樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

罪作りな学名

2014年02月27日 | 木と言葉
先週、大阪府立高校の入試で英語の出題にミスがあったというニュースが流れました。受験生以外は誰もミスの内容に気を留めなかったでしょうが、私には興味深いものでした。
「イチョウの木」という意味で「ginkgo trees」とすべきところを「gingko trees」と書いてしまった、つまりkとgが入れ替ったスペルミスです。
この前期入試は4万7000人が受験したそうで、教育委員会はこの問題を全員正解の扱いにするとのことです。


西本願寺の ginkgo tree

私がこのニュースに気を留めたのは、そもそもイチョウの学名(ginkgo)がスペルミスだからです。
イチョウは中国原産ですが、江戸時代に来日したドイツの博物学者ケンペルが日本で発見して命名しました。当時の日本では「銀杏」を「ギンキョウ」とも呼んでいたようで、ケンペルは「ginkyo」と書いたのですが、誤植で「ginkgo」と印刷されてしまいました。yがgに入れ替ったのです。
リンネがイチョウの学名を登録する際にミススペルのまま記述したので、現在も間違ったまま使われているわけです。
ginkyoであれば、試験問題を作成した人も「銀杏」からの類推で間違えなかったでしょうが、ginkgoという妙なスペルであるゆえに混乱したのでしょう。罪作りな学名です。


Ginkgo leaves

話はここで終わりません。大阪府教育委員会が「どちらのスペルも実際に使われている」と言い訳しているので、「そんなはずはないだろう」と思いましたが、念のためにミススペルの「gingko」で検索すると、意外にもいくつかのサイトがヒットしました。
そのうちの一つはワープロのブランド名になっていて、ロゴにはイチョウの葉があしらってあります。そのサイトは こちらhttps://gingkoapp.com(ULRもgingkoです)。
英語圏では一般の人たちもスペルミスに気づかずに使っているのです。300年前の誤植が現在でもあちこちに混乱を引き起こしているんですね。
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4 コメント

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Unknown (guitarbird)
2014-02-28 12:07:12
こんにちわ
なかなか深い話ですね。
不思議なスペルの謎が解けました。
私は、後に出てくる"g"は日本語では現れない中国語の何かの発音を表したものだと思っていました。
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違和感のある (fagus06)
2014-03-01 07:11:07
スペルですよね。
英語での発音は「ギンクゴー」になるんでしょうか。ネイティブにとっては、「ギンキョー」とどっちが発音しやすいんでしょうね。
ミススペルの「gingko」をワープロの名前にした人物は、一人はクウェート人、一人はロシア人です。ネイティブではないので間違ったのかも知れません。
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こんにちは (多摩NTの住人)
2014-03-15 17:27:01
“多摩ニュータウンの住人”と申します。
イチョウの学名は面白いですね。
こんなことが、起こってしまうんですね。
返信する
多摩ニュータウンの住人様 (fagus06)
2014-03-16 07:17:32
コメントありがとうございます。私自身「面白いな~」と思って書いていますので、そう言っていただくのがいちばんうれしいです。
お名前に聞き覚えがあったので、そちらのブログを拝見して思い出しました。以前、よく訪問して、お気に入りにも入れていました。
こちらは樹木だけですが、そちらは植物全般をテーマにされていて、方向性が似ているので、親近感をもって読ませていただいてました。
それにしても、すごいですね。パート1からスタートされて、これまでの記事数がもうすぐ6,000件になるんですね。私はようやく1,000件を超えたくらいです。
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