画像はWikipediaより
国土が広いアメリカでは、自動車よりも空を飛んだほうが早いということで、早くから4人乗り程度の小さい飛行機が商品化されていた。
そして燃料費が安いディーゼルエンジンは期待が大きく、Verville Air Coachはエンジンを3種類選べるが、生産された10~16台のほとんどはパッカードDR980ディーゼルエンジンだったようだ。1929年では機体が10.500ドル、エンジンは11.000ドルから。
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画像はttp://www.enginehistory.org/usaf.htmより転載し、矢印を加えてあります。
気になるDR980の謎だが、緑矢印のダクトの前部から吸気をして、後部から排気をする。それを1本のバルブで開け閉めするわけだ。
クランクケースが黒く塗装してあるのはマグネシウムだからだと思うが(まあ、別に黒くなくても良いわけだが)バルブが1本なのは軽量化のためだという説もある。バルブ自体の重さは大したことがなくとも、動弁機構を含めれば結構な重量になるのだろう。
このメカニズムが成り立つのは、航空機エンジンという前提があるわけで、サイレンサーが必要ならプロペラ後流で排気ガスを吹き飛ばすのに抵抗になるから、新しい空気を吸入できない。
そしてディーゼルならではなのは、吸気は混合気ではなく空気だけで済むから構造も単純になる。
画像の赤矢印はシリンダー固定用のリングだ。途中にターンバックルがあり、締め上げてシリンダーをクランクケースに固定する構造になっている。その前のぐるぐる巻いてあるパイプはオイルクーラー。
画像はttp://gasengine.farmcollector.com/Gas-Engines/Packard-Diesel-Aircraft-Engine.aspxより転載
画像はttp://www.oldengine.org/members/diesel/duxford/aviat.htmより転載
1つのバルブとポートが吸気と排気を兼ねているのがお分かりだろう。
この成功しなかったとはいえ、100台も生産し、正に独創的といえるメカニズムにも先例があったとは驚きはしないだろうか?しかもガソリンエンジンだ。
実は”エンジン歴史シリーズ”を始めるきっかけになったのが、このパッカードDR980であり、存在を知った当初は「ああ、飛行機にディーゼルエンジン?重くてパワーがないからダメだったんだね」くらいにしか考えず、エンジンの発展途上のよくある失敗例の一つに過ぎないと思っていたが、そうではなく歴史上のできごとがどこかで交差し、互いに影響しあい、現在のパワーがあって使いやすく、しかも燃費の良いエンジンが出来上がったことを改めて感じた。それはバイク・クルマ・船舶・飛行機というだけではなく、蒸気・ガソリン・ディーゼルという燃焼方法の分野にまたがり存在したと思う。
とはいえ当ブログは”バイクブロブ”なので、なるべくバイクに絡めた構成にするべく腐心した。
このようなことを書くと、ブログの最後の挨拶のようだが、そうではなく当ブログの重要な内容である”エンジン歴史シリーズ”の開始のきっかけになった記事を書く段階にたどり着けたからであり、ずいぶんと長いプロローグと思っていただければ幸いだ。
ところで、パッカードDR980の失敗は振動の多さと排ガスの臭いだという。
続きはワンバルブ・エンジンの先例です。
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勉強になります。
2サイクルは富塚先生、ディーゼルは鈴木先生ですね。
ピストンさんの情報収集力にも感嘆しています。
これからも、もっともっと、驚かせてください。
しかし先人たちが苦労に苦労を重ねて、現代の故障しらずのエンジンにたどり着いて、ドライブ バイ ワイヤにまで行き着くとは思いませんでした。例のトヨタのアクセルペダルの話ですが。
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