決めの甘い試合

2005-02-27 19:54:50 | 企業抗争
初心者同士が将棋を指すと、なかなか終わらない。はたで見ていると、こうやって、ああやって、と思っても、お互いに決め手をだせないでズルズルと王様が相手陣まで逃げ込み、盤上に裏返しの駒だらけになって、見物客もいなくなる。(専門的には「入玉/にゅうぎょく」と言って江戸時代に、こんな川柳がある。いりおうに見物客もいなくなり。って)

ニッポン放送争奪戦を、単に見物的に考えると、最初に立会い外取引で35%を取得したライブドアが勝利宣言(詰んだ王様と表現)。これが早すぎたわけだ。次にフジ側が25%取得後の上場廃止という奇策を発表。25%超になったと発表(この部分の真偽はよくわかっていない)。25が30%超になった段階でフジの目論見は成功したので、これで終わりにすればよかったのだが、さらに50%以上の株主を目指し、新株予約権を発行するという「かなり疑わしい手」を使ったため、また混沌としてしまった。最後の一手は、ニッポン放送に溜め込んだグループの資産を保全するためなのだろうが、もともとニッポン放送自体が上場会社であるのだから、かなり怪しい一手だ。

サッカーで言えば、最初の1点はライブドア、そのあとフジが1点とって1-1のドローになったところで、フジが2点目をとるために、選手を11人から22人に増やしたようなものだ。

振り返ると、投資家が無視されていることに気付く
場外の時間外取引・・・一般投資家にはもともと不利な制度だが、機関投資家や子会社株売却などで使われる。(先日、富士通がファナック株の売却をしていた)
上場廃止策・・・これも一般投資家には恐怖の一手。
特定先への新株予約権・・・これも一般投資家には恐怖の一手。

私の勝手な推測だが、ライブドアも51%取得後に、この新株予約権を使おうとしていたのではないだろうか?先に使われたのか?

前にも書いたが、日本のマスコミは非上場の新聞親会社が上場のテレビ会社を子会社にして、利益を親会社に溜め込むという構造になっている。最近、建て直された各局のビルを見ると違和感はある。ニッポン放送だって、1年前のバランスシートでは、自己資本1734億円(自己資本比率76%で現金587億円)で経常利益85億円と言われれば、「なぜ?」と思わざるを得ない。

しかし、裁判所もたいへんだろうなと思うのは、経済事件を何でも裁判所に持っていくし、その反面、法律が整備されていない部分の審判をしなければならないし、だからといってアメリカの裁判事例を持ち出すわけにもいかないだろうし、また、やすやすと防衛側の肩を持つと、シェア30%にも上る外人投資家が日本から資金を引き上げ、株価は大暴落しそうだ、とか考えると、責任回避の判決を探すしかないかもしれない。

また、かなり抜け落ちているのは、フジテレビの娯楽性とサンケイ新聞の「正論」性への影響だが、はっきりいって、どうでもいいとしか思えない。マスメディアといっても、要は記者やプロデューサーやタレントが作るものであって、チャンネルがなくなろうと、ディジタル化してもしなくても、どうせ5年後位には世界中のテレビがネット上で見れるのだろうし、案外ブログの延長で個人営業のテレビだって現れるかもしれない。

日本の企業は3ナイ主義と批判されている。「雇用しない」「投資しない」「株主優遇しない」だ。今回の騒動は、この「株主優遇しない」が問題なのだが、かといってフジサンケイも非上場になるとしたら、それも問題としかいえないのだが、それはマスメディア他社も同病なので、まったく変な話だ。テレビで儲けたカネでビルを建てたり、非上場の親会社に貢いだりしないで、良質な番組制作に再投資するか、CM料を値下して、消費者物価の引き下げに貢献することが必要なのだろう。