樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

命繋げた木

2008年11月05日 | 木と防災
みなさんもまだ覚えていらっしゃると思いますが、4年前の10月20日に台風23号によって京都府の由良川河口で大洪水が発生し、観光バスが立ち往生しました。乗客はバスの屋根に避難し、翌21日にかろうじて救出されました。
あの時、さらに増水してバスの屋根も水没するおそれがあったため、2人の男性が近くの街路樹まで洪水の中を泳いで渡りました。バスのカーテンで作ったロープを携え、残りの乗客を木に誘導するためです。当時の模様はこちら
その街路樹が今もあることをテレビで知って、帰省の途中に寄ってきました。由良川沿いの街路樹はユリノキ。ちょうど紅葉の時期で、黄色の葉と緑の葉が入り混じって目を楽しませてくれました。

       
      (由良川沿いの道にはたくさんのユリノキが植えられています)

その近くには、洪水時の水位を示すモニュメントが立っていて、8.24mと記してあります。近所で木の場所を教えてくれたおじさんも、「うちの2階も75cmまで浸水して、屋根に逃げるしかなかった」と当時の模様を話してくれました。

       
    (水位を示すモニュメント。青い方が今回、赤い方は昭和28年のもの)

毎年10月20日になると、このユリノキにつかまって助かったご本人が兵庫県の豊岡市からわざわざ肥料を与えに来られるそうです。下の写真の札もその方がつけられたもの。ご本人にとっては、命の恩人なのでしょう。

             
           (このユリノキにつかまって助かりました)

直径20cmくらいの細い樹ですが、たまたま近くにあったので人間の命を助けることができたわけです。当時、バスの屋根から無事に救出されるニュースを見ながら、「人間、どんな状況になっても最後まであきらめたらいかん。奇跡が起こることもある」と思ったことを覚えています。

       
   (車で通れば見過ごす小さな札ですが、ご本人の気持ちが伝わってきます)
コメント (2)
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