樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

遣唐使船

2010年05月24日 | 木と乗物
前回ご紹介した平城遷都1300年祭に出かけたもう一つの目的は遣唐使船。7~9世紀に日本と中国の間を行き来した木造船が会場に復元されているのです。
資料が残っていないので、平安時代の絵巻物などを参考に静岡県の造船所が設計・製作したそうです。全長30m、最大幅9.8m、使用した木材は300本の吉野杉。当時の船はスギだけでなく、クスノキも使ったはずです。


設計の参考にされた「吉備大臣入唐絵巻」の遣唐使船


復元された遣唐使船

この船に100~150人が乗り込み、大阪-瀬戸内海-東シナ海-中国を往復したのです。難破することも多く、渡航は命がけ。それでも、空海、最澄、山上憶良など歴史上の人物は危険を冒して中国に渡り、帰りには先進の文化や仏典を持ち帰ったわけです。
船体はもちろん、イカリも木造。海底に食い込むように又木に石を結びつけて停泊したらしいです。鉄製のイカリが登場するのは、日本では室町時代以降とのこと。


木製のイカリ。石がくくりつけてあります

今年は遣唐使船がもう1隻復元されました。平城遷都1300年と上海万博を結びつけて、角川文化振興財団がプロデュース。なぜか中国で建造し、いったん日本まで運んで、5月8日に大阪港を出発。門司や長崎に寄港した後、上海万博のジャパン・ウィークが始まる6月12日に上海に入港するそうです。ただし、こちらは船体は鋼鉄製で、動力はディーゼルエンジン。
先日放映されたNHKの「歴史秘話ヒストリア」で海に浮かぶ遣唐使船が登場しましたが、多分この復元船だと思います。
角川文化振興財団の理事長は角川歴彦氏。おもしろいことに、兄の角川春樹氏も35年前に、魏志倭人伝のルートを探ると称し、古代船「野性号」を建造して朝鮮海峡を渡っています。兄弟そろってロマンチストなんですね。
なお、奈良国立博物館で「平城遷都1300年記念・大遣唐使展」が開催されています。
コメント (6)
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