をうけたのだが、ちょっと数字が読めれば、たんまりと溜め込んでることはすぐわかる。また各テレビ局の決算書を見れば、どこも自己資本比率は50%を超えていて、どうみても個人企業のような比率になっている(実際に個人企業になってしまった新聞社もあるのだが・・・)。

また、ニッポン放送でも資産2、300億円、自己資本比率76%、(1,734億円)、経常利益約85億円、現金同等物587億円となっている。どうしてこんなに儲かるのか不思議でしかたないだろう。そう考えると、NHKは一番貧乏なのだろうか、あるいはもっとも不効率ということなのだろうか?そしてジャーナリズムの社員の給料の高さは驚異的なのだ。もっと高かった金融業界は激落したらしいので、業種的にはジャーナリズムか薬品が一番なのだろうが、そういう話題は新聞にもテレビにも雑誌にも出ない。

そして、現在のテレビ、新聞の状況を見ると、堀江社長がまじめにジャーナリズムに取り組もうと考えるとは思えないのだ。おそらく単に、売買益を狙っているのだろうと思っている。

また、仮に報道に口をはさんで、サンケイが今よりも右寄りや左寄りに変わってもあまりたいしたことは起こらないだろうとも考えている。テレビも新聞も、チョイスはたくさんあるのだし、その辺はまたあらためて・・・

そして、どうも新たな企業で海外からのTOBの兆候を感じているので、便乗させてもらおうと策を練ることにする。