樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

鉛筆の木

2007年08月06日 | 木の材
私がコピーライターという仕事を始めたのは30年ほど前。今はパソコンで文章を書きますが、当時は鉛筆で原稿用紙に書いていました。
独立した頃、仕事の道具だからいいものをそろえようと、当時最も高価だった(と言っても1本100円くらい)三菱鉛筆のユニをたくさん買いました。消しゴムはドイツのステドラー社製、原稿用紙も先輩と一緒にオリジナルのものを作りました。

      
          (現在は鉛筆は下書きに使う程度です)

その鉛筆には木が使われています。みなさんもナイフや鉛筆削りで削ったことがあると思いますが、木のいい匂いがしたでしょう?
現在の鉛筆はインセンスシダーというアメリカのヒノキで作られています。「インセンス(incense)」は「香りのある」という意味で、削った後の匂いはヒノキ系のものです。別名は「ペンシルシダー」。
鉛筆を日本で初めて工業化したのは眞崎仁六という人物で、明治10年のパリ万博で鉛筆を見て感心し、帰国後に鉛筆づくりに挑戦しました。当初はヒノキやヒバ、コウヤマキで試作しましたが、硬くて削りにくいので失敗。最終的にイチイにたどりつきました。飛騨の一刀彫などに使われるイチイです。

      
        (イチイの材と飛騨の一刀彫・京大木材研究室で撮影)

北海道にイチイが豊富にあるので、道東に鉛筆工場が建てられました。この眞崎仁六が三菱鉛筆の創業者で、社名は「三菱」でマークもスリーダイヤですが三菱グループとは無関係です。
その後、イチイの入手が難しくなって、先日トーテムポールでご紹介した米国産のイースタンレッドシダー(別名エンピツビャクシン)が使われるようになり、さらに現在は前述のインセンスシダーが90%のシェアを占めるようになりました。
軽いこと、年輪とそうでない部分の硬さに差がなく削りやすいことが鉛筆の木に求められる条件。北海道で鉛筆を生産していた頃の名残りか、知床博物館では現在もイチイの鉛筆を販売しています。
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4 コメント

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道東で (guitarbird)
2007-08-06 13:34:15
こんにちわ、guitarbirdです
道東で鉛筆を作っていたのはまったく知らなかったです。
この三菱があの三菱と関係ないのも知らなかったです。
知らないことばかりで、いつも勉強になります。
道東の工場跡地があるなら一度行ってみたいです。
ところで、20年ほど前に知床で国有林が林野庁により
伐採された「事件」は覚えておられるかと思いますが、
その際、裏で取り引きされたのが、太いイチイだったという
「噂」を聞いたことがあります。本でも読みました。
以前、北海道に (fagus06)
2007-08-07 10:08:03
鳥を見に行った時、知床博物館に行きました。確か、オジロワシやオオワシの生態のビデオを観たと記憶しています。
guitarbirdさんも多分お持ちだと思いますが、本棚には「北海道の野鳥」(北海道新聞社)、「北海道の鳥」(北海道大学)という図鑑があって、どちらかはこの博物館で買ったはずです。
でも、イチイの鉛筆は買わなかったです。残念。そちらではオンコと呼ぶそうですね。
伐採されたイチイの噂は知りませんでした。
エンピツは (雀)
2007-08-07 23:00:28
良いにおいがしますよね。 ガリガリとエンピツ削りを回すと、ホンワ~っと香るのがとても好きです。 子供が小学校の頃、『明日の用意』もほったらかしている子でしたから、私が毎日削ってたのです。
ユニ!!憧れのエンピツでした。 なんか書きやすい? すらすら書ける? ひょっとしたら答えも出てくるんじゃ無いかって・・・大事に使った思い出があります。
雀さん (fagus06)
2007-08-08 08:26:39
お久しぶりです。そうですか、お子様の鉛筆を削っておられましたか。いい匂いがしましたよね、甘いような木の匂い…。
UNIは書き味が滑らかでした。答えは出てこないでしょうけど(笑)、UNIを1ダース(プラスチックケース入り)を買うと、いい文章が書けるような気がしました。
トンボ鉛筆にはMONOという高級品がありましたね。

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