キャパ・イン・カラー写真展に

2005-02-19 20:05:12 | 美術館・博物館・工芸品
cc2d60a7.jpg愛読ブログ(専門的で難しくわからないことも多いので、観るだけというべきか?)THE EYE FORGETの中で写真家、横木安良夫氏が何度も何度も予告されていたキャパ・イン・カラー写真展に行く。

ちょっと横道にそれるが、新潮社の雑誌「Foresight2月号」の読者サービスに、この写真展の招待券が当たる募集があったので応募したら、当選。いずれにしても行くつもりだったのだから、結構うれしい。本当はそろそろ新潮社の悪口を書こうとも思っていたのだが、感謝の意を表して批判は先送りにする。

会場は日本橋三越新館。出張帰りの夕方の東京駅から駆けつける。例のすべて高級感といった改装をしたと言われる三越新館ということで、ちょっとぶるってしまう。出張帰りでちょっとスーツも乱れているし・・・というのは杞憂だった。そんなにすごくもない。ソウルのロッテデパート本店10階のデューティーフリーショップと同じぐらいだ(気を悪くした関係者がいたらゴメン)。そして7階の会場は結構込んでいる。

年譜を読んでいたら、キャパは1954年に死亡となっている。死後50年で著作権が消滅するというルールとこの写真展が関係があるのかなと思ったりするが、真実はわからない。作品の話の前にキャパが戦場で着ていた上着が展示されていた。私より上半身は小さい感じだと思うが、たぶん足の長さは20センチくらい長いのかもしれない。本名はアンドレ・フリードマン。なかなかいい名前だ。1913年ブタペスト生まれ。芸術家の常として20歳頃に恋人を亡くし、アメリカに渡り37年にLIFEの専属になり、この頃、イングリッド・バーグマンと2年間の情事にふけるそうだ(こんな話は全く知らなかった)。そして生涯約3000万枚の写真を写して、1954年、日本に寄った後、ベトナムの戦場で5月25日に地雷を踏んで亡くなる。41歳。亡くなる直前に写した、モノクロとカラーの2枚のフィルムが残ったことからも彼は2種類のフィルムを同時に使っていたことがわかる。

キャパの戦争写真はいくつもの代表作を生んでいるのだが、有名な写真はモノクロだ。このあたりの解釈は、私が勝手に考えているものと横木氏が考えているものとだいぶ異なっている。私の解釈は2つである。一つは、カラーは一流だが、モノクロは超一流ということ。カラー作品は結構豪華にあれもこれもと一枚にイメージを詰め込んでいる。「人間を写す」というより「世界を写す」というように感じる。主題を強烈に絞って表現しているのはモノクロの方だ。

もう一つは、カラー写真をじっくり見たのだが、色付きの世界は、戦争をリアルに表現し過ぎるわけだ。例えば、艦隊の船舶なども、錆だらけだったり、へこんでいたりとボロボロの設備がリアルだし、戦闘機も同様でつぎはぎだらけに修理されているのが生々しいのだが、背景に拡がる海や大地はそれ自体が美しい風景である。戦争ってそんなもので、海戦で1万人が死んだって、数日経てば美しい海しか見えなくなる。過日の津波でのCNN報道をみていると同じように感じた。結局、カラーだと「感じるより考える」ということになってしまうかもしれない。「戦争なんてたいしたこともない」という別の気持ちが生まれてしまうのかもしれない。

ところで、キャパのカラーはコダクロームによる。つやつやとした光沢が売りだ。今度の写真展はディジタルでプリントしているようだが、空の色が美しい。海の色は今ひとつ粒が粗いように感じたが、気のせいかもしれない。コダクロームというポールサイモンの曲があって、メロディはきちんと覚えているのだが、探して見ると「PAUL SIMON:GREATEST HITS」というベスト版の15番目になっていて聞いて懐かしがってみたが、よく見るとジャケットのKODACHROMEと言う単語の後に、丸の中にRと書かれたマークがついている。何のマークだったか思い出せないが、商標のようなものを意味するのだろう。

ベトナムで地雷を踏んで亡くなる直前にカメラ毎日の仕事で日本にいて、1954年の日本の風物を写した作品が、多く展示されているが、そのあとベトナムへ行ってしまうのだが、キャパの目から日本とベトナムとをどのように見たのだろうか。たぶん、日本のことは「軟弱」と見えたのだろうと想像する。